説明

高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収システム及び高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収方法

【課題】狭い範囲に集中するビームやプラズマ流の高熱流束を、液体金属を介在することで、受熱するだけでなく、高効率のエネルギー回収を行うことができ、金属蒸気が発生した室内の金属蒸気による真空劣化を防止する高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収システムを提供する。
【解決手段】
高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収システムは真空雰囲気に管理された差動排気室20と蒸発室10を備える。蒸発室10には高熱流束の熱を受熱して蒸発する液体金属と、蒸発した金属を凝縮させる冷却部50が設けられ、冷却部50には冷却媒体が循環して熱エネルギーを回収する冷却媒体循環システム60を備える。液体金属は高熱流束が当たると蒸発し大きな潜熱を奪い、金属蒸気は冷却部50にて凝縮して蒸発室10の蒸気圧を下げる。蒸発室10から漏れた金属蒸気は差動排気室20において除去し、ビーム発生室30の真空度上昇を妨げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収システムに係り、特に、真空中でのプラズマ、粒子ビーム、電子ビーム、レーザ等の高熱流束を遮断し、受熱してエネルギーを回収することができる高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収システム及び高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図3に示すように核融合装置にはダイバータ200が設置されており、プラズマから多数の中性粒子が、ダイバータ磁力線に沿ってダイバータ室210内の固体耐熱材料220(対抗材ともいう)に流れ込む。このとき、固体耐熱材料220から不純物がたたき出されるが、不純物が中性ガスであれば、ダイバータ室210の狭いスリット230から殆ど出られず、ダイバータ室210から真空排気ポンプで排気される。又、不純物がイオンであれば、同イオンは、ダイバータ磁力線に沿って固体耐熱材料220に戻り、中性化される。その結果、不純物がプラズマ内に入ることが妨げられる。
【0003】
前記固体耐熱材料220はモリブデン、タングステン、カーボン材などから構成され、冷却水で冷却されることが多い。ダイバータ磁力線は細い束となりダイバータレグとよばれる。ダイバータレグは大変薄いので対抗材には大変大きな熱流束が流入する。 一般に、パルス的に、すなわち、断続的に高熱流束を受け入れる場合、受け入れる固体耐熱材料の熱容量で対応できれば、冷却する必要はない。しかし、高熱流束の発生が連続的に行われる連続運転の場合、受け入れる固体耐熱材料の熱容量では対応できなくなり、高効率の熱交換が可能な冷却手段を設けるか、或いは、受熱できる粒子(ビーム)の熱流束を小さくする必要がある。
【0004】
また、前記冷却水により冷却を行う場合、冷却温度を低くしなければ高熱流束を冷却できないため、熱エネルギーの回収が困難になる。
一例として、DT核融合では、中性子出力の約1/4がα加熱となる。例えば、電気出力百万kW発電炉では、中性子出力が約3GWとなり、α加熱は750MWとなる。定常状態ではこのプラズマ加熱入力はプラズマの損失と等しい。プラズマの損失は放射損失か粒子による損失であり、粒子による損失のほとんどはダイバータレグに流れる。仮に1つのダイバータレグにα加熱の1/4が来るとすると、その主半径が6mであれば、周長は38mであるので、1m当たり5MWがダイバータレグの対抗材表面に入力する。ダイバータレグの厚さは1〜5cmである。
【0005】
したがって、ダイバータレグの対抗材表面に入力する熱流束は、100〜500MW/m2となり、固体の対抗材では対応できないものとなる。
そこで、固体の対抗材では受熱できない高熱流束であって、連続運転する場合、液体金属で受熱することが考えられている(非特許文献1)。しかし、磁場中で、液体金属の高速流をつくるには、電磁流体力学的な強い力に対抗するという新たな問題がある。この場合の高速流は、例えば、10〜20m/sの範囲で制御して、平均15m/s程度としている。このように高速流で行うのは、液体金属を蒸発させないようにするために高速としているのである。
【0006】
ここで、液体金属を高速流とする場合、電磁流体力学的な強い力に対抗するような強力なポンプが必要となる理由を述べる。
非特許文献5によると、一般に磁場B中での速度Vの液体金属が受ける電磁力による圧力損失は概略式(1)で与えられる。
【0007】
【数1】

ここで、Cは壁コンダクタンス比
【0008】
【数2】

ただし、σwは壁の電気伝導度、σは流体の電気伝導度、tは磁場方向の壁厚、aは管の半径である。Hはハルトマン数
【0009】
【数3】

である。ただし、μは流体の粘性係数である。kとkは管の形状の関数であり、1程度の大きさを持つ。計算例として、B=10Tでの液体金属流としてリチウム流を考えると、概ねσ=3×10S/m、Ha=10、C=0.01であるから、流速V=1m/sでも、圧力損失は3MPaという大きな電磁力による圧力損失となる。従って、この圧力損失分を上回る圧力を発生可能な強力なポンプが必要となる。
【0010】
非特許文献2〜4では、高熱流束下では、液体金属はむしろ蒸発すると考えるのが自然であり、液体が蒸発する場合は、大きな潜熱を奪うため、冷却効果が期待できるとしている。
