高粘度液状食品気泡混入の非破壊検査方法
【課題】 容器充填あるいは製造プラント中の各種高粘度液状食品の非破壊検査を行えるようにする。
【解決手段】 容器充填商品について、容器形状に合せた容器収容電極と容器上に載置するプレート電極の静電容量をLCRメーターによって測定する。製品崩れ、気泡混入等があると、静電容量が増加することから、その増変化を指標として容器内の高粘度食品の状況を把握する。製造プラントの充填パイプに平行一対平板のプレート電極を配置し同様にLCRメーターで静電容量の増変化を測定することによって、充填パイプ中の高粘度液状食品の泡噛みの有無を把握することもできる。ヨーグルト、上記高粘度液状食品を、ヨーグルト、プリン、ゼリー、豆腐、茶碗蒸し、ジャム、ケチャップ、蜂蜜等の各種食品に適用できる。
【解決手段】 容器充填商品について、容器形状に合せた容器収容電極と容器上に載置するプレート電極の静電容量をLCRメーターによって測定する。製品崩れ、気泡混入等があると、静電容量が増加することから、その増変化を指標として容器内の高粘度食品の状況を把握する。製造プラントの充填パイプに平行一対平板のプレート電極を配置し同様にLCRメーターで静電容量の増変化を測定することによって、充填パイプ中の高粘度液状食品の泡噛みの有無を把握することもできる。ヨーグルト、上記高粘度液状食品を、ヨーグルト、プリン、ゼリー、豆腐、茶碗蒸し、ジャム、ケチャップ、蜂蜜等の各種食品に適用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨーグルト、豆腐、茶碗蒸し、ジャム、ケチャップ、蜂蜜等の工場の容器充填前のインライン乃至容器充填した高粘度液状食品における気泡混入を非破壊的に検査する高粘度液状食品気泡混入の非破壊検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工における気泡混入の有無を非破壊的に検査する検査方法として、下記非特許文献1は、食品、特にオリーブ油の静電容量を測定し、オリーブ油に気泡混入を行ったとき、該静電容量が低下する事実に基づいて、γ線透過法、探針による検出法に代えて、静電容量の低下を指標として気泡混入を判定することができるとする実験結果を報告している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「静電容量変化を利用した気泡検出法の開発」(広島工業大学研究紀要 第7巻第2号 107〜111(1973)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1は、静電容量を測定することによって、オリーブ油の気泡混入の有無を判定し得るとするものであるところ、ヨーグルト、豆腐、茶碗蒸し、ジャム、ケチャップ、蜂蜜等の高粘度液状食品は、それが高粘度であることによって、気泡混入時にオリーブ油とは異なる挙動を呈する可能性があり、従って非特許文献1を高粘度液状食品に適用することはできない。
【0005】
即ち、高粘度液状食品、例えばヨーグルトは、一般に原材料の混合、スターター接種培養、容器充填等の一連の製造工程を伴うところ、例えば前発酵済みのものを崩してゲル化剤、糖類等を混合して容器充填するハードヨーグルト乃至糖類、果肉等を混合して容器充填するソフトヨーグルトにあっては、該ヨーグルトをパイプ輸送する際や容器充填時に泡噛み、気泡混入を招く可能性があり、また容器充填後にクレートに収容して後発酵を行うものにあっては、搬送時の振動等により製品崩れが生じる可能性があるが、これらパイプ中の泡噛み、容器充填時の気泡混入、クレート収容後の製品崩れは、商品苦情等の原因となって商品価値を低下させる要因となるため、これら泡噛み、気泡混入、カード崩れがあったとき、その選別排除を行う必要があるところ、該選別排除は、これを密封容器の外観検査によって行うことができず、従って、ヨーグルト等の食品にあっては、これらに適した非破壊検査をなし得るようにする必要がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、その解決課題とするところは、高粘度液状食品製造の工場における容器充填前のインラインによる泡噛みや該高粘度液状食品を充填した充填容器における製品崩れ、気泡の混入を非破壊的に検査可能な高粘度液状食品気泡混入の非破壊検査方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に沿って研究したところ、ヨーグルト、豆腐、茶碗蒸し、ジャム、ケチャップ、蜂蜜等の高粘度液状食品にあって、該高粘度液状食品に製品崩れや気泡混入があるとき、その静電容量の変化を測定すると、静電容量が増変化する事実を見出すに至った。従って、該静電容量の増変化の有無を検査することによって、高粘度液状食品のインラインの泡噛みを非破壊的に検査してこれを監視し、また、高粘度液状食品を充填した充填容器における製品崩れや気泡混入を非破壊的に検査して、その選別出荷を行う等の措置を採ることが可能となるとの知見を得た。
【0008】
本発明はかかる知見に基づいてなされたもので、即ち、請求項1に記載の発明を、高粘度液状食品を非破壊的に検査する検査方法であって、高粘度液状食品における静電容量増変化を測定し、該静電容量増変化を指標として該高粘度液状食品のプラントパイプ内の泡噛み、充填容器中の崩れ損傷乃至気泡混入を非破壊的に判定することを特徴とする高粘度液状食品の非破壊検査方法としたものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、製品崩れや気泡混入の有無乃至程度の非破壊検査の対象を、高粘度液状食品を充填した充填容器として、該充填容器の充填密封状態における気泡混入を有効且つ確実に検査し得るように、これを、上記静電容量増変化の測定を、高粘度液状食品充填容器を被嵌配置して該充填容器を収容し又は該充填容器の両側面に対向配置して該充填容器を挟持する容器側電極と、該容器の上面に配置したプレート電極を両極として、該食品容器中の高粘度液状食品の崩れ損傷乃至気泡混入を非破壊的に判定することを特徴とする請求項1に記載の高粘度液状食品の非破壊検査方法としたものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、同じく非破壊検査の対象を、容器充填後に容器内発酵乃至容器内ゲル化を行って完成品とするヨーグルト、プリン、ゼリー等の嗜好食品とすることによって、容器充填後の、例えば、クレート搬送等の振動や衝撃によって生じることのある製品崩れや気泡混入を直接に容器外から有効且つ確実に把握し、その選別出荷を行う等の措置を採り得るように、これを、上記高粘度液状食品を、ヨーグルト、プリン、ゼリー等の加熱充填後に容器内発酵乃至容器内ゲル化を行う嗜好食品とし、該食品の出荷前に非破壊的判定を行うことを特徴とする請求項2に記載の高粘度液状食品の非破壊検査方法としたものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記各種の高粘度液状食品の製造工程において、その終了後に容器に充填する充填ラインにおいて直接にライン外から有効且つ確実に把握し、インラインの泡噛みのあるとき、その充填前に充填を停止して、泡噛みの気泡混入充填を回避する措置を採り得るように、これを、上記静電容量増変化の測定を、高粘度液状食品の製造プラントの充填パイプ中に配置した平行一対のプレート電極を用いることによって、該充填パイプ中の高粘度液状食品の泡噛みを非破壊的にインライン判定することを特徴とする請求項1に記載の高粘度液状食品の非破壊検査方法としたものである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、高粘度液状食品の粘性率と静電容量は相関関係にあることから、該粘性率を測定することによって、静電容量増変化の測定に代えて、該静電容量増変化の判定を行うことができるように、これを、上記静電容量増変化の判定を、上記静電容量増変化の測定に代えて、高粘度液状食品の粘性率と静電容量との相関関係に基づいて、該高粘度液状食品の粘性率を測定することによって行うことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の高粘度液状食品の非破壊検査方法としたものである。
