説明

高炉ガス処理システムおよび高炉ガス処理方法

【課題】高炉ガスに含まれている塩化アンモニウムの構成成分を経済的かつ効率よく除去するとともに、炉頂圧回収タービンにおける出力を最大化できる高炉ガス処理システムおよび高炉ガス処理方法を提供すること。
【解決手段】高炉ガス処理システム1は、高炉2と、高炉2で排出される高炉ガスを導入する除塵器3と、湿式集塵装置4および乾式集塵装置5と、乾式集塵装置5を通過した高炉ガスを導入する吸着装置6と、集塵後の高炉ガスを導入して発電させる炉頂圧回収タービン7と、吸着チャンバ61と、吸着チャンバ61内に蓄えられた吸着体62とからなる吸着装置6と、高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムの濃度を推定する濃度推定手段と、吸着チャンバ61内に蒸気を供給する蒸気供給手段64と、記憶手段と、高炉ガスの発生量を検出する高炉ガス発生量検出手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉ガス処理システムおよび高炉ガス処理方法に関し、高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムの構成成分を処理するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高炉から排出される高炉ガスは、集塵機によりダストを除去した後でも高温、高圧であることから、炉頂圧回収タービン(TRT:Top pressure Recovery Turbine)を用いて発電に利用されている。
高炉ガスからダストを除去する方法としては、湿式集塵と乾式集塵とがある。乾式集塵では、高炉ガスの温度を下げずに処理を実施できるため、湿式集塵の場合に比べて炉頂圧回収タービンにおける出力が高くなるという利点がある。しかしながら、乾式集塵では、高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムが高温により熱分解して気体となり、その後炉頂圧回収タービンにおいて減圧され温度が低下して固体の塩化アンモニウムとしてタービン翼の表面に付着し、タービンの異常振動の原因となることがある。
【0003】
このようなタービンの異常振動を防止するために、定期的に乾式集塵から湿式集塵に切り替えて炉頂圧回収タービンに湿りガスを導入し、この湿りガスが減圧されることで発生するミストによってタービン翼の付着物を洗い流す方法が知られている。しかしながら、この方法では、湿式集塵で多量の水を散布するため高炉ガスの温度が下がり、炉頂圧回収タービンの出力が下がってしまっていた。
そこで、炉頂圧回収タービンの出力を下げずに、タービン翼への塩化アンモニウムの付着を防止する方法の一例が特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1では、塩化アンモニウムの構成成分である塩素やアンモニア等を吸収する吸収剤を乾式集塵装置の上流側で吹き込み、塩素やアンモニア等を吸収した吸収剤を乾式集塵装置で他のダストとともに集塵することで、炉頂圧回収タービンで塩化アンモニウムが析出することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−209808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、乾式集塵装置が運転している間はこの吸収剤を常時吹き込み続け、さらにダストとともに除去しなければならない。このように高価な吸収剤を消耗品として扱うにはランニングコストが増大するという問題があった。また、乾式集塵装置で集塵するダストの総量が吸収剤の分だけ増加するため、乾式集塵装置の負担が増大し、設備が大型化して設備費が増大するという問題があった。
【0007】
本発明の主な目的は、前述のような従来技術の課題を解決し、高炉ガスに含まれている塩化アンモニウムの構成成分を経済的かつ効率よく除去するとともに、炉頂圧回収タービンにおける出力を最大化できる高炉ガス処理システムおよび高炉ガス処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の高炉ガス処理システムは、高炉から発生する高炉ガスを処理する高炉ガス処理システムであって、前記高炉の炉頂温度を検出する温度検出手段と、前記高炉ガスに含まれる固体粒子を除去する乾式集塵装置と、高炉ガスにより駆動する炉頂圧回収タービンと、を備え、前記乾式集塵装置の後段に第1配管を介して接続されるとともに、前記炉頂圧回収タービンの前段に第2配管を介して接続された吸着チャンバと、この吸着チャンバに収容され、前記塩化アンモニウムの構成成分を吸着する吸着体とからなる吸着装置と、前記炉頂温度と前記高炉ガスに含まれる前記塩化アンモニウムの濃度との関係を示すデータを記憶する記憶手段と、前記温度検出手段で検出された炉頂温度と前記記憶手段に記憶されたデータとに基づいて、前記吸着装置を通過する前の高炉ガス中の前記塩化アンモニウム濃度を推定する濃度推定手段と、前記高炉ガスの発生量を検出する高炉ガス発生量検出手段と、前記濃度推定手段で推定された濃度と前記高炉ガス発生量検出手段で検出されたガス量とに基づいて算出される、前記吸着体を洗浄する時期に前記ケース内に蒸気を供給して当該吸着体を洗浄する蒸気供給手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の高炉ガス処理方法は、高炉から発生する高炉ガスを処理する高炉ガス処理方法であって、前記高炉の炉頂温度を検出する温度検出手段と、前記高炉ガスに含まれる固体粒子を除去する乾式集塵装置と、高炉ガスにより駆動する炉頂圧回収タービンと、前記乾式集塵装置に第1配管を介して接続されるとともに、前記炉頂圧回収タービンに第2配管を介して接続された吸着チャンバとからなる吸着装置と、この吸着チャンバに収容され、前記塩化アンモニウムの構成成分を吸着する吸着体と、前記炉頂温度と前記高炉ガスに含まれる前記塩化アンモニウムの濃度との関係を示すデータを記憶する記憶手段と、を有し、前記温度検出手段で検出された炉頂温度と前記記憶手段に記憶されたデータとに基づいて、前記吸着装置を通過する前の高炉ガス中の前記塩化アンモニウムの濃度を推定する濃度検出工程と、前記高炉ガスの発生量を検出する高炉ガス発生量検出手段と、前記濃度推定手段で推定された濃度と前記高炉ガス発生量検出手段で検出されたガス量とに基づいて、前記吸着体を洗浄する時期を算出し、前記吸着チャンバ内に蒸気を供給して当該吸着体を洗浄することを特徴とする。
