説明

高硬度及び低熱膨張係数を有する鉄−ニッケル合金めっき皮膜の製造方法

【課題】電気めっき方法で形成される鉄−ニッケル合金めっき皮膜について、熱処理後においても皮膜硬度の低下が生じ難い新規な鉄−ニッケル合金めっき皮膜の形成方法を提供する。
【解決手段】ニッケル塩、第一鉄塩、錯化剤及び緩衝剤を含む水溶液中に平均粒径3μm以下の微粒子を分散させた鉄−ニッケル合金めっき液中で、電気めっき法によって該微粒子が共析した鉄−ニッケル合金めっき皮膜を形成した後、形成されためっき皮膜を400℃以上の温度で熱処理することを特徴とする、低膨張特性及び高硬度を有する鉄−ニッケル合金めっき皮膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高硬度及び低熱膨張係数を有する鉄−ニッケル合金めっき皮膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄−ニッケル合金は、鉄とニッケルの比率を変えることによって、様々な特性が得られることから工業的に広く利用されている。特に、鉄含有率50〜70%程度の鉄−ニッケル合金は、線膨張係数がFeおよびNi単体に比べ小さいことから、低熱膨張材料として半導体リードフレームや光ファイバーのパッケージ部品などの電子通信機器分野を中心に用いられている。
【0003】
近年、電子通信機器の小型、高機能化に対応した高密度実装が進み、それらに使用される部品の微細化がさらに要求されている。しかしながら、従来のプレスやエッチングなどによる加工方法では、最終製品に用いられる部品の形状や寸法精度に限界が見えつつある。
【0004】
これに対して、LIGAプロセスなどの光リソグラフィー技術と電鋳技術を融合させた微細加工方法によれば、高アスペクト比の形状で寸法精度の高い部品の製造が可能となる。例えば、Ni電鋳法によってメタルマスクや微細成型金型が製造されている。さらに、Ni電鋳製品に代えて、より低い線膨張係数を有する鉄−ニッケル合金の電鋳製品を用いることによって、温度変化に対して寸法安定性がより向上すると考えられる。
【0005】
このように低熱膨張性を有する鉄−ニッケル合金の電鋳製品については、幅広い利用分野が期待されるが、電気めっきによって形成された鉄−ニッケル合金皮膜は、合金相が溶製合金とは異なるため、そのままでは溶製合金と同等の低熱膨張特性は得られず、低熱膨張特性を発現させるためには、めっき後に600℃程度で熱処理を行うことが必要となる。しかしながら、電気めっきによって形成された鉄−ニッケル合金皮膜については、熱処理を行うと皮膜硬度が大きく低下するために、鉄−ニッケル合金皮膜の有する優れた性能を十分に利用することができない(下記非特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】表面技術、第57巻、第10号、733〜737頁
【非特許文献2】表面技術、第58巻、第11号、675〜681頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、電気めっき方法で形成される鉄−ニッケル合金めっき皮膜について、熱処理後においても皮膜性能の低下、特に、皮膜硬度の低下が生じ難い新規な鉄−ニッケル合金めっき皮膜の形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、鉄−ニッケル合金めっき液中に平均粒径3μm程度以下の微粒子を分散させためっき液を用いて形成された複合鉄−ニッケル合金めっき皮膜は、熱処理を行った場合にも結晶粒の成長が抑制されて、皮膜硬度の低下を抑制できることを見出した。その結果、熱処理後の鉄−ニッケル合金皮膜は、溶製鉄−ニッケル合金と同様の低熱膨張係数を有すると共に、高硬度を有する皮膜となり、温度変化に対する安定性に優れ、高硬度を有する鉄−ニッケル合金として、各種の用途に有効に利用できることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記の高硬度及び低熱膨張係数を有する鉄−ニッケル合金めっき皮膜及びその製造方法を提供するものである。
