説明

高温焼成用光触媒コーティング組成物、および光触媒材の製造方法

【課題】 耐摩耗性が要求される、耐熱基材に塗布し高温焼成することにより光触媒ガス分解活性に優れる被膜を形成可能である、高温焼成用光触媒コーティング組成物、及びそれを用いた光触媒材を提供すること。
【解決手段】 光触媒粒子と、アルキルシリケートと、溶媒とを含む高温焼成用光触媒コーティング組成物であって、全組成物中の固形分濃度は5重量%未満であり、前記溶媒は主成分が水であり、さらに任意成分としてアルコールを0重量%以上50重量%未満含有することを特徴とする、耐熱基材に塗布し高温焼成することにより光触媒ガス分解活性に優れる被膜を形成可能である、高温焼成用光触媒コーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性が要求される、耐熱基材に塗布し高温焼成することにより光触媒ガス分解活性に優れる被膜を形成可能である、高温焼成用光触媒コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンなどの光触媒が、近年建築物の外装建材、内装建材など多くの用途において利用されている。外装用途については、基材表面に光触媒を塗装することにより、光エネルギーを利用してNOx、SOx等の有害物質の分解機能を付与することが可能となる。
【0003】
光触媒を利用したNOx分解は、従来においては、(1)光触媒粒子を多孔質膜に配合する方法(特開平8−99041など)、(2)光触媒粒子とアルキルシリケートを混合し、300℃以下の温度でアルキルシリケートを加水分解・縮重合させる方法(特開平4−174679、特開平8−164334)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−99041号公報
【特許文献2】特開平4−174679号公報
【特許文献3】特開平8−164334号公報
【特許文献4】WO00/006300号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、耐熱基材にNOx分解機能を付加する方法として、光触媒粒子を多孔質膜に配合する方法では、多孔であることで耐摩耗性が低下するので、耐熱基材に固定する場合に、その特徴を充分に生かすことができない。
また、耐熱基材にNOx分解機能を付加する方法として、光触媒粒子とアルキルシリケートを混合し、300℃以下の温度でアルキルシリケートを加水分解・縮重合させる方法を用いた場合には、やはり耐摩耗性が充分でなく、耐熱基材に固定する場合に、その特徴を充分に生かすことができない。
【0006】
本発明では、上記事情に鑑み、耐摩耗性が要求される、耐熱基材に塗布し高温焼成することにより光触媒ガス分解活性に優れる被膜を形成可能である、高温焼成用光触媒コーティング組成物、及びそれを用いた光触媒材を提供することを目的とする。
【0007】
すなわち、本発明では、光触媒粒子と、アルキルシリケートと、溶媒とを含む高温焼成用光触媒コーティング組成物であって、全組成物中の固形分濃度は5重量%未満であり、 前記溶媒は主成分が水であり、さらに任意成分としてアルコールを0重量%以上50重量%未満含有することを特徴とする、耐熱基材に塗布し高温焼成することにより光触媒ガス分解活性に優れる被膜を形成可能である、高温焼成用光触媒コーティング組成物、である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
高温焼成用光触媒コーティング組成物
本発明による高温焼成用光触媒コーティング組成物は、光触媒粒子と、アルキルシリケートと、溶媒とを含む高温焼成用光触媒コーティング組成物であって、全組成物中の固形分濃度は5重量%未満であり、前記溶媒は主成分が水であり、さらに任意成分としてアルコールを0重量%以上50重量%未満含有することを特徴とする、耐熱基材に塗布し高温焼成することにより光触媒ガス分解活性に優れる被膜を形成可能である、高温焼成用光触媒コーティング組成物である。
特開平8−164334号の段落番号(0018)5行目以下によれば、光触媒粒子とアルキルシリケートを含むコーティング液からの塗膜について以下のように記述されている。「好ましい固形分濃度は5〜20%であり、5%以下になると基材との接着性は強固になるが塗膜厚さ、つまり二酸化チタン量が不十分で光触媒機能を充分発揮できる塗膜を形成できない」。
