説明

高粘度材料用熱電対温度検出器

【課題】混練操作中の高粘度材料等の温度の計測に適した、測定対象物の温度変化を迅速に感知する高粘度材料用熱電対温度検出器を提供する。
【解決手段】この熱電対温度検出器1は、熱起電力を生ずる2種の異なる組成の金属線2a,2bの一端同士を溶着して構成される熱電対エレメント2を保護管5内に収容し、先端の感温部3を残して保護管の外周を断熱性の絶縁膜筒10で被覆する。この保護管を測温材料処理機の機体に挿入して強固に固定するために、それにシール管12を被せて二重管構造とし、保護管の周囲の絶縁膜筒と上記シール管との間の空隙11により断熱層を形成させ、上記測温材料処理機の機体と保護管との間の熱移動を抑止する。シール管12から突出した保護管の感温部において、流動する高粘度材料の温度を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムやプラスチック等の高粘度混練材料の混練機における混練槽内や、それらの混練材料の押出機シリンダー内で混練操作される当該材料の温度変化の迅速な検出に適し、該温度をゼーベック効果によって生ずる熱起電力として測定し出力する高粘度材料用熱電対温度検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴムやプラスチック等の高粘度混練材料の混練機において混練する混練物の発熱温度の計測は、保護管に熱電対エレメントを収容して温度計測する熱電対温度検出器が用いられ、この熱電対温度検出器による発熱温度の計測は、熱電対温度検出器における熱電対エレメントの検出端を混練槽の底部あるいは側壁面から僅かに槽内に突出させて、それに接触する混練物の温度を感知するようにしている。
上記温度検出器は、混練操作中の混練物の温度変化を測定し、それを自動混練制御機構に送信して計測温度を表示したり、設定された混練終了温度等において必要な動作制御を行わせるなど、見えない混練槽内の状態のセンサーとしての重要な機能を要求されるものである。
【0003】
例えば、2本の混練ローターを並列配置して噛み合うように回転させる高粘度材料の混練機では、高粘度の有機高分子材料の塊状や粒状物に無機物の磨耗性のある配合剤などが練り込まれるが、それらの混練物には、噛み合って回転する2軸の混練ローターが与える強力な混練負荷と、混練槽上方からの配合剤の浮き上がりを抑える加圧蓋の圧力負荷が掛かるため、上記熱電対エレメントは耐摩耗性と耐衝撃性を備えた強固な材質と強度を備えた保護管に収めている熱電対温度検出器として混練機の機体に装着している。
そのため、混練進度に合わせて変化する混練物の温度は、保護管を経て熱電対エレメントに伝導され、つまり、該熱電対エレメントは直接混練物の温度を感知するのではなく、保護管自体の温度に支配され、混練物の温度変化に敏感に追随するものではない。
【0004】
このような熱電対温度検出器の商用混練機での運用実態では、その測温表示値が混練機から排出した混練物の実測の温度より10℃から25℃(混練物の硬さによる差)も低いのが通例であり、これは、温度検出器の先端感温部が、激しい磨耗や、混練槽内で噛み合って回転する混練ローターから与えられる強大な混練応力と、混練槽上方からの混練物の浮き上がりを抑える加圧蓋の圧力負荷等により損傷しないように、頑丈な保護管に熱電対エレメントを格納しているため、練りゴムの温度は直接熱電対エレメントに伝わらない構造上の原因によるものと諦めているのが現状である。
【0005】
このような保護管に収容する熱電対には、接地型と非接地型とが実用されている。接地型は本発明で採用している方式で、保護管の先端に熱電対エレメント先端を溶着して、被測定物の温度を保護管の外側面で感知し、発生する熱起電力を導線経由で温度表示器へ送るものであるが、保護管の断熱性及び先端の強度を維持しながら温度変化を感知する保護管先端の熱容量を最小化する点で、満足できるものは見当たらない。一方、非接地型は、熱電対エレメントを保護管先端内壁に接触せしめて保護管の温度を感知するものであるが、時には保護管の内側に非接地状態で収容されている熱電対エレメントの温度感知端が保護管内の空気の温度を計測している場合もあって、保護管に収容した熱電対エレメントによる計測値は、被測定物の実温に敏感に追随せず、実温を正確に捕捉していない。
