説明

高温用グラウト組成物

【課題】混練したグラウト組成物の材料温度が40℃以上の高温の場合においても30分以上の可使時間をもち、優れた流動性を備えた高温用グラウト組成物を提供する。
【解決手段】セメント、増粘剤及びポリカルボン酸系減水剤を含有する高温用グラウト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温用グラウト組成物に関し、詳しくは、混練したグラウト組成物の材料温度が40℃以上の高温の場合においても、30分以上の可使時間があり、かつ流動性に優れた高温用グラウト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
土木・建築工事において、コンクリート構造物の細かい空隙、トンネルの履行背面と地山との間の空隙、鉄筋スリープ内の空隙、逆打ち工法における空隙、構造物の補修及び補強、ロックアンカー及びアースアンカー、橋梁支承及び機械のベースプレート下、軌道庄板下などへモルタルやセメントペーストを充填するグラウト工事が行われており、各種のグラウト材が開発されている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
一般に、グラウト材の練り上がり温度が30℃以上となるような高温の場合、練り上がり後流動性を失うことが早いことが知られている。そこで、夏場等で材料温度が30℃を超えるような使用条件においてもフローダウンの少ないセメント組成物が提案されている(例えば特許文献3参照)。また、30℃を超える高温下での流動性の経時変化を防止するセメント分散剤も提案されている(例えば特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平9−263438号公報
【特許文献2】特開平10−95652号公報
【特許文献3】特開平11−79816号公報
【特許文献4】特開2002−167257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、混練したグラウト組成物の材料温度が40℃以上と高温の場合においては、20〜30℃程度の場合と比べて経時による混練したグラウト組成物の流動性の低下がより大きくなる。流動性の低下が大きい場合は施工不可能ということにもつながることから大きな問題となる。
【0005】
本発明は、混練したグラウト組成物の材料温度が40℃以上の高温の場合においても30分以上の可使時間をもち、優れた流動性を備えた高温用グラウト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、40℃以上の高温条件下での流動性の経時変化と配合成分との関係について検討したところ、セメントに加えて、全く意外にもポリカルボン酸系減水剤、特に短時間で流動性を消失させる短時間型ポリカルボン酸系減水剤と増粘剤とを併用すれば、40℃以上の高温の場合においても30分以上の可使時間を有し、優れた流動性を備えたグラウト組成物が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、セメント、増粘剤及びポリカルボン酸系減水剤を含有する高温用グラウト組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、混練したグラウト組成物の材料温度が40℃以上と高温の場合においても30分以上の可使時間をもち、優れた流動性を備えた高温用グラウト組成物が得られる。また、硬化後の圧縮強度が材齢28日で90N/mm2以上と高い、高温用グラウト組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、セメント、増粘剤及びポリカルボン酸系減水剤を含有する高温用グラウト組成物である。
通常、グラウト組成物には、減水剤としてポリカルボン酸系減水剤の他に、ナフタレンスルホン酸系減水剤、メラミンスルホン酸系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤等が用いられるが、本発明者の検討の結果、高温条件下では、これらポリカルボン酸系減水剤以外の減水剤では良好な流動性が得られず、高温グラウト組成物においてはポリカルボン酸系減水剤のみが良好な流動性を示すことが判明した。ポリカルボン酸系減水剤には、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤及び流動化剤が含まれる。
【0010】