また、特開平8−164334号の段落番号(0023)によれば、光触媒粒子とアルキルシリケートを含むコーティング液からの塗膜について以下のように記述されている。「100℃の乾燥によって爪で擦っても容易に剥離しないかなり強固な塗膜を形成できるが、シリカバインダーは100℃以上の温度で乾燥することによって、より強固な塗膜を形成できるので必要に応じ100〜300℃で乾燥もしくは低温焼成しても良い。但し、超微粒子状二酸化チタンの触媒活性は150℃以上の乾燥で徐々に低下を始め、400℃を超えると急速に低下することがあるので、塗膜強度の必要性に応じて適宜に乾燥温度を選択する必要がある」。
しかし、耐熱基材は本来の用途として、高度な耐摩耗性が要求され、300℃以下の焼成では充分な耐摩耗性が一般的に得られない。
ところが、今回、焼成温度が300℃をこえる温度、より好ましくは400℃をこえる温度で焼成しても、光触媒のガス分解活性を低下させることなく、高度な耐摩耗性を実現できる高温焼成用光触媒コーティング組成物を新たに見出した。
それが、光触媒粒子と、アルキルシリケートと、溶媒とを含む高温焼成用光触媒コーティング組成物であって、全組成物中の固形分濃度は5重量%未満であり、前記溶媒は主成分が水であり、さらに任意成分としてアルコールを0重量%以上50重量%未満含有することを特徴とする、耐熱基材に塗布し高温焼成することにより光触媒ガス分解活性に優れる被膜を形成可能である、高温焼成用光触媒コーティング組成物である。
本コーティング組成物が、焼成温度が300℃をこえる温度、より好ましくは400℃をこえる温度で焼成しても、光触媒のガス分解活性を低下させることなく、高度な耐摩耗性を実現できるのは、おそらく、以下のように説明できると考えられる。すなわち、全組成物中の固形分濃度は5重量%未満でかつ溶媒が水主体であるために、保管安定性としては1ヶ月程度安定であるにも拘らず、アルキルシリケートの加水分解・縮重合は常温である程度進む。それが立体的障害構造となり、300℃をこえる温度、より好ましくは400℃をこえる温度で高温焼成した時に耐摩耗性を満足できる程度に重合は生じるが、単位体積あたりの樹脂密度がさほど上昇せず、そのために光触媒の活性点がさほど覆われず光触媒活性の急激な低下に繋がらなかったものと考えられる。
【0009】
本発明の好ましい形態においては、前記アルキルシリケートは、一般式Sin−1(OR)2n+2(ただし、nは2〜6、RはC1〜4のアルキル基)で表わされる低級アルキルシリケート縮合物を更に加水分解率が50〜1500%になるように加水分解した加水分解物である、ものを用いる。
このような低級アルキルシリケートを利用することで、上記現象が生じやすくなり、焼成温度が300℃をこえる温度、より好ましくは400℃をこえる温度で焼成しても、光触媒のガス分解活性を低下させることなく、高度な耐摩耗性を容易に実現できる、と考えられる。
【0010】
本発明において光触媒粒子とは、光半導性を有する光触媒性金属酸化物の粒子であり、より詳細には、その結晶の伝導帯と価電子帯との間のエネルギーギャップよりも大きなエネルギー(すなわち短い波長)の光(励起光)を照射したときに、価電子帯中の電子の励起(光励起)が生じて、伝導電子と正孔を生成しうる金属酸化物の粒子を意味する。このような光触媒粒子によれば、いわゆる酸化還元反応により有機化合物を分解し、あるいは雰囲気中の水分子を吸着させる等により極めて高い程度の親水性を呈するに至る。本発明の好ましい態様によれば、光触媒粒子は、好ましくは、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン等の結晶性TiO、ZnO、SnO、SrTiO、WO、Bi、Fe、CeOおよびVからなる群から選択される粒子である。
【0011】