【0006】
また、密閉型混練機でゴム配合物を混練りする場合、混練槽内で混練物の分散を促進するため、配合材の充填率を混練槽の容積の60〜80%として、混練物の流動空間を設けている。そのため、熱電対エレメントの検出端に混練物が常時密に接触していることはなく、2軸ローターの噛み合う回転に伴って混練物が熱電対エレメントの温度検出端の感温部に接触したり離れたりして、混練槽内の流動空間を激しく移動する。つまり、混練物は温度検出端に瞬時の接触を繰り返しており、検出端に鋭敏な温度感知の追随性がない限り混練中の混練物の正確な温度を計測することができない。
【0007】
このように、現今の高い工業技術水準下にありながら、従来から用いられている密閉型混練機においては、正確な温度を数値として計器に表示できず、通常は実温度より低い温度が表示されているのが実態であり、関連する技術者らは、熱電対エレメントに対して耐摩耗性や耐衝撃性を付与することを優先する保護管の装着を理由として、計測温度と混練物の実温度の差を容認し、温度による混練りの正確な終了点の把握や、上限温度を設定して混練りを終了する精密な温度制御自動混練を犠牲にしている。そして、これは混練物の品質特性のバッチ間バラツキの要因になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高性能の温度検出器に要求される性能は、被測定物の温度計測に要する時間が短く、被測定物の温度変化に素早く追随できる機能であり、熱電対検出器の先端で感知する温度については、保護管があってもタイムラグなく温度表示することが要求される。即ち、被測温体の温度変化を正確に、かつ素早く感知して熱起電力を生じせしめ、該熱起電力を温度表示器へ確実に伝達する構造の実現に尽きる。
【0009】
本発明の技術的課題は、熱電対エレメントを保護管に収容することで被測定物の温度を正確に測定できないが、保護管を排除することもできず、そのため、熱電対エレメントを被測定物に直接触れるに近い構造で保護管内に格納できるようにし、しかも、温度検出器を装着する測温材料処理機の機体から保護管を通じて熱電対エレメントに至る熱移動を、保護管の強度を保持しながら効果的に抑制できるようにした構成の高粘度材料用熱電対温度検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明によれば、ゼーベック効果によって熱起電力を生ずる2種の異なる組成の金属線の一端同士を溶着して構成される熱電対エレメントを保護管内に収容して、上記溶着した端部により流動する高粘度材料の温度を検出する熱電対温度検出器において、上記熱電対エレメントの溶着した端部を、先端を膨出形状として閉鎖した保護管における該閉鎖部分の突端に開設した細孔に挿入して、該溶着した端部を保護管に外側から溶着することにより感温部を形成し、上記熱電対エレメントの2種の金属線をそれぞれ絶縁被覆して、保護管内をその他方開放端側が固定されている検出器本体の端子台まで導線し、上記保護管の先端の感温部を除く外周を断熱性の絶縁膜筒で被覆し、その断熱膜筒の外側に空隙を介してシール管を被せることにより、測温材料処理機の機体に装着する上記熱電対エレメントを二重管内に収容し、熱電対エレメントと上記機体との間熱伝達を上記絶縁膜筒と空隙により抑止していることを特徴とする高粘度材料用熱電対温度検出器が提供される。
【0011】
