説明

高溶融強度ポリエチレン組成物及び同組成物を製造する方法

本発明はポリエチレン樹脂の溶融強度を増加させるための方法であって、前記ポリエチレン樹脂を−50kJ/molから−250kJ/molの間の分解エネルギー及び280℃未満のピーク分解温度を備えるフリーラジカル発生剤と反応させる工程を含む方法である。結果として生じる樹脂は、フリーラジカル発生剤、例えばアルコキシアミン誘導体と反応させられていない実質的に類似のポリエチレン樹脂と比較した場合に、0.1から100rad/sでより高い伸長粘度比を備える増加した溶融強度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年1月11日に出願された米国特許出願第12/685,148号からの優先権を主張するものであり、上記特許出願の開示は米国実務のために参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景および概要
ポリエチレン樹脂は、フィルム又はブロー成形製品を形成するための十分な溶融強度、優れた物理的特性、容易な加工処理を必要とする多数の用途において使用される。線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、極めて望ましい物理的特性を有するが、ほとんどが特定のフィルム用途、例えば大気泡フィルム又はブロー成形用途、パイプ用途及び押出コーティング用途において使用するために十分な溶融強度が欠如する。同様に高密度ポリエチレン(HDPE)は、溶融強度に関してLLDPEと同一の欠点を有する。高圧フリーラジカル法によって製造される低密度ポリエチレン(LDPE)は、有意に高い溶融強度を有するが、良好な機械的特性が欠如するという欠点を有する。数多くの用途では、LLDPE又はHDPEとLDPEとのブレンドが使用される。それらのブレンドはより高い溶融強度を有するが、ほんの少量のLDPE、例えば10から20%のLDPEの添加さえ、機械的特性、例えば引裂き抵抗及び落槍衝撃抵抗における有意な低下を誘発する。LDPEの場合においてさえ、より高い溶融強度が極めて有益な領域、例えば押出コーティング又はコレーションシュリンクなどがある。
【0003】
経済的及び制御された様式で、わずかなコスト増加によって、必要とされる溶融強度の増大を付与できることに対する大きなニーズがある。そのような改良は、全用途にわたるポリエチレン樹脂の使用を強化する。
【0004】
ポリエチレンは、最大量のポリマーを製造することを可能にするために役立ってきた望ましい特性を有する。ポリエチレンは、様々な特性を与えるために様々な方法で製造することができる。ポリエチレンの公知のファミリーには、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び高圧反応器を用いて製造される低密度ポリエチレン(LDPE)が含まれる。これらの広範囲のクラス内には、様々なタイプのポリオレフィン製造技術(例えば、溶液、スラリー若しくは気相)又は様々な触媒(例えば、チーグラー・ナッタ若しくは束縛構造触媒)を使用した結果として生じる多数の変形が存在する。所望の用途はレオロジー特性の注意深い平衡を必要とし、これによって当業者は他のタイプに比較して1つのタイプのポリエチレンを選択できるようになる。多数の用途、例えばブロー成形及びインフレーションフィルム用途では、ポリエチレンの溶融強度が重要なパラメータである。
【0005】
溶融強度は、伸長における材料の性能を予測できる実際的測定値である。溶融加工では、優れた溶融強度は、加工中、例えばコーティング、インフレーションフィルム製造、紡糸及び発泡部品などの加工中に安定性を維持するために重要である。溶融強度は、数種の加工パラメータ、例えば気泡安定性ひいてはインフレーションフィルム製造中の膜厚変動、ブロー成形中のパリソン形成、プロファイル押出中のたるみ、発泡中のセル形成、シート/フィルム熱成形中のより安定な膜厚分布に関連している。
【0006】
この特性は、より高分子量を備える樹脂を使用することによって強化できるが、そのような樹脂は、一般にはより頑丈な装置及びより多くのエネルギー使用を必要とし、それはそのような樹脂が押出プロセス中により高い押出圧力を生成する傾向を示すからである。このため、物理的特性及び加工性の許容される組み合わせを提供するために、特性のバランスは保たれなければならない。
【0007】
厚膜用途では、LDPE及びLLDPEのブレンドが加工性(押出機の電流及び電圧)とフィルムの機械的特性とのバランスを取るために使用される。このブレンドでは、LDPE成分は加工性成分であるが、他方LLDPEは機械的成分である。このため、ブレンドのLDPE部分を減少させる能力は、ブレンドの機械的特性を増加させるはずである。本発明を通して、LLDPE成分の溶融強度を増加させる能力は、ブレンド内でのより高いパーセンテージのLLDPEの使用を可能にし、従って加工性を犠牲にする、又は許容されないレベルの不溶性材料を作製することなく機械的特性を増加させる。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、ポリエチレンの溶融強度を増加させるための新規な方法であって、溶融ポリエチレンを特定フリーラジカル発生剤と特定ピーク分解温度及び分解エネルギーを用いて通常の押出加工によって反応させる工程を含む方法である。従って、本発明の1つの態様はポリエチレン樹脂の溶融強度を増加させるための方法であって、ASTM D792に従って決定された0.90g/cmから0.970g/cmの範囲内の密度及びASTM D1238(2.16kg、190℃)に従って決定された0.01g/10min分から30g/10minの範囲内のメルトインデックスを有するポリエチレン樹脂を最初に選択する工程と、次に該特定のフリーラジカル発生剤を該ポリエチレン樹脂と、該ポリエチレン樹脂の溶融強度を増加させるために十分な量及び条件下で反応させる工程とを含む方法である。
【0009】
