説明

高甘味度甘味料に対する呈味改良組成物およびその応用

【課題】 従来の低カロリー飲食品、特に、添加されるべき砂糖や異性化糖の一部あるいはほとんどを高甘味度甘味料に置き換えることで低カロリーを実現した可食性製品(飲食品)の有する独特の異味(特に口中に残る苦味)を改良すること。
【解決手段】 高甘味度甘味料に対する呈味改良組成物、高甘味度甘味料を含有する可食性製品の呈味改良方法、ならびに高甘味度甘味料の呈味が改良された可食性製品は、異性化糖及び希少糖を、異性化糖100質量部に対して希少糖1〜150質量部の割合で含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高甘味度甘味料に対する呈味改良組成物、高甘味度甘味料を含有する可食性製品の呈味改良方法および高甘味度甘味料の呈味が改良された可食性製品に関する。より詳細には、本発明は、高甘味度甘味料の有する異味(苦味)の発現を抑制することにより、高甘味度甘味料の呈味を改良することのできる呈味改良組成物、可食性製品の呈味改良方法および高甘味度甘味料の呈味が改良された可食性製品、特に低カロリー可食性製品に関する。
【背景技術】
【0002】
砂糖および異性化糖は、その甘味質が良好で、多くの人々に好まれる甘味料であるが、近年、この砂糖および異性化糖の過剰摂取により、肥満や生活習慣病の原因となることが指摘されている。このような背景の中で、健康志向の観点から、飲食品の製造に際して使用する砂糖や異性化糖の一部および大部分を、砂糖の数百倍の甘味をもつ高甘味度甘味料および糖アルコールに置き換えることにより、低カロリーの飲食品を得る試みが頻繁に行われている。
【0003】
しかし、高甘味度甘味料は、砂糖の数倍〜数千倍の甘味度を有し、少量の添加で目的とする甘味を発現させることが可能であることから、低カロリー甘味料として頻用されているものの、甘味が持続し続けるために後味のキレが悪いだけでなく、後味に特有の異味や苦味を呈するといった後味の悪さがあり、ボディ感(コク味)の不足といった欠点も有しているため、単独で使用することは少なく、数種の高甘味度甘味料を組み合わせて使用するのが一般的である。例えば、アスパルテームやアセスルファムK、スクラロース(登録商標)などの高甘味度甘味料は、その高い甘味倍率から、ダイエット飲食品に幅広く使用されているが、消費者は砂糖や異性化糖(果糖ブドウ糖液糖やブドウ糖果糖液糖)を使用した、いわゆるレギュラー品の味に長年慣れ親しんでおり、上記高甘味度甘味料を用いた食品の甘味には不快感を示す者が多い。これら3種類の高甘味度甘味料については、トレハロースやエリスリトールなどの併用(特許文献1)、食物繊維の併用(特許文献2)、あるいはα−グルコシル化ステビア抽出物との併用(特許文献3)をはじめ種々検討されているが、砂糖や果糖ブドウ糖液糖の味に慣れ親しんだ消費者の嗜好を満足するには至っていないのが現状である。
【0004】
一方、D-プシコースは、糖蜜などに微量ながら含まれている希少糖で、甘味が砂糖の60〜70%であるにもかかわらず、そのエネルギー値は、ほぼ0キロカロリーであることと、溶解性に優れていることから、様々な飲食品への応用が期待されている。しかし、飲食品への甘味付与を目的に使用する場合、必要な甘味を与えるまでD-プシコースを添加していくと、その使用量が多くなり、濃厚感が出すぎてしまうことや、甘味の立ち上がりが遅くなることなどを考え合わせると、単独使用はあまり現実的ではないため、糖アルコールと併用することで、その欠点を補う方法が開示されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−51723号公報
【特許文献2】特開2004−41118号公報
【特許文献3】特開2002−34501号公報
【特許文献4】特再表2008−059623号公報
【特許文献5】国際特許出願PCT/JP2010/5536 未公開
【特許文献6】特開平6−125776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、高甘味度甘味料の有する異味(苦味)を改善または改良する改良剤(高甘味度甘味料に対する呈味改良組成物)を提供することにある。
また、本発明の課題は、従来の低カロリー飲食品、特に、添加されるべき砂糖や異性化糖の一部あるいはほとんどを高甘味度甘味料に置き換えることで低カロリーを実現した可食性製品(飲食品)の有する独特の異味(特に口中に残る苦味)を改良する方法(高甘味度甘味料を含有する可食性製品の呈味改良方法)および、その方法により得られる高甘味度甘味料の呈味が改良された可食性製品、好ましくは飲料および冷菓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その解決手段として、我々は、D-プシコースを利用する方法(甘味料)をすでに発明しているが(上記特許文献4)、D-プシコースを大量安価に得ることは現在のところ困難である上、糖アルコール等と併用するという、工程上、煩雑な面が存在する。そこで、安価に入手でき、高甘味度甘味料の有する異味を改善することができ、かつ砂糖や異性化糖のように飲食物に広範囲に使用できる甘味物質を提供する方法を鋭意検討する過程で、希少糖含有異性化糖の製造方法を発明した(特許文献5)。この希少糖含有異性化糖には、D-プシコースとD-アロースが主な希少糖として含まれることが分かっているほか、ビールの発酵試験の結果から、資化されない未同定の希少糖も含まれていることが分かっている。特許文献5に記載された実施例を示すと以下の通りである。
