説明

高濃度アルコール含有物を収容するための成形容器用共重合ポリエステル樹脂および成形容器

【課題】高濃度アルコール含有物に対する耐ストレスクラック性に優れ、かつ透明性と耐衝撃性および耐熱性を有する容易に成形可能な高濃度アルコール含有物を収納するための成形容器用共重合ポリエステル樹脂および成形容器を提供する。
【解決手段】テレフタル酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるジオール成分とする共重合ポリエステル樹脂であって、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を全ジオール成分に対して8モル%以上、15モル%以下含有し、かつ、下記(I)、(II)を満足する高濃度アルコール含有物を収容するための成形容器用共重合ポリエステル樹脂。
(I)固有粘度が0.81dl/g以上、1.20dl/g以下
(II)エタノール濃度60重量%水溶液に対する臨界歪値が0.5%以上

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は共重合ポリエステル樹脂に関し、さらに詳しくは、高濃度アルコール含有物に対する耐ストレスクラック性に優れ、かつ透明性、耐衝撃性、および耐熱性に優れる成形容器用の共重合ポリエステル樹脂および、該共重合ポリエステル樹脂からなる成形容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明な成形体の原料として共重合ポリエステル樹脂が知られている。特許文献1には、洗剤などに対する耐薬品性に優れ、かつ透明性と耐衝撃性に優れる共重合ポリエステル樹脂として、テレフタル酸を主たる成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールを主たる成分とするジオール成分とから得られ、
1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が全ジオール成分中の8〜15モル%である共重合ポリエステル樹脂が提案されている。
【0003】
しかしながら、開示されている共重合ポリエステル樹脂からなる成形品は透明で、洗剤液などに対する耐性は良好であるが、化粧品などの高濃度アルコール含有物に対する耐性は必ずしも満足できないという問題があった。
【特許文献1】特開2007−319550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、高濃度アルコール含有物に対する耐ストレスクラック性に優れ、かつ透明性と耐衝撃性および耐熱性に優れ、容易に成形可能な高濃度アルコール含有物を収容するための成形容器用共重合ポリエステル樹脂(以下、単に「共重合ポリエステル樹脂」と略記することがある。)および成形容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコールを主たるジオール成分とし、他の共重合成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を含む特定の共重合ポリエステル樹脂によって達成される。
即ち本発明の第1の要旨は、テレフタル酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるジオール成分とする共重合ポリエステル樹脂であって、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を全ジオール成分に対して8モル%以上、15モル%以下含有し、かつ、下記(I)、(II)を満足する高濃度アルコール含有物を収容するための成形容器用共重合ポリエステル樹脂である。
(I)固有粘度が0.81dl/g以上、1.20dl/g以下
(II)エタノール濃度60重量%水溶液に対する臨界歪値が0.5%以上
そして、本発明の第2の要旨は、上記共重合ポリエステル樹脂を用いて得られる高濃度アルコール含有物を収容するための成形容器である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、容易に成形可能で、高濃度アルコールに対する耐ストレスクラック性に優れ、かつ透明性と耐衝撃性および耐熱性に優れるためにこれを用いて得られる成形容器は、高濃度アルコール含有物を収容するための成形容器として広く使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコールを主たるジオール成分とし、他の共重合成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を含む共重合ポリエステル樹脂からなる。
