説明

高濃度アスタキサンチン抽出物

【課題】
10重量%以上の高含有量のアスタキサンチンを含みながら、流動性が良く、安定性が高く、臭気が少なく、取り扱いの容易な高濃度アスタキサンチン含有抽出物が求められている。高濃度アスタキサンチン含有抽出物は、粉末や乳化液など高濃度のアスタキサンチンを含む製品に用いることができる。
【解決手段】
アスタキサンチンを含有する天然物の破砕物を抽出槽内に充填し、超臨界溶媒で油脂など夾雑物を除去した後、さらに超臨界溶媒などでアスタキサンチンを抽出し、溶媒を除去してアスタキサンチン含有抽出物にMCTなどを添加することによって、高濃度ので流動性の高いアスタキサンチン抽出物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘマトコッカスなどの天然物由来のアスタキサンチンを高い含有量で含みながら、流動性が高く、安定性が高く、臭気が低く、飲食物、機能性食品、医薬品、化粧品、飼料に用いることが容易なアスタキサンチン抽出物に関する。
【背景技術】
【0002】
アスタキサンチンは、エビ、カニ等の甲殻類、サケ、タイ等の魚類、緑藻ヘマトコッカス等の藻類、赤色酵母ファフィア等の酵母類等、天然、特に海洋に広く分布する赤色色素である。アスタキサンチンの抗酸化作用は、ビタミンEの約1,000倍であり、β−カロテンの約40倍とカロテノイドの中で最も高い。この抗酸化作用を応用した抗動脈硬化作用、糖尿病に対する作用、免疫賦活作用、抗ストレス作用、抗炎症作用、美白作用、皮膚老化防止などが報告され、近年、健康食品や化粧品の分野では最も注目されている素材の1つとなっている。
【0003】
アスタキサンチンは、有機合成や前述の天然物などから抽出することにより生産されている。有機合成品は日本国内では法規制の問題と消費者の天然嗜好により用いることができない。市販されているアスタキサンチンのほとんどは、ヘマトコッカス藻、オキアミ、ファフィア酵母、アスタキサンチン産生細菌から抽出して生産されている。天然物からの抽出方法として、粉砕した後、アセトンやエタノールなどの有機溶媒による抽出や二酸化炭素による超臨界抽出し、抽出溶媒を除去することによって、アスタキサンチンが製造されている。
【0004】
天然物から抽出したアスタキサンチン含有オイルとしては、アスタリール50F〔富士化学工業社製、アスタキサンチン5%含有〕、アスタッツ−S〔武田紙器社製、アスタキサンチン約20%含有〕、アスタッツ−10O〔武田紙器社製、アスタキサンチン約10%含有〕、ピュアスタ〔ヤマハ発動機社製、アスタキサンチン約8%含有〕などが市販されている。
【0005】
天然物から抽出したアスタキサンチンは含有量が10重量%程度であり、10重量%を越える高含有物は、1)粗アスタキサンチン含有品を超臨界により脂肪酸トリグリセライドを除去する方法(特許文献1)、2)カラムによって濃縮する方法、3)リパーゼによって脂肪酸を分解して除去する方法(特許文献2)によって行われている。
【0006】
これまで、10%を越える天然由来のアスタキサンチンの高濃度含有物抽出物には、常温や低温で固形状や半固形状、又は高粘性のペースト状で著しく流動性の乏しい物性を示すため食品や化粧品などへの製造に適しておらず、化粧品や食品に用いるには不適当な臭気、酸化安定性や光安定性が低いなどの問題があった。また、原料由来の脂肪酸グリセリドなどは、摂取した場合に肥満となりいため、これら原料に由来する脂肪酸グリセリドなどの含有量減少も求められていた。
【0007】
【特許文献1】日本国特開2004−41147号公報
【特許文献2】日本国特開昭60−207567号公報
【特許文献3】日本国特開平6−200179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、12%重量以上のアスタキサンチンの高濃度含有物で、常温や低温での低加温時の粘度が作業しやすい程度に低く、臭気などの夾雑物が少なく安定なキサントフィルの含有抽出物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究したした結果、下記の構成を満たすことにより、上述の従来技術の欠点を克服できることを見いだした。
【0010】
即ち、本発明は以下のとおりである。
(1) 全量100重量%に対してアスタキサンチン12〜40重量%、中鎖脂肪酸トリグリセリド10〜60重量%、抽出試料に由来する脂質20〜60重量%からなり、室温で流動性のある液状を呈することを特徴とする天然アスタキサンチン含有抽出物。
(2) 全量100重量%に対してアスタキサンチン20〜40重量%、中鎖脂肪酸トリグリセリド20〜40重量%、抽出試料に由来する脂質30〜60重量%からなり、25℃における粘度が2500cp以下で、流動性のある液状を呈することを特徴とする天然アスタキサンチン含有抽出物。
(3) 酸素下安定性試験で4時間後の残存率が90%以上である(1)〜(2)のいずれか1項に記載の抽出物。
(4) 製造直後及び/又は開封後の臭気がGC/MS測定試験において、臭気成分のピーク面積が10×10以下、及び/又は臭気官能試験において評価点2以下である(1)〜(3)のいずれか1項に記載の抽出物。
(5) (1)〜(4)のいずれか1項に記載の抽出物を含有する粉末状、錠剤状、乳化液状、ジェル状、オイル状の組成物。