【0013】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のとおりに構成したから、請求項1に記載の発明は、高粘度液状食品の静電容量の増変化の有無を検査することによって、高粘度液状食品製造の工場における容器充填前のインラインによる泡噛みや該高粘度液状食品を充填した充填容器における製品崩れ、気泡の混入を非破壊的に検査可能な高粘度液状食品気泡混入の非破壊検査方法を提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、製品崩れや気泡混入の有無乃至程度の非破壊検査の対象を、高粘度液状食品を充填した充填容器として、該充填容器の充填密封状態における気泡混入を有効且つ確実に検査し得るものとすることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、同じく非破壊検査の対象を、容器充填後に容器内発酵乃至容器内ゲル化を行って完成品とするヨーグルト、プリン、ゼリー等の嗜好食品とすることによって、容器充填後の、例えば、クレート搬送等の振動や衝撃によって生じることのある製品崩れや気泡混入を直接に容器外から有効且つ確実に把握し、その選別出荷を行う等の措置を採り得るものとすることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記各種の高粘度液状食品の製造工程において、その終了後に容器に充填する充填ラインにおいて直接にライン外から有効且つ確実に把握し、インラインの泡噛みのあるとき、その充填前に充填を停止して、泡噛みの気泡混入充填を回避する措置を採り得るものとすることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、高粘度液状食品の粘性率と静電容量は相関関係にあることから、該粘性率を測定することによって、静電容量増変化の測定に代えて、該静電容量増変化の判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】静電容量測定装置を示す概念図である。
【図2】平行平板電極の斜視図である。
【図3】ヨーグルト仕込み濃度10%の静電容量測定結果を示すグラフである。
【図4】ヨーグルト仕込み濃度20%の静電容量測定結果を示すグラフである。
【図5】容器充填のヨーグルトの静電容量測定装置を示す説明図である。
【図6】粘性率測定装置を示す概念図である。
【図7】静電容量測定結果を示すグラフである。
【図8】粘性率測定結果を示すグラフである。
【図9】静電容量と粘性率の相関関係を示すグラフである。
【図10】ヨーグルトの充填パイプの静電容量測定装置を示す概念図である。
【図11】測定周波数10Hzの気泡ありの静電容量測定結果を示すグラフである。
【図12】測定周波数10Hzの気泡なしの静電容量測定結果を示すグラフである。
【図13】測定周波数10Hzのヨーグルト流動状態の静電容量測定結果を示すグラフである。
【図14】測定周波数を変化したときの静電容量測定結果を示すグラフである。
【図15】測定周波数1kHzの気泡なしの静電容量測定結果を示すグラフである。
【図16】測定周波数1kHzの気泡ありの静電容量測定結果を示すグラフである。
【図17】測定周波数1kHzのヨーグルト流動状態の静電容量測定結果を示すグラフである。
【図18】容器充填のヨーグルトの他の例の静電容量測定装置を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明を更に具体的に説明すれば、本発明の非破壊検査は、高粘度液状食品を非破壊的に検査するものとして、粘度液状食品における静電容量増変化を測定し、該静電容量増変化を指標として該高粘度液状食品のプラントパイプ内の泡噛み、充填容器中の崩れ損傷乃至気泡混入を非破壊的に判定するものとしてあり、これによって、高粘度液状食品のインラインの泡噛みを非破壊的に検査してこれを監視し、また、高粘度液状食品を充填した充填容器における製品崩れや気泡混入を非破壊的に検査して、その選別出荷を行う等の措置を採り得るものとしてある。
【0021】
非破壊検査は、光学的方法、放射線的方法、力学的方法、電磁気学的方法等が考えられるが、本発明は、高粘度液状食品内部の品質変化を非破壊・連続的に評価する方法として、電磁気学的方法の1つである誘電特性を利用したものである。これは、誘電特性は測定試料中の特定の原子団や分子の運動状態を直接反映しているために、測定試料中の成分分子の状態や変化を検出する有効な手段となり、高粘度液状食品の製造にあっては非接触計測であるため、食品の汚染の恐れがない、連続計測であるため、食品を製造しながらの測定が可能である、試料に薬品処理を加えないため、食品への薬品汚染がない、測定方法が簡便なため、特別に熟練した技術を必要としない等のメリットがあるからであり、このとき、高粘度液状食品は主として、炭水化物、タンパク質、脂質などから構成されているので、電気的には誘電体であり、従って、食品の誘電特性測定により、食品の物理化学的状態を数値化された情報として把握することができ、高粘度液状食品の品質や加工程度を定量的に評価することが可能になるからである。
【0022】
これを確認するために、下記のように高粘性液状食品の凝固過程の誘電容量、特に静電容量測定、容器内の製品崩れの誘電容量、特に静電容量と粘性率の測定並びに管内製品の誘電容量、特に静電容量の測定について、それぞれ下記のとおりヨーグルトを試料とする各実験を行なった。
【0023】
即ち、ヨーグルトを試料とするその凝固過程の静電容量測定についての実験として、塊のないように撹拌した市販のヨーグルトと市販牛乳によって、仕込み濃度を10%及び20%とした試料を用い、平行な平板電極を試料間に挿入して、該電極間距離を10mm及び20mmとして、ヨーグルト凝固過程の誘電特性、特に静電容量(C=ε(S/d) 但しC:静電容量 ε:誘電率 S:電極板の面積 d:電極板間の距離)を測定した(図1及び図2参照)。仕込み濃度10%のときの結果を図3に、同じく20%のときの結果を図4に示す。これら図3、図4に示すように、試料の凝固に伴って静電容量が緩やかに増変化し、その後は一定の値を示すものとなった。
【0024】
該実験によれば、平行平板電極の電極板間距離を10mmと設定したとき変化が顕著に現れた。ヨーグルト仕込み濃度が10%と20%の両方で、測定開始直後からおよそ30分経過した時点まで静電容量は減少し、測定開始約3〜4時間まで静電容量は緩やかに増加し、それ以降は一定の値をとった。またヨーグルト仕込み濃度が10%の場合と比べ20%の場合の方が静電容量が緩やかに増加した。測定開始直後、静電容量が減少した要因として、実験を開放系で行ったことにより、水分の蒸発が影響したものとみられ、そのため電極板に対する空気の割合が大きくなり静電容量が減少したのではないかと見られるが、ヨーグルトの凝固過程において表面のタンパク質や脂肪、糖などで構成される薄い皮膜が現れることから、この皮膜が測定開始およそ30分以降水分の蒸発を防いだために、その後に水分の蒸発を防いだものと見られる。
【0025】
ヨーグルト仕込み濃度が高い20%の方が静電容量が緩やかに上昇した要因は、牛乳に対するヨーグルトの割合が仕込み濃度10%の試料よりも高く、このためヨーグルト仕込み濃度20%の試料は、仕込み濃度10%と比較して凝固が既に進行した状態から測定を開始したことから、静電容量の上昇が緩やかになったものと見られる。
【0026】
測定開始およそ4時間で目視によりヨーグルトの凝固が認められた。静電容量増変化がヨーグルトの凝固過程を反映したものと考えられることから、測定値が一定となった4時間の時点でヨーグルトの凝固終了がなされたものと認められる。
【0027】
