説明

高炉用熱風炉の解体および構築工法

【課題】蓄熱室と燃焼室とを同時に解体でき、かつ、蓄熱室と燃焼室を連結する連結管の切断作業を高所で行う必要がない高炉用熱風炉の解体工法を提供する。
【解決手段】(a)蓄熱室2の基部2Aを切断する工程、(b)基部2Aから上の蓄熱室2をジャッキ装置6で吊り上げる工程、(c)蓄熱室用移動台車9を基部2A上に移動させる工程、(d)蓄熱室2を移動台車9上に吊り下ろす工程、(e)蓄熱室2をリング状ブロックに切断する工程、(f)蓄熱室2をジャッキ装置6で吊り上げる工程、(g)リング状ブロックを移動台車9で蓄熱室用仮設架構4外に移動する工程、(h)リング状ブロックを移動台車9から搬出した後、移動台車9を基部2A上に戻す工程、(i)蓄熱室2をジャッキ装置6で移動台車9上に吊り下ろす工程、(j)以上の工程を繰り返し、その後、連結管12を切断し、蓄熱室2および燃焼室3を搬出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高炉用熱風炉の解体および構築工法、特に、蓄熱室と燃焼室とを同時に解体または構築することができるので、解体または構築工期を大幅に短縮することができ、しかも、熱風炉を構成する蓄熱室と燃焼室とを連結する連結管の切断または接続作業を高所で行う必要がない高炉用熱風炉の解体および構築工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蓄熱室と燃焼室とを備えた熱風炉は、高炉の羽口から炉内に送り込む熱風をつくる炉であり、一基の高炉に対して複数基設けられていて、各熱風炉は、燃焼(蓄熱)と送風(通風)の状態を繰り返し行う。
【0003】
従来、高さ数十メートルもある熱風炉の解体は、大型クレーンを使用して行われていたが、熱風炉の周囲に大型クレーンの設置スペースがない場合には、他の解体工法により解体せざるを得なかった。
【0004】
従って、大型クレーンを使用せず、しかも、安全かつ短い工期で解体することができる高炉用熱風炉の解体工法の開発が強く望まれていた。
【0005】
また、熱風炉を構築する場合も解体の場合と同様に大型クレーンを使用せず、しかも、安全かつ短い工期で構築することができる高炉用熱風炉の構築工法の開発が強く望まれていた。
【0006】
特許文献1(特開2000−319709号公報)には、大型クレーンを使用しない高炉の改修・構築工法が開示されている。
【0007】
この従来工法は、以下の工程からなる。
【0008】
先ず、図12に示すように、高炉の炉体31の支持柱32の下部に架台33を構築し、炉体31を複数個のリング状ブロック(A)から(F)に切断する。最下段のリング状ブロック(F)の高さと架台33の高さは等しい。次いで、図13に示すように、支持柱32に設置したジャッキ34によって、リング状ブロック(F)より上の炉体31を吊り上げた後、架台33とリング状ブロック(E)の下部に亘ってレール35を敷設する。次いで、レール35を走行する台車36をリング状ブロック(E)の下に移動させた後、炉体31を吊り下げて台車36上に乗せる。次いで、図14に示すように、リング状ブロック(E)から上の炉体31をジャッキ34により吊り上げる。次いで、台車36によりリング状ブロック(E)を架台33上に移動し、複数ブロックに切断するなどして搬出する。
【0009】
以上の工程をリング状ブロック(D)から(A)につき繰り返し行って、炉体31を解体する。なお、最下段のリング状ブロック(F)は、台車36により移動させることなく複数ブロックに分解して搬送する。
【0010】
以上は、高炉を解体する場合であるが、高炉を構築する場合は、上記手順と逆の手順に従って行う。
【0011】
