説明

高温環境での使用のための熱的に安定なセラミック媒体

装置の最大曝露温度より低い温度で焼結したセラミック媒体を利用する化学処理装置が記載される。媒体の焼結温度を少なくとも50℃超える温度に曝される場合、媒体の物理的および化学的特性は、媒体の熱安定性に寄与できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、媒体が焼結された温度より高い周囲温度に、媒体が曝される環境での使用のためのセラミック媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
さらに特に、本発明は、1250℃以下で焼結され、そして次に1300℃超の内部温度を有する反応器等の化学処理装置で使用されるセラミック媒体に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明者らは、例えば、ある範囲内の化学調合であり、そしてある物理的特徴を有する特別なセラミック媒体が、1250℃未満等の比較的低温で、媒体の生素地を焼結することによって生成でき、そして焼結生成物が、焼結温度より高い1300℃以上等の温度への長時間の曝露後に物理的に安定であることを発見した。
【0004】
一態様では、本発明は、公知の焼結温度で生成された複数のセラミック媒体を含む化学処理装置であることができる。この媒体は、媒体の焼結温度より低い第1の温度から、媒体の焼結温度より少なくとも50℃高い第2の温度へ、そして次に第1の温度に戻す装置内における熱サイクル後に、物理的に異なっており、且つ相互から容易に分離可能である。
【0005】
別の態様では、本発明は、第1の体積および第2の体積を有するセラミック媒体である。第1の体積は、低くても1200℃まで媒体を加熱した後であるが、1250℃より上に媒体を加熱する前の、22℃での媒体の体積に相当する。第2の体積は、1300℃超しかし1500℃未満に媒体を加熱した後の、22℃での媒体の体積に相当する。第2の体積:第1の体積の比率は、0.9:1〜1:1である。
【0006】
別の態様では、本発明は、セラミック媒体の製造方法である。あるステップでは、酸化マグネシウム、ボールクレイ、ベントナイトおよび長石の混合物が提供される。酸化マグネシウムは微粒子形態であり、そして少なくとも45wt%の酸化マグネシウム粒子は、30〜250μmである。混合物は、複数の3次元の媒体に形成される。媒体は、次に1200℃超且つ1250℃未満の焼結温度まで加熱される。焼結した媒体の気孔率は、媒体の見掛け体積に基づいて、24%超且つ38%未満である。X線回折分析により決定される媒体の主相は、MgOである。
【0007】
また別の態様では、本発明は、MgO,SiOおよびAlを含むセラミック媒体である。MgOは、媒体の48〜78wt%である。SiOは、媒体の5〜30wt%である。Alは、媒体の5〜30wt%である。媒体は、媒体の見掛け体積に基づいて、24〜38%の多孔質であり、そしてX線回折分析により決定される媒体の主相は、MgOである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書中で使用される場合、"化学処理装置"の語句は、原料を受け、そして次に装置から放出される最終生成物に、原料を化学的および/または物理的に転化させるタンク、バーナー、燃焼室、配管などの装置をいうことを目的とする。転化は、原料の物質の状態への化学反応、物理的変化(例えば液体を気体へ)および/または原料の温度の上昇もしくは低下を含んでもよい。熱酸化器等の化学反応器は、種々の目的ために化学品製造業において広く使用され、そして化学処理装置の語句のサブセットと考えられている。
【0009】