該実験から図3、図4に示される、凝固過程で静電容量が上昇する要因を探求すると、ヨーグルトが凝固する過程で、ヨーグルトのタンパク質の主成分をなすカゼインが等電点沈殿により凝集して高分子化し、該凝固過程で双極子モーメント(正電荷+qと負電荷−qが距離R離れているとき、μ=qRで定義されるモーメント)が増加し、配向分極(有極性分子の双極子モーメントの配向に基づく分極)が誘起し易くなるため、この配向分極が静電容量増変化の要因となっているものと認められる。
【0028】
従って、ヨーグルトの凝固過程が静電容量の値として現れることから、静電容量増変化の状況を把握することによって、ヨーグルトの製造過程、ひいては各種の高粘度液状食品の製造過程をモニタリングすることができる。
【0029】
また、ヨーグルトを試料とする容器内製品崩れの静電容量及び粘性率の測定の実験として、市販のカップ型ヨーグルトが輸送中に崩れることを想定して、購入したカップ型ヨーグルトを、撹拌時間を2分、5分、10分としてボルテックスミキサーにより撹拌したもの、激しく30回上下に振り撹拌したもの、撹拌を行わないヨーグルトをそれぞれ試料とした。試料は4℃で保存していたものを使用したが、撹拌を常温で行ったため、撹拌後は4℃の恒温槽内に約20分間静置して試料とした。
【0030】
静電容量の測定は、市販カップ型ヨーグルトの空容器の内側にアルミホイルを貼り作製したカップ型電極と容器の上面に配置するプレート電極を用いた。カップ型電極をLCRメーター(日置電機株式会社製3532)に接続し、測定値を記録用コンピュータで記録した(図5参照)。測定周波数は1kHzとし、各試料について1分間隔で15回測定した。
【0031】
粘性率の測定は、レオメーター(CR−500DX、株式会社サン科学製)、プランジャー(直径:27.35mm、株式会社サン科学製)を使用して、非回転二重円筒法(共軸二重円筒の外筒(シリンダー又はカップ)内の試料に内筒(プランジャー又はボブ)を定速で進入させ、プランジャーが試料から受ける総合的な応力に含まれる粘性力と弾性力とを明確に分離して、試料の粘弾性を解析する計測方法)により測定した(図6参照)。
【0032】
即ち、カップヨーグルトをレオメーターに設置した後、プランジャーを所定の深さまで進入させた。この時の深さを進入線と呼ぶこととした。その後、プランジャーを所定の測定速度で、0.2mm進入させ、荷重を測定した。得られた荷重‐時間曲線と測定理論に基づき、解析ソフトNRCC Visco−Proからずり速度及び粘性率を求めた。測定条件は、プランジャー直径27.35mm、容器内径60.00mm、Lo:24.15mm、Lb:11.95mm、測定速度:10、20、30、40、50、60、70、80mm/min、移動距離:0.2mm、測定温度:4℃、試料密度:1000kg/m3であった。Loとは、プランジャー底面から進入線までの距離、Lbとはプランジャー底面から測定容器底面までの距離のことであり、Lo+Lbが試料高さとなる。測定速度を、10mm/minから80mm/minまで10mm/minずつ上げていき、各測定速度につき3回の粘性率測定を行い、その平均値を各測定速度での粘性率とした。
【0033】
静電容量測定結果を図7に、粘性率測定結果を図8に示し、更に、静電容量と粘性率の関係を図9に示す。
【0034】
図6に示すように、該実験からは、ボルテックスミキサーを使用しないで上下に振って攪拌を施した試料を除いて、それぞれ攪拌が進行するに伴って静電容量が増加する傾向を示した。上下に振って撹拌を施した試料で静電容量が低かった原因として、カップ内側の壁面へのヨーグルトの付着が多くなり静電容量の測定値に影響を及ぼした可能性、短時間の撹拌であるため、ボルテックスミキサーを用いた他の試料と比べ結露の発生が比較的少なかった可能性がその要因として考えられる。
【0035】
図6の結果は、上記ヨーグルト中のタンパク質が高分子化することで静電容量が上昇するという結論とは異なるものであった。しかしながら、図8のように、カップ内のヨーグルトの粘性率は静電容量と相関があることが明らかとなった。即ち、撹拌することにより気泡が混入し静電容量に影響を与えたものと考えられ、連続相に存在する気泡の量や大きさが静電容量に与える影響については、今後検討する必要があるが、以上から、カップ内のヨーグルトの崩れを容器を未開封のまま、検査できることが明らかとなった。また、ヨーグルトの崩れ具合が粘性率で表現できるとすると、この方法により、カップ内のヨーグルトの損傷程度も非破壊で計測できるものと認められる。
【0036】
更に、管内ヨーグルトの静電容量測定について、パイプ輸送の際、ヨーグルトの泡噛み現象が起こり、気泡混入が生じることによる食感への悪影響を及ぼす可能性があることから、市販2種類のヨーグルトをそれぞれビーカーに移し、気泡が混入しないよう十分に撹拌したものとエアストーンおよびエアポンプを用い十分に気泡を混入させたものを試料とした(気泡は実験の直前に混入した)。
【0037】
液体測定電極(HP16452A)を接続したLCRメーター(日置電機(株)製3522−50)を用い静電容量の測定を行い、測定値を記録用コンピュータで記録した(図10参照)。測定は、液送ポンプを用いチューブおよび液体測定電極内にヨーグルトを満たした後、ヨーグルトを一定速度で循環させ、チューブと接続した液体測定電極を用いて行った。測定開始時間は液送ポンプのスイッチを入れた時点とし、流動終了後、液送ポンプを止めた状態の静電容量についても同様に測定した。
【0038】
測定条件は、(1)恒温槽内温度を4℃、測定周波数を10Hz、電極板間距離を2mmとし、6秒間隔で120回測定し、また、液体測定電極の側面部から上部へとヨーグルトを流動させ、更に、(2)恒温槽内温度を4℃、測定周波数を1kHz、電極板間距離を2mmとし、6秒間隔で240回測定した。また液体測定電極の下部から上部へとヨーグルトを流動させた。
【0039】
(1)の測定周波数10Hzの測定結果を図11及び図12、図13に示す。気泡の有無に関わらずヨーグルトを流動させた場合の方が静電容量は高くなり、測定時間の増加とともに、その値は減少する傾向を示した。またヨーグルトを流動させない場合、気泡の有無による静電容量の顕著な違いは見られなかったが、気泡を混入させた試料では、気泡がない試料と比べて静電容量は急激に減少していた(但し、上記条件では、液体測定電極の側面から上部へのヨーグルトの流れのため、電極板の上部分にのみ試料が流動していた可能性がある)。
【0040】
また、電解質を含む液体に金属電極が接すると、そこに電気二重層が形成されて電極分極現象が生じるから、電極分極が起こると低周波数領域で大きな静電容量の増加を示し、試料自体の誘電緩和現象を覆い隠すことによって測定周波数10Hzのとき電極分極現象を捉えている可能性があり、また、低周波数領域での測定のため低分子物質の挙動を捕捉した可能性も否めない。
【0041】
そこで、ヨーグルトを流動させない場合において、周波数を変化させ電極分極の影響について検討した結果を図14に示す。周波数の増加に従って静電容量は減少し、周波数約150Hzから静電容量は一定となった。静電容量が一定となる時点までの周波数では、電極分極現象を捕捉していることが示唆された。
【0042】
これらのことを考慮し、(2)のkHzの測定では、液体測定電極の下部から上部へとヨーグルトを流動させた。その測定結果を図15、図16、図17に示す。ヨーグルトを流動させた場合、静電容量は増加傾向にあり、気泡を混入させた場合の方が静電容量は高く、測定開始から約300秒まで測定値は不安定であった。また流動させない場合、静電容量は緩やかに減少していた。チューブ内をヨーグルトが流動することで気泡やヨーグルトの構造の変化、たとえば気泡の粒子径の減少や均質化、粘性率の低下が起こり、上記のような挙動が現れたと考えられる。また流動を止めたことでゲル(凝固)の再構築が起こり、静電容量の減少が起こっていたことが認められた。
【0043】
従って、ヨーグルトの製造工程中のパイプ輸送時の品質管理にこの方法は応用可能であると考えられる。