ポリカルボン酸系減水剤としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリオキシアルキレン修飾ポリアクリル酸及びポリオキシアルキレン修飾ポリメタクリル酸から選ばれる構成単位を有する減水剤が好ましい。
【0011】
ポリカルボン酸系減水剤が、短時間型ポリカルボン酸系減水剤を含有するものであるのが特に好ましい。本発明において、短時間型ポリカルボン酸系減水剤とは、60℃に調整した、普通ポルトランドセメント4000g、水1216g及び当該減水剤4gを、内径180mm、深さ210mmの金属性容器内に全材料投入後に、回転数1000r.p.m.,羽根直径100mmのハンドミキサで120秒間練り混ぜた直後にJIS R 5201「セメントの物理試験方法」11.フロー試験に準じてフローコーンに混練したセメントペーストを流し込んだ後にフローコーンを取り去り落下運動を行わずにフロー値(以下、「JIS静置フロー値」という。)を測定することができるが、その後、グラウトを内径130mm,深さ200mmのポリ容器に移し変え、60℃で静置し、注水から30分間後のJIS静置フロー値が、流動性がないために測定できないポリカルボン酸系減水剤をいう。また、本発明において長時間型ポリカルボン酸系減水剤とは、同様の試験により、混練直後も注水から30分後もJIS静置フロー値が測定できる、即ち流動性があるポリカルボン酸系減水剤をいう。注水から30分後のJIS静置フロー値測定前はハンドミキサで10秒攪拌した。
【0012】
本発明に使用する減水剤の種類としては、高性能減水剤又は高性能AE減水剤が、高い強度が得られることから望ましい。また、本発明で使用されるポリカルボン酸系減水剤は、粉末状でも水溶液状でも使用可能であるが、施工現場で複雑な計量操作等を必要とせずに、所定量の水を計量し混練するだけですぐに使用できるように、本発明の高温用グラウト組成物が配合成分のすべてが予め混合され粉末状である所謂「プレミックス製品」であるほうが施工現場での作業性が良い為、使用するポリカルボン酸系減水剤自体も粉末状であることが好ましい。
【0013】
本発明の高温用グラウト組成物におけるポリカルボン酸系減水剤の含有量は、0.1重量%〜1.0重量%とすることが望ましい。0.1重量%未満では減水剤を含有させる効果が低く可使時間即ち流動性を有する時間が短過ぎる虞があり、1.0重量%を超えると過剰添加によって材料分離が生じる虞がある。可使時間を長くでき且つ材料分離が生じる虞が小さいことから、より好ましくは、0.15重量%〜0.4重量%、もっとも好ましくは、0.25重量%〜0.35重量%とする。
【0014】
本発明に使用するポリカルボン酸系減水剤は二種類以上を併用することが可能である。しかし、長時間型ポリカルボン酸系減水剤のみの場合はブリーディング量が多くなるので、本発明においては、短時間型ポリカルボン酸系減水剤を一種類又は二種類以上含有することが、ブリーディングを少なくすることができることから好ましい。
【0015】
本発明で使用するセメントとしては、水硬性セメントであれば使用でき、例えばポルトランドセメント、アルミナセメント、混合セメント等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができるが、ブレーン比表面積が3600g/cm2以上のポルトランドセメントを使用することが、ブリーディングの発生を抑制できることから望ましい。ブレーン比表面積が3600g/cm2以下の場合は、ブリーディングが発生する虞が高い。より好ましくは、ブレーン比表面積が3600g/cm2〜10000g/cm2のポルトランドセメントを使用することが、ブリーディングの発生を抑制でき且つ可使時間が長くできることから好ましい。
【0016】
本発明の高温用グラウト組成物におけるセメントの含有量は、本発明の高温用グラウト組成物が骨材を含有しない場合は、85.0重量%〜99.5重量%とすることが望ましい。セメントの含有量が少なすぎると圧縮強度が低くなる虞があり、多すぎるとセメント以外の構成材料が不足するので可使時間が不充分となる虞がある。また、本発明の高温用グラウト組成物が骨材を含有する場合のセメントの含有率は、同様の理由で、45重量%〜90重量%とすることが望ましい。
【0017】
本発明で使用する増粘剤としては、例えばヒドロキシメチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性セルロース;アルギン酸、β−1,3グルカン、プルラン、ウェランガム等の多糖類;アクリル樹脂やポリビニルアルコール等のポリビニル化合物等が挙げられ、これらの一種又は二種以上の使用が可能であるが、凝結遅延の影響があまりない程度の少量で、材料分離することなく高い流動性が得やすいことから、水溶性セルロースが好ましい。
