説明

高純度の3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体の製造方法

【課題】変性物などの不純物の含有量を抑制することにより高純粋度の3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体を製造する方法を提供する。
【解決手段】式(1)で表される3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基である)を炭素数1〜4の低級アルコール含有溶媒と接触する過程を含む方法により製造するに際し、酸化性物質の含有量を3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体に対して0.05モル当量以下にせしめたアルコール含有溶媒を使用し、3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体に含有される不純物量を抑制する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性物などの不純物の含有量が著しく小さい高純度の3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体の製造方法に関する。更に詳しくは、(3R,5S)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸エチル(以下、(3R,5S)DOLEともいう)や、(3R,5S)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸メチル(以下、(3R,5S)DOLMともいう)などの、医薬中間体として有用な、高純度の3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(3R,5S)DOLEまたは(3R,5S)DOLMに代表される3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体は、高脂血症の予防や治療用医薬、コレステロールを低下させる医薬(HMG−CoA還元酵素阻害薬)の中間体として有用であることが知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。かかる3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体は、不斉炭素を有するためにラセミ体として製造される。光学異性体分離用HPLCカラムを用いた液体クロマトグラフィーにより、該ラセミ体を光学分割することによって光学的に活性な異性体を製造できることが知られている。(特許文献4参照)
【特許文献1】特開平1−279866号公報
【特許文献2】欧州公開特許304063号公報
【特許文献3】米国特許5011930号公報
【特許文献4】WO95/23125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光学異性体分離カラム(CHIRALCEL OFなど)を用いて(3R,5S)DOLEや、(3R,5S)DOLMなどの3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体を光学分割する場合、溶離液としては、通常、アルコール含有溶媒、例えば、アルコール類と炭化水素類との混合溶媒(例えば、n−へキサン/イソプロパノールの混合溶媒)が使用される。これら溶媒中に溶離された3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体のフラクションを集めて溶媒留去する。得られた3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体のアルコール溶液は、さらに炭化水素類やアルコール類を部分的に含有する炭化水素類などの再結晶用の溶媒により溶媒置換した後に晶析させることにより、純粋な3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体を結晶として得ることができるとされる。
【0004】
しかしながら、上記のような過程により製造される3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体には製造中または保存中に変性物が発生する現象が見られることがある。式(1)の3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体は加水分解後にCa塩にして医薬品の原薬に変換される。この変性物はその過程において反応液を強く着色せしめる傾向があり、最終的には医薬原薬をも着色させる。この不純物の発生は、製造過程で使用される上記の炭化水素類とアルコール類との混合溶媒として、試薬特級クラスの高純度のものを使用した場合にも生じる。この変性物は製造される3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体中にppmオーダーの僅かな含有量であるが、目的物が医薬品の製造中間体として使用される性質上、極力少なくする必要がある。
【0005】
本発明の目的は、光学異性体分離用カラムを用いた液体クロマトグラフィー過程などを通して3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体を製造する場合、目的物中における変性物などの微量の不純物の含有を著しく抑制し、製造後に特に精製処理などをしなくても、高純度の3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体を製造できる新規な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するべく鋭意検討した結果、目的物である3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体中の変性物などの微量の不純物の発生は、光学異性体分離用カラムを用いた液体クロマトグラフィー過程などにおいて使用されるアルコール含有溶媒に起因することを見出した。
【0007】
すなわち、本発明者の研究によると、下記する実施例1に示されるように、3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体の製造過程で使用される溶媒であるアルコール類を蒸留して濃縮したところ、その中に酸化性物質が含有されていることを見出した。そして、該酸化性物質を種々の割合で含むアルコール溶媒中での目的物質である3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体の安定性を調べたところ、下記する実施例2に示されるように、アルコール含有溶媒中の酸化性物質の含有量を可及的に小さくすることによって、目的物質中に生じる変性物の量を抑制できることを見出した。特に、アルコール含有溶媒中の酸化性物質の含有量を3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体に対して0.05モル当量以下にせしめることにより、目的物質中の不純物の含有量を通常許容される量以下にできることを見出した。
【0008】
本発明は、かかる新規な知見に基づいて完成されたものであり、以下の要旨を有することを特徴とするものである。
(1)式(1)で表される3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基である)を炭素数1〜4の低級アルコール含有溶媒と接触させる過程を含む方法であって、酸化性物質の含有量を可及的に低下しめたアルコール含有溶媒を使用し、3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体に含有される不純物量を抑制したことを特徴とする3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体の製造方法。
【0009】
【化1】