セラミック媒体は、種々の産業工程の一部である広範な化学処理装置で使用される。いくつかの工程では、濃縮された熱源から熱を容易に吸収できるヒートシンクとして働くことによって、媒体は処理装置中の温度を安定させまたは緩和し、そして次に必要に応じて熱をゆっくりと放出する。他の工程では、媒体は工程サイクル間の熱の移送に参加できる。また他の工程では、媒体の第1の機能は、装置内の他の構成部分および/または材料のための構造的な支持を提供することである。処理装置は、セラミック媒体の数千の個々の一片を含む媒体の単一の集合体を用いることができ、または装置は、媒体の2種または3種以上の集合体を利用できる。媒体の集合体は、媒体の"床(bed)"と呼ぶことができる。例えば、熱酸化器は、酸化器内に熱を効率的に移送するために、セラミック媒体の2種の集合体を利用する周知の範疇の化学反応器である。2つの周知のクラスの熱酸化器は、無炎熱酸化器(FTO)および再生熱酸化器(regenerative thermal oxidizer:RTO)である。熱酸化器は、揮発性有機化合物(VOC)としても公知の有害な有機化合物の分解を含む種々の工業プロセスにおいて使用される。熱酸化器は、有機化合物を酸化する燃焼区画に、燃料を供給するために天然ガスを使用する。熱酸化器の運転のコストを最小化するために、酸化器は工程サイクルの一部の間に生成される熱を吸収することによってエネルギーを保存し、そして次に工程サイクル中でその後使用するために、エネルギーを放出する熱移送媒体を含む。本明細書中で使用される場合、熱の移送は、物質の1つの流れから熱を抽出して、そして次に捕らえた熱を物質の異なる流れに放出することを意味する。媒体は典型的には、生成されそして次に窯中で焼結した、複数の同一形状のセラミック成分を含む。意図的でない熱的逸脱、意図的でそして継続した高温への曝露、急速な圧力の変化および/または攻撃的な化学的環境の間に、化学処理装置が経験する場合がある高温に曝される場合、媒体は化学的および物理的に安定であることが好ましい。商業的に実行可能であるために、媒体は:(1)低コスト原料からできており;(2)低い焼結温度の窯中で焼結され;(3)媒体の焼結温度より上に加熱される場合、過度の収縮に対する耐性があり、そして(4)従来の生成操作を使用して製造可能であることができる。
【0010】
上記の様な化学反応器での使用に加えて、セラミック媒体は、種々の形および大きさで入手可能である触媒反応器等の化学反応器中で使用できる。触媒反応器は、反応器内に配置されたセラミック媒体の2種または3種以上の異なった層の集合体を必要とすることができる。例えば、セラミック層の第1層は、配置した反応器の底に配置され、床担持媒体として働いてもよい。担持媒体は、触媒および吸収性の床を物理的に担持し、そして種々の圧力、温度および流速のガス流から保護するために役立つ。反応器への装填間の取り扱いで壊れないように、商業的に実行可能な担持媒体は、高い耐衝撃性を有していることが好ましく、そしてまた圧力の急速な変化に耐える能力を有することが好ましい。媒体の第2層は、第1層の上に乗っている。通常媒体の第1層と物理的および化学的に異なる媒体の第2層は、銀またはチタン等の触媒物質の薄い不連続層が堆積されたキャリアーとして機能できる。触媒物質は、反応器内の所望の化学反応を触媒する。さらなる第3層の媒体を、第2層の上に配置できる。第3層中の媒体は、第1および第2層中の媒体と、通常物理的および化学的に異なる。第3層の機能は、汚染物質が第2層中の触媒物質と接触しそして汚染する前に、入ってくる原料の供給から汚染物質をろ過することである。媒体の3つの層中の正確な化学的組成、構造および機能は、お互いに異なるが、全ての媒体は、媒体が焼結された温度より高い高温への一時的な、および/または継続した曝露を有する環境への曝露に耐えることができることが好ましい。
【0011】
多くの市販されている熱反応器は、通常800℃〜1000℃の温度で運転される。あいにく、反応器中の"ホットスポット"は、反応器中に配置されたセラミック媒体を、1300℃を超える、温度の逸脱に曝すことができる。1300℃より上の温度にある従来の熱移送セラミック媒体の安定性を確かにする一つの方法は、反応器中にある間に、媒体が経験するであろう最高温度に等しいか、または最高温度を超える運転温度を有する窯中で、媒体を焼結することによって媒体を製造することである。したがって、反応器中の最高温度が、1500℃である場合、媒体を1500℃以上で焼結してもよい。しかし、1500℃を超える温度で媒体を焼結することは、より低い温度で媒体を焼結するより多くのエネルギーを必要とする。媒体を焼結するために必要なエネルギーの量におけるあらゆる増加は、媒体の製造コストを上昇させるので、望ましくない。
【0012】