【特許文献1】特開2000−319709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記従来工法を熱風炉の解体に適用すれば、大型クレーンを使用することなく熱風炉を解体することができるが、熱風炉は、蓄熱室と燃焼室とを備えているので、2基の炉体を解体することと同じになり、基本的に解体工期が2倍かかることになる。熱風炉を構築する場合においても同様に基本的に構築工期が2倍かかることになる。
【0013】
しかも、蓄熱室と燃焼室の頂部間は、連結管により連結され、熱風炉を解体する場合の連結管の切断作業または熱風炉を構築する場合の連結管の接続作業は、高所作業となるので、何れの場合も大掛かりな足場を組む必要があるばかりか危険を伴う。
【0014】
従って、この発明の目的は、蓄熱室と燃焼室とを同時に解体または構築することができるので、熱風炉の解体または構築工期を大幅に短縮することができ、しかも、熱風炉を構成する蓄熱室と燃焼室とを連結する連結管の切断または接続作業を高所で行う必要がない高炉用熱風炉の解体および構築工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで、本願発明者等は、熱風炉を安全にかつ短期間に解体または構築することができる熱風炉の解体および構築工法を得べく、鋭意検討を重ねた。この結果、超重物の熱風炉の蓄熱室と燃焼室とを正確に同調して吊り上げ・吊り下ろすことができるジャッキを使用すれば、蓄熱室と燃焼室とを同時に解体または構築することができるので、熱風炉の解体または構築工期を大幅に短縮することができる。しかも、蓄熱室と燃焼室とを同時に吊り上げまたは吊り下ろすことができるので、蓄熱室と燃焼室との連結管の切断または接続作業を高所で行う必要がなくなるといった知見を得た。
【0016】
この発明は、上記知見に基づきなされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0017】
請求項1記載の発明は、蓄熱室と燃焼室とを備え、前記蓄熱室の頂部と前記燃焼室の頂部とは、連結管により連結されている高炉用熱風炉の解体工法において、前記蓄熱室および前記燃焼室の周囲の蓄熱室用および燃焼室用架構に昇降装置を設置し、そして、前記蓄熱室用および燃焼室用架構の下部に蓄熱室用および燃焼室用移動台車を設置し、下記(a)から(k)の工程、
(a)前記蓄熱室の基部を切断する工程、
(b)前記基部から上の前記蓄熱室を前記昇降装置により前記燃焼室と共に吊り上げる工程、
(c)前記蓄熱室用移動台車を前記基部上に移動させる工程、
(d)吊り上げられた前記蓄熱室を前記昇降装置により前記蓄熱室用移動台車上に前記燃焼室と共に吊り下ろす工程、
(e)前記蓄熱室用移動台車上の前記蓄熱室をリング状ブロックに切断する工程、
(f)前記リング状ブロック上の前記蓄熱室を前記昇降装置により前記燃焼室と共に吊り上げる工程、
(g)前記リング状ブロックを前記蓄熱室用移動台車により前記蓄熱室用架構外に移動する工程、
(h)前記リング状ブロックを前記蓄熱室用移動台車から搬出した後、前記蓄熱室用移動台車を前記基部上に戻す工程、
(i)前記蓄熱室を前記昇降装置により前記蓄熱室用移動台車上に前記燃焼室と共に吊り下ろす工程、
(j)以上の工程を、前記蓄熱室および前記燃焼室の頂部が前記蓄熱室用および燃焼室用架構上に来るまで繰り返し行い、この後、前記連結管を切断する工程、
(k)前記蓄熱室と前記燃焼室とを、それぞれ独立して上記工程に従い前記蓄熱室および前記燃焼室の切断、移動を行なって、前記燃焼室および前記基部以外の前記蓄熱室を、前記蓄熱室用および燃焼室用架構外に搬出する工程、
にしたがって解体することに特徴を有するものである。
【0018】
請求項2記載の発明は、前記請求項1記載の高炉用熱風炉の解体工法において、上記(k)工程の代わりに、下記(l)工程、
(l)前記燃焼室の頂部を切断し、前記基部以外の前記蓄熱室の搬出が終了後、前記燃焼室の頂部を前記蓄熱室用架構側に移動し、前記蓄熱室用移動台車上に吊り下ろした後、前記蓄熱室用移動台車によって、前記燃焼室の頂部を前記蓄熱室用架構外に搬出する工程、