(6) (1)〜(5)のいずれか1項に記載の抽出物又は組成物を含有する飲食物、機能性食品、医薬品、化粧品、飼料。
【発明の効果】
【0011】
本発明の天然アスタキサンチン高含有抽出物は、常温で加工が容易な程度に粘度が低く食品や化粧品などへの製造に適しており、臭気が低く、安定性が高く優れたアスタキサンチン高含有抽出物とすることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のアスタキサンチン高含有抽出物について詳細に説明する。
本発明のアスタキサンチン高含有抽出物は、全量100重量%に対してアスタキサンチン12〜40重量%、中鎖脂肪酸グリセライド10〜60重量%、抽出試料に由来する脂質20〜60重量%からなることを特徴とするアスタキサンチン高含有抽出物である。すなわち抽出原料に含まれる脂質のうち、アスタキサンチンおよびアスタキサンチンエステル以外の夾雑画分の一部あるいは全部を取り除いた後、アスタキサンチンおよびアスタキサンチンエステルを豊富に含む画分を抽出し、工程中で適宜中鎖脂肪酸グリセライドを加えることにより濃度調整を行い得られるアスタキサンチン濃縮オイルである。
【0013】
ここで示すアスタキサンチン含有量は、アスタキサンチンおよびそのエステル体について、これらをアスタキサンチンフリー体として換算した場合の含有量である。また本発明において、時に記載がない限りアスタキサンチンには、フリー体とエステル体を含むものとする。
【0014】
中鎖脂肪酸グリセライドとは、炭素数6から12までの飽和脂肪酸、具体的にはカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリル酸のいずれかがグリセロールとエステル結合してなる脂質を指す。グリセロールとエステル結合するこれらの飽和脂肪酸は1〜3個のいずれでもよい。
【0015】
抽出試料に由来する脂質とは、抽出原料となる天然試料に含有されるアスタキサンチン以外の脂質成分のことを指し、例えば、炭化水素、長鎖アルコール、長鎖アルデヒド、長鎖ケトン、長鎖脂肪酸、イソプレン類、ステロイド、ワックス、グリセリド、セラミドなどのほか、リン脂質、糖脂質、アミノ酸脂質などの複合脂質などを指す。詳細には、後述のアスタキサンチンのエステル体で記載の低級または高級飽和脂肪酸、あるいは低級または高級不飽和脂肪酸である。アスタキサンチンとエステルを形成している脂肪酸などもこれに含まれる。
【0016】
酸素下安定性試験とは、10mg〜100mgの試料を10mLの試験管に取り、これの空隙部分を酸素で置換して密閉した後、80℃での加温を継続して行い、一定時間後の残存量を元の量に対する比率で表したもの残存率とする。4時間後の残存率が80%以上であり、好ましくは90%以上である。
【0017】
臭気とは、実施例で記載の官能試験及び又はGC/MSによる臭気成分のピーク面積が一定量以下であることを指す。本発明のアスタキサンチン高含有抽出物の臭気は、臭気官能試験での評価点が2以下である。本発明のアスタキサンチン高含有抽出物の臭気は、アスタキサンチン高含有抽出物の揮発成分をCG/MSによって測定し、そのピーク面積の合計値が10×10以下、好ましくは5×10以下、さらに好ましくは1.0×10以下である。。
【0018】
本発明のアスタキサンチン高含有抽出物は、粘度が低く流動性が良い。粘度は温度が低いほど高くなり、25℃では2500cp以下、30℃では1500cp以下、50℃では800cp以下である。加減は10cp以上である。粘度はB型粘度計で測定する。
【0019】
本発明の抽出物は、安定性が高く臭気が少ないという特徴がある。本発明の抽出物の安定性は、酸素置換条件下、80℃での負荷試験で4時間後の残存率が90〜100%である。臭気は従来の超臨界抽出これまで公知となっている方法、例えば、日本国特開第2004−41147号公報に記載の方法で得られた物より大幅に臭気が押さえられている。
【0020】
本発明に用いるアスタキサンチンを含有する天然物としては、例えば、緑藻ヘマトコッカスなどの微細藻類、赤色酵母ファフィアなどの酵母類、エビ、オキアミ、カニ、ミジンコなどの節足動物類の甲殻、イカ、タコなどの軟体動物類の内臓や生殖巣、種々の魚介類の皮、ナツザキフクジュソウなどのフクジュソウ属の花弁、Paracoccus sp. N81106、Brevundimonas sp. SD212、Erythrobacter sp. PC6などのα−プロテオバクテリア類、Gordonia sp. KANMONKAZ-1129などのゴードニア属、Schizochytriuym sp. KH105などのラビリンチュラ類(特にヤブレツボカビ科)やアスタキサンチン産生遺伝子組み換え生物体などから得られるものをあげることができる。これら天然及びその抽出物は市販されており、入手は容易である。
【0021】
アスタキサンチンは、3,3'−ジヒドロキシ−β,β−カロテン−4,4'−ジオンであり、立体異性体を有する。具体的には、(3R,3'R)−アスタキサンチン、(3R,3'S)−アスタキサンチンおよび(3S,3'S)−アスタキサンチンの3種の立体異性体が知られているが、本発明にはそのいずれも用いることができる。本発明はこれらアスタキサンチン異性体のモノエステル及びジエステルを含む。
【0022】
