説明

高疎水性コーティング

本発明は、含有量が、0.01重量%〜50重量%であり、質量フラクタル次元Dが、2.8以下である微粒子と、液体と、粒子100重量部当たりの含有量が、101重量部〜1,000重量部である弾性接着剤と、を含む懸濁液に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁液及びコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ又はアニオン性高分子電解質の添加によって、アニオンを用いて静電的に安定化させた既知の粒子水分散液、金属酸化物水分散液、及びシリカ水分散液が存在する。別の既知の形態としては、酸又はカチオン性高分子電解質の添加によって、カチオンを用いて安定化させた粒子水分散液、金属酸化物水分散液、及びシリカ水分散液である。
【0003】
成型物又はコーティングの形態に粒子分散液又はシリカ分散液を乾燥させる場合、生成される構造は、機械的に不安定であり、得られる粒子、シリカケーク又はシリカ体は、機械的負荷によって崩壊又は分解する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、当該技術分野の状況を改善することであり、具体的には、乾燥により粒子分散液又はシリカ分散液から成型物又はコーティングを生成して、機械的に安定な構造を得ることであり、換言すれば、機械的負荷によって崩壊又は分解しない粒子、シリカケーク、又はシリカ体を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明を用いて上記目的を達成する。
【0006】
本発明は、
含有量が、0.01重量%〜50重量%であり、質量フラクタル次元Dが2.8以下である微粒子と、
液体と、
粒子100重量部当たりの含有量が、101重量部〜1,000重量部である弾性接着剤と、
を含む懸濁液を提供する。
【0007】
本発明の好ましい懸濁液は、以下の通りである:
懸濁液の総重量に対する含有量が、0.01重量%〜50重量%であり、好ましくは1重量%〜30重量%であり、より好ましくは2重量%〜15重量%である微粒子と、
液体と、
粒子100重量部当たりの含有量が、好ましくは101重量部〜1,000重量部であり、より好ましくは101重量部〜500重量部であり、更に好ましくは101重量部〜400重量部であり、特に好ましくは101重量部〜300重量部の量であり、好ましくは反応性オリゴマー、反応性ポリマー、又は架橋系等の弾性接着剤と、
を含む本発明の懸濁液。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、一実施形態における本発明の親水性粒子を用いたコーティングの写真を示す。
【図2】図2は、一実施形態における本発明の疎水性粒子を用いたコーティングの写真を示す。
【図3】図3は、一実施形態における本発明の懸濁液の写真を示す。
【図4】図4は、一実施形態における本発明の懸濁液の比較物の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
液体:
本発明で用いられる液体は、純粋な形態において、好ましくは25℃で100mPa・s未満、より好ましくは10mPa・s未満、特に好ましくは2mPa・s未満の粘度を有する。
【0010】
前記液体としては、水;アルコール(例えば、メタノール、エタノール、又はイソプロパノール等)等のプロトン性溶媒;ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド等)等の非プロトン性極性溶媒;並びにアルカン(例えば、シクロヘキサン、デカン等)、ベンジン(例えば、軽質ベンジン(light benzine)、洗浄用ベンジン等)、又は低沸点炭化水素及び高沸点炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等)等の非極性溶媒などが好ましい。
これらの中でも、沸点が、150℃未満、より好ましくは120℃未満である液体が好ましい。
【0011】
前記液体としては、蒸発エンタルピーが、55kJ/mol未満、より好ましくは45kJ/mol未満である液体が好ましい。特に好ましい液体としては、例えば、プロトン性及び極性有機溶媒であり、その中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、炭化水素、及びこれらの混合物などが好ましい。
【0012】
前記液体の特に好ましい形態としては、水が有利である。
【0013】
粒子:
前記粒子としては、100μm未満の平均直径を有する粒子が好ましい。
【0014】
本発明で用いられる粒子の平均直径としては、好ましくは10nm超、より好ましくは10nm〜100μm、更に好ましくは50nm〜10μm、特に好ましくは100nm〜1,000nm、特に好ましくは100nm〜350nmである。前記粒子としては、純粋な粒径に加えて、任意の所望の混合比及び粒径を用いてもよい。
【0015】
本発明の粒子としては、周囲雰囲気圧下、換言すれば、900hPa〜1,100hPaで、室温にて固体である粒子が好ましい。
【0016】
前記粒子としては、水、又は本発明の懸濁液を調製するために用いることができる他の溶媒に対して不溶性であるか、又は溶解度が低いことが好ましい。
【0017】
本発明で用いられる粒子のモル質量としては、好ましくは10,000g/mol超、より好ましくは50,000g/mol〜100,000,000g/mol、特に好ましくは100,000g/mol〜10,000,000g/molであり、前記モル質量としては、目的に応じて、静的光散乱を用いて測定されることが好ましい。
【0018】
本発明で用いられる粒子のBET比表面積としては、好ましくは1m/g〜500m/g、より好ましくは20m/g〜300m/gである。BET比表面積は、既知の方法により、好ましくはドイツ工業規格DIN66131及びDIN66132に従って測定される。
【0019】
本発明で用いられる粒子は、含有量が50重量%未満の炭素を有することが好ましい。
【0020】
前記粒子としては、1以上のモース硬度を有することが好ましい。本発明で用いられる粒子は、4超のモース硬度を有することが特に好ましい。
【0021】