にしたがって解体することに特徴を有するものである。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記昇降装置は、前記蓄熱室または前記燃焼室を吊り上げ・吊り下げるストランドを垂直に貫通させる複数の貫通孔をもつプレッシャープレート、アンカーブロック、リリースプレート、アンカーベースプレートと、アンカーブロックにシリンダ側を固定し、リリースプレートにピストン側を固定した複数のクランピングシリンダと、アンカーブロックの貫通孔にスライド可能に嵌挿し、プレッシャープレートの貫通孔下端部にスプリングを介して接触させるグリップと、プレッシャープレートの下面に上端部を固定し、アンカーブロックを貫通し、リリースプレートの上面に下端部を固定した複数の連結棒と、アンカーブロックに上端部を固定し、リリースプレートを貫通し、アンカーベースプレートに下端部を固定したスペーサブロックとを設けたものからなるグリッピング装置を、前記ストランドの垂直方向の2箇所に設け、下側グリッピング装置のアンカーベースプレートを固定ベースプレートとし、上側グリッピング装置のアンカーベースプレートを可動ベースプレートとして、前記固定ベースプレートに対してシリンダ側を固定し、前記可動ベースプレートに対してピストン側を固定した油圧ジャッキを設けたジャッキ装置からなることに特徴を有するものである。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の高炉用熱風炉の解体工法の逆の手順に従って高炉用熱風炉を構築することに特徴を有するものである。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の高炉用熱風炉の構築工法において、前記(k)工程の代わりに前記(l)工程の逆の手順に従って高炉用熱風炉を構築することに特徴を有するものである。
【0022】
請求項6記載の発明は、請求項4または5記載の発明において、前記昇降装置は、前記蓄熱室または前記燃焼室を吊り上げ・吊り下げるストランドを垂直に貫通させる複数の貫通孔をもつプレッシャープレート、アンカーブロック、リリースプレート、アンカーベースプレートと、アンカーブロックにシリンダ側を固定し、リリースプレートにピストン側を固定した複数のクランピングシリンダと、アンカーブロックの貫通孔にスライド可能に嵌挿し、プレッシャープレートの貫通孔下端部にスプリングを介して接触させるグリップと、プレッシャープレートの下面に上端部を固定し、アンカーブロックを貫通し、リリースプレートの上面に下端部を固定した複数の連結棒と、アンカーブロックに上端部を固定し、リリースプレートを貫通し、アンカーベースプレートに下端部を固定したスペーサブロックとを設けたものからなるグリッピング装置を、前記ストランドの垂直方向の2箇所に設け、下側グリッピング装置のアンカーベースプレートを固定ベースプレートとし、上側グリッピング装置のアンカーベースプレートを可動ベースプレートとして、前記固定ベースプレートに対してシリンダ側を固定し、前記可動ベースプレートに対してピストン側を固定した油圧ジャッキを設けたジャッキ装置からなることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、蓄熱室と燃焼室とを同時に解体または構築することができるので、解体または構築工期を大幅に短縮することができ、しかも、熱風炉を構成する蓄熱室と燃焼室とを連結する連結管の切断または接続作業を高所で行う必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