アスタキサンチンのモノエステルとしては、低級または高級飽和脂肪酸、あるいは低級または高級不飽和脂肪酸によりエステル化されたエステル類をあげることができる。前記低級または高級飽和脂肪酸、あるいは低級または高級不飽和脂肪酸の具体例としては、酢酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、へプタデカン酸、エライジン酸、リシノール酸、ベトロセリン酸、バクセン酸、エレオステアリン酸、プニシン酸、リカン酸、パリナリン酸、ガドール酸、5−エイコセン酸、5−ドコセン酸、セトール酸、エルシン酸、5,13−ドコサジエン酸、セラコール酸、デセン酸、ステリング酸、ドデセン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エイコサオペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などをあげることができる。また、カロテノイドのジエステルとしては前記脂肪酸からなる群から選択される同一または異種の脂肪酸によりエステル化されたジエステル類をあげることができる。
【0023】
さらに、アスタキサンチンのモノエステルとしては、グリシン、アラニンなどのアミノ酸;酢酸、クエン酸などの一価または多価カルボン酸;リン酸、硫酸などの無機酸;グルコシドなどの糖;グリセロ糖脂肪酸、スフィンゴ糖脂肪酸などの糖脂肪酸;グリセロ脂肪酸などの脂肪酸;グリセロリン酸などによりエステル化されたモノエステル類をあげることができる。なお、考えられ得る場合は前記モノエステル類の塩も含む。
脂肪酸の誘導体としては、上記脂肪酸のリン脂質型、アルコール型、エーテル型、ショ糖エステル型、ポリグリセリンエステル型があげられる。
【0024】
アスタキサンチンのジエステルとしては、前記低級飽和脂肪酸、高級飽和脂肪酸、低級不飽和脂肪酸、高級不飽和脂肪酸、アミノ酸、一価または多価カルボン酸、無機酸、糖、糖脂肪酸、脂肪酸およびグリセロリン酸からなる群から選択される同一または異種の酸によりエステル化されたジエステル類をあげることができる。なお、考えられ得る場合は前記ジエステル類の塩も含む。グリセロリン酸のジエステルとしては、グリセロリン酸の飽和脂肪酸エステル類、または高級不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸または飽和脂肪酸から選択される脂肪酸類を含有するグリセロリン酸エステル類などをあげることができる。
【0025】
本発明におけるアスタキサンチン含有の抽出原料としては、例えば、オキアミ、ファフィア酵母、ヘマトコッカス藻、細菌などがあるが、好ましいのはアスタキサンチンの含有量の高さからヘマトコッカス藻抽出物である。また、これらの原料からの抽出したアスタキサンチンの低濃度抽出物(粗抽出物)を用いることができる。
【0026】
アスタキサンチンの脂肪酸エステルは突然変異原性が観察されず、安全性が高い化合物であることが知られて、食品添加物として広く用いられている(高橋二郎ほか:ヘマトコッカス藻アスタキサンチンの毒性試験―Ames試験、ラット単回投与毒性試験、ラット90日反復経口投与性毒性試験―,臨床医薬,20:867−881,2004)。
【0027】
本発明の高濃度アスタキサンチン含有抽出物は、例えば、以下の工程によって製造することができる。
(1)ヘマトコッカス藻を粉砕し、有機溶媒や超臨界二酸化炭素を溶媒として、アスタキサンチンを含むオイルを抽出し、抽出溶媒を除去し、粗抽出オイルを得る。
(2)次いで、この粗抽出オイルを、カラム分離、リパーゼによる脂肪酸の分離、超臨界抽出による油脂の除去や高濃度画分の分取など公知の高濃度化方法によって、油脂を除去し濃縮アスタキサンチンオイルを得る。
(3)次いで、濃縮アスタキサンチンオイルに中鎖脂肪酸トリグリセライドを添加し、公知の方法によって強く混合する。
中鎖脂肪酸トリグリセライドが分離せず、アスタキサンチンと含有して得られるので有れば、どの工程で中鎖脂肪酸トリグリセライドを加えても良い。市販のアスタキサンチン含有抽出物を用いるので有れば、(2)〜(3)の工程を行えばよい。
【0028】
以下ヘマトコッカスからの抽出方法について具体的に述べるが、その他の抽出方法にも本権利に含まれる。
ヘマトコッカス藻は、ボルボックス目クラミドモナス科に属する緑藻類であり、通常は緑藻であるためクロロフィル含量が高く緑色であり、2本の鞭毛によって水中を遊泳しているが、栄養源欠乏や温度変化等の飢餓条件では休眠胞子を形成し、アスタキサンチン含量が高くなり赤い球形となる。本発明においては、いずれの状態でのヘマトコッカスを用いることができるが、アスタキサンチンを多く含有した休眠胞子となったヘマトコッカスを用いるのが好ましい。また、ヘマトコッカス属に属する緑藻類では、例えば、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluviaris)が好ましい。
【0029】
ヘマトコッカス緑藻類の培養方法としては、異種微生物の混入・繁殖がなく、その他の夾雑物の混入が少ない密閉型の培養方法が好ましく、例えば、一部解放型のドーム形状、円錐形状又は円筒形状の培養装置と装置内で移動自在のガス吐出装置を有する培養基を用いて培養する方法(国際公開第99/50384号公報)や、密閉型の培養装置に光源を入れ内部から光を照射して培養する方法、平板状の培養槽やチューブ型の培養層を用いる方法が適している。