【非特許文献1】エイ・ワイ・イング(A. Y. Ying)、エム・エイ・アブドゥ(M. A. Abdou)、エヌ・モーリ(N. Morley)、ティ・スケッチリイ(T. Skechley)、アル・ウーリィ(R. Woolley)、ジェイ・バリス(J. Burris)、アル・カイタ(R. Kaita)、ピー・、フォガルティ(P. Forgarty)、エッチ・ヒュアン(H. Huang)、エックス・ラオ(X. Lao)、エム・ナルラ(M. Narula)、エス・スモレンチェフ(S. Smolentsev)、エム・ユーリックソン(M. Ulrickson)、「エクスプロラトリイ スタディズ オブ フローイング リキッド メタル ダイベータ オプションズ フォー フュージョン−リリーヴァント マグネティック フィールズ イン ザ エム・ティ・オー・アル ファシィリティ(Exploratory studies of flowing liquid metal divertor options for fusion-relevant magnetic fields in the MTOR facility)」、Fusion Engineering and Design、Vol.72, pp.35-62 (2004)
【非特許文献2】アル・カイタ(R. Kaita)、アル・マジェスキイ(R. Majeski)、エム・ホーズ(M. Boaz)、ピー・エフシミィオン(P. Efthimion)他(et al.)、「スフェリカル トーラス プラズマ インターアクションズ ウイズ ラージ−エリア リキッド リチウム サーフェスズ イン シディエックス−ユアル(Spherical torus plasma interactions with large-area liquid lithium surfaces in CDX-U)」、Fusion Engineering and Design、Vol.61-62, pp.217-222 (2002)
【非特許文献3】アル・マジェスキイ(R. Majeski)、エス・ジャーディン(S. Jardin)、アル・カイタ(R. Kaita)、ティ・グレイ(T. Gray)、ピー・マルフタ(P. Marfuta)他(et al.)、「リーセント リキッド リチウム リミッタ エクスペリメンツ イン シディエックス−ユアル(Recent liquid lithium limiter experiments in CDX-U)」、Nuclear Fusion、Vol.45, pp.519-523 (2005)
【非特許文献4】ヴイ・エイ・エヴィテイキン(V. A. Evtikhin)、アイ・イー・リュビリンスキ(I. E. Lyublinsky)、エー・ヴィ・ヴェルトコフ(A. V. Vertkov )、エス・ヴイ・ミルノフ(S. V. Mirnov)、ヴィ・ビー・ラザレフ(V. B. Lazarev )他(et al.)、「リチウム ダイベータ コンセプト アンド リザルト オブ サポーティング エクスプリメンツ(Lithium divertor concept and results of supporting experiments)」、Plasma Physics and Controlled Fusion,Vol.44, pp955-977 (2002)
【非特許文献5】井上晃、「4.核融合炉の冷却方式とその諸問題 4.2 液体金属冷却」、プラズマ・核融合学会誌、Vol.69、pp.1469 (1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、液体金属を使用して、高熱流束を蒸発冷却で受け止める場合、問題があるのは、蒸発した大量の金属が、ビームの発生源側に逆流することである。
本発明の目的は、狭い範囲に集中するビームやプラズマ流の高熱流束を、液体金属を介在することで、受熱するだけでなく、高効率のエネルギー回収を行うことができるとともに、金属蒸気が発生した室内の金属蒸気による真空劣化を防止することができる高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収システムを提供することにある。
【0012】
又、本発明の他の目的は、狭い範囲に集中するビームやプラズマ流の高熱流束を、液体金属を介在することで、受熱するだけでなく、高効率のエネルギー回収を行うことができるとともに、金属蒸気が発生した室内の金属蒸気による真空劣化を防止することができる高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、高熱流束を導入するとともに内部が真空雰囲気に管理された差動排気室と、前記差動排気室に隣接して設けられて前記差動排気室を通過した前記高熱流束を導入するとともに内部が真空雰囲気に管理された蒸発室とを備え、前記蒸発室には前記高熱流束に当てられて同高熱流束の熱を受熱して蒸発する液体金属が配置され、前記蒸発室には蒸発した金属を凝縮させる冷却部が設けられ、前記冷却部には冷却媒体が循環して熱エネルギーを回収する冷却媒体循環システムを備えていることを特徴とする高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収システムを要旨とするものである。
【0014】
請求項1の発明によれば、液体金属は、高熱流束が当たると蒸発し大きな潜熱を奪う。蒸発した金属(すなわち、金属蒸気)は冷却部にて凝縮し、金属蒸気が凝縮することにより蒸発室の蒸気圧が下がる。金属蒸気の凝縮熱は冷却部を介して冷却媒体が受熱し、冷却媒体循環システムにより熱エネルギーが回収される。又、蒸発室及び蒸発室に隣接して設けられた差動排気室は、真空雰囲気に管理されていることから、蒸発室で生じた金属蒸気は、差動排気室を介して外部に逆流することが抑制される。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1において、前記蒸発室には、凝縮した液体金属を溜める貯留部が設けられていることを特徴とする。請求項2の発明によれば、冷却部で凝縮した液体金属は貯留部で貯留されて回収される。
