説明

高疲労強度Al合金およびその製造方法

【課題】高強度な割に高延性であるとともに、疲労強度も高く、構造用部品や部材としての信頼性に優れたAl合金およびその製造方法を提供する。
【解決手段】急冷凝固法により得られたAl−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金組織中に存在して、合金元素の偏析により粗大化しやすい晶析出物を、不活性ガスによるスプレイフォーミング時の噴霧された溶湯の堆積速度やG/M比などの制御によって、微細化を図り、高強度、高延性であるとともに、疲労強度も高いAl合金とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急冷凝固法により得られたAl−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金であって、高強度な割に高延性であるとともに、疲労強度も高く、構造用部品や部材としての信頼性に優れたAl合金およびその製造方法に関するものである。
【0002】
本発明で言う、急冷凝固法により得られたAl合金とは、Al合金溶湯をガスアトマイズにより急冷凝固させた粉末乃至プリフォーム体を固化させたAl合金である。この固化させたAl合金とは、急冷凝固粉末乃至プリフォーム体を、押出、鍛造、圧延などの熱間塑性加工により緻密化させたAl合金のことであり、緻密化後に、溶体化処理、時効処理などの調質処理が施された、種々の形状を有するAl合金材のことである。そして、その用途に応じて、高延性を利して所望の形状に冷間などで成形加工され、高強度を利して所望の部材、部品とされるAl合金材のことを言う。
【背景技術】
【0003】
近年、軽量化の要求が高まっている自動車部品、電子材料用端末機械、精密機械部品などには、高強度で軽量なAl合金材料が幅広く使用されている。
【0004】
ただ、Al合金の常温での機械的特性は、近年飛躍的に向上しているとはいうものの、高強度鋼に比べると未だ十分とはいえず、その使用も制限されている。例えば、高力Al合金として広く用いられている、所謂A7000系Al合金でさえも、その強度は不十分であり、その使用範囲は限られている。
【0005】
これに対して、従来の溶解鋳造合金では、その強度などの機械的特性の飛躍的な向上には限界がある。このため、A7000系Al合金の強度を一層高めることを目的として、アトマイズ法による急冷凝固粉末として得る方法が、従来から提案されている。この急冷凝固法によれば、合金元素の含有量を、前記溶解鋳造Al合金よりも増すことができる。したがって、これら合金元素を多量に含有したAl合金を急冷凝固によって粉末化し、これを固化成形することで、強度に優れたAl合金を得ることができる。
【0006】
例えば、特許文献1では、A7000系Al合金の成分組成を特定量のAgを配合したものとし、空気アトマイズ法により得た、この成分組成の急冷凝固合金粉末を押出による粉末冶金法により固化成形体としている。因みに、この成形体を均質化処理および時効硬化処理したT6調質後の成形体材の引張強度は、約900MPaまで増大することが開示されている。この特許文献1では、A7000系Al合金のより具体的な組成として、Zn5〜11%、Mg2〜4.5%、Cu0.5〜2%およびAg0.01〜0.5%含み、残部が実質的にAlからなるA7000系Al合金急冷凝固粉末が開示されている。
また、急冷凝固法により得られるAl合金ではなく、通常の鋳塊の圧延により得られる、構造部材用Al合金の疲労強度を向上させることも従来から提案されている。例えば、特許文献2では、航空機部材用などのAl−Cu系のA2000系Al合金の疲労強度を向上させるために、このAl合金組織中の鋳造の際に生じる晶出物間の距離を大きくすることも、提案されている。
【特許文献1】特開平7−316601号公報
【特許文献1】特開平8−283892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この特許文献1には、高強度となったA7000系Al合金の開示はあるものの、この高強度Al合金の伸びの開示が無い。ただ、この特許文献1のようなA7000系Al合金の急冷凝固粉末であっても、高強度になるほど伸びが大きく低下することは、やはり避けられない。例えば、文献などに公開されたデータとして、Al−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金におけるA7090のAl合金急冷凝固粉末固化成形材の引張強度が625MPaの場合の伸びは約6%程度でしかない。また、通常の鋳造材であるA7075Al合金押出材であっても、引張強度が570MPaの場合の全伸びは11%程度である。
【0008】
このような低い伸びでは、その用途に応じて、所望の部材乃至部品形状に冷間にて成形加工する際の成形性が著しく低く、冷間加工が困難となる。例えば転造などの加工率が高い冷間成形加工の際には特に割れが発生しやすい。このため、このような冷間成形加工の制約からも、高強度な7000系Al合金の用途は大幅に制約されていたのが実情である。
【0009】