本発明の共重合ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分は主としてテレフタル酸であるが、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分を少量含んでいても良い。具体的には、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、ダイマー酸などが挙げられる。これらは単独でも2種以上を使用することもできるが、ジカルボン酸成分全体の5モル%以下であることが好ましい。
【0008】
本発明の共重合ポリエステル樹脂のジオール成分は主として、エチレングリコールであるが、エチレングリコール以外のジオール成分として、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を含んでいる。
本発明の共重合ポリエステル樹脂中の1,4−シクロヘキサンジメタノール成分の含有量は、全ジオール成分に対して8モル%以上、15モル%以下である。1,4−シクロヘキサンジメタノール成分の含有量が8モル%未満の場合、得られる共重合ポリエステル樹脂の成形体の透明性が劣ることとなる。また、含有量が15モル%を超えると、得られる共重合ポリエステル樹脂の成形体の高濃度アルコール含有物に対する耐ストレスクラック性が劣ることとなる。
【0009】
また、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分の全ジオール成分に対する
含有量は、9モル%以上、11モル%以下であるのがより好ましい。
尚、本明細書において、「主たる」とは、成分中、モル%が最も多いことを意味し、例えば「テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし」とは、ジカルボン酸成分中、テレフタル酸のモル%が最も多いことを意味する。
【0010】
本発明の共重合ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.81dl/g以上、1.20dl/g以下の範囲である。共重合ポリエステル樹脂の固有粘度がこの範囲にあることで、高濃度アルコール含有物に対する耐ストレスクラック性に優れた成形体を得ることができる。すなわち、共重合ポリエステル樹脂の固有粘度が0.81dl/gに満たない場合は、高濃度アルコール含有物に対する耐ストレスクラック性が低下し、1.20dl/gを超える場合は、成形性が低下する。
【0011】
本発明の共重合ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.81dl/g以上、1.00dl/g以下の範囲であることがより好ましい。
本発明の共重合ポリエステル樹脂の成形体の、エタノール濃度60重量%水溶液に対する臨界歪値(測定法は下記に従う)は0.5%以上である。
(エタノール濃度60重量%水溶液に対する臨界歪値の測定法)
共重合ポリエステル樹脂を熱風乾燥機中130℃で5時間乾燥し、樹脂水分率を100ppm以下とした後、射出成形機を使用して射出圧力60MPa、成形温度260℃、金型温度40℃で、厚さ3.8mmのASTM引張試験片を成形する。この試験片を試験片固定具(図1)に取り付け、試験液(本発明では、エタノール濃度60重量%水溶液)を試験片表面に塗布したあと、室温23℃、湿度50%の部屋中で24時間放置し、亀裂発生点(χ)を測定する。臨界歪値(τ)は下記式により算出する。
【0012】
τ=b/2a×{1−[(a−b)χ/a4]}−3/2 × t ×100
(1)
τ:臨界歪値
a:楕円長軸 200mm
b:楕円短軸 90mm
χ:亀裂発生点 試験片の長軸に対する固定端から亀裂発生点までの距離 mm
t:試験片厚み 3.8mm
上記臨界歪値が0.5%より小さい場合は、応力により容器に亀裂が発生したり、白濁を生じるという問題が発生する。
【0013】
本発明の共重合ポリエステル樹脂の成形体の、エタノール濃度60重量%水溶液に対する臨界歪値は、より好ましくは0.7%以上である。
上記臨界歪値は大きければ大きいほど良いが、本方法での測定限界の点から、上限は通常1.0%、好ましくは0.9%である。
本発明の、共重合ポリエステル樹脂は、基本的には、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分とによる共重合ポリエステル樹脂の慣用の製造方法により製造される。
【0014】