1. ニッケル塩、第一鉄塩、錯化剤及び緩衝剤を含む水溶液中に平均粒径3μm以下の微粒子を分散させた鉄−ニッケル合金めっき液中で、電気めっき法によって該微粒子が共析した鉄−ニッケル合金めっき皮膜を形成した後、形成されためっき皮膜を400℃以上の温度で熱処理することを特徴とする、低膨張特性及び高硬度を有する鉄−ニッケル合金めっき皮膜の製造方法。
2. 形成される鉄−ニッケル合金めっき皮膜における鉄とニッケルの比率が、両者の合計量を100質量%として、鉄が60〜68質量%及びニッケルが32〜40質量%である上記項1に記載の鉄−ニッケル合金めっき皮膜の製造方法。
3. 形成される鉄−ニッケル合金めっき皮膜における微粒子の含有量が、鉄、ニッケル及び微粒子の合計量を100質量%として、0.1〜15質量%である上記項1又は2に記載の鉄−ニッケル合金めっき皮膜の製造方法。
4. 上記項1〜3のいずれかの方法によって形成される低膨張特性及び高硬度を有する鉄−ニッケル合金めっき皮膜。
5. 鉄とニッケルの比率が、両者の合計量を100質量%として、鉄が60〜68質量%及びニッケルが32〜40質量%であり、
微粒子の含有量が、鉄、ニッケル及び微粒子の合計量を100質量%として、0.1〜15質量%であり、
線膨張係数が6×10−6/℃以下であり、
ビッカース硬度が170HV以上である、
上記項4に記載の鉄−ニッケル合金めっき皮膜。
6. 微粒子が共析した鉄−ニッケル合金めっき皮膜を400℃以上の温度で熱処理することを特徴とする、低膨張特性及び高硬度を有する鉄−ニッケル合金めっき皮膜の製造方法であって、
該鉄−ニッケル合金めっき皮膜における鉄とニッケルの比率が、両者の合計量を100質量%として、鉄が60〜68質量%及びニッケルが32〜40質量%であり、
該鉄−ニッケル合金めっき皮膜における微粒子の含有量が、鉄、ニッケル及び微粒子の合計量を100質量%として、0.1〜15質量%である、
ことを特徴とする方法。
【0010】
鉄−ニッケル合金めっき浴
本発明では、基本となる鉄−ニッケル合金めっき浴としては、特に限定はなく、公知の鉄−ニッケル合金めっき浴を用いることができる。このようなめっき浴は、通常、第一鉄塩、ニッケル塩、錯化剤及び緩衝剤を含むものである。
【0011】
第一鉄塩の具体例としては、硫酸第一鉄、塩化第一鉄,スルファミン酸第一鉄等を例示できる。ニッケル塩の具体例としては、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、炭酸ニッケル、酢酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、メタンスルフォン酸ニッケル等を挙げることができる。錯化剤の具体例としては、マロン酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸、これらの有機酸の水溶性塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等を挙げることができる。これらの内で、特に、マロン酸、酒石酸、これらの水溶性塩を用いることが特に好ましい。緩衝剤の具体例としては、ホウ酸、酢酸、クエン酸等を挙げることができる。
【0012】
鉄−ニッケル合金めっき浴における各成分の具体的な配合量については、使用する成分の種類によって異なるが、後述する目的とする組成の鉄−ニッケルめっき皮膜が形成されるように公知の配合量に基づいて決めればよい。
【0013】
更に、鉄−ニッケル合金めっき浴には、必要に応じて、光沢剤、界面活性剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を加えることができる。これらの内で、光沢剤としては、サッカリンナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、ブチンジオール、プロパギルアルコール、アセチレン系化合物、ピリジニウムプロピルスルホベタイン等を例示できる。界面活性剤としては、硫酸エステル系、アルキルスルホン酸系、スルホコハク酸エステル系等の界面活性剤を例示できる。酸化防止剤としては、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸等を例示できる。
【0014】
以下、本発明に適用できる鉄−ニッケル合金めっき浴の好ましい組成範囲及びめっき条件を記載する。