ここで、図、そしてさらに特に図1を参照すると、本発明の化学処理装置、さらに具体的に言うと熱酸化器、10の断面図が示される。酸化器の外部から始めると、酸化器の構成部分は、ハウジング12、排気筒14および16、および入口マニホールド18である。ハウジング内に配置されているのは、バーナー20、絶縁壁22、熱交換媒体24の第1の集合体、および熱交換媒体26の第2の集合体である。バルブ28,30,32および34は、熱酸化器に入るおよび出るガスの流れを制御する。熱酸化器内へのガス流は、原料と考えられている。ガスは、環境危機と考えられるので、揮発性の有機化合物(VOC)、または例えば酸化される必要がある他の流れであることができる。一態様では、熱酸化器は、環境に安全に放出できる1種または2種以上の化合物にVOCを転化するために使用できる。熱酸化器は、所望の酸化物を生成させるのに充分な任意の熱源を使用することができる。熱酸化器は、天然ガス等の可燃性物質を使用するために設計されており、VOCを破壊するために必要である熱を生成する。酸化器の副生成物に伴う熱が、酸化器を通って流れることができるであろう一方で、熱交換媒体が、さもなければ廃棄されるであろう熱を捕捉し、そして利用するために使用する場合、熱酸化器の運転の費用効率の高さは、著しく改善される。
【0013】
本発明の一態様によるセラミック媒体を使用する熱酸化器の運転を、ここで説明する。図1では、工程サイクルの第1の部分を表すバルブ28および32が開いており、そしてバルブ30および34が閉じており、それによって入口マニホールドから熱酸化器を通り、そして排気筒14を経由して熱酸化器の外に出るVOCの流れを制御する。図1の矢印35を参照すると。ガスが、熱酸化器を通って流れるにつれて、ガスはバーナーによって加熱され、それによって環境中に安全に放出できる他の化合物にVOCを転化する。加熱されたガス状の副生成物の流れが、熱交換媒体24の第1の集合体を通り、そして排気筒14から出るにつれて、燃焼生成物中の熱は、媒体24によって吸収される。さて図2を参照すると、所定の時間後に、バルブ28および32は閉じられ、そしてバルブ30および34は開かれ、それによってガスを、工程サイクルの第1の部分に補足された熱を放出する加熱された熱交換媒体の第1の集合体を通して流すことによって、熱酸化器に入らせ、それによって、ガスがバーナーに到着する前に、VOCの温度を上昇させる。VOCを予め加熱するために、補足された熱を使用することによって、VOCを燃焼するのに必要なエネルギーの量が低下し、それによって酸化器の運転コストを削減する。加熱された副生成物が、熱交換媒体26の第2の集合体を通って流れるにつれて、同伴する熱が媒体26によって抽出され、そして副生成物が排気筒16を介して酸化器のハウジングから出る。熱酸化器は、バルブ28および32を開ける一方で、バルブ30および34を閉じることによって再度運転を続け、それによって、VOCがバーナーを通過して流れる前に予め加熱される熱移送媒体の第2の集合体を通してVOCを流す。図1および2により表される工程ステップの間を循環して行き来することによって、熱酸化器は、コスト効率的な方式で、VOCを害のない物質に転化する。
【0014】
熱酸化器は、典型的には酸化器へ流れる物質の特性、所望の反応生成物、処理される物質の量等によって、部分的に決定された特定の温度範囲内で運転される様に設計されている。多くの用途では、酸化器の通常の運転温度範囲は、800℃〜1000℃である。しかし、熱酸化器は、1300℃または1500℃までも等の1000℃より充分上の、意図しない熱的逸脱を経験するであろう。温度の予期しない上昇は、酸化器中で熱交換媒体の塊として起こることができ、または温度の逸脱は、局所的なホットスポットに限られることができる。1300℃より上の温度に曝される場合、従来のセラミック媒体は、相互に溶融することが知られており、熱交換媒体の床にわたる圧力低下が増えるなどの酸化器内の受け入れ難い状態となる。したがって、酸化器の通常運転を確かにするために、従来の熱移送媒体は、1300℃より上の温度で、物理的および熱的に安定であることが好ましい。セラミック材料でできた従来の熱交換媒体が、800℃〜1000℃で運転される熱酸化器内で使用される場合、媒体は、熱酸化器の最大の曝露温度を超える温度で焼成することによって製造されていた。