【0018】
本発明の高温用グラウト組成物における増粘剤の含有率は、0.01重量%〜0.1重量%とすることが好ましい。増粘剤の含有量が少なすぎると、増粘剤を含有させる効果が低く、増粘剤の含有率が多くなると粘性が増加して流動性の低下を招く虞があることから、増粘剤のより好ましい含有率は、0.03重量%〜0.06重量%である。
【0019】
本発明の高温用グラウト組成物には、ブリーディングの発生を抑制するために膨張材を含有することが好ましい。特に、本発明の超高温用グラウト組成物に骨材を用いない場合は、骨材を含有するものに比べて硬化時及び乾燥時の収縮が大きいので、収縮を抑制するためにも膨張材を用いることが好ましい。
【0020】
本発明に用いられる膨張材としては、モルタルやコンクリートで用いられる膨張材であれば特に限定されず、例えば遊離生石灰を膨張成分とするものや、カルシウムサルホアルミネート等のエトリンガイト形成物質を膨張成分とする市販品を使用することができる。膨張材の含有量は0.1重量%〜1.0重量%とすることが好ましい。膨張材の含有量が少ないとその効果が不充分である場合があり、また、多すぎると充分に拘束されたまま養生されないと目的の強度が得られなくなる場合がある。
【0021】
本発明の高温用グラウト組成物には、セメント、増粘剤、ポリカルボン酸系減水剤及び膨張材以外に、上記以外の混和材料の一種又は二種以上を本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。この混和材料としては、例えばセメント用ポリマー、発泡剤、起泡材、防水材、防錆材、収縮低減剤、保水剤、顔料、繊維、撥水剤、白華防止剤、急結剤(材)、急硬材(材)、凝結遅延剤、水和熱抑制剤、消泡剤、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、石粉、シリカフューム、火山灰、撥水剤、表面硬化剤等が挙げられる。
【0022】
本発明の高温用グラウト組成物に、モルタルやコンクリートで使用可能な細骨材及び粗骨材の一種又は二種以上を本発明の効果を損なわない範囲で使用することも可能である。
【0023】
本発明の高温用グラウト組成物を製造する方法は、特に限定されず、例えば、重力式コンクリートミキサ、ヘンシェル式ミキサ、ナウターミキサ、レーディゲミキサ、V型混合器、リボンミキサ等のミキサを使用し、所定量の本発明の高温用グラウト組成物の各材料を混合することで製造することができる。このとき用いるミキサは、連続式ミキサでもバッチ式ミキサでも良い。各材料のミキサ内への投入順序は特に限定されない。一種ずつ添加してもよく、一部又は全部を同時添加してもよい。また、袋やポリエチレン製容器等の容器に各材料を計り取り投入する方法により、本発明の高温用グラウト組成物を製造することもできる。
【0024】
本発明の高温用グラウト組成物は、水を混練に用いる。混練する方法は特に限定されず、例えば水に本発明の高温用グラウト組成物を全量加え混練する方法、水に本発明の高温用グラウト組成物を混練しながら加えさらに混練する方法、本発明の高温用グラウト組成物に水を混練しながら加えさらに混練する方法、水及び本発明の高温用グラウト組成物のそれぞれ一部ずつを2つ以上に分けて混練し、混練したものを合わせてさらに混練する方法等がある。また、混練に用いる器具や混練装置も特に限定されないが、ミキサを用いることが量を多く混練できるので好ましい。用いることのできるミキサとしては連続式ミキサでもバッチ式ミキサでも良く、例えばパン型コンクリートミキサ、パグミル型コンクリートミキサ、重力式コンクリートミキサ、グラウトミキサ、ハンドミキサ、左官ミキサ等が挙げられる。
【0025】
使用する水は、特に限定されるものではない。混和材料に含まれる水を用いてもよい。用いる水の量は、本発明の高温用グラウト組成物に骨材が含まれない場合は、本発明の高温用グラウト組成物100重量部に対し、25重量部〜40重量部が好ましく、28重量部〜36重量部がさらに好ましい。25重量部未満では流動性が得られにくく、40重量部を超えると材料分離によりブリーディングが発生する虞や強度が低下する虞がある。