【0016】
請求項3の発明は、請求項2において、前記貯留部が、液体金属を循環する液体金属循環システムに含まれ、液体金属循環システムにより、前記高熱流束が当たる領域にある液体金属の量が一定に保たれていることを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明によれば、液体金属循環システムにより、貯留部に溜まった液体金属が循環されるとともに、高熱流束が当たる領域にある液体金属の量を一定に保つことができる。
【0018】
請求項4の発明は、請求項3において、前記液体金属循環システムには、前記循環する液体金属が浸み出す浸み出し部が設けられており、同浸み出し部から浸み出した液体金属が前記高熱流束に当たるように配置されていることを特徴とする。
【0019】
請求項4の発明によれば、液体金属循環システムの浸み出し部から浸み出した液体金属は、表面張力が大きいため、浸み出し部から浸み出した液体金属は、浸み出し部で保持、すなわち、重力や電磁力に対して支えることが可能である。
【0020】
ここで、液体金属は、イオンや中性粒子等のビームを吸収するため、厚さを薄くする必要があるが、液体金属を薄い状態で高速流を作るのは大変困難である。例えば、波が立つなどで均等な厚みができない。しかし、浸み出し部で液体金属を浸み出すようにしておけば、液体金属は、液体金属自身の表面張力が大きいため、浸み出し部で支持できることから、高速流は必要でなくなり、浸み出し部に沿って液体金属を流せば波も立たないため、均等な厚みをつくることができる。
【0021】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項において、前記冷却部には、蒸発した金属を凝縮させる冷却面積拡大部材が設けられていることを特徴とする。
請求項5の発明によれば、冷却部に設けられた冷却面積拡大部材により、蒸発した金属を冷却する面積を拡大することにより、冷却面積拡大部材がない場合に比して、より多くの金属蒸気が凝縮する。
【0022】
請求項6の発明は、内部が真空雰囲気に管理された差動排気室を介して、内部が真空雰囲気に管理された蒸発室に高熱流束を導入し、前記蒸発室内で、前記高熱流束を液体金属に当てて同液体金属を蒸発させ、前記蒸発室に設けられるとともに冷却媒体循環システムにより冷却媒体が内部を通過する冷却部にて蒸発した液体金属を凝縮させ、前記冷却媒体循環システムで冷却媒体が受熱した熱エネルギーを回収することを特徴とする高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収方法を要旨とするものである。
【0023】
請求項6の発明によれば、液体金属は、高熱流束が当たると蒸発し大きな潜熱を奪う。蒸発した金属(すなわち、金属蒸気)が冷却部にて凝縮することにより蒸発室の蒸気圧が下がる。金属蒸気の凝縮熱は冷却部を介して冷却媒体が受熱し、冷却媒体循環システムにより熱エネルギーが回収される。又、蒸発室及び蒸発室に隣接して設けられた差動排気室は、真空雰囲気に管理されていることから、蒸発室で生じた金属蒸気は、差動排気室を介して外部に逆流することを抑制する。
【0024】
請求項7の発明は、請求項6において、前記蒸発室には、凝縮した液体金属を溜める貯留部が設けられていることを特徴とする。請求項7の発明によれば、冷却部で凝縮した液体金属は貯留部で貯留されて回収される。
【0025】
請求項8の発明は、請求項7において、前記貯留部が、液体金属を循環する液体金属循環システムに含まれ、液体金属循環システムにより、前記高熱流束が当たる領域にある液体金属の量が一定に保たれていることを特徴とする。
【0026】
請求項8の発明によれば、液体金属循環システムにより、貯留部に溜まった液体金属が循環されるとともに、高熱流束が当たる領域にある液体金属の量を一定に保つことができる。
【0027】
請求項9の発明は、請求項8において、前記液体金属循環システムには、前記循環する液体金属が浸み出す浸み出し部が設けられており、同浸み出し部から浸み出した液体金属が前記高熱流束に当たるように配置されていることを特徴とする。
【0028】
請求項9の発明によれば、液体金属循環システムの浸み出し部から浸み出した液体金属は、表面張力が大きいため、浸み出し部から浸み出した液体金属は、浸み出し部で保持、すなわち、支えることが可能となる。ここで、液体金属は、中性子等のビームを吸収するため、厚さを薄くする必要があるが、液体金属を薄い状態で高速流を作るのは大変困難である。例えば、波が立つなどで均等な厚みができない。しかし、浸み出し部で液体金属を浸み出すようにしておけば、液体金属は、液体金属自身の表面張力が大きいため、浸み出し部で支持できることから、高速流は必要でなくなり、浸み出し部に沿って液体金属を低速で流せば波も立たないため、均等な厚みをつくることができる。
【発明の効果】
【0029】
請求項1の発明によれば、狭い範囲に集中するビームやプラズマ流の高熱流束を、液体金属を介在することで、受熱するだけでなく、高効率のエネルギー回収を行うことができるとともに、金属蒸気が発生した室内の金属蒸気による真空劣化を防止することができる。
【0030】
請求項2の発明によれば、冷却部で凝縮した液体金属は貯留部で貯留されて回収できる。
請求項3の発明によれば、液体金属循環システムにより、貯留部に溜まった液体金属が循環されるとともに、高熱流束が当たる領域にある液体金属の量を一定に保つことができる。
【0031】
請求項4の発明によれば、浸み出し部で液体金属を浸み出すようにしておけば、液体金属は、液体金属自身の表面張力が大きいため、浸み出し部で重力や電磁力に対抗して支持できることから、高速流は必要でなくなり、浸み出し部に沿って液体金属を流せば波も立たないため、均等な厚みをつくることができる。