本発明の好ましい態様によれば、光触媒粒子は10nm以上100nm未満の平均粒径を有するのが好ましく、より好ましくは10nm以上60nm以下である。なお、この平均粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、光触媒粒子は3nm以上30nm未満の平均結晶子径を有するのが好ましく、より好ましくは5nm以上20nm以下である。なお、この平均粒径は、粉末X線回折法により得られるX線プロファイルの3強線の積分幅からシェラー式により算出される。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、光触媒コーティング組成物は、金属および/または金属酸化物、例えば、Cu、Ag、Ni、Fe、Zn、Pt、Au、Rh、V、Cr、Co、Mn、W、Nb、Sb、および白金族金属ならびにそれらの酸化物から選択される金属または金属酸化物の少なくとも一種、をさらに含んでなることができる。この金属および金属酸化物の好ましい例としては、Cu、Ag、Pt、Co、Fe、Ni、Cu2O、Ag2O、Au、Zn、Cr、MnおよびMoからなる群から選択される少なくとも一種の金属粒子である。これら金属または金属酸化物を添加した場合、形成される被膜は、表面に付着した細菌や黴を暗所でも死滅させることができる。また、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、Osのような白金族金属または酸化物は、光触媒の酸化還元活性を増強させ、その結果有機物汚れの分解性、有害気体や悪臭の分解性を向上させることができることから添加が好ましい。
【0014】
アルキルシリケートとしては、例えば、メチルシリケート、エチルシリケート、プロピルシリケート、ブチルシリケートが好適に利用できる。
一般式Sin−1(OR)2n+2(ただし、nは2〜6、RはC1〜4のアルキル基)で表わされる低級アルキルシリケート縮合物を更に加水分解率が50〜1500%になるように加水分解した加水分解物が特に好適に利用できる。
【0015】
光触媒コーティング液中の光触媒粒子と、アルキルシリケートとの質量比は、好ましくは上記2成分の合計質量に対して光触媒粒子が30〜95質量%であり、より好ましくは50〜90質量%である。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、全組成物中の固形分濃度は、5重量%未満である。0.01重量%〜5重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1重量%〜1重量%の範囲である。上記範囲にあることで、耐熱基材に塗布し高温焼成することにより光触媒ガス分解活性に優れる被膜を形成可能である。
【0017】
本発明の好ましい態様によれば、前記溶媒は主成分が水であり、さらに任意成分としてアルコールを0重量%以上50重量%未満含有する。
耐熱基材に塗布し高温焼成することにより光触媒ガス分解活性に優れる被膜を形成するにはアルコール含有量は少ないほどよく、好ましくは0重量%以上30重量%以下含有する。
しかし、アルコールを含有する方が、コーティング液の保管安定期間は長くなるので、アルコール量はその兼ね合いで、上記範囲の中で決定するのが好ましい。
【0018】
さらに本発明の好ましい態様によれば、光触媒コーティング液は界面活性剤を含んでなることが好ましい。界面活性剤の添加によって、基材表面に光触媒コーティング組成物を均一に塗布することが可能となる。
【0019】
さらに本発明の好ましい態様によれば、光触媒コーティング液には、さらに無機酸化物粒子が添加されていてもよい。
無機酸化物粒子の例としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、イットリア、ボロニア、マグネシア、カルシア、フェライト、無定型チタニア、ハフニア等の単一酸化物に加え、チタン酸バリウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸塩、リン酸カルシウム等の複合酸化物が挙げられる。
【0020】
無機酸化物粒子の粒径は特に限定されないが、水性コロイドまたはオルガノゾルの形態とされたとき5〜50nm程度の粒径が、最終的な光触媒性親水性被膜の光沢、濁り、曇り、透明性等の観点から好ましい。
【0021】
さらに本発明の好ましい態様によれば、光触媒コーティング液は、上記成分に加えて、重合硬化触媒、加水分解触媒、レベリング剤、抗菌金属、pH調整剤、香料、保存安定剤、有機防カビ剤などを含んでなることができる。
【0022】