この発明の高炉用熱風炉の解体工法の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、蓄熱室および燃焼室に仮設架構を構築した状態を示す正面図、図2は、図1のX矢視図、図3は、蓄熱室および燃焼室を同時に吊り上げた状態を示す正面図、図4は、蓄熱室および燃焼室を同時に吊り下ろして台車上に乗せた状態を示す正面図、図5は、切断した燃焼室の頂部を頂部用移動台車に乗せた状態を示す正面図、図6は、燃焼室の頂部を蓄熱室用移動台車に乗せて蓄熱室用仮設架構内に移動させた状態を示す正面図、図7は、高炉用熱風炉を示す平面図である。
【0026】
この発明の高炉用熱風炉の解体工法は、先ず、図1に示すように、熱風炉1の蓄熱室2および燃焼室3の周囲に、蓄熱室用および燃焼室用仮設架構4、5を構築する。なお、既設の架構を使用できるのであれば、蓄熱室用および燃焼室用仮設架構4、5を構築する必要はない。燃焼室3の下部は、地上から所定高さ持ち上がっていて、既存の骨組5Aに支持されている。この骨組5Aの幅は、燃焼室3の頂部3Aの外径より狭く、従って、燃焼室用仮設架構5の幅も燃焼室3の頂部3Aの外径より狭く、燃焼室用仮設架構5内を吊り下ろすことができない。
【0027】
蓄熱室用および燃焼室用仮設架構4、5には、後述する昇降装置としてのジャッキ装置6を複数台、設置する。また、蓄熱室用仮設架構4の下部に架台7を構築し、架台7と蓄熱室用仮設架構4との間にレール8を敷設し、レール8に沿って移動する蓄熱室用移動台車9を設置する。燃焼室用仮設架構5の下部(既存の骨組)にも、レール10に沿って燃焼室用仮設架構5外に移動する燃焼室用移動台車11を設置する。
【0028】
なお、図1において、架台7は、紙面の手前に構築されているので、蓄熱室用移動台車9は、紙面と直交する方向に移動し(図2参照)、燃焼室用移動台車11は、紙面の左右方向に移動するが、これらの移動方向は、付帯設備との干渉がなければ、これらの方向に制限されない。
【0029】
このようにして、熱風炉の解体の準備が完了したら、図1に示す切断線(C1)に沿って蓄熱室2の基部2Aを切断する。次に、図3に示すように、ジャッキ装置6によって、基部2Aより上の蓄熱室2を吊り上げる。ジャッキ装置6の後述するストランド16の固定部分は、この例ではリング状ブロック2Dである。このとき、燃焼室3もジャッキ装置6により蓄熱室2と同時に吊り上げる。なお、蓄熱室および燃焼室の頂部の天井(図1中、点線で示す)は、予め撤去しておく。
【0030】
次に、蓄熱室用移動台車9を基部2A上に移動させ、この後、吊り上げられた蓄熱室2をジャッキ装置6により蓄熱室用移動台車9上に燃焼室3と共に吊り下ろす。次に、切断線(C2)に沿って蓄熱室2をリング状ブロック2Bに切断し、この後、このリング状ブロック2Bより上の蓄熱室2をジャッキ装置6により燃焼室3と共に吊り上げる。次に、リング状ブロック2Bを蓄熱室用移動台車9により架台7に移動する。架台7上のリング状ブロック2Bは、さらに複数個のブロックに切断して、処理場等に搬出する。
【0031】
次に、図4に示すように、蓄熱室用移動台車9を再度、基部2A上に移動させ、この後、吊り上げられた蓄熱室2をジャッキ装置6により蓄熱室用移動台車9上に燃焼室3と共に吊り下ろす。これによって、蓄熱室2の高さは、リング状ブロック2Bの高さ分だけ低くなるので、蓄熱室2および燃焼室3の頂部2F、3Aは、蓄熱室用および燃焼室用仮設架構4、5の直上に来る。この後、連結管12を切断する。この連結管12の切断作業は、高所作業ではないので大掛かりな足場を組むことなく安全に行える。このとき、燃焼室3の下部は、燃焼室用移動台車11の直上に来る。
【0032】
このようにして、連結管12が切断された後は、蓄熱室2を切断線(C3)、(C4)、(C5)の順に切断し、リング状ブロック2C、2D、2Eおよび頂部2Fを上記と同様にして搬出する。燃焼室3においても蓄熱室2におけると同様に、複数個のリング状ブロックに切断して、燃焼室用移動台車11によって順次、搬送する。このように、蓄熱室と燃焼室とを同時に解体することができるので、蓄熱室2と燃焼室3とを別々に解体する場合に比べて解体工期を大幅に短縮することができる。
