説明

高粘着性アクリル樹脂組成物およびその用途

【課題】 薄膜化が可能で、優れた粘着力を発現するアクリル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 アクリル系材料60〜95体積%、有機燐酸塩40〜5体積%であり、下記の式(1)で表される有機燐酸塩を含有してなる高粘着性アクリル樹脂組成物。
【化17】



式(1)において、R1およびR2は、同一化または異なり、線状もしくは分岐状のC1−C6 アルキル、及び/またはアリールである。
MはMg,Ca,AL,Sb,Sn,Ge,Ti,Zn,Fe,Zr,Ce,Bi,Sr,Mn,Li,Na,K及び/またはプロトン化された窒素塩基であり、mは1〜3である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高粘着性を有するアクリル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは種々の工業用用途において有用である。両面粘着テープは種々の基材または表面を一体に接着するために用いられてきており、これらは工業用用途において特に有用である。感圧接着剤(PSA)を一面におよび感圧接着剤を多面に有する両面粘着テープが類似のまたは非類似の物質の表面を一体に接着するのに有用であることが見出されている。
また、貼り合わせた後の粘着テープが剥がれにくくなるように、粘着テープへ基材として柔軟性に富む樹脂を含有させる方法もある。
【0003】
また、特許文献1(特開2010―26880)に記載されている両面粘着性のテープは良好な粘着性を発現させるために、芯材として発泡体基材を用い、その両面に特定のアクリル系粘着剤組成物を有機溶剤に希釈した粘着剤を塗工しているが、この芯材のために、テープ自体の厚みに制限ができてしまい、薄膜化が困難であった。また有機溶剤を使用しているため、環境負荷の観点であまり好ましくない。
また、特許文献2(特開2006−152119)ではアクリル系共重合体、エポキシ樹脂、多官能型リン化合物を含有してなる難燃性粘着剤組成物が開示されているが、難燃性を確保できるものの粘着性が十分でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−26880号公報
【特許文献2】特開2006−152119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、薄膜化が可能で、優れた粘着力を発現するアクリル樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)アクリル系材料60〜95体積%、有機燐酸塩40〜5体積%であり、下記の式(1)で表される有機燐酸塩を含有してなる高粘着性アクリル樹脂組成物。
【化1】



式(1)において、R1およびR2は、同一化または異なり、線状もしくは分岐状のC1−C6 アルキル、及び/またはアリールである。
MはMg,Ca,AL,Sb,Sn,Ge,Ti,Zn,Fe,Zr,Ce,Bi,Sr,Mn,Li,Na,K及び/またはプロトン化された窒素塩基であり、mは1〜3である。
(2)アクリル系材料が(a)炭素数2−12のアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレートは炭素数が2〜12のアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステル、(b)カルボキシル基含有(メタ)アクリレート、(c)下記の式(2)、式(3)、式(4)で表される平均分子量が50〜15000のメルカプト基が2個以上のメルカプタン化合物であるポリチオール、(d)光重合開始剤を含有する前記(1)に記載の高粘着性アクリル樹脂組成物。