【0030】
本発明に用いるヘマトコッカス藻体は、上記製造方法に用いた培養液から常法に従って、例えば遠心分離機や濾別などによって得られる。これらのヘマトコッカス藻は、破砕したもの有機溶媒などで細胞壁を処理して抽出しやすくしたものを用いることができる。破砕・処理に用いるヘマトコッカス藻体は乾燥末または湿末を用いることができるが、乾燥末のほうが好ましい。
【0031】
破砕としては、ヘマトコッカス藻の細胞壁が抽出できる程度に壊れていれば良く、平均粒子径は0.1〜1000μm、好ましくは5〜100μmである。ヘマトコッカス藻中のアスタキサンチンの含有量は特に制限されるものではないが、通常アスタキサンチンの含有率は0.001重量%以上のものが用いられ、好ましくは0.1重量%以上、最も好ましくは1.0重量%以上であり、含有量の上限には特に制限はない。
【0032】
破砕方法としては、アスタキサンチン含有天然物を湿式粉砕または乾式粉砕することができ、破砕機としては、例えば、高圧ホモジナイザー、超音波破砕機、ビーズミル、ロールミル、カッターミル、ハンマーミルなどを用いて破砕することができる。湿式粉砕した場合は、続いて乾燥を行う。ここでの破砕末の製造の具体的な方法としては、出願人が以前に出願した国際公開WO 02/77105号パンフレット記載の方法で行うことができる
【0033】
湿式粉砕または湿末のヘマトコッカスを乾燥する方法としては、常法にしたがって噴霧乾燥、流動層乾燥、棚乾燥などで行うことができる。
【0034】
破砕・乾燥時でのアスタキサンチンの酸化を防ぐために抗酸化剤を加えることができ、抗酸化剤としてはビタミンE(トコフェロール)、ビタミンE誘導体、トコトリエノール、ローズマリー抽出物、ビタミンC、ビタミンC誘導体、グルタチオン、フィチン酸、カテキン類、フラボノイド類、β−カロチン等が挙げられる。好ましくは、ビタミンE、ビタミンE誘導体、トコトリエノール、ビタミンC、ビタミンC誘導体、ローズマリー抽出物などを選ぶことができる。
【0035】
破砕・乾燥したヘマトコッカス藻は、常法にしたがって、ペレット状、球状などの形状に成形して抽出槽に充填する。このときエントレーナーを添加して、抽出能を高めることができるがあとで分離操作が必要なため、必ずしも加えなくとも良い。
【0036】
抽出性を向上させるため、試料中または超臨界流体に添加してエントレーナーを加えることができる。エントレーナーとしては、メタノール、エタノール、エーテル、酢酸エチル、アセトン、ヘキサン、水などの溶剤、C8−12の中鎖脂肪酸グリセリド、菜種油、コーン油、オリーブ油などの低分子で粘度の低い油脂、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどの界面活性剤をあげることができる。充填時、または夾雑物除去後の超臨界流体に添加することができる。
【0037】
本発明で天然物由来の共雑物とアスタキサンチンを抽出条件で分離できるのは、溶解度と溶解速度の差よる。C16〜C20の脂肪酸のトリグリセライド、クロロフィル化合物、臭気成分などの脂溶性物質は溶解度が高く、アスタキサンチンの溶解度が低いためである。すなわち、アスタキサンチンの溶解度が低く、夾雑物が可溶な条件下で夾雑物を抽出して一定量を取り除いた後、アスタキサンチンが可溶名条件で抽出を行う。
【0038】
本発明で用いる超臨界流体としては、通常用いられている超臨界流体で良く、例えば、二酸化炭素、水、エチレン、プロピレン、エタン、プロパン、ヘキサン、一酸化三窒素、クロロジフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、キセノン、アンモニア、メタノール、エタノールなどであり、特に温度・圧力の条件が緩和であり毒性問題のない二酸化炭素を用いるのが好ましい。
【0039】
夾雑物を除去するために用いる流体の条件は、夾雑物成分が抽出される条件でれば良く、例えば、用いる溶媒によって異なるが、二酸化炭素の場合、抽出温度は31.6〜200℃、好ましくは31.6〜100℃であり、抽出圧力は7.53〜80MPa、好ましくは15〜50MPaである。抽出物(粉末)と超臨界流体との比率は、抽出装置や温度・圧力の条件によって変化するが、抽出物(粉末)1に対して溶媒1〜1000重量倍、好ましくは10〜100重量倍である。夾雑物低極性画分の除去量によって、夾雑物の除去ステップを決め、抽出物全体の量に対して5〜80%、好ましくは30〜70%を除去する。ヘマトコッカス藻の乾燥末の場合、粉末に対して30〜50%が抽出量であり、粉末全量に対して2〜40%、好ましくは15〜35%にあたる部分を除去して、この工程の期間とすることができる。
【0040】
続いてアスタキサンチンを超臨界流体を用いて抽出する。このときの条件は、用いる溶媒によって異なるが、二酸化炭素の場合、抽出温度は31.6〜200℃、好ましくは40〜100℃であり、抽出圧力は20〜100MPa、好ましくは40〜90MPaである。抽出物(粉末)と超臨界流体との比率は、抽出装置や温度・圧力の条件によって変化するが、抽出物(粉末)1に対して溶媒1〜10000重量倍、好ましくは10〜1000重量倍である。
【0041】