(2)上記アルコール含有溶媒と接触する過程が、式(1)で表される3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体を光学分割するための光学異性体分離用カラムを用いた液体クロマトグラフィーの溶離液としての溶媒と接触する過程である上記(1)に記載の製造方法。
(3)上記アルコール含有溶媒中の酸化性物質の含有量を、式(1)で示される3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体に対して0.05モル当量以下にせしめた上記(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)式(1)中のRが、メチル基又はエチル基である上記(1)、(2)又は(3)に記載の製造方法。
(5)上記アルコール含有溶媒中のアルコール類が、メタノール、エタノール、又はイソプロパノールである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)酸化性物質の含有量を式(1)で表される3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体に対し0.05モル当量以下にせしめた上記アルコール含有溶媒中のアルコール類が、原料アルコールを蒸留したものであるか、又は原料アルコールを還元剤で処理したものである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、目的物質である、上記3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体中の変性物などの微量の不純物の発生を著しく抑制でき、製造後にさらに微量の不純物を除去するという面倒な精製処理などをしなくても高純度の3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体を製造することができる。これは、該物質が、極めて微量の不純物の含有も許容できない医薬の中間体などとして使用されることから、極めて意味のあるものである。
【0011】
本発明により、目的物質中の不純物を何故に著しく抑制できるかについては、必ずしも明確ではないが、ほぼ以下のように推測される。
上記製造過程で使用されるアルコール含有溶媒中のアルコール類は、元来それほど安定な物質ではない。一時的に高温にさらされると、その一部が分解して酸化性物質が生じ、該溶媒中に含有されているものと思われる。脱着、脱離の操作、及びその後に次の処理に移行されるまでの数時間〜数日間の長時間、目的物である3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体が該アルコール含有溶媒と接触するという点で、アルコール類に含有される酸化性物質は、その量が微量であっても、本発明の目的物質の製造における液体クロマトグラフィーなどの過程において重大である。
【0012】
このような長時間にわたるアルコール含有溶媒との接触を通じてアルコール含有溶媒中に含まれる酸化性物質により、目的物質が一部酸化され、該酸化物が不純物として目的物質中に含有されるものと思われる。これは、目的物質中に含有される変性物が、3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体の有する水酸基が酸化されることにより形成されるケトン類が主であることからしてもある程度裏付けられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で製造される3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体は以下の式(1)にて表わされる。
【0014】
【化2】

【0015】
上記式(1)において、Rは、炭素数1〜4のアルキル基であり、好ましくはメチル基、又はエチル基である。その代表的化合物は、(3R,5S)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸エチル((3R,5S)DOLE)や、(3R,5S)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸メチル((3R,5S)DOLM)などである。これらの物質は、高脂血症の予防や治療用医薬、コレステロールを低下させる医薬(HMG−CoA還元酵素阻害薬)の中間体として有利に使用される。
【0016】
これらの3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体は不斉炭素を有するが、既知の方法で、合成された化合物はラセミ体である。本発明では、上記のように、該ラセミ体を光学異性体分離用HPLCカラム(例えばダイセルケミカルインダストリーズ社製の“CHIRALCEL OF”)を用いた液体クロマトグラフィーにより光学分割して光学的に活性な異性体を得る過程において、アルコール含有溶媒が使用され、該アルコール含有溶媒との接触処理が行われる。
【0017】
かかるアルコール含有溶媒中のアルコール類としては、通常、炭素数が1〜4の低級アルコールが使用され、その例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが挙げられる。本発明では、なかでもイソプロパノールは特に効果的である。アルコール含有溶媒は、場合によりアルコール類単独で使用されてもよいが、通常、他の溶媒との混合溶媒として使用される。上記液体クロマトグラフィーにおける溶離液では、炭化水素類との混合溶媒が使用される。この場合の混合溶媒としては、好ましくは、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの炭化水素類を、アルコール類100質量部に対して好ましくは500〜50質量部含有する混合溶媒である。
【0018】
本発明では、これらのアルコール含有溶媒としては、該溶媒中に含まれる酸化性物質の含有量を可及的に低下しめたものが使用される。なかでも、アルコール含有溶媒中の酸化性物質の含有量を、3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体に対して0.05モル当量以下にせしめることが好ましい。この酸化性物質の含有量は、目的物質である3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体がアルコール含有溶媒と接触する全過程を通じて維持されるのが好ましい。本発明において、アルコール含有溶媒中に含まれる酸化性物質は、以下の式に従うヨウ素滴定法で求められるものである。例えば、試料20mLを正確に取り(秤量値も測定)、50mLの水で希釈し、これにヨウ化カリウム(KI)2g、酢酸水溶液10mLを加え、密栓し、暗所で15分以上静置した後、電位差自動滴定装置を用い、0.01mol/Lチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定することにより求められる。

