説明

高炉ガスの成分分離方法およびその装置

【課題】多種成分の混合である高炉ガスから可燃性ガスを高い収率で得るには、一酸化炭素だけでなくガス中に含まれる水素も効率的に回収して可燃性ガス成分として活用する必要があるところ、この水素を高効率の下に回収し得る方途について提案する。
【解決手段】高炉ガスを、第1段の圧力スイング吸着装置に導入して二酸化炭素を吸着分離した後、該二酸化炭素分離済ガスを、第2段の圧力スイング吸着装置に導入して一酸化炭素を吸着分離するに当たり、前記第2段の圧力スイング吸着装置において、一酸化炭素を優先して吸着する主吸着剤、次に水素以外の残部ガス成分を吸着する副吸着剤の順に積層した吸着塔に、前記二酸化炭素分離済ガスを該吸着塔の主吸着剤側から導入して副吸着剤側から排出する際に、水素を含むガスを回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉炉頂から排出される高炉ガスから各ガス成分を分離する方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鉄所においては、コークス炉、高炉および転炉などの設備から副生ガスと呼ばれるガスが発生し、このガスには、水素、一酸化炭素およびメタンといった、燃料として利用可能な成分のほかに、窒素や二酸化炭素が含有されている。これらの副生ガスは、その大部分が発電所や加熱炉などで燃焼によって発生する熱を利用する用途に使用されているが、前述のように、これらの副生ガス中には窒素や二酸化炭素といった不活性成分が含まれるために、体積当たりの熱量は700〜4500kcal/Nmであり、一般的な燃料ガスであるプロパンガスや天然ガスに比べて低いのが特徴である。特に、高炉ガスには、窒素が50〜55体積%程度、二酸化炭素が20〜23体積%程度含まれているため、体積当たりの熱量は700kcal/Nm程度である。このため、高炉ガス単独では熱量が不足することから、熱量の高い他の副生ガスあるいは天然ガスを購入して混合することによって、体積当たりの熱量を増加させて使用することも多い。
【0003】
また、昨今における二酸化炭素排出削減の要請から、高炉ガス中の二酸化炭素を分離回収する技術も求められている。
【0004】
ここで、多種の成分からなる混合ガスから複数成分のガスをそれぞれ分離する方法として、圧力スイング吸着(以下、PSAと記す)法によるものがあり、製鉄所においても利用されている。このPSA法は、吸着剤に対するガス成分の吸着量がガス種およびその分圧によって異なることを利用した分離方法であるため、吸着剤へのガスを吸着させる工程(以下、吸着工程と記す)および吸着したガスを吸着剤から脱着させて吸着剤を再生させる工程(以下、脱着工程と記す)にて、ガスを加圧あるいは減圧することが必要である。
【0005】
高炉ガスは、主に水素、一酸化炭素、窒素、二酸化炭素からなり、これらをPSA法で分離する場合、まず、二酸化炭素を優先吸着する活性炭やゼオライトを充填した吸着塔からなるPSA装置(第1段のPSA装置と表記)にガスを流通させて二酸化炭素を吸着分離するとともに、二酸化炭素濃度が減少して体積当り熱量が950kcal/Nm程度になった二酸化炭素分離後ガスを、さらに一酸化炭素を主に吸着する、一価の銅を含有する多孔質材料を充填した吸着塔からなるPSA装置(第2段のPSA装置と表記)に流通させて一酸化炭素を吸着分離し、この吸着した一酸化炭素を脱着することにより、一酸化炭素濃度の高いガスを回収することができる。しかしながら、この方法では、二酸化炭素分離後ガスに含まれる水素ガスの大部分が窒素ガスと混合した排ガスとして廃棄されるため、可燃性ガス(一酸化炭素+水素)の回収率は80モル%を超える程度であった。
【0006】
そこで、上記した水素を回収するために、第1段目のPSA装置の吸着工程を経て排出されるガスのうち、初期の排出ガスの水素濃度が比較的に高いことを利用して、排出が始まった時点からある一定時間までの排出ガスを回収する、あるいは、排出ガスの水素濃度を測定しながら一定濃度以上の水素を含有するガスを回収する、方法が、特許文献1に提案されている。