【0033】
このようにして、蓄熱室2および頂部3A以外の燃焼室3の搬送が終了したら、図5に示すように、蓄熱室用および燃焼室用仮設架構4、5の上部にレール13を敷設し、頂部移動用台車14を設置する。そして、別のジャッキ装置6により頂部移動用台車14に燃焼室3の頂部3Aを乗せた後、図6に示すように、蓄熱室用仮設架構4側に移動し、蓄熱室用移動台車9上に吊り下ろした後、架台7まで移動し、搬出する。
【0034】
このようにして、蓄熱室2の基部2A以外の熱風炉1の解体が全て完了する。
【0035】
なお、燃焼室3の頂部3Aが燃焼室用仮設架構4内を吊り下ろせない場合には、上述のように、燃焼室3の頂部3Aのみを蓄熱室用移動台車9に乗せて移動するが、吊り下ろせる場合には、蓄熱室2におけると同様に、燃焼室3の頂部3Aも燃焼室用移動台車11によって移動し、搬出する。
【0036】
図7に、実際の熱風炉に、この発明を適用した場合を平面図で示す。
【0037】
図示されるように、この例では、4基の熱風炉1が構築されている。熱風炉1の周囲には、既存設備や空気予熱機が設置されていて狭隘であるために、大型クレーン等の重機を搬入することができない。なお、搬入路があるがここは資機材搬入路であるので、重機の搬入は行えない。
【0038】
そこで、熱風炉1に沿って架台7を構築し、各蓄熱室2および燃焼室3の周囲には、蓄熱室用および燃焼室用仮設架構4、5を構築する。この場合も既設の架構を利用することができる場合は、構築する必要はない。
【0039】
解体は、上述した工程に従って行われ、切断した各蓄熱室2のリング状ブロックは、蓄熱室用移動台車9によって、図中矢印方向に、架台7の端部(図中右端)まで搬送された後、複数個のブロックに切断され、処理場等に搬出される。切断した各燃焼室3のリング状ブロックは、燃焼室用移動台車11によって搬出される。
【0040】
熱風炉の解体は、解体が必要な熱風炉に限って一基毎に行っても、あるいは、リング状ブロックの搬送のタイミングをずらして複数基、同時に行っても良い。
【0041】
以上は、この発明に従って高炉用熱風炉を解体する場合であるが、熱風炉を構築する場合は、解体の手順と逆の手順に従って構築する。
【0042】
すなわち、蓄熱室2および燃焼室3を複数個のリング状ブロックに分割して予め構築しておく。先ず、連結管12により連結された蓄熱室2および燃焼室3の頂部2F、3Aをジャッキ装置6により同時に吊り上げ、これらの下部に蓄熱室2および燃焼室3の上段ブロックを搬入する。次いで、頂部2F、3Aを同時に吊り下げて、各上段ブロック上に載置し、連結する。この後、頂部2F、3Aと各上段ブロックとを同時に吊り上げ、各上段ブロックの下部に蓄熱室2および燃焼室3の次段ブロックを搬入する。次いで、頂部2F、3Aと各上段ブロックとを吊り下げて、各次段ブロック上に載置し、連結する。この操作を繰り返し行うことによって、熱風炉が構築される。
【0043】
高炉用熱風炉を構築する場合にも、大型クレーンを使用することなく、蓄熱室および燃焼室を同時に構築することができるので、構築工期を大幅に短縮することができ、しかも、熱風炉を構成する蓄熱室と燃焼室とを連結する連結管の接続作業を高所で行う必要がなくなる。
【0044】
次に、上記ジャッキ装置6について、図面を参照しながら説明する。
【0045】
図8は、ジャッキ装置を示す断面図、図9は、ジャッキ装置を構成するグリッピング装置を示す断面図、図10は、プレッシャープレートを示す平面図、図11は、グリップを示す斜視図である。
【0046】