ここで、重合触媒としては、アルミニウムキレート、アルミニウムアセチルアセトナート、過塩素酸アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミニウムイソブトキシド、アルミニウムイソプロポキシドのようなアルミニウム化合物;テトライソプロピルチタネート、テトラブトキシチタネートのようなチタン化合物;水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、酢酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、酢酸カリウム、ギ酸カリウム、プロピオン酸カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドのような塩基性化合物類;n−ヘキシルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、エチレンジアミン、ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンベンタミン、トリエチレンテトラミン、エタノールアミン類、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノメチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノメチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシランのようなアミン化合物;錫アセチルアセトナート、ジブチル錫オクチレートのような錫化合物;コバルトオクチレート、コバルトアセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナートのような金属化合物類;リン酸、硝酸、フタル酸、p−トルエンスルホン酸、トリクロル酢酸のような酸性化合物類などが挙げられる。
【0023】
加水分解触媒としては、pH2〜5の硝酸、塩酸、酢酸、硫酸、スルホン酸、マレイン酸、プロピオン酸、アジピン酸、フマル酸、フタル酸、吉草酸、乳酸、酪酸、クエン酸、リンゴ酸、ピクリン酸、ギ酸、炭酸、フェノール等が好適に利用できる。
【0024】
レベリング剤としては、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1−プロポキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等が好適に利用できる。
【0025】
光触媒層は、0.1μm以上5.0μm以下の膜厚を有するのが好ましく、より好ましくは0.2μm以上3.0μm以下の膜厚であり、最も好ましくは0.1μm以上1.0μm以下である。このような範囲内であると、無機酸化物粒子よりも含有比率が低い光触媒粒子を膜厚方向に増加させることができるので、有害ガス分解性が向上する。さらには、光触媒層の透明性においても優れた特性が得られる。
【0026】
光触媒材の製造方法
光触媒粒子と、アルキルシリケートと、溶媒とを含む高温焼成用光触媒コーティング組成物であって、全組成物中の固形分濃度は5重量%未満であり、前記溶媒は主成分が水であり、さらに任意成分としてアルコールを0重量%以上50重量%未満含有することを特徴とする、耐熱基材に塗布し高温焼成することにより光触媒ガス分解活性に優れる被膜を形成可能である、高温焼成用光触媒コーティング組成物を、耐熱基材表面に塗布し、300℃をこえる温度、より好ましくは400℃をこえる温度で焼成することで光触媒層を形成することを特徴とする、光触媒材の製造方法である。
上記光触媒材の製造方法により、光触媒のガス分解活性を低下させることなく、高度な耐摩耗性を実現できる。
【0027】
但し、前記光触媒層は、前記光触媒粒子と前記アルキルシリケートを、600℃未満、より好ましくは550℃未満で硬化させて形成させて形成するほうがよい。
温度が過度に高くなるとアルキルシリケートの硬化反応で生成するシリカの流動性が高まり光触媒の活性点を覆い始めると考えられるためである。
【0028】
本発明による方法にあっては、上記の光触媒コーティング組成物を耐熱基材に塗布する。塗布方法としては、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が好適に利用できる。本発明の好ましい態様によれば、光触媒コーティング組成物はスプレーにより塗布されることが好ましい。