【0044】
以上の各実験の結果、発酵過程のモニタリング、ヨーグルトをパイプ輸送する際の泡噛み、カップ内のヨーグルトの崩れについての品質検査を、誘電特性を用いることによって非破壊・非接触かつ連続的に測定し、状態を評価するについて、
ヨーグルトの凝固過程において、静電容量は増加し、凝固が完了したと思われる時点で静電容量は一定となった、カップ型ヨーグルトにおいて、粘性率が低いほど、すなわちカップ内のヨーグルトが崩れるに従って静電容量は増加する傾向を示した、また、ヨーグルトに気泡を混入させて管内を流動させた場合、気泡を混入させなかった試料と比べ、静電容量の値が明確に異なっていた。
【0045】
即ち、ヨーグルトの凝固過程における静電容量増変化は、双極子モーメントの増加によるものであると考えられ、誘電特性を用いてヨーグルトの凝固過程を捉えることが可能になった。
【0046】
また、カップ内ヨーグルトの崩れの非接触モニタリングでは、カップ内の試料の撹拌の程度(粘性率)と静電容量との間に相関があることが明らかとなった。すなわち、カップ内のヨーグルトの崩れを容器を未開封のまま、検査できることが明らかとなった。また、ヨーグルトの崩れ具合が粘性率で表現できるとすると、本方法により、カップ内のヨーグルトの損傷程度も非破壊で計測できる可能性があることが明らかとなった。
【0047】
更に、管内ヨーグルトの誘電特性測定においては、流動状態の試料で気泡の有無の違いが静電容量の値の違いとして明確に現れていた。すなわち、ヨーグルトの製造工程中のパイプ輸送時の品質管理にこれを応用可能であることが明らかとなった。
【0048】
これらの実験結果に基づいて、本発明の上記非破壊検査方法にあって、充填容器中の高粘度液状食品の非破壊検査は、例えばヨーグルト以外の豆腐、茶碗蒸し、ジャム、ケチャップ、蜂蜜等の液状食品についてこれを行うことができ、また、ヨーグルト以外に、プリン、ゼリー等の加熱充填後に容器内発酵乃至容器内ゲル化を行う嗜好食品とし、該食品の出荷前に非破壊的判定を行うこともできる。
【0049】
該充填容器中の高粘度液状食品の非破壊検査は、その静電容量増変化の測定を、高粘度液状食品充填容器を被嵌配置して該充填容器を収容し又は該充填容器の両側面に対向配置して該充填容器を挟持する容器側電極と、該容器の上面に配置したプレート電極を両極として、該食品容器中の高粘度液状食品の崩れ損傷乃至気泡混入を非破壊的に判定することによって、これを行うことができる。
【0050】
即ち、例えば上記カップ型ヨーグルトの静電容量を測定した実験における図5に示すように、容器側電極を、これらの高粘度液状食品充填容器に合わせた各容器形状に形成し、該充填容器を収容自在とした金属製乃至金属内張りのものとして、該充填容器を、例えば個別に収容することによって、該容器側電極を被嵌配置するものとし、更に該容器側電極の上面に配置したプレート電極は、該充填容器上に載置する平坦プレートにして同じく金属製乃至金属内張りのものとするようにすればよい。
【0051】
このとき、該容器側電極及びプレート電極による静電容量測定は、これら双方の電極を、例えばLCRメーターに接続し且つ該LCRメーターをパソコンに接続することによって測定装置を形成して行うものとしてある。該高粘度液状食品充填容器は、例えばクレートの搬送ラインに配置した判定位置において該クレートから選択的又は全品を個別に取り出して上記容器側電極に挿入するように収容し且つプレート電極を載置するようにすればよく、また、クレートからの該充填容器の取り出し、充填容器の容器側電極への挿入、プレート電極の載置、測定後のプレート電極の取り外し、充填容器の容器側電極からの取り出しとクレートの定位置への復帰収容は、搬送ラインの測定部位に、充填容器の把持移動機構、プレート電極の昇降機構等を配置することによって、これを行うことができる。
【0052】
該充填容器中の高粘度液状食品の非破壊検査は、また、例えば図18に示すように、容器側電極を、充填容器の両側面に対向配置して容器に密着又は僅少空隙を空けて充填容器を挟持する平板状一対にして金属製乃至金属内張りのものとし、該容器側電極の上面に配置したプレート電極を、上記と同様に充填容器上に載置する平坦プレートの同じく金属製乃至金属内張りのものとすることによって、これを行うことができる。このとき、該容器側電極及びプレート電極による静電容量測定は、これら双方の電極を、同様にLCRメーターに接続し且つ該LCRメーターをPC(図示省略)に接続して、これを測定装置として行うものとしてある。このとき該高粘度液状食品充填容器は、例えばクレートの搬送ラインに配置した判定位置において該クレートから同様に選択的又は全品を個別に取り出して、上記容器側電極とプレート電極による囲繞スペースを通過させるようにすればよく、このとき同様にクレートからの該充填容器の取り出し、充填容器の電極間通過、通過測定後の充填容器のクレートの定位置への復帰収容は、搬送ラインの測定部位に充填容器の把持移動機構等を配置することによって、これを行うようにすればよい。
【0053】
更に、充填容器中の高粘度液状食品非破壊検査は、その静電容量変化の測定を、高粘度液状食品の製造プラントの充填パイプ中に配置した平行一対のプレート電極を用いることによって、該充填パイプ中の高粘度液状食品の泡噛みを非破壊的にインライン判定することによって、これを行うことができる。
【0054】
このときプレート電極は、平行一対の平板のものとして、該プレート電極を充填パイプ中に、10mm乃至20mm程度の間隔を置いて挿入配置し、該プレート電極を同様にLCRメーターに接続し且つ該LCRメーターをPCに接続するようにして、その測定を行うようにすればよい。プレート電極は、その面積を製造プラントに合せた大きさのものとするように拡大することによって、正確な静電容量の測定をなし得るようになる。
【0055】
また、上記実験により高粘度液状食品の粘性率と静電容量は相関関係にあることが明らかとなったから、上記静電容量増変化の判定を、上記静電容量増変化の測定に代えて、高粘度液状食品の粘性率と静電容量との相関関係に基づいて、該高粘度液状食品の粘性率を測定することによって行うことができる。該粘性率の測定は、製造プラントにおける高粘度液状食品の粘性率を測定することによって、特に製品崩れの有無を非破壊的に判定することができる。
【0056】
本発明は、その実施に際して高粘度液状食品、その静電容量増変化の測定、該測定による高粘度液状食品の状態、必要に応じて用いる充填容器、製造プラント、容器型電極、プレート電極、粘性率の測定等の具体的方法、形状、構造、材質、検査器具、これらに対する付加等は、上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨーグルト、豆腐、茶碗蒸し、ジャム、ケチャップ、蜂蜜等の工場の容器充填前のインライン乃至容器充填した高粘度液状食品における気泡混入を非破壊的に検査する高粘度液状食品気泡混入の非破壊検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工における気泡混入の有無を非破壊的に検査する検査方法として、下記非特許文献1は、食品、特にオリーブ油の静電容量を測定し、オリーブ油に気泡混入を行ったとき、該静電容量が低下する事実に基づいて、γ線透過法、探針による検出法に代えて、静電容量の低下を指標として気泡混入を判定することができるとする実験結果を報告している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「静電容量変化を利用した気泡検出法の開発」(広島工業大学研究紀要 第7巻第2号 107〜111(1973)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1は、静電容量を測定することによって、オリーブ油の気泡混入の有無を判定し得るとするものであるところ、ヨーグルト、豆腐、茶碗蒸し、ジャム、ケチャップ、蜂蜜等の高粘度液状食品は、それが高粘度であることによって、気泡混入時にオリーブ油とは異なる挙動を呈する可能性があり、従って非特許文献1を高粘度液状食品に適用することはできない。