【化2】


【化3】


【化4】



式(2)〜(4)において、Zはm個の官能基を有する有機残基であり、mは2−6の整数であり、pおよびqは0−3の整数である。
(3)前記(1)又は(2)に記載の高粘着性アクリル樹脂組成物を光重合反応で硬化させた高粘着性シート。
(4)前記(3)に記載の高粘着性シートが組み込まれた電子部品又は電気機器。
(5)前記(1)又は(2)に記載の高粘着性アクリル樹脂組成物を基材に塗布後、光重合反応で硬化させる高粘着性シートの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、薄膜化が可能で、優れた粘着力を発現するアクリル樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて適宜、設計の変更、改良等が加えられるものである。
本発明におけるアクリル系材料として用いる(a)炭素数2−12のアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレートは炭素数が2〜12のアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルである。(a)の例としてはたとえばエチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート等があげられる。
【0009】
本発明の用いるアクリル系材料において、高粘着性アクリル樹脂組成物の合計を100体積%として、(a)の含有量は45〜80体積%であることが好ましく、さらに50%〜75体積%であることがより好ましい。(a)の含有量が45%未満であると粘着性が発現せず、また80体積%を超える場合、シートとしての機械強度が小さくなるため、粘着力を低下させる。
【0010】
本発明におけるアクリル系材料用いる(b)カルボキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、β−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート等が挙げられる。
【0011】
本発明の用いるアクリル系材料において、高粘着性アクリル樹脂組成物の合計を100体積%として、(b)の含有量は4〜10体積%であることが好ましく、さらに5%〜8体積%であることがより好ましい。(a)の含有量が4体積%未満であると粘着力向上効果が小さく、また10体積%を超える場合、シート全体が硬くなるためこれも粘着力が低下する。
【0012】
本発明におけるアクリル系材料では(a)、(b)以外の(メタ)アクリレートをシートの樹脂物性を確保するために粘着性を低下しない範囲で添加してもよい。
(a)、(b)以外の(メタ)アクリレートの例としては2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールユニット繰り返し数が12以下のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールユニット繰り返し数が12以下のメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールユニット繰り返し数が12以下のエトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールユニット繰り返し数が12以下のフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールユニット繰り返し数が12以下のポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールユニット繰り返し数が12以下のメトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールユニット繰り返し数が12以下のエトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールユニット繰り返し数が12以下のフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールユニット繰り返し数が12以下のポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールユニット繰り返し数が12以下のポリエチレングリコールモノメタクリレート、プロピレングリコールユニット繰り返し数が12以下のポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ブチレングリコールユニット繰り返し数が12以下のポリブチレングリコールモノメタクリレート、1,2-ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本曹達社製「TE−2000」、「TEA−1000」)、前記水素添加物(例えば、日本曹達社製「TEAI−1000」)、1,4−ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、大阪有機化学社製「BAC−45」)、ポリイソプレン末端(メタ)アクリレート、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリート(例えば、日本合成社製「UV−2000B」、「UV−3000B」、「UV−7000B」、根上工業社製「KHP−11」、「KHP−17」)、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本合成社製「UV−3700B」、「UV−6100B」)、ビスA型エポキシ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリストールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイキシエチル]イソシアヌレート、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート等が例示されるが、これに限られるものではない。
【0013】
本発明におけるアクリル系材料としては、(c)ポリチオールのメルカプト基が2個以上のメルカプタン化合物を示し、式(2)、式(3)、及び式(4)で表される平均分子量が50〜15000の物質があげられる。
【化5】


【化6】


【化7】


式中Zはm個の官能基を有する有機残基であり、mは2−6の整数であり、pおよびqは0−3の整数である。さらに式(2)、式(3)、式(4)の有機残基Zが式(5)、式(6)、式(7)、式(8)であるポリチオールが好ましい。
【化8】


【化9】


【化10】


【化11】


ここでRはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基を表し、v、wは1〜6の整数でx、y、zは0〜6の整数。
【0014】
本発明の用いるアクリル系材料において、高粘着性アクリル樹脂組成物の合計を100体積%として(C)ポリチオールの含有量は、0.04〜0.5体積%であることが好ましい。ポリチオールが少ないと、シートを構成するアクリル系マトリックスの分子量が大きくなり粘着性が低下する恐れがある。一方、ポリチオールが多いと分子量が小さくなりすぎて、シートとしての強度が小さくなるため、これも粘着力を低下させる恐れがある。
【0015】
本発明のアクリル系材料は(a)、(b)、(c)の樹脂構成成分以外に、公知の重合性化合物や公知の多官能ビニル化合物や多官能アクリレートや多官能アクリル化合物等の共重合性の架橋成分を含むことができる。
【0016】
本発明のアクリル系材料は、(d)光重合開始剤による光重合反応によって重合されることが、硬化反応制御の面から好ましい。(d)光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、4,4−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、クロロチオキサントン、m−クロルアセトン、プロピオフェノン、アンスラキノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンジル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン1−[4−(2−ヒドロキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンなどが挙げられるが、これらに限定されるものでない。但し、可視光に吸収波長を有する光開始剤は塗料の貯蔵安定性に欠けることから、可視光に吸収を持たないベンゾフェノン、1-ヒドロキシ‐シクロへキシル‐フェニルケトンを用いることが好ましい。これらの光開始剤は単独で用いても、混合して用いてもよい。
【0017】
本発明の用いるアクリル系材料において、(d)光重合開始剤の添加量は、高粘着性アクリル樹脂組成物の合計を100体積%として0.1〜5体積%が好ましい。0.1体積%以上であれば硬化促進の効果が得られるし、5体積%以下で充分に硬化速度が達成される。
【0018】
硬化促進剤は、前記熱重合開始剤と反応し、ラジカルを発生する公知の硬化促進剤であれば使用できる。代表的な硬化促進剤としては例えば、第3級アミン、チオ尿素誘導体及び遷移金属塩等が挙げられる。第3級アミンとしては例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン及びN,N−ジメチル−p−トルイジン等が挙げられる。チオ尿素誘導体としては例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール、メチルチオ尿素、シブチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素及びエチレンチオ尿素等が挙げられる。遷移金属塩としては例えば、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅及びバナジルアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0019】
本発明で使用される有機燐酸塩は下記に示す化合物が望ましい。これらは単独で用いても混合して用いても良い。
【化12】