【0029】
さらに、本発明の好ましい態様によれば、光触媒コーティング組成物の塗布の前に、基材表面が予備加熱されることが好ましい。予備加熱は、基材の表面を40℃〜200℃に加熱することにより行われる。加熱された基材表面に塗布された光触媒コーティング組成物は、均一に広がり、むらのない塗膜が得られるので有利である。
【0030】
さらに、本発明の好ましい態様によれば、光触媒コーティング組成物が塗布された基材表面を急速加熱の前に乾燥させてもよい。基材には後記する急速加熱により大量の熱量が負荷される。基材上に余分な水分または溶媒成分が存在すると急激な温度変化による水または溶媒成分の急激な蒸発などにより基材表面の平滑度が失われてしまうおそれがある。よって、乾燥により予め余分な水分または溶媒成分を除くことが望ましいことがある。乾燥は送風または加熱により行われてよい。
【0031】
焼成は、ローラハースキルン、電気炉等で最高温度を300℃以上をこえる温度、より好ましくは400℃、更に好ましくは300℃以上をこえ600℃未満、最も好ましくは300℃以上をこえ550℃未満で硬化させてもよいし、WO00/006300号に記載されている急速加熱装置を用いてもよい。
【0032】
急速加熱装置を用いる場合には、硬化反応が生じる耐熱基材上のコーティング液の塗布面が最高温度を300℃以上をこえる温度、より好ましくは400℃、更に好ましくは300℃以上をこえ600℃未満、最も好ましくは300℃以上をこえ550℃未満であればよく、雰囲気温度は、400℃〜1200℃より好ましくは500℃〜1000℃程度に設定してもよい。
【0033】
本発明による方法が適用可能な「耐熱基材」は300℃をこえる耐熱性、より好ましくは400℃をこえる耐熱性を有する基材であり、その例としては、金属、無機材料およびそれらの複合材であることができ、具体的には、タイル、衛生陶器、食器、洗面器、ケイカル板、半導体等のニューセラミックス、碍子、ガラス、鏡、アルミニウム板、鋼板、水栓、銅合金、ステンレス板などが挙げられる。
【実施例】
【0034】
実施例1:
平均結晶子径7nm、平均粒径50nmのアナターゼ型酸化チタンゾルとアルキルシリケートと溶媒とを、酸化チタン粒子とアルキルシリケートとの質量比が65:35となるように配合し、固形分濃度0.6重量%の光触媒コーティング液(A1)を作製した。ここで、溶媒には、水とアルコールとの混合溶媒を用い、その量比は90:10とした。また、アルキルシリケートは一般式Sin−1(OR)2n+2(ただし、nは2〜6、RはC1〜4のアルキル基)で表わされる低級アルキルシリケート縮合物を更に加水分解率が50〜1500%になるように加水分解した加水分解物を用いた。
この光触媒コーティング液(A1)を、予め80〜150℃に予備加熱した施釉タイル(T1)上にスプレーコーティング法により塗布した(B1)。
次いで、上記タイル(B1)を、最高温度を450℃に設定した電気炉で1時間焼成し、
タイル表面に膜厚約0.5μmの光触媒層が形成された光触媒タイル(C1)を得た。
得られた試料(C1)について、光触媒によるNOx分解機能と、耐摩耗性につき確認した。
光触媒によるNOx分解機能は、JISR1701−1「光触媒材料の空気浄化性能試験方法−第1部:窒素酸化物の除去性能」の試験法で行った。その結果、ΔNOxが0.79μmolとなり良好な結果を示した。
耐摩耗性については、ナイロン製のブラシで1200回摺動させた後に、光触媒機能が維持されていることを硝酸銀呈色試験、すなわち、光触媒層上に濃度1重量%硝酸銀水溶液を塗布しBLBランプを照度2mW/cmで20分照射し、余剰の硝酸銀を水道水にて洗浄し、乾燥した後の光触媒層表面の色値(L*,a*,b*)と、前記硝酸銀水溶液塗布前の光触媒層表面の色値(L*,a*,b*)との色差変化ΔEを測定する試験、で確認した。その結果、ΔE=10と良好な結果を示した。
また、ナイロン製のブラシで1200回摺動させた後に、光触媒によるNOx分解機能を、JISR1701−1「光触媒材料の空気浄化性能試験方法−第1部:窒素酸化物の除去性能」の試験法で行ったが、その結果、ΔNOxが0.6μmolとなり良好な結果を維持した。
【0035】
実施例2:
