説明

高濃度ゲンチアナバイオレットを含む医療用器具及びその製造方法

高濃度のゲンチアナバイオレットで処理された埋め込み可能な、カテーテル等の医療用器具、及び医療用器具を製造する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本願は、米国仮特許出願第60/997,490号(出願日:2007年10月3日)の優先権の利益を享受するものであり、上記出願の内容は参照されることにより明細書の開示の一部とされる。
【発明の分野】
【0002】
本発明は、高濃度のゲンチアナバイオレットで処理した、埋め込み可能な医療用器具、特にカテーテル、及びこれらの医療用器具の製造方法に関する。
【発明の背景】
【0003】
本明細書全体を通して様々文献を引用するが、これら文献は本発明の属する技術をより詳細に説明するためのものであり、これらの文献は引用されることにより本明細書の開示の一部とされる。
【0004】
埋め込み可能な医療用器具、例えば、くり抜いた(tunneled)カテーテルは、医療全体で主要な役割を果たしている。最初の挿入に関連する気胸及び出血状合併症に加えて、カテーテルには、長期間の感染危険性がつきまとう(Harterら、2002、Roodenら、2005、Safdar and Maki 2003、Saintら、2000)。埋め込みに続いて、そのような器具の表面上に微生物がコロニー形成すると、埋め込んだ器具の取り出し及び/又は交換及び/又は二次感染の強力な処置を必要とする、深刻で経費のかかる合併症が生じることがある。感染の危険性を最小に抑えるために、埋め込み可能な医療用器具を、ゲンチアナバイオレット(GV)又は他の抗菌剤で処理することができる(例えば、Hannaら、2006、米国特許第5,451,424号、第5,688,516号、第5,707,366号、第6,261,271号、第6,273,875号、第6,528,107号)。
【0005】
米国特許第5,709,672号には、ゲンチアナバイオレットの、0.01%〜1%未満、好ましくは0.01%〜0.1%の非常に低い濃度の装填量における溶剤含浸方法が記載されている。米国公開特許出願US2003/0078242 A1号、US2005/0131356 A1号、及びUS2005/0197634 A1号も、染料、例えばゲンチアナバイオレットに関する溶剤含浸を開示している。これらの方法は、最初に医療用器具を形成し、続いてその器具をゲンチアナバイオレットのような試剤で被覆又は含浸処理する複数の工程が関与する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ゲンチアナバイオレットで処理された、埋め込み可能な医療用器具、とりわけカテーテルであって、前記器具が、ゲンチアナバイオレットで処理された熱可塑性樹脂又はゲンチアナバイオレットで処理された熱硬化性樹脂を含んでなり、前記器具中のゲンチアナバイオレットの濃度が前記熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の1質量%を超える、埋め込み可能な医療用器具を提供する。
【0007】
本発明は、ゲンチアナバイオレットで処理された熱可塑性樹脂層又はゲンチアナバイオレットで処理された熱硬化性樹脂層を含んでなる、ラミネート加工された埋め込み可能な医療用器具、例えばカテーテルであって、前記層中のゲンチアナバイオレットの濃度が層中の前記熱可塑性樹脂又前記熱硬化性樹脂の1質量%を超える、ラミネート加工された埋め込み可能な医療用器具も提供する。
【0008】
本発明は、ゲンチアナバイオレットで処理された熱可塑性樹脂を含んでなる、埋め込み可能な医療用器具、例えばカテーテルであって、前記熱可塑性樹脂の加工温度が207℃未満であり、前記器具中のゲンチアナバイオレットの濃度が該熱可塑性樹脂の0.05〜20質量%である、埋め込み可能な医療用器具をさらに提供する。
【0009】
本発明は、ゲンチアナバイオレットで処理された熱可塑性樹脂層を含んでなる、ラミネート加工された埋め込み可能な医療用器具、例えばカテーテルであって、前記層中の熱可塑性樹脂の加工温度が207℃未満であり、前記層中のゲンチアナバイオレットの濃度が、前記層中の該熱可塑性樹脂の0.05〜20質量%である、ラミネート加工された埋め込み可能な医療用器具も提供する。
【0010】
本発明は、ゲンチアナバイオレットで処理された、埋め込み可能な医療用器具の製造方法であって、ゲンチアナバイオレットを熱可塑性樹脂と共に温度207℃未満で押し出すことを含んでなり、ゲンチアナバイオレットの濃度が前記熱可塑性樹脂の0.05〜20質量%である、方法をさらに提供する。
【0011】
本発明は、上記器具により形成されたゲンチアナバイオレットステインの脱色に使用するための、ゲンチアナバイオレットで処理した、埋め込み可能な医療用器具、特にカテーテル、並びに、非イオン化金属及び所望により過酸化物を含んでなるキットをさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】水/ACN/MeOH中ゲンチアナバイオレット(gentian violet)(GV)(ScienceLab)50μg/mL/CHA標準200μg/mLのHPLCクロマトグラム@588 nm。
【図2】Tecothane(登録商標)2095A中にコンパウンディングしたゲンチアナバイオレットのHPLCクロマトグラム@588nm。
【図3】ゲンチアナバイオレットStandard(Aldrich)のHPLCクロマトグラム@588 nm。
【図4】Tecothane(登録商標)2095A Tube試料から得たゲンチアナバイオレットのHPLCクロマトグラム@588nm。
【図5】170℃で0.5%GV(Aldrich ACS等級)とコンパウンディングしたTecothane(登録商標)(w/30%BiOCl)の588nmにおけるクロマトグラム。
【図6】217℃で0.5%GV(Aldrich ACS等級)とコンパウンディングした分解Tecothane(登録商標)(w/30%BiOCl)の588nmにおけるクロマトグラム。
【図7】170℃で0.5%GV(Aldrich ACS等級)とコンパウンディングしたTecothane(登録商標)(w/30%BiOCl)の253nmにおけるクロマトグラム。
【図8】217℃で0.5%GV(Aldrich ACS等級)とコンパウンディングした分解Tecothane(登録商標)(w/30%BiOCl)の253nmにおけるクロマトグラム。
【図9】170℃で0.5%GV(Aldrich ACS等級)とコンパウンディングしたTecothane(登録商標)(w/30%BiOCl)の280nmにおけるクロマトグラム、5.896分ピークは溶剤による。