本発明に係る高粘度材料用熱電対温度検出器の好ましい実施形態においては、測温材料処理機の機体に装着する上記シール管の先端に、該シール管よりも若干大径の筒状をなす先端部材を嵌着し、該先端部材の先端に保護管の先端感温部を外部に露出させる露出孔を開設し、該感温部が突出するように該露出孔の内壁を保護管の外面の絶縁膜筒に密接させて保護管に外嵌させ、該先端部材を嵌着した該シール管を上記絶縁膜筒の外側に被せているものとすることができ、また、上記シール管に、測温材料処理機の機体における検出器装着孔に装着したときに、該検出器装着孔と上記シール管との間に形成される空隙と、該シール管と前記保護管との間に介在させている空隙とを連通させる通気孔を開設し、該通気孔において連通する上記両空隙を、上記シール管を上記機体に取り付ける固定金具を通して大気に開放しているものとして構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上に詳述した本発明の高粘度材料用熱電対温度検出器によれば、熱電対エレメントを被測定物に直接触れるに近い構造で保護管内に格納できるようにし、しかも、温度検出器を装着する測温材料処理機の機体から保護管を通じて熱電対エレメントに至る熱移動を、保護管の強度を保持しながら効果的に抑制できるようにした構成の高粘度材料用熱電対温度検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る高粘度材料用熱電対温度検出器の実施の一例を示す外形図である。
【図2】図1の熱電対温度検出器の内部構造を示す断面図である。
【図3】図2の要部拡大断面図である。
【図4】上記熱電対温度検出器を密閉型混練機の混練槽に装着した状態を示す断面図である。
【図5】試作した熱電対温度検出器を装着した密閉型混練機によるゴム混練り時の温度計測記録を示すグラフである。
【図6】図5の場合とは配合の異なる混練り時の温度計測記録を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図4は、本発明に係る高粘度材料用熱電対温度検出器の実施例を示している。この熱電対温度検出器1における温度検出のための熱電対エレメント2は、ゼーベック効果により熱起電力を生ずる2種の異なる組成の金属線2a,2b(図3参照)、例えば、アルメル線とクロメル線を、温度変化追随性の良い細い線径のものとして、それらの金属線2a,2bの一端同士を溶着することにより構成され、上記金属線2a,2bの溶着した端部2cにより形成される感温部3により、主としてゴムやプラスチックの混練機における混練槽20(図4参照)内、あるいは押出機シリンダー内等の測温材料処理機で混練操作される高粘度材料からなる被測定物の温度検出を行うものである。
【0015】
更に具体的に説明すると、上記熱電対エレメント2は、図2及び図3に詳細に示すように、それを保護管5内に収容して、上記溶着した端部2cにより、流動する高粘度材料の温度を検出するための熱電対温度検出器1とするが、その熱電対エレメント2の保護管5に対する取り付けは、まず、上記熱電対エレメント2の溶着した端部2cを、先端が半球面形の膨出形状として閉鎖された保護管5における該閉鎖部分の突端に開設した細孔5aに、保護管5の内方側から挿入し、該端部2cを保護管5に対するその外側からの肉盛り溶接により細孔5a内に溶着して、接地状態で保護管5に封入固定すると共に、該溶接に伴う肉盛り部5cにより保護管5の先端を補強し、それにより、上記熱電対エレメント2の感温部3を形成させている。この構成は、保護管5の強度を維持しながら混練物の温度変化を感知する保護管先端の感温部3の熱容量を最小化するために有効なものである。
【0016】
また、上記保護管5内に挿通されている熱電対エレメント2の2種の金属線2a,2bは、それぞれ絶縁被覆4で被覆し、保護管5の内壁や金属線2a,2b同士が電気的に接触しないようにして、保護管5内を他方の開放端側に導線し、該保護管5が固定金具6により固定されている検出器本体7内に設けた端子台8まで導線して、そこにに結線している。上記端子台8に結線した熱電対エレメント2の2種の金属線2a,2bは、検出器本体7内から導電線を介して外部に導出することにより各種計器類に接続され、被測定物の温度が熱起電力に基づく温度数値として表示され、あるいは制御信号として利用される。
【0017】