また、Zn、Mg、Cuなどの合金元素量が、Al合金の中でも最も多い7000系Al合金では、急冷凝固法により製造した際に、特にスプレイフォーミング法で得られたAl合金中において、他のAl合金系よりも、これら合金元素が偏析しやすいという、7000系Al合金特有の問題がある。更に、同じ7000系Al合金であっても、通常の鋳塊の圧延により得られるAl合金の鋳造時よりも、スプレイフォーミング法で得られる7000系Al合金の方が、冷却条件によっては、合金元素が偏析しやすいという特有の問題もある。
【0010】
このように合金元素が偏析した場合には、急冷凝固時に生じる晶出物や、加熱処理時に生じる析出物など、製造過程で7000系Al合金組織中に生じる晶析出物(晶出物や析出物の総称)の粗大化が生じやすい。即ち、急冷凝固法により製造した7000系Al合金組織中に、数μmを超える粗大な晶析出物が存在するようになる。このため、例え、静的な機械的特性としての強度、延性が例え高かったとしても、疲労強度のような動的な機械的特性では、粗大な晶析出物が破壊の起点となって、疲労強度が低くなる。この結果、急冷凝固法により製造した7000系Al合金の、構造用部品や部材としての、信頼性が下がるという問題につながる。
【0011】
本発明は、かかる問題に鑑みなされたもので、高強度な割に高延性であるとともに、疲労強度も高く、構造用部品や部材としての信頼性に優れたAl合金およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明の高疲労強度Al合金の要旨は、急冷凝固法により得られたAl合金であって、質量%で、Zn:5〜12%、Mg:2〜4%、Cu:1〜2%を各々含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、このAl合金組織の反射電子法による倍率5000倍のSEMにて観察される各晶析出物の、面積が等価な円の直径に換算した大きさの内、最大の大きさが0.5μm以下とすることである。
【0013】
本発明の高強度、高延性Al合金は、高強度化のために、更に、Agを0.01〜0.1質量%含有してもよく、また、更に、Si、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、Zr、TiおよびVから選ばれた一種または二種以上を合計で0.1〜0.5質量%含有してもよい。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本発明の高疲労強度Al合金の製造方法の要旨は、質量%で、Zn:5〜12%、Mg:2〜4%、Cu:1〜2%を各々含み、更に、Agを0.01〜0.1質量%か、Si、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、Zr、TiおよびVから選ばれた一種または二種以上を合計で0.1〜0.5質量%を選択的に含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl合金溶湯を、G/M比を4〜15Nm3 /kgの範囲とした不活性ガスによって、噴霧された溶湯のプリフォーム上への堆積速度が1〜2.5g/mm2 /sの範囲で、スプレイフォーミングし、これによって得たプリフォーム体を金属容器に入れて真空封入した上で、熱間押出加工して固化させ、その後調質処理してAl合金を得るとともに、このAl合金組織の反射電子法による倍率5000倍のSEMにて観察される各晶析出物の、面積が等価な円の直径に換算した大きさの内、最大の大きさを0.5μm以下とすることである。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、ガスアトマイズにより急冷凝固させた粉末乃至プリフォーム体を固化させたAl−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金組織中の特定晶析出物の最大の大きさを規制する。これによって、7000系Al合金組織中に、数μmを超える粗大な晶析出物を含まず、組織中に含まれる晶析出物を微細化する。
【0016】
前記した通り、急冷凝固法により製造した7000系Al合金は、合金元素が偏析しやすく、製造過程で7000系Al合金組織中に生じる晶析出物(晶出物や析出物の総称)の粗大化が生じやすい、この合金特有の問題を有する。そして急冷凝固法により製造した7000系Al合金組織中に、数μmを超える粗大な晶析出物が含まれると、破壊の起点となり、疲労強度のような動的な機械的特性が低くなり、構造用部品や部材としてのAl合金の信頼性が低くなる。また、伸びを低下させ、冷間加工における成形性も阻害する。
【0017】
一方、このような粗大な晶析出物を含まなければ、急冷凝固法により製造した7000系Al合金組織中に含まれる晶析出物が微細化されるので、動的な機械的特性としての疲労強度も高くなり、構造用部品や部材としての信頼性に優れたAl合金を提供できる。と同時に、静的な機械的特性としての強度、延性も高めることができる。
【0018】