【図10】217℃で0.5%GV(Aldrich ACS等級)とコンパウンディングした分解Tecothane(登録商標)(w/30%BiOCl)の280nmにおけるクロマトグラム、5.974分ピークは溶剤による。
【図11】寒天プレート上の局所的ゲンチアナバイオレット(GV)ステインの、銀活性化された過酸化水素による除去。図11(A)は、10μl 0.1%GV+100μlHであり、図11(B)は10μl 0.1%GV+100μlH+0.00867gAgである。
【発明の詳細な説明】
【0013】
本発明は、ゲンチアナバイオレットで処理された埋め込み可能な医療用器具であって、ゲンチアナバイオレットで処理された熱可塑性樹脂又はゲンチアナバイオレットで処理された熱硬化性樹脂を含んでなり、器具中のゲンチアナバイオレットの濃度が前記熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の1質量%を超える、埋め込み可能な医療用器具を提供する。
【0014】
本発明は、ゲンチアナバイオレットで処理された熱可塑性樹脂層又はゲンチアナバイオレットで処理された熱硬化性樹脂層を含んでなる、ラミネート加工された埋め込み可能な医療用器具であって、前記層中のゲンチアナバイオレットの濃度が前記層中の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の1質量%を超える、ラミネート加工された埋め込み可能な医療用器具も提供する。
【0015】
本発明は、ゲンチアナバイオレットで処理された熱可塑性樹脂を含んでなる、埋め込み可能な医療用器具であって、前記熱可塑性樹脂の加工温度が207℃未満であり、前記器具中のゲンチアナバイオレットの濃度が前記熱可塑性樹脂の0.05〜20質量%である、埋め込み可能な医療用器具をさらに提供する。
【0016】
本発明は、ゲンチアナバイオレットで処理された熱可塑性樹脂層を含んでなる、ラミネート加工された埋め込み可能な医療用器具であって、前記層中の熱可塑性樹脂の加工温度が207℃未満であり、前記層中のゲンチアナバイオレットの濃度が、前記層中の熱可塑性樹脂の0.05〜20質量%である、ラミネート加工された埋め込み可能な医療用器具も提供する。
【0017】
ここで使用する「熱可塑性樹脂」は、加熱及び冷却により、粘性で変形し得る(加工し得る)材料から形成された(成形された)固体材料に可逆的に変化し得る重合体状材料である。ここで使用する「熱硬化性樹脂」は、形成された(成形された)固体材料を製造するために、三次元的網目に不可逆的に架橋する必要がある重合体状材料である。
【0018】
本発明で使用できる熱可塑性樹脂の例としては、ポリウレタン(例えばTecothane(登録商標)、Carbothane(登録商標)、Tecoflex(登録商標)、Tecophilic(登録商標)、Texin(登録商標)及びPellethane(登録商標))、ポリオレフィン、ビニル重合体(例えば塩化ビニル、ブチルゴム、エチレンビニルアセテート及び共重合体)、アクリレート重合体、ポリアミド、ポリエステル、フルオロエラストマー(例えばヘキサフルオロプロピレンフッ化ビニリデン共重合体)及び共重合体(ブロック共重合体及び部分(segmented)ブロック共重合体を包含する)及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリウレタンが好ましい熱可塑性樹脂である。
【0019】
熱硬化性樹脂の例としては、シリコーン、加硫ゴム、ポリイミド及びエポキシが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
好ましくは、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は生物相容性である。
【0021】
種々の例において、器具中のゲンチアナバイオレットの濃度は、熱可塑性樹脂また熱硬化性樹脂の1.1質量%、1.5質量%、2質量%、2.5質量%、3質量%、4質量%、5質量%、7.5質量%又は10質量%を超える。ゲンチアナバイオレットの濃度は、例えば熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の20質量%まででよい。器具がラミネート加工された器具である場合、ゲンチアナバイオレットを含む層中のゲンチアナバイオレットの濃度は、例えば該層中の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の1質量%より大きくてよいが、ゲンチアナバイオレットの器具全体の濃度は、ゲンチアナバイオレット層の、ラミネート加工された器具の残りの部分に対するサイズに応じて、1質量%未満でもよい。
【0022】
本器具は、例えばシリコーンエラストマー、熱可塑性樹脂、フルオロ重合体、ポリウレタン、ポリオレフィン、ビニル重合体(例えば塩化ビニル、ブチルゴム、エチレンビニルアセテート及び共重合体) 、アクリレート重合体、ポリアミド、ポリエステル、フルオロエラストマー(例えばヘキサフルオロプロピレンフッ化ビニリデン共重合体)、及び共重合体(ブロック共重合体及び部分ブロック共重合体を包含する)及びそれらの混合物をさらに含んでなることができる。
【0023】
ゲンチアナバイオレットを処理する方法としては、例えば押出、射出成形、吹込成形、圧縮成形、又は他のいずれかのホットメルト製法が挙げられる。好ましくは、ゲンチアナバイオレットは、押出により配合する。押出の前に、熱可塑性樹脂を、ゲンチアナバイオレットと共に予備被覆するか、又は熱可塑性樹脂をゲンチアナバイオレット粉末とコンパウンディング(混合)することができる。好ましくは、押出工程で使用する熱可塑性樹脂の加工温度は207℃未満である。
【0024】
器具が熱硬化性樹脂を含んでなる場合、熱硬化性樹脂は溶融加工されないので、ゲンチアナバイオレットは、溶液含浸により熱硬化性樹脂の中に、又は、樹脂及びゲンチアナバイオレットが硬化工程を通して安定している限り、ゲンチアナバイオレットは、直接混合製法により、未硬化熱硬化性樹脂の中に導入することができる。
【0025】
ラミネート加工された医療用器具は、例えば共押出、インサート成形又は連続被覆により製造することができる。
【0026】
本発明は、ゲンチアナバイオレットで処理した、埋め込み可能な医療用器具の製造方法であって、ゲンチアナバイオレットを熱可塑性樹脂と共に温度207℃未満で押し出し、ゲンチアナバイオレットの濃度が該熱可塑性樹脂の0.05〜20質量%である、方法も提供する。埋め込み可能な医療用器具は、ゲンチアナバイオレット処理した熱可塑性樹脂から形成する。好ましくは、ゲンチアナバイオレットの濃度は、熱可塑性樹脂の1質量%より高い。加工温度は、例えば200℃未満でよい。
【0027】