しかしながら、第1段目のPSA装置からの排出ガスにおける水素の濃度は高くても5モル%程度であり、この水素の回収率を上げると随伴する窒素量も増加する結果、回収ガスの体積当たりの熱量は低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−226257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、多種成分の混合ガスである高炉ガスから可燃性ガスを高い収率で得るには、一酸化炭素だけでなくガス中に含まれる水素も効率的に回収して可燃性ガス成分として活用する必要があるところ、本発明では、この水素を高効率の下に回収し得る方途について提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者等は、上記課題を解決するべく、第2段PSA装置におけるガス成分の分離条件を様々な視点から検討した結果、第2段PSA装置において、一酸化炭素を吸着するために用いていた吸着剤の他に、別種の吸着剤を利用して水素に随伴する、水素以外のガス成分を吸着分離することによって、ガス中に含まれる水素の濃度を上昇することが可能であり、この高濃度水素を含むガスを回収すれば、水素の回収を高効率にて実現可能であるとの知見が得られた。
【0010】
すなわち、本発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1)高炉ガスを連続する二段の圧力スイング吸着装置を使用して、該高炉ガスを第1段の圧力スイング吸着装置に導入して二酸化炭素を吸着分離した後、該二酸化炭素分離済ガスを、第2段の圧力スイング吸着装置に導入して一酸化炭素を吸着分離するに当たり、
前記第2段の圧力スイング吸着装置において、一酸化炭素を優先して吸着する主吸着剤、次に水素以外の残部ガス成分を吸着する副吸着剤の順に積層した吸着塔に、前記二酸化炭素分離済ガスを該吸着塔の主吸着剤側から導入して副吸着剤側から排出する際に、水素を含むガスを回収することを特徴とする高炉ガスの成分分離方法。
【0011】
(2)前記第2段の圧力スイング吸着装置の吸着塔において、一酸化炭素を優先して吸着する主吸着剤と水素以外の残部ガス成分を吸着する副吸着剤とを99:1〜60:40の体積比にて積層したことを特徴とする前記(1)に記載の高炉ガスの成分分離方法。
【0012】
(3)前記第2段の圧力スイング吸着装置において、吸着剤に吸着したガス成分を脱着するに際し、該脱着されたガスの排出方向が前記主吸着剤から副吸着剤側であることを特徴とする前記(1)に記載の高炉ガスの成分分離方法。
【0013】
(4)高炉ガスからガス成分を分離する、二段で連続する圧力スイング装置であって、二酸化炭素を吸着分離する第1段の圧力スイング吸着装置および、該二酸化炭素分離済ガスから一酸化炭素を吸着分離する第2段の圧力スイング吸着装置をそなえ、
前記第2段の圧力スイング吸着装置は、一酸化炭素を優先して吸着する主吸着剤、次に水素以外の残部ガス成分を吸着する副吸着剤の順に積層した吸着塔を有し、前記副吸着剤の出側に、水素を含むガスを回収するための管を有することを特徴とする高炉ガスの成分分離装置。
【0014】
(5)前記第2段の圧力スイング吸着装置の吸着塔は、一酸化炭素を優先して吸着する主吸着剤と水素以外の残部ガス成分を吸着する副吸着剤とを99:1〜60:40の体積比にて積層したことを特徴とする前記(4)に記載の高炉ガスの成分分離装置。
【0015】
(6)前記吸着塔の前記副吸着剤側に、副吸着剤に対する脱着処理に供する減圧配管を接続することを特徴とする前記(4)または(5)に記載の高炉ガスの成分分離装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水素、窒素、一酸化炭素及び二酸化炭素を主たる成分とする高炉ガスから水素および一酸化炭素からなる燃料ガス成分を分離するに当たり、第2段PSA装置において、一酸化炭素を優先して吸着する主吸着剤を原料ガス導入側に、水素以外の残部ガス成分を吸着する副吸着剤をガス排出側に、所定の体積比の下に積層した吸着塔を用いることにより、より高い回収率で燃料ガス成分を回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】2段のPSA装置による高炉ガスの成分分離を説明する模式図である。
【図2】本発明に第一の実施形態に従う第2段PSA装置の概略図である。
【図3】副吸着剤の充填比率と回収ガス中の水素およびCO濃度との関係を示すグラフである。
【図4】副吸着剤の充填比率と可燃性ガス回収率との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第2段PSA装置におけるガス流れを示す説明図である。