このような本発明の疲労強度向上効果を定量的に説明すると、従来の急冷凝固法により得られた7000系Al合金において、疲労強度は、引張強度の30%程度であり、引張強度の40%以上となることはない。これに対して、本発明によれば、急冷凝固法により得られた7000系Al合金の疲労強度を、引張強度の40〜50%程度にまで、著しく向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(Al合金組成)
本発明Al合金の化学成分組成(単位:質量%)について、各元素の限定理由を含めて、以下に説明する。なお、各元素の含有量の%表示は全て質量%の意味である。
【0020】
本発明Al合金の化学成分組成は、後述する急冷凝固法により得られたAl−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金として、本発明で意図する疲労強度や機械的な特性を保証するために決定される。この観点から、本発明Al合金の化学成分組成は、質量%で、Zn:5〜12%、Mg:2〜4%、Cu:1〜2%を各々含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものとする。この組成に対し、選択的な添加元素として、更に、Agを0.1〜0.01%の範囲で、Si、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、Zr、TiおよびVから選ばれた一種または二種以上を合計で0.1〜0.5%の範囲で、各々含有させても良い。
【0021】
(Zn、Mg)
必須の合金元素であるZn、Mgは、T6処理後にGPゾーンあるいは中間析出相と呼ばれるMgZn2 、Mg32AlZn49などの微細分散相を形成して強度や疲労強度を向上させる。Znが5%未満、Mgが2%未満など、Zn、Mgの含有量が少な過ぎると、これら微細分散相が不足して、強度や疲労強度が低下する。
【0022】
一方、Znが12%超え、Mgが4%超えなど、Zn、Mgの含有量が多過ぎると、溶湯の急冷凝固を経たとしても、これらの元素は、Al中に固溶できないため、粗大な晶出物を形成し、Al合金の強度や疲労強度低下の原因となる。また、冷間加工性も著しく低下する。更に、Znの含有量が多過ぎると、溶体化処理中に、溶体化処理温度にもよるが、液相が生成しやすくなり、温度を下げて溶体化効果を犠牲にする必要が生じるなど、溶体化処理自体が困難となる。したがって、これらの含有量は、Zn:5〜12%、Mg:2〜4%の範囲とする。
【0023】
(Cu)
必須の合金元素であるCuは、固溶強化によって強度を向上させる。Cuが1%未満と、Cuの含有量が少な過ぎると、固溶Cu量が減って、強度や疲労強度が低下する。一方、Cuの含有量が2%を超えて多過ぎると、析出物が粗大化し、耐応力腐食割れ性などの耐食性が著しく低下し、また、強度や疲労強度も低下する。したがって、Cuの含有量は、1〜2%の範囲とする。
【0024】
(Ag)
選択的な添加元素であるAgは、析出物の微細化効果があり、Al合金の強度や疲労強度を向上させる。この効果を発揮させるために含有させる場合には0.01%以上含有させ、0.1%を超えて含有させる必要は無い。したがって、Agを選択的に含有させる場合は0.1〜0.01%の範囲とする。
【0025】
(Si、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、Zr、Ti、V)
選択的な添加元素であるSi、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、Zr、TiおよびVは、析出効果によって、Al合金の強度や疲労強度を向上させることができる。この効果を発揮させるために含有させる場合には、Si、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、Zr、TiおよびVから選ばれた一種または二種以上を合計で0.1%以上を含有させる。但し、これらの含有量が合計で0.5%を超えた場合、これらの元素の粗大析出物が形成され、むしろ強度や疲労強度、延性の低下の原因となる。したがって、これらの元素から選ばれた一種または二種以上を選択的に含有させる場合は、合計量(総量)で0.1〜0.5%の範囲とする。
【0026】
(不純物)
以上記載した元素以外のその他の元素は、基本的に不可避的不純物であり、本発明の意図する特性を阻害しない範囲において、通常のAl−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金に含まれる範囲までは許容する。ただ、酸素はAl合金組織中に酸素系介在物を生じて、破壊の起点となり、疲労強度や伸びを低下させる可能性があるので、できるだけ少なくすることが好ましい。このためには、急冷凝固において、後述する通り、噴霧ガスには、空気を用いずに、窒素、ArまたはHeなどの、不活性な噴霧ガスを用いる。
【0027】
(組織)
以上のような7000系Al合金組成を前提として、本発明では、特に疲労強度を向上させるために、このAl合金組織の粗大な晶析出物を抑制するよう、晶析出物の最大の大きさを規制する。即ち、このAl合金組織の反射電子法による倍率5000倍のSEMにて観察される各晶析出物の、面積が等価な円の直径に換算した大きさの内、最大の大きさが0.5μm以下とする。