本方法で使用する熱可塑性樹脂は、好ましくは低加工温度熱可塑性樹脂、例えばポリウレタン(例えばTecothane(登録商標)、Carbothane(登録商標)、Tecoflex(登録商標)、Tecophilic(登録商標)、Texin(登録商標)及びPellethane(登録商標)の一種以上)、ポリオレフィン、ビニル重合体(例えば塩化ビニル、ブチルゴム、エチレンビニルアセテート及び共重合体)、アクリレート重合体、ポリアミド、ポリエステル、フルオロエラストマー(例えばヘキサフルオロプロピレンフッ化ビニリデン共重合体)及び共重合体(ブロック共重合体及び部分ブロック共重合体を包含する)及びそれらの混合物、である。ポリウレタンが好ましい熱可塑性樹脂である。ゲンチアナバイオレットの分解が起こる温度より高い加工温度を必要とする熱可塑性樹脂は、それらの熱可塑性樹脂を、例えば可塑化により処理し、加工温度をゲンチアナバイオレットが分解する温度より低い温度に下げない限り、この方法には適していない。207℃より高い加工温度を有するポリウレタンの例としては、ISOPLAST(登録商標)2510(Dow)、メーカー推奨溶融温度220〜245℃、ISOPLAST(登録商標)101 LFG 40 NAT (Dow)、メーカー推奨溶融温度240〜260℃、ISOPLAST(登録商標)202 EZ(Dow)、メーカー推奨溶融温度240〜260℃、ISOPLAST(登録商標)2531(Dow)、メーカー推奨溶融温度230〜250℃、ISOPLAST(登録商標)301(Dow)、メーカー推奨溶融温度230〜250℃、及びISOPLAST(登録商標)302 EZ(Dow)、メーカー推奨溶融温度238〜260℃が挙げられる。
【0028】
押出の前に、熱可塑性樹脂をゲンチアナバイオレットで予備被覆するか、又は熱可塑性樹脂をゲンチアナバイオレット粉末とコンパウンディングすることができる。
【0029】
本発明には、先行技術の方法と対照的に、先行技術の方法の、最初に器具を形成し、続いて試剤で処理する複数工程に対して、単一工程のコンパウンディング及び/又は押出/成形を使用するという利点があり、従って、コスト的により効果的である。本発明のもう一つの利点は、先行技術でこの方法を使用して予想されるよりも、遙かに高い濃度でゲンチアナバイオレットを配合することができ、これによって、遙かに長い抗菌保護の持続時間が得られることである。
【0030】
ゲンチアナバイオレットとの組合せで安定していない恐れがある他の試剤は、別の層として(共押出により、又は表面被覆もしくは含浸により)被覆することができ、それによって、ゲンチアナバイオレット単独で得られるよりも強力な抗菌保護が得られる。
【0031】
追加の抗菌剤としては、例えばビグアニド(クロロヘキシジン、アレキシジン、PHMB−ポリヘキサメチルビグアニドを包含する)、抗真菌剤(アゾール及びアゾール誘導体、ラパマイシンを包含する)、フェノール系防腐剤(例えばトリクロサン)、ジスルフィラム、抗菌性染料(メチルバイオレット、メチレンブルーを包含する)、陽イオン系ステロイド、抗菌性金属イオン塩又は共役化合物(例えば銀、銀スルファジアジン、亜鉛、銅、ビスマス、ガリウム)、生物被膜抑制剤(ビスマスチオール、RIP(RNA III抑制ペプチド)、フラノン及びそれらの共役化合物又は誘導体、自己誘導質(autoinducer)2の抑制剤、そのキナーゼ又はその受容体、ホモセリンラクトンの抑制剤、そのキナーゼ又はその受容体)、抗生物質及び組合せ(テトラサイクリン、クリンダマイシン、リファマイシン、アミノグリコシド、ペニシリン、セファロスポリン、キノロン及びフルオロキノロン、マクロリド、カルバペネム、過酸化物、ペルオキシ酸、グリコペプチド(例えばバンコマイシン、テイコプラニン)、ポリペプチド(例えばバシトラシン、ポリミキシンB)、スルホンアミド、ムシプロシン、リネゾリド、クロラムフェニコールを包含する)、化学療法剤(DNAアルキル化剤、ミトマイシンC、アドリアマイシン、ブレオマイシン、5フルオロウラシル、タウロリジン、シスプラチン、カルボプラチンを包含する)、抗菌性宿主防衛タンパク質、宿主防衛タンパク質擬態物質(mimetics)、それらの断片及び共役化合物、及びそれらの塩、及び有機アルコール、例えばエタノール、イソプロパノール及びベンジルアルコールが挙げられる。
【0032】
本器具は、複数の異なった区域を含んでなり、ゲンチアナバイオレットはそれらの一部に存在することができる。例えば、器具がカテーテルである場合、カテーテルは、チップ区域を含んでなり、ゲンチアナバイオレットがそのチップ区域に存在することができる。別の例としては、カテーテルは基部に近いハブ区域を含んでなり、ゲンチアナバイオレットがそのハブ区域に存在することができる。
【0033】
本発明は、本明細書で開示する方法のいずれかにより製造された埋め込み可能な医療用器具も提供する。
【0034】
埋め込み可能な医療用器具は、例えばカテーテル(例えば、被験者中の脈管、例えば血管、又は身体空洞中に埋め込むためのカテーテル)でよい。そのようなカテーテルの例としては、経皮カテーテル、末梢カテーテル、中枢カテーテル、静脈カテーテル、及び動脈カテーテルを包含する血管カテーテル、泌尿カテーテル、気管カテーテル又はチューブ、透析カテーテル、及び麻酔薬又は他の薬物(例えば化学療法薬又は抗生物質)の局所的供給に使用するカテーテルが挙げられる。医療用器具は、例えばチューブ、マルチルーメンチューブ、縫合、不織布、メッシュ、プラスチックシェル又は被覆を備えたワイヤを包含するワイヤ、水頭症分流器及び他の神経移植物(neuroimplants)、埋め込み可能なドレン、バルブ及びポート、フォーム、微小球及びナノ球でもよい。
【0035】
医療用器具は、被験者の皮膚上に、及び/又は被験者中の器具の経路に沿ってゲンチアナバイオレットステインを残すことができる。このステインは、過酸化物をステインに塗布すること、及び過酸化物を非イオン化金属、例えば銀ナノ粒子で処理することを含んでなる方法により脱色することができる。好ましくは、ゲンチアナバイオレットと銀のモル比は1:1未満である。従って、本発明は、本明細書で開示する埋め込み可能な医療用器具のいずれか、及び医療用器具により形成されたゲンチアナバイオレットステインの脱色に使用する非イオン化金属粒子を包含するキットを提供する。非イオン化金属の例としては、銀、金、白金、銅、鉄及び亜鉛が挙げられるが、これらに限定されるものではない。銀が好ましい非イオン化金属であり、ナノ粒子が好ましい種類の粒子である。銀ナノ粒子が最も好ましい。キットは、過酸化物、例えば過酸化水素、無機過酸化物(マグネシウム、カルシウム、及びバリウム過酸化物)、ペルオキシ酸、パーエステル、過酸化ベンゾイル、過酸化アセトン、及び過酸化メチルエチルケトンをさらに含んでいてもよい。過酸化水素が好ましい過酸化物である。無機過酸化物、例えばマグネシウム、カルシウム、及びバリウム過酸化物、を含むキットは、酸、例えば重硫酸ナトリウムも含んでいてもよい。