即ち、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分とをエステル化反応槽でエステル化し、得られたエステル化反応生成物を溶融重縮合反応槽に移送し溶融重縮合させる直接重合法、テレフタル酸のエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分とをエステル交換反応槽でエステル交換反応し、得られたエステル交換反応生成物を溶融重縮合反応槽に移送し溶融重縮合させるエステル交換法がある。尚、テレフタル酸のエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸ジメチル等のアルキルエステルが挙げられる。これらの反応は回分式でも連続式でも行える。また1,4−シクロヘキサンジメタノールはエステル化反応、またはエステル交換反応終了までの任意の時点で添加することができるが、エチレングリコールまたは水に溶解させて添加するのが操作上好ましい。
【0015】
又、通常、溶融重縮合反応により得られた樹脂は、溶融重縮合反応槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷しながら若しくは水冷後、カッターで切断されてペレット状とされる。更に、この溶融重縮合反応後のペレットを加熱処理して固相重縮合させることにより、更に高重合度化させ得ると共に、反応副生物のアセトアルデヒドや低分子オリゴマー等を低減化することもできる。
【0016】
尚、前記製造方法において、エステル化反応は、必要に応じて、例えば、三酸化二アンチモンや、アンチモン、チタン、マグネシウム、カルシウム等の有機酸塩、アルコラート等のエステル化触媒を使用して、200〜270℃程度の温度、1×10〜4×10Pa程度の圧力下でなされ、エステル交換反応は、必要に応じて、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、マンガン、チタン、亜鉛等の有機酸塩等のエステル交換触媒を使用して、200〜270℃程度の温度、1×10〜4×10Pa程度の圧力下でなされる。
【0017】
エステル化触媒を使用する場合、触媒の使用量は通常、全ジカルボン酸成分1モルに対して0.5×10−4〜10×10−4モルの範囲である。
エステル交換触媒を使用する場合、触媒の使用量は通常、全ジカルボン酸成分1モルに対して0.5×10−4〜10×10−4モルの範囲である。
又、溶融重縮合反応は、例えば、安定剤として正燐酸、亜燐酸、及びこれらのエステルなどの燐化合物を使用し、例えば、三酸化二アンチモン、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等の金属酸化物、或いは、アンチモン、ゲルマニウム、亜鉛、チタン、コバルト、アルカリ土類金属等の有機酸塩、アルコラート等の重縮合触媒を使用して、240〜290℃程度の温度、1×10〜2×10Pa程度の減圧下でなされる。
【0018】
重縮合触媒の使用量は、通常全ジカルボン酸成分1モルに対して0.5×10−4〜10×10−4モルの範囲である。
又、固相重縮合は、120〜200℃程度の温度で1分間以上加熱する等して予備結晶化がなされた後、180〜融点マイナス5℃程度の温度、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下、又は/及び、1×10〜2×10Pa程度の減圧下でなされる。
【0019】
本発明の固有粘度および臨界歪値を備えた共重合ポリエステル樹脂を得るためには、上記固相重縮合を190℃以上の温度で20時間以上行うのが好ましい。
本発明の共重合ポリエステル樹脂を用いた成形容器は、高濃度アルコール含有物、中でもメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコールの高濃度含有物に対する耐ストレスクラック性に優れているため、高濃度アルコール含有物を収容するための成形容器用に使用されるものである。尚、本発明における高濃度アルコール含有物とは、アルコール濃度が60重量%以上の溶液であり、アルコール以外の成分としては、水、グリセリン、植物油、トコフェロール、ビタミンA、尿素、クエン酸、香料等が挙げ
られる。本発明の共重合ポリエステル樹脂を用いて得られる成形容器は、高濃度アルコール含有物を収容するための成形容器として用いられるものであるが、特にエタノールを高濃度に含む水溶液に対する耐ストレスクラック性にすぐれている。
【0020】
耐ストレスクラック性は、臨界歪値の値に基づいて評価する。
尚、本発明の高濃度アルコール含有物を収容するための成形容器は、本発明の共重合ポリエステル樹脂から公知の成形方法によって製造される。例えば、共重合ポリエステル樹脂を乾燥により水分率を200ppm以下とした後、射出成形機に供給し、樹脂の溶融温度において所定形状の金型に射出成形し、金型内で冷却固化することにより得られる。
【実施例】