【0032】
請求項5の発明によれば、冷却部に設けられた冷却面積拡大部材により、蒸発した金属を冷却する面積を拡大することにより、冷却面積拡大部材がない場合に比して、より多くの金属蒸気が凝縮することができる。
【0033】
請求項6の発明によれば、狭い範囲に集中するビームやプラズマ流の高熱流束を、液体金属を介在することで、受熱するだけでなく、高効率のエネルギー回収を行うことができるとともに、金属蒸気が発生した室内の金属蒸気による真空劣化を防止することができる高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収方法を提供できる。
【0034】
請求項7の発明によれば、冷却部で凝縮した液体金属は貯留部で貯留されて回収される。
請求項8の発明によれば、液体金属循環システムにより、貯留部に溜まった液体金属が循環されるとともに、高熱流束が当たる領域にある液体金属の量を一定に保つことができる。
【0035】
請求項9の発明によれば、浸み出し部で液体金属を浸み出すようにしておけば、液体金属は、液体金属自身の表面張力が大きいため、浸み出し部で支持できることから、高速流は必要でなくなり、浸み出し部に沿って液体金属を低速で流せば波も立たないため、均等な厚みをつくることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(第1実施形態)
以下、本発明を、強力中性子源の高速ビームを高熱流束とし、この高熱流束に液体金属を高速ビーム対抗材として使用する高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収システムに具体化した第1実施形態を図1を参照して説明する。
【0037】
ここで、強力中性子源の高速ビームは、例えば、核融合炉材料の14MeV中性子照射のために、40MeV,125mA(5MW)の重水素原子核ビームを想定しており、このビームを、例えば20cm×5cm(0.01m)に絞ってリチウムターゲットに照射することで、14MeV中性子を発生させる。この場合、リチウムターゲットに入射する熱流束は、500MW/m2となり、固体では対応できないものとなる。上記のような14MeV中性子を発生させるものでは、例えばIFMIF(国際核融合材料照射施設)とよばれているプロジェクトがある。しかし、IFMIFでは、後述する液体金属としてのリチウムの流速を高速流(10−20m/s)で対応しようとしている。
【0038】
この場合、リチウムは、14MeV中性子を吸収するために厚さを薄くするしなければならないが、薄い高速流を作るのは大変困難であり、波が立つなどで均等な厚みができない問題がある。
【0039】
本実施形態は、これらの困難性を解消するものである。
図1は高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収システム(以下、単にエネルギー回収システムという)の概略図である。
【0040】
エネルギー回収システムは、蒸発室10と蒸発室10に隣接して設けられた差動排気室20とを備え、差動排気室20にはビーム室30が設けられている。ビーム室30と差動排気室20間の壁には、開口部として第1スリット22が設けられている。差動排気室20と蒸発室10間の壁には第2スリット24が設けられている。第1スリット22と第2スリット24は、ビーム室30内の図示しない高熱流束がそれぞれ差動排気室20及び蒸発室10内に導入される。
【0041】
蒸発室10には、液体金属循環システム40が付設されている。液体金属循環システム40は、蒸発室10内において、第2スリット24と対向する壁面側に設けられたウィック42と、蒸発室10外に設けられた液体金属溜まり部46間を循環する管路44を備え、管路44に設けられた循環ポンプ48の駆動により、液体金属が管路44内を循環駆動する。液体金属は、融点が453.7K(180℃)のリチウムであり、管路44に設けられた図示しない加熱源により融点以上、沸点(1615K)未満の温度域で加熱されている。
【0042】
ウィック42は、耐熱性の網、耐熱性の布、或いは耐熱性の多孔質材からなり、前記循環ポンプ48によって印加される内圧により、管路44で循環する液体金属がウィック42の表面を一定の厚さで覆うように浸み出し可能である。液体金属は、濡れ性が良いため、浸み出すウィック42の目は、粗くても良い。この循環ポンプ48による管路44を流れる液体金属の流速は、蒸発させないために高速としていた速度(背景技術で述べた10〜20m/s)である必要はなく、高速度域よりも低い低速域で十分である。ウィック42は、浸み出し部に相当する。
【0043】
蒸発室10の底面には貯留部としての回収溜まり部56が設けられている。回収溜まり部56は後述する冷却部50で凝縮した液体金属を溜める。回収溜まり部56の液体金属は、循環ポンプ48により管路44aを介して液体金属溜まり部46に移動する。このように、回収溜まり部56は、液体金属循環システム40に含まれている。
【0044】
蒸発室10及び差動排気室20及内の壁面には冷却部50が設けられている。冷却部50は冷却板から構成されている。蒸発室10の冷却板には冷却面積を拡大するために複数のフィン52が設けられている。互いに隣接するフィン52同士の間隔は冷却部50にて凝縮した液体金属が、万一凝固した場合でも詰まらない程度に空けることが好ましい。なお、差動排気室20の冷却部50にはフィン52は設けられていないが、蒸発室10の冷却部50と同様にフィン52を設けても良い。
【0045】