粒子は、好ましくは、シリコーン樹脂(例えば、メチルシリコーン樹脂等)、エポキシ樹脂(例えば、アクリル樹脂、例えば、ポリメチルメタクリレート等)等の有機樹脂;ポリオレフィン(例えば、ポリスチレン等)等のポリマー;金属コロイド(例えば、銀コロイド等);金属酸化物、例えば、第II主族の酸化物(例えば、酸化マグネシウム等)、第III主族の酸化物(例えば、酸化アルミニウム等)、第IV主族の酸化物(例えば、二酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム等)、第V主族の酸化物、遷移族金属の酸化物(例えば、二酸化チタン(IV)、酸化ジルコニウム(IV)、酸化ハフニウム(IV)、酸化亜鉛、酸化鉄(例えば、酸化鉄(II)及び酸化鉄(III)等)、酸化マンガン等)、ランタニドの酸化物(例えば、酸化セシウム(IV)等);これら酸化物の任意の所望の混合物、例えば、任意の所望の組成を有し、且つ好ましくは二酸化ケイ素含量が20重量%〜100重量%である二酸化ケイ素−酸化アルミニウム混合酸化物、任意の所望の組成を有し、且つ好ましくは二酸化ケイ素含量が20重量%〜100重量%である二酸化ケイ素−酸化鉄混合酸化物、任意の所望の組成を有し、且つ好ましくは二酸化ケイ素含量が20重量%〜100重量%である二酸化ケイ素−酸化チタン(IV)混合酸化物等;不溶性又は難溶性であるイオン性及び無機化合物、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化鉄(II)(例えば、黄鉄鉱等)、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム(例えば、フィロケイ酸アルミニウム等)、粘土(例えば、ベントナイト、モンモリロナイト、及びヘクトライト等)等(これらは有機的に修飾されていてもよい);微粉化鉱物及び微粉化岩;難溶性である非イオン性化合物、例えば、窒化ホウ素、窒化ケイ素、又は炭化ケイ素等が選択される。
【0022】
好ましい金属酸化物としては、10m/g超のBET比表面積を有する金属酸化物であり、例えば高温処理で生成される金属酸化物、火炎処理で生成されるヒュームド金属酸化物、プラズマ処理で生成される金属酸化物、高温壁反応器で生成される金属酸化物、及びレーザー法により生成される金属酸化物等が挙げられる。前記質量フラクタル次元が、2.8未満であるフラクトル凝集構造の金属酸化物が好ましい。好ましいシリカとしては、10m/g超のBET比表面積を有するシリカであり、より好ましくは、湿式化学的に生成されるシリカ(例えばシリカゾル及びシリカゲル等)、火炎処理で生成されるヒュームドシリカ、プラズマ処理で生成される二酸化ケイ素、高温壁反応器で生成される二酸化ケイ素、レーザー処理で生成される二酸化ケイ素等の合成シリカであり、特に好ましくは1,000℃超の好ましい温度で生成されるヒュームドシリカである。
前記ヒュームドシリカの粒子としては、周囲雰囲気圧下、換言すれば、900hPa〜1,100hPaで、温度25℃にて0.11mol/Lの電解質バックグラウンドを有するpH7.6の水に対する溶解度が、好ましくは0.3g/L未満、より好ましくは0.15g/L未満である。
前記ヒュームドシリカの粒子としては、好ましくは0.5nm〜1,000nm、より好ましくは5nm〜100nm、特に好ましくは10nm〜75nmの平均一次粒径d−PPを有する。この目的のために好適な測定方法としては、例えば、BET比表面積の測定及び物質の密度の測定[d−PP=6/(BET×物質の密度)]などが挙げられ、具体的には、電界放射モードの透過型電子顕微鏡又は高解像度走査型電子顕微鏡を用いて測定する方法、1MHz〜100MHzの測定範囲で超音波分光法を用いて測定する方法などが挙げられる。
【0023】
前記ヒュームドシリカの粒子としては、流体力学的相当直径として測定した際の平均二次構造、即ち凝集粒径d−aggrとしては、好ましくは50nm〜5,000nmであり、より好ましくは50nm〜500nmである。
【0024】
この目的のための好適な測定方法としては、例えば、0.01重量%超の固形分濃度を測定するための動的光散乱又は光子相関分光法等が挙げられ、この測定は、後方散乱として実施、及び/又は、多重散乱に対する相互相関を用いて補正することが可能である。
【0025】
前記ヒュームドシリカの粒子としては、幾何学的直径として測定したとき、平均三次粒径、即ち凝集粒径d−agglとしては、好ましくは100nm超である。
【0026】
この目的のための好適な測定方法は、例えば、フラウンホーファー光回折等のレーザー光回折である。
【0027】
前記ヒュームドシリカの粒子の比表面積としては、好ましくは1m/g〜1,000m/g、より好ましくは10m/g〜500m/g、非常に好ましくは30m/g〜300m/gである(DIN66131及び66132に基づいてBET法により測定する場合)。
【0028】
前記ヒュームドシリカの粒子の表面フラクタル次元Dとしては、好ましくは2.3以下、より好ましくは2.1以下、特に好ましくは1.95〜2.05であり、本明細書においては、表面フラクタル次元Dは、以下のように定義される:
粒子表面積は、粒子半径RのD乗に比例する。
【0029】
前記ヒュームドシリカの粒子の質量フラクタル次元Dとしては、好ましくは2.8以下、より好ましくは2.5以下、特に好ましくは1.9〜2.2である。本明細書においては、質量フラクタル次元Dは、以下のように定義される:
粒子質量は、粒子半径RのD乗に比例する。
【0030】
好ましくは、例えば火炎処理直後の新たに生成された親水性シリカ、一時的に保存されていた親水性シリカ、又は商業的に常法により既に包装されている親水性シリカを用いることも可能である。また、疎水化シリカ又はシリル化シリカ、例えば商業用シリカ等を用いることも可能である。
【0031】
好ましくは、60g/L未満のバルク密度を有する非圧縮シリカを用いることが可能であるが、60g/L超のバルク密度を有する圧縮シリカを用いてもよい。
【0032】
異なるシリカの混合物、例えば、異なるBET表面積を有するシリカの混合物、又は異なる疎水化度若しくはシリル化度を有するシリカの混合物が好ましい場合もある。
【0033】
前記粒子の更なる実施形態としては、疎水性粒子、好ましくは表面修飾金属酸化物であり、前記表面修飾金属酸化物は、好ましくは有機ケイ素化合物で修飾されているシリル化金属酸化物であり、より好ましくはシリル化ヒュームドシリカである。
【0034】
前記シリカのシリル化(疎水化)については、独国特許出願公開第102004063762号明細書に記載されている。
【0035】
前記疎水性粒子及び高疎水性粒子としては、質量フラクタル次元(D)が、3未満の粒子が好ましく、2.5未満の粒子がより好ましく、2.2未満の粒子が更に好ましく、2.1未満の粒子が特に好ましい。
【0036】
前記疎水性粒子及び高疎水性粒子としては、DIN EN ISO 787−11に基づく重装嵩密度(klopfdichten)が、500g/L未満の粒子が好ましく、250g/L未満の粒子がより好ましく、120g/L未満の粒子が更に好ましく、60g/L未満の粒子が特に好ましい。