夾雑物画分を超臨界抽出で除去したのち、残りのヘマトコッカス藻を両臨界抽出せずに通常状態の有機溶媒で抽出することも本発明に含まれる。有機溶媒としては、アスタキサンチンを溶解させるものでよく、例えばエタノール、メタノールなどのアルコール類、アセトン、エーテル、酢酸エチル、ヘキサン、ベンゼン、クロロホルム、塩化メチレンであり、好ましくはエタノール、メタノール、アセトン、ヘキサンであり、特に好ましくはアセトン、エタノール、ヘキサンである。
また抽出温度は、通常、−10〜120℃、好ましくは−10〜60℃、より好ましくは−10〜30℃の範囲である。タンク内は処理中の劣化を防ぐため窒素などの不活性ガスの雰囲気下としたほうがよい。
【0042】
濾液は、通常の溶媒除去方法であればよく、例えば減圧濃縮機などで有機溶媒を除去する。抽出物の劣化を押さえるため温度をかけない方が良く、10〜80℃が好ましく、バッチ式の場合の1回の処理時間あるいは連続式の場合の滞留時間は短い方が良く、0.5〜20時間、好ましくは0.5〜10時間で処理できる量で溶媒を除去する。有機溶媒や揮発物を更に除去したい場合は、分子蒸留機やエバポールなどでさらに有機溶媒や揮発物の濃度を減少させることができる。
【0043】
本発明の高濃度アスタキサンチン抽出物は、アスタキサンチンが高含有率でありながら、粘度が低く流動性が高いため加工しやすく、さらには、安定性が高く、臭気も大幅に少ないことから、アスタキサンチン高含有量の2次加工品に用いるのに適している。2次加工品としては、粉末、水溶性乳化液、ジェル、オイルなど一般に用いられる2次加工品が挙げられ。これらを食品、特定健康食品のような効用が規定されている食品、いわゆる健康食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などに用いることができる。
【0044】
粉末品は、本発明の高濃度アスタキサンチン抽出物を通常使用される酸化防止剤、乳化剤(界面活性剤)、結合剤、無水ケイ酸やケイ酸カルシウムなど無機系賦形剤およびセルロースやデキストリン、アラビアガムといった多糖類などの賦形剤とともに、混合、SD乾燥、凍結乾燥、流動層増粒などの手法によって粉末することができる。
【0045】
乳化液は、本発明の高濃度アスタキサンチン抽出物を通常使用される適当な酸化防止剤、乳化剤および水、もしくはこれらとグリセロールや増粘多糖類などの乳化媒体との組み合わせからなる液体を、高圧ホモジナイザーなどの乳化装置によって調整し乳化・分散することができる。
【0046】
粉末、水溶性乳化液、ジェル、オイルなどの2次加工品を用いた製品としては、例えば、粉末を他の機能性成分や賦形剤などとともに混合または増粒することによって得られる散在や顆粒、それらを充填したカプセル剤、粉末を他の機能性成分や賦形剤などとともに打錠成形することにより得られる錠剤(圧縮成型物)、あるいは粉末を配合した固形食品、水溶性乳化液を配合した飲料や菓子類をはじめとする一般食品、外用クリーム、乳化液、ローションなどの形態をした医薬品、医薬部外品、化粧品などが挙げられる。
【0047】
薬剤の製剤型としては、例えば、錠剤、舌下錠、丸剤、坐剤、散剤、粉剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、注射剤、乳剤、貼付剤などの形態に製剤化することができる。例えば、錠剤は薬理的に受容しうる担体と均一に混合して打錠することにより、また、散剤、粉剤、顆粒剤は薬剤と担体とを乾式造粒または湿式造粒して製造することができ、湿式造粒としては、常法により、例えば、噴霧乾燥法、流動層造粒法、混練造粒法又は凍結乾燥法などにより乾燥することにより製造できる。
【0048】
散剤、粉剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤はラクトース、グルコース、スクロース、マンニトール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ハイドロタルサイト、無水リン水素酸カルシウムなどの賦形剤、でんぷん、アルギン酸ソーダなどの崩壊剤、マグネシウムステアレート、タルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの表面活性剤、グリセリンなどの可塑剤などを用いて製造できる。また、必要に応じて、常法により口腔内速崩壊剤とすることができる。
【0049】
製剤には必要ならばさらに他の抗酸化剤を添加してもよい。抗酸化剤は特に限定されるものでなく、抗酸化作用を有するものであれば適用可能である。例えば、レチノール、3,4−ジデヒドロレチノールなどのビタミンA類、ビタミンB、D−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸などのビタミンC類、トコフェロール、トコトリエノール、酢酸ビタミンE、コハク酸ビタミンEなどのビタミンE類、リン酸ビタミンE類、コエンザイムQ、フラボノイド、タンニン、エラグ酸、ポリフェノール類、ラジカル阻止剤、ヒドロペルオキシド分解剤、金属キレート剤、活性酸素除去剤、トコキノン、及びこれらの薬学的に許容できる塩、並びにそれらの混合物からなる群から1種または2種以上選択することができる。
【0050】