本発明は、ポリエチレンの溶融強度を増加させるための新規な方法であって、溶融ポリエチレンを特定フリーラジカル発生剤と通常の押出加工によって反応させる工程を含む方法である。従って、本発明の1つの態様は、ポリエチレン樹脂の溶融強度を増加させるための方法であって、ASTM D792に従って決定された0.900g/cmから0.970g/cmの範囲内の密度及びASTM D1238(2.16kg、190℃)に従って決定された0.01g/10minから30g/10minの範囲内のメルトインデックスを有するポリエチレン樹脂を最初に選択する工程と、次に該特定のフリーラジカル発生剤を該ポリエチレン樹脂と、該ポリエチレン樹脂の溶融強度を増加させるために十分な量及び条件下で反応させる工程とを含む方法である。
【0010】
本発明は、該樹脂の溶融強度を増加させる新規な方法である。
【0011】
本発明は、良好な加工性を示す、該樹脂の粘度比を増加させる新規な方法である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
極めて広い意味において、本発明は、ポリエチレン樹脂の溶融強度を増加させるための方法である。ポリエチレン樹脂には、少なくとも50重量%がエチレンモノマー単位由来のすべてのポリマー又はポリマーブレンドが含まれる。これには当分野において公知の材料、例えば高圧反応器を用いて製造される低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)及び線状低密度ポリエチレン(LLDPE)が含まれる。
【0013】
選択されるポリエチレン樹脂は、ASTM D792に従って決定された0.900g/cmから0.970g/cm、より好ましくは0.90g/cmから0.960g/cmの範囲内の密度及びASTM D1238(2.16kg、190℃)に従って決定された0.01g/10minから30g/10min、より好ましくは0.1g/10minから15g/10minの範囲内のメルトインデックスを有していなければならない。適切なポリエチレン樹脂は、従来型チーグラー・ナッタ又はクロム触媒だけではなくメタロセン又はシングルサイト触媒も用いて製造することができる。そのような樹脂は、単峰性又は多峰性分子量分布を有することができる。
【0014】
ポリエチレン樹脂が選択されると、該ポリエチレン樹脂は、特定フリーラジカル発生剤と反応する。フリーラジカル生成剤は、必要とされる溶融強度の改良を誘発する特定の発熱分解エネルギー及びピーク分解温度の組み合わせを該フリーラジカル生成剤が有するように選択されなければならない。分解エネルギーが高すぎる場合は、ラジカルの無秩序な反応のために、該ポリエチレンの質は局所的ゲル形成に起因して低下し、本系を不適合にさせる。他方、結合エネルギーが低すぎる場合は、溶融強度における改良は、ラジカルが溶融強度改良の源である分子変化を誘発するためにポリエチレンと反応するほど十分に強力ではないために、観察されない。本発明のフリーラジカル生成剤は、少なくとも−50kJ/mol(Joules/mole)の分解エネルギーから多くとも−250kJ/molの分解エネルギーを有していなければならない。さらに、そのようなフリーラジカル発生剤は、280℃未満及びより好ましくは250℃未満のピーク分解温度を有していなければならない。
【0015】
本発明の優れた独創的な実施例は、アルコキシアミン誘導体であるがそれらに限定されない。アルコキシアミン誘導体は、ポリエチレン樹脂の溶融強度を増加させるために十分な量及び条件下で加えられる。アルコキシアミン誘導体は、式:
(R)(R)N−O−R
(式中、R及びRは、相互に独立して各々、水素、C−C42アルキル若しくはC−C42アリール又はO及び/若しくはNを含む置換炭化水素基であり、R及びRは一緒に環構造を形成でき、並びにRは、水素、炭化水素又はO及び/若しくはNを含む置換炭化水素基である)に対応する。Rのための好ましい基には、−C−C19アルキル、−C−C10アリール、−C−C19アケニル、−O−C−C19アルキル、−O−C−C10アリール、−NH−C−C19アルキル、−NH−C−C10アリール、−N−(C−C19アルキル)が含まれる。Rは、最も好ましくはアシル基を含有する。
【0016】
好ましい化合物は、ニトロキシルラジカル(R)(R)N−O又はアミニルラジカル(R)(R)Nを分解又は熱溶解後に形成することができる。
【0017】
アルコキシアミン誘導体の特に好ましい種は、以下の化学構造:
【化1】

を有する9−(アセチルオキシ)−3,8,10−トリエチル−7,8,10−トリメチル−1,5−ジオキサ−9−アザスピロ[5.5]ウンデス−3−イル]メチルオクタデカノエートである。
【0018】
本発明において使用するための一部の好ましい種の例には、以下の:
【化2】

が含まれる。
【0019】
一般には、ヒドロキシルアミンエステルは、より好ましくは1つの特に好ましいヒドロキシルアミンエステルが、9−(アセチルオキシ)−3,8,10−トリエチル−7,8,10−トリメチル−1,5−ジオキサ−9−アザスピロ[5.5]ウンデス−3−イル]メチルオクタデカノエートである。
【0020】
アルコキシアミン誘導体は、溶融強度を増加させるため、及び/又は伸長粘度を所望レベルへ増加させるために十分な量で加えられる。一般に、アルコキシアミン誘導体は、ポリエチレンポリマーの重量で1から1,000ppm、より好ましくは30から200ppmの量で加えられる。
【0021】
ポリエチレンポリマーへの添加は、ポリマーがその中で添加物と溶融及び混合される全ての慣習的混合機械内で実施することができる。適切な機械は、当業者には公知である。それらは、主としてミキサー、ニーダー及び押出機である。
【0022】