酸化器の最大の曝露温度を超える温度で媒体を焼成することによって、媒体の熱安定性が、酸化器にある間改善された。しかし、上記で説明したように、媒体の焼成温度が低下するにつれて、媒体を生成させるコストが低下するので、酸化器の曝露温度より低い温度で媒体を焼成することが望ましい。本発明の熱的に安定な媒体の態様が1200℃〜1250℃で媒体を焼成することによって生成され、そして次に1300℃〜1500℃の熱的逸脱を経験する熱酸化器内で使用される場合、媒体の焼成温度と酸化器の逸脱温度との違いは、少なくとも50℃であり、そして300℃までもであることができる。75℃、100℃、150℃、200℃および250℃の温度差、ならびに50℃〜300℃の他の差も実現可能である。
【0015】
必要な場合、化学処理装置は、1300℃を超える温度で長時間維持運転するように設計できる。いくつかの用途では、セラミック媒体が、2時間、24時間、4週間、6カ月または用途による他の期間、1300℃以上の装置の最大の曝露温度に曝された後で熱的に安定であり続けることが必要である。媒体が高温に曝される時間に関係なく、内部温度は、媒体が焼結した温度より低い第1の温度と、媒体の焼結温度より少なくとも50℃高い第2の温度との間で変動し、そして次に第1の温度以下に戻る化学処理装置中の熱サイクル後に、本発明の媒体は、物理的に異なったままであることができ、そして相互から容易に分離できる。例えば、媒体の焼結温度が1250℃である場合、装置の内部温度が1250℃より低い第1の温度から、1300℃より高い第2の温度まで上昇し、そして1250℃より低い温度に冷めた後で、化学処理装置中で媒体の個々の要素は、物理的に異なることができ、そして相互から容易に分離できる。上記のように、媒体が第2の温度以上に曝されて耐えることが望ましい時間量は、化学処理装置の設計パラメーターによって変動できる。
【0016】
本発明のセラミック媒体は、媒体が所与の用途で望ましく機能できる任意の形であることができる。図3は、本発明の熱酸化器での使用に好適である熱移送媒体36の1つの態様の形を示す。媒体36は、下記の例4中の調合を使用して生成できる。他の形の好適なセラミック媒体は、米国特許第5,304,423号明細書および米国特許第6,007,915号明細書を含む多数の特許に開示される。本発明の媒体は、エチレンオキサイドを生成する化学処理装置中で床担持媒体として使用される場合、媒体は、球形であってもよい。
【0017】
図4は、本発明の1つの態様により媒体を生成するために使用される工程ステップを示す。ステップ100では、原料の混合物を用意する。混合物は、微粒子形態の酸化マグネシウムを含み、そして少なくとも45wt%の酸化マグネシウム粒子が、30〜250μmである粒径分布を有する。混合物はまた、ボールクレイ、ベントナイトおよび長石を含む。ステップ102では、混合物が押出機に配置され、次に連続的な、細長いおよび形成された押し出し物を生成し、次に切断および/または、さもなければ離散した3次元の焼成されていない媒体に成形される。ステップ104では、成形され且つ焼成されていない媒体は、1200℃超且つ1250℃未満の焼結温度まで加熱される。焼結した媒体の気孔率は、媒体の見掛け体積に基づいて、24%より大きく且つ38%より小さいそしてX−線回折分析によって決定される媒体の主相は、MgOである。
【0018】
焼結した媒体が、所望の物理的および媒体の焼結温度を少なくとも50℃超える温度で熱安定性を有する前提で、混合物内に含まれる原料は、それらの物理的および化学的特徴において変化できる。酸化マグネシウムの適当な供給源の選択に関しては、好ましくは少なくとも25%の酸化マグネシウム粒子は250μmより大きく、そして粒子の30%は30μmより小さい。酸化マグネシウムのコスト、そしてしたがって焼結した媒体の最終コストを最小化するために、市販されている酸化マグネシウムの好ましい供給源は、化学分析に基づいて、90〜95wt%のMgOである。酸化マグネシウムの少なくとも5wt%、さらに好ましくは8wt%は、CaO,Al,SiOおよびFeの化合物の1種または2種以上であることができる。原料の純度が上がり、従って焼成される媒体のコストにおける不必要な増加を生じると、MgOのコストが上昇するので、95wt%のMgOより高い酸化マグネシウムの源の使用は、可能であるが好ましくない。