【実施例】
【0036】
本発明を下記の実験詳細項で説明するが、この項は、本発明を理解し易くするために記載するのであって、その後に記載する特許請求の範囲で規定する本発明の範囲を限定するものではない。
【実験の詳細】
【0037】
例I−II.−ゲンチアナバイオレットのTecothane(登録商標)−2095A樹脂中への配合
コンパウンディング及び押出製法によりゲンチアナバイオレットをTecothane(登録商標)−2095A樹脂中に配合する実験を行った。本例では、ゲンチアナバイオレットをTecothane(登録商標)−2095Aペレット上に、樹脂をゲンチアナバイオレット/エタノール混合物中に浸漬することにより被覆し、溶剤を通常の条件で蒸発させた。次いで、ゲンチアナバイオレット被覆したペレットを押出機又はコンパウンダー中に供給し、チューブ又はストランドペレット化されたペレットを製造した。ゲンチアナバイオレットは、粉末としてポリマー樹脂と共に直接供給し、コンパウンディング及び押出することもできる。驚くべきことに、ここに開示する高温製法を使用することにより、これまで開示されているよりも、はるかに高いゲンチアナバイオレットの装填を、ゲンチアナバイオレットの化学構造を分解することなく、達成することができた。
【0038】
例1 Tecothane(登録商標)−2095A樹脂と0.5%ゲンチアナバイオレットのコンパウンド
ゲンチアナバイオレット(Sciencelab,Houston,TX)5gを99%エタノール(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)250mlに溶解させた。Tecothane(登録商標)−2095A(Noveon,Cleaveland,OH)樹脂1000gをゲンチアナバイオレット/エタノール溶液に加えた。エタノール溶剤を、ドラフト(chemical fume hood)中、通常条件で一晩かけて蒸発させた。次いで、ゲンチアナバイオレット被覆されたペレットを、コンパウンディングの前に、50℃及び30インチHgで24時間乾燥させた。
【0039】
乾燥させたゲンチアナバイオレット被覆された樹脂を、K−tronフィーダー(Pitman,NJ)から、18mm Leistritzインターメッシング二軸スクリュー押出機(Somerville,NJ)中に、2.5kg/時間の速度で少量供給した(starve−fed)。押出機は、スクリュー速度231rpmに設定し、バレル区域温度は329°F(165℃)〜338°F(170℃)に設定した。押出物は、小さなペレットにペレット化した。
【0040】
例2 ゲンチアナバイオレットを装填したTecothane(登録商標)チューブ
ゲンチアナバイオレット(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)20 gをエタノール(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)1000mlに溶解させた。Tecothane(登録商標)樹脂1000gをゲンチアナバイオレット/エタノール溶液に加えた。エタノール溶剤を、ドラフト中、通常条件で一晩かけて蒸発させた。次いで、ゲンチアナバイオレット被覆された樹脂を、コンパウンディングの前に、65℃及び30インチHgで4時間乾燥させた。
【0041】
乾燥したゲンチアナバイオレット被覆された樹脂を5/8インチのRandcastle単軸スクリュー(Cedar Grove,NJ)マイクロ押出機中に重力供給した。マイクロ押出機は、スクリュー速度20rpmに設定し、バレル区域温度は360°F〜375°Fに設定した。5FrチューブをBH25ツール(San Marcos,CA)から引き出した。
【0042】
Tecothane(登録商標)中にコンパウンディングしたゲンチアナバイオレットのHPLCによる分析
コンパウンディングした樹脂及びチューブ試料からゲンチアナバイオレット含有量をHPLC法により分析した。GV装填した樹脂又はコンパウンディングしたペレットに対するHPLC分析は、各試料(n=3)の大体10〜20ペレット(使用した原料の重量に応じて)に相当する0.1〜0.3gを秤量し、50mL遠心分離管中、THF(5mL又は7.5mL)中で温浸することにより、行った。試料を45分間放置し、次いで全ての重合体が溶解するまでボルテックス処理した。次いで、等量の脱イオン(DI)水を加え(5又は7.5mL)、試料を再度5分間ボルテックス処理し、次いで10分間遠心分離した。次いで、各試料の一部をHPLCバイアルに加え、キャップをしてからHPLC分析を行った。
【0043】
チューブに対するHPLC分析は、各試料(n=3)の1cm断片を測定して切断し、50mL遠心分離管中、THF(10mL又は20mL)中で温浸することにより、行った。試料を45分間放置し、次いで5分間又は重合体が管の底に付着しなくなるまで、ボルテックス処理した。次いで、等量の脱イオン(DI)水を加え(10mL又は20mL)、試料を再度5分間ボルテックス処理し、次いで10分間遠心分離した。次いで、各試料の一部をHPLCバイアルに加え、キャップをしてからHPLC分析を行った。
【0044】
HPLC分析は、Agilent 1200 Series LC上で、Agilent Eclipse XDB−CN 5μ 4.6×150mmカラム及び対応するガードカラムを使用して行った。勾配プログラムは、2個の溶剤貯蔵部、すなわち、
MP A 100%DI水/0.2%トリフルオロ酢酸
MP B 100%アセトニトリル/0.2%トリフルオロ酢酸
プログラム 0〜5分 35%B、5〜6分 35〜40%B、6〜12分 40%B、12〜16分 35%B
を使用して実行した。
【0045】
コンパウンディングした樹脂及び押し出したチューブのゲンチアナバイオレット含有量を表3に示す。表2は、標準対試料におけるゲンチアナバイオレットピークの相対的ピーク面積の比較を示す。面積百分率は、標準及び試料(Sciencelab)に関して図1及び図2にそれぞれ示す、クロマトグラムに示す他のピークではなく、3個のピークの総面積だけを基にしている。表3は、標準対試料(Aldrichから市販)におけるゲンチアナバイオレットピークの相対的ピーク面積の比較を示す。図3及び図4は、標準(Aldrich)及びチューブ試料のクロマトグラフをそれぞれ示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
例III.−押し出したゲンチアナバイオレットの分解に対する温度の影響