ここで、R1およびR2は、同一化または異なり、線状もしくは分岐状のC1−C6 アルキル、及び/またはアリールであり、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、及び/またはフェニルなどがあげられる。
MはMg,Ca,AL,Sb,Sn,Ge,Ti,Zn,Fe,Zr,Ce,Bi,Sr,Mn,Li,Na,K及び/またはプロトン化された窒素塩基であり、mは1〜3である。
これらの有機燐酸塩は前述のアクリル系材料に対して溶解性が小さく、最大でも1000ppmの溶解性である。
前記の化学式(1)で示される有機リン酸塩の具体例としては、クラリアントジャパン株式会社製のOP―930、OP―935、OP−940およびOP−1230を挙げることができる。
【0020】
アクリル系材料と有機燐酸塩の配合は、アクリル系材料60〜95体積%、有機燐酸塩40〜5体積%が好ましく、アクリル系材料75〜85体積%、有機燐酸塩25〜15体積%がさらに好ましい。
アクリル系材料が60体積%未満では、充分な粘着性が得られない可能性があり、さらにアクリル系材料と有機燐酸塩の混合が不十分になる可能性があり、その後の成形加工に悪影響を及ぼす可能性がある。また、アクリル系材料が95体積%を超える場合には充分な粘着力が得られない可能性がある。
【0021】
ここでいう充分な粘着力とは後述する粘着力試験において、粘着力が50N/25mm以上であることを言う。50N/25mm以上であると引き剥がすことが困難であり、引き剥がしの際に被着体が破壊するために充分な粘着力といえる。
【0022】
本発明の高粘着性アクリル樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、一般に使用されているアクリルゴム、ウレタンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴムなどの各種エラストマー、無機フィラー、溶剤、増量材、補強材、可塑剤、増粘剤、染料、顔料、難燃剤、シランカップリング剤及び界面活性剤等の添加剤を使用してもよい。
【0023】
各構成材料の混合方法は、特に限定されるのもではないが、少量の場合は手混合も可能であるが、万能混合機、プラネタリーミキサー、ハイブリッドミキサー、ヘンシェルミキサー、ニーダー、ボールミル、ミキシングロール等の一般的な混合機が用いられる。
【0024】
本発明の高粘着性アクリル樹脂組成物のシートへの加工方法としては、従来公知の方法、例えば、コーター法、ドクターブレード法、押出成形法、射出成形法、プレス成形法等の各種成形法を用いることができる。なお、基材補強方法としては、本発明のシートが両面粘着性を有している場合には、シートと基材を通常のラミネート法、プレス法など公知の積層方法を用いて積層させることが可能であるが、コーター法などで使用する基材としてこれら補強用基材を使用し、直接作製しても良い。このように基材上に作成した高粘着性アクリル樹脂組成物を直接光照射(可視光または紫外線)より光重合することで高粘着性シートを得ることができる。
【0025】
本発明の高粘着性アクリル樹脂組成物を使用した高粘着性シートの厚さは250μm以下が望ましく、好ましくは50μmから250μmである。250μm以上の厚さであると、微細化の進む電子部品に使用するためには厚さが大きすぎて適当ではない。また、50μm以下であると、シートの厚さが薄すぎて貼り付け時の取り扱い性が困難になる。
【0026】
本発明の高粘着性アクリル樹脂組成物を使用した高粘着性シートは、ネジ止めが難しい、微細なトランジスタなどの素子の固定等電子部品、電気機器に有用であり、薄膜化も可能なため省スペース化、小型化も可能になる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜11)
表1の実施例1〜11に記載の各成分を自公転式ミキサーで混合し、スラリー状のアクリル樹脂組成物を作製した。そのスラリーを2枚の紫外線透過型PET(Polyethylene Telephthalate)ライナー(以下「PETライナー」と記す)で挟持し、ラミネート成形後、紫外線を照射し硬化させ、シート状成形体を得た。
【0028】
(比較例1〜6)
表2の比較例1〜6に記載の各成分を自公転式ミキサーで混合し、スラリー状のアクリル樹脂組成物を作製した。そのスラリーを2枚の紫外線透過型PET(Polyethylene Telephthalate)ライナー(以下「PETライナー」と記す)で挟持し、ラミネート成形後、紫外線を照射し硬化させ、シート状成形体を得た。
【0029】
表1及び表2の使用材料について、以下に示す。
1)AR53L 商品名(アクリルゴム、日本ゼオン社製)
2)2−EHA 商品名(アクリル酸2−エチルヘキシルアクリレート、東亜合成社製)
3)アクリル酸 東亞合成社製
4)HDDA 商品名(1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、共栄社化学社製)
5)DMDO 商品名(1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、丸善ケミカル社製)
6)Irgacure500 商品名(ベンゾフェノン、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン混合物、チバスペシャリティーケミカルズ社製)
7)OP−930 商品名(有機燐酸塩、クラリアント社製)
8)DAM−07 商品名(球状アルミナ 電気化学工業社製)
9)AL−45−2 商品名(アルミナ 昭和電工社製)
10)クニミエ―F 商品名(モンモリロナイト クニミエ工業社製)
11)C−303 商品名(水酸化アルミニウム 住友化学社製)
【0030】
(比較例7)
表3に記載の比較例7は、特開2006−152119に記載されている実施例5に基づいて試験をした。
アクリル系共重合体には、特開2006−152119の表1に記載のアクリル系共重合体Aを作製して、使用した。
エポキシ樹脂として、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂エピコ−ト828(油化シェルエポキシ株式会社製商品名)を使用した。
硬化剤として、フェノ−ル樹脂プライオ−フェンLF2822(大日本インキ化学工業株式会社製商品名)を使用した。
硬化促進剤として、イミダゾ−ル系硬化促進剤キュアゾ−ル2PZ−CN(四国化成工業株式会社製商品名)を使用した。
多官能リン化合物として、HCA―HQ(三光株式会社製商品名)を使用した。
【0031】
粘着力試験方法について説明する。まず試験対象となる粘着放熱シートについて、15mm×100mmのサンプルを用意する。このサンプルから両面のPET剥離ライナー剥がし、AL試験片(1050材、20mm×180mm)に貼り付ける。両面にこのAL試験片を貼り付け2kgローラーで圧着した後、30分室温にて養生する。その後、引っ張り試験機(テンシロン、エーアンドディー社製)にて両側のAL試験片を引っ張ることで粘着力を測定した。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】