【0021】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。各物性の測定方法および評価は、下記の方法に従った。
(1)固有粘度(IV)
共重合ポリエステル樹脂試料約0.25gを、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合液約25mLに、濃度が1.00g/dLとなるように溶解させた後、30℃まで冷却、保持し、全自動溶液粘度計(中央理化社製「2CH型DT504」)にて、試料溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、下式(2)により算出した。
IV=((1+4KH・ηsp0.5−1)/(2KH・C) (2)
ここで、 ηsp=η/η0−1 であり、ηは試料溶液の落下秒数、η0は溶媒のみの落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。なお試料の溶解条件は、110℃で30分間であった。
【0022】
(2)共重合ポリエステル樹脂構成成分の定量(NMR測定)
共重合ポリエステル樹脂を、重クロロホルム/HFIPの混合溶液=70/30(重量比)で溶解し、BRUKER社製AV400M分光計を用いてH−NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピーク積分強度から共重合組成(モル%)を計算した。
【0023】
(3)耐熱性評価(熱変形温度)
共重合ポリエステル樹脂を熱風乾燥機中130℃で5時間乾燥し、樹脂水分率を100ppm以下としたあと、射出成形機(住友重機工業製SE100−DU-C250)を使用して射出圧力60MPa、成形温度260℃、金型温度40℃で、長さ110mm、幅4.2mm、高さ12.8mmの試験片を成形した。得られた試験片を用いてJIS K 7207「硬質プラスチックの荷重たわみ温度試験方法」に準じて、荷重0.45MPa(4.6kgf/cm)における熱変形温度を測定した。
【0024】
(4)透明性(プレートへーズ)
共重合ポリエステル樹脂を熱風乾燥機中130℃で5時間乾燥し、樹脂水分率を100ppm以下とした後、射出成形機を使用して射出圧力60MPa、成形温度260℃、金型温度40℃で、厚み6mmの平板プレートを成形し、ヘーズメーター(日本電色社製 ヘーズメーター300A)によりJIS K 7105に準じて測定した。
○:プレートヘーズ1.0%未満
×:プレートヘーズ1.0%以上
【0025】
(5)アイゾット衝撃値
共重合ポリエステル樹脂を熱風乾燥機中130℃で5時間乾燥し、樹脂水分率を100ppm以下としたあと、射出成形機を使用して、射出圧力60MPa、成形機温度260℃、金型温度40℃で、厚み1/2インチのノッチ付きアイゾット衝撃強度測定用試験片を成形し、JISK7110に準じて測定した。
【0026】
(6)臨界歪値及び耐ストレスクラック性
共重合ポリエステル樹脂を熱風乾燥機中130℃で5時間乾燥し、樹脂水分率を100ppm以下としたあと、射出成形機を使用して射出圧力60MPa、成形温度260℃、金型温度40℃で、厚さ3.8mmのASTM引張試験片を成形した。この試験片を長軸200mm、短軸90mmの1/4楕円治具(図1)に取り付け、試験液(本発明では、エタノール濃度60重量%水溶液)を試験片表面に塗布したあと、室温23℃、湿度50%の部屋中で24時間放置し、亀裂が発生する位置χを測定し、下記式(1)を用いて臨界歪値を求めた。前記測定法で求めた臨界歪値に基づき、耐ストレスクラック性を下記のようにランク分けした。
τ=b/2a×{1−[(a−b)χ/a4]}−3/2 × t ×100
(1)
τ:臨界歪値
a:楕円長軸 200mm
b:楕円短軸 90mm
χ:亀裂発生点 試験片の長軸に対する固定端から亀裂発生点までの距離 mm
t:試験片厚み 3.8mm
【0027】

【0028】
(実施例1)
テレフタル酸ジメチルエステル(以下DMTと略記する場合がある)49.8kgと、酸成分に対しジオール成分のモル比が2.2となるように1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下CHDMと略記する場合がある)2.9kgおよびエチレングリコール(以下EGと略記する場合がある)33.1kgとを攪拌機および留出管を備えたステンレス製オートクレーブに仕込み、得られる共重合ポリエステル樹脂に対して300重量ppmとなる酢酸カルシウムを加え、250℃、絶対圧力で101kPaの条件下で副生するメタノールを除去しつつ、5時間エステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、得られる共重合ポリエステル樹脂に対して150重量ppmの二酸化ゲルマニウム触媒と240重量ppmのリン酸トリエチルをそれぞれエチレングリコール溶液として加え、280℃、120Paの減圧下にて表1に記載の時間溶融重縮合反応を行った後ストランド状に抜きだし水冷しつつカッティングしてペレットとした。