【0015】
硫酸ニッケル〔NiSO4・6H2O〕 150〜300g/L
塩化ニッケル〔NiCl2・6H2O〕 30〜70g/L
ホウ酸 〔H3BO3〕 30〜45g/L
硫酸第一鉄 〔FeSO4・7H2O〕 3.4〜139g/L
サッカリンナトリウム2水和物 0.5〜6g/L
マロン酸 1〜10g/L
pH 2〜3
浴温 40〜60℃
陰極電流密度 2〜8A/dm2
本発明では、上記した鉄−ニッケル合金めっき浴に対して、平均粒径3μm以下、好ましくは平均粒径1μm以下の微粒子を分散させためっき浴を用いて、該微粒子が共析した鉄−ニッケル合金めっき皮膜を形成することが必要である。微粒子の平均粒径の下限値については特に限定的ではないが、例えば、0.005μm程度以上の粒径のものを用いることができる。
【0016】
平均粒径3μm以下の微粒子としては、後述する熱処理の際に、分解、溶解などが生じることなく、その形状を維持できるものであればよい。例えば、ダイヤモンド、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、シリカ、アルミナなどを用いることができる。これらの内で、例えば、炭化ケイ素は、後述する熱処理後の鉄−ニッケル合金めっき皮膜の熱膨張率に近い熱膨張率を有するので、温度変化に対して寸法安定性に優れた鉄−ニッケル合金めっき皮膜を形成するためには、特に有効である。
【0017】
尚、該微粒子の平均粒径は、倍率5000倍の顕微鏡で複数の視野を観察して、視野範囲内の任意に選択した100個の微粒子の粒径の平均値である。この場合、非球形の粒子については、長径の長さを粒径とする。
【0018】
鉄−ニッケル合金めっき浴中の微粒子の配合量は、形成される鉄−ニッケル合金めっき皮膜中に共析する微粒子量によって決めればよく、通常、1〜40g/L程度の範囲内とすればよい。
【0019】
鉄−ニッケル合金めっき皮膜の形成方法
上記した微粒子を分散させた鉄−ニッケル合金めっき浴を用いて、微粒子が共析した複合めっき皮膜を形成する方法としては、該合金めっき浴を撹拌して該微粒子を均一に分散させた状態において通電して、電気めっきを行えばよい。具体的なめっき条件については、使用する鉄−ニッケル合金めっき浴の種類に応じて、通常のめっき条件の範囲内から適宜決めればよい。めっき浴を撹拌する方法については、特に限定はなく、例えば、機械的撹拌法、空気撹拌法などを採用して、めっき浴中に添加した微粒子が均一に分散されるように撹拌すればよく、特に、第一鉄塩の酸化を防止するために、機械撹拌法が好ましい。
【0020】
本発明の高硬度及び低熱膨張係数を有する鉄−ニッケル合金めっき皮膜の製造方法では、上記した方法で微粒子が共析した鉄−ニッケル合金めっき皮膜を形成した後、熱処理を行うことが必要である。一般に、電気めっき法によって形成される鉄−ニッケル合金めっき皮膜は、めっき直後には、fcc相とbcc相が存在する2相合金であり、十分な低熱膨張特性を発現できないが、熱処理を施すことによって、fcc相の単相合金となり、熱膨張係数が大きく低下する。この際、通常の鉄−ニッケル合金めっき皮膜では、結晶粒が粗大化して皮膜の軟化が起こり溶製合金より低い硬度となる。これに対して、本発明方法によって形成される微粒子が共析した鉄−ニッケル合金めっき皮膜では、熱処理を行う際に、硬度の低下が大きく抑制される。この理由については明確ではないが、本発明の方法で形成される鉄−ニッケル合金めっき皮膜では、皮膜中に微粒子が点在しており、これによって熱処理の際に結晶粒の粗大化が抑制されるため、硬度低下が起こり難くなると考えられる。
【0021】
熱処理温度については、通常、400℃程度以上とすればよく、600℃以上とすることが好ましい。熱処理温度の上限については特に限定的ではなく、めっき皮膜中に含まれる微粒子が分解、溶融などを生じない温度であればよいが、過度に高温とすることは経済的に不利である。通常、800℃程度以下とすればよい。
【0022】
熱処理の雰囲気については、特に限定的ではないが、めっき皮膜の酸化による変質を避けるためには、不活性ガス雰囲気、還元性雰囲気などの非酸化性雰囲気とすることが好ましい。
【0023】