冷却部50と蒸発室10との壁面間には、冷却媒体循環システム60の管路54が配置されている。冷却媒体循環システム60の管路54内には冷却媒体が充填されており、図1に示すように熱交換器62、ポンプ64を介して冷却媒体を循環する。なお、冷却媒体は、本実施形態ではリチウム鉛(融点235℃)としているが、冷却媒体は液体金属の融点よりも沸点が高いものであればよく、リチウム鉛に限定されるものではない。
【0046】
このように、冷却媒体が液体金属の融点よりも沸点が高いものであれば、金属蒸気が冷却部50で凝縮しても固まることがないため、冷却板のすきま(例えば、フィン52間の空間)が凝縮した液体金属で詰まることがない。
【0047】
熱交換器62には、図示はしないが二次の循環系が設けられており、二次の循環系を循環する熱交換媒体と熱交換をするようにされている。この二次の循環系の熱交換媒体が熱交換により気化して、図示しない蒸気タービン等を回転駆動させ、図示しない発電機を回転させる。
【0048】
蒸発室10には、バッフル板(すなわち、邪魔板)14を備えた排気口12が設けられている。蒸発室10は、室内の不純物ガスが排気口12に接続された図示しない真空ポンプにより排気されることにより、真空雰囲気となるように管理されている。又、バッフル板14により、金属蒸気が前記図示しない真空ポンプに入らないようにされている。
【0049】
又、第2スリット24には、ジェット機構26が設けられ、蒸発室10から差動排気室20内への金属蒸気の逆流を小さくしている。又、差動排気室20には、バッフル板(すなわち、邪魔板)28を備えた排気口58が設けられている。差動排気室20は、室内の不純物ガスが排気口58に接続された図示しない真空ポンプにより排気されることにより、真空雰囲気となるように管理されている。又、バッフル板28により、金属蒸気が前記図示しない真空ポンプに入らないようにされている。
【0050】
差動排気室20へ、第2スリット24を介して蒸発室10からもれた金属等の蒸気は、排気口12で排気され、ビーム室30への金属等の蒸気の逆流を抑制している。
(作用)
本実施形態におけるエネルギー回収システムの作用を説明する。
【0051】
液体金属循環システム40は液体金属を循環ポンプ48により循環し、ウィック42から液体金属を一定の厚さで覆うように浸み出させている。この状態で、ビーム室30内の図示しないビームの高熱流束が差動排気室20及び蒸発室10内に導入され、ウィック42の表面に高熱流束が当たり、ウィック42の表面にある液体金属が沸点以上に加熱されると金属蒸気となり、大きな潜熱を高熱流束から奪う。
【0052】
金属蒸気は、冷却部50にて凝縮することにより蒸発室10の蒸気圧を下げる。金属蒸気の凝縮熱は冷却部50を介して冷却媒体が受熱し、冷却媒体循環システム60により熱エネルギーが回収される。この冷却媒体循環システム60の冷却媒体の熱を利用して二次熱交換器により水等の熱交換媒体を蒸気として発生させ、この蒸気を利用して公知の発電システムで発電させるようにする。又、蒸発室10及び蒸発室に隣接して設けられた差動排気室20が、真空雰囲気に管理されていることから、蒸発室10で生じた金属蒸気は、差動排気室20を通して外部であるビーム室30へ逆流することが抑制される。
【0053】
ここで、本実施形態における液体金属としてのリチウムの蒸発による冷却量を説明する。
液体金属の温度や蒸気圧は熱入力でほとんど決まる。蒸気圧p[Pa]、温度T[K]の単位面積当たりの蒸発量J[atoms/m2sec]は、
【0054】
【数4】

となる。従って、蒸発による冷却量q
【0055】
【数5】

となる。ここで、mLiはリチウムの原子量、γvは蒸発潜熱である。
【0056】
この金属蒸気を冷却部50である冷却板により冷却する場合の凝縮について説明する。
冷却板の面積は、フィン52等の冷却面積を拡大する冷却面積拡大部材を使用すれば、広くすることができる。例えば、単位長さ当たりの冷却板の面積を5m2とすると、冷却板での冷却量は、1MW/m2となる。これは十分冷却媒体で冷却可能な値である。冷却板での熱流束は直接当たらないため大きくなく、冷却媒体の流量や温度に自由度があり、発電効率の良い値を選択可能である。
【0057】
なお、発生蒸気の一部は、ビーム室30へ逆流するが、この量を算出する。
単位面積当たり蒸発するリチウムの質量Mは、
【0058】
【数6】

である。
【0059】
例えば、熱流束Qin=500MW/m2を金属リチウム(mLi=1.15×10−26[/kg])、γv=2.273×107[J/kg]で受熱することが可能となる。なお、このような強力な熱流束を受熱できる固体は存在しない。この場合、単位面積当たり蒸発する金属の質量はM=22[kg/m2-sec]となる。
【0060】
これが全てビーム室30に流入すると問題があるため、本実施形態では、差動排気室20が隣接して設けられている。
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
【0061】
(1) 本実施形態のエネルギー回収システムは、高熱流束を導入するとともに内部が真空雰囲気に管理された差動排気室20と、差動排気室20に隣接して設けられて差動排気室20を通過した高熱流束を導入するとともに内部が真空雰囲気に管理された蒸発室10とを備える。又、蒸発室10には高熱流束に当てられて同高熱流束の熱を受熱して蒸発するリチウム(液体金属)が配置され、蒸発室10には蒸発した金属を凝縮させる冷却部50が設けられ、冷却部50には冷却媒体が循環して熱エネルギーを回収する冷却媒体循環システム60を備えている。そして、本実施形態では、リチウム(液体金属)は、高熱流束が当たると蒸発し大きな潜熱を奪い、金属蒸気は冷却部50にて凝縮することにより蒸発室10の蒸気圧を下げる。又、金属蒸気の凝縮熱は冷却部50を介して冷却媒体が受熱し、冷却媒体循環システム60により熱エネルギーが回収される。又、蒸発室10及び差動排気室20が、真空雰囲気に管理されていることから、蒸発室10で生じた金属蒸気は、差動排気室20を介して外部であるビーム室へ逆流することが抑制できる。この結果、狭い範囲に集中するビームの高熱流束を、液体金属であるリチウムを介在することで、受熱するだけでなく、高効率のエネルギー回収を行うことができるとともに、金属蒸気が発生した室内の金属蒸気による真空劣化を防止することができる。