懸濁剤としては、例えば、ポリソルベート80、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、アラビアガム、粉末トラガントなどを挙げることができる。溶解剤としては、例えば、ポリソルベート80、水添ポリオキシエチレンヒマシ油、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マクロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステルなどを挙げることができる。安定化剤としては、例えば亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウムなどを挙げることができる。防腐剤としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾールなどを挙げることができる。
【0051】
飲食物への添加例としては、マーガリン、バター、バターソース、チーズ、生クリーム、ショートニング、ラード、アイスクリーム、ヨーグルト、乳製品、ソース肉製品、魚製品、フライドポテト、ポテトチップス、ポップコーン、ふりかけ、チューインガム、チョコレート、プリン、ゼリー、グミキャンディー、キャンディー、ドロップ、キャラメル、カステラ、ケーキ、ドーナッツ、ビスケット、クッキー、クラッカーなど、マカロニ、パスタ、サラダ油、インスタントスープ、ドレッシング、卵、マヨネーズ、みそなど、または果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料などの炭酸系飲料または非炭酸系飲料など、茶、コーヒー、ココアなどの非アルコールまたはリキュール、薬用酒などのアルコール飲料などの一般食品への添加例を挙げることができる。
【0052】
本発明の飲食物を栄養補助食品あるいは機能性食品として用いる場合、その形態は、上記医薬用製剤と同様の形態であってもよい。乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミン蛋白質など、または、これらの分解物である卵白オリゴペプチド、大豆加水分解物、アミノ酸単体の混合物を併用することもできる。また、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料などを配合した自然流動食、半消化態栄養食および栄養食、ドリンク剤、カプセル剤、経腸栄養剤などの加工物を挙げることができる。ドリンク形態で提供する場合は、栄養バランス、摂取時の風味を良くするためにアミノ酸、ビタミン類、ミネラル類などの栄養的添加物、甘味料、香辛料、香料および色素などを配合してもよい。
【0053】
本発明の高濃度アスタキサンチン抽出物及びその二次加工品をチューインガムに配合し、口腔や歯の細菌繁殖抑制効果、う蝕抑制効果、歯茎の炎症・化膿抑制効果、口臭抑制効果、歯垢形成抑制効果など機能性を持たせることができる。チューインガムの形態として、特に限定されず、チャンク型、粒型、板型などとする。チューインガムのその他の成分としては、通常配合される各種チューインガム成分を用いることができ、例えば、ガムベース、マルチトール、ブドウ糖、砂糖、乳糖、還元麦芽糖水飴、キシリト−ル、エリスリトール、パラチノース、還元パラチノース、アスパルテーム、光沢剤、軟化剤、香料、着色料など適宜組み合わせて配合することができる。
【0054】
飼料として用いる場合は、そのまま飼料として用いてもよいが、一般に用いられる動物用、魚類用配合飼料の配合原料、例えば、トウモロコシ、マイロ、魚粉、ふすま、食塩、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、アミノ酸類、ビタミン類、微量ミネラル、既存の抗酸化剤等を配合しても良い。
【0055】
化粧品の形態としては、特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、化粧水、パック、洗浄料等のスキンケア化粧料、ファンデーション、アイシャドウ、マスカラ、口紅等のメーキャップ化粧料、分散液、軟膏、外用液剤、クリーム剤等の化粧料とすることができる。
【0056】
また、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、水(アルカリ単純温泉水、深層水、精製水等を含む)、アルコール類、油脂、ロウ、鉱物油、精油、脂肪酸、粉体、金属セッケン、pH調整剤、界面活性剤、増粘剤、色素、安定化剤、殺菌・消毒剤、清涼剤、防腐剤、酸化防止剤、保湿剤、収斂剤、色素・着色剤、香料、紫外線吸収・遮断剤、金属イオンキレート剤、消臭剤、抗脂漏剤、植物又は動物系原料由来の抽出物、ビタミン類、アミノ酸類、ホルモン類、角質溶解剤、酵素、油脂類、α−ヒドロキシ酸類、美白剤、チロシナーゼ活性阻害剤、活性酸素消去剤、過酸化脂質生成抑制剤、抗炎症剤、末梢血管血流促進剤、局所刺激剤、代謝活性剤、角質溶解剤、血行促進剤、細胞賦活剤等を添加しても良い。
【0057】
上述、医薬品や食品などの形態の他に、農薬や魚の色揚げ剤などその他アスタキサンチンが有効成分として作用する形態の使用方法で有ればいずれの用途にでも用いることができる。
【実施例】
【0058】
本発明をさらに詳細に説明にするために以下に実施例をあげるが、本発明がこの実施例のみに限定されないことはいうまでもない。以下に示すアスタキサンチンの量はフリー体換算のアスタキサンチンに換算したときの量である。
【0059】
[アスタキサンチン含有率測定方法]