H2O2+2H++2I- → 2H2O+I2
I2+2Na2S2O3 → 2NaI+Na2S4O6

【0019】
本発明において、アルコール含有溶媒中に含まれる酸化性物質の含有量が式(1)で示される3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体に対して0.05モル当量よりも大きい場合には、製造される3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体中に混入される変性物などの不純物の量が、通常問題のないレベルとされる1000ppm以下を満足できるほどに小さくならない。本発明では、アルコール含有溶媒中に含まれる酸化性物質の含有量を3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体に対して好ましくは0.05モル当量以下、特に好ましくは0.02モル当量以下にすることにより、製造される目的物質中の変性物などの不純物の量を格段に少なくできる。なお、酸化性物質のモル当量は、過酸化水素に換算して算定される。
【0020】
酸化性物質の含有量を低下させたアルコール含有溶媒を得る手段としては、種々の方法が採用でき、本発明では必ずしも限定されるものではないが、好ましくは以下の方法が採用される。
【0021】
その一つは、蒸留して残渣を除いたアルコール類を含有する溶媒を使用する方法である。後記する実施例1に示した如く、原料アルコール類の蒸留を繰り返すことによって含有される酸化性物質の量を確実に減少せしめることができる。蒸留法としては、常圧蒸留、減圧蒸留、共沸蒸留などの通常の蒸留法が採用できる。
【0022】
別の方法としては、還元剤を添加し酸化性物質を還元したアルコール類を含有する溶媒を使用する方法である。還元性物質としては、本発明では、ヒドロキノンまたはチオ硫酸ナトリウムが好ましい。かかる還元剤を使用した場合には、他の還元剤を使用した場合に生じる、(3R,5S)DOLEまたは(3R,5S)DOLMなどの3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体のラクトン化への変性を抑制することできる。還元剤の使用量としては、原料アルコール類中の酸化性物質混入量に対して好ましくは、0.5〜10当量の範囲であり、特に好ましくは1〜5当量の範囲である。還元剤で処理する温度は好ましくは、10〜60℃の範囲であり、特に好ましくは20〜40℃の範囲である。
【0023】
酸化性物質の含有量を低下させたアルコール類を得る上記二つの方法のなかでも、本発明では、前者の方法が好ましい。確実に酸化性物質の含有量を低下させることができるとともに、これにより得られる酸化性物質の含有量を低下させたアルコール類は、後者の方法と比べて余剰の還元剤や、還元剤と酸化性物質との反応生成物などの不純物を含まないからである。
【0024】
酸化性物質の含有量を低下させたアルコール含有溶媒を使用して、光学異性体分離用HPLCカラムを用い、回分式法または疑似移動床法などの液体クロマトグラフィー処理により、ラセミ体を光学分割して光学的に活性な異性体を得る過程としては、WO95/23125号公報やWO02/30903号公報に記載される既知の方法が採用される。
【実施例】
【0025】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。しかし、本発明はかかる個々の実施例に限定されるものでは全くないことを理解すべきである。
実施例1
市販の試薬特級のイソプロパノールを常圧蒸留により160倍に濃縮し、濃縮液と留出液を得た。得られた留出液を再度160倍に濃縮する蒸留操作をさらに3回繰り返し、得られた各イソプロパノール液中に含有される酸化性物質の量(mgH/g)を測定した。その結果を、表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
また、表1のそれぞれの液10mLに(3R,5S)DOLE240mgを溶解させ、40℃の恒温槽中、4日間放置することにより、(3R,5S)DOLEに含有される変性物の量を測定し、(3R,5S)DOLEを含む全物質中の百分率として表2に示した。
【0028】
(3R,5S)DOLEに含有される不純物を核磁気共鳴法、マススペクトル法により分析したところ、該不純物は、ケトン類が主であることが確認された。また、該不純物の含有量の分析は、オクタデシル基化学結合型シリカ充填剤を充填した4.6IDx250mmLのカラムL−ColumnODS(財団法人 科学物質評価研究機構)、エタノール−テトラヒドロフラン−0.01M酢酸アンモニウム水溶液(45:3:52、V/V/V)、1.0mL/min、40℃、検出波長254nmにて行った。
【0029】
【表2】