【0019】
ボールクレイの好ましい源は、25〜35wt%のAl含有量、2wt%未満のMgO含有量、および約0.4μmのメジアン粒径を有する。ベントナイトの好ましい源は、約21wt%のAl含有量および4%未満のMgO含有量を有する。好ましい長石は、約15μmの粒径、および長石の質量に基づいて、少なくとも9wt%のNaOおよびKOを有する。
【0020】
下記で特定される化合物のそれぞれが、以下の範囲内で存在する前提で、本発明の焼結媒体は、種々の特異的な化学的組成を有することができる:MgOは48〜78wt%であり;Alは5〜30wt%で存在し;SiOは5〜30wt%で存在し;そして他の酸化物が8wt%以下を占める。媒体の生産プロセスの効率を改善するために、処理助剤等のより少量の他の物質がまた、存在できる。任意選択的に、本発明の焼結媒体は、48〜78wt%のMgO;5〜30wt%のAl;および5〜30wt%のSiOから本質的になる。
【0021】
本発明の媒体のある性能特徴は、媒体が焼結された温度より高い温度に媒体を曝す化学処理装置中の温度に、持続してまたは短時間曝された後で、その物理的安定性を維持する媒体の能力である。物理的安定性は、本明細書中で使用される場合、以下のように決定される。第1に、媒体が1200℃〜1250℃で少なくとも2時間焼結され、そして次に22℃と本明細書中で規定される室温まで放冷された後で、媒体の見掛け体積を測定する。乾燥媒体ピクノメーターMicrometrics GeoPyc (タイプ1360)を使用して測定されるこの見掛け体積は、媒体の第1の体積と定義される。次に、1300℃〜1500℃の最高温度に、媒体を4時間加熱し、そして媒体を再び22℃まで放冷させる。次に、本明細書中で媒体の第2の体積と定義される焼結した媒体の見掛け体積を測定する。媒体の第2の体積:媒体の第1の体積の比率が、0.9:1〜1:1である場合、媒体は、熱的に安定と考えられる。好ましくは、第2の体積:第1の体積の比率は、0.95:1〜1:1である。さらに好ましくは、この比率は0.98:1〜1:1である。
【0022】
媒体の熱安定性の理由が、完全に理解されていないにもかかわらず、所望の熱安定性を達成するために有意と考えられる媒体の物理的特徴の1つは、媒体内の粒子の配置である。有意であることができる別の特徴は、酸化マグネシウムの粒径分布によって影響されると考えられる焼結した媒体の気孔率である。媒体の気孔率は、ASTM C373−88(Reapproved 1999)を使用して決定される。好ましくは、焼結した媒体の気孔率は、媒体の見掛け体積に基づいて、24%〜38%である。さらに好ましくは、気孔率は26%〜36%である。またさらに好ましくは、気孔率は28〜34%である。所望の熱安定性を達成するために重要と考えられている媒体の別の物理的特徴は、焼結した媒体の結晶相である。本発明の熱的に安定な媒体のX線回折分析は、媒体の主相がMgOであることを示す。媒体の副相は、フォルステライト、スピネルおよびカルシウムマグネシウムシリケートといった結晶相の1種または2種以上であってもよい。
【実施例】
【0023】
例1
本発明の媒体の熱安定性を具体的に示すために、ディスク状の媒体の幾つかのサンプルを調製し、そして以下のように評価した。原料の化学的および物理的パラメーターを、下記の1Aおよび1Bに示す。第1に、表1Aに示す化学分析、及び表1Bに示す粒径分布を有する66部の重焼酸化マグネシウムとともに、同一の化学分析を有するが異なる粒径分布(表1Bを参照)を有する10部の酸化マグネシウム、および表1Aに化学分析を示し、表1Bに示すような粒径分布を有する、第1の市販されているクレイと、第2の市販されているクレイのそれぞれ12部の原料を秤量することによって、混合物を調製した。粉末が均質に混合されるまで、これらの乾燥粉末を高強度の混合機内で乾燥混合した。幾つかの9グラム量のこの混合物を次に、6,900N/mの圧力で、2.54cm直径のスチールダイで、それぞれプレスした。ディスク状サンプルを次に、1225℃で3時間焼成した。サンプルを次に冷まし、そして秤量スケール、および体積を測定するためにMicromeritics GeoPyc(タイプ1360)からの乾燥媒体ピクノメーターを使用して密度を決定した。