本方法は、好ましくは処理加工中に添加物を導入することによって押出機内で実施される。特に好ましい加工機械は、単軸押出機、二重反転及び共回転型二軸押出機、遊星ギア押出機、環状押出機又はコニーダーである。真空を適用できる少なくとも1つの脱気区画が備えられた加工機械を使用することも可能である。適切な押出機及びニーダーは、例えば、Handbuch der Kunststoftextrusion, Vol 1 Grundlagen, Editors F. Hensen, W. Knappe, H.Potente, 1989, pp.3-7, ISBN.3-446-14339-4 (Vol 2 Extrusionsanlagen 1986, ISBN 3-446-14329-7)に記載されている。例えば、軸長は、軸直径の1から60倍、好ましくは軸直径の35から48倍であってよい。軸の回転速度は、好ましくは10から600rpm(回転/分)、より好ましくは25から300rpmである。アルコキシアミンの場合には、最初にポリエチレン樹脂内の添加物の濃縮混合物を好ましくは1,000から10,000ppmで調製することも可能であり、次にこの濃縮液を押出機を経由して2つの材料をブレンドするために、好ましくは溶融樹脂中の1から20重量%の濃縮物を溶融ポリエチレン内に静的ミキサーを使用して導入することも可能である。アルコキシアミンのためには、濃縮液は、好ましくは180から220℃の温度で、押出機内で加工することができる。静的ミキサー内の温度は200から250℃の範囲に及び、ミキサー内の滞留時間は1から10分の範囲に及ぶ。
【0023】
最大スループットは、軸直径、回転速度及び駆動力に左右される。本発明の方法は、最大スループットより低い水準で、上記のパラメータを変動させる、又は配量用量を送達する計量機を使用することによって実施することもできる。
【0024】
複数の成分が加えられる場合は、これらは予混合する、又は個別に加えることができる。
【0025】
ポリマーは、所望の変化が特定のフリーラジカル発生剤のピーク分解に依存して発生するように、十分な期間に渡って高温に曝される必要がある。この温度は、一般にポリマーの軟化点より高い。本発明の方法のアルコキシアミンを使用する好ましい実施形態では、280℃より低い、特に約160℃から280℃の温度範囲が使用される。特に好ましい変形方法では、約200℃から270℃の温度範囲が使用される。
【0026】
反応のために必要な期間は、温度、反応させるべき材料の量及び例えば使用される押出機の型の関数として変動する可能性がある。その期間は、通常は約10秒間から20分間、特に20秒間から30分間である。
【0027】
特定フリーラジカル発生剤は、有益にもマスターバッチの使用によって混合装置へ加えることができる。当業者には理解されるように、マスターバッチのための担体樹脂は、修飾される樹脂と適合するように選択されなければならない。LDPE高圧低密度ポリエチレンポリマー(産業界では「LDPE」と呼ばれる)は、予想外にもマスターバッチ製造中の押出圧の変動が僅かであることによって証明される低反応性のために好ましい担体であることが見いだされた。HDPEは、第三級炭素を有していないためにさらに反応しにくいので、より優れた担体である可能性がある。本発明の別の利点は、ポリプロピレンが、典型的な加工温度で分解する傾向があるためにこの添加物にとっての優れた担体ではないという発見である。別の発見は、担体樹脂は、抗酸化添加物がこの添加物の活性を抑制する傾向があるので、実質的にいかなる抗酸化添加物も含んでいてはならない、好ましくは1,000ppm未満の抗酸化添加物しか有していてはならないことである。
【0028】
好ましい担体樹脂は、当面の用途と適合しなければならない。本担体樹脂は、混合される予定のポリエチレン樹脂に類似する粘度を有していなければならない。好ましい担体樹脂は、好ましくは0.07/炭素1000個未満のビニル類を備えるLDPE又はHDPE樹脂でなければならない。好ましい担体樹脂は、押出機全体の圧力低下によって証明されるように加工するのが容易であるように、50,000g/mol未満であるMn(分子量)を有していなければならない。担体樹脂は、加工助剤のための他の添加物を組み込むことができるが、実質的に抗酸化化合物を含んでいてはならず、好ましくは1,000ppm未満の任意の抗酸化化合物しか含有していてはならない。
【0029】
本ポリエチレン樹脂は、エチレンと3から12個の炭素を含有する任意のアルケンモノマーとのコポリマーであってよい。好ましくは、本ポリエチレン樹脂は、0.2から0.45ビニル/炭素1000個の範囲内のレベルのビニルを有するべきである。本ポリエチレン樹脂は、メルトインデックス(g/10min)によって測定して、該担体樹脂よりわずかに遅い分子を有するべきである。好ましくは、本ポリエチレン樹脂のメルトインデックスは、最終の所望の樹脂より20から30%高くなければならない。好ましくは、本ポリエチレン樹脂は、酸化防止助剤を全く又はほんのわずかしか含有していてはならず、あらゆる添加物は、該担体樹脂と混合される前に本樹脂中に良好に分散しているべきである。
【0030】
担体樹脂中の活性材料の量は、1から30%の範囲内、好ましくは0.2から0.5%の範囲内にあるべきである。最終生成物中の活性成分の量は、所望の溶融強度の改良を達成するために十分でなければならない。特定されたアルコキシアミンの場合には、アルコキシアミンは、10から400ppmの範囲内、好ましくは30から300ppmの範囲内でなければならない。本ポリエチレン樹脂は、抗酸化化合物を2,000ppm未満しか含有していてはならない。
【0031】
溶融強度を改良するために使用される特定のフリーラジカル発生剤の量は、特定のメルトインデックスの酸化防止剤レベルに左右されるが、最終の完成製品において溶融強度の最初に所望であった変化より大きな変化を誘発するほど過度に多くの未反応フリーラジカル発生剤を残留させないように選択されなければならない。本発明の下では、最終製品のさらなる変化を回避するための1つの方法は、この樹脂を酸化防止剤が豊富な他の樹脂と混合することである。
【0032】
本発明の一部として、本ポリエチレン樹脂は、0.4ビニル/炭素1000個より高いビニル含量を備え、及び一次酸化防止剤を含有していないLDPE樹脂であってよい。
【0033】
試験方法
溶融強度