【0034】
【表3】



【0035】
実施例1〜11より有機リン酸塩を本願の特許請求の範囲で含有するアクリル樹脂組成物は、粘着力が大きく、かつ250μmのシート厚さに成形することができる。特許文献2の配合である比較例7は、多官能型リン化合物が配合されていても粘着力は小さい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のアクリル樹脂組成物は、工業用用途のみならず粘着性が求められるあらゆる分野での応用が期待される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系材料60〜95体積%、有機燐酸塩40〜5体積%であり、下記の式(1)で表される有機燐酸塩を含有してなる高粘着性アクリル樹脂組成物。
【化13】


式(1)において、R1およびR2は、同一化または異なり、線状もしくは分岐状のC1−C6 アルキル、及び/またはアリールである。
MはMg,Ca,AL,Sb,Sn,Ge,Ti,Zn,Fe,Zr,Ce,Bi,Sr,Mn,Li,Na,K及び/またはプロトン化された窒素塩基であり、mは1〜3である。
【請求項2】
アクリル系材料が(a)炭素数2−12のアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレートは炭素数が2〜12のアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステル、(b)カルボキシル基含有(メタ)アクリレート、(c)下記の式(2)、式(3)、式(4)で表される平均分子量が50〜15000のメルカプト基が2個以上のメルカプタン化合物であるポリチオール、(d)光重合開始剤を含有する請求項1に記載の高粘着性アクリル樹脂組成物。

【化14】


【化15】


【化16】


式(2)〜(4)において、Zはm個の官能基を有する有機残基であり、mは2−6の整数であり、pおよびqは0−3の整数である。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の高粘着性アクリル樹脂組成物を光重合反応で硬化させた高粘着性シート。
【請求項4】
請求項3に記載の高粘着性シートが組み込まれた電子部品又は電気機器。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の高粘着性アクリル樹脂組成物を基材に塗布後、光重合反応で硬化させる高粘着性シートの製造方法。


【公開番号】特開2013−60535(P2013−60535A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200181(P2011−200181)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】