このジャッキ装置6は、特開平10−59691号公報に開示されるものであり、超重物を吊り上げるストランドにかかる荷重負荷を均一に維持することができる結果、特定のストランドに荷重が集中することによるストランドの切断や伸びがなくなり、確実に超重物の吊り上げ・吊り下ろしが行え、しかも、インバーター制御により正確に同調できる。従って、この発明によって熱風炉を解体または構築する場合に、連結管により連結された蓄熱室と燃焼室とを正確に同期させて吊り上げ・吊り下ろすことが容易に行える。
【0047】
図8に示すように、ジャッキ装置6は、図9に示すグリッピング装置15をストランド16の垂直方向の2箇所に設けたものである。
【0048】
グリッピング装置15は、垂直に複数本(この例では7本)のストランド16を貫通させる複数(7個)の貫通孔17aをもつプレッシャープレート17、アンカーブロック18、リリースプレート19、アンカーベースプレート20と、アンカーブロック19にシリンダ側を固定し、リリースプレート19にピストン側を固定した複数のクランピングシリンダ21と、アンカーブロック18の貫通孔18aにスライド可能に嵌挿され、プレッシャープレート17の貫通孔17aの下端部にスプリング22を介して接触させるグリップ23と、プレッシャープレート17の下面に上端部が固定され、アンカーブロック18を貫通し、リリースプレート19の上面に下端部が固定された複数の連結棒24と、アンカーブロック18に上端部が固定され、リリースプレート19を貫通し、アンカーベースプレート20に下端部が固定されたスペーサブロック25とからなっている。
【0049】
ジャッキ装置6は、下側グリッピング装置15Bのアンカーベースプレート20を固定ベースプレートとし、上側グリッピング装置15Aのアンカーベースプレート20を可動ベースプレートとして、前記固定ベースプレートに対してシリンダ側を固定し、前記可動ベースプレートに対してピストン側を固定した油圧ジャッキ26を設けたものからなっている。
【0050】
このジャッキ装置6により超重物28(蓄熱室あるいは燃焼室)の吊り上げ・吊り下ろしを行うには、ストランド16をブラケット27を介して超重物28に固定する。吊り上げる場合には、下側グリッピング装置15Bのクランピングシリンダ21を縮めてグリップ23を、アンカーブロック18の貫通孔18aからスプリング22の弾性力に抗して抜き出して緩める。このとき、上側グリッピング装置15Aのクランピングシリンダ21は伸びていて、グリップ23は、アンカーブロック18の貫通孔18a内にスプリング22の弾性力により嵌挿されてストランド16を把持している。次いで、油圧ジャッキ26を伸ばすと、ストローク分だけ超重物28が吊り上げられる。次いで、上側グリッピング装置15Aのグリップ23を緩め、下側グリッピング装置15Bのグリップ23によりストランド16を把持し、油圧ジャッキ26を縮める。そして、下側グリッピング装置15Bのグリップ23を緩め、上側グリッピング装置15Aのグリップ23によりストランド16を把持し、油圧ジャッキ26を伸ばすことを繰り返し行うことによって、超重物28を間歇的に吊り上げることができる。吊り下ろす場合には、吊り上げの場合と逆の操作をすれば、超重物28を間歇的に吊り下ろすことができる。
【0051】
上記ジャッキ装置6によれば、プレッシャープレート17とリリースプレート19とがアンカーブロック18を貫通させた複数の連結棒24により一体的に上下動する機能を有するようにしたので、クランピングシリンダ21の伸縮によって、プレッシャープレート17とリリースプレート19とを同時に上下動させて、複数のグリップ23を強制的にアンカーブロック18の貫通孔18aに嵌挿させて、均一に各ストランド16を把持させ、または、緩めることによって、超重物28の吊り上げ・吊り下ろしが確実に行える。
【0052】
なお、上記ジャッキ装置6以外に、超重物28の吊り上げ・吊り下ろしが同調して正確に行えるものであれば、他のジャッキでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】蓄熱室および燃焼室に仮設架構を構築した状態を示す正面図である。