Tecothane(登録商標)押出w/30%充填材におけるゲンチアナバイオレット
押し出したゲンチアナバイオレットは、処理温度217℃(約209℃で開始)で分解するが、約207℃未満での処理は、ゲンチアナバイオレットを分解しないことが分かった。温度の影響に関する驚くべき発見の一つは、特定区分のポリウレタンは分解温度未満で加工できるが、他の区分は加工できないことである。
【0050】
安定したゲンチアナバイオレットのコンパウンディング条件:
バレル温度
区域1〜5=170℃
区域6=175℃
溶融物温度=194℃
スクリュー速度=100 rpm
圧力=約180 bar
【0051】
分解したゲンチアナバイオレットのコンパウンディング温度
区域1〜6=217℃
【0052】
コンパウンディングは、Sigma Aldrich ACS等級ゲンチアナバイオレット、ロット016K3691で行った。HPLC分析は、例Iに及びIIに記載した方法を使用し、各試料(n=3)の1cm断片を切断し、測定することによりにより、行った。
【0053】
図5〜10におけるクロマトグラムは、安定したゲンチアナバイオレットに続く分解したゲンチアナバイオレットを、588nm、253nm、及び280nmで示す。217℃試料から得た分解ピークは、253及び280nm波長における新しいピークとして明らかである。低い加工温度のクロマトグラムは、ゲンチアナバイオレット原料のクロマトグラムと同一であった。
【0054】
例IV.−押し出したゲンチアナバイオレットの分解に対する温度(196〜219℃)の影響
0.5%GVを含むコンパウンディングしたCarbothane(登録商標)樹脂
ゲンチアナバイオレット(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)5gを99%エタノール(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)250mlに溶解させた。Carbothane(登録商標)−3585A−B20(Noveon,Cleaveland,OH)樹脂1000gをゲンチアナバイオレット/エタノール溶液に加えた。エタノール溶剤を、ドラフト中、通常条件で一晩かけて蒸発させた。次いで、ゲンチアナバイオレット被覆されたペレットを、コンパウンディングの前に、50℃及び30インチHgで24時間乾燥させた。
【0055】
乾燥させたゲンチアナバイオレット被覆された樹脂を、K−tronフィーダー(Pitman,NJ)から、18mmLeistritzインターメッシング二軸スクリュー押出機(Somerville,NJ)中に、2.5kg/時間の速度で少量供給した。各作業に対する加熱プロファイルを変化させた。各作業から得た溶融物の温度を表4に報告する。
【0056】
HPLC分析は、例Iに及びIIに記載した方法を使用し、各試料(n=3)の幾つかのペレットを選択することにより行った。
【0057】
GV含有量は、加工温度206℃まで実質的に変化しなかった。分解は、209℃で開始し、219℃でより酷くなった。
【0058】
【表4】

【0059】
例V.−押し出したゲンチアナバイオレットの分解に対する温度の影響−高温
GV0.5%を含むコンパウンディングしたCarbothane(登録商標)樹脂
樹脂ペレットにGVを装填するための試料調製は、例IVと同様である。ゲンチアナバイオレットは、(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)から購入し、Carbothane(登録商標)−3585A−B20(Noveon,Cleaveland,OH)を使用した。各作業に対する加熱プロファイルを変化させた。各作業から得た溶融物の温度を表5に示す。
【0060】
押出可能なGV含有量の劇的な低下により明らかなように、GVの重大な分解は220℃より上である。
【0061】
【表5】

【0062】
例VI.−ヒドロキシルラジカルを使用するゲンチアナバイオレットの真皮脱色
概論
ゲンチアナバイオレット(GV)は、処理したカテーテルから浸出し、カテーテルの挿入部位の周囲に真皮ステインを残すことができる。カテーテルを取り出した後、このステインを除去する手段は、美的な有益性を与えることができる。染料廃水汚染物は環境汚染の源であるので、織物工業界では、染料流出物の脱色に対する関心が高まっている(Roxonら、1967)。GVの物理的及び化学的脱色が研究されている(Saquib及びMuneer 2003)。GVの脱色は酸化により達成されることが報告されている。
【0063】
本例では、酸化性化学種として過酸化水素(H)の使用を試験したが、その活性化方法は変えてある。HによるGVの脱色を、3種類の異なった活性化技術、すなわちHの光分解(UV光による)、非イオン性銀(Ag)ナノ粒子によるHの分解、及びアスコルビン酸(ビタミン−C)によるHの分解、により試験した。特定の活性化方法がGVを無色(酸化された)形態に転化し得ることが確認された。
【0064】
材料/方法
下記の材料、すなわちCrystal Violet ACS(ロット番号:036K0709、(Sigma−Aldridge)(ゲンチアナバイオレットとクリスタルバイオレットは同じ化合物の互換的名称である)、過酸化水素(30%ACSロット番号:060350、Fisher Scientific)、ナノ粒子銀、アスコルビン酸、及びTRIS(ヒドロキシメチルアミノメタン)(ロット番号、Fisher BioReagenys)を使用した。
【0065】
下記の3手順を評価した。
手順1 HによるGVの光酸化
1.1:GV0.15g(0.1%w/v)を3%H150mlに溶解させた。この溶液をUV光(Bio−lab hood)に2時間露出した。5分毎に溶液5mlを抜き出した。
1.2:10μlのDI水中0.1%GVを寒天プレート上に落とした(spiked)。寒天プレートを染色した後(水の大部分を液滴から蒸発)、UV光の下でHをステイン上に、50μlずつ、5分毎に2時間、ピペットで滴下した。
手順2 AgでHを活性化することによる、GVの酸化
2.1:銀ナノ粒子10.6mgを3%H40mlに一定攪拌しながら加えた。水中0.1%GVを様々な増加(10μl〜1ml)で、紫色が持続するまで加えた。モル濃度比(GV:Ag)を計算し、GVがmgや酸化されなくなる時のモル比を決定した。
2.2:10μlのDI水中0.1%GVを寒天プレート上に落とした。寒天プレートを染色した後(水の大部分を液滴から蒸発)、Ag0.009gをステインの表面上に付け。H100μlをAg上にピペットで滴下した。
手順3 ビタミンCでHを活性化することによるGVの酸化
1%ビタミンC(w/v)を3%H100mlに溶解させた。TRIS緩衝剤7gもHに溶解させた。水中0.1%GVを、紫色が持続するまで10μlずつ加えた。