【図6】副吸着剤の充填比率による排出ガス中の水素濃度の時間変化を示す図である。
【図7】本発明の第2段PSA装置におけるガス流れを示す説明図である。
【図8】本発明の第2段PSA装置におけるガス流れを示す説明図である。
【図9】本発明の第2段PSA装置におけるガス流れを示す説明図である。
【図10】本発明の他の実施形態を示す第2段PSA装置の概略図である。
【図11】他の実施形態の第2段PSA装置におけるガス流れを示す説明図である。
【図12】他の実施形態の第2段PSA装置におけるガス流れを示す説明図である。
【図13】第1段PSA装置と第2段PSA装置における排出ガス中の水素濃度の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明方法の基本的な概念を、図1を参照して説明する。本発明では、高炉ガスを2段のPSA装置を用いて各種ガス成分に分離する。すなわち、高炉ガスCを、第1段PSA装置1に導入し、この第1段PSA装置1では、二酸化炭素を優先的に吸着する吸着剤を利用して、高炉ガスCより主に二酸化炭素からなるガスを吸着分離する。なお、吸着剤に吸着させたガスは、脱着処理にて吸着剤から分離し、第1段PSA装置1から導出する(C)。
【0019】
次に、二酸化炭素濃度が減少したガスCを、第2段PSA装置2に導入し、一酸化炭素を優先的に吸着する吸着剤を利用して、このガスCから主に一酸化炭素からなるガスCを吸着分離するとともに、一酸化炭素分離を経たガスのうち、水素分の比較的多いガスCおよび少ないガスCに分離する。
ここで、本発明における第一の形態として、第2段PSA装置2において、一酸化炭素を優先的に吸着する主吸着剤と水素以外の残部ガス成分を吸着する副吸着剤を、第1段PSA装置から排出されるガスの導入側から主吸着剤、副吸着剤の順で積層させる。ここに導入された二酸化炭素が減少したガスCは、主吸着剤にて一酸化炭素が吸着された後に副吸着剤で窒素等が吸着されることにより、後述する図6に示すように、単に主吸着剤のみを充填した場合(副吸着剤:0.0)に比べ水素濃度が高くなるため、水素を高濃度かつ高回収率で分離できる。
一方、主吸着剤に吸着させた主に一酸化炭素からなるガスCは、脱着処理にて主吸着剤から分離し、第2段PSA装置2から導出して可燃性ガスとして回収する。
以下に、本発明の特徴である第2段PSA装置2におけるPSA処理について、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
本発明に従う第2段PSA装置2の詳細を図2に示す。また、この第2段PSA装置2の動作について、図5以下を参照して詳細に説明する。
なお、ここでは吸着塔が2本からなるPSA装置で説明するが、吸着塔は本発明例の主旨に沿った操作をする範囲内において1本でも3本以上でも構わない。
図2に示すように、図示例の第2段PSA装置2は、2本の吸着塔20Aおよび20Bを有し、各吸着塔での吸着と脱着とを吸着塔20Aおよび20B間で交互に行うことによって、連続運転を可能にしている。吸着塔20Aおよび20Bは、一酸化炭素を優先して吸着する主吸着剤21と水素以外の残部ガス成分を吸着する副吸着剤22とを、第1段PSA装置から導入する二酸化炭素分離済ガスC1の導入側に主吸着剤21、排出側に副吸着剤22を順に積層配置してなる。さらに、各吸着塔には、前記主吸着剤21側から二酸化炭素分離済ガスCの導入管23がバルブVを介して接続される一方、前記副吸着剤22側に排出ガスの導出本管24および高濃度水素を含むガスを選択回収するための分岐管25が、それぞれバルブVを介して接続されている。さらにまた、各吸着塔の前記主吸着剤21側には、主吸着剤21にて吸着した主に一酸化炭素を脱着処理した際の一酸化炭素ガスの導出管26がバルブVを介して接続されている。この脱着処理には、真空ポンプPを用いる。
【0021】
ここに、主吸着剤21および副吸着剤22は、吸着塔内に積層配置する際の充填比率が重要である。すなわち、副吸着剤22が少なすぎると、水素の分離効率の上昇は期待できなくなり、一方で多すぎれば、第2段PSA装置2本来の目的である、一酸化炭素の吸着分離が不十分になる。
【0022】