【図2】図1のX矢視図である。
【図3】蓄熱室および燃焼室を同時に吊り上げた状態を示す正面図である。
【図4】蓄熱室および燃焼室を同時に吊り下ろして台車上に乗せた状態を示す正面図である。
【図5】切断した燃焼室の頂部を頂部用移動台車に乗せた状態を示す正面図である。
【図6】燃焼室の頂部を蓄熱室用移動台車に乗せて蓄熱室用仮設架構内に移動させた状態を示す正面図である。
【図7】高炉用熱風炉を示す平面図である。
【図8】ジャッキ装置を示す断面図である。
【図9】ジャッキ装置を構成するグリッピング装置を示す断面図である。
【図10】プレッシャープレートを示す平面図である。
【図11】グリップを示す斜視図である。
【図12】従来解体工法により炉体を複数個のリング状ブロックに切断した状態を示す概略正面図である。
【図13】最下段のリング状ブロック(F)より上の炉体を吊り上げた状態を示す概略正面図である。
【図14】リング状ブロック(E)を架台上に移動する状態を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0054】
1:熱風炉
2:蓄熱室
2B〜2E:リング状ブロック
2F:蓄熱室の頂部
3:燃焼室
3A:燃焼室の頂部
4:蓄熱室用仮設架構
5:燃焼室用仮設架構
5A:既存の骨組
6:ジャッキ装置
7:架台
8:レール
9:蓄熱室用移動台車
10:レール
11:燃焼室用移動台車
12:連結管
13:レール
14:頂部移動用台車
15:グリッピング装置
15A:下側グリッピング装置
15B:上側グリッピング装置
16:ストランド
17:プレッシャープレート
17a:貫通孔
18:アンカーブロック
18a:貫通孔
19:リリースプレート
20:アンカーベースプレート
21:クラッピングシリンダ
22:スプリング
23:グリップ
24:連結棒
25:スペーサブロック
26:油圧ジャッキ
27:ブラケット
28:超重物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱室と燃焼室とを備え、前記蓄熱室の頂部と前記燃焼室の頂部とが連結管により連結されている高炉用熱風炉の解体工法において、
前記蓄熱室および前記燃焼室の周囲の蓄熱室用および燃焼室用架構に昇降装置を設置し、そして、前記蓄熱室用および燃焼室用架構の下部に蓄熱室用および燃焼室用移動台車を設置し、下記(a)から(k)の工程、
(a)前記蓄熱室の基部を切断する工程、
(b)前記基部から上の前記蓄熱室を前記昇降装置により前記燃焼室と共に吊り上げる工程、
(c)前記蓄熱室用移動台車を前記基部上に移動させる工程、
(d)吊り上げられた前記蓄熱室を前記昇降装置により前記蓄熱室用移動台車上に前記燃焼室と共に吊り下ろす工程、
(e)前記蓄熱室用移動台車上の前記蓄熱室をリング状ブロックに切断する工程、
(f)前記リング状ブロック上の前記蓄熱室を前記昇降装置により前記燃焼室と共に吊り上げる工程、
(g)前記リング状ブロックを前記蓄熱室用移動台車により前記蓄熱室用架構外に移動する工程、
(h)前記リング状ブロックを前記蓄熱室用移動台車から搬出した後、前記蓄熱室用移動台車を前記基部上に戻す工程、
(i)前記蓄熱室を前記昇降装置により前記蓄熱室用移動台車上に前記燃焼室と共に吊り下ろす工程、
(j)以上の工程を、前記蓄熱室および前記燃焼室の頂部が前記蓄熱室用および燃焼室用架構の直上に来るまで繰り返し行い、この後、前記連結管を切断する工程、
(k)前記蓄熱室と前記燃焼室とを、それぞれ独立して上記工程に従い前記蓄熱室および前記燃焼室の切断、移動を行なって、前記燃焼室および前記基部以外の前記蓄熱室を、前記蓄熱室用および燃焼室用架構外に搬出する工程、
にしたがって解体することを特徴とする高炉用熱風炉の解体工法。
【請求項2】