【0010】
このような本発明においては、乾式集塵装置で除塵された高炉ガスを吸着装置に導入することで、高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムの構成成分を除去することができる。塩化アンモニウムの構成成分とは、塩化水素およびアンモニアであり、これらの構成成分のうち少なくともいずれか一つを吸着できる吸着体が使用される。このように、高炉ガスから塩化アンモニウムの構成成分を除去することができるので、炉頂圧回収タービンで塩化アンモニウムの析出を防止することができ、炉頂圧回収タービンで起きる異常振動等の不具合を防止することができる。
また、吸着装置に収納された吸着体を蒸気により洗浄するため、高炉ガスの温度を下げることなく、高炉ガスから塩化アンモニウムの構成成分を除去することができる。このため、炉頂圧回収タービンにおいて高出力を維持しながら異常振動等の不具合を防止することができる。
【0011】
また、高炉ガスは高温であるため、高炉ガスに接触した吸着体を洗浄するために水等で急冷すると吸着体が割れるおそれがあるが、本発明では蒸気で高温のまま洗浄できるため、吸着体の割れを防止することができ、吸着体を長寿命化することができる。このように吸着体を洗浄することで繰り返し使用することができるため、ランニングコストを抑えることができる。
さらに、本発明では、吸着装置に導入される高炉ガスは、乾式集塵装置で除塵されているため、吸着体の塩化アンモニウムの構成成分に対する吸着能力の低下を防止することができる。
そして、従来のように乾式集塵装置において塩化アンモニウムの構成成分を吸着する吸着剤の処理を行わなくてよいため、乾式集塵装置ではダストのみの処理となり、設備の大型化を抑制することができる。
【0012】
また、本発明においては、炉頂温度に基づいて高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムの濃度を推定することができる。炉頂温度と塩化アンモニウムの濃度とは一定の関係を有していることが経験的にわかっているため、その関係を示すデータを記憶手段に記憶させ、温度検出手段により検出した炉頂温度と記憶手段に記憶されたデータとに基づいて濃度を推定することができる。炉頂温度の検出は、従来ある検出手段を利用できるため、高炉ガス中の塩化アンモニウムの濃度を推定するための新たな設備を投入しなくてもよく、設備費を最小限に抑えることができる。
【0013】
本発明の高炉ガス処理システムにおいて、前記蒸気供給手段は、前記濃度推定手段で推定された前記塩化アンモニウムの濃度と前記高炉ガス発生量検出手段で検出された前記高炉ガスの発生量とから前記吸着装置を通過する前記塩化アンモニウムのそれぞれの時間での通過量を算出し、この通過量を時間で積分することにより前記塩化アンモニウムの累計通過量を算出し、この算出した累計通過量が予め設定された所定の許容通過量を超えたことを検出すると、前記蒸気を供給する。
【0014】
このような本発明においては、蒸気供給手段は、濃度推定手段で推定された塩化アンモニウムの濃度と高炉ガス発生量検出手段で検出された高炉ガスの発生量とに基づいて吸着装置を通過する塩化アンモニウムの累計通過量を算出し、この累計通過量が許容通過量を超えた場合に蒸気を供給して吸着体を洗浄する。このように、累計通過量が許容通過量を超えるタイミング、すなわち吸着体の吸着能力が低下するタイミングで洗浄を行うため、吸着体を効率よく利用することができるとともに、高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムの構成成分を確実に除去することができる。なお、高炉ガス発生量検出手段としては、従来ある検出手段を利用することができる。
【0015】
本発明の高炉ガス処理システムにおいて、前記吸着装置は、前記吸着チャンバに接続する第3配管を介して蒸気処理手段を備え、前記蒸気処理手段は、前記吸着体の洗浄により発生する前記塩化アンモニウムの構成成分を含む蒸気を処理する。
【0016】
前記吸着装置内の吸着体に吸着された塩化アンモニウムの構成成分を含む蒸気は第3配管を介して排出され、冷却により液化されて液体処理設備等にて処理される。洗浄後の蒸気には、塩化アンモニウムの構成成分が含まれているため、この蒸気が液化した場合、腐食性のある液体となる。本発明では、この蒸気をシステム外に排出することで、炉頂圧回収タービンに塩化アンモニウムの構成成分を含む液体が流れ込むことを防止することができ、炉頂圧回収タービンが腐食することを防止することができる。
【0017】
本発明の高炉ガス処理システムにおいて、複数の吸着装置を備え、前記第1配管には、高炉ガスの流通を遮断する第1遮断弁が設けられ、前記第2配管には、高炉ガスの流通を遮断する第2遮断弁が設けられ、前記第3配管には、液体の流通を遮断する第3遮断弁が設けられ、前記蒸気供給手段は、前記吸着チャンバに第4配管を介して接続され、前記第4配管には、蒸気の流通を遮断する第4遮断弁が設けられ、前記第1遮断弁と、前記第2遮断弁と、前記第3遮断弁と、前記第4遮断弁を、吸着体を洗浄するときは、吸着装置の第1遮断弁と第2遮断弁を閉じるとともに第3遮断弁と第4遮断弁を開き、前記高炉ガスから前記塩化アンモニウムの構成成分を吸着して除去するときは、吸着装置の第1遮断弁と第2遮断弁を開くとともに第3遮断弁と第4遮断弁を閉じる。
【0018】
このような本発明においては、複数の吸着装置は、高炉ガスの流通を遮断する第1遮断弁および第2遮断弁をそれぞれ備え、これらの遮断弁を開閉することにより使用する吸着装置を切り替えることができる。したがって、吸着体を洗浄すべき時期となった吸着装置の第1遮断弁および第2遮断弁を閉めて高炉ガスの流通経路から外すことができ、外している間に蒸気供給手段により蒸気を吸着チャンバ内に供給して吸着体を洗浄することができる。このとき、第3遮断弁と第4遮断弁を開けておくことで洗浄後の蒸気(または液体)を排出することができ、吸着体に吸着された塩化アンモニウムの構成成分を含有する蒸気が炉頂圧回収タービンに流れ込むことを防止できる。また、洗浄すべき時期でない吸着装置の第1遮断弁と第2遮断弁を開くとともに第3遮断弁と第4遮断弁を閉じることで、高炉ガス中の塩化アンモニウムの構成成分を除去することができる。このような処理を各吸着装置で順次行うことで、システムを停止させることなく吸着体の洗浄を行うことができる。