熱処理時間については特に限定的ではなく、めっき皮膜の膜厚などによって異なるが、通常、3分〜1時間程度の範囲とすればよい。
【0024】
鉄−ニッケル合金めっき皮膜
上記した方法で熱処理を行って得られる鉄−ニッケル合金めっき皮膜は、熱処理によって膨張係数が低下して低膨張特性を有するものとなる。更に、熱処理の際に、硬度の低下が抑制されており、高硬度及び低熱膨張係数を有する鉄−ニッケル合金めっき皮膜となる。
【0025】
鉄−ニッケル合金めっき皮膜の組成については、特に限定的ではないが、特に、鉄とニッケルの合計を100質量%として、鉄60〜68質量%及びニッケル32〜40質量%程度の範囲の組成の鉄−ニッケル合金は、熱処理によって膨張係数が大きく低下する点で好ましい。
【0026】
鉄−ニッケル合金めっき皮膜中に共析する微粒子の比率についても特に限定的ではないが、熱処理による硬度の低下を抑制するためには、鉄、ニッケル及び微粒子の合計量を100質量%として、微粒子量を0.1〜15質量%程度とすることが好ましく、1〜12質量%程度とすることがより好ましい。微粒子の量が少なすぎる場合には、硬度低下を抑制する効果が十分には発現されず、一方、微粒子の量が多すぎると、めっき皮膜自体の性能の低下が生じることがあるので、好ましくない。
【0027】
熱処理後の鉄−ニッケル合金めっき皮膜の熱膨張係数については、形成されるめっき皮膜の組成、熱処理温度等によって異なるが、好ましい組成範囲であるFe:Ni(質量%)=60〜68:32:40の範囲の鉄−ニッケル合金を400℃程度以上の温度で熱処理した場合には、6×10−6/℃程度以下という低い線膨張係数を有するものとなる。
【0028】
また、熱処理後のめっき皮膜の硬度については、熱処理の際の硬度の低下が大きく抑制されており、ビッカース硬度として170HV程度以上の高い硬度を有するものとなる。
【0029】
鉄−ニッケル合金めっき皮膜の膜厚については特に限定的ではなく、通電時間を調整することによって任意の膜厚のめっき皮膜を形成できる。例えば、200μm程度以上の厚膜の鉄−ニッケル合金めっき皮膜であっても、クラックなどの異常を生じることなく、容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の鉄−ニッケル合金めっき皮膜の製造方法によれば、電気めっき法によって形成された鉄−ニッケル合金めっき皮膜について、熱膨張係数を低下させるための熱処理を行う場合にも、硬度の低下が大きく抑制されて、実用上望ましい高硬度を維持することができる。
【0031】
このため、本発明方法を適用することによって、温度変化に対して寸法安定性がよく、高硬度を有する鉄−ニッケル合金めっき皮膜を形成することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0033】
実施例1
硫酸ニッケル250g/L、塩化ニッケル40g/L、ホウ酸30g/L、硫酸第一鉄97.3g/L、サッカリンナトリウム2水和物2g/L、及びマロン酸5.2g/Lを含有するpH2.5の水溶液からなる鉄−ニッケル合金めっき浴に、平均粒径0.5μmの炭化ケイ素15g/Lを添加しためっき浴を用い、被めっき物としてステンレス板を用いて、機械撹拌下で、浴温50℃、陰極電流密度4A/dm2で5時間のめっきを行った。
【0034】
形成されためっき皮膜は、膜厚が約200μmであり、線膨張係数が10.7×10-6/℃、硬度がHV245であった。
【0035】
このめっき皮膜について、約5mPaの真空雰囲気下において、600℃、1時間の熱処理を行った。熱処理後のめっき皮膜の線膨張係数は、1.1×10-6/℃と大きく減少しており、溶製(64質量%鉄−36質量%ニッケル)合金の値とほぼ同等となった。また、熱処理後のめっき皮膜の硬度はHV196であり、高硬度が維持されていた。
【0036】
尚、めっき皮膜の組成は、蛍光X線分析法によって測定し、めっき皮膜の硬度は、マイクロビッカース硬度計(荷重0.49N)を用いて室温で測定した。また、線膨張係数については、短冊形状(5mm×20mm×0.1mm)の試料を用いて測定した熱膨張曲線から30〜100℃の範囲で求めた。熱膨張測定は、試料の伸びの検出に差動トランスを用いた示差熱膨張計を用い、N雰囲気、昇温速度5℃/minで行った。
【0037】