溶融強度測定は、Gottfert Rheotester 2000キャピラリーレオメータに取り付けられたGottfert Rheotens 71.97(Goettfert社;サウスカロライナ州ロックヒル)上で実施した。溶融サンプル(約25から30グラム)は、長さ30mm、直径2.0mm及びアスペクト比(長さ/直径)15の平坦入口角(180度)を装備したGoettfert Rheotester 2000キャピラリーレオメータに供給した。サンプルを190℃で10分間にわたり平衡化させた後、ピストンを0.265mm/秒の一定ピストン速度で作動させた。標準試験温度は、190℃であった。サンプルは、2.4mm/sの加速度を用いて、ダイの100mm下方に位置する1組の加速ニップへ一軸方向に引き出された。張力をニップロールの巻取り速度の関数として記録した。溶融強度は、ストランドが破断する前のプラトー力(cN)として報告された。溶融強度測定では以下の条件を使用した:プランジャ速度=0.265mm/秒;ホイール加速度=2.4mm/s;キャピラリー径=2.0mm;キャピラリー長=30mm;及びバレル径=12mm。
【0034】
メルトインデックス
メルトインデックス若しくはI2は、ASTM D1238−10、条件(190℃/2.16kg)に従って測定し、10分間当たりに溶出したグラムで報告する。I10は、ASTM D1238、条件(190℃/10kg)に従って測定し、グラムで報告する。
【0035】
密度
密度測定のためのサンプルは、ASTM D4703−10に従って調製した。サンプルは、10,000psi(68MPa)で5分間にわたり374°F(190℃)で圧縮した。温度は5分間を超えて374°F(190℃)で維持し、次に圧力を3分間にわたり30,000psi(207MPa)へ増加させた。この後に70°F(21℃)及び30,000psi(207MPa)で1分間まで保持した。測定は、ASTM D792−08、方法Bを使用してサンプル圧縮の1時間以内に実施する。
【0036】
動的機械的分光法
樹脂は、空気中での1,500psiの圧力下で、5分間にわたり350°Fで「厚さ3mm×1インチ」の円形プラークに圧縮成形した。次にサンプルをプレス機から取り出し、冷却させるためにカウンター上に置いた。
【0037】
一定温度周波数掃引は、窒素パージ下で、25mm(直径)平行板を装備したTA Instruments社の「先進レオメトリー拡張システム(Advanced Rheometric Expansion System、ARES)」を用いて実施した。サンプルをプレート上に置き、190℃で5分間にわたり溶融させた。次にプレートを2mmの間隙に近づけ、サンプルをトリミングし(「25mm径」プレートの周囲を越えて伸長する余分なサンプルを取り除く)、次に試験を開始した。本方法は、温度平衡を可能にするために組み込まれた追加の5分間遅延を有していた。実験は、190℃で0.1から100rad/sの周波数範囲にわたって実施した。歪み振幅は、10%で一定であった。ストレス反応は、振幅及び位相によって分析し、それらから貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G’’)、複素弾性率(G)、複素粘度η、tan(δ)若しくはtanデルタ、0.1rad/sでの粘度(V0.1)、100rad/sでの粘度(V100)、及び粘度比(V0.1/V100)が計算された。
【0038】
示差走査熱量測定法(DSC)
示差走査熱量測定法(DSC)を使用して、広い温度範囲にわたって材料の熱安定性を測定することができる。例えば、RCS(低温冷却システム)を装備したTA Instruments社のQ200 DSCを使用してこの分析を実施する。0.5から2mgのサンプルをガラス製キャピラリーチューブ内に配置し、計量し、「コールドフィンガー」器具を用いて低温に維持しながら特定のヘッドスペースガスを用いてフレームシールする。次にその熱特性を決定するために分析を実施する。フリーラジカル発生剤のピーク分解温度及びそれらの分解エネルギーを分析するために、使用したサンプルサイズは、概しておよそ10から20mgである。
【0039】
サンプルの熱挙動は、熱流対温度プロファイルを作製するためにサンプルの温度を上下させることによって決定する。最初に、サンプルを迅速に所望の初期温度にさせ、次に10℃/minで所望の最終温度へ加熱する。次に、サンプルを冷却させる。次にサンプルを再び10℃/分の加熱速度で加熱する(これは「再加熱」ランプである)(再加熱部分はフリーラジカル発生剤試験のためではなくポリエチレン樹脂試験のためだけに実施する。両方の加熱曲線を記録する。初期加熱曲線は、熱活性の開始時から終了時までにベースラインエンドポイントを、又は不完全吸熱/発熱の場合には本試験の終了を設定することによって分析する。再加熱は、積分の開始及び終了を決定する際に役立つように使用される。決定される数値は、ピーク温度(T)、ピーク熱活性温度、エネルギー(グラム当たりのジュール)である。
【0040】
フリーラジカル発生剤については、ピーク温度並びに第1熱サイクルの曲線とベースラインとの間の面積の積分による全分解エネルギーを記録する。当業者であれば容易に理解できるように、分解が発熱性である場合は、曲線とベースラインとの間の面積は、負の熱流量が存在するという事実のために負の数として積分される。つまり、サンプルは熱を発生する。サンプルは、サンプルが熱を取り込むように吸熱性である場合は、面積は正の数として積分される。この場合、曲線は、ベースライン値の上方にある。
【0041】
トリプル検出器ゲル透過クロマトグラフィ(TDGPC)−従来型GPC、光散乱GPC及びgpcBR
本明細書で使用されるGPC技術(従来型GPC、光散乱GPC及びgpcBR)のために、トリプル検出器ゲル透過クロマトグラフィ(3D−GPC若しくはTDGPC)システムを使用した。このシステムは、精密検出器(Precision Detector)(マサチューセッツ州アマースト)2角度レーザー光散乱(LS)検出器2040型、Polymer ChAR社(スペイン国バレンシア)からのIR4赤外線検出器及びViscotek社(テキサス州ヒューストン)の150R 4−キャピラリー溶液粘度計(DP)を装備したWaters社(マサチューセッツ州ミルフォード)の150C型高温クロマトグラフ(他の適切な高温GPC機器には、Polymer Laboratories社(英国シュロップシャー)の210型及び220型が含まれる)から構成される。