【0028】
これによって、急冷凝固法により製造した7000系Al合金組織中に含まれる晶析出物が微細化され、動的な機械的特性としての疲労強度も高くなり、構造用部品や部材としての信頼性を高めることができる。前記した通り、従来の急冷凝固法により得られた7000系Al合金の疲労強度は、引張強度の30%程度であり、引張強度の40%以上となることはない。これに対して、本発明によれば、急冷凝固法により得られた7000系Al合金の疲労強度を、引張強度の40〜50%程度にまで、著しく向上させることが可能となる。
【0029】
また、同時に、静的な機械的特性としての強度、延性も高めることもできる。本発明によれば、急冷凝固法により得られた7000系Al合金の常温での機械的な特性として、高強度化としては600MPa以上の引張強度を有する。そして、強度−延性バランスとしては、引張強度が600MPa以上、800MPa未満の場合には、15%以上の伸びを有する。また、引張強度が800MPa以上、950MPa以下の高強度の範囲の場合には、10%以上の伸びを有する。この強度−延性バランスは、高強度なAl−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金としては、かなり画期的である。
【0030】
通常、強度−延性バランスは、Al−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金の急冷凝固粉末であっても、前記特許文献1のように、通常は、高強度になるほど伸びの大幅な低下は避けがたい。それゆえ、前記特許文献1を含めて、従来の高強度なAl−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金は、冷間加工性が著しく悪かったものである。これに対して、本発明では、Al−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金において、引張強度が600MPaの場合の伸びを、従来の約6%程度から15%以上、引張強度が800MPa以上の場合の伸びを、従来の約2〜3%程度から10%以上に、飛躍的に向上させることができる。これは転造などの厳しい冷間加工が、今までは出来なかったのを可能とすることを意味する。したがって、このような効果は、Al−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金の急冷凝固粉末における高強度になるほど避け難い伸びの大幅な低下の常識からすると、画期的であると言える。
【0031】
(晶析出物の大きさ測定方法)
晶析出物の大きさ測定は、Al合金組織を、反射電子法による倍率5000倍のSEM(走査型電子顕微鏡)による観察にて行う。この反射電子法による倍率5000倍のSEMでは、マトリックス中に存在する晶析出物(晶出物や析出物)は、無地のマトリックスに対して散在する、白い不定形の小さな模様として観察される。これを画像処理して、視野内に観察される各晶析出物(各白い模様)の大きさを、面積が等価な円の直径に換算した大きさとして、50視野程度を観察する。そして、これら視野内に、前記面積が等価な円の直径に換算した大きさの内、最大の大きさが0.5μmを超えるものが全く無ければ、最大の大きさが0.5μm以下である(本発明内)と判断する。一方、これら視野内に、前記最大の大きさが0.5μmを超えるものが1個でもあれば、最大の大きさが0.5μmを超えるものである(本発明外)と判断する。
【0032】
ここで、本発明で言う晶析出物は、晶析出物組成で言うと、合金元素であるZn、Mg、Cuなどの金属間化合物(前記Zn、Mgの微細分散相や、Alとの金属間化合物を含む)である。また、前記したAgやSi、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、Zr、TiおよびVなどの選択的な添加元素を含有させた場合には、これらを含めた金属間化合物である。ただ、本発明では、これら晶析出物の種類や、また晶出物か析出物かも問わず、前記した反射電子法による倍率5000倍のSEMで、無地のマトリックスに対して散在する、白い不定形の小さな模様として観察されるもの全てを、特に疲労強度に影響する晶析出物と扱う。
【0033】
(製造方法)
以下に、本発明Al合金の製造方法を説明する。本発明Al−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金は、Zn、Mg系の金属間化合物を多く析出させ、高強度化させるために、通常の溶解鋳造方法ではなく、急冷凝固法によって製造する。この急冷凝固法は、Al合金溶湯をガスアトマイズにより急冷凝固させた粉末乃至プリフォーム体を固化させるものである。この固化は緻密化であり、急冷凝固粉末乃至プリフォーム体を押出、鍛造、圧延などの熱間塑性加工により、種々の形状に加工して行なう。そして、この緻密化(固化)後に、溶体化処理、時効処理などの調質処理が施される。
【0034】
急冷凝固法:
