高濃度水素溶液の製造方法及び水素ガス内包ゲルの製造方法

【課題】 高濃度の水素溶液を製造する方法とこの高濃度水素溶液から水素ガスを含んだゲルを製造する方法を提供する。
【解決手段】
水素を吸着できる物質を微細粉末化して密閉容器内の溶媒に均一に混合し、次いで密閉容器内に水素ガスを供給するとともに密閉容器内を大気圧以上に加圧して水素の溶解度を高め、この後密閉容器内を大気圧に戻すことで密閉容器内に水素ガスの微細気泡を発生せしめ、この微細気泡を前記水素を吸着できる物質に吸着させ、更にゲルにするには気泡が吸着されている間にゲル化剤を添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度水素溶液を製造する方法およびこの高濃度水素溶液から水素ガスを内包したゲルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素水など様々な方法で水素を生体内に取り入れると医学的な効能があることがわかってきた。また、2%濃度の水素ガスを吸引するよりも、水素水を引用した方が効果が大きいこともわかってきた。
【0003】
水素ガスが有用なのは、他のビタミン類に比べ、活性酸素に特異性があるからである。他のビタミン類は、スーパーオキシド(O2−)、過酸化水素(H)、ヒドロキシルラジカル(・OH)のいずれにも反応してしまう。しかしながら、O2−、Hなどは生体内でも、有効に利用され活性酸素種なので、過剰なビタミン類の摂取はこれらの働きを阻害してしまう恐れがある。
【0004】
それに対し、水素ガスは生体のたんぱく質、脂質、遺伝子などを破壊する、求電力の最も大きい、最悪の活性酸素とも言われるヒドロキシルラジカルにのみ反応するので、過剰に存在するために生体の有効利用を妨げることをしないため、一番必要とされている抗酸化剤なのである。
【0005】
また、水素は透過性が非常に強い物質であるため、ペットボトルはおろか、ガラスや金属の容器でさえ通り抜けてしまうため、長時間内部にとどめておくことが非常に難しかった。
さらに、何重にも重ねられたアルミパック容器の中に水素水として封入できたとしても、容器をいったん開封したら、10分程度で水素は大気中に霧散してしまう。それゆえに生体内やターゲットとした場所で、長時間水素ガスを利用することが難しかった。
【0006】
しかしながら、上記の一連の研究では、短時間でも、水素水の有効性が証明されており、もしもっと長い時間生体内で水素ガスが利用できれば、飛躍的に効果が期待できる。
【0007】
特許文献1には液体中で水素をバブリングして、滞留している間にゲル化剤を投入する方法が提案されている。しかし、長時間というほど維持できない。
また、単体金属、炭素化合物、グラファイト、カーボンナノチューブなどの炭素材料、有機物、無機物、有機溶媒の中には、水素分子を吸着する性能を持つものがある。また、水素化カルシウムをジェルに練りこんだものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2011/018865
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
水素吸蔵合金、水素吸蔵化合物、炭素化合物、フラーレン、グラファイトなどの炭素材料は燃料電池用の大量の水素を吸蔵するが、取り出すのが難しい、水素脆性でもろくなってしまう(水素吸蔵合金の場合)。重い(金属材料の場合)という欠点があり、水素水の場合には、水素は容器を透過して大気中に霧散してしまいそれを防ぐ手立てを持たない、また、容器を開封すると10分程度で水素は大気中に霧散してしまうという問題がある。
【0010】
特許文献1に示される方法では長時間というほど維持できない。そこで、さらに長時間、水素ガスを液体中に保持できる方法が望まれる。
また水素吸蔵物質の中には体積の数百倍以上もの水素を吸蔵できるものも存在する。しかしながら、従来は燃料電池や副生水素の高純度化として様々な試みがされてきたが、それ以外の分野での利用法は全く考えられていなかった。
更に水素化カルシウムをジェルに均一に練り込むことは難しく、さらに水に非常に激しく反応するため、微量な、一定量を長時間供給し続けることは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明に係る水素ガス内包ゲルの製造方法は、水素を吸着できる物質を微細粉末化して溶媒に均一に混合し、次いで溶媒中に水素ガスを注入して水素を吸着できる物質に水素ガスを吸着させ、この状態の溶媒にゲル化剤を添加してゲル化するようにした。
【0012】
前記水素を吸着できる物質としては、単体金属、吸蔵合金、吸蔵化合物、フラーレン、グラファイト、カーボンナノチューブなどの炭素系材料またはベンゼン環を持つ有機物が挙げられる。
【0013】
また、溶媒としては水、液体化した脂質、有機溶媒、液体化したガスが考えられる。水素の注入方法としてはバブリング、圧潰、加減圧、メンブレインリアクター、マイクロリアクター等が挙げられ、更に本発明方法に前後して加減圧、過熱、冷却、放射線(α、β、γ線)照射、超音波、衝撃波、ラジオ波、pH、電磁波、イオン、電界、磁界、紫外線照射、金属触媒(酸化チタンなど)の添加・調整を行うことが可能である。