ディスクの体積は、本明細書中では、ディスクの第1の体積と定義される。1225℃まで焼成し、そして次に室温まで冷ました後のサンプルの平均密度は、2.265g/ccであった。同じサンプルを1375℃で3時間再加熱し、そして次に22℃まで冷まし、質量および体積を測定し、そして平均密度は、2.29g/ccであった。1375℃まで加熱し、そして次に冷ました後のディスクの体積は、本明細書中ではディスクの第2の体積と定義される。サンプルの質量は変化しなかったので、第2の体積:第1の体積の比率は、0.99:1であった。
【0024】
表1A
【表1】

【0025】
表1B
【表2】

*wt%で粒径分布を示す
【0026】
例2
押し出し加工によって所望の形に媒体を形成するための、適切な一貫性を有する混合物を作るために、混合物の16wt%を占める水を乾燥成分に加えた以外は、例1中の調合を使用して追加の例を行った。プレスまたはスリップキャスト等の他の成形プロセスの使用もまた可能である。媒体の特有の形を、図3に示された媒体と比較した。媒体の寸法は、長さ42mm、幅28mm、厚さ12mmおよび壁の厚さ4.5mmであった。押し出されたサンプルを1235℃で焼成し、室温まで冷まし、そして密度を2.23g/ccと決定した。媒体の第1の体積は6.50ccであった。媒体の気孔率は32%であった。幾つかのサンプルを1316℃に加熱し、媒体の上に位置する同一の範囲に、5時間、33.0kg荷重をかけた耐熱性匣鉢内に配置した。媒体を冷ました後の媒体の検査は、媒体が変形もしていないし、また共に溶融していないことを明らかにした。媒体の密度は2.28g/ccであり、そして第2の体積は6.36ccであった。第2の体積:第1の体積の比率は0.98:1であった。
【0027】
例3
例2中に記載された約1320kgの媒体を製造し、そして1215℃の最大焼成温度を有する窯中で焼結した。媒体をX線回折で特徴付け、そして主相はMgOであった。存在した副相は、フォルステライト、スピネルおよびカルシウムマグネシウムシリケートを含んでいた。1400℃で10時間、または1510℃で10時間、または1316℃で数日間再加熱した群に、媒体を分けた。冷ました後で媒体を調べると、媒体は、再加熱の間に変形せず、また共に溶融しなかったことを明らかにした。媒体は物理的に異なっており、そして道具または過度の手の力の使用なしで互いに容易に分離できた。
【0028】
例4および例5
例4および例5は、酸化マグネシウム系原料、および既発行文献から得られた以下の調合を使用して作製された従来のディスク状の熱的不安定媒体を示すデータを提供することによって、請求項の発明の独自の熱安定性を具体的に示す比較例である。ディスク状サンプルを例1に記載された技術を使用して作製した。X線蛍光による媒体の分析は、以下の組成を明らかにした。
【0029】
表2
【表3】

例4中で使用される原料の粒径分布を表3に示す。
【0030】
表3
【表4】

*wt%での粒径分布を示す。
【0031】
例4中の調合によって作製されたディスクを1235℃で焼成し、そしてディスクの第1の体積が測定できるように冷ました。ディスクを1400℃で再加熱し、そして次にディスクの第2の体積が測定できるように冷ました。1400℃への加熱後のディスクの体積の減少により、第2の体積:第1の体積の比率は、0.66:1であった。体積の著しい減少の理由は、例1中で使用される原料より緻密な粒径を有する原料の使用によると考えられる。
【0032】
例5の調合によって作製されたディスクを1235℃で焼成し、そして次に上記の手順を使用して1400℃に加熱した。ディスクの第1のおよび第2の体積を測定した。第2の体積:第1の体積の比率は、0.73:1であった。例5中で使用される原料の化学調合および粒径分布を下の表4に示す。
【0033】
表4
【表5】

【0034】
*wt%での粒径分布を示す。
上記記載は、好ましい態様のみの記載と考える。本発明の改変は、当業者および本発明をしもしくは使用するものに起こるであろう。したがって、図および上記に示された態様は、単に具体的に説明する目的だけであり、そして特許法の原理によって解釈される以下の請求項によって規定される本発明の範囲を制限することを目的としないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、第1の方向のガス流を有する熱酸化器の簡易断面図である;