急冷凝固法は、通常の溶解鋳造法(インゴットメイキング) よりも、格段に速い冷却・凝固速度を有するために、微細な金属間化合物(上記分散相)を密度高く形成させることができる。また、この分散相の時効析出硬化によって、Al−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金の強度をさらに向上させることができる。更に、Al合金溶湯を急冷凝固させることにより、合金元素の晶出、偏析を抑制し、また、Al中にできるだけ多く固溶させることができ(合金元素の固溶範囲を高濃度側へ大きく拡張でき)、この面からもAl合金の強度をさらに向上させることができる。
【0035】
急冷凝固法においては、前記した通り、酸素を低減する、あるいは酸素を増加させないことが重要となる。酸素を低減するためには、スプレイフォーミング法によるにせよ、アトマイズ粉末法(急冷粉末冶金法)によるにせよ、前提として、噴霧ガスには、空気を用いずに、窒素、ArまたはHeなどの、不活性な噴霧ガスを用いる。噴霧ガスに空気を用いた場合には、高強度化は図れるものの、酸素が本発明のように低減できず、伸びを向上させることができない。また、窒素を噴霧ガスとして用いた場合には、噴霧の過程で窒素(N)がAl合金に含有されるために、高強度、高延性に加えて、更にAl合金の靱性を向上させることができる。窒素を噴霧ガスとして用いた場合、Al合金に含有される窒素の量は、後述するガス/メタル比(G/M比)にもよるが、概ね0.0005〜0.01質量%の範囲である。Al合金に含有される窒素は、AlNとして微細に析出しており、脱気、溶体化、人工時効の熱処理などのAl合金製造工程において、Al合金結晶粒の粗大化を防止して、微細結晶粒組織とし、Al合金の靱性を向上させるものと推考される。
【0036】
アトマイズ粉末法:
急冷凝固法の一つであるアトマイズ粉末法(急冷粉末冶金法)によって、本発明Al合金を製造する場合、アトマイズ粉末法自体は、常法に従って製造することができる。例えば、本発明による組成を有するAl合金を高周波溶解炉において800〜1100℃の温度で溶解、出湯させる。このAl合金溶湯をるつぼに流し込み、このるつぼ底部の開口部からアトマイズノズルの溶湯噴出口まで導いてアトマイズする。
【0037】
したがって、Al合金溶湯がアトマイズノズル溶湯噴出口に達する直前に、ノズル穴から、高圧の窒素、ArまたはHeなどの、不活性な噴霧ガスを噴出させこのガスの圧力により、溶湯噴出口から出てきたAl合金溶湯を細かく粉砕する。この様に細かく粉砕された溶湯は、高圧のガスおよび/または雰囲気により、直ちに冷却され、凝固することにより、Al合金急冷凝固粉末が得られる。
【0038】
アトマイズされたAl合金粉末は、用途に応じてふるい分けされる。この際、平均粒径が150μm以下、好ましくは100μm以下の微粒粉を分級して使用することが好ましい。このような微粒粉のみをCIPやHIPで固化成型することで、本発明のAl合金が得られやすい。平均粒径が20μmを超える粗大なアトマイズ粉末は、冷却速度が遅いため、Cu、Agなどの固溶量を確保できておらず、用いると、強度が向上しない可能性がある。
【0039】
スプレイフォーミング法:
本発明合金を得る場合、上記アトマイズ粉末法(急冷粉末冶金法)よりも、スプレイフォーミング法の方が好適である。急冷凝固法の一つであるスプレイフォーミング法は、ガスを噴出させこのガスの圧力によりスプレイする点は、アトマイズ粉末法と機構は同じである。ただ、アトマイズ粉末法は、アトマイズ時には不活性な噴霧ガスを用いたとしても、粉末のハンドリングは大気中で行なわざるを得ず、酸化により、Al合金中の酸素が増加しやすくなる。これに対して、スプレイフォーミング法は、ハンドリングを大気中で行なったとしても、ある程度の密度を有するプリフォーム体が得られており、酸化しにくく、Al合金中の酸素が増加しにくい。
【0040】
また、スプレイフォーミング法は、ある程度の密度を有するプリフォーム体が得られ、CIPやHIPでの予備的な固化成型が不要な点でも、アトマイズ粉末法に比して有利となる。アトマイズ粉末は、固化する前に、CIPやHIPでの予備的な固化成型が必要となる。更に、スプレイフォーミング法は、アトマイズ粉末法に比して、冷却凝固速度をより大きくとれるので、組織(金属間化合物相)を微細化できる利点もある。
【0041】
但し、このスプレイフォーミング法でも、用いる噴霧ガスは、高圧の窒素、ArまたはHeなどの不活性な噴霧ガスとし、空気など酸素を含む噴霧ガスは、Al合金中の酸素を増すために、これを用いない。また、その冷却凝固速度の最適化も必要である。スプレイフォーミング法による好ましい態様は、上記本発明成分組成のAl合金を800〜1100℃で溶解後、この温度範囲で、スプレイフォーミング法により、溶湯の不活性ガスによるスプレイを開始して、下方の回転床上にプリフォーム体を作製する。
【0042】
(G/M比)
スプレイフォーミングにおける(スプレイ過程中の)冷却凝固速度は、先ず、ガス/メタル比〔G/M比:単位質量(kg)あたりの溶湯に吹き付けるガスの量(Nm 3)比〕によって制御する。本発明では、このG/M比が高いほど、冷却速度を速くでき、微細な金属間化合物が得られ、金属Alマトリックッス中にCu、Agを所定量固溶させることができる。