【0042】
これら後者の2つの独立検出器及び前者の検出器の少なくとも1つを備えるGPCは、「3D−GPC」若しくは「TDGPC」と呼ばれることもあり、他方用語「GPC」単独は、一般には従来型GPCを意味する。データ収集は、Viscotek TriSECソフトウエア、バージョン3及び4−チャンネルViscotek Data Manager DM400を使用して実施する。このシステムには、Polymer Laboratories社(英国シュロップシャー)のオンライン溶媒脱気装置も装備されている。
【0043】
GPCカラムセットからの溶離液は以下の:LS検出器、IR4検出器、次にDP検出器の順序で直列に配列された各検出器を通って流れる。マルチ検出器補正値を決定するための系統的なアプローチは、Balke, Mourey, et al. (Mourey and Balke, Chromatography Polym., Chapter 12, (1992)) (Balke, Thitiratsakul, Lew, Cheung, Mourey, Chromatography Polym., Chapter 13, (1992))によって公表された様式に一致する様式で、以下の方程式(5)に続く段落において光散乱(LS)GPCの項で略述するように、広範囲のポリエチレン標準物質を使用した3重検出器ログ(MW及び固有粘度)結果を最適化して実施する。
【0044】
適切な高温GPCカラム、例えば4基の長さ30cmのShodex HT803 13ミクロンカラム、又は4基の長さ30cmの、20ミクロンの混合孔径充填のPolymer Labs社製カラム(MixA LS、Polymer Labs社)を使用できる。本明細書では、MixA LSカラムを使用した。サンプルカルーセル区画は140℃で操作し、カラム区画は150℃で操作する。サンプルは、「溶媒50mL中にポリマー0.1g」の濃度で調製する。クロマトグラフィ溶媒及びサンプル調製用溶媒は、200ppmの2,6−ジ−tert−ブチル−4メチルフェノール(BHT)を含有する1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)である。この溶媒は、窒素を用いて拡散させる。ポリマーサンプルは、4時間に渡り160℃で緩徐に攪拌する。注入量は、200μLである。GPCを通る流速は、1mL/分に設定する。
【0045】
従来型GPC
従来型GPCのためにはIR4検出器を使用し、GPCカラム設定は、21種の分子量分布の狭いポリスチレン標準物質をランさせることによって較正する。標準物質の分子量(MW)は580g/molから8,400,000g/molの範囲に及び、標準物質は6種の「カクテル」混合物に含有されている。各標準混合物は、個別分子量間が10進数で少なくとも1桁分離れている。標準混合物は、Polymer Laboratories社から購入する。ポリスチレン標準物質は、1,000,000g/mol又はそれ以上の分子量については「溶媒50mL中で0.025g」、及び1,000,000g/mol未満の分子量については「溶媒50mL中で0.05g」で調製する。ポリスチレン標準物質は、30分間にわたり緩徐に攪拌しながら80℃で溶解させる。分子量分布の狭い標準混合物を最初に、及び分解を最小限に抑えるため最高分子量成分から降順にランさせる。ポリスチレン標準物質のピーク分子量は、方程式(1):
Mpolyethylene=A×(Mpolystyrene) (方程式1)
(式中、Mはポリエチレン又はポリスチレン(マーク付き)の分子量であり、及びBは1.0に等しい)を使用してポリエチレン分子量へ変換させる(Williams and Ward, J. Polym. Sci., Polym. Letters, 6, 621 (1968)に記載されている)。当業者には公知であるように、Aは約0.38から約0.44の範囲内にあってよく、較正時点に、以下の方程式(5)に続く段落における光散乱(LS)GPCの項において略述するように広いポリエチレン標準物質を用いて決定する。分子量値、例えば分子量分布(MWD若しくはMw/Mn)及び関連統計量を得るためのこのポリエチレン較正法の使用は、本明細書ではWilliams and Wardの変法であると規定する。数平均分子量、重量平均分子量及びz−平均分子量は、以下の方程式から計算する。
【数1】

【0046】
光散乱(LS)GPC
LS GPCのためには、精密検出器であるPDI2040検出器2040型を使用する。サンプルに依存して、光散乱検出器の15°の角度又は90°の角度のいずれかを計算のために使用する。本明細書では、15°の角度を使用した。
【0047】
分子量データは、Zimm (Zimm, B.H., J. Chem. Phys., 16, 1099 (1948))及びKratochvil (Kratochvil, P., Classical Light Scattering from Polymer Solutions, Elsevier, Oxford, NY (1987))によって公表された様式に一致する方法で入手する。分子量の決定において使用した全注入濃度は、質量検出器面積、及び適切な線状ポリエチレンホモポリマー由来の質量検出器定数、又は公知の重量平均分子量を備えるポリエチレン標準物質の1つから入手する。計算分子量は、以下で言及するポリエチレン標準物質の1つ又はそれ以上から引き出された光散乱定数及び0.104の屈折率濃度係数(dn/dc)を使用して入手する。一般に、質量検出器応答及び光散乱定数は、約50,000g/molを超える分子量を備える線状標準物質から決定しなければならない。粘度計較正は、製造業者によって記載された方法を使用して、又は適切な線状標準物質、例えば標準参照物質(SRM)1475a(米国標準技術局(NIST)から入手できる)の公表値を使用することによって実施できる。クロマトグラフィ濃度は、第2ウイルス係数作用(分子量に及ぼす濃度効果)への対応を排除するために十分に低いことが前提とされている。