【0037】
前記疎水性粒子としては、大きさが0.5μm〜100μmである凝集塊からなる疎水性粒子及び高疎水性粒子が好ましく、前記凝集塊としては、大きさが50nm〜500nmである凝集体で構成され、100nm〜250nmの水中流体力学直径を有する。
【0038】
前記疎水性粒子としては、例えば、反応性表面基を得るためにシリル化剤を用いて修飾されている上記粒子等、反応性表面基を有する微粒子が更に好ましい。
【0039】
前記親水性粒子に加えて、前記疎水性粒子及び前記高疎水性粒子も同様に使用することができる。
【0040】
図1から明らかであるように、前記親水性粒子は、前記疎水性粒子を用いた場合(図2を参照)よりも完成したコーティングのひび割れが遥かに少ないので、前記親水性粒子の使用が特に好ましい。
【0041】
前記粒子の懸濁液に対する含有量としては、0.01重量%〜50重量%であり、より好ましくは5重量%〜40重量%であり、特に好ましくは10重量%〜30重量%である。
【0042】
前記粒子のコーティング中に対する含有量としては、0.01重量%〜50重量%であり、好ましくは5重量%〜45重量%であり、より好ましくは20重量%〜30重量%である。
【0043】
弾性接着剤
前記弾性接着剤としては、前記粒子を弾性的に結合させ、上記の量で添加されることが好ましい。
【0044】
前記弾性接着剤としては、粒子と同じであっても異なっていてもよい。
【0045】
弾性接着剤の材料は、粒子の材料とは物理的組成が異なることが好ましい。前記弾性接着剤及び前記粒子の総重量に基づいて、5重量%超が好ましく、50重量%超がより好ましい。
【0046】
弾性接着剤の好ましい実施形態は、以下の通りである:
【0047】
A)反応性オリゴマー又はポリマー:
反応性オリゴマー若しくはポリマー自体と、又は粒子と、反応又は架橋することができる全てのポリマー、プレポリマー、反応性前駆体、結合剤として使用することができるポリマー。
成分(A)は、今日まで分散可能であった全てのモノマー、オリゴマー、及びポリマー化合物を含んでいてもよく、これら化合物は、直線状、分岐状、又は環状であってもよい。成分(A)は、好ましくは、水を除去した後、エラストマー及び/又は樹脂に変換することができる反応性化合物を含んでいてもよく、水を除去した後、未変化のまま存在する非反応性化合物を含んでいてもよい。
【0048】
成分(A)の例としては、好ましくは、オルガノ(ポリ)シラン、オルガノ(ポリ)シロキサン、オルガノ(ポリ)シラザン、及びオルガノ(ポリ)シルカルバン等の有機ケイ素化合物;例えば、シリル末端ポリイソブチレン(例えば、株式会社カネカ(日本)から商品名エピオンとして入手可能)等のポリオレフィン;ポリウレタン、例えば、ヒドロキシ含有ポリエステル、ヒドロキシ含有ポリエーテル、メチルジメトキシシリルプロピル末端ポリプロピレングリコール(例えば、株式会社カネカ(日本)から商品名「MS−ポリマー」として入手可能)、ヒドロキシ含有ポリアクリレート等のポリオール;脂肪族及び芳香族ポリイソシアネート等のポリイソシアネート、ポリオールを過剰のポリイソシアネートと反応させることにより調製されるイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマー、及びそのシリル末端誘導体(例えば、バイエル社(ドイツ)から商品名DESMOSEAL(登録商標)として入手可能);ビスフェノールA系エポキシド、グリシジルオキシ官能基を含むモノマー、オリゴマー、及びポリマー化合物(例えばビスフェノールA系ジグリシジルエーテル等)、エポキシ−ノボラック基材及び樹脂、エポキシアルキド樹脂、エポキシアクリレート、直線状アルキレンビスグリシジルエーテル及び脂環式グリシジルエーテル(例えば、3,4−エポキシシクロヘキシル3,4−エポキシシクロ−ヘキサンカルボキシレート等)等の脂肪族エポキシド、及び芳香族エポキシド(例えば、p−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、及びメチレンジアニリンのトリグリシジルエーテル)等の(ポリ)エポキシ化合物;ヘキサメチレンジアミン等の環状及び直線状アミン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、ビス(2−アミノアルキル)ポリアルキレンオキシド(例えば、ビス(2−アミノプロピル)ポリプロピレングリコール及びJeffamine等)等の芳香族アミン、(ポリ)アミドアミン、(ポリ)メルカプタン、(ポリ)カルボン酸、(ポリ)カルボン酸無水物等の(ポリ)アミン;グリシジルアクリレート等のアクリレート及びそのエステル、アルキルアクリレート及びそのエステル、メタクリレート及びそのエステル、ポリスルフィド形成ポリマー、及びチオプラスチック(例えば、東レ・ファインケミカル株式会社から商品名チオコールとして入手可能)等のポリスルフィドである。
【0049】
エポキシ化合物の例は、好ましくは
【化1】

等のアルキレンビスグリシジルエーテル、
【化2】

(式中、nは、好ましくは0〜10であり、より好ましくは0〜5である)等のビスフェノールA系ジグリシジルエーテルである。
【0050】
エポキシ−ノボラック樹脂の例は、式
【化3】

で表されるエポキシ−ノボラック樹脂、
【化4】

等の二官能性エポキシ化合物
【化5】

等の三官能性エポキシ化合物、
【化6】

等の四官能性エポキシ化合物である。
【0051】
本発明の分散液を調製するために用いられる成分(A)は、周囲雰囲気圧下、換言すれば、900hPa〜1,100hPaで、室温にて、液体又は固体である。
【0052】
本発明で用いられる成分(A)が液体である場合、目的に応じて適宜調製することができるが、25℃における粘度としては、好ましくは1mm/s〜10,000,000mm/s、より好ましくは100mm/s〜500,000mm/s、特に好ましくは1,000mm/s〜350,000mm/sである。
【0053】
成分(A)は、好ましくは、有機ケイ素化合物、より好ましくは、次の式で表される単位を含む有機ケイ素化合物を含む
(ORSiO(4−a−b−c)/2 (I)
式中、Rは、1個〜18個の炭素原子を有する同一又は異なるSiC結合炭化水素ラジカルを表し、任意で、ハロゲン原子、アミノ基、エーテル基、エステル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、又は(ポリ)グリコールラジカルにより置換されてもよく、後者は、オキシエチレン及び/又はオキシプロピレン単位で構成され、
は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、又は任意で、酸素原子が介在してもよい置換炭化水素ラジカルを表し、