【0043】
このG/M比が低過ぎると冷却凝固速度が不足する。このため、合金元素による金属間化合物も粗大となり強度が不足する。一方で、G/M比が高過ぎると、プリフォームの歩留まり(溶湯の堆積効率)が低下したり、不活性ガスの使用量が増加し、製造コストが高くなる。また、7000系Al合金の合金元素が偏析しやすくなり、製造過程で7000系Al合金組織中に生じる晶析出物の粗大化が生じやすくなる。この結果、製造した7000系Al合金組織中に、数μmを超える粗大な晶析出物が含まれ、破壊の起点となり、疲労強度のような動的な機械的特性が低くなり、構造用部品や部材としてのAl合金の信頼性が低くなる。また、伸びを低下させ、冷間加工における成形性も阻害する。
【0044】
これらの条件を満足するG/M比は、好ましくは4〜15Nm3 /kgの範囲とする。G/M比の下限は好ましくは4Nm3 /kg以上、さらに好ましくは6Nm3 /kg以上であり、G/M比の上限は、15Nm3 /kg以下、好ましくは13Nm3 /kg以下とすることが推奨される。
【0045】
(堆積速度)
そして、こうのようなG/M比範囲とした不活性ガスによって、噴霧された溶湯のプリフォーム上への堆積速度が1〜2.5g/mm2 /sの範囲で、スプレイフォーミングすることが好ましい。なお、本発明において規定する「堆積速度」とは、噴霧された溶湯がプリフォームとして堆積する速度のことであり、プリフォームの堆積が進行している部分の単位面積・単位時間当たりに堆積するAl合金の重量(g/mm2 /s)で表す。この堆積速度が2.5g/mm2 /sを超えて速くなると、次々と堆積する溶湯によって、先に堆積した溶湯やプリフォーム上が冷却しにくくなり、冷却速度が著しく低下する。この結果、7000系Al合金の合金元素が偏析しやすくなり、製造過程で7000系Al合金組織中に生じる晶析出物の粗大化が生じやすくなる。したがって、製造した7000系Al合金組織中に、数μmを超える粗大な晶析出物が含まれるようになり、このAl合金組織の晶析出物の前記最大の大きさを0.5μm以下とすることができない。このため、疲労強度のような動的な機械的特性が低くなり、構造用部品や部材としてのAl合金の信頼性が低くなる。また、伸びを低下させ、冷間加工における成形性も阻害する。
【0046】
一方、上記堆積速度が1g/mm2 /s未満では、スプレイフォーミングの効率が低下して、プリフォームの歩留まり(プリフォームとして得られたAl合金の重量を、溶解したAl合金の重量で割って計算される、溶湯の堆積効率)が低下したり、不活性ガスの使用量が増加し、製造コストが高くなる。
【0047】
(固化、緻密化)
このような条件でのスプレイフォーミング法より得られたAl合金プリフォーム体は、気孔率が例えば10体積%程度のままが得られる。因みに、このプリフォームのままでは気孔率が高く、靱性が不足するため、プリフォームを脱気あるいはプリフォームの空孔を圧潰して緻密化するプリフォームの固化を行なう必要がある。
【0048】
この固化の方法としては、プリフォーム体をAlなどの金属容器に入れて真空封入した上で、熱間で押出加工して固化(緻密化)させることが好ましい。この際は、Al合金の酸化を防止して、酸素が低い状態を維持するために、プリフォーム体を直接熱間加工するのではなく、純アルミニウムや適宜のアルミニウム合金などの金属製の収容容器に入れて、真空封入した上で熱間加工することが好ましい。
【0049】
この他、プリフォーム体や前記急冷粉末冶金法によって得られた粉末は、鍛造、圧延、あるいは、押出、鍛造、圧延を適宜組み合わせた熱間加工によって、固化(緻密化)させても良い。
【0050】
この際、熱間加工の前に、上記得られたプリフォーム体や粉末を、一旦真空容器中に密封するなどしてCIPやHIP処理を行なって固化(空孔、気孔の圧潰)成型し、予め(予備的に)緻密化しても良い。但し、HIP処理などは、高温に長時間Al合金(プリフォーム体)を曝すことになるので、金属間化合物が粗大化しやすくなる。このため、前記した通り、スプレイフォーミング法よるプリフォーム体では、このHIP処理などの予備的な緻密化処理はしない方が好ましい。
【0051】
前記した鍛造、押出、圧延の熱間加工における加工温度は425〜500℃の範囲と、比較的低くすることが好ましい。このような加工温度範囲において熱間加工すると、Al基金属間化合物相を含めた金属間化合物が微細化されるとともに、均一に分散される。熱間加工における加工温度が高すぎると、金属間化合物が粗大化する。一方、加工温度が低過ぎると、熱間加工による緻密化が達成できない。
【0052】
同様の主旨で、これらの熱間加工における加工率はできるだけ大きくする。熱間押出の場合は、押出比を6以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上として、また、熱間圧延や熱間鍛造の場合には、加工率を70%以上とする。押出比や加工率がこれより小さ過ぎると、熱間加工による緻密化が達成できない可能性が高い。
【0053】