【0014】
また前記水素吸蔵化合物としては、有機ハイドライド、アントラセン(C14H10→C14H24)、ナフタレン(C10H8→デカリンC10H18)、ギ酸メチル(C2H4O2→メタノール2CH3OH)、トルエン(C6H5CH3→メチルシクロヘキサンC6H11CH3)、N-エチルカルバゾール(C12H8NC2H5→9‐エチルペルヒドロカルバゾールC12H20NC2H5)
ベンゼン(C6H6→シクロヘキサンC6H12)、キシレン(→ジメチルシクロヘキサン)
メチルナフタレン(→メチルデカリン)が挙げられる。
【0015】
前記有機ハイドライドとしては、芳香族炭化水素化合物あるいはケトンを水素化して得られるものが用いられ、炭化水素、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、イソブチルシクロヘキサン、テトラメチルシクロヘキサン、イソプロピルメチルシクロヘサン、キアミルシクロヘキサン、4−tert−ブチルシクロヘキサン、(2,2−ジメチルプロピル)シクロヘキサン、ペンタキサン、ジイソプロピルシクロヘキサン、ヘキサメチルシクロヘキサン、トリエチルシクロヘキサン、1−シクロヘキシルヘキサン、1−シクロヘキシルペンタンなどのシクロヘキサン類、テトラリン、メチルテトラリン、エチルテトラリン、プロピルテトラリン、イソプロピルテトラリン、ジメチルテトラリン、ジエチルテトラリン、ジプロピルテトラリン、ジイソプロピルテトラリン、メチルエチルテトラリン、メチルプロピルテトラリン、メチルイソプロピルテトラリン、エチルプロピルテトラリン、エチルイソプロピルテトラリン、プロピルイソプロピルテトラリンなどのテトラリン類、デカリン、メチルデカリン、エチルデカリン、プロピルデカリン、イソプロピルデカリン、ジメチルデカリン、ジエチルデカリン、ジプロピルデカリン、ジイソプロピルデカリン、メチルエチルデカリン、メチルプロピルデカリン、メチルイソプロピルデカリン、エチルプロピルデカリン、エチルイソプロピルデカリン、プロピルイソプロピルデカリンなどデカリン類、ビシクロヘキシル、メチルビシクロヘキシル、エチルビシクロヘキシル、ジメチルビシクロヘキシルなどのビシクロヘキシル類、2−プロピルアルコール、2−ブチルアルコール、2−ペンチルアルコール、3−ペンチルアルコール、2,4−ペンタンジオールなどの第2級アルコール類、等の単独または混合物で常温で液体となるものを用いることができる。
【0016】
有機ハイドライドの脱水素化には、触媒の共存が望ましい。その触媒としては、例えば、特開2001−198469号公報に記載される触媒、すなわち、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、コバルト、鉄、レニウム、バナジウム、クロム、タングステン、モリブデン、銅によって構成される群から選定された少なくとも1以上の金属を、活性炭、ゼオライト、チタニア、カーボンナノチューブ、モレキュラーシーブ、ジルコニア、メソ細孔シリカ多孔質材料、アルミナ、及びシリカによって構成される群から選定された少なくとも1以上でなる担体に担持した金属担持触媒を用いることができる。金属担体触媒における金属担持率は、好ましくは0.001〜10質量%であり、より好ましくは0.01〜5質量%である。
【0017】
また、無機ハイドライド-アラネート系、アミド系としては、LiNH2、LiBH4、LiAlH4、Mg(NH2)2、Mg(AlH4)2、Mg(BH4)2、NaBH4、NaAlH4、KBH4、※NH3BH3、NaNH2、KNH2、KAlH4、Mg3MnH7、MgFeH6、Mg2CoH5、MgCo2H11、Mg2NiH4、LaMg2NiH7、BaReH9が」挙げられる。
【0018】
また炭素化合物としては、活性炭、グラファイト、カーボンナノチューブ(触媒金属付き)、グラフェンシート、フラーレン、カーボンナノバッドが挙げられる。
【0019】
その他の水素吸蔵単体金属及び水素吸蔵化合物としては、ニッケル水素、リチウム、LaNi5(大気圧下で、低加圧吸蔵、低減圧放出)、パラジウム(PdH)、ランタン(LaH2、LaH3)、FeTi(大気圧下、氷点下放出)、LaNi3(大気圧下、何十度で放出)、ZrMn2(大気圧下、百何十度放出)、Mg2Ni(大気圧下、3,400℃放出)、Mg(大気圧下、500℃放出)、Ti,Zr,La(大気圧下、750℃以上放出)が挙げられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る水素ガス内包ゲルの製造方法によれば、長い時間生体内で水素ガスが利用できれば、飛躍的に抗酸化作用が期待できる。また従来、生体内に限らず、水素ガスを用いて試薬や化学反応を起こす際に、目的の場所に、意図したタイミングで微量の水素ガスを供給し続けることが難しかったが、当案件のゲルを用いれば容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明方法(実施例1)を工程順に示した図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の好適な実施例を図面に沿って説明する。