上記保護管5は、その先端の感温部3を除く全長の外周を断熱性及び電気絶縁性を有する絶縁膜筒10で被覆し、その絶縁膜筒10の外側に空隙11を介在させてシール管12を被せることにより、上記熱電対エレメント2を、上記保護管5とシール管12との二重管により機械的に保護すると同時に、それらの金属線2a,2bを断熱して検出器本体7側に導出できるようにしている。即ち、前記混練槽20等の測温材料処理機の機体に装着する上記シール管12は、その先端に該シール管12よりも若干大径の筒状をなす先端部材12aを嵌着し、該先端部材12aの先端に保護管5の先端感温部3を外部に露出させる露出孔12bを開設し、該感温部3が突出するように該露出孔12bの内壁を保護管5の外面の絶縁膜筒10に密接させて保護管5に外嵌させ、該先端部材12aを嵌着した該シール管12を、上記空隙11を介して上記絶縁膜筒10の外側に被せている。従って、上記絶縁膜筒10及びその外側の空隙11が、保護管の外周で該保護管5とシール管12との間に介在する断熱層を形成することになる。
【0018】
シール管12の基端側の固定端12cは、この熱電対温度検出器1を混練槽20等の測温材料処理機の機体に取り付けるための固定金具6に開設したシール管固定孔6aに嵌入して保持させ、また、上記シール管12内に挿通している上記保護管5の基端は、固定金具6における上記シール管固定孔6aの内底中央から、該固定金具6の検出器本体7への取付部6bを貫通する保護管固定孔6cに挿通し、挿通した保護管5の先端5bを、該保護管固定孔6cを貫通した側において固定金具6の取付部6bの先端に溶接することにより固定している。そして、上記固定金具6は、その取付部6bを検出器本体7に設けた取付孔7aに嵌入して該検出器本体7に固定している。従って、上記熱電対エレメント2を構成する金属線2a,2bは、保護管5内を通して固定金具6を貫通し、端子台8に導かれている。
【0019】
上記構成を有する熱電対温度検出器1は、図4に例示しているように、2本の混練ローター21を並列配置して噛み合うように回転させるゴム等の混練槽20における上記2本の混練ローター21間の区画壁20a等に取り付けて、混練りするゴム等の高粘度材料の温度検出に供するものである。上記混練槽20等に上記熱電対温度検出器1を取り付けるため、該混練槽20等における温度検出器1の取付部位には検出器装着孔22が開設されるが、該検出器装着孔22は、混練物の漏出を阻止するため、混練槽20内に突出するシール管12の先端部材12aが密に嵌入できるように、その開口径が先端部材12aを高精度に嵌合いできるものとして構成される。
【0020】
また、該先端部材12aはシール管12よりも大径であるため、その先端部材12aが嵌入される検出器装着孔22は、混練槽20の外側部位で該装着孔22にシール管12が嵌挿されている部位においては、必然的に検出器装着孔22がシール管12よりも大径になって、該装着孔22とシール管12との間に空隙24が形成されるが、該装着孔22と同心で混練槽20の外側に開くシール管12の挿入導孔22aは、該装着孔22よりも更に大径に開削され、結果的に、上記検出器装着孔22の入り口側の挿入導孔22aに固定金具6のねじ部6dを螺挿してロックナット6eで固定したとき、上記シール管12と上記検出器装着孔22及び挿入導孔22aの内面との間に断熱のための上記空隙24が形成されることになる。上記混練槽20等における温度検出器1の取付部位に設ける検出器装着孔22の開口径が、シール管12の先端部材12aを高精度に嵌合いできることは、上記混練物の漏出の阻止にも必要であるが、混練槽20に対して上記シール管12が強固に固定され、結果的に、感熱性を高めるために熱容量が小さい薄肉に形成される保護管5を測温材料処理機の機体に断熱状態で安定的に固定するためにも有効なものである。
【0021】
上記シール管12の混練槽20への固定に当たり、混練槽20における上記検出器装着孔22及び挿入導孔22aの内部に位置するシール管12には1個以上の通気孔12dを開設して、二重管を構成する保護管5とシール管12との間の空隙11を、シール管12の外側の検出器装着孔22及び挿入導孔22aとの間に形成される空隙24と連通させている。また、上記空隙24は、上記シール管12を上記機体に取り付ける固定金具6に孔または溝として形成した1または複数の通気流路6fを通して大気に連通させている。
【0022】