Xは、同一であっても異なっていてもよく、ハロゲン原子、擬ハロゲンラジカル、Si−N−結合アミンラジカル、アミドラジカル、オキシムラジカル、アミンオキシラジカル、及びアシルオキシラジカルを表し、
aは、0、1、2、又は3、好ましくは1又は2であり、
bは、0、1、2、又は3、好ましくは0、1又は2であり、
cは、0、1、2、又は3、好ましくは0又は1、より好ましくは0であるが、
但し、a+b+cの合計は4以下である。
【0054】
本発明で成分(A)として用いられる有機ケイ素化合物としては、シラン、即ち、a+b+c=4である式(I)の化合物だけではなく、シロキサン、即ち、a+b+c≦3である式(I)の単位を含む化合物も含んでいてもよい。式(I)の単位を含む本発明で用いられる有機ケイ素化合物は、好ましくはオルガノポリシロキサン、より好ましくは式(I)の単位で構成されるオルガノポリシロキサンである。
【0055】
前記炭化水素ラジカルRの例としては、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、1−n−ブチル、2−n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチルラジカル等のアルキルラジカル;n−ヘキシルラジカル等のヘキシルラジカル;n−ヘプチルラジカル等のヘプチルラジカル;n−オクチルラジカル及びイソオクチルラジカル(例えば、2,2,4−トリメチルペンチルラジカル等)等のオクチルラジカル;n−ノニルラジカル等のノニルラジカル;n−デシルラジカル等のデシルラジカル;例えば、n−ドデシルラジカル等のドデシルラジカル;n−オクタデシルラジカル等のオクタデシルラジカル;ビニル及びアリルラジカル等のアルケニルラジカル;シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルラジカル、及びメチルシクロヘキシルラジカル等のシクロアルキルラジカル;フェニル、ナフチル、アントリル、及びフェナントリルラジカル等のアリールラジカル;o−、m−、p−トリルラジカル、キシリルラジカル、及びエチルフェニルラジカル等のアルカリールラジカル;ベンジルラジカル、アルファ−及びベータ−フェニルエチルラジカル等のアラルキルラジカル等が挙げられる。
【0056】
前記置換炭化水素ラジカルRの例としては、好ましくは、3−クロロプロピルラジカル、3,3,3−トリフルオロプロピルラジカル、クロロフェニルラジカル、ヘキサフルオロプロピルラジカル(例えば、1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチルラジカル等)等のハロゲン化ラジカル;2−(ペルフルオロヘキシル)エチルラジカル、1,1,2,2−テトラフルオロエチルオキシプロピルラジカル、1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチルオキシプロピルラジカル、ペルフルオロイソプロピルオキシエチルラジカル、ペルフルオロイソプロピルオキシプロピルラジカル;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルラジカル、3−アミノプロピルラジカル、3−(シクロヘキシルアミノ)プロピルラジカル、アミノメチルラジカル、シクロヘキシルアミノメチルラジカル、及びジエチルアミノメチルラジカル等のアミノ基により置換されているラジカル;3−メトキシプロピルラジカル、メトキシメチルラジカル、3−エトキシプロピルラジカル、及びアセトキシメチルラジカル等のエーテル官能性ラジカル;2−シアノエチルラジカル等のシアノ−官能性ラジカル;メタクリロイルオキシプロピルラジカル等のエステル官能性ラジカル;グリシジルオキシプロピルラジカル等のエポキシ−官能性ラジカル、及び3−メルカプトプロピルラジカル等の硫黄−官能性ラジカル等が挙げられる。
【0057】
好ましい前記ラジカルRは、1個〜10個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルであり、前記ラジカルRのうちのメチルラジカルは、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%である。
【0058】
前記ラジカルRの例としては、ラジカルRについて記載した例が挙げられる。
【0059】
好ましい前記ラジカルRは、水素原子、及び1個〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、より好ましくは水素原子、メチルラジカル、及びエチルラジカル、特に好ましくは水素原子である。
【0060】
前記Xの例としては、好ましくは、例えば、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、例えば−CN、−NCO、及び−OCN等の擬ハロゲン化物、例えばジエチルアミノ及びシクロヘキシルアミノラジカル等のアミンラジカル、例えばN−メチルアセトアミド及びベンズアミドラジカル等のアミドラジカル、例えばジエチルアミンオキシラジカル等のアミンオキシラジカル、並びに、例えばアセトキシラジカル等のアシルオキシラジカル等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
【0061】
成分(A)は、好ましくは、市販の物質を含み、及び/又は有機化学若しくは有機ケイ素化学で一般的な方法により調整することもできる。
【0062】
前記成分(A)に含まれる物質の好ましい例としては、双性イオン、イオン対、又は自身若しくは粒子とのイオン結合の一部となることができるポリマー又はオリゴマー等が挙げられる。かかる例は、(A)例えばM−OH等の−COOH又は酸性−OH(例えば、BOH、SiOH、GeOH、ZrOH基等)の強酸基又は弱酸基が粒子に結合しているものである場合、好ましくは、アミノ基(例えば、一級、二級、又は三級アミン等)を有するポリマー等の塩基性基を有するポリマー、例えば、直線状及び分岐アミノシロキサン、液体及び固体アミノシロキサン、アミノシロキサンポリマー、又はアミノシロキサン樹脂等のアミノシロキサン、例えば、25℃で500mPa・s〜5,000mPa・sの粘度を有し、且つアミン価が0.5〜10である、末端であるか又は鎖内でSi原子に結合しているガンマ−アミノプロピル基又はアルファ−アミノメチル基を有するポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
前記SiOH基を有する粒子と前記アミノポリシロキサンとの組み合わせが好ましく、前記ヒュームドシリカと前記アミノポリシロキサン又は前記アミノジメチルポリシロキサンとの組み合わせがより好ましい。