【0019】
本発明の高炉ガス処理システムにおいて、前記乾式集塵装置と前記炉頂圧回収タービンとは、前記第1配管と前記第2配管とを連通する第5配管を介して直接的に接続され、前記第1配管には、高炉ガスの流通を遮断する第1遮断弁が設けられ、前記第2配管には、高炉ガスの流通を遮断する第2遮断弁が設けられ、前記第3配管には、液体の流通を遮断する第3遮断弁が設けられ、前記蒸気供給手段は、前記吸着チャンバに第4配管を介して接続され、前記第4配管には、蒸気の流通を遮断する第4遮断弁が設けられ、前記第5配管には、高炉ガスの流通を遮断する第5遮断弁が設けられ、前記第1遮断弁と、前記第2遮断弁と、前記第3遮断弁と、前記第4遮断弁と、第5遮断弁を、前記濃度推定手段で推定された濃度が予め設定された所定の濃度未満であることを検出した場合、前記第5遮断弁を開くとともに、全ての吸着装置の第1遮断弁と第2遮断弁を閉じ、前記濃度推定手段で推定された濃度が予め設定された所定の濃度を超えたことを検出した場合、前記第5遮断弁を閉じるとともに、前記高炉ガスから前記塩化アンモニウムの構成成分を吸着して除去するのに必要な数の吸着装置の第1遮断弁と第2遮断弁を開くとともに第3遮断弁と第4遮断弁を閉じる。
【0020】
このような本発明においては、吸着装置は1つでも複数でもよい。乾式集塵装置と炉頂圧回収タービンとを直接的に接続する第5配管および第5遮断弁が設けられることにより、開閉制御手段は、吸着装置を通過する経路と通過しない経路とを選択することができる。炉頂圧回収タービンに導入する高炉ガスは、吸着装置を通らないほうが通る場合に比べて圧力が高いため、炉頂圧回収タービンの出力を高くすることができる。したがって、開閉制御手段は、濃度推定手段により推定された濃度が所定値未満である場合は、第5遮断弁を開けるとともに全ての吸着装置の第1遮断弁および第2遮断弁を閉める制御をして吸着装置を通らない経路を選択し、濃度が所定値を超えた場合は、第5遮断弁を閉めるとともに、高炉ガス中の塩化アンモニウムの構成成分を除去するのに必要な数の吸着装置の第1遮断弁および第2遮断弁を開くとともに第3遮断弁と第4遮断弁を閉じる制御をして吸着装置を通る経路を選択する。なお、吸着装置が1つの場合、第1遮断弁および第2遮断弁を閉めているときに蒸気による吸着体の洗浄が行われる制御が為される。このように、高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムの濃度に応じて吸着装置を通るか否かの制御を行うことで、効率のよい運転を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態を示す高炉ガス処理システムの概要図である。
【図2】前記第1実施形態の高炉ガス処理システムの制御手段を示す概要図である。
【図3】高炉ガスの温度と高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムの濃度との関係を示すグラフである。
【図4】100ppmの塩化アンモニウムを含むガスを吸着装置に通す実験において、ガスの吸着体との接触時間と、吸着装置出口におけるガスに含まれる塩化アンモニウムの濃度との関係を示すグラフである。
【図5】前記高炉ガス処理システムの供給制御手段の処理を示すフローチャートである。
【図6】100ppmの塩化アンモニウムを含むガスを吸着装置に通す実験において、通ガス時間と吸着装置出口の塩化アンモニウムの濃度との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第2実施形態を示す高炉ガス処理システムの概要図である。
【図8】前記第2実施形態の高炉ガス処理システムの制御手段を示す概要図である。
【図9】本発明の第3実施形態を示す高炉ガス処理システムの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1および図2には、本発明の第1実施形態が示されている。
本実施形態の高炉ガス処理システム1は、高炉ガスに含まれるダストおよび塩化アンモニウムの構成成分を除去し、この高炉ガスを炉頂圧回収タービンにより発電に利用するシステムである。塩化アンモニウムの構成成分とは、塩化水素およびアンモニアであり、これらの構成成分のうち少なくともいずれか一つを除去できればよい。
高炉ガス処理システム1は、高炉2と、高炉2で排出される高炉ガスを導入する除塵器3と、除塵器3を通過した高炉ガスを導入する湿式集塵装置4および乾式集塵装置5と、乾式集塵装置5を通過した高炉ガスを導入する吸着装置6と、集塵後の高炉ガスを導入して発電させる炉頂圧回収タービン7と、を備えている。
【0023】
高炉2は、高炉ガスの炉頂温度を測定するための温度検出手段としての炉頂温度計21を有している。
除塵器3は、高炉2から排出された高炉ガスを配管81を介して導入し、重力沈降式により高炉ガスに含まれる粗粒ダストを除去する。
【0024】
湿式集塵装置4は、除塵器3で除塵された高炉ガスを配管82を介して導入し、細粒ダストを除塵する。具体的には、湿式集塵装置4は、第1ベンチュリースクラバー41と第2ベンチュリースクラバー42とこれらのベンチュリースクラバー41,42を接続する接続配管43を備えている。除塵器3で除塵された高炉ガスは、配管82を介して第1ベンチュリースクラバー41に導入され、水と接触することでさらに除塵される。この第1ベンチュリースクラバー41で除塵された高炉ガスは、接続配管43を介して第2ベンチュリースクラバー42に導入され、再度除塵された後、配管83に排出される。このように、2段階で湿式除塵処理が実施される。なお、湿式集塵装置4では、高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムがベンチュリースクラバー41,42で水に溶け込むことにより除去される。
【0025】