また、本発明の高温用グラウト組成物が骨材を含有する場合に用いる水の量は、本発明の高温用グラウト組成物100重量部に対し、15重量部〜25重量部であると、ブリーディングが少なく且つ硬化後の圧縮強度が材齢28日で90N/mm2以上と高くなることから好ましい。
また、セメント100重量部に対し25重量部〜40重量部とすると、土木学会基準JSCE−F 541「充填モルタルの流動性試験方法」に規定されるフロータイム(J14漏斗流下時間)が4秒〜8秒の高い流動性が得られ且つ硬化後の圧縮強度が材齢28日で90N/mm2以上と高いことから好ましい。
【実施例】
【0026】
実施例1
ここで使用するポリカルボン酸系減水剤(減水剤A〜減水剤C)は、表1に示す3種類のポリカルボン酸系減水剤を用いた。尚、この3種類の減水剤は市販されているポリカルボン酸系減水剤である。具体的な試験方法について以下に示す。
【0027】
表1に示す配合量の材料を60℃に調整し、内径180mm、深さ210mmの金属性容器内で全材料投入後、回転数1000r.p.m.、羽根直径100mmのハンドミキサで120秒間練り混ぜセメントペーストを作製した直後にJIS静置フロー値を測定した。測定後、作製したセメントペーストを内径130mm、深さ200mmのポリ容器に移し変え、60℃で静置し、その後、注水から30分間後のJIS静置フロー値も測定した。この30分後のJIS静置フロー値測定前にはハンドミキサでセメントペーストを10秒攪拌した。ここで、減水剤A及び減水剤Bは、注水から30分後のJIS静置フロー値が測定できない(流動性がない)短時間型ポリカルボン酸系減水剤で、減水剤Cは、同様の試験方法により30分後もJIS静置フローが測定できる(流動性がある)長時間型ポリカルボン酸系減水剤であった。
【0028】
【表1】

【0029】
実施例2
表2及び表3に示す配合割合で各水準4kgのグラウト組成物を作製した。このときの使用材料を以下に示す。グラウト組成物の作製方法は、作製するグラウト組成物の質量が4kgとなる量の表2及び表3に示す割合の各材料を、ポリ袋(縦650mm×横350mm×厚さ0.1mm)に投入し、密閉した後に60秒間手で振り、各材料を混合することでグラウト組成物を作製した。
作製したグラウト組成物100重量部に対し30.4重量部となる量の水(1.216kg)を、内径240mm,深さ245mmのステンレス製円筒容器に入れ、回転数1000r.p.m.,羽根直径100mmのハンドミキサを羽根が水に接する状態で回転させながらグラウト組成物を容器内に投入した。続けて投入完了後から120秒間ハンドミキサにより混練することでグラウトを作製した。作製したグラウトの品質試験として、以下に示す通り、J14漏斗流下時間、圧縮強度を測定し、ブリーディングの有無を確認した。但し、配合No.7の水量はグラウト組成物100重量部に対し28.5重量部となる量の水(1.140kg)とした。なお、グラウト組成物及び水の温度は60℃とし、練り混ぜ及び供試体の作成は30℃で行い、供試体の作成後、養生は60℃で行った。品質試験の結果を表4及び表5に示す。
【0030】
<使用材料>
セメントA:普通ポルトランドセメント(ブレーン比表面積3300g/cm2);太平洋セメント社製
セメントD:早強ポルトランドセメント(ブレーン比表面積4400g/cm2);太平洋セメント社製
セメントB:セメントA:セメントD=7:3の質量比率で混合したもの(ブレーン比表面積3600g/cm2
セメントC:セメントA:セメントD=5:5の質量比率で混合したもの(ブレーン比表面積3800g/cm2
水:水道水
膨張材:石灰系膨張材(太平洋マテリアル株式会社製,ブレーン比表面積4250g/cm2
減水剤A:短時間型ポリカルボン酸系高性能減水剤 市販品
減水剤B:短時間型ポリカルボン酸系高性能減水剤 市販品
減水剤C:長時間型ポリカルボン酸系高性能減水剤 市販品
減水剤D:メラミンスルホン酸系高性能減水剤 市販品
減水剤E:ナフタレンスルホン酸系高性能減水剤 市販品
減水剤F:リグニンスルホン酸系高性能減水剤 市販品
【0031】
<品質試験方法>
・J14漏斗流下時間
土木学会基準JSCE−F 541「充填モルタルの流動性試験方法」に従い、J14漏斗を用いて練り混ぜ直後及び注水から30分後に流下時間を測定した。尚、30分後に測定する前は10秒間ハンドミキサで攪拌した。
・圧縮強度試験
土木学会基準JSCE−G 541「充填モルタルの圧縮強度試験方法」に準じ、材齢28日の圧縮強度を測定した。このとき供試体は、材齢1日で脱型し、その後60℃の水中で養生した。
・ブリーディングの有無