【0062】
(2) 本実施形態のエネルギー回収システムでは、蒸発室10には、凝縮した液体金属を溜める回収溜まり部56(貯留部)が設けられている。このため、本実施形態では、冷却部50で凝縮したリチウム(液体金属)を回収溜まり部56で貯留して回収することができる。
【0063】
(3) 本実施形態のエネルギー回収システムでは、回収溜まり部56は、リチウム(液体金属)を循環する液体金属循環システム40に含まれ、液体金属循環システム40により、高熱流束が当たる領域にあるリチウム(液体金属)の量が一定に保たれている。このため、本実施形態で、液体金属循環システム40により、回収溜まり部56に溜まったリチウム(液体金属)が循環されるとともに、高熱流束が当たる領域にあるリチウム(液体金属)の量を一定に保つことができる。
【0064】
(4) 本実施形態のエネルギー回収システムでは、液体金属循環システム40には、循環するリチウムが浸み出すウィック42(浸み出し部)が設けられており、ウィック42から浸み出したリチウムが高熱流束に当たるように配置されている。このため、液体金属循環システム40のウィック42から浸み出したリチウムは、表面張力が大きいため、ウィック42から浸み出したリチウムは、ウィック42で支えることができる。このため、ウィック42で重力や電磁力に対してリチウムを支持できることから、高速流は必要でなくなり、ウィック42に沿ってリチウムを流せば波も立たないため、均等な厚みをつくることができる。
【0065】
(5) 本実施形態のエネルギー回収システムでは、冷却部50には、蒸発した金属を凝縮させるフィン52(冷却面積拡大部材)が設けられていることにより、蒸発した金属を冷却する面積が拡大するため、冷却面積拡大部材がない場合に比して、より多くの金属蒸気を凝縮することができる。
【0066】
(6) 本実施形態の高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収方法は、内部が真空雰囲気に管理された差動排気室20を介して、内部が真空雰囲気に管理された蒸発室10に高熱流束を導入し、蒸発室10内で、高熱流束を液体金属であるリチウムに当ててリチウムを蒸発させる。そして、同回収方法は、蒸発したリチウムを、蒸発室10に設けられた冷却媒体循環システム60の冷却部50にて凝縮させる。そして、冷却媒体循環システム60で冷却媒体が受熱した熱エネルギーを回収するようにする。
【0067】
この結果、液体金属としてのリチウムは、高熱流束が当たると蒸発し大きな潜熱を奪う。又、金属蒸気は冷却部50にて凝縮することにより蒸発室10の蒸気圧を下げる。金属蒸気の凝縮熱は冷却部50を介して冷却媒体が受熱し、冷却媒体循環システム60により熱エネルギーが回収される。又、蒸発室10及び蒸発室10に隣接して設けられた差動排気室20が真空雰囲気に管理されていることから、蒸発室10で生じた金属蒸気が、差動排気室20を介して外部であるビーム室へ逆流することを抑制できる。
【0068】
(7) 本実施形態の高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収方法は、蒸発室10には、凝縮した液体金属としてのリチウムを溜める回収溜まり部56(貯留部)が設けられている。この結果、本実施形態では、冷却部50で凝縮した液体金属を回収溜まり部56(貯留部)で貯留して回収することができる。
【0069】
(8) 本実施形態の高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収方法は、回収溜まり部56(貯留部)が、液体金属としてのリチウムを循環する液体金属循環システム40に含まれ、液体金属循環システムにより、前記高熱流束が当たる領域にある液体金属の量が一定に保たれている。この結果、液体金属循環システム40により、回収溜まり部56(貯留部)に溜まったリチウムが循環されるとともに、高熱流束が当たる領域、すなわち、ウィック42の表面に浸み出すリチウムの量を一定に保つことができる。
【0070】
(9) 本実施形態の高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収方法は、液体金属循環システム40には、循環する液体金属としてのリチウムが浸み出すウィック42(浸み出し部)が設けられており、ウィック42から浸み出したリチウムが高熱流束が当たるように配置されている。本実施形態の回収方法によれば、液体金属循環システム40のウィック42から浸み出したリチウムは、表面張力が大きいため、ウィック42から浸み出した液体のリチウムは、ウィック42で支えることが可能となる。このようにリチウムがウィック42で支持されるため、高速流は必要でなくなり、ウィック42に沿ってリチウムを流せば波も立たないため、均等な厚みをつくることができる。
【0071】
(第2実施形態)
次に第2実施形態を、図2を参照して説明する。
第2実施形態は、核融合炉のダイバータ対抗材システムに具体化したものである。図2に示すように、ダイバータ対抗材システムのダイバータ室100は、蒸発室110と差動排気室120とに区分されている。差動排気室120と蒸発室110とには、それぞれダイバータレグを導入するための第1スリット122と、第2スリット112が形成されている。
【0072】