乾式集塵装置5は、除塵器3で粗粒ダストを除塵された高炉ガスを配管84を介して導入し、細粒ダストを除塵する。具体的には、乾式集塵装置5は、4基の乾式チャンバ51を備え、各乾式チャンバ51は、配管84にそれぞれ接続された導入配管52と、導入された高炉ガスを除塵する濾布53と、乾式チャンバ51から高炉ガスをそれぞれ排出する排出配管54と、を備えている。導入配管52、排出配管54にはそれぞれ各配管内の流通を制御する流通弁がそれぞれ設けられ、必要に応じて開閉される。高炉ガスは、配管84から導入配管52を通って乾式チャンバ51内に導入され、濾布53を通過することで細粒ダストが除塵され、排出配管54から第1配管85へ排出される。
【0026】
吸着装置6は、乾式集塵装置5から排出された高炉ガスは第1配管85を介して導入する。吸着装置6は、1基の吸着チャンバ61と、この吸着チャンバ61内に蓄えられた吸着体62とから構成されている。該吸着装置6を通過する前の高炉ガス中の塩化アンモニウムの濃度を推定する濃度推定手段63と、吸着装置6内に蒸気を供給する蒸気供給手段64と、各種データを記憶する記憶手段66と、高炉2から発生する高炉ガス、すなわち配管81を通過する高炉ガスの発生量を検出する高炉ガス発生量検出手段67と、を備えている。
吸着装置6には、内部を上下2つの領域に仕切り、高炉ガスおよび蒸気を通過させる仕切板611が設けられ、上側の領域に吸着体62が蓄えられている。仕切板611には吸着体排出弁612が設けられ、吸着体62の入れ替えに利用される。吸着装置6の上側に第1配管85が接続されており、第1配管85を介して吸着装置6の上側から高炉ガスが導入される。また、吸着装置6の下側には第2配管86が接続されている。
【0027】
吸着体62は、塩化アンモニウムの構成成分である塩化水素またはアンモニアを吸着できるものであれば特に限定されない。塩化水素を吸着可能な吸着体として、例えばアルミナ製球体が使用される。
濃度推定手段63は、吸着装置6を通過する高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムの濃度を推定する。具体的には、高炉2に設けられた炉頂温度計21で測定された温度を取得し、この温度と記憶手段66に記憶されたデータに基づき、流通している高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムの濃度を推定する。
【0028】
ここで、システム1内を流通する高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムの濃度の推定方法について説明する。図3は、高炉2の炉頂温度計21で測定される炉頂ガス温度と高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムの濃度との関係を示すグラフである。塩化アンモニウムの濃度は、図3に示すグラフに基づいて炉頂ガスの温度から推定することができる。本システム1は、図3のグラフに示される炉頂ガスの温度と濃度の関係を示すデータを記憶手段66に記憶しており、濃度推定手段63は、炉頂温度計21で測定された測定値と記憶手段66に記憶されたデータに基づいて塩化アンモニウムの濃度を推定する。
【0029】
蒸気供給手段64は、吸着装置6の上方に接続された第4配管641と、第4配管641内の蒸気の流通を制御する第4遮断弁642と、第4配管641を介して吸着装置6内に蒸気を供給する供給制御手段643と、を備えている。
供給制御手段643は、濃度推定手段63で推定された塩化アンモニウムの濃度と高炉ガス発生量検出手段67で検出される高炉ガスの発生量とから、吸着装置6を通過する塩化アンモニウムのそれぞれの時間での通過量を算出し、この通過量を時間で積分することにより前記塩化アンモニウムの累計通過量を算出する。そして、塩化アンモニウムの累計通過量が予め設定された許容通過量を超えた場合に、第4遮断弁642を開ける制御をし、第4配管641を介して吸着チャンバ61内に大量の蒸気を供給する。ここで、許容通過量とは、吸着体62が所定の吸着能力を維持できる限界の量であり、許容通過量を超えた場合は吸着体62の吸着能力が低下する。
【0030】
ここで、塩化アンモニウムの許容通過量について、以下の実験を行った。直径3.2mmのアルミナ製球体(BASF社製「CL760」)の吸着体をチャンバに入れ、塩化アンモニウムの濃度が50ppm(実施例1)、18ppm(実施例2)のガスを20Nl/min供給し、チャンバ出口の塩化アンモニウムの濃度を測定して、塩化アンモニウムの濃度が5ppmを超えた時点で吸着体62の吸着能力が低下したと判断し、その劣化までの時間を測定した。
蒸気測定値から吸着能力が低下し始めた時点における吸着体を通過した塩化アンモニウムの累計量を計算した(表1のB参照)。実験結果を以下の表1に示す。表1に示すように、チャンバに導入する塩化水素の濃度が高いほど吸着体1mあたりの許容通過量(表1のD参照)は小さくなっている。
【0031】
【表1】

【0032】
蒸気供給手段64により供給される蒸気の供給量は、第4配管641に設けられた第4遮断弁642の開閉により調整する。
ここで、高炉ガスを吸着体62に接触させる時間によって吸着体62に吸着された塩化アンモニウムの濃度がどのように変化するかを確認する実験を行った。直径3.2mmのアルミナ製球体(BASF社製「CL760」)の吸着体をチャンバに入れ、100ppmの塩化アンモニウムを含む窒素ガスを導入した。なお、この吸着体は塩化アンモニウムの構成成分である塩化水素(HCl)を吸着する。塩化アンモニウムの導入の際に、流速を0.09m/s、0.14m/s、0.19m/sと変化させて実験を行った。図4にその実験結果を示す。図4に示すように、接触時間が1.5秒未満であると、高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムの濃度は高いが、1.5秒以上であれば、流速に関わらず高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムの濃度は5ppm以下と大幅に減少している。すなわち、高炉ガスを吸着体62に接触させる時間は1.5秒以上であることが好ましい。なお、吸着体62は、高炉ガスが1.5秒以上吸着体62に接触するように、その量を調整する。
【0033】
高炉ガスは、第1配管85から吸着装置6の内に導入され、吸着体62に接触しながら通過することで、高炉ガスに含まれている塩化アンモニウムの構成成分(本実施形態では塩化水素)が除去され、吸着装置の下部に連結した第2配管86から排出される。