<5%異性化糖の強塩基性イオン交換樹脂による反応>異性化糖を、0.1M NaOH溶液で、5%(w/v)になるように調製する。この溶液1100mlを、強塩基性イオン交換樹脂45ml、強酸性イオン交換樹脂26mlの順に、温度60℃、送液速度0.8ml/minで通液した。 (強塩基性イオン交換樹脂:アンバーライトIRA900J OH、強酸性イオン交換樹脂:アンバーライト200CT[H型]、カラム長30cm、カラム内径1.5cm)。この時にカラムから溶出してくる経時的な反応液をサンプリング後、HPLC(検出器;RI、カラム;三菱化成 MCI GEL CK 08EC)にて分析した。通液後(1000ml)、糖質含量に対して、D−グルコース34.3%、D−マンノース+D-ソルボース+D-アルトロース12.4%、D−フラクトース25.8%、D−アロース4.1%、D−プシコース6.3%の混合糖液が得られた。
<40%異性化糖の強塩基性イオン交換樹脂による反応>異性化糖を、0.1M NaOH溶液で、40%(w/v)になるように調製する。この溶液1100mlを、強塩基性イオン交換樹脂45ml、強酸性イオン交換樹脂26mlの順に、温度60℃、送液速度0.8ml/minで通液した。 (強塩基性イオン交換樹脂:アンバーライトIRA900J OH、強酸性イオン交換樹脂:アンバーライト200CT[H型]、カラム長30cm、カラム内径1.5cm)。この時にカラムから溶出してくる経時的な反応液をサンプリング後、HPLC(検出器;RI、カラム;三菱化成 MCI GEL CK 08EC)にて分析した。通液後(1000ml)、糖質含量に対して、D−グルコース46.2%、D−マンノース+D-ソルボース+D-アルトロース6.3%、D−フラクトース32.8%、D−アロース2.0%、D−プシコース4.8%の混合糖液が得られた。
本発明者らは、この希少糖含有異性化糖を飲食品、特に高甘味度甘味料を使用した飲料や冷菓に利用することで、高価な精製D-プシコースを利用せずに、しかも、D-プシコースの欠点である甘味の立ち上がりの遅さや多量使用による重たさの問題点をカバーする目的で糖アルコールを併用することなく、高甘味度甘味料の異味を効果的に改善することができるという、すなわち、安価で利便性が高いことに加え、その高甘味度甘味料の味質改良効果にも優れるという、すべての課題を解決できる素晴らしい改良剤および改良方法を見出した。
【0008】
より具体的には、本発明は、異性化糖及び希少糖を利用する、好ましくは異性化糖を特定濃度のアルカリにより異性化して得られる希少糖含有異性化糖を利用する、高甘味度甘味料すなわち、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース(登録商標)、ステビア甘味料、サッカリン、サッカリン酸ナトリウム、カンゾウ抽出物からなる群より選ばれる1種類以上の高甘味度甘味料を改善または改良する改良剤(呈味改良組成物)あるいは改良方法、あるいはそれを含む可食性製品(飲食品)の味質改良方法、およびその方法により得られる高甘味度甘味料の呈味が改良された可食性製品、好ましくは飲料および冷菓に関する。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の(1)ないし(4)に記載の高甘味度甘味料に対する呈味改良組成物を要旨とする。
(1)異性化糖及び希少糖を、異性化糖100質量部に対して希少糖1〜150質量部の割合で含む、高甘味度甘味料に対する呈味改良組成物。
(2)異性化糖及び希少糖が、D-グルコース、D-フラクトース、または異性化糖のうち1種、あるいは2種以上を0.005mol/l以上のアルカリにより異性化することで得られる、D-グルコースおよびD-フラクトース以外の糖の含有率が60質量%未満の希少糖含有異性化糖であることを特徴とする、上記の(1)に記載の高甘味度甘味料に対する呈味改良組成物。
(3)希少糖が、少なくともD-プシコースおよび/またはD-アロースであることを特徴とする、上記の(1)または(2)に記載の高甘味度甘味料に対する呈味改良組成物。
(4)高甘味度甘味料が、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース(登録商標)、ステビア甘味料、サッカリン、サッカリン酸ナトリウム、カンゾウ抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記の(1)ないし(3)のいずれかに記載の、高甘味度甘味料に対する呈味改良組成物。
【0010】
また、本発明は、以下の(5)ないし(9)に記載の高甘味度甘味料を含有する可食性製品の呈味改良方法を要旨とする。
(5)異性化糖及び希少糖と高甘味度甘味料を、異性化糖100質量部に対して希少糖1〜150質量部の割合で併用する、高甘味度甘味料を含有する可食性製品の呈味改良方法。
(6)異性化糖及び希少糖が、D-グルコース、D-フラクトース、または異性化糖のうち1種、あるいは2種以上を0.005mol/l以上のアルカリにより異性化することで得られる、D-グルコースおよびD-フラクトース以外の糖の含有率が60質量%未満の希少糖含有異性化糖であることを特徴とする、上記の(5)に記載の可食性製品の呈味改良方法。
(7)希少糖が、少なくともD-プシコースおよび/またはD-アロースであることを特徴とする、上記の(5)または(6)に記載の可食性製品の呈味改良方法。
(8)高甘味度甘味料がスクラロース、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、ステビア甘味料、アセスルファムK、グリチルリチンからなる群より選択される1種もしくは2種以上の高甘味度甘味料である上記の(5)ないし(7)のいずれかに記載の可食性製品の呈味改良方法。
(9)可食性製品が、卓上甘味料、飲料、デザート、及び冷菓よりなる群から選択されるものである上記の(5)ないし(8)のいずれかに記載の高甘味度甘味料を含有する可食性製品の呈味改良方法。
【0011】
さらにまた、本発明は、以下の(10)ないし(15)に記載の高甘味度甘味料の呈味が改良された可食性製品を要旨とする。
(10)異性化糖及び希少糖と高甘味度甘味料を、異性化糖100質量部に対して希少糖1〜150質量部の割合で含有する、高甘味度甘味料の呈味が改良された可食性製品。