なお、説明の便宜上、図2に示す核融合炉のダイバータ対抗材システムは、左半分と右半分とは、液体金属であるリチウムの循環方式が異なる構成がそれぞれ図示されており、第2実施形態では、図2のAで示されたリチウムの循環方式、すなわち、自然循環方式が採用されている。従って、第2実施形態において、核融合炉のダイバータ対抗材システムの右半分の構成は、図2の左半分の構成が略対称状に設けられているものと理解されたい。
【0073】
図2のAにおいて、ダイバータ室100の蒸発室110内に、蒸発室110の下部が、液体金属としてのリチウムLiを貯留する貯留部114が設けられている。リチウムLiは、対抗材として使用されるものである。蒸発室110の内壁面には冷却部150としての冷却板が設けられ、冷却板と前記内壁面間には、冷却媒体循環システムの管路154が設けられている。冷却媒体循環システムは、第1実施形態の冷却媒体循環システム60と同様の構成であるため、本実施形態では図示しない。
【0074】
又、蒸発室110は、バッフル板116を備えた排気口118が設けられている。蒸発室110は、室内の不純物ガスが排気口118に接続された図示しない真空ポンプにより排気されることにより、真空雰囲気となるように管理されている。又、バッフル板116により、金属蒸気が前記図示しない真空ポンプに入らないようにされる。
【0075】
差動排気室120には、バッフル板128を備えた排気口130が設けられている。差動排気室120は、室内の不純物ガスが排気口130に接続された図示しない真空ポンプにより排気されることにより、真空雰囲気となるように管理されている。又、バッフル板128により、金属蒸気が前記図示しない真空ポンプに入らないようにされている。
【0076】
差動排気室120へ、第2スリット112を介して蒸発室110からもれた金属等の蒸気は、排気口130で排気され、ビーム室30への金属等の蒸気の逆流を抑制している。
さて、上記のように構成されたダイバータ対抗材システムでは、図2のAに示すように、プラズマから放射された多数の中性子線は高熱流束として、ダイバータ磁力線に沿ってダイバータ室100の差動排気室120、蒸発室110内に、第1スリット122、第2スリット112を介してそれぞれ導入される。貯留部114に貯留された液対金属としてのリチウムLiの表面に高熱流束が当たり、その表面にあるリチウムが沸点以上に加熱されると金属蒸気となり、大きな潜熱を高熱流束から奪う。
【0077】
金属蒸気は、冷却部150にて凝縮することにより蒸発室110の蒸気圧を下げる。凝縮した液体金属であるリチウムLiは、貯留部114に滴下し自然循環する。一方、金属蒸気の凝縮熱は冷却部150を介して冷却媒体が受熱し、図示しない冷却媒体循環システムにより熱エネルギーが回収される。なお、冷却媒体循環システムは第1実施形態の冷却媒体循環システムと同様の構成であるため、説明を省略する。又、蒸発室110及び差動排気室120は、真空雰囲気に管理されていることから、蒸発室110で生じた金属蒸気は、差動排気室120を介してダイバータ室100の外部であるプラズマへ逆流することが抑制される。
【0078】
背景技術で説明したように、DT核融合においては、中性子出力の約1/4がα加熱となることから、例えば、電気出力百万kW発電炉では、中性子出力が約3GWとなり、α加熱は750MWとなる。定常状態ではこのプラズマ加熱入力はプラズマの損失と等しい。プラズマの損失は放射損失か粒子による損失であり、粒子による損失のほとんどはダイバータレグに流れる。仮に1つのダイバータレグにα加熱の1/4が来るとすると、その主半径が6mであれば、周長は38mであるので、1m当たり5MWがダイバータレグの対抗材表面に入力する。ダイバータレグの厚さがスクレイプオフレイヤの幅とすると、約1cmである。
【0079】
すると、ダイバータレグの対抗材表面に入力する熱流束は、500MW/m2となり、固体の対抗材では対応できないものとなる。
しかし、本実施形態では、この熱流束に耐えることが可能となるだけでなく、最終的には、ダイバータにくるα加熱も発電に利用することが可能となる。すなわち、高温熱媒体(例えば、ヘリウムや炭酸ガス)の使用が可能となり、高効率発電が可能となる。
【0080】
なお、第1実施形態のビームと異なり、プラズマは曲がったダイバータ磁力線(図2のA参照)に沿って流れてくるため、蒸発室110からもれた金属蒸気のプラズマが形成されているプラズマ室への流入量を減らすことが容易である。
【0081】
なお、第2実施形態の変形例として、図2のBで示すように、液体金属を強制循環方式で循環させてもよい。
なお、説明の便宜上、変形例では図2のBに示すように、核融合炉のダイバータ対抗材システムの右半分の構成のみが図示されているが、実際は図2の左半分の構成も、右半分の構成が略対称状に設けられているものと理解されたい。又、第2実施形態で説明した構成と同一構成、又は相当する構成については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0082】
この変形例では、蒸発室110には、液体金属を貯留するとともにダイバータレグを受け入れて、貯留した液体金属を蒸発させるための第1貯留部160と、第1貯留部160に対して隣接して設けられ、冷却部150で凝縮した液体金属を回収する第2貯留部170とが設けられている。
【0083】
第1貯留部160と第2貯留部170間には管路190が接続されて循環ポンプ180の駆動により液体金属が強制循環するようにされている。そして、第1貯留部160の液体金属がダイバータレグを受けて蒸発することによって減少しないように、第2貯留部170で回収した液体金属を、高熱流束が当たる領域、すなわち、第1貯留部160へ液体金属を補充して第1貯留部160の液体金属の量が一定に保たれている。
【0084】
なお、管路190には、液体金属を融点以上、沸点未満に加熱するための加熱手段(図示略)が設けられている。
管路190、循環ポンプ180、第1貯留部160、第2貯留部170により液体金属循環システム195が構成されている。