実施例2〜10及び比較例1
下記表1に示す浴I又は浴IIの鉄−ニッケル合金めっき浴を用い、これに、微粒子として、炭化ケイ素(SiC)又は酸化ケイ素(SiO)を添加して、微粒子を分散した鉄−ニッケル合金めっき浴を調製した。
【0038】
これらのめっき浴を用い、被めっき物としてステンレス板を用いて、下記表2に示す微粒子の添加量及び電解条件で、微粒子が共析した鉄−ニッケル合金めっき皮膜を形成した。その後、実施例1と同様にして、600℃で1時間の熱処理を行った。
【0039】
下記表3に、形成されためっき皮膜の膜厚、合金比及び微粒子の共析量を示し、更に、熱処理前と熱処理後の硬度と線膨張係数を示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
以上の結果から明らかなように、微粒子を分散させた鉄−ニッケル合金めっき浴から形成されるめっき皮膜は、熱処理を行うことによって、高硬度を維持したままで、線膨張係数を大きく低減することができる。これに対して、微粒子を含まないめっき皮膜から形成された比較例1の鉄−ニッケル合金めっき皮膜については、熱処理によって熱膨張係数が低下するが、めっき皮膜の硬度も大きく低下することが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル塩、第一鉄塩、錯化剤及び緩衝剤を含む水溶液中に平均粒径3μm以下の微粒子を分散させた鉄−ニッケル合金めっき液中で、電気めっき法によって該微粒子が共析した鉄−ニッケル合金めっき皮膜を形成した後、形成されためっき皮膜を400℃以上の温度で熱処理することを特徴とする、低膨張特性及び高硬度を有する鉄−ニッケル合金めっき皮膜の製造方法。
【請求項2】
形成される鉄−ニッケル合金めっき皮膜における鉄とニッケルの比率が、両者の合計量を100質量%として、鉄が60〜68質量%及びニッケルが32〜40質量%である請求項1に記載の鉄−ニッケル合金めっき皮膜の製造方法。
【請求項3】
形成される鉄−ニッケル合金めっき皮膜における微粒子の含有量が、鉄、ニッケル及び微粒子の合計量を100質量%として、0.1〜15質量%である請求項1又は2に記載の鉄−ニッケル合金めっき皮膜の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの方法によって形成される低膨張特性及び高硬度を有する鉄−ニッケル合金めっき皮膜。
【請求項5】
鉄とニッケルの比率が、両者の合計量を100質量%として、鉄が60〜68質量%及びニッケルが32〜40質量%であり、
微粒子の含有量が、鉄、ニッケル及び微粒子の合計量を100質量%として、0.1〜15質量%であり、
線膨張係数が6×10−6/℃以下であり、
ビッカース硬度が170HV以上である、
請求項4に記載の鉄−ニッケル合金めっき皮膜。
【請求項6】
微粒子が共析した鉄−ニッケル合金めっき皮膜を400℃以上の温度で熱処理することを特徴とする、低膨張特性及び高硬度を有する鉄−ニッケル合金めっき皮膜の製造方法であって、
該鉄−ニッケル合金めっき皮膜における鉄とニッケルの比率が、両者の合計量を100質量%として、鉄が60〜68質量%及びニッケルが32〜40質量%であり、
該鉄−ニッケル合金めっき皮膜における微粒子の含有量が、鉄、ニッケル及び微粒子の合計量を100質量%として、0.1〜15質量%である、
ことを特徴とする方法。

【公開番号】特開2011−168831(P2011−168831A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33377(P2010−33377)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行所名 社団法人表面技術協会 刊行物名 第120回講演大会 講演要旨集 発行年月日 平成21年9月7日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(596053068)京都市 (26)
【出願人】(502198607)
【出願人】(502199121)
【出願人】(510045128)
【出願人】(591021028)奥野製薬工業株式会社 (132)
【Fターム(参考)】