更なる好ましい例としては、シラン末端ポリマーである。その例としては、ポリウレタンを調製するために用いられる種類のシラン−末端ポリイソシアネート、ポリオール、(例えば、ポリアクリレートポリオール、ポリエステルポリオール、又はポリエーテルポリオール等)等が挙げられる。ポリアクリレートポリオールのシラン末端は、好ましくは、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリロイルオキシ官能性アルコキシシランとの共重合、又は好ましくはメタクリロイルオキシメチルトリメトキシシランとの共重合により得ることができる。
前記ポリイソシアネートのシラン末端としては、好ましくは、アミノ官能性アルコキシシラン、例えば、アミノプロピルトリメトキシシランとの反応、又は好ましくは、アミノメチルトリメトキシシランとの反応により得ることができる。
前記接着剤の懸濁液に対する含有量としては、0.01重量%〜50重量%が好ましく、5重量%〜40重量%がより好ましく、20重量%〜50重量%が特に好ましい。
【0063】
前記接着剤のコーティング中に対する含有量としては、好ましくは50重量%〜95重量%、より好ましくは55重量%〜85重量%、非常に好ましくは60重量%〜80重量%である。
【0064】
B)架橋系
前記架橋系としては、例えば、エポキシ樹脂及びエポキシエラストマー、ポリウレタン樹脂及びポリウレタンエラストマー、アクリレート、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリスルフィド、ポリアミド、またシリコーン樹脂及びゴム等の樹脂及びエラストマーを生成するために用いられる種類の樹脂及び硬化剤系などが挙げられる。好ましくはシリコーンエラストマーであり、特に好ましくはRTVシリコーンエラストマーであり、中でも縮合架橋若しくは付加架橋しているRTV−2シリコーンエラストマー、又は付加架橋若しくはラジカル過酸化的に架橋しているRTV1シリコーンエラストマーが特に好ましく、湿気硬化アミン架橋RTV1シリコーンエラストマーが特に好ましい。
【0065】
この変形は、コーティング材料の分野から得られる架橋系であり、例えば、脂肪油、短油、中油、及び長油アルキド樹脂、スタンド油、並びにこれらの組み合わせ、また、例えば、スチレン変性アルキド樹脂、アクリルエステル変性アルキド樹脂、シリコーン変性アルキド樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂、エポキシ樹脂変性アルキド樹脂等の変性アルキド樹脂、例えば、短油、中油、長油アルキド樹脂、スタンド油、及びこれらの組み合わせ等の酸化的乾燥フィルム形成結合剤、ポリエステル等が挙げられる。
化学的又は反応的乾燥フィルム形成結合剤としては、一成分及び二成分ポリウレタン等のポリウレタン、二成分系、アミンと架橋されるエポキシド、及びイソシアネートと架橋されるエポキシド等のエポキシ樹脂系等が挙げられる。
【0066】
付加ポリマー
前記付加ポリマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリル酸、スチレン等のモノマー出発成分を用いた、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリフッ素化ポリエチレン等が挙げられる。
【0067】
重縮合樹脂
前記重縮合樹脂としては、例えば、オイルフリー飽和ポリエステル、油変性ポリエステル樹脂等が挙げられる。多官能性カルボン酸及びその無水物、一官能性カルボン酸、多官能性アルコール(例えば、フタル酸無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロオキソフタル酸無水物、ヘキサヒドロオキソテレフタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、二量体化脂肪酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジメチロールプロピオン酸)、並びにポリオール(例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ジエチルレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチルペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAビス−ヒドロキシエチルエーテル)とに由来する不飽和ポリエステル樹脂;以下の種類のモノマー:アクリルモノマー、アルコキシシラン、アルコキシポリシロキサンによる修飾によって得られる樹脂;アミノ−ホルムアルデヒド樹脂(例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、及びベンゾグアナミン樹脂等);また、例えば、芳香族アミン、カルボキシアミド、シアンアミド、グアナミン、グアンジアミン、尿素、スルホンアミン、スルフリルアミド、チオ尿素、トリアジン(メラミン樹脂)、ウレタン、及びカルボニル化合物(例えば、アセトアルデヒド、アセトン、ブチルアルデヒド、ホルムアルデヒド、グリオキサル、プロピオンアルデヒド、トリクロロアセトアルデヒド等)等のアミノ化合物に由来する樹脂;またフェノール−ホルムアルデヒド樹脂及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0068】
重付加樹脂
重付加樹脂は、例えば、二成分ポリウレタン、一成分ポリウレタン系等のポリウレタン、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)異性体混合物、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)異性体混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−D−(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)異性体混合物、キシレンジイソシアネート(XDI)異性体混合物、水素化キシレンジイソシアネート(HXDI)異性体混合物、トリメチルヘキサンジイソシアネート(TMDI)異性体混合物、マロン酸エステル/アセト酢酸エステル、二級アミン、ブタノンオキシム、フェノール、カプロラクタム、アルコール等の典型的なブロック化剤に基づくブロック化ポリイソシアネート等の塩基産物由来のポリイソシアネートに由来する一成分湿気硬化ポリウレタンプレポリマー、エポキシ樹脂、液体、半固体、固体ビスフェノールA及びFエポキシ樹脂、フェノールノボラックグリシジルエーテル、クレゾールノボラックグリシジルエーテル、脂環式グリシジル化合物、及びエポキシ化シクロオレフィン、脂肪族アミンに基づく硬化剤、ポリエーテルポリアミンに基づく多官能性アミン、プロピレンジアミン、アルキレンジアミン、脂環式アミン、ポリアミノアミド、マンニッヒ塩基、エポキシド付加物、メルカプタン、酸無水物などが挙げられる。