抽出原料となるヘマトコッカスの破砕藻体中のアスタキサンチン含量は、適量の試料からアスタキサンチンをアセトンで抽出したのち、これをアセトンで希釈して適当な濃度とし、吸光度法(波長474nm、溶媒アセトン)で測定した。また抽出物中のアスタキサンチン含量は、適量の抽出物をアセトンで希釈して適当な濃度とし、吸光度法(波長474nm、溶媒アセトン)で測定した。
【0060】
[比較例1]
ビーズミルで粉砕し噴霧乾燥したヘマトコッカス藻破砕藻の100gを超臨界抽出装置[(株)AKICO製]の抽出槽に充填し、流速3mL/分、温度40℃、圧力50MPaの条件で、S/Nで100に相当する二酸化炭素で抽出を行って抽出物を得、70%ミックストコフェロール2gを添加、均一になるように混合して、濃縮アスタキサンチン抽出物32g(収率80%、アスタキサンチン含有濃度12.5重量%、脂質87.5%)を得た。形状はやや流動性のある液状であった。
【0061】
[参考例1]
ビーズミルで粉砕し噴霧乾燥したヘマトコッカス藻破砕藻の100gを超臨界抽出装置[(株)AKICO製]の抽出槽に充填し、流速3mL/分、温度40℃、圧力30MPaの条件で、S/Nで75に相当する二酸化炭素で抽出を行いその部分を取り除いた。続いて、流速3mL/分、温度40℃、圧力50MPaで、S/Nで120に相当する二酸化炭素で抽出を行って抽出物を得た。この操作を2回繰り返して抽出物を混合し、70%ミックストコフェロール4gを添加混合して、濃縮アスタキサンチン抽出物26g(収率88%アスタキサンチン含有濃度30重量%、脂質70%)を得た。形状は固形状であった。
【0062】
[実施例1]
参考例1で得た濃縮アスタキサンチン抽出物と希釈調整用パーム油由来の中鎖脂肪酸グリセライド(MCT)を16:22の割合で混合し、12.5%(w/w)のアスタキサンチン含有の濃縮アスタキサンチン抽出物を得た。形状は通常の溶液と同様の溶液であった。
【0063】
[実施例2]
参考例1で得た濃縮アスタキサンチン抽出物と希釈調整用パーム油由来の中鎖脂肪酸グリセライドを16:5の割合で混合し、25%(w/w)のアスタキサンチン含有の濃縮アスタキサンチン抽出物を得た。形状は流動性のある液状であった。
【0064】
[比較例2]
参考例1で得た濃縮アスタキサンチン抽出物全量と希釈剤としてオリーブ油5gを16:5の割合で混合し、25%(w/w)のアスタキサンチン含有の濃縮アスタキサンチン抽出物を得た。形状は半固形状であった。
【0065】
[酸素下安定性試験]
抽出物20mgをキャップ付き試験管(10ml)に入れ、酸素で置換し、封をした後、80℃で加温した状態で、4時間後のアスタキサンチン含量を含有率測定試験と同様に吸光度法で測定した。
【0066】
[表1]酸素下安定性試験の結果

各数値の単位は%を示す。
【0067】
[表2] 酸素下安定性試験の結果
B型粘度計を用いて、試料を25℃、40℃、50℃に保ち、操作開始から1分後の粘度を測定した。
【0068】
[表2] 粘度測定試験

各数値の単位はcpを示す。
【0069】
[臭気官能試験]
あらかじめ室温と同じ温度にしておいた密閉容器中の抽出物を社内の試験員10名による官能試験により、5段階で臭気を評価し、その平均値をとった。
(評 価 点) (内 容)
5: きわめて不快な臭気、あるいは強い酸敗臭がある。
4: 特有の不快な臭気、あるいは酸敗臭がある。
3: あきらかに特有の臭気があるが、不快な程度ではない。
2: 僅かに特異臭を感じる。
1: ほとんどにおいを感じない。
【0070】
[表3] 臭気官能試験(直後)

評価1〜5の数値の単位は人数を、平均の数値は人数と評価点の平均を示す。
【0071】
[表4]臭気官能試験(加速後)

評価1〜5の数値の単位は人数を、平均の数値は人数と評価点の平均を示す。
【0072】
[GC/MS測定試験]
抽出物1mLをナスフラスコに入れ、捕集カラムTenaxTA(GLサイエンス)を取り付け、抽出物を43℃に加温した。パージガスとして高純度窒素ガスを流速50mL/minで10分間流し、試料に含まれる揮発性成分を捕集カラムに吸着させた。捕集カラムをガスクロマトグラフィー質量分析装置の試料注入口にセットし、150℃にて試料からの揮発成分を気化、キャリアーガス(高純度へキサン)によりカラムDB−WAX(φ0.25mm×60m)、カラム温度40℃(10min hold)40℃→230℃ (rate 5℃/min)にて分離し検出器となる質量分析計にてピークを得た。得られたクロマトグラムから規定の成分(2-methyl-Butanal,3-methyl-Butanal,Pentanal,Hexanal, Acetic acid,Propanoic acid)のピーク面積を算出した。
【0073】

【0074】
参考例1や比較例2の高濃度アスタキサンチン含有油脂は粘度が高く加工用の油脂としては不適能である。MCT、オリーブ油自体の粘性に大きな差はないが、MCTを添加した実施例1、2では、それぞれ同濃度のアスタキサンチンを含有する比較例1、2に比べて有意に粘度が低く、加工性が高い。分別抽出を行った実施例1では、分別抽出を行わなかった比較例1に比べて有意に臭気が低く、また実施例1、2、比較例1、2で得たアスタキサンチン抽出物をそれぞれ25℃で3ヶ月保管した後の臭気を比較した場合、実施例1および2は、比較例1および2に比べて有意に臭気が低かった。