平均結晶子径7nm、平均粒径50nmのアナターゼ型酸化チタンゾルとアルキルシリケートと溶媒とを、酸化チタン粒子とアルキルシリケートとの質量比が65:35となるように配合し、固形分濃度1.0重量%の光触媒コーティング液(A1)を作製した。ここで、溶媒には、水とアルコールとの混合溶媒を用い、その量比は70:30とした。また、アルキルシリケートは一般式Sin−1(OR)2n+2(ただし、nは2〜6、RはC1〜4のアルキル基)で表わされる低級アルキルシリケート縮合物を更に加水分解率が50〜1500%になるように加水分解した加水分解物を用いた。
この光触媒コーティング液(A1)を、予め80〜150℃に予備加熱した施釉タイル(T1)上にスプレーコーティング法により塗布した(B1)。
次いで、上記タイル(B1)を、最高温度を450℃に設定した電気炉で1時間焼成し、
タイル表面に膜厚約0.5μmの光触媒層が形成された光触媒タイル(C1)を得た。
得られた試料(C1)について、光触媒によるNOx分解機能と、耐摩耗性につき確認した。
光触媒によるNOx分解機能は、JISR1701−1「光触媒材料の空気浄化性能試験方法−第1部:窒素酸化物の除去性能」の試験法で行った。その結果、ΔNOxが0.71μmolとなり良好な結果を示した。
耐摩耗性については、ナイロン製のブラシで1200回摺動させた後に、光触媒機能が維持されていることを硝酸銀呈色試験、すなわち、光触媒層上に濃度1重量%硝酸銀水溶液を塗布しBLBランプを照度2mW/cmで20分照射し、余剰の硝酸銀を水道水にて洗浄し、乾燥した後の光触媒層表面の色値(L*,a*,b*)と、前記硝酸銀水溶液塗布前の光触媒層表面の色値(L*,a*,b*)との色差変化ΔEを測定する試験、で確認した。その結果、ΔE=10と良好な結果を示した。
また、ナイロン製のブラシで1200回摺動させた後に、光触媒によるNOx分解機能を、JISR1701−1「光触媒材料の空気浄化性能試験方法−第1部:窒素酸化物の除去性能」の試験法で行ったが、その結果、ΔNOxが0.59μmolとなり良好な結果を維持した。
【0036】
実施例3:
平均結晶子径7nm、平均粒径50nmのアナターゼ型酸化チタンゾルとアルキルシリケートと溶媒とを、酸化チタン粒子とアルキルシリケートとの質量比が65:35となるように配合し、固形分濃度0.6重量%の光触媒コーティング液(A1)を作製した。ここで、溶媒には、水とアルコールとの混合溶媒を用い、その量比は90:10とした。また、アルキルシリケートは一般式Sin−1(OR)2n+2(ただし、nは2〜6、RはC1〜4のアルキル基)で表わされる低級アルキルシリケート縮合物を更に加水分解率が50〜1500%になるように加水分解した加水分解物を用いた。
この光触媒コーティング液(A1)を、予め80〜150℃に予備加熱した施釉タイル(T1)上にスプレーコーティング法により塗布した(B1)。
次いで、上記タイル(B1)を、炉内雰囲気温度800〜1000℃(熱電対はバーナー付近の直接炎が当らない位置に設置)、加熱を単位面積当りの発熱量が1000MJ/m・hである発熱体を用いて行い、該発熱体から前記コーティング液を塗布した表面までの距離を5mm〜300mmの範囲に設定して10〜20秒焼成した。その結果、タイル表面に膜厚約0.5μmの光触媒層が形成された光触媒体(C2)が作製された。本試料における炉から搬出された直後の光触媒体(C2)の表面温度は400〜450℃であった。
得られた試料(C2)について、光触媒によるNOx分解機能と、耐摩耗性につき確認した。
光触媒によるNOx分解機能は、JISR1701−1「光触媒材料の空気浄化性能試験方法−第1部:窒素酸化物の除去性能」の試験法で行った。その結果、ΔNOxが0.96μmolとなり良好な結果を示した。
耐摩耗性については、ナイロン製のブラシで1200回摺動させた後に、光触媒機能が維持されていることを硝酸銀呈色試験、すなわち、光触媒層上に濃度1重量%硝酸銀水溶液を塗布しBLBランプを照度2mW/cmで20分照射し、余剰の硝酸銀を水道水にて洗浄し、乾燥した後の光触媒層表面の色値(L*,a*,b*)と、前記硝酸銀水溶液塗布前の光触媒層表面の色値(L*,a*,b*)との色差変化ΔEを測定する試験、で確認した。その結果、ΔE=14と良好な結果を示した。