この熱間加工後の固化(緻密化)したAl合金は、更に、480〜520℃×2〜8時間程度の溶体化処理および100〜150℃×10〜50時間程度の時効硬化処理を行なうT6処理(調質処理)を施されて、本発明Al合金である、Al−Zn−Mg−Cu系の7000系製品Al合金(部品、部材などの素材)を得る。
【0054】
この製品Al合金は、自動車部品、電子材料用端末機械、精密機械部品などの用途に応じて、所望の部材乃至部品形状に、転造などの冷間にて成形加工されて、その用途の部材乃至部品とされる。
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0056】
下記表1に示す各成分組成のAl−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金溶湯をスプレイフォーミングするが、下記表2に示すように、噴霧ガスの種類、G/M比、堆積速度などのスプレイ条件を変えて、最終的に得られるAl合金組織中の晶析出物の大きさなどを制御、変化させて、このAl合金の機械的特性と疲労強度への影響を調査、評価した。
【0057】
具体的には、下記表1に示すA〜Tまでの各成分組成(A〜Mが発明例組成、N〜Tが比較例組成)のAl合金の溶湯を、共通して1000℃の溶解温度で溶解してスプレイフォーミングした。
【0058】
これによって得た各プリフォーム体を、共通して、HIP処理などの予備的な緻密化処理をせずに、アルミ容器に入れて真空封入した上で、加工温度460℃、押出比を15として、直接熱間押出加工して固化させ、10mmφの丸棒を得た。その後このAl合金丸棒を、やはり共通して、500℃×5時間の溶体化処理を行なった後、125℃×30時間の時効硬化処理を行なうT6処理(調質処理)を施して、Al−Zn−Mg−Cu系の7000系製品Al合金を得た。
【0059】
これら得られたAl合金から試験片を採取して、これらのAl合金に含まれる晶析出物の大きさを各々調査するとともに、これらのAl合金の機械的特性と疲労強度を以下のようにして調査した。これらの結果を各々表2、3に示す。
【0060】
(晶析出物)
試験片のAl合金組織を、前記した反射電子法による倍率5000倍のSEM(走査型電子顕微鏡)により50視野観察し、視野内に観察される各晶析出物を画像処理して、個々の大きさを、面積が等価な円の直径に換算して算出し、この換算した大きさ(μm)の内の、最大の大きさのものを、最大の寸法として各々表2、3に示す。
【0061】
(強度、伸び)
各例とも、前記得られたAl合金を切断して得た、8.0mmφ、長さ90mmの丸棒試験片の押出方向(試験片長手方向)の室温引張り試験を行い、引張強度(MPa)、全伸び(%)を測定した。室温引張り試験はJIS Z2241(1980)に基づき、室温20℃で試験を行った。引張り速度は5mm / 分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。
【0062】
(疲労強度)
各例とも、前記得られたAl合金を切断して得た、8.0mmφ、長さ90mmの丸棒の、中央部の長さ20mm部分を、各々両側からテーパ(各5mm長さ)を設けて、5.0mmφの小径に切削した試験片とした。この試験片を、材料の耐久性評価に汎用される小野式回転曲げ試験機により、試験片を曲げながら(応力を負荷しながら)107 回の回転数だけ回転させた際の、破断しない最低応力(MPa)を疲労強度とした。
【0063】
表1、2から明らかなように、各発明例1〜18は、本発明組成のAl合金(溶湯)A〜Mを用い、発明例16、19を除き、窒素ガスによる好ましいG/M比、堆積速度などのスプレイ条件下でスプレイフォーミングを行なっている。
【0064】
この結果、各発明例1〜18は、Al合金に含まれる晶析出物の最大の大きさが0.5μm以下である。それゆえ、Al合金の疲労強度として、破断しない最低応力が350MPa以上であり、引張強度の50%近く(48%程度)にまで著しく向上させている。また、各発明例1〜18は、常温での機械的な特性としても、700MPa以上の引張強度を有し、かつ、引張強度が700MPa以上、800MPa未満の場合には15%以上の伸びを有するとともに、引張強度が800MPa以上の場合には10%以上の伸びを有する。したがって、構造材として要求される強度や疲労強度、あるいは構造材への冷間加工性などを満足できる。
【0065】
ただ、発明例の中でも、スプレイフォーミングの際の、G/M比が比較的低い発明例14や、堆積速度が比較的速い発明例18は、他の発明例に比して、疲労強度が比較的低い。また、発明例16、19も、疲労強度や常温での機械的な特性に優れているものの、発明例16はG/M比が好ましい条件からすると高すぎ、発明例19は堆積速度が好ましい条件からすると遅すぎ、生産性が低い。
【0066】
これに対して、比較例20〜26は、合金組成が範囲から外れる表1の合金N〜Tを用いている。この内、比較例20はZnが下限に外れる合金Nを用いている。比較例22はMgが下限に外れる合金Pを用いている。比較例24はCuが下限に外れる合金Rを用いている。また、比較例21はZnが上限に外れる合金Oを用いている。比較例23はMgが上限に外れる合金Qを用いている。比較例25はCuが上限に外れる合金Sを用いている。