【0066】
結果及び考察
手順1:UV光で処理した試験試料の全てで色の変化は観察されなかった。UV光下で多くの時間置いた後も、溶液及び寒天ステインは紫色のままであった。Hは光分解的に解裂し、OHを形成することが報告されている(Peyton及びGlaze 1988)ので、ここで使用したUV光の強度が、これらのラジカルを発生するには不十分であったのかも知れない。
【0067】
手順2:0.1%GV溶液をAg+H溶液にピペットで加えた時、紫色は淡い黄色に薄れることが観察された。この淡い黄色は、より多くのGVを加えるにつれて、紫色が永久的に残るまで、より暗くなっていった。この時点におけるGV:Agのモル比は、1:1と計算された。同様に、寒天上の紫色ステインは、10分後に淡い黄色になることが観察された(図11B)。
【0068】
手順3:ビタミンCをHに加えることにより、溶液のpHが低下することが観察された。TRIS緩衝剤酸性溶液をpH6〜7に中和するために加えた。0.1%GVの最初の10μl増加を加えることにより、溶液は紫色になり、持続された。
【0069】
全ての試験技術で、非イオン系銀を使用した時だけ、過酸化水素は、GVから紫色を中性に(紫色から淡い黄色に)することができた。ビタミンCもUV光も、ここで試験した濃度では、十分に強力な活性化剤ではなかった。
【0070】
参照文献
・Hanna H,P Bahna,R Reitzel,T Dvorak,G Chaiban,R Hachem and I Raad.新規な抗菌性中枢静脈カテーテルの比較インビトロ効能及び抗菌耐久性(Comparative in vitro efficacies and antimicrobial durabilities of novel antimicrobial central venous catheters). Antimicrob. Agents Chemother. 50: 3283−3288, 2006。
・Harter C,HJ Salwender,A Bach,G Egerer,H Goldschmidt and AD Ho.化学療法を受けている血液腫瘍患者における内部頸静脈のカテーテルに関連する感染及び血栓症、銀被覆した、及び被覆していないカテーテルの将来性比較(Catheter−related infection and thrombosis of the internal jugular vein in hematologic−oncologic patients undergoing chemotherapy: prospective comparison of silver−coated and uncoated catheters)、Cancer 94: 245−251, 2002。
・Peyton GR,Glaze WH.紫外放射線による、オゾンを含む水中汚染物の分解(Destruction of pollutant in water with ozone in contamination with ultraviolet radiation)、Environ Sci Technol 1988; 22:761−7。
・Rooden CJ,EF Schippers,RMY Barge,FR Rosendaal,HFL Guiot,F J.M.van der Meer,AE Meinders,MV Huisman.中枢静脈カテーテルの感染合併症は、血液学的患者におけるカテーテルに関連する血栓症の危険性を増大させる、将来性研究(Infectious complications of central venous catheters increase the risk of catheter−related thrombosis in hematology patients: A prospective study)、Journal of Clinical Oncology 23: 2655−2660, 2005。
・Roxon JJ,Ryan AJ,Wright SE.腸内細菌による水溶性アゾ染料の還元(Reduction of water−soluble azo dyes by intestinal bacteria). Food Cosmet Toxicol 1967; 5:367−9。
・Safdar N,Maki DG.覆いの無い短期間中枢静脈カテーテルによるカテーテルに関連する血流感染の病原論(The pathogenesis of catheter−related bloodstream infection with noncuffed short−term central venous catheters)、Intensive Care Med. 2004 Jan; 30819:62−7. Epub 2003 Nov 26。
・Saint S,Veenstra DL,Lipsky BA.病院の中枢静脈カテーテルに関連する感染の臨床的及び経済的な帰結、抗菌性カテーテルは有用か?(The clinical and economic consequences of nosocomial central venous catheter−relzted infection: are antimicrobialcatheters useful?)、Infect Control Hosp Epidemiol. 21(6):375−80, 2000。
・Saquib,M. Muneer,M.水性懸濁液における、TiOが仲介するトリフェニルメタン染料(ゲンチアナバイオレット)の光触媒分解(TiO−mediated photocatalytic degradation of a triphenylmethane dye (gentyan violet), in aqueous suspensions). Dyes and Pigments 56 (2003) 37−49。
・米国公開特許出願第US2003/0078242A1号(2003年4月24日公開)Raadら、表面含浸用の広範囲な抗菌活性を有する新規な防腐剤誘導体(Novel antiseptic derivatives with broad spectrum antimicrobial activity for the impregnation of surfaces)。
・米国公開特許出願第US2005/0131356 A1号(2005年6月16日公開)Ashら、抗菌特性を示す医療用器具(Medical devices exhibiting antibacterial properties)。