このように、上記保護管5とシール管12とにより二重管を構成し、保護管5の周囲の上記絶縁膜筒10がシール管12との間の熱伝達を抑止すると同時に、保護管5とシール管12の間の空隙11、並びに混練槽20の検出器装着孔22及び挿入導孔22aとシール管12との間の空隙24が大気に連通することにより、そこに機外の比較的変動の少ない温度の空気膜が形成され、混練槽20から保護管5の感温部3への熱移動が抑止されて、感温部3の温度を安定させることができる。
【0023】
即ち、混練槽20の機体温度が上昇すると、シール管12の周囲の空隙24に滞留する空気が混練槽20の機体から伝わる熱で加熱され、熱膨張して固定金具6の通気流路6fを通して大気に放出され、更に、保護管5とシール管12との間の空隙11中の空気も、通気孔12dを通してシール管12の外壁と挿入導孔22aとの間に流れ出し、固定金具6の通気流路6fを経て機体外へ流出し、また、上記通気孔12d及び通気流路6fはその適数を適切に配置することにより、それらの一部から外気を流入させてシール管12等への蓄熱を抑制することができる。
【0024】
この通気流路6fから出入りする空気量は極めて微量であると推定されるが、混練槽からの加熱および混練槽への奪熱等の、感温部3における感温への外乱要因を排除して、感温部3が被測定物の温度変化をより正確に感知し、熱起電力を温度計器へ伝送させることができる。なお、上記空隙11,24の空気膜が保護管5を外部温度の影響から断熱保護するものとして有効であることは、後述する図5及び図6に示す実験例において温度変化の勾配が顕著に表示されることで検証できている。
【0025】
上記構成を有する熱電対温度検出器においては、熱電対エレメント2を構成する金属線2a,2bを保護管5の先端に接地して溶着封入しているので、混練物の感温速度が格段に早くなり、以下に図5及び図6を参照して説明する実験例等によってそれを確認している。
【0026】
図5及び図6により説明する実験例は、上記実施例として説明した図1〜図3の高粘度材料用熱電対温度検出器1を、ゴム配合物を混練りする混練機の混練槽20に図4に示すように装着して、ゴム配合物を混練りした場合の温度計測例である。
図5及び図6においては、配合の異なる2種のゴムの混練りを行った場合の混練機の混練駆動電力、混練ローター21の回転数、混練槽20上方からの混練物の浮き上がりを抑える加圧蓋のウエイト圧による圧力負荷、及び上記熱電対温度検出器1により測定した混練物の温度についての時間的変動を、コンピューター制御装置へ取り込んでグラフ化した混練記録を示している。
【0027】
まず、図5の混練記録は、上記コンピューター制御装置による自動混練制御で、混練り終了温度を80℃に設定し、50kgのゴムコンパウンドに加硫剤を添加して混練りした場合のもので、混練時間が約120秒で80℃に達し、混練終点となって混練ローター21が自動停止したので混練物を排出した。排出した練りゴムを作業担当者が白金抵抗式温度計で直ちに測温した結果、78.8℃を示した。これに対し、自動制御系の熱電対温度検出器1に基づく温度表示は、78.6℃を記録した。混練終点の温度表示値に対して排出した練りゴムの実温度差は+0.2℃高い値を示したが、これは部分的な温度のバラツキ、あるいは測定誤差の範囲と推定される。
【0028】
図6の試験練記録は、フルコンパウンド練りで約8分間の練り状態を記録したものである。混練終点の設定値は自動設定で150℃、白金抵抗式温度計による排出ゴムの実測温度は、149.4℃であって、0.6℃低い結果を示したが、表示温度より実測温度が低いことはあり得ず、この混練温度実測値は±0℃である。試験練りの経過をアナログ記録した推移を見ると、混練駆動電力の消費曲線が示す混練状態の電力の消費(低減)推移曲線A(硬いゴムが可塑化されていく状態)と同じタイミングで混練物の昇温曲線B(混練による摩擦蓄熱の上昇)を記録しており、混練終点で混練物を排出した後の混練機内の温度降下曲線C(混練槽内の空気温度)においても、混練物の排出と同時に曲線が急角度で降下しているように、感温追随性は好ましい記録を残している。
【0029】