【0048】
3D−GPCを用いて、絶対重量平均分子量(「Mw,Abs」)は、以下の方程式(5)を使用して、より高い正確性及び精度のために「ピーク面積」法を用いて決定する。「LS Area(LS面積)」及び「Conc. Area(濃度面積)」は、クロマトグラフ/検出器の組み合わせによって生成する。
【数2】

【0049】
各LSプロファイル(例えば、図1及び2を参照されたい)については、x軸(log MWcc-CPC)(式中、ccは常用検量線(conventional calibration curve)を意味する)は、以下のように決定する。最初に、ポリスチレン標準物質(上記参照)を使用して、保持容量を「log MWps」へ較正する。次に、方程式1(Mpolyethylene=A×(Mpolystyrene))を使用して「log MWPS」を「log MWPE」へ変換させる。「log MWPE」スケールは実験の項のLSプロファイルのためのx軸として機能する(log MWPEはlog MW(cc−CPC)と同一である)。各LSプロファイルのためのy軸は、注入されたサンプル質量によって正規化されたLS検出器応答である。最初に、線状ポリエチレン標準物質サンプル、例えばSRM 1475a又は同等物に対する分子量及び固有粘度は、溶出体積の関数としての分子量及び固有粘度両方に対してコンベンショナル・キャリブレーション(「cc」)を使用して決定する。
【0050】
GPC溶出曲線の低分子量領域では、酸化防止剤又は他の添加物の存在によって誘発されることが公知である有意なピークが存在する場合は、このようなピークの存在は該ポリマーサンプルの数平均分子量(Mn)の過小評価を誘発して、Mw/Mn(式中、Mwは、重量平均分子量である)であると規定されたサンプル多分散性の過大評価を引き起こす。このため真のポリマーサンプル分子量分布は、この余分なピークを排除することによってGPC溶出から計算することができる。この方法は、一般には、液体クロマトグラフィ分析におけるデータ処理手順におけるピークスキム特性(peak skim feature)であると説明されている。この方法では、この追加のピークは、GPC溶出曲線からサンプル分子量計算を実施する前にGPC溶出曲線からスキムオフされる。
【0051】
トリプル検出器GPC(3D−GPC)によるgpcBR分岐指数
gpcBR分岐指数は、以前に記載されたように、光散乱、粘度及び濃度検出器を最初に較正することによって決定される。次にベースライン値を光散乱、粘度及び濃度クロマトグラムから減じる。次に積分窓は、屈折指数クロマトグラムから検出可能なポリマーの存在を示す光散乱及び粘度クロマトグラムにおける低分子量保持容量範囲の全部の積分を保証するために設定される。次に線状ポリエチレン標準物質を使用してポリエチレン及びポリスチレンのマルク・ホウィンク(Mark-Houwink)定数を確定する。定数を入手したら、2つの数値を使用して方程式(6)及び(7)に示したように、溶出体積の関数としてのポリエチレン分子量及びポリエチレン固有粘度についての2つの線状参照コンベンショナル・キャリブレーションが構築される。
【数3】

【0052】
gpcBR分岐指数は、Yau, Wallace W., 「Examples of Using 3D-GPC-TREF for Polyolefin Characterization」, Macromol. Symp., 2007, 257, 29-45に記載されているように長鎖分岐を特性付けるための強固な方法である。この指数は、全ポリマー検出器分野に好都合に、g’値の決定及び分岐頻度計算において伝統的に使用される「スライス毎の」3D−GPC計算を回避する。3D−GPCデータから、ピーク面積法を使用して、光散乱(LS)検出器によってサンプルバルク絶対重量平均分子量(Mw,Abs)を得ることができる。この方法は、伝統的なg’決定において必要とされる濃度検出器信号に対する光散乱検出器信号の「スライス毎」の比を回避する。
【0053】
3D−GPCを用いると、サンプル固有粘度も、方程式(8)を使用することとは無関係に得られる。方程式(5)及び(8)における面積計算はより高精度を提供するが、それは全サンプル面積として、検出器ノイズ並びにベースライン値及び積分限界に関する3D−GPCの設定によって誘発される変動にはるかに低感受性であるからである。より重要なことに、ピーク面積計算は、検出器体積補正値による影響を受けない。同様に、高精度のサンプル固有粘度(IV)は、方程式(8):
【数4】

(式中、DPiは、オンライン粘度計から直接的に監視される差圧信号を表す)において示される面積法によって得られる。
【0054】
gpcBR分岐指数を決定するために、サンプルポリマーのための光散乱溶出面積が該サンプルの分子量を決定するために使用される。該サンプルポリマーについての粘度検出器溶出面積は、該サンプルの固有粘度(IV若しくは[η])を決定するために使用される。
【0055】
最初に、線状ポリエチレン標準物質サンプル、例えばSRM 1475a又は同等物に対する分子量及び固有粘度が、方程式(2)及び(9)によって、溶出体積の関数としての分子量及び固有粘度両方のためのコンベンショナル・キャリブレーション(「cc」)を使用して決定される。
【数5】

方程式(10)は、gpcBR分岐指数:
【数6】

(式中、[η]は測定固有粘度であり、[η]ccはコンベンショナル・キャリブレーションからの固有粘度であり、Mwは測定重量平均分子量であり、Mw,ccはコンベンショナル・キャリブレーションの重量平均分子量である)を決定するために使用される。方程式(5)を使用した光散乱(LS)による重量平均分子量は、一般には「絶対重量平均分子量」若しくは「Mw,Abs」と呼ばれる。常用GPC分子量検量線(「コンベンショナル・キャリブレーション」)を使用した方程式(2)からのMw,ccは、「ポリマー鎖骨格分子量」、「常用重量平均分子量」及び「Mw,GPC」と呼ばれることが多い。