【0005】
即ち、高粘度液状食品、例えばヨーグルトは、一般に原材料の混合、スターター接種培養、容器充填等の一連の製造工程を伴うところ、例えば前発酵済みのものを崩してゲル化剤、糖類等を混合して容器充填するハードヨーグルト乃至糖類、果肉等を混合して容器充填するソフトヨーグルトにあっては、該ヨーグルトをパイプ輸送する際や容器充填時に泡噛み、気泡混入を招く可能性があり、また容器充填後にクレートに収容して後発酵を行うものにあっては、搬送時の振動等により製品崩れが生じる可能性があるが、これらパイプ中の泡噛み、容器充填時の気泡混入、クレート収容後の製品崩れは、商品苦情等の原因となって商品価値を低下させる要因となるため、これら泡噛み、気泡混入、カード崩れがあったとき、その選別排除を行う必要があるところ、該選別排除は、これを密封容器の外観検査によって行うことができず、従って、ヨーグルト等の食品にあっては、これらに適した非破壊検査をなし得るようにする必要がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、その解決課題とするところは、高粘度液状食品製造の工場における容器充填前のインラインによる泡噛みや該高粘度液状食品を充填した充填容器における製品崩れ、気泡の混入を非破壊的に検査可能な高粘度液状食品気泡混入の非破壊検査方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に沿って研究したところ、ヨーグルト、豆腐、茶碗蒸し、ジャム、ケチャップ、蜂蜜等の高粘度液状食品にあって、該高粘度液状食品に製品崩れや気泡混入があるとき、その静電容量の変化を測定すると、静電容量が増変化する事実を見出すに至った。従って、該静電容量の増変化の有無を検査することによって、高粘度液状食品のインラインの泡噛みを非破壊的に検査してこれを監視し、また、高粘度液状食品を充填した充填容器における製品崩れや気泡混入を非破壊的に検査して、その選別出荷を行う等の措置を採ることが可能となるとの知見を得た。
【0008】
本発明はかかる知見に基づいてなされたもので、即ち、請求項1に記載の発明を、高粘度液状食品を非破壊的に検査する検査方法であって、高粘度液状食品における静電容量増変化を測定し、該静電容量増変化を指標として該高粘度液状食品のプラントパイプ内の泡噛み、充填容器中の崩れ損傷乃至気泡混入を非破壊的に判定することを特徴とする高粘度液状食品の非破壊検査方法としたものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、製品崩れや気泡混入の有無乃至程度の非破壊検査の対象を、高粘度液状食品を充填した充填容器として、該充填容器の充填密封状態における気泡混入を有効且つ確実に検査し得るように、これを、上記静電容量増変化の測定を、高粘度液状食品充填容器を被嵌配置して該充填容器を収容し又は該充填容器の両側面に対向配置して該充填容器を挟持する容器側電極と、該容器の上面に配置したプレート電極を両極として、該食品容器中の高粘度液状食品の崩れ損傷乃至気泡混入を非破壊的に判定することを特徴とする請求項1に記載の高粘度液状食品の非破壊検査方法としたものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、同じく非破壊検査の対象を、容器充填後に容器内発酵乃至容器内ゲル化を行って完成品とするヨーグルト、プリン、ゼリー等の嗜好食品とすることによって、容器充填後の、例えば、クレート搬送等の振動や衝撃によって生じることのある製品崩れや気泡混入を直接に容器外から有効且つ確実に把握し、その選別出荷を行う等の措置を採り得るように、これを、上記高粘度液状食品を、ヨーグルト、プリン、ゼリー等の加熱充填後に容器内発酵乃至容器内ゲル化を行う嗜好食品とし、該食品の出荷前に非破壊的判定を行うことを特徴とする請求項2に記載の高粘度液状食品の非破壊検査方法としたものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記各種の高粘度液状食品の製造工程において、その終了後に容器に充填する充填ラインにおいて直接にライン外から有効且つ確実に把握し、インラインの泡噛みのあるとき、その充填前に充填を停止して、泡噛みの気泡混入充填を回避する措置を採り得るように、これを、上記静電容量増変化の測定を、高粘度液状食品の製造プラントの充填パイプ中に配置した平行一対のプレート電極を用いることによって、該充填パイプ中の高粘度液状食品の泡噛みを非破壊的にインライン判定することを特徴とする請求項1に記載の高粘度液状食品の非破壊検査方法としたものである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、高粘度液状食品の粘性率と静電容量は相関関係にあることから、該粘性率を測定することによって、静電容量増変化の測定に代えて、該静電容量増変化の判定を行うことができるように、これを、上記静電容量増変化の判定を、上記静電容量増変化の測定に代えて、高粘度液状食品の粘性率と静電容量との相関関係に基づいて、該高粘度液状食品の粘性率を測定することによって行うことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の高粘度液状食品の非破壊検査方法としたものである。
【0013】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のとおりに構成したから、請求項1に記載の発明は、高粘度液状食品の静電容量の増変化の有無を検査することによって、高粘度液状食品製造の工場における容器充填前のインラインによる泡噛みや該高粘度液状食品を充填した充填容器における製品崩れ、気泡の混入を非破壊的に検査可能な高粘度液状食品気泡混入の非破壊検査方法を提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、製品崩れや気泡混入の有無乃至程度の非破壊検査の対象を、高粘度液状食品を充填した充填容器として、該充填容器の充填密封状態における気泡混入を有効且つ確実に検査し得るものとすることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、同じく非破壊検査の対象を、容器充填後に容器内発酵乃至容器内ゲル化を行って完成品とするヨーグルト、プリン、ゼリー等の嗜好食品とすることによって、容器充填後の、例えば、クレート搬送等の振動や衝撃によって生じることのある製品崩れや気泡混入を直接に容器外から有効且つ確実に把握し、その選別出荷を行う等の措置を採り得るものとすることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記各種の高粘度液状食品の製造工程において、その終了後に容器に充填する充填ラインにおいて直接にライン外から有効且つ確実に把握し、インラインの泡噛みのあるとき、その充填前に充填を停止して、泡噛みの気泡混入充填を回避する措置を採り得るものとすることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、高粘度液状食品の粘性率と静電容量は相関関係にあることから、該粘性率を測定することによって、静電容量増変化の測定に代えて、該静電容量増変化の判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】静電容量測定装置を示す概念図である。
【図2】平行平板電極の斜視図である。
【図3】ヨーグルト仕込み濃度10%の静電容量測定結果を示すグラフである。
【図4】ヨーグルト仕込み濃度20%の静電容量測定結果を示すグラフである。
【図5】容器充填のヨーグルトの静電容量測定装置を示す説明図である。
【図6】粘性率測定装置を示す概念図である。
【図7】静電容量測定結果を示すグラフである。
【図8】粘性率測定結果を示すグラフである。