このとき、蒸気供給手段64により洗浄処理が行われると、洗浄に使用された蒸気は、高炉ガスとともに第2配管86に排出されるが、大量の蒸気で洗浄することで液化した後の塩化アンモニウムの構成成分の濃度が低くなり腐食性が低いため、洗浄後の蒸気が炉頂圧回収タービン7に導入されても、炉頂圧回収タービン7は腐食されにくい。
【0034】
炉頂圧回収タービン7は、湿式集塵装置4または乾式集塵装置5から排出された高炉ガスを、配管87を介して導入する。なお、配管87は、湿式集塵装置4に接続している配管83と吸着装置6に接続している配管86とに接続している。
また、炉頂圧回収タービン7で発電を行いながら降圧された高炉ガスは、ガスホルダー71に貯蔵される。炉頂圧回収タービン7を稼働させない場合は、流通弁74,75を閉じて減圧弁72を開く制御を行い、高炉ガスを減圧弁72で降圧してサイレンサー73により消音した後、ガスホルダー71に貯蔵する。
【0035】
高炉ガス処理システム1は、湿式および乾式集塵を切り替えるための流通弁101,102,103を備えており、湿式集塵装置4に高炉ガスを流通させる場合は、流通弁102を開き、流通弁101,103を閉じる。一方、乾式集塵装置5および吸着装置6に高炉ガスを流通させる場合は、流通弁102を閉じ、流通弁101,103を開く。
【0036】
以上のような構成の高炉ガス処理システム1において、高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムの構成成分を除去する方法を具体的に説明する。
本実施形態では、湿式集塵装置4を通過する経路と乾式集塵装置5を通過する経路とを切り替えてダストの除去を行っているが、通常は乾式集塵装置5を通過する経路を使用している。高炉ガスの温度が許容温度より低い場合、乾式集塵装置5に通すと濾布53に目詰まりが生じるので、湿式集塵装置4を通過する経路を使用する。また、高炉ガスの温度が許容温度より高い場合も、乾式集塵装置5に通すと濾布53が焼損するため、湿式集塵装置4を通過する経路を使用する。
【0037】
まず、乾式集塵装置5を通過する経路を使用する場合について説明する。
流通弁101および流通弁103を開くとともに、流通弁102を閉じた状態で運転する。高炉ガスは、配管81を通って除塵器3に導入され、除塵器3内で除塵される。
除塵器3で除塵された高炉ガスは、配管82から配管84を通って乾式集塵装置5へ導入される。なお、乾式集塵装置5の各乾式チャンバ51の導入配管52および排出配管54に設けられた流通弁は、濾布53のダストを払い落としている乾式チャンバ51以外は開けられた状態となっており、3基の乾式チャンバ51の内部にそれぞれ高炉ガスが導入され、1基の乾式チャンバ51は導入配管52および排出配管54に設けられた流通弁を閉じて、濾布53のダストを払い落としている。高炉ガスは、濾布53を通過することで細粒ダストが除塵され、除塵された高炉ガスは排出配管54を通って第1配管85へ排出される。
【0038】
乾式集塵装置5で除塵された高炉ガスは、第1配管85を介して吸着装置6の上側から導入される。高炉ガスは、吸着装置6内に貯蔵されている吸着体62に接触することで塩化アンモニウムの構成成分が除去されて下側の領域へ移動し、第2配管86から排出される。
高炉ガスは、配管86から配管87(第2配管)を通って炉頂圧回収タービン7へ送られる。
【0039】
上述のような処理を続けることで、吸着体62には塩化アンモニウムの構成成分が蓄積されていく。次に、吸着体62を通過する塩化アンモニウムの量が許容通過量を超えた場合について説明する。
濃度推定手段63は、炉頂温度計21による測定値記憶手段66に記憶されたデータ(図3に示すグラフ)に基づいて塩化アンモニウムの濃度を推定する。
【0040】
次に、供給制御手段643が蒸気を供給する方法を図5に示すフローに基づいて説明する。供給制御手段643は、濃度推定手段63で推定された濃度(A)を取得し(ステップS1)、高炉ガス発生量検出手段67で検出された高炉ガス発生量(B)を取得する(ステップS2)。そして、これら濃度(A)と高炉ガス発生量(B)とから吸着装置6を通過する塩化アンモニウムのそれぞれの時間での通過量を算出し、この通過量を時間で積分することにより前記塩化アンモニウムの累計通過量を算出する(ステップS3)。そして、この累計通過量が、予め設定された許容通過量を超えたか否かを判定する(ステップS4)。累計通過量が許容通過量を超える(Yes)と、第4遮断弁642を開けて第4配管641から蒸気を供給する(ステップS5)。累計通過量が許容通過量を超えない場合(No)は、S1に戻り、S1からS6の処理を繰り返す。
蒸気が吸着チャンバ61内に供給されると、蒸気が吸着体62に接触することで吸着体62に吸着されている塩化アンモニウムの構成成分が除去されて吸着体62が再生する。蒸気の供給時間は特に限定されないが、塩化アンモニウムの累計通過量に応じて、吸着体62に吸着された塩化アンモニウムの構成成分を完全に洗浄できる程度の時間を設定することが好ましい。洗浄が終了すると、塩化アンモニウムの累計通過量はリセットされる。
洗浄後の蒸気は、高炉ガスとともに第2配管86から排出され、配管87を通って炉頂圧回収タービン7へ送られる。
【0041】
このように、塩化アンモニウムの累計通過量が許容通過量を超える度に吸着体62を洗浄する。ここで、本システム1の運転期間中に高炉ガスを吸着体62に接触させることによって蓄積する塩化アンモニウムの濃度がどのように変化するかを確認する実験を行った。直径3.2mmのアルミナ製球体(BASF社製「CL760」)の吸着体をチャンバに入れ、50ppmの塩化アンモニウムを含むガスを流速0.19m/sで導入し、吸着体に対する接触時間が2.68秒となるように吸着体62の量を調整した。チャンバの出口付近における塩化アンモニウムの濃度が5ppmを超えた時点で蒸気をチャンバ内に導入して吸着体を再生した後、続けて50ppmの塩化アンモニウムを含むガスを導入した。図6に、吸着体62の時間経過による塩化アンモニウムの濃度が示されている。図6に示すように、吸着体62は、150時間を過ぎた頃から濃度が急激に高くなり、5ppmを越えた時点で蒸気で洗浄したことで、吸着体62の塩化アンモニウムの構成成分の濃度は1ppm以下に激減している。このように、システム稼働中に吸着体62を洗浄できるため、システムを停止させることなく吸着体62を再生でき、吸着体62を繰り返し使用することができる。