副吸着剤22の体積割合と回収ガス中の水素およびCO濃度との関係は、図3に示すように、副吸着剤の体積割合を増やすほど水素濃度は増加していくが、一方で主吸着剤の体積割合低下にともないCO濃度が低下する。このため、回収する可燃性ガスの体積当り熱量を1200kcal/Nm3とした場合、可燃性成分の回収率は図4に示すように、副吸着剤の体積割合に最適値が存在する。主吸着剤21と副吸着剤22との体積比は99:1〜60:40の範囲内で充填することが肝要であり、好ましくは体積比90:10〜65:35、より好ましくは85:15〜70:30の範囲内とするのがよい。
【0023】
なお、吸着塔20Aおよび20Bに積層して充填する主吸着剤21および副吸着剤22は、上記した吸着機能をそなえていれば、特に種類は限定する必要はないが、例えば、主吸着剤21としては、一価の銅を含む多孔質材料(活性炭やゼオライトなど)が、また副吸着剤22としては、活性炭や分子篩カーボン、またはゼオライトなどを使用できる。その充填順序は、主吸着剤21は二酸化炭素分離済ガスCの導入側(図2では塔下部)に充填し、副吸着剤22は排出側(図2では塔上部)に充填する。
【0024】
次に、本発明の第一の形態における第2段PSA装置2における運転手法を、ガス流れに従って説明する。
図5に示すように、真空ポンプによって吸着塔20A内部のガスが脱着された後に、第1段PSA装置1での処理を経た二酸化炭素分離済ガスCを、導入管23を介して導入する。導入された二酸化炭素分離済ガスCは、まず、主吸着剤21において一酸化炭素成分を優先吸着し、引き続き、副吸着剤22において水素以外の残部ガス成分、主に窒素を優先吸着した後、吸着塔20Aから導出される。
【0025】
ここで導出される排出ガスCは、副吸着剤22において水素以外の残部ガス成分の吸着処理を経ているため、主吸着剤21を経て排出されるガスに比較して、排出ガス中の水素濃度が高くなっている。従って、この排出ガスCを回収すれば、従前に比較して水素の回収率を引き上げることができる。
特に、水素の回収率を引き上げて、さらに水素と一酸化炭素を含む可燃性ガスとしての回収率を引き上げるためには、主吸着剤21および副吸着剤22の充填比率を前述したように規制することが肝要である。
【0026】
なお、排出ガスは、図6に示すように、吸着排ガスの排出時間を1とした相対値で0〜0.5までの排出初期において水素が比較的多く含まれるため、排出初期には前記した分岐管25側のバルブを開として、この排出初期のガスを可燃性ガスとして選択回収することが、水素回収率を高める上で好ましい。
【0027】
吸着塔20Aには、引き続き二酸化炭素分離済ガスCが導入され、同時に塔上部からガスが排出されるが、この排出ガスは上述のとおり水素濃度は排出初期よりは低下しているため、図7に示すように、導出本管24を介して吸着済排ガスCとして廃棄する。
【0028】
ここで、吸着塔20の上部から排出されるガスを初期排ガスと吸着済排ガスとに切り替えるには、排出開始後の経過時間によって自動弁を操作してもよいし、また、吸着塔上部の排出ガスの水素濃度をオンライン測定しながら水素濃度がある値よりも下がった時点で自動弁が切り替わるようにしてもよい。
【0029】
前記吸着塔20Aでの処理と並行して、吸着塔20Bでは、真空ポンプPによる脱着処理を行って、主吸着剤21および副吸着剤22に吸着された、一酸化炭素を含むガスCを回収しておく。
【0030】
次に、吸着塔20Aへ所定量(例えば、一酸化炭素の回収率に起因して決定される導入ガス量)のガス供給が終了したならば、図8に示すように、吸着塔20Aに対して真空ポンプPによる脱着処理を行って、主吸着剤21および副吸着剤22に吸着された、一酸化炭素を含むガスを回収しておく。一方、吸着塔20Bでは、前述の吸着塔20Aでの操作と同様に、主に一酸化炭素、次いで水素以外の残部ガスを吸着し、好ましくは、図8に示すように、水素濃度の比較的高いガスを初期排ガスCとして回収し、水素濃度が低下した後は、図9に示すように、吸着済排ガスCとして廃棄する。
【0031】
次に、本発明における第二の実施形態について図10によって説明する。図10に示す例では、各吸着塔20Aおよび20Bの前記主吸着剤21側に、副吸着剤22にて吸着したガスを脱着処理するための導出管27が、バルブVを介して接続されている。この脱着処理に真空ポンプPを用いることは、他の脱着処理と同様である。
【0032】
第二の実施形態において副吸着剤側から脱着処理する理由を以下に説明する。