【0056】
「cc」の下付き文字を備える全ての統計値は、それらの各溶出体積、以前に記載した対応するコンベンショナル・キャリブレーション及び濃度(Ci)を使用して決定される。下付き文字を備えない数値は、質量検出器、LALLS、及び粘度計面積に基づく測定値である。KPEの数値は、線状参照サンプルがゼロのgpcBR測定値を有するようになるまで繰り返し調整される。例えば、この特定の場合においてgpcBRを決定するためのα及びLog Kに対する最終値は、ポリエチレンに対しては各々0.725及び−3.355、並びにポリスチレンに対しては各々0.722及び−3.993である。
【0057】
K及びα値が上記で考察した手順を使用して決定されると、この手順を分岐サンプルを用いて繰り返す。分岐サンプルは、最善「cc」較正値としての最終マルク・ホウィンク定数を用いて分析され、方程式(2)から(9)が適用される。
【0058】
gpcBRの解釈は、簡単である。線状ポリマーについては、方程式(8)から計算したgpcBRは0に近付くが、これはLS及び粘度測定法によって測定された数値はコンベンショナル・キャリブレーション標準に近付くからである。分岐状ポリマーについては、gpcBRは、特に高レベルの長鎖分岐を用いるとゼロより高くなるが、それは測定ポリマー分子量が計算Mw,ccより高くなり、計算IVccは測定ポリマーIVより高くなるからである。実際に、gpcBR値は、ポリマー分岐の結果としての分子サイズ収縮作用に起因する分別IV変化を表す。0.5若しくは2.0のgpcBR値は、当量の線状ポリマー分子に比較して、各々50%及び200%のレベルでのIVの分子サイズ収縮作用を意味する。
【0059】
これらの特定の実施例については、gpcBRを用いる利点は、伝統的な「g’指数」及び分枝頻度計算に比してgpcBRがより高精度であるためである。gpcBR指数決定において使用される全てのパラメータは、優れた精度で入手され、濃度検出器からの高分子量での低い3D−GPC検出器応答による有害な影響を受けない。検出器容積アラインメントにおける誤差もgpcBR指数決定の精度に影響を及ぼさない。
【0060】
実験
フリーラジカル発生剤
本発明のために、3種のフリーラジカル発生剤を使用した。
低分解エネルギーのフリーラジカル発生剤である3,4−ジエチル−3,4−ジフェニルヘキサン(以下ではフリーラジカル発生剤1と称する)、中間分解エネルギーのフリーラジカル発生剤である、以下の化学構造:
【化3】

を有するアルコキシアミン誘導体:9−(アセチルオキシ)−3,8,10−トリエチル−7,8,10−トリメチル−1,5−ジオキサ−9−アザスピロ[5.5]ウンデス−3−イル]メチルオクタデカノエート(以下では、フリーラジカル発生剤2と称する)。使用した第3のフリーラジカル発生剤は、極めて高い分解エネルギーを備える周知の過酸化物であり、ほとんどはポリエチレンの架橋結合のために使用されているが、それはその高い反応性のために、高品質製品でのポリエチレン樹脂の溶融強度を増加させる目的にとって有用にならないからである。この過酸化物フリーラジカル発生剤は、商標名Trigonox101の下でAkzo Chemical社から市販で入手できる(以下では、フリーラジカル発生剤3と称する)。
【0061】
これらのフリーラジカル発生剤のピーク分解温度及び分解エネルギーは、表1に示す。分解エネルギー(kJ/mol)は、分解エネルギー(kJ/g)×分子量(g/mol)×純度(%)÷100として計算されることに留意されたい。
【0062】
【表1】

【0063】
使用した線状低密度ポリエチレンLLDPEは、チーグラー・ナッタ触媒反応によって生成し、1のメルトインデックス(I2若しくはMI)、0.926g/cmの密度であり、1,000ppmのIrgafos168(Ciba Specialty Chemicals社、スイス国バーゼル)添加物を含んでいた。
【0064】
実施例は、様々な濃度のフリーラジカル発生剤を用いて押出したこのLLDPEから生成した。特定のフリーラジカル発生剤(Trigonox101は、有意なゲル生成を伴わずに高い溶融強度を生成することができない架橋剤であることが当業者には周知であるので除外した)は、100万重量部のLDPE当たり5,600重量部のフリーラジカル発生剤2若しくは等モル量のフリーラジカル発生剤1を有するLDPEマスターバッチとして加えられた(以下に報告したppmレベルは活性成分だけに関するものであり、全マスターバッチに関するものではないことに留意されたい)。
【0065】
LLDPE及び特定のフリーラジカル発生剤は、30mmの共回転噛合Coperion Werner−Pfleiderer社のZSK−30(ZSK−30)二軸押出機内で配合した。ZSK−30は、全長960mm及び長さ対径(L/D)比32長を備える10のバレル区間を有する。2つのホールストランドダイは、ブレーカープレート又はスクリーンパックを用いずに使用した。この押出機は、Vベルトによりギアボックスへ接続された直流モータから構成される。15HPモータは、制御キャビネット内に位置するGE可変速駆動装置によって駆動される。スクリュー軸速度の制御範囲は、1:10である。最高スクリュー軸速度は、500RPMである。圧トランスデューサは、ダイ圧力を測定するためにダイの正面に配置された。
【0066】
押出機は、8つの加熱/冷却バレル区間を、5つの温度制御ゾーンを作り上げる30mmスペーサと共に有している。押出機は、タイロッドによって共に保持され、機械フレーム上に支持された冷却専用供給セクション及び加熱専用ダイセクションを有する。各セクションは、角張った半殻形加熱器を用いて電気的に加熱し、特別な冷却チャネルシステムによって冷却することができる。
【0067】
スクリューは、その上にスクリューネジ込みコンポーネント及び特殊ニーディング素子が任意の必要な順序で据え付けられる連続軸から構成される。これらの素子は、鍵及び鍵穴によって一緒に半径方向に保持され、ネジ込み式スクリューチップによって軸方向に保持される。スクリュー軸は、連結具によって歯車軸へ接続され、分解するためにはスクリューバレルから容易に引き出すことができる。