【図2】図2は、第2の方向のガス流を有する熱酸化器の簡易断面図である;
【図3】図3は、熱酸化器中で使用されるセラミック媒体の典型的な形を示す;そして、
【図4】図4は、本発明の一態様の媒体を生成するために使用される工程ステップを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)MgOが媒体の48〜78wt%である、MgOと、
(b)SiOが該媒体の5〜30wt%である、SiOと、
(c)Alが該媒体の5〜30wt%である、Alと、
含んで成り、
(d)該媒体の見掛け体積に基づいて、該媒体が24%〜38%の多孔質であり、そしてX線回折分析により決定される、該媒体の主相がMgOである、
セラミック媒体。
【請求項2】
該媒体が、該媒体を低くても1200℃へ加熱した後であるが、該媒体を1250℃より上へ加熱する前の、22℃での該媒体の体積に相当する第1の体積、該媒体を低くても1300℃、しかし1500℃未満に加熱した後の、22℃での該媒体の体積に相当する第2の体積を有し、該第2の体積:該第1の体積の比率が、0.9:1〜1:1である、請求項1のセラミック媒体。
【請求項3】
該第2の体積:該第1の体積の比率が、0.95:1〜1:1である、請求項2のセラミック媒体。
【請求項4】
該第2の体積:該第1の体積の比率が、0.98:1〜1:1である、請求項2のセラミック媒体。
【請求項5】
該第1の体積が、該媒体を低くても1210℃に加熱した後であるが、該媒体を1240℃より上に加熱する前の、22℃での該媒体の体積に相当する、請求項2のセラミック媒体。
【請求項6】
該第2の体積が、該媒体を低くても1300℃、しかし1500℃未満に少なくとも4時間加熱した後の、22℃での該媒体の体積に相当する、請求項5のセラミック媒体。
【請求項7】
該第1の体積が、該媒体を低くても1200℃、しかし1250℃未満に少なくとも2時間加熱した後の、22℃での該媒体の体積に相当する、請求項2のセラミック媒体。
【請求項8】
該第2の体積が、低くても1400℃、しかし1500℃未満に少なくとも4時間加熱した後の、22℃での該媒体の体積に相当する、請求項6のセラミック媒体。
【請求項9】
該媒体が、28%〜34%多孔質である、請求項1のセラミック媒体。
【請求項10】
該媒体が、フォルステライト、スピネルおよびカルシウム−マグネシウム−シリケートからなる群から選択される少なくとも1種の副相を含む、請求項1のセラミック媒体。
【請求項11】
(a)酸化マグネシウム、ボールクレイ、ベントナイトおよび長石を含む原料の混合物を用意すること、
該酸化マグネシウムは微粒子形態であり、そして少なくとも45wt%の該粒子は、
30〜250μmである;
(b)複数の3次元媒体に該混合物を形成すること;および、
(c)1200℃超、且つ1250℃未満の焼成温度に該媒体を加熱すること、
該焼結した媒体は、該媒体の見掛け体積に基づいて、24%超且つ38%未満の気孔
率を有し、そしてX線回折分析により決定される該媒体の主相はMgOである;
を含んで成るセラミック媒体の製造方法。
【請求項12】
少なくとも30wt%の該酸化マグネシウム粒子が、30μmより小さい、請求項11の方法。
【請求項13】
少なくとも25wt%の該酸化マグネシウム粒子が、250μmより大きい、請求項11の方法。
【請求項14】
該気孔率が、該媒体の見掛け体積に基づいて、26%超且つ36%未満である、請求項11の方法。
【請求項15】
該ボールクレイが、25wt%超且つ35wt%未満のAl含有量を有する、請求項11の方法。
【請求項16】
該ボールクレイが、2wt%未満のMgO含有量を有する、請求項15の方法。
【請求項17】
該ボールクレイが、約0.4μmのメジアン粒径を有する、請求項16の方法。
【請求項18】
該ベントナイトが、4wt%未満のMgO含有量を有する、請求項11の方法。
【請求項19】
該長石が、約15μmの粒径を有する、請求項11の方法。
【請求項20】