【0069】
例えば、メチルシリコーン樹脂、フェニルシリコーン樹脂等のシリコーン樹脂などが挙げられる。0.5〜10のアミン価、及び250mol/g〜20,000mol/gの分子量を有する一級、二級、及び三級アミノ官能性シリコーン樹脂が好ましい。
【0070】
好ましくは充填剤を含まない、一成分湿気硬化RTVシリコーンシーラント、及び接着剤系。
【0071】
好適なポリマーの例としては、20mPa・s〜200,000mPa・s、好ましくは1,000mPa・s〜100,000mPa・sの粘度を有するOH末端ポリジメチルシロキサンである。
【0072】
前記架橋剤として、市販の一成分湿気硬化RTVシリコーンシーラント及び接着剤系で用いられている既知の架橋剤、トリ及びテトラアルコキシシラン、例えば、トリ及びテトラメトキシシラン、トリ及びテトラエトキシシラン、トリ及びテトラアセトキシシラン、トリ及びテトラオキシモシラン、トリス及びテトラキスN−アルキル−アミノ−シラミン等を用いることが可能である。更なる触媒又は金属化合物を添加することなしに架橋を導くトリス及びテトラキスN−アルキル−アミノ−シラミンが好ましい。
【0073】
前記シラミンの好ましい例としては、トリス(N−(n−ブチルアミノ))メチルシラン、トリス(N−(t−ブチルアミノ))メチルシラン等が挙げられ、特に好ましくは、トリス(N−(イソプロピルアミノ))メチルシラン、及びトリス(シクロヘキシルアミノ)メチルシランである。
二成分縮合硬化RTVシリコーン組成物(好ましくは充填剤を含まない)。
二成分Pt及び付加架橋硬化LSR RTVシリコーンシーラント及び接着剤系(好ましくは充填剤を含まない)。
【0074】
調製:
前記親水性出発シリカの調製(A)としては、1,000℃〜1,500℃の温度で水素−酸素火炎におけるシランの反応により高温でヒュームドシリカを調製する既知の技術により行われることが好ましい。前記シランとして、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、水素トリクロロシラン、水素メチルジクロロシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、又はこれらの混合物を用いることが好ましい。これらの中でも、テトラクロロシランが特に好ましい。反応後、シリカをプロセスガスから分離する。これは、フィルタを介して行われることが好ましく、次いで、精製して、残りの塩化水素ガスを除去する。これは、熱ガス流中で行われることが好ましく、用いられるガスは、好ましくは250℃〜500℃、より好ましくは250℃〜400℃、特に好ましくは350℃〜400℃の温度の空気又は窒素であることが好ましい。いずれも場合も、ここで添加する水の量としては、シリカの総重量に基づいて、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2.5%以下であり、水を全く添加しないことがより好ましい。
【0075】
前記シリカの表面処理又はシリル化(B)としては、3工程、即ち、(1)コーティング、(2)反応、(3)精製で行われる。
【0076】
本発明の懸濁液を調製するために、前記種類の粒子を液体に添加してもよく、前記粒子は、湿潤、タンブルミキサ若しくは高速ミキサ等による振盪、又は撹拌により分散される。低粒子濃度では、一般的に、粒子を液体に混入させるには単なる撹拌で十分である。特に、高粒子濃度では、非常に高剪断速度で粒子の液体への混入及び分散を行うことが好ましい。分散は、十分に高い剪断エネルギー入力をもたらす、エマルション又は分散液の作製に好適な従来の混合装置、例えば、登録商標「Ultra−Turrax」として知られているProf.P.Willemsによる装置等の高速ステータロータ撹拌装置、又はKady、Unimix、Koruma、Cavitron、Sonotron、Netzsch、若しくはYstral等の登録商標で知られている他のステータロータシステム等で行うことができる。他の方法としては、例えば、WAB社(スイス)製ダイノーミル等のボールミルを用いる方法などが挙げられる。更なる方法としては、パドル型撹拌機若しくはクロスアーム型撹拌機等の高速撹拌機、Getzmann社製ディスク型溶解機等の周速1m/s〜50m/sの溶解機、又は遊星型溶解機、クロスアーム型溶解機、若しくは溶解機システムと撹拌機システムとを含む他の複合機構等の混合システム等を用いる方法などが挙げられる。他の好適なシステムとしては、押出成形機又は配合機などが挙げられる。
【0077】
これは、バッチプロセス及び連続プロセスで行うことができる。
【0078】
最初に、有効な撹拌エレメントを用いて、例えば密閉容器又はボイラー内にて、シリカを液体で湿潤させて混入させ、第2の工程において、非常に高剪断速度でシリカを分散させるシステムが特に好ましい。これは、第1の容器内の分散システムにより、又は分散エレメントを含む外部パイプライン内へ容器からポンプで循環させ、好ましくは前記容器へクローズドリサイクルすることにより行うことができる。部分的リサイクル及び部分的連続除去を通して、このプロセスは、連続的に設計できることが好ましい。
【0079】
本発明の分散液中に前記シリカを分散させるには、5Hz〜500kHz、好ましくは10kHz〜100kHz、非常に好ましくは15kHz〜50kHzの範囲の超音波を用いることが特に好ましく、この超音波分散は、連続的に行ってもよく、バッチ式で行ってもよい。これは、超音波チップ等の個々の超音波入力装置により、又は1以上の超音波入力装置を含む連続フローシステムにおいて、例えば超音波フィンガー及び入力装置、若しくは連続フロー超音波セル等の超音波法、又はSonorex/Bandelinにより供給されている装置に類似する装置等の超音波システムにより行うことができる。
【0080】
前記超音波分散は、連続的に行ってもよく、バッチ式で行ってもよい。
【0081】
前記粒子を前記液体に分散させるための本発明のプロセスは、バッチ式及び連続式の両方で実施してもよい。
【0082】
また、本発明の分散液は、無論、別の方法で調製してもよい。しかし、この手順は重要であり、全ての調製方法で分散液を作製できる訳ではないことは明らかである。
【0083】