・米国公開特許出願第US2005/0197634 A1号(2005年9月8日公開)Raadら、含浸医療用器具を防腐剤組成物で被覆するための方法(Methods for coating an impregnating medical devices with antiseptic compositions)。
・米国特許第5,451,424号(1995年9月19日公布)Solomonら、抗感染性及び抗血栓形成性医療用製品及びそれらの製造方法(Anti−infective and antithrombogenic medical articles and method for their preparation)。
・米国特許第5,688,516号(1997年11月18日公布)Raadら、非グリコペプチド抗菌剤と抗凝血薬、抗血栓又はキレート化剤の組合せ、それらの例えば医療用器具製造における使用(Non−glycopeptide antimicrobial agents in combination with anticoagulant, antithrombotic or chlating agent, and their use in, for example, the preparation of medical devices)。
・米国特許第5,707,366号(1998年1月13日公布)Solomonら、抗感染及び抗血栓形成性医療用製品及びそれらの製造方法(Anti−infective and antithrombogenic medical articles and method for their preparation)。
・米国特許第5,709,672号(1998年1月20日公布)Illner、抗菌/抗真菌特性が改良されたSilastic及び重合体を基材とするカテーテル(Silastic and polymer−based catheters with improved antimicrobial/antifungal properties)。
・米国特許第6,261,271号(2001年7月17日公布)Solomonら、抗感染及び抗血栓形成性医療用製品及びそれらの製造方法(Anti−infective and antithrombogenic medical articles and method for their preparation)。
・米国特許第6,276,875 B1号(2001年8月14日公布)Simanら、抗菌/抗血栓形成特性を改良した医療用器具(Medical devices having improved antimicrobial/antithrombogenic properties)。
・米国特許第6,528,107 B2号(2003年3月4日公布)Chinnら、抗菌/抗血栓形成性医療用器具の製造方法(Method of producing antimicrobial and antithrombogenic medical devices)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲンチアナバイオレットで処理された、埋め込み可能な医療用器具を製造する方法であって、ゲンチアナバイオレットを熱可塑性樹脂と共に温度207℃未満で押し出すことを含んでなり、前記ゲンチアナバイオレット処理された熱可塑性樹脂の埋め込み可能な医療用器具を製造するために、前記ゲンチアナバイオレットの濃度が前記熱可塑性樹脂の0.05〜20質量%である、方法。
【請求項2】
前記ゲンチアナバイオレット濃度が1質量%を超える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加工温度が20℃未満である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
熱可塑性樹脂が、押出の前にゲンチアナバイオレットで被覆される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
熱可塑性樹脂及びゲンチアナバイオレット粉末が、押出の前にコンパウンディングされる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂が、ポリウレタン、ポリオレフィン、ビニル重合体、アクリレート重合体、ポリアミド、ポリエステル、フルオロエラストマー、又はそれらの共重合体もしくはブレンドである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂がポリウレタンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ゲンチアナバイオレット処理された熱可塑性樹脂が別の抗菌剤と共に共押出される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記埋め込み可能な医療用器具がカテーテルである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記カテーテルが、血管又は身体空洞中への埋め込み用である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記カテーテルが、静脈カテーテル又は動脈カテーテルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記カテーテルが、透析カテーテル、泌尿カテーテル又は気管カテーテルもしくは気管チューブである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法により製造された埋め込み可能な医療用器具。
【請求項14】
ゲンチアナバイオレットで処理された熱可塑性樹脂を含んでなる、埋め込み可能な医療用器具であって、前記熱可塑性樹脂の加工温度が207℃未満であり、前記器具中の前記ゲンチアナバイオレット濃度が前記熱可塑性樹脂の0.05〜20質量%である、埋め込み可能な医療用器具。
【請求項15】
ゲンチアナバイオレットで処理された熱可塑性樹脂層を含んでなる、ラミネート加工された埋め込み可能な医療用器具であって、前記層中の前記熱可塑性樹脂の加工温度が207℃未満であり、前記層中の前記ゲンチアナバイオレット濃度が、前記層中の前記熱可塑性樹脂の0.05〜20質量%である、ラミネート加工された埋め込み可能な医療用器具。
【請求項16】
前記層中の前記熱可塑性樹脂が、ポリウレタン、ポリオレフィン、ビニル重合体、アクリレート重合体、ポリアミド、ポリエステル、フルオロエラストマー、又はそれらの共重合体もしくはブレンドである、請求項14又は15に記載の埋め込み可能な医療用器具。
【請求項17】
前記層中の前記熱可塑性樹脂がポリウレタンである、請求項14又は15に記載の埋め込み可能な医療用器具。
【請求項18】