第一の実施形態では、吸着塔で吸着したガス成分の脱着処理が吸着塔下方から導出管26を介して行われるため、副吸着剤22に吸着されたガスについても導出管26を介して行われる。吸着塔内部には主、副吸着剤が充填され吸着塔下方から吸引を行った際に圧損が生じることから、副吸着剤22の塔上方層では同下方層に比較して圧力低下代が小さく、副吸着剤22に吸着されたガスを、副吸着剤22から短時間で十分に解離することは難しい。
そこで、第二の形態では図10に示すように、各吸着塔20Aおよび20Bの前記副吸着剤22に、導出管27を接続して、吸着塔の上方から吸引を行うことによって、副吸着剤22に吸着されたガスを、副吸着剤22から短時間で十分に解離することができる。
【0033】
なお、脱着処理の順序は、吸着塔の主吸着剤側(図10における下方)を先に実施し、しかるのちに吸着塔の副吸着剤側(図10における上方)の導出管27側のバルブも開として行ってもよいし、あるいは、吸着塔20Bの主吸着剤21に対する脱着処理(図7)の後、および吸着塔20Aの主吸着剤21に対する脱着処理(図9)の後に、それぞれ図11および図12に示すように別々に行ってもよい。
【0034】
なお、上記した本発明に従って第2段PSA装置2に適用した手段は、第1段PSA装置1に適用することも可能であるが、第1段PSA装置では、高炉ガスから主に二酸化炭素からなるガスを分離することを目的としており、この装置の吸着塔には二酸化炭素の分離性能に優れた、例えばゼオライト系の吸着剤が充填される。この吸着剤に通した排出ガス中の水素濃度と、第2段PSA装置からの排出ガス中の水素濃度とを、図13に示す。図13から明らかなように、第1段PSA装置の排出ガス中の水素濃度は高くても5%止まりであり、この低濃度水素ガスに本発明の手法を適用しても第2段PSA装置に適用した場合と同程度の効果は得られにくい。
【実施例】
【0035】
X型ゼオライト(東ソー(株)製 ゼオラムF−9(商標))500gを充填した吸着塔(内径40mmφ×高さ500mm)3塔をそなえる、第1段PSA装置に、高炉ガスを模擬したガス(一酸化炭素:23体積%、二酸化炭素:22体積%、水素:3体積%、窒素:52体積%)を導入して吸着処理を行って二酸化炭素を分離した。二酸化炭素分離後のガスの組成は、一酸化炭素:28体積%、二酸化炭素:4体積%、水素:4体積%および窒素:64体積%であった。この二酸化炭素分離後ガスを、図2に示した2塔式の第2段PSA装置に導入して吸着処理を行った。
【0036】
この第2段PSA装置に、一酸化炭素を主に吸着する吸着剤のみを充填した吸着塔にて一酸化炭素分離を行った場合(以下、比較例と示す)と、一酸化炭素を主に吸着する主吸着剤と水素以外のガスを吸着する副吸着剤とを充填した吸着塔にて一酸化炭素および窒素の分離を行った場合(以下、発明例1と示す)について、分離回収される一酸化炭素濃度、水素濃度および可燃性ガス回収率を調査した。なお、水素濃度は水素回収率を40mol%とした場合であり、可燃性ガス回収率は分離回収される一酸化炭素と水素を合わせたガスの体積当り熱量が1200kcal/Nm3となるようにした場合のものである。
【0037】
さらに、図10に示した2塔式の第2段PSA装置において、一酸化炭素を主に吸着する主吸着剤と水素以外のガスを吸着する副吸着剤とを充填した吸着塔にて一酸化炭素および窒素の分離を行った場合(以下、発明例2と示す)についても、同様に、分離回収される一酸化炭素濃度、水素濃度および可燃性ガス回収率を調査した。
【0038】
<比較例>
図2に示した2塔式PSA装置を使用し、各吸着塔(内径40mmφ×高さ500mm)内には、一価の銅を活性炭に添加させた吸着剤(住友精化(株)製 セイカファインCOX(商標))を500g充填した。ここに、上記の高炉ガスから二酸化炭素を分離した後の原ガスを(模した混合ガスを)導入してガスを分離した。1サイクルの時間は、吸着工程100秒、脱着工程100秒とした。吸着工程における原ガス導入量は3.3NL/分とし、圧力110kPaに達した時点で塔上部のバルブを開放して吸着済ガスを排出した。その際、排出開始初期のガスを、水素が比較的多く含まれる初期排出ガスとして回収し、以降のガスは分岐管25のバルブを閉とし、同時に吸着排ガス側のバルブを開として残りのガスを排気した。また、脱着工程における最終圧力は10kPaとして吸着剤に吸着された一酸化炭素を主に含むガスを回収した。なお、試験は初期排出ガスの回収時間を変えたものを数条件実施した。