また加速安定性試験では、分別抽出後MCTで希釈した実施例1の安定性は、分別抽出を行わなかった比較例1の安定性に比べて有意に高く、また分別抽出後MCTでアスタキサンチンの濃度を25%に希釈調整した実施例2の安定性は、分別抽出後オリーブ油でアスタキサンチンの濃度を25%に希釈調整した比較例2よりも有意には高かった。
【0075】
[製剤例1] 粉末
グリセリン脂肪酸エステル0.8g、カルボキシメチルセルロース0.8g、ミックストコフェロール0.4g、アラビアガム28g、デキストリン30g、実施例1の高濃度アスタキサンチン抽出物40g、精製水200gからなる均一な乳化懸濁液を、入口温度200℃、出口温度100℃、ディスク回転速度24000rpm、噴霧速度1.8L/hrの条件により噴霧乾燥し、流動性粉末70gを得た。粉末中のアスタキサンチン含量は10%であった。
【0076】
[製剤例2] 乳化液
下記の処方からなる分散液を、高圧ホモジナイザーで処理し、乳化安定性の優れた高度乳化分散液を得た。乳化液中のアスタキサンチン含量は2.5%であり、アスタキサンチンの安定性も優れていた。
水 31.2重量部
グリセリン 50重量部
グリセリン脂肪酸エステル 3重量部
ショ糖脂肪酸エステル 5重量部
ミックストコフェロール 0.5重量部
アスコルビン酸ナトリウム 0.3重量部
アスタキサンチン(*) 10重量部
*アスタキサンチンオイルは実施例1のアスタキサンチン抽出物に中鎖脂肪酸トリグリセリドを添加して粘度を下げて取り扱い安くしたアスタキサンチン5%濃度のオイルである。
【0077】
[製剤例3] 化粧品クリーム
下記の処方に従って、常法により、均一に乳化、混合し、クリームを得た。水を加えて全量を100とした。
水 67.84重量部
エタノール 3.00重量部
スクワラン 0.50重量部
ポリソルベート80 0.30重量部
ポリグリセリン 3.00重量部
ブチレングリコール 25.00重量部
フェニキシエタノール 0.30重量部
アスタキサンチンオイル(*) 0.06重量部
*アスタキサンチンオイルは実施例1のアスタキサンチン抽出物に中鎖脂肪酸トリグリセリドを添加して粘度を下げて取り扱い安くしたアスタキサンチン5%濃度のオイルである。
【0078】
[製剤例4] ドリンク剤
下記成分を配合し、常法に従って、水10kgを加えてドリンク剤を調製した。
液糖 4000重量部
DL−酒石酸ナトリウム 1重量部
クエン酸 50重量部
ビタミンC 50重量部
ビタミンE 150重量部
シクロデキストリン 25重量部
塩化カリウム 5重量部
硫酸マグネシウム 2重量部
アスタキサンチンオイル(*) 0.25重量部
*アスタキサンチンオイルは実施例1のアスタキサンチン抽出物に中鎖脂肪酸トリグリセリドを添加して粘度を下げて取り扱い安くしたアスタキサンチン5%濃度のオイルである。
【0079】
[製剤例5] チューインガム剤
下記成分を配合し、常法に従って、板状のチューインガムを調製した。
ガムベース 26重量部
マルチトール 32重量部
キシリトール 28重量部
還元パラチノース 10重量部
軟化剤 1重量部
香料 2重量部
アスタキサンチンオイル(*) 1重量部
*アスタキサンチンオイルは実施例1のアスタキサンチン抽出物に中鎖脂肪酸トリグリセリドを添加して粘度を下げて取り扱い安くしたアスタキサンチン5%濃度のオイルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全量100重量%に対してアスタキサンチン12〜40重量%、中鎖脂肪酸トリグリセリド10〜60重量%、抽出試料に由来する脂質20〜60重量%からなり、室温で流動性のある液状を呈することを特徴とする天然アスタキサンチン含有抽出物。
【請求項2】
全量100重量%に対してアスタキサンチン20〜40重量%、中鎖脂肪酸トリグリセリド20〜40重量%、抽出試料に由来する脂質30〜60重量%からなり、25℃における粘度が2500cp以下で、流動性のある液状を呈することを特徴とする天然アスタキサンチン含有抽出物。
【請求項3】
酸素下安定性試験で4時間後の残存率が90%以上である請求項1〜2のいずれか1項に記載の抽出物。
【請求項4】
製造直後及び/又は開封後の臭気がGC/MS測定試験において、臭気成分のピーク面積が10×10以下、及び/又は臭気官能試験において評価点2以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の抽出物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の抽出物を含有する粉末状、錠剤状、乳化液状、ジェル状、オイル状の組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の抽出物又は組成物を含有する飲食物、機能性食品、医薬品、化粧品、飼料。

【公開番号】特開2010−43032(P2010−43032A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208786(P2008−208786)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(390011877)富士化学工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】