媒体を低くても1200℃に加熱した後であるが、該媒体を1250℃より上に加熱する前の、22℃での該媒体の見掛け体積に相当する第1の体積、および該媒体を低くても1300℃、しかし1500℃より低い温度に加熱した後の、22℃での該媒体の見掛け体積に相当する第2の体積を有し、第2の体積:第1の体積の比率が0.9:1〜1:1である、セラミック媒体。
【請求項21】
該第2の体積:該第1の体積の比率が0.95:1〜1:1、請求項20のセラミック媒体。
【請求項22】
該第2の体積:該第1の体積の比率が、0.98:1〜1:1、請求項21のセラミック媒体。
【請求項23】
該第1の体積が、該媒体を低くても1210℃に加熱した後であるが、該媒体1240℃より上に加熱する前の、22℃での該媒体の体積に相当する、請求項20のセラミック媒体。
【請求項24】
該第1の体積が、該媒体を低くても1200℃、しかし1250℃未満に、少なくとも2時間加熱した後の、該媒体の体積に相当する、請求項20のセラミック媒体。
【請求項25】
該第2の体積が、該媒体を低くても1300℃、しかし1500℃未満に、少なくとも4時間加熱した後の、22℃での該媒体の体積に相当する、請求項20のセラミック媒体。
【請求項26】
該第2の体積が、低くても1400℃、しかし1500℃未満に少なくとも4時間加熱した後の該媒体の体積に相当する、請求項25のセラミック媒体。
【請求項27】
媒体の焼結温度未満である第1の温度から、該媒体の焼結温度より少なくとも50℃高い第2の温度へ、そして次に該第1の温度に戻る該装置内における熱サイクルの後で、該媒体が物理的に異なっており、そして容易に相互から分離できる、焼結温度で生成された複数のセラミック媒体を含む、化学処理装置。
【請求項28】
該媒体の焼結温度が、1200℃超且つ1250℃未満である、請求項27の化学処理装置。
【請求項29】
該第2の温度が、低くても1300℃である、請求項27の化学処理装置。
【請求項30】
該第2の温度が、低くても1400℃である、請求項27の化学処理装置。
【請求項31】
該媒体の焼結温度と、該第2の温度との差が少なくとも75℃である、請求項27の化学処理装置。
【請求項32】
該媒体の焼結温度と、該第2の温度との差が、少なくとも100℃である、請求項27の化学処理装置。
【請求項33】
該媒体の焼結温度と、該第2の温度との差が、少なくとも150℃である、請求項27の化学処理装置。
【請求項34】
該媒体の焼結温度と、該第2の温度との差が、少なくとも200℃である、請求項27の化学処理装置。
【請求項35】
該媒体の焼結温度と、該第2の温度との差が、少なくとも250℃である、請求項27の化学処理装置。
【請求項36】
該装置が、無炎熱酸化器である、請求項27の化学処理装置。
【請求項37】
該装置が、再生熱酸化器である、請求項27の化学処理装置。
【請求項38】
該媒体が、48〜78wt%のMgOを含む、請求項27の化学処理装置。
【請求項39】
該媒体がSiOを含み、該SiOが該媒体の5〜30wt%である、請求項38の化学処理装置。
【請求項40】
該媒体がAlを含み、該Alが該媒体の5〜30wt%である、請求項39の化学処理装置。
【請求項41】
該媒体の気孔率が、該媒体の見掛け体積に基づいて24%〜38%である、請求項40の化学処理装置。
【請求項42】
X線回折分析により決定される該媒体の主相が、MgOである、請求項41の化学処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2009−522204(P2009−522204A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549547(P2008−549547)
【出願日】平成19年1月3日(2007.1.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/000101
【国際公開番号】WO2007/081718
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(593150863)サン−ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド (139)
【Fターム(参考)】