【0030】
表2からわかるように、酸化性物質を高濃度で含有するイソプロパノール液である蒸留1回目濃縮液と4日間接触した(3R,5S)DOLEには、不純物が含有され、しかもその含有量が経時的に増加している。一方、酸化性物質を高濃度で含有しないイソプロパノール液である蒸留2回目以降の濃縮液及び流出液と接触した(3R,5S)DOLEには、4日間接触した場合にも変性物が含有されないことがわかる。
【0031】
実施例2
(3R,5S)DOLE500mgを市販の試薬特級のイソプロパノール(IPA)0.64ml(0.5g相当)に溶解した。一方、9.26mmol/gのH水溶液を1.0035g秤りとり、上記と同じ市販の試薬特級のイソプロパノールで10mlに定容し、0.929mmol/g H−IPA溶液を調製した。
【0032】
このH−IPA溶液を上記(3R,5S)DOLEのIPA溶液に対して、イソプロパノール中のH量がそれぞれ10μl、20μl、50μl及び100μlとなるように添加した。得られた液を遮光下40℃の恒温槽中4日間放置し、実施例1と同様にして、生じる変性物の量(ppm)を検出した。その結果を表3に示した。なお、表3中のIPA中のH含有量は、(3R,5S)DOLEあたりのHのモル当量である。
【0033】
【表3】

【0034】
表3に示されるように、イソプロパノール中の過酸化物濃度が大きくなるにつれて、(3R,5S)DOLE中の不純物含有量は増大する。しかし、イソプロパノール中の過酸化物の含有量を0.05モル当量に維持するならば、(3R,5S)DOLE中の不純物含有量は通常許容される1000ppm以下に抑制できることがわかる。
【0035】
実施例3(還元剤:ヒドロキノン)
市販のイソプロパノール9mLに(3R,5S)DOLE240mgを溶解させた。加速試験のために、該溶液に対して、0.097mmol/mlのH水溶液を含有するイソプロパノール溶液0.5ml(0.09eq.)を加えた液(ブランク液)を40℃の恒温槽中、4日間放置した。
【0036】
一方、上記のブランク液に対して、0.0272mmol/mlヒドロキノン−イソプロパノール溶液1mlを更に添加した液(ヒドロキノン添加液)を、上記と同様に、40℃の恒温槽中、4日間放置した。
上記の各試験において、得られた(3R,5S)DOLEに含有される変性物の量を測定し表4に示した。
【0037】
【表4】

【0038】
実施例4(還元剤:チオ硫酸ナトリウム)
市販のイソプロパノール9mLに(3R,5S)DOLE240mgを溶解させた。加速安定性試験のために、該溶液に対して、0.097mmol/mlのH水溶液を含有するイソプロパノール溶液0.5ml(0.09eq.)を加えた液(ブランク液)を、40℃の恒温槽中、4日間放置した(ブランク)。
一方、上記のブランク液に対して、0.0265mmol/mlチオ硫酸ナトリウム水溶液1mlを更に添加した液(チオ硫酸ナトリウム添加液)を、上記と同様に、40℃の恒温槽中、4日間放置した。
上記の各試験において、得られた(3R,5S)DOLEに含有される変性物の量を測定し表5に示した。
【0039】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基である)を炭素数1〜4の低級アルコール含有溶媒と接触させる過程を含む方法であって、酸化性物質の含有量を可及的に低下しめたアルコール含有溶媒を使用し、3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体に含有される不純物量を抑制したことを特徴とする3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体の製造方法。
【化1】

【請求項2】
上記アルコール含有溶媒と接触する過程が、式(1)で表される3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体を光学分割するための光学異性体分離用カラムを用いた液体クロマトグラフィーの溶離液としての溶媒と接触する過程である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記アルコール含有溶媒中の酸化性物質の含有量を、式(1)で示される3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体に対して0.05モル当量以下にせしめた請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
式(1)中のRが、メチル基又はエチル基である請求項1、2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
上記アルコール含有溶媒中のアルコール類が、メタノール、エタノール、又はイソプロパノールである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
酸化性物質の含有量を式(1)で表される3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸誘導体に対し0.05モル当量以下にせしめた上記アルコール含有溶媒中のアルコールが、原料アルコールを蒸留したものであるか、又は原料アルコールを還元剤で処理したものである請求項3〜5のいずれかに記載の製造方法。

【公表番号】特表2007−507417(P2007−507417A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515419(P2006−515419)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014289
【国際公開番号】WO2005/033083
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】