【0042】
次に、停止させた高炉2を稼働させる際に湿式集塵装置4を通過する経路を使用する場合について説明する。
高炉ガスの温度が許容温度より低いとき、または許容温度より高いとき、流通弁101および流通弁103を閉じるとともに、流通弁102を開ける。除塵器3で除塵された高炉ガスは、配管82を通って湿式集塵装置4に導入される。高炉ガスは、まず第1ベンチュリースクラバー41の内部に導入され、水に接触することで除塵される。この際、塩化アンモニウムの構成成分は水に溶解することで高炉ガスから除去される。除塵された高炉ガスは、接続配管43を通って第2ベンチュリースクラバー42へ導入される。同様に、高炉ガスが第2ベンチュリースクラバー42内の水に接触することで除塵される。除塵された高炉ガスは、配管83に排出され、配管87を通って炉頂圧回収タービン7に送られる。
【0043】
このように、本実施形態では、乾式集塵装置5で除塵された高炉ガスを吸着装置6に通すことで高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムの構成成分を除去することができるため、炉頂圧回収タービン7における固体の塩化アンモニウムの付着を防止することができる。
また、本実施形態では、吸着装置6を乾式集塵装置5の後に設ける構成としたことで、高炉ガスに含まれるダストは乾式集塵装置5でほとんど除去されるため、吸着装置6の吸着体62への負担が大幅に小さくなり、吸着体62を長期にわたって使用することができる。
【0044】
また、本実施形態では、吸着体62を蒸気により洗浄するため、高炉ガスの温度を下げることなく塩化アンモニウムの構成成分を除去できるので、炉頂圧回収タービン7の高出力を維持しながら不具合を防止することができる。
また、塩化アンモニウムの構成成分は水溶性が高いため、水に接触させることで吸着体からの脱離は可能であるが、高炉ガスは高温で処理されるため、高炉ガスに接触して高温となった吸着体62を水で洗浄すると急冷されて割れてしまうおそれがある。本実施形態では、蒸気で洗浄するため吸着体62の割れを防止することができ、吸着体62の長寿命化を図ることができる。また、吸着体62を再生して繰り返し使用することで、ランニングコストを抑えることができる。
【0045】
さらに、本実施形態では、濃度推定手段63は、高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムの濃度を炉頂温度から推定し、蒸気供給手段64は、この濃度と高炉ガス発生量検出手段67で検出される高炉ガス発生量とに基づいて、それぞれの時間での塩化アンモニウムの通過量を算出し、この通過量を時間で積分することにより塩化アンモニウムの累計通過量を算出し、この累計通過量が許容通過量を超えた時点で吸着体62を洗浄している。このように、吸着体62の吸着能力が低下するタイミングで洗浄を行うので、高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムの構成成分を確実に無駄なく除去することができ、効率のよい運転を行うことができる。また、炉頂温度計21および高炉ガス発生量検出手段67は高炉操業のために設置してあるものであり、ここで得られるデータをしようすることにより、設備費を抑えることができる。
【0046】
〔第2実施形態〕
図7および図8には、本発明の第2実施形態が示されている。
本実施形態は、前述した第1実施形態と基本構成が同じであり、共通の部分については重複する説明を省略し、以下には異なる部分について説明する。
本実施形態の高炉ガス処理システム11では、吸着装置6が3基の吸着チャンバ61を備え、各吸着チャンバ61が蒸気処理手段65を備えている点で第1実施形態とは異なる。これに伴い、蒸気供給手段64が異なり、開閉制御手段9が追加される。
【0047】
3基の吸着装置6には、第1配管85がそれぞれ接続され、各吸着装置6内への流通を制御する第1遮断弁94が第1配管85にそれぞれ設けられている。また、3基の吸着チャンバ61には、第2配管86がそれぞれ接続され、配管86への流通を制御する第2遮断弁96がそれぞれ設けられている。
蒸気処理手段65は、各吸着装置6の下側に接続された第3配管651と、第3配管651内の流通を制御する第3遮断弁652と、第3配管651に接続された図示しない液体処理設備と、を備えている。第3遮断弁652は、開閉制御手段9により制御される。第3配管651から排出された蒸気は冷却により液化されて液体処理設備にて中和処理が行われる。
【0048】
蒸気供給手段64は、各吸着チャンバ61にそれぞれ設けられ、各吸着装置6を通過する高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムの累計通過量を算出し、この累計通過量に基づいて各吸着装置6内に蒸気を供給することで吸着体62を洗浄する。具体的には、濃度推定手段63で推定された高炉ガス中の塩化アンモニウムの濃度と高炉ガス発生量検出手段67で検出された高炉ガス発生量とから算出される高炉ガス中の単位時間当たりの塩化アンモニウムの通過量を2で除することで、各吸着装置6を通過するそれぞれの時間での塩化アンモニウムの通過量を算出し、各吸着装置6の第1遮断弁94,第2遮断弁96が開いている間の時間で積分し、各吸着装置6を通過する塩化アンモニウムの累計通過量を算出する。そして、塩化アンモニウムの通過量が予め設定された許容通過量を超えた場合に、該当する吸着チャンバ61の第4遮断弁642を開ける制御をし、吸着装置6の上方に接続された第4配管641から吸着チャンバ61内に蒸気を供給する。
【0049】