(11)異性化糖及び希少糖が、D-グルコース、D-フラクトース、または異性化糖のうち1種、あるいは2種以上を0.005mol/l以上のアルカリにより異性化することで得られる、D-グルコースおよびD-フラクトース以外の糖の含有率が60質量%未満の希少糖含有異性化糖であることを特徴とする、上記の(10)に記載の高甘味度甘味料の呈味が改良された可食性製品。
(12)希少糖が、少なくともD-プシコースおよび/またはD-アロースであることを特徴とする、上記の(10)または(11)に記載の高甘味度甘味料の呈味が改良された可食性製品。
(13)高甘味度甘味料が、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース(登録商標)、ステビア甘味料、サッカリン、サッカリン酸ナトリウム、カンゾウ抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記の(10)ないし(12)のいずれかに記載の可食性製品。
(14)可食性製品が、卓上甘味料、飲料、デザート、及び冷菓よりなる群から選択されるものである上記の(10)ないし(13)のいずれかに記載の可食性製品。
(15)低カロリーであることを特徴とする、上記の(10)ないし(14)のいずれかに記載の可食性製品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低カロリーを謳う目的で、飲食品中の砂糖や異性化糖の一部またはほとんどを高甘味度甘味料に置き換えるがゆえに発現する異味を、煩雑な工程を経ることなく改良することができ、生活習慣病の発病リスクの低減と味の面での満足感を、簡単に、しかも低コストで実現することができる。
すなわち、本発明により、高甘味度甘味料の有する異味(苦味)を改善または改良する改良剤(高甘味度甘味料に対する呈味改良組成物)を提供することができる。また、従来の低カロリー飲食品、特に、添加されるべき砂糖や異性化糖の一部あるいはほとんどを高甘味度甘味料に置き換えることで低カロリーを実現した可食性製品(飲食品)の有する独特の異味(特に口中に残る苦味)を改良する方法(高甘味度甘味料を含有する可食性製品の呈味改良方法)および、その方法により得られる高甘味度甘味料の呈味が改良された可食性製品、好ましくは飲料および冷菓を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の呈味改良組成物は、異性化糖及び希少糖を、異性化糖100質量部に対して希少糖1〜150質量部の割合、好ましくは希少糖5〜150質量部の割合、より好ましくは8〜100質量部の割合で含むことを特徴とする。
本発明において、異性化糖及び希少糖のうち、異性化糖は、ソフトドリンクや他の飲料に甘味料として広く使用されている異性化糖である。異性化糖の製造方法は、澱粉を糖化して糖化液とし、これをグルコースイソメラーゼで処理して製造される。代表的な方法では澱粉を酵素で加水分解してデキストリンとし、これを更に別の酵素で加水分解してブドウ糖溶液、すなわち糖化液とする。グルコースイソメラーゼによるブドウ糖の果糖への異性化反応は平衡反応であり、異性化糖のグルコースとフラクトースとの比率は通常58:42程度である。さらに、甘味不足を解消するために、精製フラクトースを添加する場合があるが、この場合最終のグルコースとフラクトースとの比率は通常45:55程度である。一方、希少糖は、国際希少糖学会の定義によれば、「自然界に希にしか存在しない糖」であり、自然界における存在量が少ない単糖である。また、大量生産が難しいため、希少糖には未知の性質が多く潜んでいると考えられている。
六炭糖(ヘキソース)には、アルドースの場合、L-アロース、L-グロース、L-グルコース、L-ガラクトース、L-アルトロース、L-イドース、L-マンノース、L-タロース、D-タロース、D-マンノース、D-イドース、D-アルトロース、D-ガラクトース、D-グルコース、D-グロース、D-アロースの16種類、ケトースの場合はL-プシコース、L-ソルボース、L-フルクトース、L-タガトース、D-タガトース、D-フルクトース、D-ソルボース、D-プシコースの8種類が存在し、そのうち自然界に多量に存在する単糖は、D-グルコース、D-フルクトース、D-ガラクトース、D-マンノース、D-リボース、D-キシロース、L-アラビノースの7種類であり、それ以外の単糖は全て希少糖である。
本発明における希少糖含有異性化糖とは、希少糖を含有する異性化糖のことである。すなわち、本発明における異性化糖及び希少糖、好ましくは希少糖含有異性化糖は、上述した希少糖のいずれかを含有する異性化糖であり、異性化糖とは、上記のとおり、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)を主成分とする液状糖である。希少糖を得る方法は既にいくつか存在するが(例えば、特許文献6のように酵素を利用する方法)、現在のところ、大量安価に入手できる方法はほとんどなく、発明者らは鋭意研究を行った結果、異性化糖をアルカリ異性化するという、比較的単純な反応方法により、希少糖を約10質量%含有する希少糖含有異性化糖を安価に得ることに成功した。
本発明を完成させる過程において検討された希少糖含有異性化糖の糖組成のうち、同定されている希少糖は、D-プシコース0.5〜17質量%、D-アロース0.2〜10質量%であるほか、未同定の希少糖も存在しており、本発明にいうところの希少糖は、もちろん、これら未同定のものも包含する。また、希少糖含有異性化糖は、希少糖ではないが、D-マンノースを0.5〜40質量%含むことがわかっている。
【0014】
希少糖含有異性化糖は、D-グルコースおよびD-フラクトースの濃度が40質量%程度に減少するまで異性化反応を進めたものの場合、褐変化が著しく、産業上の利用は難しいため、D-グルコースおよびD-フラクトース以外の糖の含有率は、60質量%未満であることが望ましい。