【0067】
このため、これら比較例は、好ましい製造方法で製造され、Al合金に含まれる晶析出物の最大の大きさが0.5μm以下であるものの、疲労強度や常温での機械的な特性が劣っている。即ち、疲労強度は、引張強度の50%近くあるものの、引張強度自体が700MPa未満、疲労強度も340MPa未満と低く過ぎる。したがって、これら比較例は、構造材として要求される強度や疲労強度を満足できていない。
【0068】
また、比較例26はFeとMnの合計含有量が、積極的に含有させるにしても多すぎる合金Tを用いている。このため、比較例26は、好ましい製造方法で製造されているものの、FeとMnの作用によって、Al合金に含まれる晶析出物の最大の大きさが0.5μmを超え、疲労強度や常温での機械的な特性が劣っている。
【0069】
比較例27は、合金組成が範囲内である表1の合金Aを用いているが、G/M比が低すぎる。このため、比較例27は、Al合金に含まれる晶析出物の最大の大きさが0.5μmを超え、疲労強度や常温での機械的な特性が劣っている。
【0070】
比較例28は、合金組成が範囲内である表1の合金Aを用いているが、堆積速度が速すぎる。このため、比較例28は、Al合金に含まれる晶析出物の最大の大きさが0.5μmを超え、引張強度は高いものの、疲労強度が劣っている。
【0071】
比較例29は、合金組成が範囲内である表1の合金Aを用いているが、噴霧ガスとして空気を用いている。このため、比較例29は、スプレイフォーミングの際の条件は好ましい範囲内で、Al合金に含まれる晶析出物の最大の大きさが0.5μm以下であり、引張強度は高いものの、特に疲労強度が劣っている。
【0072】
以上の結果から、Al−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金が高強度と高延性、および高疲労強度を満足するための、本発明各要件や好ましい各要件の、臨界的な意義が裏付けられる。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明は、急冷凝固粉末乃至プリフォーム体を固化させたAl−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金であって、高強度な割に高延性であるとともに、疲労強度も高く、構造用部品や部材としての信頼性に優れたAl合金およびその製造方法を提供できる。したがって、その用途に応じて、高延性を利して所望の形状に冷間などで成形加工され、高強度を利して所望の部材、部品とされる、自動車部品、電子材料用端末機械、精密機械部品などに好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
急冷凝固法により得られたAl合金であって、質量%で、Zn:5〜12%、Mg:2〜4%、Cu:1〜2%を各々含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、このAl合金組織の反射電子法による倍率5000倍のSEMにて観察される各晶析出物の、面積が等価な円の直径に換算した大きさの内、最大の大きさが0.5μm以下であることを特徴とする高疲労強度Al合金。
【請求項2】
前記Al合金が、更に、Agを0.01〜0.1質量%含有する請求項1に記載の高疲労強度Al合金。
【請求項3】
前記Al合金が、更に、Si、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、Zr、TiおよびVから選ばれた一種または二種以上を合計で0.1〜0.5質量%含有する請求項1または2に記載の高疲労強度Al合金。
【請求項4】
質量%で、Zn:5〜12%、Mg:2〜4%、Cu:1〜2%を各々含み、更に、Agを0.01〜0.1質量%か、Si、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、Zr、TiおよびVから選ばれた一種または二種以上を合計で0.1〜0.5質量%を選択的に含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl合金溶湯を、G/M比を4〜15Nm3 /kgの範囲とした不活性ガスによって、噴霧された溶湯のプリフォーム上への堆積速度が1〜2.5g/mm2 /sの範囲で、スプレイフォーミングし、これによって得たプリフォーム体を金属容器に入れて真空封入した上で、熱間押出加工して固化させ、その後調質処理してAl合金を得るとともに、このAl合金組織の反射電子法による倍率5000倍のSEMにて観察される各晶析出物の、面積が等価な円の直径に換算した大きさの内、最大の大きさを0.5μm以下とすることを特徴とする高疲労強度Al合金の製造方法。

【公開番号】特開2009−35766(P2009−35766A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199599(P2007−199599)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】