本発明の方法は、実施が非常に容易であり、固形分含量の非常に高い水分散液を調製することができるという利点を有する。
【0084】
接触角の測定方法
静的接触角の測定では、液滴法を使用する。測定用固体表面は、大部分が平面でなければならない。体積3.5μLの水滴1つを、シリンジを用いて固体又はコーティングに塗布する。前記接触角は、時間依存性のため、塗布直後に液滴の写真を撮影する。撮影した液滴に対してデジタル画像解析を実施する。
【0085】
前記静的接触角は、液滴と固体又は表面との接線間の内角である。
【0086】
水滴の滑落を測定するための試験方法:
前記水滴滑落試験では、滴下ピペットを用いて、コーティングされた試料に約0.01mLの水滴を提供し、次いで、前記試料をコーティング表面の水平位置からゆっくりと傾ける。水滴がコーティングから滑落し始める角度を滑落角と呼ぶ。
【0087】
本発明の懸濁液の用途
成型物及び層の作製のための用途などが挙げられる。
層の使用のための用途などが挙げられる。
例えば、落書き防止コーティングとして、又は汚れ放出コーティングとして、ビル及び建造物を汚れから保護するための用途などが挙げられる。
コーティングが、1マイクロメートル未満の寸法の粗さを有する、本発明のナノ構造化コーティングを含むことを特徴とする、海水又は陸水に接触する表面のコーティングとしての用途などが挙げられる。コーティングされる表面の例としては、船舶、船体、ボート、ヨット、掘削基地、係船装置、ケーブル、例えば、水産養殖用の網、及び堰である。
細菌、藻類、植物、真菌、及びフジツボ、ムラサキイガイ等の動物等の定着を防ぐための、ナノ構造化コーティングを有する船舶用コーティングとしての用途などが挙げられる。これは、例えば、海水、河川水、及び陸水中において、養魚場及び養甲殻類場用網の耐用寿命が長いという利点を有する。また、船舶の摩擦抵抗を低減するためのナノ構造化コーティングを有する船舶用コーティングとしての用途などが挙げられる。これは、高速及び/又は低エネルギー消費、例えば、低燃料消費のため、天然資源を保護し、また低コストであるとの利点を有する。
驚くべきことに、本発明のコーティングは、腐食及び磨耗によりコーティング自体を再生する超疎水性(数値により定義される)表面を作製する。
例えば、藻類の蔓延及びフジツボ等の付着動物の蔓延を防ぐための、海水、陸水、及び沿岸水中における船舶、船体、ボート、ヨット、堰又は係船装置等の海洋建造物の表面、海水及び陸水中における魚及び甲殻類の水産養殖用網等、海水又は陸水に接触する表面用のコーティングとしての用途などが挙げられる。
【0088】
本発明のコーティングは、超疎水性であり、空気−水−コーティング接触角が120°超、好ましくは130°超、より好ましくは140°超、非常に好ましくは150°超である。本発明の懸濁液を示す図3、及び粒子を含まない点が本発明の懸濁液とは異なる比較物を示す図4を参照されたい。
【0089】
本発明のコーティングは、超疎水性であり、水滴転落角が20°未満、好ましくは10°未満、より好ましくは6°未満、非常に好ましくは3°未満である。
【実施例】
【0090】
(実施例1:縮合−架橋シリコーンゴム、アミン除去)
250mLのプラスチック製ビーカー内の疎水性シリカに、80℃〜110℃の沸点範囲を有する炭化水素混合物75gを加え、約6,000mPa・sの粘度を有するOH末端PDMS(ポリジメチルシロキサン)15gを添加し、室温で10分間1,500/分のディスパーマット内で混合物を激しく混合する。次いで、4.0gの一般的な疎水性ヒュームドシリカ、例えば、ワッカー社製HDK(登録商標)H18等を添加し、室温で約10分間以内、同回転速度で混入させる。次いで、1.5gのメチル−トリス(シクロヘキシルアミノ)シラン架橋剤を添加し、室温で同回転速度にて更に2分間混合する。
ドクターブレードを用いてこの分散液を厚さ200μmの湿潤フィルムに引き伸ばし、室温で24時間溶媒を蒸発させ、大気中の水分の影響下でシリコーンゴムを架橋させる。
コーティングされた表面は、明らかに目視で確認できる粗さを有している。
水滴試験:水滴をはじく
滴滑落試験:<6°
接触角:142°
【0091】
(実施例2:縮合−架橋シリコーンゴム、アミン除去)
250mLのプラスチック製ビーカー内の疎水性シリカに、80℃〜110℃の沸点範囲を有する炭化水素混合物75.5gを加え、約6,000mPa・sの粘度を有するOH末端PDMS15gを添加し、室温で1,500/分のディスパーマット内で混合物を激しく混合する。次いで、4.5gの親水性ヒュームドシリカ、例えば、市販されている種類のワッカー社製HDK(登録商標)D05等を添加し、室温で約10分間以内、同回転速度で混入させる。次いで、1.5gのメチル−トリス(シクロヘキシルアミノ)シラン架橋剤を添加し、室温で同回転速度にて更に2分間混合する。
ドクターブレードを用いてこの分散液を厚さ200μmの湿潤フィルムに引き伸ばし、室温で24時間溶媒を蒸発させ、大気中の水分の影響下でシリコーンゴムを架橋させる。
コーティングされた表面は、明らかに目視で確認できる粗さを有している。
水滴試験:水滴をはじく
滴滑落試験:<6°
接触角:143°
【0092】
(実施例3:縮合−架橋RTVシリコーンゴム開始系、オキシムベースの調製)
250mLのプラスチック製ビーカーに、80℃〜110℃の沸点範囲を有する炭化水素混合物100gを入れ、20,000mPa・sの粘度を有するOH末端PDMSポリマー50gを添加し、室温で300/分のディスパーマット内で3分間に亘って混合し、その後、この混合物を5.0gのメチル−トリス(メチルエチルケトキシマト)シランと混合し、300/分で更に10分間混合した後、0.25gの市販のスズ系の架橋触媒を添加し、1分間同回転速度で撹拌することにより混入させ、次いで、この混合物をきつく密封した容器内で保存する。
【0093】
(実施例3a:縮合−架橋RTVシリコーンゴム系、オキシムベース)
250mLのビーカーに、疎水性シリカと共に、80℃〜110℃の沸点範囲を有する炭化水素混合物77gを入れ、実施例3に記載のシリコーンゴム混合物15gを添加し、室温で300/分のディスパーマット内で3分間に亘って混合する。次いで、4gの市販の疎水化ヒュームドシリカ、例えば、ワッカー社製HDK(登録商標)H18等を3分間以内に少しずつ添加し、10分間、2,500/分の撹拌速度で室温にて激しく混入させる。
ドクターブレードを用いてこの分散液を厚さ200μmの湿潤フィルムに引き伸ばし、室温で24時間溶媒を蒸発させ、大気中の水分の影響下でシリコーンゴムを架橋させる。
コーティングされた表面は、粗い。
水滴試験:水滴をはじく
滴転落角:<6°
接触角:142°
【0094】
(実施例3b:縮合−架橋RTVシリコーンゴム系、オキシムベース)