すなわち、本発明の呈味改良組成物は、異性化糖及び希少糖を、異性化糖100質量部に対して希少糖1〜150質量部の割合で含むことが望ましい。好ましくは希少糖5〜150質量部の割合、より好ましくは8〜100質量部の割合で含むことが望ましい。
本発明の呈味改良組成物は、高甘味度甘味料に基づく苦味、渋味または後味等といった嫌味を有する経口的に摂取される高甘味度甘味料を含有する可食性の組成物の呈味を改善するのに有効に用いることができる。
【0015】
本発明の呈味改良組成物は、渋味、苦味、または後引き感といった後味等の独特の異味を有する高甘味度甘味料に対して、これらの独特の異味を低減もしくは抑制することにより呈味を改良する効果に優れている。本発明の呈味改良組成物は、高甘味度甘味料に対して上記の効果を発揮することができる。本発明の呈味改良組成物は、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース(登録商標)、ステビア甘味料、サッカリン、サッカリン酸ナトリウム、カンゾウ抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種である高甘味度甘味料が有する異味(苦味)の発現抑制効果に優れており、これらの高甘味度甘味料の呈味改良のために好適に用いることができる。
なお、本発明の呈味改良組成物が対象とする高甘味度甘味料は、高甘味度甘味料1種単独からなるものであっても、また2種以上の異なる高甘味度甘味料を任意に組み合わせてなるものであってもよい。組み合わせの例は、特に制限されない。
本発明の呈味改良組成物は、本発明の効果を阻害しない限度において、上記成分に加えて香料;色素;酸化防止剤;保存料;ビタミン類;乳酸カルシウムやグルコン酸カルシウム等のカルシウム、鉄、マグネシウム、リン、カリウム、ナトリウム等のミネラル類;などの食品添加物や経口投与用もしくは口腔用の医薬品または医薬部外品のための添加剤を含むこともできる。
また本発明の呈味改良組成物は、その形態を特に問うものではなく、粉末状、顆粒状、固形状(錠剤、丸剤など)、または液状等のいずれの形態を有していてもよい。
【0016】
砂糖の数百倍の甘味をもつ高甘味度甘味料の用い方は、飲食品の製造に際して使用する砂糖や異性化糖の一部および大部分を置き換えることにより、低カロリーの飲食品を得る用い方である。本発明における方法の対象となる可食性製品、特に飲料および冷菓は、少量でも上記高甘味度甘味料を含んでいればよく、一般的に、これら高甘味度甘味料のもつ異味が問題となることから、多量に使用する場面はなく、その使用量は、使用する高甘味度甘味料の甘味度によるが、せいぜい製品に対して0.001〜0.1質量%程度の範囲である。
【0017】
本発明の高甘味度甘味料を含有する可食性製品の呈味改良方法は、異性化糖及び希少糖と高甘味度甘味料を、異性化糖100質量部に対して希少糖1〜150質量部の割合、好ましくは希少糖5〜150質量部の割合、より好ましくは8〜100質量部の割合で併用することを特徴とする。
すなわち、本発明の呈味改良組成物は、高甘味度甘味料を含有する可食性製品の呈味を改良する目的で、当該可食性製品に添加配合して用いたり、また可食性製品の製造に際して、可食性製品の原料成分とともに成分の一つとして用いることができる。またこの場合の配合割合も、上記の割合を基準にして同様に調整決定することができる。
【0018】
本発明は、高甘味度甘味料の有する独特の異味を改良する方法、特に、低カロリーであることを特徴とする飲料または冷菓の製造に際して、希少糖含有異性化糖を利用することにより、高甘味度甘味料の有する独特の異味を改良する方法に関する。本発明における希少糖含有異性化糖とは、希少糖を含有する異性化糖のことである。本発明の高甘味度甘味料を含有する可食性製品の呈味改良方法は、可食性製品の成分として高甘味度甘味料と異性化糖及び希少糖とを併用することによって実施することができる。これらの成分を併用するための具体的な方法は特に制限されず、例えば高甘味度甘味料を含有する可食性製品に異性化糖及び希少糖を添加配合する方法、また、可食性製品の製造に際して、高甘味度甘味料やその他の原料成分に加えて、異性化糖及び希少糖を配合して可食性製品を調製する方法などを例示することができる。なお、ここで可食性製品と組み合わせて用いられる異性化糖及び希少糖は、各々別個に用いても良いし、また前述する本発明の呈味改良組成物の態様で用いることもできる。
本発明が対象とする高甘味度甘味料含有可食性製品に用いられる高甘味度甘味料としては、上記したように低カロリーを謳う目的で、可食性製品中の砂糖や異性化糖の一部またはほとんどを高甘味度甘味料に置き換えるものを広く挙げることができ、具体例についても渋味、苦味、または後引き感といった後味等の嫌味を有する高甘味度甘味料であり、具体的には、アスパルテーム、アセスルファムK、アリテーム、カンゾウ抽出物、スクラロース(登録商標)、ステビア甘味料、ソーマチン、サッカリン、サッカリン酸ナトリウム及びネオテームを挙げることができる。好ましくは、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース(登録商標)、ステビア甘味料、サッカリン、サッカリン酸ナトリウム、カンゾウ抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種であるである。
【0019】