【図9】静電容量と粘性率の相関関係を示すグラフである。
【図10】ヨーグルトの充填パイプの静電容量測定装置を示す概念図である。
【図11】測定周波数10Hzの気泡ありの静電容量測定結果を示すグラフである。
【図12】測定周波数10Hzの気泡なしの静電容量測定結果を示すグラフである。
【図13】測定周波数10Hzのヨーグルト流動状態の静電容量測定結果を示すグラフである。
【図14】測定周波数を変化したときの静電容量測定結果を示すグラフである。
【図15】測定周波数1kHzの気泡なしの静電容量測定結果を示すグラフである。
【図16】測定周波数1kHzの気泡ありの静電容量測定結果を示すグラフである。
【図17】測定周波数1kHzのヨーグルト流動状態の静電容量測定結果を示すグラフである。
【図18】容器充填のヨーグルトの他の例の静電容量測定装置を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明を更に具体的に説明すれば、本発明の非破壊検査は、高粘度液状食品を非破壊的に検査するものとして、粘度液状食品における静電容量増変化を測定し、該静電容量増変化を指標として該高粘度液状食品のプラントパイプ内の泡噛み、充填容器中の崩れ損傷乃至気泡混入を非破壊的に判定するものとしてあり、これによって、高粘度液状食品のインラインの泡噛みを非破壊的に検査してこれを監視し、また、高粘度液状食品を充填した充填容器における製品崩れや気泡混入を非破壊的に検査して、その選別出荷を行う等の措置を採り得るものとしてある。
【0021】
非破壊検査は、光学的方法、放射線的方法、力学的方法、電磁気学的方法等が考えられるが、本発明は、高粘度液状食品内部の品質変化を非破壊・連続的に評価する方法として、電磁気学的方法の1つである誘電特性を利用したものである。これは、誘電特性は測定試料中の特定の原子団や分子の運動状態を直接反映しているために、測定試料中の成分分子の状態や変化を検出する有効な手段となり、高粘度液状食品の製造にあっては非接触計測であるため、食品の汚染の恐れがない、連続計測であるため、食品を製造しながらの測定が可能である、試料に薬品処理を加えないため、食品への薬品汚染がない、測定方法が簡便なため、特別に熟練した技術を必要としない等のメリットがあるからであり、このとき、高粘度液状食品は主として、炭水化物、タンパク質、脂質などから構成されているので、電気的には誘電体であり、従って、食品の誘電特性測定により、食品の物理化学的状態を数値化された情報として把握することができ、高粘度液状食品の品質や加工程度を定量的に評価することが可能になるからである。
【0022】
これを確認するために、下記のように高粘性液状食品の凝固過程の誘電容量、特に静電容量測定、容器内の製品崩れの誘電容量、特に静電容量と粘性率の測定並びに管内製品の誘電容量、特に静電容量の測定について、それぞれ下記のとおりヨーグルトを試料とする各実験を行なった。
【0023】
即ち、ヨーグルトを試料とするその凝固過程の静電容量測定についての実験として、塊のないように撹拌した市販のヨーグルトと市販牛乳によって、仕込み濃度を10%及び20%とした試料を用い、平行な平板電極を試料間に挿入して、該電極間距離を10mm及び20mmとして、ヨーグルト凝固過程の誘電特性、特に静電容量(C=ε(S/d) 但しC:静電容量 ε:誘電率 S:電極板の面積 d:電極板間の距離)を測定した(図1及び図2参照)。仕込み濃度10%のときの結果を図3に、同じく20%のときの結果を図4に示す。これら図3、図4に示すように、試料の凝固に伴って静電容量が緩やかに増変化し、その後は一定の値を示すものとなった。
【0024】
該実験によれば、平行平板電極の電極板間距離を10mmと設定したとき変化が顕著に現れた。ヨーグルト仕込み濃度が10%と20%の両方で、測定開始直後からおよそ30分経過した時点まで静電容量は減少し、測定開始約3〜4時間まで静電容量は緩やかに増加し、それ以降は一定の値をとった。またヨーグルト仕込み濃度が10%の場合と比べ20%の場合の方が静電容量が緩やかに増加した。測定開始直後、静電容量が減少した要因として、実験を開放系で行ったことにより、水分の蒸発が影響したものとみられ、そのため電極板に対する空気の割合が大きくなり静電容量が減少したのではないかと見られるが、ヨーグルトの凝固過程において表面のタンパク質や脂肪、糖などで構成される薄い皮膜が現れることから、この皮膜が測定開始およそ30分以降水分の蒸発を防いだために、その後に水分の蒸発を防いだものと見られる。
【0025】
ヨーグルト仕込み濃度が高い20%の方が静電容量が緩やかに上昇した要因は、牛乳に対するヨーグルトの割合が仕込み濃度10%の試料よりも高く、このためヨーグルト仕込み濃度20%の試料は、仕込み濃度10%と比較して凝固が既に進行した状態から測定を開始したことから、静電容量の上昇が緩やかになったものと見られる。
【0026】
測定開始およそ4時間で目視によりヨーグルトの凝固が認められた。静電容量増変化がヨーグルトの凝固過程を反映したものと考えられることから、測定値が一定となった4時間の時点でヨーグルトの凝固終了がなされたものと認められる。
【0027】
該実験から図3、図4に示される、凝固過程で静電容量が上昇する要因を探求すると、ヨーグルトが凝固する過程で、ヨーグルトのタンパク質の主成分をなすカゼインが等電点沈殿により凝集して高分子化し、該凝固過程で双極子モーメント(正電荷+qと負電荷−qが距離R離れているとき、μ=qRで定義されるモーメント)が増加し、配向分極(有極性分子の双極子モーメントの配向に基づく分極)が誘起し易くなるため、この配向分極が静電容量増変化の要因となっているものと認められる。
【0028】
従って、ヨーグルトの凝固過程が静電容量の値として現れることから、静電容量増変化の状況を把握することによって、ヨーグルトの製造過程、ひいては各種の高粘度液状食品の製造過程をモニタリングすることができる。
【0029】
また、ヨーグルトを試料とする容器内製品崩れの静電容量及び粘性率の測定の実験として、市販のカップ型ヨーグルトが輸送中に崩れることを想定して、購入したカップ型ヨーグルトを、撹拌時間を2分、5分、10分としてボルテックスミキサーにより撹拌したもの、激しく30回上下に振り撹拌したもの、撹拌を行わないヨーグルトをそれぞれ試料とした。試料は4℃で保存していたものを使用したが、撹拌を常温で行ったため、撹拌後は4℃の恒温槽内に約20分間静置して試料とした。
【0030】
静電容量の測定は、市販カップ型ヨーグルトの空容器の内側にアルミホイルを貼り作製したカップ型電極と容器の上面に配置するプレート電極を用いた。カップ型電極をLCRメーター(日置電機株式会社製3532)に接続し、測定値を記録用コンピュータで記録した(図5参照)。測定周波数は1kHzとし、各試料について1分間隔で15回測定した。
【0031】
粘性率の測定は、レオメーター(CR−500DX、株式会社サン科学製)、プランジャー(直径:27.35mm、株式会社サン科学製)を使用して、非回転二重円筒法(共軸二重円筒の外筒(シリンダー又はカップ)内の試料に内筒(プランジャー又はボブ)を定速で進入させ、プランジャーが試料から受ける総合的な応力に含まれる粘性力と弾性力とを明確に分離して、試料の粘弾性を解析する計測方法)により測定した(図6参照)。
【0032】
即ち、カップヨーグルトをレオメーターに設置した後、プランジャーを所定の深さまで進入させた。この時の深さを進入線と呼ぶこととした。その後、プランジャーを所定の測定速度で、0.2mm進入させ、荷重を測定した。得られた荷重‐時間曲線と測定理論に基づき、解析ソフトNRCC Visco−Proからずり速度及び粘性率を求めた。測定条件は、プランジャー直径27.35mm、容器内径60.00mm、Lo:24.15mm、Lb:11.95mm、測定速度:10、20、30、40、50、60、70、80mm/min、移動距離:0.2mm、測定温度:4℃、試料密度:1000kg/m3であった。Loとは、プランジャー底面から進入線までの距離、Lbとはプランジャー底面から測定容器底面までの距離のことであり、Lo+Lbが試料高さとなる。測定速度を、10mm/minから80mm/minまで10mm/minずつ上げていき、各測定速度につき3回の粘性率測定を行い、その平均値を各測定速度での粘性率とした。