開閉制御手段9は、蒸気供給手段64と連動して各遮断弁の開閉制御を行う。具体的には、蒸気供給手段64において塩化アンモニウムの累計通過量が許容通過量を超えた吸着装置6について、第1遮断弁94,第2遮断弁96を閉めるとともに、第4遮断弁642および第3遮断弁652を開ける制御を行い、吸着装置6内に蒸気を供給し、蒸気が吸着体62に接触することで吸着体62に吸着された塩化アンモニウムの構成成分は除去され、吸着体62は再生される。そして、仕切板611を通過して下側の領域に移動した蒸気は第3配管651から排出され、冷却により液化して図示しない液体処理設備へ排出されて中和処理がなされる。予め設定された時間で吸着体62の洗浄が終了した後、第4遮断弁642および第3遮断弁652を閉め、吸着装置6内への塩化アンモニウムの累計通過量をリセットし、待機状態となる。他の2基の吸着装置6では第4遮断弁642および第3遮断弁652を閉めて、第1遮断弁94,第2遮断弁96を開けた状態で高炉ガスを流通させている。このうちの1基での塩化アンモニウムの累計通過量が許容通過量を超えた時点で、第1遮断弁94、第2遮断弁96を閉じるとともに、第4遮断弁642および第3遮断弁652を開ける制御を行う。同時に、待機している吸着装置6の第1遮断弁94,第2遮断弁96を開ける制御を行い、常に高炉ガスが通過する吸着装置6が2基あるようにする。
【0050】
このような本実施形態においても、前述した第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、3基の吸着装置6のうち1基をオフラインとし、オフラインの状態で吸着体62の洗浄を行い、洗浄後の蒸気は液化して液体処理設備へ排出している。これにより、炉頂圧回収タービン7に塩化アンモニウムの構成成分が流入することを完全に防止することができる。塩化アンモニウムの構成成分である塩化水素やアンモニアを含む蒸気は酸性またはアルカリ性の腐食性を示すため、炉頂圧回収タービン7に悪影響を及ぼす可能性があるが、吸着体62の洗浄に使った蒸気を適切に処理していることで、このような悪影響を確実に防止することができる。
【0051】
〔第3実施形態〕
図9には、本発明の第3実施形態が示されている。
本実施形態は、前述した第2実施形態と基本構成が同じであり、図8に示す構成も本実施形態の一部となる。共通の部分については重複する説明を省略し、以下には異なる部分について説明する。
本実施形態の高炉ガス処理システム12では、第1配管85と第2配管86とを接続する第5配管88が設けられている点で第2実施形態とは異なる。これに伴い、開閉制御手段9の動作も異なる。
【0052】
第5配管88は、第1配管85と配管86(第2配管)とを接続することで、吸着装置6を経由しない経路を形成する。この経路によれば、乾式集塵装置5から排出された高炉ガスは、第1配管85,第5配管88,第2配管86、配管87を通って炉頂圧回収タービン7へ送られる。第5配管88には、流通を制御する第5遮断弁97が設けられている。また、第1配管85および第2配管86には、吸着装置6への流通を制御する流通弁98がそれぞれ設けられているが、本実施形態では常に開いた状態に制御されている。
開閉制御手段9は、濃度推定手段63で推定された濃度が所定値未満と低い場合には、第5遮断弁97を開けるとともに、全ての吸着装置6の第1遮断弁94と第2遮断弁96を閉める制御を行う。一方、推定される濃度が所定値以上である場合には、第5遮断弁97を閉めるとともに3基のうち2基分の吸着装置6の第1遮断弁94と第2遮断弁96を開ける制御を行う。その他の流通弁の制御は第2実施形態と同様である。
【0053】
以上のような構成の高炉ガス処理システム12において、高炉ガスの経路を切り替える方法を具体的に説明する。
開閉制御手段9は、濃度推定手段63で推定された濃度が所定値以上である場合は、第5遮断弁97を閉めるとともに3基のうち2基分の吸着装置6の第1遮断弁94と第2遮断弁96を開ける制御を行い、吸着装置6を経由する経路を選択する。同時に、第2実施形態で説明したように、各吸着装置6における塩化アンモニウムの累計通過量に基づいて、吸着体62の洗浄を行う。
【0054】
このような本実施形態においても、前述した第2実施形態と同様な効果が得られるとともに、高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムの濃度が低い場合は、開閉制御手段9が吸着装置6を経由しない経路を選択する制御を行っている。炉頂圧回収タービン7に導入する高炉ガスは、吸着装置6を経由しないほうが、経由する場合に比べて圧力が高いため、炉頂圧回収タービン7の出力を高くすることができる。このように、高炉ガスに含まれる塩化アンモニウムの濃度に応じて吸着装置6を経由するか否かの制御を行うことで、効率のよい運転を行うことができる。
【0055】
〔変形例〕
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、具体的な各部構成などは実施にあたって適宜変形することができる。
前述した各実施形態では、乾式集塵装置5と湿式集塵装置4とを併用し、状況によって切り替える構成としたが、乾式集塵装置5のみを備えた構成であってもよい。
また、前述した第2実施形態および第3実施形態では、吸着装置6を3基使用したが、吸着装置6の数はこれに限られない。高炉ガスの排出量に応じて適宜調整すればよい。
また、前述した第3実施形態では、吸着装置6を経由する経路と経由しない経路とを切り替える際、第5遮断弁97と全ての吸着装置6の第1遮断弁94および第2遮断弁96との開閉による制御を行ったが、第1配管85および第2配管86に設けられた流通弁98の開閉を制御することで、吸着装置6への高炉ガスの流通を制御してもよい。
また、前述した第3実施形態において、吸着装置6の基数を1基としてもよい。この場合、第5遮断弁97を開いて吸着装置6を経由しないで高炉ガスを通過させているときに一定時間吸着体62の洗浄を行い、高炉ガスが吸着装置6を通過しているときに塩化アンモニウムの累計通過量が許容値を超えたときは、第1実施形態のように吸着体62を洗浄した後の蒸気を炉頂圧回収タービン7に流通させる制御をしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…高炉ガス処理システム、2…高炉、3…除塵器、4…湿式集塵装置、5…乾式集塵装置、6…吸着装置、7…炉頂圧回収タービン、9…開閉制御手段、21…温度検出手段としての炉頂温度計、61…吸着チャンバ、62…吸着体、63…濃度推定手段、64…蒸気供給手段、65…蒸気処理手段、66…記憶手段、67…高炉ガス発生量検出手段、85…第1配管、86…第2配管、87…配管、88…第5配管、94…第1遮断弁、96…第2遮断弁、97…第5遮断弁、641…第4配管、642…第4遮断弁、651…第3配管、652…第3遮断弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉から発生する高炉ガスを処理する高炉ガス処理システムであって、