本発明が対象とする可食性製品は、高甘味度甘味料を1種または2種以上含有する可食性のもの(飲食品)であれば特に制限されない。ここで飲食品としては、特に制限はされないが、好適には、果物や野菜由来の果汁、搾汁等を含む果実ジュース、果粒入り果実ジュース、果実飲料、果汁飲料、果汁入り飲料、野菜ジュース、野菜入りジュース、果実・野菜入りミックスジュース;コーラ、ジンジャエール、サイダー等の炭酸飲料;スポーツドリンク、ニアウォーター等の清涼飲料水;コーヒー、ココア、紅茶、抹茶、緑茶、ウーロン茶等の茶系或いは嗜好性飲料;乳飲料、乳成分入りコーヒー、カフェオレ、ミルクティー、抹茶ミルク、フルーツ乳飲料、ドリンクヨーグルト、乳酸菌飲料等の乳成分を含有する飲料などの飲料一般;ヨーグルト、ゼリー、ドリンクゼリー、プディング、ババロア、ブラマンジェ及びムース等のデザート類(おやつや食後に食される甘味が付与された食品);アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス等のアイスクリーム類(乳製品に甘味料やその他各種原料を加えて攪拌凍結させた食品)、シャーベット、かち割り氷等の氷菓(糖液にその他各種原料を加えて攪拌凍結させた食品)などの冷菓;ケーキ、クラッカー、ビスケットや饅頭等といった洋菓子及び和菓子を含む焼菓子や蒸菓子等の菓子類;米菓、スナック類;チューインガム、ハードキャンデー、ヌガーキャンデー、ゼリービーンズ等を含む糖菓一般;調理甘味料、卓上甘味料などの甘味料;果実フレーバーソースやチョコレートソースを含むソース類;バタークリーム、フラワーペーストやホイップクリーム等のクリーム類;イチゴジャムやマーマレード等のジャム;菓子パン等を含むパン;焼き肉、焼き鳥、鰻蒲焼き等に用いられるタレ、トマトケチャップ、ソース、麺つゆ等の調味料一般;蒲鉾等の練り製品、ソーセージ等の食肉加工品、レトルト食品、漬け物、佃煮、珍味、惣菜並びに冷凍食品等を含む農畜水産加工品を広く例示することができる。中でも好ましい食品としては飲料、卓上甘味料、デザート、冷菓を挙げることができる。特に好ましくは飲料および冷菓である。特に、本発明によれば、高甘味度甘味料を含有する飲料に対して、該高甘味度甘味料に起因して生じる渋味、苦味、後引き感といった後味等の嫌味を有意に抑制して、飲料の呈味を良好に改良することができる。
【0020】
本発明の呈味改良組成物は、異性化糖を構成成分としていること、その組成物を、低カロリーを謳う目的で、飲食品中の砂糖や異性化糖の一部またはほとんどを高甘味度甘味料に置き換えるがゆえに発現する異味を、異性化糖及び希少糖を加えて改良することができることから、可食性製品に配合する異性化糖及び希少糖の割合は、最終製品中において求められる甘味の強さや質に応じて適宜調節すればよく、特に制限されない。よって、本発明の呈味改良組成物を利用する場合には、製品中の高甘味度甘味料の含量に対して本発明の呈味改良組成物(異性化糖および希少糖、好ましくは希少糖含有異性化糖)の添加量を特に細かに考慮する必要はない。最終製品中において、希少糖の下限の添加量が少なくとも0.14質量%〜0.4質量%になるように設定して、本発明の呈味改良組成物を添加すれば良い。
【0021】
本発明の呈味改良方法によって得られる可食性製品は、結果的に高甘味度甘味料と異性化糖及び希少糖を含有するものであればよく、各成分の配合時期や順序に特に制限されない。また、可食性製品には、必要に応じて、本発明の効果に影響を与えない範囲で、香料;色素;酸化防止剤;保存料;ビタミン類;乳酸カルシウムやグルコン酸カルシウム等のカルシウム、鉄、マグネシウム、リン、カリウム、ナトリウム等のミネラル類などの食品、医薬品または医薬部外品の分野で許容されている添加剤が添加されていてもよい。
本発明の高甘味度甘味料含有可食性製品の呈味改良方法によると、高甘味甘味料に起因する渋味、苦味または後味等の独特の異味を低減、もしくはその発現を抑制し、呈味が改良された、良好な味を有する可食性製品を提供することができる。
【0022】
本発明の可食性製品は、高甘味度甘味料と異性化糖及び希少糖を含有することを特徴とする。可食性製品として、飲料および冷菓の例で説明する。
本発明における、高甘味度甘味料に由来する異味が改良された飲料および冷菓は、製品中に少なくともD-アロースおよび/またはD-プシコースを適量含んでいることを要件とするが、品質に悪影響を及ぼさない範囲内で、D-アロースおよびD-プシコース以外の希少糖や糖質等を含ませることにより、より良い味質等をもつ飲料および冷菓を得ることができる。希少糖含有異性化糖を使用する場合、アルカリ異性化による反応条件等の違いにより、生成する希少糖の種類や量が異なることから、反応条件の違いを利用した味質の改良を行うことが可能である。
【0023】
本発明の高甘味度甘味料に由来する異味が改良された飲料および冷菓において、その味質を改良させるために必要な希少糖含有異性化糖の量は、所期の効果を得ることができるのであれば特に制限はないが、飲料および冷菓の種類に応じて、好ましい濃度が存在する。
【0024】
例えば、炭酸飲料やスポーツ飲料のように、もともと異性化糖を多く添加する飲料の場合には、その添加する異性化糖の一部または全部を希少糖含有異性化糖に置き換え、本発明の呈味改良組成物を、最終製品中に、希少糖が0.14質量%〜0.4質量%より多くなるように設定して添加することにより、効果的にその味質改良効果を得ることができる。
【0025】
一方、コーヒー飲料のように、場合によっては異性化糖をさほど添加しない飲料の場合は、その異性化糖のできるだけすべてを希少糖含有異性化糖に置き換え、製品中における希少糖含有量が、上記範囲内になるよう設定して添加することにより、効果的にその味質改良効果を得ることができるのだが、コーヒー飲料に本発明を利用した場合、高甘味度甘味料に由来する異味を改良する効果が得られるだけでなく、コーヒーが本来有しているコク味や深みを損なうことなく、コーヒー飲料特有の、酸化により発生する好ましくないエグ味等の異味を和らげる効果があることは、特筆するに値する。
【0026】
一方、冷菓においても、味質が爽やかであり、比較的安価に調達できる甘味料として、異性化糖が多く使用されている。ただし異性化糖は単糖で構成されるため、使用量が多いと冷菓が融けやすいものになったり、「のどやけ」と呼ばれる風味異常を起こすため、冷菓における配合量は3〜5%に抑える場合が多い。この異性化糖のうち30〜100質量%を希少糖含有異性化糖に置き換える、すなわち、最終製品に対して、希少糖が0.15質量%以上、好ましくは、希少糖が0.15〜0.4質量%より多くなるように設定して添加することにより、飲料の場合と同様に、効果的に高甘味度甘味料に由来する異味(苦味)を改良することができる。