【0033】
静電容量測定結果を図7に、粘性率測定結果を図8に示し、更に、静電容量と粘性率の関係を図9に示す。
【0034】
図6に示すように、該実験からは、ボルテックスミキサーを使用しないで上下に振って攪拌を施した試料を除いて、それぞれ攪拌が進行するに伴って静電容量が増加する傾向を示した。上下に振って撹拌を施した試料で静電容量が低かった原因として、カップ内側の壁面へのヨーグルトの付着が多くなり静電容量の測定値に影響を及ぼした可能性、短時間の撹拌であるため、ボルテックスミキサーを用いた他の試料と比べ結露の発生が比較的少なかった可能性がその要因として考えられる。
【0035】
図6の結果は、上記ヨーグルト中のタンパク質が高分子化することで静電容量が上昇するという結論とは異なるものであった。しかしながら、図8のように、カップ内のヨーグルトの粘性率は静電容量と相関があることが明らかとなった。即ち、撹拌することにより気泡が混入し静電容量に影響を与えたものと考えられ、連続相に存在する気泡の量や大きさが静電容量に与える影響については、今後検討する必要があるが、以上から、カップ内のヨーグルトの崩れを容器を未開封のまま、検査できることが明らかとなった。また、ヨーグルトの崩れ具合が粘性率で表現できるとすると、この方法により、カップ内のヨーグルトの損傷程度も非破壊で計測できるものと認められる。
【0036】
更に、管内ヨーグルトの静電容量測定について、パイプ輸送の際、ヨーグルトの泡噛み現象が起こり、気泡混入が生じることによる食感への悪影響を及ぼす可能性があることから、市販2種類のヨーグルトをそれぞれビーカーに移し、気泡が混入しないよう十分に撹拌したものとエアストーンおよびエアポンプを用い十分に気泡を混入させたものを試料とした(気泡は実験の直前に混入した)。
【0037】
液体測定電極(HP16452A)を接続したLCRメーター(日置電機(株)製3522−50)を用い静電容量の測定を行い、測定値を記録用コンピュータで記録した(図10参照)。測定は、液送ポンプを用いチューブおよび液体測定電極内にヨーグルトを満たした後、ヨーグルトを一定速度で循環させ、チューブと接続した液体測定電極を用いて行った。測定開始時間は液送ポンプのスイッチを入れた時点とし、流動終了後、液送ポンプを止めた状態の静電容量についても同様に測定した。
【0038】
測定条件は、(1)恒温槽内温度を4℃、測定周波数を10Hz、電極板間距離を2mmとし、6秒間隔で120回測定し、また、液体測定電極の側面部から上部へとヨーグルトを流動させ、更に、(2)恒温槽内温度を4℃、測定周波数を1kHz、電極板間距離を2mmとし、6秒間隔で240回測定した。また液体測定電極の下部から上部へとヨーグルトを流動させた。
【0039】
(1)の測定周波数10Hzの測定結果を図11及び図12、図13に示す。気泡の有無に関わらずヨーグルトを流動させた場合の方が静電容量は高くなり、測定時間の増加とともに、その値は減少する傾向を示した。またヨーグルトを流動させない場合、気泡の有無による静電容量の顕著な違いは見られなかったが、気泡を混入させた試料では、気泡がない試料と比べて静電容量は急激に減少していた(但し、上記条件では、液体測定電極の側面から上部へのヨーグルトの流れのため、電極板の上部分にのみ試料が流動していた可能性がある)。
【0040】
また、電解質を含む液体に金属電極が接すると、そこに電気二重層が形成されて電極分極現象が生じるから、電極分極が起こると低周波数領域で大きな静電容量の増加を示し、試料自体の誘電緩和現象を覆い隠すことによって測定周波数10Hzのとき電極分極現象を捉えている可能性があり、また、低周波数領域での測定のため低分子物質の挙動を捕捉した可能性も否めない。
【0041】
そこで、ヨーグルトを流動させない場合において、周波数を変化させ電極分極の影響について検討した結果を図14に示す。周波数の増加に従って静電容量は減少し、周波数約150Hzから静電容量は一定となった。静電容量が一定となる時点までの周波数では、電極分極現象を捕捉していることが示唆された。
【0042】
これらのことを考慮し、(2)のkHzの測定では、液体測定電極の下部から上部へとヨーグルトを流動させた。その測定結果を図15、図16、図17に示す。ヨーグルトを流動させた場合、静電容量は増加傾向にあり、気泡を混入させた場合の方が静電容量は高く、測定開始から約300秒まで測定値は不安定であった。また流動させない場合、静電容量は緩やかに減少していた。チューブ内をヨーグルトが流動することで気泡やヨーグルトの構造の変化、たとえば気泡の粒子径の減少や均質化、粘性率の低下が起こり、上記のような挙動が現れたと考えられる。また流動を止めたことでゲル(凝固)の再構築が起こり、静電容量の減少が起こっていたことが認められた。
【0043】
従って、ヨーグルトの製造工程中のパイプ輸送時の品質管理にこの方法は応用可能であると考えられる。
【0044】
以上の各実験の結果、発酵過程のモニタリング、ヨーグルトをパイプ輸送する際の泡噛み、カップ内のヨーグルトの崩れについての品質検査を、誘電特性を用いることによって非破壊・非接触かつ連続的に測定し、状態を評価するについて、
ヨーグルトの凝固過程において、静電容量は増加し、凝固が完了したと思われる時点で静電容量は一定となった、カップ型ヨーグルトにおいて、粘性率が低いほど、すなわちカップ内のヨーグルトが崩れるに従って静電容量は増加する傾向を示した、また、ヨーグルトに気泡を混入させて管内を流動させた場合、気泡を混入させなかった試料と比べ、静電容量の値が明確に異なっていた。
【0045】
即ち、ヨーグルトの凝固過程における静電容量増変化は、双極子モーメントの増加によるものであると考えられ、誘電特性を用いてヨーグルトの凝固過程を捉えることが可能になった。
【0046】
また、カップ内ヨーグルトの崩れの非接触モニタリングでは、カップ内の試料の撹拌の程度(粘性率)と静電容量との間に相関があることが明らかとなった。すなわち、カップ内のヨーグルトの崩れを容器を未開封のまま、検査できることが明らかとなった。また、ヨーグルトの崩れ具合が粘性率で表現できるとすると、本方法により、カップ内のヨーグルトの損傷程度も非破壊で計測できる可能性があることが明らかとなった。
【0047】
更に、管内ヨーグルトの誘電特性測定においては、流動状態の試料で気泡の有無の違いが静電容量の値の違いとして明確に現れていた。すなわち、ヨーグルトの製造工程中のパイプ輸送時の品質管理にこれを応用可能であることが明らかとなった。
【0048】
これらの実験結果に基づいて、本発明の上記非破壊検査方法にあって、充填容器中の高粘度液状食品の非破壊検査は、例えばヨーグルト以外の豆腐、茶碗蒸し、ジャム、ケチャップ、蜂蜜等の液状食品についてこれを行うことができ、また、ヨーグルト以外に、プリン、ゼリー等の加熱充填後に容器内発酵乃至容器内ゲル化を行う嗜好食品とし、該食品の出荷前に非破壊的判定を行うこともできる。
【0049】
該充填容器中の高粘度液状食品の非破壊検査は、その静電容量増変化の測定を、高粘度液状食品充填容器を被嵌配置して該充填容器を収容し又は該充填容器の両側面に対向配置して該充填容器を挟持する容器側電極と、該容器の上面に配置したプレート電極を両極として、該食品容器中の高粘度液状食品の崩れ損傷乃至気泡混入を非破壊的に判定することによって、これを行うことができる。
【0050】
即ち、例えば上記カップ型ヨーグルトの静電容量を測定した実験における図5に示すように、容器側電極を、これらの高粘度液状食品充填容器に合わせた各容器形状に形成し、該充填容器を収容自在とした金属製乃至金属内張りのものとして、該充填容器を、例えば個別に収容することによって、該容器側電極を被嵌配置するものとし、更に該容器側電極の上面に配置したプレート電極は、該充填容器上に載置する平坦プレートにして同じく金属製乃至金属内張りのものとするようにすればよい。