前記請求項1記載の高炉用熱風炉の解体工法において、上記(k)工程の代わりに、下記(l)工程、
(l)前記燃焼室の頂部を切断し、前記基部以外の前記蓄熱室の搬出が終了後、前記燃焼室の頂部を前記蓄熱室用架構側に移動し、前記蓄熱室用移動台車上に吊り下ろした後、前記蓄熱室用移動台車によって、前記燃焼室の頂部を前記蓄熱室用架構外に搬出する工程、
にしたがって解体することを特徴とする高炉用熱風炉の解体工法。
【請求項3】
前記昇降装置は、前記蓄熱室または前記燃焼室を吊り上げ・吊り下げるストランドを垂直に貫通させる複数の貫通孔をもつプレッシャープレート、アンカーブロック、リリースプレート、アンカーベースプレートと、アンカーブロックにシリンダ側を固定し、リリースプレートにピストン側を固定した複数のクランピングシリンダと、アンカーブロックの貫通孔にスライド可能に嵌挿し、プレッシャープレートの貫通孔下端部にスプリングを介して接触させるグリップと、プレッシャープレートの下面に上端部を固定し、アンカーブロックを貫通し、リリースプレートの上面に下端部を固定した複数の連結棒と、アンカーブロックに上端部を固定し、リリースプレートを貫通し、アンカーベースプレートに下端部を固定したスペーサブロックとを設けたものからなるグリッピング装置を、前記ストランドの垂直方向の2箇所に設け、下側グリッピング装置のアンカーベースプレートを固定ベースプレートとし、上側グリッピング装置のアンカーベースプレートを可動ベースプレートとして、前記固定ベースプレートに対してシリンダ側を固定し、前記可動ベースプレートに対してピストン側を固定した油圧ジャッキを設けたジャッキ装置からなることを特徴とする、請求項1または2記載の高炉用熱風炉の解体工法。
【請求項4】
請求項1記載の高炉用熱風炉の解体工法の逆の手順に従って高炉用熱風炉を構築することを特徴とする、高炉用熱風炉の構築工法。
【請求項5】
請求項4記載の高炉用熱風炉の構築工法において、前記(k)工程の代わりに前記(l)工程の逆の手順に従って高炉用熱風炉を構築することを特徴とする、高炉用熱風炉の構築工法。
【請求項6】
前記昇降装置は、前記蓄熱室または前記燃焼室を吊り上げ・吊り下げるストランドを垂直に貫通させる複数の貫通孔をもつプレッシャープレート、アンカーブロック、リリースプレート、アンカーベースプレートと、アンカーブロックにシリンダ側を固定し、リリースプレートにピストン側を固定した複数のクランピングシリンダと、アンカーブロックの貫通孔にスライド可能に嵌挿し、プレッシャープレートの貫通孔下端部にスプリングを介して接触させるグリップと、プレッシャープレートの下面に上端部を固定し、アンカーブロックを貫通し、リリースプレートの上面に下端部を固定した複数の連結棒と、アンカーブロックに上端部を固定し、リリースプレートを貫通し、アンカーベースプレートに下端部を固定したスペーサブロックとを設けたものからなるグリッピング装置を、前記ストランドの垂直方向の2箇所に設け、下側グリッピング装置のアンカーベースプレートを固定ベースプレートとし、上側グリッピング装置のアンカーベースプレートを可動ベースプレートとして、前記固定ベースプレートに対してシリンダ側を固定し、前記可動ベースプレートに対してピストン側を固定した油圧ジャッキを設けたジャッキ装置からなることを特徴とする、請求項4または5記載の高炉用熱風炉の構築工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−41062(P2009−41062A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206376(P2007−206376)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000204000)太平電業株式会社 (30)
【出願人】(000200334)JFEメカニカル株式会社 (48)