【0068】
Conair社製ペレタイザを使用してブレンドをペレット化した。Conair社製ペレタイザは、220ボルトの可変速度ソリッドカッタ装置である。可変速モータ駆動装置は、機械加工ソリッドカッティングホイールを駆動させ、これは順に固定金属ローラを駆動させる。可動ゴムローラは固定ローラを圧迫し、カッティングホイール内へ摩擦によってストランドを引っ張るのに役立つ。可動ローラ上の張力は、必要に応じて調整することができる。
【0069】
温度は、供給ゾーン、押出機内の4つのゾーン及びダイにおいて次のように設定した:
供給: 80℃
ゾーン1:160℃
ゾーン2:180℃
ゾーン3:185℃
ゾーン4:190℃
ダイ: 230℃
スクリュー軸速度を325回転/分(RPM)に設定すると、およそ40lb/hrの押出量が生じた。
【0070】
LLDPEは、19ppm及び38ppmのフリーラジカル発生剤1、60ppm及び120ppmのフリーラジカル発生剤2と共に押出し、LLDPEをさらに単独で押出すると、表2に示した特性解析試験結果が得られた。
【0071】
【表2】

【0072】
表2から、溶融強度及び粘度比において最も有意な改良が中等度の分解エネルギーを備えるフリーラジカル発生剤2を用いた本発明の実施例から生じたことが明らかである。フリーラジカル発生剤1は、溶融強度又は他のパラメータ、例えば粘度比における変化に関してポリエチレンに何の作用も生じさせなかった。比較例2は、比較例1に1回通過の押出が加えられている。この場合には溶融強度のいくらかの増加が生じるが、それは比較例1がいかなる主要酸化防止剤も含有しておらず、1,000ppmのIrgafos168(Ciba Specialty Chemicals社から入手できる副次的酸化防止剤)しか含有していないからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン樹脂の溶融強度を増加させるための方法であって:
a)ASTM D792に従って決定される0.900g/cmから0.970g/cmの範囲内の密度及びASTM D1238(2.16kg、190℃)に従って決定される0.01g/10minから30g/10minの範囲内のメルトインデックスを有するポリエチレン樹脂を選択する工程と、
b)前記ポリエチレン樹脂を−50kJ/molから−250kJ/molの範囲内の分解エネルギー、150℃以上から280℃以下、好ましくは160℃以上から250℃以下のピーク分解温度を備えるフリーラジカル発生剤と、前記フリーラジカル発生剤と反応しないコントロールより少なくとも20%超えて前記ポリエチレン樹脂の溶融強度を増加させるために十分な量及び条件下で反応させる工程と
を含む方法。
【請求項2】
フリーラジカル発生剤が、式:
(R)(R)N−O−R
(式中、R及びRは、各々相互に独立して、水素、C−C42アルキル若しくはC−C42アリール又はO及び/若しくはNを含む置換炭化水素基であり、R及びRは共に環構造を形成することができ、並びにRは、水素、炭化水素又はO及び/若しくはNを含む置換炭化水素基である)
に対応するアルコキシアミン誘導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルコキシアミン誘導体が、ヒドロキシルアミンエステルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒドロキシルアミンエステルが、9−(アセチルオキシ)−3,8,10−トリエチル−7,8,10−トリメチル−1,5−ジオキサ−9−アザスピロ[5.5]ウンデス−3−イル]メチルオクタデカノエートであるヒドロキシルアミンエステルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
別のポリエチレン樹脂とブレンドされた100重量%未満の請求項1に記載のポリマーを含む組成物。
【請求項6】
前記本発明のポリエチレンが、0.900から0.970g/cmの範囲内の密度を有する、先行請求項のいずれか。
【請求項7】
前記本発明のポリエチレンが、0.01から30g/10分の範囲内のメルトインデックスを有する、先行請求項のいずれか。
【請求項8】
前記本発明のポリエチレンが、約5未満の分子量分布M/Mを有する、先行請求項のいずれか。
【請求項9】
請求項5に記載の方法によって製造されたフィルム。
【請求項10】
請求項5によって製造された成形品。
【請求項11】
請求項5によって製造された押出品。
【請求項12】
前記本発明のポリエチレンのI10/Iのメルトフロー比が9より大きい、先行請求項のいずれか。
【請求項13】
190℃で測定された前記本発明のポリエチレンの[0.1rad/sでの粘度]/[100rad/sでの粘度]が8より大きい、先行請求項のいずれか。
【請求項14】
190℃で測定された前記本発明のポリエチレンの0.1rad/sでのtanδが4未満である、先行請求項のいずれか。
【請求項15】
190℃で測定された前記本発明のポリエチレンの溶融強度が5より大きい、先行請求項のいずれか。
【請求項16】
前記本発明のポリエチレンのgpcBRが0.03より大きい、先行請求項のいずれか。

【公表番号】特表2013−516546(P2013−516546A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548232(P2012−548232)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【国際出願番号】PCT/US2011/020853
【国際公開番号】WO2011/085379
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【出願人】(512171629)ダウ ブラジル エス.エー. (5)
【Fターム(参考)】