前記高炉の炉頂温度を検出する温度検出手段と、
前記高炉ガスに含まれる固体粒子を除去する乾式集塵装置と、
高炉ガスにより駆動する炉頂圧回収タービンと、を備え、
前記乾式集塵装置の後段に第1配管を介して接続されるとともに、前記炉頂圧回収タービンの前段に第2配管を介して接続された吸着チャンバと、
この吸着チャンバに収容され、前記塩化アンモニウムの構成成分を吸着する吸着体とからなる吸着装置と、
前記炉頂温度と前記高炉ガスに含まれる前記塩化アンモニウムの濃度との関係を示すデータを記憶する記憶手段と、
前記温度検出手段で検出された炉頂温度と前記記憶手段に記憶されたデータとに基づいて、前記吸着装置を通過する前の高炉ガス中の前記塩化アンモニウム濃度を推定する濃度推定手段と、
前記高炉ガスの発生量を検出する高炉ガス発生量検出手段と、
前記濃度推定手段で推定された濃度と前記高炉ガス発生量検出手段で検出されたガス量とに基づいて算出される、前記吸着体を洗浄する時期に前記ケース内に蒸気を供給して当該吸着体を洗浄する蒸気供給手段と、を有する
ことを特徴とする高炉ガス処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の高炉ガス処理システムにおいて、
前記蒸気供給手段は、前記濃度推定手段で推定された前記塩化アンモニウムの濃度と前記高炉ガス発生量検出手段で検出された前記高炉ガスの発生量とから前記吸着装置を通過する前記塩化アンモニウムのそれぞれの時間での通過量を算出し、この通過量を時間で積分することにより前記塩化アンモニウムの累計通過量を算出し、この算出した累計通過量が予め設定された所定の許容通過量を超えたことを検出すると、前記蒸気を供給することを特徴とする高炉ガス処理システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の高炉ガス処理システムにおいて、
前記吸着装置は、前記吸着チャンバに接続する第3配管を介して蒸気処理手段を備え、
前記蒸気処理手段は、前記吸着体の洗浄により発生する前記塩化アンモニウムの構成成分を含む蒸気を処理する
ことを特徴とする高炉ガス処理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の高炉ガス処理システムにおいて、
複数の吸着装置を備え、
前記第1配管には、高炉ガスの流通を遮断する第1遮断弁が設けられ、
前記第2配管には、高炉ガスの流通を遮断する第2遮断弁が設けられ、
前記第3配管には、液体の流通を遮断する第3遮断弁が設けられ、
前記蒸気供給手段は、前記吸着チャンバに第4配管を介して接続され、
前記第4配管には、蒸気の流通を遮断する第4遮断弁が設けられ、
前記第1遮断弁と、前記第2遮断弁と、前記第3遮断弁と、前記第4遮断弁を、吸着体を洗浄するときは、吸着装置の第1遮断弁と第2遮断弁を閉じるとともに第3遮断弁と第4遮断弁を開き、前記高炉ガスから前記塩化アンモニウムの構成成分を吸着して除去するときは、吸着装置の第1遮断弁と第2遮断弁を開くとともに第3遮断弁と第4遮断弁を閉じる
ことを特徴とする高炉ガス処理システム。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の高炉ガス処理システムにおいて、
前記乾式集塵装置と前記炉頂圧回収タービンとは、前記第1配管と前記第2配管とを連通する第5配管を介して直接的に接続され、
前記第1配管には、高炉ガスの流通を遮断する第1遮断弁が設けられ、
前記第2配管には、高炉ガスの流通を遮断する第2遮断弁が設けられ、
前記第3配管には、液体の流通を遮断する第3遮断弁が設けられ、
前記蒸気供給手段は、前記吸着チャンバに第4配管を介して接続され、
前記第4配管には、蒸気の流通を遮断する第4遮断弁が設けられ、
前記第5配管には、高炉ガスの流通を遮断する第5遮断弁が設けられ、
前記第1遮断弁と、前記第2遮断弁と、前記第3遮断弁と、前記第4遮断弁と、第5遮断弁を、前記濃度推定手段で推定された濃度が予め設定された所定の濃度未満であることを検出した場合、前記第5遮断弁を開くとともに、全ての吸着装置の第1遮断弁と第2遮断弁を閉じ、
前記濃度推定手段で推定された濃度が予め設定された所定の濃度を超えたことを検出した場合、前記第5遮断弁を閉じるとともに、前記高炉ガスから前記塩化アンモニウムの構成成分を吸着して除去するのに必要な数の吸着装置の第1遮断弁と第2遮断弁を開くとともに第3遮断弁と第4遮断弁を閉じる
ことを特徴とする高炉ガス処理システム。
【請求項6】
高炉から発生する高炉ガスを処理する高炉ガス処理方法であって、
前記高炉の炉頂温度を検出する温度検出手段と、
前記高炉ガスに含まれる固体粒子を除去する乾式集塵装置と、
高炉ガスにより駆動する炉頂圧回収タービンと、
前記乾式集塵装置に第1配管を介して接続されるとともに、前記炉頂圧回収タービンに第2配管を介して接続された吸着チャンバとからなる吸着装置と、
この吸着チャンバに収容され、前記塩化アンモニウムの構成成分を吸着する吸着体と、
前記炉頂温度と前記高炉ガスに含まれる前記塩化アンモニウムの濃度との関係を示すデータを記憶する記憶手段と、を有し、
前記温度検出手段で検出された炉頂温度と前記記憶手段に記憶されたデータとに基づいて、前記吸着装置を通過する前の高炉ガス中の前記塩化アンモニウムの濃度を推定する濃度検出工程と、
前記高炉ガスの発生量を検出する高炉ガス発生量検出手段と、
前記濃度推定手段で推定された濃度と前記高炉ガス発生量検出手段で検出されたガス量とに基づいて、前記吸着体を洗浄する時期を算出し、前記吸着チャンバ内に蒸気を供給して当該吸着体を洗浄することを特徴とする高炉ガス処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−219315(P2012−219315A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85242(P2011−85242)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】