昇温曲線Bと温度降下曲線Cは、細かく上下する温度変化を記録しているが、この上下変化は、感温部3に混練物が接触したり離れたりする挙動の温度変化を微細に感知していることを示している。このような精密かつ正確な温度計測は、従来の混練機で使われた熱電対温度センサーでは得られなかったものである。従来の混練りでは、過剰混練により制御設定温度より高い温度(10〜20℃)の練りゴムを排出しており、この過熱からゴム品質を維持するために高価な耐熱性老化防止剤の配合量が過多になり勝ちであったが、本発明の熱電対温度検出器による上述の正確な温度計測により、温度による正確な混練りの終了点の把握に伴う省エネルギー混練を実現し、また、従来は実用し難かった温度制御混練の実用性を高めることができ、温度制御混練を行った場合のバッチ毎の混練品質特性のバラツキを小さくすることができる。
【0030】
この成果は、従来、混練物の品質管理指標として活用しているアナログ記録計に表示される消費電力曲線と温度曲線の記録について、本来の品質管理指標としての有効性を高めるものであり、従って、本発明によれば、ゴムの高温混練が齎す品質特性のバラツキを極限まで圧縮可能にする混練機等の測温材料処理機に装備する熱電対温度検出器を供することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 熱電対温度検出器
2 熱電対エレメント
2a,2b 金属線
2c 端部
3 感温部
5 保護管
5a 細孔
6 固定金具
6f 通気流路
7 検出器本体
8 端子台
10 絶縁膜筒
11 空隙
12 シール管
12a 先端部材
12b 露出孔
12d 通気孔
22 検出器装着孔
24 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼーベック効果によって熱起電力を生ずる2種の異なる組成の金属線の一端同士を溶着して構成される熱電対エレメントを保護管内に収容して、上記溶着した端部により流動する高粘度材料の温度を検出する熱電対温度検出器において、
上記熱電対エレメントの溶着した端部を、先端を膨出形状として閉鎖した保護管における該閉鎖部分の突端に開設した細孔に挿入して、該溶着した端部を保護管に外側から溶着することにより感温部を形成し、上記熱電対エレメントの2種の金属線をそれぞれ絶縁被覆して、保護管内をその他方開放端側が固定されている検出器本体の端子台まで導線し、
上記保護管の先端の感温部を除く外周を断熱性の絶縁膜筒で被覆し、その断熱膜筒の外側に空隙を介してシール管を被せることにより、測温材料処理機の機体に装着する上記熱電対エレメントを二重管内に収容し、熱電対エレメントと上記機体との間熱伝達を上記絶縁膜筒と空隙により抑止している、
ことを特徴とする高粘度材料用熱電対温度検出器。
【請求項2】
測温材料処理機の機体に装着する上記シール管の先端に、該シール管よりも若干大径の筒状をなす先端部材を嵌着し、該先端部材の先端に保護管の先端感温部を外部に露出させる露出孔を開設し、該感温部が突出するように該露出孔の内壁を保護管の外面の絶縁膜筒に密接させて保護管に外嵌させ、該先端部材を嵌着した該シール管を上記絶縁膜筒の外側に被せている、
ことを特徴とする請求項1に記載の高粘度材料用熱電対温度検出器。
【請求項3】
上記シール管に、測温材料処理機の機体における検出器装着孔に装着したときに、該検出器装着孔と上記シール管との間に形成される空隙と、該シール管と前記保護管との間に介在させている空隙とを連通させる通気孔を開設し、該通気孔において連通する上記両空隙を、上記シール管を上記機体に取り付ける固定金具を通して大気に開放している、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の高粘度材料用熱電対温度検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−21817(P2012−21817A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158220(P2010−158220)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(390040039)鈴鹿エンヂニヤリング株式会社 (6)
【Fターム(参考)】