以上の回収結果について、導入したガスに含まれる水素量(モル)に対する初期排ガス中の水素量(モル)の割合を水素回収率として評価し、回収したガスの水素濃度と水素回収率との関係を求めた。また、初期排ガスと脱着工程で脱着する回収ガスを混合して、このガスに含まれる一酸化炭素と水素の合計量(モル)の、導入したガスに含まれる一酸化炭素および水素の合計量(モル)に対する割合を、可燃性成分回収率として評価した。なお、可燃性成分回収率は、混合後のガスの熱量1200kcal/Nmとした場合の回収率とした。これら回収率の測定結果を、表1に示す。
【0039】
<発明例1>
上記した比較例と同じ、図2の2塔式PSA装置を使用し、主吸着剤に比較例と同じ吸着剤を充填し、その上に活性炭(日本エンバイロケミカルズ(株)製 粒状白鷺G2(商標))を充填した。充填した割合は、表1に示す体積割合とした。導入ガスの組成および導入量、1サイクルの時間、圧力、水素回収の条件は比較例と同様に行い、水素および一酸化炭素を回収した。水素回収率40%での水素濃度および可燃性成分回収率を、表1に示す。水素濃度および可燃性成分回収率は共に、主吸着剤のみの比較例の場合に比べて格段に上昇していた。
【0040】
【表1】

【0041】
<発明例2>
図10に示したPSA装置を使用し、発明例1と同じ吸着剤を同様に積層充填し、導入ガスの組成および導入量、1サイクルの時間、圧力、水素回収の条件は比較例と同様に行い、水素および一酸化炭素を回収した。水素回収率および可燃性成分回収率を、表2に示す。水素濃度および可燃性成分回収率は共に、発明例1の場合に比べて上昇しており、副吸着剤側からの脱着の効果が見られた。
【0042】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉ガスを連続する二段の圧力スイング吸着装置を使用して、該高炉ガスを第1段の圧力スイング吸着装置に導入して二酸化炭素を吸着分離した後、該二酸化炭素分離済ガスを、第2段の圧力スイング吸着装置に導入して一酸化炭素を吸着分離するに当たり、
前記第2段の圧力スイング吸着装置において、一酸化炭素を優先して吸着する主吸着剤、次に水素以外の残部ガス成分を吸着する副吸着剤の順に積層した吸着塔に、前記二酸化炭素分離済ガスを該吸着塔の主吸着剤側から導入して副吸着剤側から排出する際に、水素を含むガスを回収することを特徴とする高炉ガスの成分分離方法。
【請求項2】
前記第2段の圧力スイング吸着装置の吸着塔において、一酸化炭素を優先して吸着する主吸着剤と水素以外の残部ガス成分を吸着する副吸着剤とを99:1〜60:40の体積比にて積層したことを特徴とする請求項1に記載の高炉ガスの成分分離方法。
【請求項3】
前記第2段の圧力スイング吸着装置において、吸着剤に吸着したガス成分を脱着するに際し、該脱着されたガスの排出方向が前記主吸着剤から副吸着剤側であることを特徴とする請求項1に記載の高炉ガスの成分分離方法。
【請求項4】
高炉ガスからガス成分を分離する、二段で連続する圧力スイング装置であって、二酸化炭素を吸着分離する第1段の圧力スイング吸着装置および、該二酸化炭素分離済ガスから一酸化炭素を吸着分離する第2段の圧力スイング吸着装置をそなえ、
前記第2段の圧力スイング吸着装置は、一酸化炭素を優先して吸着する主吸着剤、次に水素以外の残部ガス成分を吸着する副吸着剤の順に積層した吸着塔を有し、前記副吸着剤の出側に、水素を含むガスを回収するための管を有することを特徴とする高炉ガスの成分分離装置。
【請求項5】
前記第2段の圧力スイング吸着装置の吸着塔は、一酸化炭素を優先して吸着する主吸着剤と水素以外の残部ガス成分を吸着する副吸着剤とを99:1〜60:40の体積比にて積層したことを特徴とする請求項4に記載の高炉ガスの成分分離装置。
【請求項6】
前記吸着塔の前記副吸着剤側に、副吸着剤に対する脱着処理に供する減圧配管を接続することを特徴とする請求項4または5に記載の高炉ガスの成分分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−12635(P2012−12635A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148062(P2010−148062)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構「環境調和型製鉄プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】