【0027】
高甘味度甘味料は、砂糖の数倍から数千倍の甘味を持つ甘味料であり、例えば、アスパルテーム、ネオテーム、アリテーム、ステビア(ステビア抽出物およびステビアを酵素処理してブドウ糖を付加した酵素処理ステビア等のステビア誘導体およびステビアの甘味成分の中で最も甘味質のよいレバウディオサイドAを含む)、カンゾウ抽出物、スクラロース(登録商標)、アセスルファムK、サッカリンおよびサッカリン酸ナトリウム、サイクラミン酸ナトリウム、ズルチン、タウマチン、モネリンなどが挙げられるが、このなかでも、アスパルテーム、ステビア(ステビア抽出物およびステビアを酵素処理してブドウ糖を付加した酵素処理ステビア等のステビア誘導体およびステビアの甘味成分の中で最も甘味質のよいレバウディオサイドAを含む)、カンゾウ抽出物、スクラロース(登録商標)、アセスルファムK、サッカリンおよびサッカリン酸ナトリウムのうち1種類以上を含む飲料および冷菓において、本発明の効果は発揮される。
【0028】
本発明における方法の対象となる飲料および冷菓は、少量でも上記高甘味度甘味料を含んでいればよく、一般的に、これら高甘味度甘味料のもつ異味が問題となることから、多量に使用する場面はなく、その使用量は、使用する高甘味度甘味料の甘味度によるが、せいぜい製品に対して0.001〜0.1質量%程度の範囲である。よって、本発明を利用する場合には、製品中の高甘味度甘味料の含量に対して希少糖の添加量を特に細かに考慮する必要はなく、前述のとおり、飲料および冷菓の最終製品において、希少糖が0.14質量%〜0.4質量%より多くなるように設定して本発明の呈味改良組成物を添加することにより、効果的にその味質改良効果を得ることができる。特に、高甘味度甘味料を含有する飲料に対して、該高甘味度甘味料に起因して生じる渋味、苦味、後引き感といった後味等の独特の異味を有意に抑制して、飲料の呈味を良好に改良することができる。
【0029】
本発明における飲料は、常法により調製でき、例えば、各成分を規定量以下の精製水にて混合・溶解し、規定量に容量調整し、必要に応じて濾過、滅菌処理、炭酸充填などを施すことにより調整されるが、希少糖含有異性化糖の添加時期は、最終製品を得るまでの過程のいずれのタイミングにおいてでもよいし、最終製品に後から添加する手法でもよい。
また、その飲料の種類としては、清涼飲料、健康飲料、果汁飲料、栄養補給飲料など食品分野の各種飲料、ドリンク剤やシロップ剤などの医薬品または医薬部外品としての各種飲料が挙げられ、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、各種ビタミンおよびその塩類、アミノ酸およびその塩類、植物抽出物、ミネラル、澱粉、加工澱粉、糖アルコール、デキストリン、食物繊維、難消化性デキストリン、保存剤、着色剤など、飲料一般に使用される成分を配合することもできる。
【0030】
本発明における冷菓は、食品衛生法にもとづく「乳および乳製品の成分規格等に関する省令」によって定められているアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、および食品衛生法にもとづく厚生省告示「食品、添加物等の規格基準」により規定されている氷菓のことをいい、いずれも定法により調整することができ、希少糖含有異性化糖の添加時期は、何れのタイミングにおいてでもよく、最終製品に後から添加する手法でもよい。
【0031】
このようにして、本発明の方法により得られる飲料および冷菓は、低カロリーを目的として添加される高甘味度甘味料に起因する異味を改良できるため、健康と嗜好性が両立されるという、産業上利用上、非常に高い価値を有するものとなる。
【0032】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。また、特に断りのない限り、%は質量%を示す。
【実施例】
【0033】
実施例に用いた希少糖を含む異性化糖は、次の方法で作成した。
まず、市販異性化糖(果糖42%)を、0.1M NaOH溶液にて30%(w/v)となるよう調整し、温度60℃、SV(Space velocity:流量(l)/時間(h)/樹脂量(l))1で、充填後の強塩基性イオン交換樹脂に送液した (樹脂:アンバーライトIRA900J[OH])。次に、溶出した糖液を定法に従って、イオン交換樹脂にて精製、濃縮して希少糖を含む異性化糖を得た。
この時にカラムから溶出してくる経時的な反応液をサンプリング後、HPLC(検出器;RI、カラム;三菱化成 MCI GEL CK 08EC)にて分析したところ、そのピーク面積から算出した値は、D−グルコース約44%、D−フラクトース約32%、D−プシコース約6%、D−アロース約1.5%、その他希少糖単糖約6%であった。
【0034】
[実施例1〜5]
〔コーラ飲料の実施例〕
下の表1の配合に従い、コーラ飲料を調製した。
(糖に由来する固形分(Bx)が、飲料100ml中に3.5gとなるように設定した。)
【0035】
【表1】

【0036】
上記配合で混合して得られた比較例1〜5、および実施例1〜5について、パネラー10名により、試料温度約15℃、室温約26℃における官能評価を行った結果を、下の表2に示す。各パネラーは、それぞれ、濃厚感(甘味を中心とした、口中に広がる味の厚み)、後味(異味、特に苦味のなさ)、および甘味バランス(口中で先に感じる甘味と、後に残る甘味の全体的な甘味のバランス)について、非常に良好な場合を5点、良好な場合を4点、やや良好な場合を3点、やや不良な場合を2点、不良な場合を1点として点数付けを行い、これらの平均点をそれぞれ算出して表中に示した。ただし、比較例1については、全ての評価項目について、あらかじめ2点であると設定し(対照区)、これを参考にして、それ以外のものの評価を行った。この平均点の合計が10.0点以上である場合、高甘味度甘味料由来の異味が改良され、味質の全体的なバランスが好ましいものであると判断した。