【0085】
上記のように、核融合炉のダイバータ対抗材システムに液体金属を強制循環方式により循環させても、前記第2実施形態と同様に高熱流束に耐えることが可能となるだけでなく、最終的には、ダイバータにくるα加熱も発電に利用することが可能となる。
【0086】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
○ 前記各実施形態では、液体金属をリチウムとしたが、リチウムに限定されるものではなく、例えば、ナトリウム金属であってもよく、いずれの液体金属も融点以上、沸点以下で図示しない加熱源で加熱して液体状態となっていればよい。
【0087】
○ 第1実施形態では、冷却媒体をリチウム鉛(融点235℃)としているが、リチウム鉛の代わりに、ヘリウムガス、炭酸ガス、窒素ガスでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明を具体化した一実施形態の高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収システムの概略図。
【図2】他の実施形態の高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収システムの概略図。
【図3】従来のダイバータの概略図。
【符号の説明】
【0089】
10…蒸発室、20…差動排気室、22…第1スリット、24…第2スリット、
40…液体金属循環システム、42…ウィック(浸み出し部)、50…冷却部、
52…フィン、54…管路、56…回収溜まり部(貯留部)、58…排気口、
60…冷却媒体循環システム、
110…蒸発室、112…第2スリット、120…差動排気室、
122…第1スリット、150…冷却部、
154…冷却媒体循環システムの管路、160…第1貯留部、
170…第2貯留部、195…液体金属循環システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高熱流束を導入するとともに内部が真空雰囲気に管理された差動排気室と、
前記差動排気室に隣接して設けられて前記差動排気室を通過した前記高熱流束を導入するとともに内部が真空雰囲気に管理された蒸発室とを備え、
前記蒸発室には前記高熱流束に当てられて同高熱流束の熱を受熱して蒸発する液体金属が配置され、
前記蒸発室には蒸発した金属を凝縮させる冷却部が設けられ、
前記冷却部には冷却媒体が循環して熱エネルギーを回収する冷却媒体循環システムを備えていることを特徴とする高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収システム。
【請求項2】
前記蒸発室には、凝縮した液体金属を溜める貯留部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収システム。
【請求項3】
前記貯留部が、液体金属を循環する液体金属循環システムに含まれ、液体金属循環システムにより、前記高熱流束が当たる領域にある液体金属の量が一定に保たれていることを特徴とする請求項2に記載の高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収システム。
【請求項4】
前記液体金属循環システムには、前記循環する液体金属が浸み出す浸み出し部が設けられており、同浸み出し部から浸み出した液体金属が前記高熱流束に当たるように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収システム。
【請求項5】
前記冷却部には、蒸発した金属を凝縮させる冷却面積拡大部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収システム。
【請求項6】
内部が真空雰囲気に管理された差動排気室を介して、内部が真空雰囲気に管理された蒸発室に高熱流束を導入し、前記蒸発室内で、前記高熱流束を液体金属に当てて同液体金属を蒸発させ、前記蒸発室に設けられるとともに冷却媒体循環システムにより冷却媒体が内部を通過する冷却部にて蒸発した液体金属を凝縮させ、
前記冷却媒体循環システムで冷却媒体が受熱した熱エネルギーを回収することを特徴とする高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収方法。
【請求項7】
前記蒸発室には、凝縮した液体金属を溜める貯留部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収方法。
【請求項8】
前記貯留部が、液体金属を循環する液体金属循環システムに含まれ、液体金属循環システムにより、前記高熱流束が当たる領域にある液体金属の量が一定に保たれていることを特徴とする請求項7に記載の高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収方法。
【請求項9】
前記液体金属循環システムには、前記循環する液体金属が浸み出す浸み出し部が設けられており、同浸み出し部から浸み出した液体金属が前記高熱流束が当たるように配置されていることを特徴とする請求項8に記載の高熱流束ビーム受熱・エネルギー回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−175051(P2009−175051A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15383(P2008−15383)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2007年8月20日 社団法人 電気学会発行の「電気学会研究会資料」発表
【出願人】(504261077)大学共同利用機関法人自然科学研究機構 (156)