得られた共重合ポリエステル樹脂ペレットを窒素雰囲気下、100℃で8時間予備結晶化させた後、イナートオーブン(TABAI ESPEC社製INERT OVEN IPHH201)中窒素流通下195℃で固相重縮合を行った。得られた共重合ポリエステル樹脂を用いて上記に記載の方法で試験片を作製した。溶融重縮合時間、固相重縮合時間、共重合組成(モル%)、得られた共重合ポリエステル樹脂の固有粘度、得られた共重合ポリエステル樹脂を用いて作製した試験片の評価結果を表1に示した。
【0029】
【表1】

【0030】
(実施例2〜実施例6)
実施例1において、DMT、EG、CHDMの仕込み量及び固相重合時間を
表1及び2に示す様に変更した以外は実施例1と同様に行い評価した。結果を表1及び表2に示した。
【0031】
【表2】

【0032】
(比較例1〜比較例5)
実施例1において、DMT、EG、CHDMの仕込み量及び固相重縮合時間を表3および表4に示す様に変更したこと以外は実施例1と同様に行い評価した。結果を表3および表4に示す。
【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【0035】
(結果の考察)
以上の実施例から、本発明の共重合ポリエステル樹脂を用いた成形体は、高濃度アルコールに対する耐ストレスクラック性に優れていることが分かった。
比較例1より、CHDM成分の共重合量が少ないと成形体のプレートヘーズが高く透明性が劣ることが分る。
比較例2、3より、CHDM成分の共重合量が多く、臨界歪値が小さいと高濃度アルコール含有物に対する耐ストレスクラック性が劣ることが分る。
比較例4、5より、固有粘度が低すぎると高濃度アルコール含有物に対する耐ストレスクラック性が劣ることが分る。
【0036】
(成形容器の作製)
実施例1〜6、比較例2〜5で得られた共重合ポリエステル樹脂を熱風乾燥機中130℃で5時間乾燥し、樹脂水分率を100ppm以下としたあとJEB−7形中空成形機(日本製鋼所製)を用いて、溶融温度270℃、ダイス温度260℃、金型温度40℃、吐出量10kg/hrで、直径80mm、高さ170mm、最大厚み2mm、容量700CCの中空容器(ボトル)を成形した。
【0037】
(成形容器の評価結果)
得られた成形容器(ボトル)に60重量%濃度のエタノール水溶液を入れて、ボトルの口部をポリエチレン製のキャップで密栓し、40℃の恒温槽中で3ヶ月間保管した後の容器の状態を観察した。比較例2〜5の共重合ポリエステル樹脂で作製した容器は、底部にクラックや白濁が発生していた。一方、実施例1〜6の共重合ポリエステル樹脂で作製した容器は、クラックや白濁は観察されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は高濃度アルコール含有物を収容するための成形容器としての使用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】耐ストレスクラック性の測定に用いたASTM引張試験片の試験片固定治具および試験片を示す模式図である。
【符号の説明】
【0040】
1 試験片固定治具
2 試験片
3 亀裂発生点 χ
4 試験片固定端
5 楕円長軸 a
6 楕円短軸 b
7 試験片厚み t

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるジオール成分とする共重合ポリエステル樹脂であって、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を全ジオール成分に対して8モル%以上、15モル%以下含有し、かつ、下記(I)、(II)を満足する高濃度アルコール含有物を収容するための成形容器用共重合ポリエステル樹脂。
(I)固有粘度が0.81dl/g以上、1.20dl/g以下
(II)エタノール濃度60重量%水溶液に対する臨界歪値が0.5%以上
【請求項2】
請求項1に記載の共重合ポリエステル樹脂を用いて得られる高濃度アルコール含有物を収容するための成形容器。

【図1】
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【公開番号】特開2010−95635(P2010−95635A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268014(P2008−268014)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】