【0037】
【表2】

【0038】
比較例4の官能評価の結果より、異性化糖の一部をD-プシコース0.9%に置き換えることで、濃厚感、後味、甘味バランスの何れもが改善されることが確認され、異性化糖の一部または全部を希少糖含有異性化糖に置き換えることでも、濃厚感、後味、甘味バランスの何れもが良好となることがわかった(実施例2〜5)。実施例2〜5におけるD-プシコース含有量、あるいはD-プシコースとD-アロースとの合計含有量は、何れも、味質が良好であると判定された比較例4におけるD-プシコース含有量よりも少なく、この希少糖含有異性化糖の高甘味度甘味料の後味の改善効果は、D-プシコース単独の効果によるものではなく、D-アロース、あるいは、それ以外の希少糖との相乗的な効果によるものと考えられた。
そこで、この希少糖含有異性化糖の効果が、D-プシコースとD-アロースの相乗効果だけに起因するものか、あるいはそれ以外の希少糖との相乗効果に起因するものなのかを確認するため、比較例2のD-プシコース含量と同量となるよう、かつ、実施例4におけるD-プシコースとD-アロースの合計含有量とほぼ同量となるようにコーラを作成し(比較例5)、官能評価を行った。その結果、この実施例4は、比較例2よりもその後味や甘味バランスは良好であり、D-プシコースとD-アロースを併用することによる一定の相乗効果が確認できた。しかし、実施例4で得られた良好な後味や甘味バランスには及ばず、D‐プシコースと、D‐アロースおよびそれ以外に含有される希少糖等による相乗的な効果が存在することが推察された。
【0039】
[実施例6〜10]
〔サイダーの実施例〕
下記の表3の配合に従いサイダーを調製した。
(糖に由来する固形分(Bx)が、飲料100ml中に3.5gとなるように設定した。)
【0040】
【表3】

【0041】
上記配合で混合して得られた比較例6〜10、および実施例6〜10について、パネラー10名により、試料温度約15℃、室温約26℃における官能評価を行った結果を、下の表4に示す。各パネラーは、それぞれ、濃厚感(甘味を中心とした、口中に広がる味の厚み)、後味(異味、特に苦味のなさ)、および甘味バランス(口中で先に感じる甘味と、後に残る甘味の全体的な甘味のバランス)について、非常に良好な場合を5点、良好な場合を4点、やや良好な場合を3点、やや不良な場合を2点、不良な場合を1点として点数付けを行い、これらの平均点をそれぞれ算出して表中に示した。ただし、比較例6については、全ての評価項目について、あらかじめ2点であると設定し、これを参考にして、それ以外のものの評価を行った。この平均点の合計が10.0点以上である場合、高甘味度甘味料由来の異味が改良され、味質の全体的なバランスが好ましいものであると判断した。
【0042】
【表4】

【0043】
比較例9の官能評価の結果より、異性化糖の一部をD-プシコース0.9%に置き換えることで、濃厚感、後味、甘味バランスの何れもが改善されることが確認され、異性化糖の一部または全部を希少糖含有異性化糖に置き換えることでも、濃厚感、後味、甘味バランスの何れもが良好となることがわかった(実施例7〜10)。実施例7〜10におけるD-プシコース含有量、あるいはD-プシコースとD-アロースとの合計含有量は、何れも、味質が良好であると判定された比較例9におけるD-プシコース含有量よりも少なく、この希少糖含有異性化糖の高甘味度甘味料の後味の改善効果は、D-プシコース単独の効果によるものではなく、D-アロース、あるいは、それ以外の希少糖との相乗的な効果によるものと考えられた。
そこで、この希少糖含有異性化糖の効果が、D-プシコースとD-アロースの相乗効果だけによるものか、あるいはそれ以外の希少糖との相乗効果によるものなのかを確認するため、比較例2のD-プシコース含量と同量となるよう、かつ、実施例9におけるD-プシコースとD-アロースの合計含有量と同等となるようにコーラを作成し(比較例10)、官能評価を行った。その結果、比較例7よりもその後味や甘味バランスは良好であり、D-プシコースとD-アロースを併用することによる一定の相乗効果が確認できた。しかし、実施例9で得られた良好な後味や甘味バランスには及ばず、D‐プシコースと、D‐アロースおよびそれ以外に含有される希少糖等による相乗的な効果が存在することが推察された。
【0044】
[実施例11〜15]
下の表5の配合に従い、ラクトアイスを調製した。
【0045】
【表5】

【0046】
上記配合で混合して得られた比較例11〜14、および実施例11〜14について、パネラー10名により、試料温度約−10℃、室温約26℃における官能評価を行った結果を、下の表6に示す。各パネラーは、それぞれ、濃厚感(甘味を中心とした、口中に広がる味の厚み)、後味(異味、特に苦味のなさ)、および甘味バランス(口中で先に感じる甘味と後に残る甘味の全体的な甘味のバランス)について、非常に良好な場合を5点、良好な場合を4点、やや良好な場合を3点、やや不良な場合を2点、不良な場合を1点として点数付けを行い、これらの平均点をそれぞれ算出して表中に示した。ただし、比較例11については、全ての評価項目について、あらかじめ2点であると設定し、これを参考にして、それ以外のものの評価を行った。この平均点の合計が10.0点以上である場合、高甘味度甘味料由来の異味が改良され、味質の全体的なバランスが好ましいものであると判断した。
【0047】
【表6】

【0048】
実施例11〜14は、比較例11、12と比較すると、濃厚感、後味、甘味バランスとも良好であった。すなわち、希少糖含有異性化糖は、ステビアの口中に後をひく苦味を改良する効果だけでなく、アスパルテームとアセスルファムKの併用をもってしても改善しきれない甘味バランスの悪さを、良好な甘味バランスのものとすることができると同時に、アセスルファムKに由来する後味に残る苦味もマスキングできることがわかった。