実施例1
工程1
十分高圧に耐えられる閉鎖容器内に充填した溶媒に、微粉末化水素吸着物質を均一に拡散させる。
工程2
容器内に水素ガスを少し充填し、大気圧≒0.1Mpa以上の圧力で加圧する。通常の大気圧下では、水素は1〜1.5ppm程度で溶存するが、例えば5Mpaの
圧をかけた場合、その50倍の水素を溶存させることができる。
工程3
再び、大気圧≒0.1Mpa程度の圧に戻す。
工程4
溶媒中に溶存した水素は、通常であれば大気中に霧散しようとするが、溶媒中の水素吸着物質が存在するために、大気中には逃げず、溶媒中に溶存を続ける。
工程5
溶媒中に均一に水素が溶存したのを見計らい、一連の作業としてゲル化剤を投入する。
【0023】
上記の工程4までが高濃度水素溶液を製造する工程であり、引き続き工程5まで行うことで水素ガスが内包されたゲルが得られる。
工程2,3の作業は繰り返して水素充填しても良い。また、ゲル化剤投入後、品質を安定させるために、加圧状態で保持しても良い。
溶媒の水溶性、脂溶性により、目的とする場所に適した溶媒を選ぶことができる。また、ゲル化剤も、目的とした場所と放出する時間に合わせて、pH変化、加熱、冷却、加湿、除湿、加減圧、放射線、電磁波、ラジオ波、超音波、電界、磁界、イオン、衝撃波、マイクロ波、低温プラズマ、臨界状態、超臨界状態などを与えることにより目的とした場所でどのようにゲルを融解させるかを自由に選ぶことができる。
【0024】
実施例2
工程1
液体窒素を溶媒とし、閉鎖容器内に充填する。
工程2
グラファイトを微粉末化したものを溶媒中に拡散させる。濃度は目的に応じて適宜調整できるものとする。
工程3
この状態で、水素を充填すると、炭素化合物の構造内に水素は大量に取り込まれる。
工程4
溶媒を取り除き、ゲル化剤を投入し、保存する。
【0025】
ジェルの使用方法としては以下のものが例示される。
目的とする場所に、水素吸蔵化合物を含むジェルを充填、あるいは設置する。
外部からジェルを加熱する。加熱する方法は特に限定しない。
加熱に伴い、ジェルは融解していくが、炭素化合物は目的とする場所に留まっている。
加熱していくと、特定の温度域で、炭素化合物は吸蔵した水素を放出する。
例えば水素吸蔵物質をグラファイトにすると、750Kあるいは950Kあたりで水素を放出することがわかっている。
【0026】
実施例3(溶媒自体に水素を吸蔵)
工程1
溶媒としてトルエン、添加物として白金化合物を選択し、溶媒を250℃程度まで加熱し、1〜2MPa程度の気圧下で、トルエンはメチルシクロヘキサンを生成する。
工程2
用途別にゲル化剤を投入し、水素ジェルを作成する。
【0027】
この実施例では、常温において長期保存が可能である。目的とする場所において、150℃以上に加熱することにより大量の水素を放出できる。有機ハイドライドを溶媒として利用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る水素ガス内包ゲルの製造方法は、医薬品やサプリメント等の製造に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を吸着できる物質を微細粉末化して溶媒に均一に混合し、次いで溶媒中に水素ガスを供給して水素を吸着できる物質に水素ガスを吸着させることを特徴とする高濃度水素溶液の製造方法。
【請求項2】
水素を吸着できる物質を微細粉末化して密閉容器内の溶媒に均一に混合し、次いで密閉容器内に水素ガスを供給するとともに密閉容器内を大気圧以上に加圧して水素の溶解度を高め、この後密閉容器内を大気圧に戻すことで密閉容器内に水素ガスの微細気泡を発生せしめ、この微細気泡を前記水素を吸着できる物質に吸着させることを特徴とする高濃度水素溶液の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の高濃度水素溶液の製造方法において、密閉容器内を大気圧以上に加圧して水素の溶解度を高める工程と、この後密閉容器内を大気圧に戻すことで密閉容器内に水素ガスの微細気泡を発生せしめる工程を繰り返すことを特徴とする高濃度水素溶液の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかの方法で高濃度水素溶液を製造した後に、当該高濃度水素溶液にゲル化剤を添加してゲル化することを特徴とする水素ガス内包ゲルの製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2013−43806(P2013−43806A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182829(P2011−182829)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(500457519)
【出願人】(000124764)
【出願人】(509030490)
【出願人】(509029933)
【Fターム(参考)】