【0051】
このとき、該容器側電極及びプレート電極による静電容量測定は、これら双方の電極を、例えばLCRメーターに接続し且つ該LCRメーターをパソコンに接続することによって測定装置を形成して行うものとしてある。該高粘度液状食品充填容器は、例えばクレートの搬送ラインに配置した判定位置において該クレートから選択的又は全品を個別に取り出して上記容器側電極に挿入するように収容し且つプレート電極を載置するようにすればよく、また、クレートからの該充填容器の取り出し、充填容器の容器側電極への挿入、プレート電極の載置、測定後のプレート電極の取り外し、充填容器の容器側電極からの取り出しとクレートの定位置への復帰収容は、搬送ラインの測定部位に、充填容器の把持移動機構、プレート電極の昇降機構等を配置することによって、これを行うことができる。
【0052】
該充填容器中の高粘度液状食品の非破壊検査は、また、例えば図18に示すように、容器側電極を、充填容器の両側面に対向配置して容器に密着又は僅少空隙を空けて充填容器を挟持する平板状一対にして金属製乃至金属内張りのものとし、該容器側電極の上面に配置したプレート電極を、上記と同様に充填容器上に載置する平坦プレートの同じく金属製乃至金属内張りのものとすることによって、これを行うことができる。このとき、該容器側電極及びプレート電極による静電容量測定は、これら双方の電極を、同様にLCRメーターに接続し且つ該LCRメーターをPC(図示省略)に接続して、これを測定装置として行うものとしてある。このとき該高粘度液状食品充填容器は、例えばクレートの搬送ラインに配置した判定位置において該クレートから同様に選択的又は全品を個別に取り出して、上記容器側電極とプレート電極による囲繞スペースを通過させるようにすればよく、このとき同様にクレートからの該充填容器の取り出し、充填容器の電極間通過、通過測定後の充填容器のクレートの定位置への復帰収容は、搬送ラインの測定部位に充填容器の把持移動機構等を配置することによって、これを行うようにすればよい。
【0053】
更に、充填容器中の高粘度液状食品非破壊検査は、その静電容量変化の測定を、高粘度液状食品の製造プラントの充填パイプ中に配置した平行一対のプレート電極を用いることによって、該充填パイプ中の高粘度液状食品の泡噛みを非破壊的にインライン判定することによって、これを行うことができる。
【0054】
このときプレート電極は、平行一対の平板のものとして、該プレート電極を充填パイプ中に、10mm乃至20mm程度の間隔を置いて挿入配置し、該プレート電極を同様にLCRメーターに接続し且つ該LCRメーターをPCに接続するようにして、その測定を行うようにすればよい。プレート電極は、その面積を製造プラントに合せた大きさのものとするように拡大することによって、正確な静電容量の測定をなし得るようになる。
【0055】
また、上記実験により高粘度液状食品の粘性率と静電容量は相関関係にあることが明らかとなったから、上記静電容量増変化の判定を、上記静電容量増変化の測定に代えて、高粘度液状食品の粘性率と静電容量との相関関係に基づいて、該高粘度液状食品の粘性率を測定することによって行うことができる。該粘性率の測定は、製造プラントにおける高粘度液状食品の粘性率を測定することによって、特に製品崩れの有無を非破壊的に判定することができる。
【0056】
本発明は、その実施に際して高粘度液状食品、その静電容量増変化の測定、該測定による高粘度液状食品の状態、必要に応じて用いる充填容器、製造プラント、容器型電極、プレート電極、粘性率の測定等の具体的方法、形状、構造、材質、検査器具、これらに対する付加等は、上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高粘度液状食品を非破壊的に検査する検査方法であって、高粘度液状食品における静電容量増変化を測定し、該静電容量増変化を指標として該高粘度液状食品のプラントパイプ内の泡噛み、充填容器中の崩れ損傷乃至気泡混入を非破壊的に判定することを特徴とする高粘度液状食品の非破壊検査方法。
【請求項2】
上記静電容量増変化の測定を、高粘度液状食品充填容器を被嵌配置して該充填容器を収容し又は該充填容器の両側面に対向配置して該充填容器を挟持する容器側電極と、該容器の上面に配置したプレート電極を両極として、該食品容器中の高粘度液状食品の崩れ損傷乃至気泡混入を非破壊的に判定することを特徴とする請求項1に記載の高粘度液状食品の非破壊検査方法。
【請求項3】
上記高粘度液状食品を、ヨーグルト、プリン、ゼリー等の加熱充填後に容器内発酵乃至容器内ゲル化を行う嗜好食品とし、該食品の出荷前に非破壊的判定を行うことを特徴とする請求項2に記載の高粘度液状食品の非破壊検査方法。
【請求項4】
上記静電容量増変化の測定を、高粘度液状食品の製造プラントの充填パイプ中に配置した平行一対のプレート電極を用いることによって、該充填パイプ中の高粘度液状食品の泡噛みを非破壊的にインライン判定することを特徴とする請求項1に記載の高粘度液状食品の非破壊検査方法。
【請求項5】
上記静電容量増変化の判定を、上記静電容量増変化の測定に代えて、高粘度液状食品の粘性率と静電容量との相関関係に基づいて、該高粘度液状食品の粘性率を測定することによって行うことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の高粘度液状食品の非破壊検査方法。
【請求項1】
高粘度液状食品を非破壊的に検査する検査方法であって、高粘度液状食品における静電容量増変化を測定し、該静電容量増変化を指標として該高粘度液状食品のプラントパイプ内の泡噛み、充填容器中の崩れ損傷乃至気泡混入を非破壊的に判定することを特徴とする高粘度液状食品の非破壊検査方法。
【請求項2】
上記静電容量増変化の測定を、高粘度液状食品充填容器を被嵌配置して該充填容器を収容し又は該充填容器の両側面に対向配置して該充填容器を挟持する容器側電極と、該容器の上面に配置したプレート電極を両極として、該食品容器中の高粘度液状食品の崩れ損傷乃至気泡混入を非破壊的に判定することを特徴とする請求項1に記載の高粘度液状食品の非破壊検査方法。
【請求項3】
上記高粘度液状食品を、ヨーグルト、プリン、ゼリー等の加熱充填後に容器内発酵乃至容器内ゲル化を行う嗜好食品とし、該食品の出荷前に非破壊的判定を行うことを特徴とする請求項2に記載の高粘度液状食品の非破壊検査方法。
【請求項4】
上記静電容量増変化の測定を、高粘度液状食品の製造プラントの充填パイプ中に配置した平行一対のプレート電極を用いることによって、該充填パイプ中の高粘度液状食品の泡噛みを非破壊的にインライン判定することを特徴とする請求項1に記載の高粘度液状食品の非破壊検査方法。
【請求項5】
上記静電容量増変化の判定を、上記静電容量増変化の測定に代えて、高粘度液状食品の粘性率と静電容量との相関関係に基づいて、該高粘度液状食品の粘性率を測定することによって行うことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の高粘度液状食品の非破壊検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−103079(P2012−103079A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251148(P2010−251148)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(390001270)グリコ乳業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(390001270)グリコ乳業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】
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