また、低温(5℃以下)で飲食物を飲食する場合、常温に比べ、甘味を感じにくくなる傾向にあることころ、本実施例においては、「比較例に比して、甘味を強く感じる」とのパネラーによる追加コメントが多くあり、飲食物中の異性化糖の一部を希少糖含有異性化糖に置き換えるだけで、低温で飲食する飲食物の甘味度を上げることができ、つまりは、異性化糖の使用量を抑えることができるという効果も期待することができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
ダイエット甘味料をはじめとして多くの用途(例えば肥満などの場合のカロリー摂取制限、糖尿病などの疾患により血糖値上昇抑制等)に使用され、「低カロリー甘味料」としての特徴を持つ稀少糖、特にD−プシコースおよび/またはD−アロースを含有する異性化糖の新しい用途発明〔従来の低カロリー飲食品、特に、添加されるべき砂糖や異性化糖の一部あるいはほとんどを高甘味度甘味料に置き換えることで低カロリーを実現した可食性製品(飲食品)の有する独特の異味(特に口中に残る苦味)を改良する呈味改良組成物〕を提供するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異性化糖及び希少糖を、異性化糖100質量部に対して希少糖1〜150質量部の割合で含む、高甘味度甘味料に対する呈味改良組成物。
【請求項2】
異性化糖及び希少糖が、D-グルコース、D-フラクトース、または異性化糖のうち1種、あるいは2種以上を0.005mol/l以上のアルカリにより異性化することで得られる、D-グルコースおよびD-フラクトース以外の糖の含有率が60質量%未満の希少糖含有異性化糖であることを特徴とする、請求項1に記載の高甘味度甘味料に対する呈味改良組成物。
【請求項3】
希少糖が、少なくともD-プシコースおよび/またはD-アロースであることを特徴とする、請求項1または2に記載の高甘味度甘味料に対する呈味改良組成物。
【請求項4】
高甘味度甘味料が、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース(登録商標)、ステビア甘味料、サッカリン、サッカリン酸ナトリウム、カンゾウ抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高甘味度甘味料に対する呈味改良組成物。
【請求項5】
異性化糖及び希少糖と高甘味度甘味料を、異性化糖100質量部に対して希少糖1〜150質量部の割合で併用する、高甘味度甘味料を含有する可食性製品の呈味改良方法。
【請求項6】
異性化糖及び希少糖が、D-グルコース、D-フラクトース、または異性化糖のうち1種、あるいは2種以上を0.005mol/l以上のアルカリにより異性化することで得られる、D-グルコースおよびD-フラクトース以外の糖の含有率が60質量%未満の希少糖含有異性化糖であることを特徴とする、請求項6に記載の高甘味度甘味料を含有する可食性製品の呈味改良方法。
【請求項7】
希少糖が、少なくともD-プシコースおよび/またはD-アロースであることを特徴とする、請求項6または7に記載の高甘味度甘味料を含有する可食性製品の呈味改良方法。
【請求項8】
高甘味度甘味料が、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース(登録商標)、ステビア甘味料、サッカリン、サッカリン酸ナトリウム、カンゾウ抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項5ないし7のいずれか1項に記載の高甘味度甘味料を含有する可食性製品の呈味改良方法。
【請求項9】
可食性製品が、卓上甘味料、飲料、デザート、及び冷菓よりなる群から選択されるものである請求項5ないし8のいずれか1項に記載の高甘味度甘味料を含有する可食性製品の呈味改良方法。
【請求項10】
異性化糖及び希少糖と高甘味度甘味料を、異性化糖100質量部に対して希少糖1〜150質量部の割合で含有する、高甘味度甘味料の呈味が改良された可食性製品。
【請求項11】
異性化糖及び希少糖が、D-グルコース、D-フラクトース、または異性化糖のうち1種、あるいは2種以上を0.005mol/l以上のアルカリにより異性化することで得られる、D-グルコースおよびD-フラクトース以外の糖の含有率が60質量%未満の希少糖含有異性化糖であることを特徴とする、請求項10に記載の高甘味度甘味料の呈味が改良された可食性製品。
【請求項12】
希少糖が、少なくともD-プシコースおよび/またはD-アロースであることを特徴とする、請求項10または11に記載の高甘味度甘味料の呈味が改良された可食性製品。
【請求項13】
高甘味度甘味料が、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース(登録商標)、ステビア甘味料、サッカリン、サッカリン酸ナトリウム、カンゾウ抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項10ないし12のいずれか1項に記載の可食性製品。
【請求項14】
可食性製品が、卓上甘味料、飲料、デザート、及び冷菓よりなる群から選択されるものである請求項10ないし13のいずれか1項に記載の可食性製品。
【請求項15】
低カロリーであることを特徴とする、請求項10ないし14のいずれか1項に記載の可食性製品。

【公開番号】特開2012−70708(P2012−70708A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219763(P2010−219763)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000188227)松谷化学工業株式会社 (102)
【Fターム(参考)】