250mLのプラスチック製ビーカーに、親水性シリカと共に、80℃〜110℃の沸点範囲を有する炭化水素混合物81gを入れ、実施例3に記載のオキシム架橋RTVシリコーン15gを添加し、室温で300/分のディスパーマット内で3分間に亘って混合する。次いで、4gの市販の親水性ヒュームドシリカ、例えば、ワッカー社製HDK(登録商標)D05等を3分間以内に少しずつ添加し、10分間、1,800/分の撹拌速度で室温にて激しく混入させる。
ドクターブレードを用いてこの分散液を厚さ200μmの湿潤フィルムに引き伸ばし、室温で24時間溶媒を蒸発させ、大気中の水分の影響下でシリコーンゴムを架橋させる。
コーティングされた表面は、粗い。
水滴試験:水滴をはじく
滴転落角:<6°
接触角:139°
【0095】
(実施例4:二成分シリコーンゴム系と親水性シリカとの付加架橋)
250mLのプラスチック製ビーカーに、80℃〜110℃の沸点範囲を有する炭化水素混合物85gを入れ、次いで以下を連続して添加する:1,000mPa・sの粘度を有するビニル末端PDMSポリマー6.0g、1,000mPa・sの粘度を有するH−末端PDMSポリマー4.5g、及び0.17重量%のSi−H含量を有するトリメチルシリル末端ポリ−ジメチルシロキシ−メチル−ハイドロジェンシロキシコポリマー0.4g。室温で300/分のディスパーマット内で10分間に亘って成分を混合する。次いで、上記親水性シリカ5gを6分間以内に少しずつ添加し、室温で5,000/分の撹拌速度で5分間激しく混入させる。次いで、テトラメチルジビニルジシロキサン0.15g及び付加架橋に一般的な触媒0.04gを添加し、5,000/分で約5分間撹拌することにより混入させる。
ドクターブレードを用いて、この分散液を厚さ200μmの湿潤フィルムに引き伸ばし、室温で24時間溶媒を蒸発させ、大気中の水分の影響下でシリコーンゴムを架橋させる。
コーティングされた表面は、目視で確認できるほど粗い。
水滴試験:水滴をはじく
滴転落角:<6°
接触角:140°
【0096】
(比較例1:縮合−架橋シリコーンゴム、アミン除去)
充填剤なしで、250mLのプラスチック製ビーカーに、80℃〜110℃の沸点範囲を有する炭化水素混合物79gを入れ、約6,000mPa・sの粘度を有するOH末端ポリジメチルシロキサン15gを添加し、1,000/分のディスパーマット内で室温で激しく混合する。次いで、1.5gのメチル−トリス(シクロヘキシルアミノ)シラン架橋剤を添加し、室温にて同回転速度で更に2分間混合する。ドクターブレードを用いてこの分散液を厚さ200μmの湿潤フィルムに引き伸ばし、室温で24時間溶媒を蒸発させ、大気中の水分の影響下でシリコーンゴムを架橋させる。
コーティングされた表面は、平滑表面を有する。
水滴試験:表面に付着したままである
滴滑落試験:70°
接触角:110°
【0097】
(比較例2:縮合−架橋シリコーンゴム、オキシム除去;充填剤の添加無し)
250mLのプラスチック製ビーカーに、80℃〜110℃の沸点範囲を有する炭化水素混合物85gを入れ、オキシムを除去すると共に縮合−架橋させたシリコーンゴムの、実施例3に記載の混合物15gを添加し、300/分のディスパーマット内で室温で3分間に亘って激しく混合する。
ドクターブレードを用いてこの分散液を厚さ200μmの湿潤フィルムに引き伸ばし、室温で24時間溶媒を蒸発させ、大気中の水分の影響下でシリコーンゴムを架橋させる。
コーティングされた表面は、平滑表面を有する。
水滴試験:水滴が表面に残っている
滴滑落試験:50°
接触角:102°

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含有量が、0.01重量%〜50重量%であり、質量フラクタル次元Dが2.8以下である微粒子と、
液体と、
粒子100重量部当たりの含有量が、101重量部〜1,000重量部である弾性接着剤と、
を含むことを特徴とする懸濁液。
【請求項2】
微粒子が、親水性粒子である請求項1に記載の懸濁液。
【請求項3】
微粒子が、ヒュームドシリカからなる請求項1から2のいずれかに記載の懸濁液。
【請求項4】
微粒子が、親水性シリカである請求項1から3のいずれかに記載の懸濁液。
【請求項5】
微粒子が、反応性表面基を有する請求項1から4のいずれかに記載の懸濁液。
【請求項6】
弾性接着剤が、反応性オリゴマー又はポリマーを有する請求項1から5のいずれかに記載の懸濁液。
【請求項7】
弾性接着剤が、架橋系を有する請求項1から6のいずれかに記載の懸濁液。
【請求項8】
反応性オリゴマー、ポリマー、及び架橋系が、RTV1シリコーンゴム架橋系を含む請求項1から7のいずれかに記載の懸濁液。
【請求項9】
RTV1シリコーンゴムが、アミン架橋シリコーンゴム系である請求項8に記載の懸濁液。
【請求項10】
液体が、有機溶媒である請求項1から9のいずれかに記載の懸濁液。
【請求項11】
液体が、水である請求項1から9のいずれかに記載の懸濁液。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の複数の懸濁液の任意の所望の混合物を含む請求項1から11のいずれかに記載の懸濁液。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の少なくとも1つの懸濁液を含むことを特徴とするコーティング。
【請求項14】
表面粗さが、ナノスケールである請求項13に記載のコーティング。
【請求項15】
空気−水−コーティング接触角が、120超である請求項13から14のいずれかに記載のコーティング。
【請求項16】
水滴転落角が、20°未満である請求項13から14のいずれかに記載のコーティング。
【請求項17】
海水又は陸水と接触する領域を保護する方法であって、請求項1から12のいずれかに記載の懸濁液を用いて前記領域にコーティングを施すことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1から12のいずれかに記載の懸濁液を含むことを特徴とする印刷媒体又は表面コーティング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−511070(P2012−511070A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538994(P2011−538994)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066134
【国際公開番号】WO2010/063710
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】