前記埋め込み可能な医療用器具がカテーテルである、請求項14〜17のいずれか一項に記載の埋め込み可能な医療用器具。
【請求項19】
ゲンチアナバイオレットで処理した熱可塑性樹脂又はゲンチアナバイオレットで処理された熱硬化性樹脂を含んでなる、埋め込み可能な医療用器具であって、前記器具中の前記ゲンチアナバイオレット濃度が、前記熱可塑性樹脂又は前記熱硬化性樹脂の1質量%を超える、埋め込み可能な医療用器具。
【請求項20】
ゲンチアナバイオレットで処理された熱可塑性樹脂層又はゲンチアナバイオレットで処理された熱硬化性樹脂層を含んでなる、ラミネート加工された埋め込み可能な医療用器具であって、前記層中の前記ゲンチアナバイオレット濃度が、前記層中の前記熱可塑性樹脂又は前記層中の前記熱硬化性樹脂の1質量%を超える、ラミネート加工された埋め込み可能な医療用器具。
【請求項21】
前記ラミネート加工された器具が、共押出、インサート成形又は連続被覆により製造される、請求項20に記載のラミネート加工された医療用器具。
【請求項22】
前記ゲンチアナバイオレット濃度が、前記熱可塑性樹脂また前記熱硬化性樹脂の1.1質量%、1.5質量%、2質量%、2.5質量%、3質量%、4質量%、5質量%、7.5質量%又は10質量%を超える、請求項19〜21のいずれか一項に記載の器具。
【請求項23】
前記ゲンチアナバイオレット濃度が、前記熱可塑性樹脂また前記熱硬化性樹脂の20質量%までである、請求項19〜21のいずれか一項に記載の器具。
【請求項24】
前記器具が熱可塑性樹脂を含んでなり、ゲンチアナバイオレットが押出により導入される、請求項19〜23のいずれか一項に記載の器具。
【請求項25】
熱可塑性樹脂が、押出の前にゲンチアナバイオレットで被覆される、請求項24に記載の器具。
【請求項26】
熱可塑性樹脂及びゲンチアナバイオレット粉末が、押出の前にコンパウンディングされる、請求項24に記載の器具。
【請求項27】
前記熱可塑性樹脂の加工温度が207℃未満である、請求項19〜26のいずれか一項に記載の器具。
【請求項28】
前記熱可塑性樹脂が、ポリウレタン、ポリオレフィン、ビニル重合体、アクリレート重合体、ポリアミド、ポリエステル、フルオロエラストマー、又はそれらの共重合体もしくはブレンドである、請求項19〜27のいずれか一項に記載の器具。
【請求項29】
前記熱可塑性樹脂がポリウレタンである、請求項19〜27のいずれか一項に記載の器具。
【請求項30】
前記カテーテルが熱硬化性樹脂を含んでなり、ゲンチアナバイオレットが溶液含浸により導入される、請求項19〜23のいずれか一項に記載の器具。
【請求項31】
前記熱硬化性樹脂が、シリコーン、加硫ゴム、ポリイミド及びエポキシである、請求項30に記載の器具。
【請求項32】
前記ゲンチアナバイオレット処理された熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が、別の抗菌剤と共に共押出される、別の抗菌剤で被覆又は含浸される、請求項19〜31のいずれか一項に記載の器具。
【請求項33】
前記器具が、シリコーンエラストマー、ポリウレタン、熱可塑性樹脂、フルオロ重合体、ポリオレフィン、ビニル重合体、アクリレート重合体、ポリアミド、ポリエステル、フルオロエラストマー、又はそれらの共重合体もしくはブレンドの一種以上をさらに含んでなる、請求項19〜32のいずれか一項に記載の器具。
【請求項34】
前記器具が複数の区域を含んでなり、ゲンチアナバイオレットが、それらの区域の一部に存在する、請求項19〜33のいずれか一項に記載の器具。
【請求項35】
前記器具がカテーテルである、請求項19〜34のいずれか一項に記載の器具。
【請求項36】
前記カテーテルがチップ区域を含んでなり、ゲンチアナバイオレットが前記チップ区域に存在する、請求項35に記載のカテーテル。
【請求項37】
前記カテーテルが、基部に近いハブ区域を含んでなり、ゲンチアナバイオレットが前記ハブ区域に存在する、請求項35に記載のカテーテル。
【請求項38】
前記カテーテルが、血管又は身体空洞中への埋め込み用である、請求項35〜37のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項39】
前記カテーテルが、静脈カテーテル又は動脈カテーテルである、請求項38に記載のカテーテル。
【請求項40】
前記カテーテルが、透析カテーテル、泌尿カテーテル又は気管カテーテルもしくは気管チューブである、請求項35〜37のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項41】
請求項13〜40のいずれか一項に記載の埋め込み可能な医療用器具、及び前記器具により形成されたゲンチアナバイオレットステインの脱色に使用する非イオン化金属粒子を含んでなるキット。
【請求項42】
前記非イオン化金属が、非イオン化銀、金、白金、銅、鉄及び亜鉛を含んでなる、請求項41に記載のキット。
【請求項43】
前記非イオン化金属が非イオン化銀を含んでなる、請求項41に記載のキット。
【請求項44】
前記粒子がナノ粒子を含んでなる、請求項41〜43のいずれか一項に記載のキット。
【請求項45】
過酸化物をさらに含んでなる、請求項41〜44のいずれか一項に記載のキット。
【請求項46】
前記過酸化物が、過酸化水素、過酸化マグネシウム、過酸化カルシウム、過酸化バリウム、ペルオキシ酸、パーエステル、過酸化ベンゾイル、過酸化アセトン又は過酸化メチルエチルケトンを含んでなる、請求項45に記載のキット。
【請求項47】
前記過酸化物が過酸化水素を含んでなる、請求項45に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A−11B】
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【公表番号】特表2010−540166(P2010−540166A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527981(P2010−527981)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/011390
【国際公開番号】WO2009/045455
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(502047224)アロウ・インターナショナル・インコーポレイテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】ARROW INTERNATIONAL, INC.
【住所又は居所原語表記】2400 Bernville Road, Reading, PA 19605, U.S.A.
【Fターム(参考)】