作製したグラウトを内径105mm,深さ110mmのポリ容器に入れ、ラップで密封し、60℃の乾燥機に入れ、練り混ぜ終了直後〜注水から2時間後まで目視でブリーディングの有無を確認した。ポリ容器が水平な状態でもポリ容器を静かに傾けてもブリーディングが認められないものを◎、ポリ容器が水平な状態ではブリーディングは認められないがポリ容器を静かに傾けた場合にブリーディングが少量でも認められるものは○、ポリ容器が水平な状態でもブリーディングが認められるものを×とした。
【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【0035】
【表5】

【0036】
本発明の実施例に相当する配合No.1〜No.7のグラウト組成物は何れも注水から30分後でも優れた流動性を備え、硬化後の圧縮強度が材齢28日で90N/mm2以上と高い硬化特性を備えていた。中でも配合No.1〜No.4のグラウト組成物はブリーディングが確認されなかったが、配合No.5〜No.7はポリ容器を静かに傾けると少量のブリーディングが確認され為、配合No.1〜No.4に比べてやや材料分離抵抗性に劣っていた。
【0037】
比較例に相当する配合No.8〜No.10のグラウト組成物はハンドミキサで練混ぜることが不可能で、流動性もまったくなかった。その為、圧縮強度とブリーディングの試験は行わなかった。また、配合No.11のグラウト組成物は増粘剤を抜いた配合であり、ポリ容器が水平な状態でも1cm以上の深さのブリーディング水の層が認められ、ブリーディング量も多く、材料分離が著しかった。
【0038】
減水剤Aを1.5重量%とし、セメントを98.22重量%とする以外はNo.1と同様の配合としたグラウト組成物について、グラウト組成物100重量部に対し25.0重量部となる量の水(1.000kg)で上記の試験を行ったところ、水平な状態でも約2mmのブリーディングがみられ、材料分離抵抗性は低かった。このときのJ14漏斗流下時間は練り混ぜ直後で3.9秒、30分後で4.2秒であり、練り混ぜ直後のグラウト温度は52℃であった。また、減水剤Aを0.05重量%とし、セメントを99.67重量%とする以外はNo.1と同様の配合としたグラウト組成物について、グラウト組成物100重量部に対し35.8重量部となる量の水(1.430kg)で上記の試験を行ったところ、材料分離抵抗性に優れ、上記のブリーディングの評価では◎に相当し、練り混ぜ直後のグラウト温度は52℃であった。また、このときのJ14漏斗流下時間は練り混ぜ直後で6.6秒、30分後で14.3秒であった。しかし、この配合のグラウトは、練り混ぜ終了5分後にハンドミキサによる撹拌(練り返し)を行わないとJ14漏斗流下時間の測定ができない程度に流動性が低下した。しかし、練り混ぜ終了5分後における練り返しを行ったときのJ14漏斗流下時間は8.9秒であった。配合No.1〜7のグラウトは、練り返しを行わなくても練り混ぜ終了5分後でもJ14漏斗流下時間は測定可能で、流動性の低下防止の点で優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の高温用グラウト組成物を使用することにより、材料温度が40℃以上と超高温であっても優れた流動性を示し、30分の可使時間も得られ、熱帯地域や日中の砂漠地域などの材料温度が40℃以上の高温となる環境下においても、各種充填材等に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、増粘剤及びポリカルボン酸系減水剤を含有する高温用グラウト組成物。
【請求項2】
ポリカルボン酸系減水剤が短時間型ポリカルボン酸系減水剤を含むものである請求項1に記載の高温用グラウト組成物。
【請求項3】
ポリカルボン酸系減水剤の含有量が0.1重量%〜1.0重量%である請求項1又は2記載の高温用グラウト組成物。
【請求項4】
セメントが、ブレーン比表面積が3600g/cm2以上のポルトランドセメントである請求項1〜3の何れか1項記載の高温用グラウト組成物。
【請求項5】
増粘剤が水溶性セルロースである請求項1〜4の何れか1項記載の高温用グラウト組成物。
【請求項6】
さらに、膨張材を含有する請求項1〜4の何れか1項記載の高温用グラウト組成物。

【公開番号】特開2010−100457(P2010−100457A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271479(P2008−271479)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】