また、ナイロン製のブラシで1200回摺動させた後に、光触媒によるNOx分解機能を、JISR1701−1「光触媒材料の空気浄化性能試験方法−第1部:窒素酸化物の除去性能」の試験法で行ったが、その結果、ΔNOxが0.7μmolとなり良好な結果を維持した。
【0037】
実施例4:
平均結晶子径7nm、平均粒径50nmのアナターゼ型酸化チタンゾルとアルキルシリケートと溶媒とを、酸化チタン粒子とアルキルシリケートとの質量比が65:35となるように配合し、固形分濃度1.0重量%の光触媒コーティング液(A1)を作製した。ここで、溶媒には、水とアルコールとの混合溶媒を用い、その量比は60:40とした。また。
また、アルキルシリケートは一般式Sin−1(OR)2n+2(ただし、nは2〜6、RはC1〜4のアルキル基)で表わされる低級アルキルシリケート縮合物を更に加水分解率が50〜1500%になるように加水分解した加水分解物を用いた。
この光触媒コーティング液(A1)を、予め80〜150℃に予備加熱した施釉タイル(T1)上にスプレーコーティング法により塗布した(B1)。
次いで、上記タイル(B1)を、炉内雰囲気温度800〜1100℃(熱電対はバーナー付近の直接炎が当らない位置に設置)、加熱を単位面積当りの発熱量が1000MJ/m・hである発熱体を用いて行い、該発熱体から前記コーティング液を塗布した表面までの距離を5mm〜300mmの範囲に設定して10〜20秒焼成した。その結果、タイル表面に膜厚約0.5μmの光触媒層が形成された光触媒体(C2)が作製された。本試料における炉から搬出された直後の光触媒体(C2)の表面温度は400〜450℃であった。
得られた試料(C2)について、光触媒によるNOx分解機能と、耐摩耗性につき確認した。
光触媒によるNOx分解機能は、JISR1701−1「光触媒材料の空気浄化性能試験方法−第1部:窒素酸化物の除去性能」の試験法で行った。その結果、ΔNOxが0.80μmolとなり良好な結果を示した。
耐摩耗性については、ナイロン製のブラシで1200回摺動させた後に、光触媒機能が維持されていることを硝酸銀呈色試験、すなわち、光触媒層上に濃度1重量%硝酸銀水溶液を塗布しBLBランプを照度2mW/cmで20分照射し、余剰の硝酸銀を水道水にて洗浄し、乾燥した後の光触媒層表面の色値(L*,a*,b*)と、前記硝酸銀水溶液塗布前の光触媒層表面の色値(L*,a*,b*)との色差変化ΔEを測定する試験、で確認した。その結果、ΔE=12と良好な結果を示した。
また、ナイロン製のブラシで1200回摺動させた後に、光触媒によるNOx分解機能を、JISR1701−1「光触媒材料の空気浄化性能試験方法−第1部:窒素酸化物の除去性能」の試験法で行ったが、その結果、ΔNOxが0.67μmolとなり良好な結果を維持した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒粒子と、アルキルシリケートと、溶媒とを含む高温焼成用光触媒コーティング組成物であって、
全組成物中の固形分濃度は5重量%未満であり、
前記溶媒は主成分が水であり、
さらに任意成分としてアルコールを0重量%以上50重量%未満含有することを特徴とする、
耐熱基材に塗布し高温焼成することにより光触媒ガス分解活性に優れる被膜を形成可能である、高温焼成用光触媒コーティング組成物。
【請求項2】
前記アルキルシリケートは、一般式Sin−1(OR)2n+2(ただし、nは2〜6、RはC1〜4のアルキル基)で表わされる低級アルキルシリケート縮合物を更に加水分解率が50〜1500%になるように加水分解した加水分解物である、ことを特徴とする請求項1に記載の高温焼成用光触媒コーティング組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のいずれか1項に記載の高温焼成用光触媒コーティング組成物を、
基材表面に塗布し、300℃をこえる温度で焼成することで光触媒層を形成することを特徴とする、光触媒材の製造方法。

【公開番号】特開2010−280859(P2010−280859A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136947(P2009−136947)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】