説明

高純度アルミン酸ナトリウムの製造方法および高純度アルミン酸ナトリウム

【課題】
本発明の目的は、工業的に簡便な方法による高純度アルミン酸ナトリウムの製造方法およびその製造方法による高純度アルミン酸ナトリウムを提供することにある。
【解決手段】
水酸化ナトリウム水溶液に、少なくとも水酸化アルミニウムまたは酸化アルミニウムのいずれか1種以上を添加し、反応させてアルミン酸ナトリウム水溶液とし、該アルミン酸ナトリウム水溶液を活性炭またはセルロースと接触させることを特徴とする高純度アルミン酸ナトリウムの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度アルミン酸ナトリウムの製造方法に関し、さらには、電池用ベータアルミナやリチウム二次電池の正極の製造に用いられる高純度アルミン酸ナトリウムの製造方法および高純度アルミン酸ナトリウムに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミン酸ナトリウムは工業的には、水酸化アルミニウムを製造する際の中間物として、ボーキサイト等に130℃以上の熱水酸化ナトリウムを加えて、ボーキサイト中のアルミナ分を溶解抽出することにより、製造されている。
【0003】
このようにして、得られるアルミン酸ナトリウムは、着色物質である水酸化鉄および有機炭素が多量に含有されており、またその他の不純物も多く含まれるため、高純度なアルミン酸ナトリウムが必要な用途、たとえば、半導体のCMP(化学的機械的研磨剤)、電池用ベータアルミナ、リチウム二次電池の正極の原料等には使用することができない。
【0004】
電池用ベータアルミナに関しては、たとえば、特許文献1には、アルミナとアルミン酸ナトリウムと酸化マグネシウムとを混合し、成形され、乾燥後、高温で焼結することが記載されている。
【0005】
このようなベータアルミナをナトリウム−硫黄電池用などに使用する場合には、高純度であることが必要である。特に、カルシウム、鉄、カリウムなどの特定の不純物が所定量以上含まれると、これらの不純物が電気抵抗を増加させる欠陥箇所として作用し、ベータアルミナ菅の電気抵抗が大きくなり、電池の電気容量が低下し、充放電の繰り返しにより電池寿命が短くなる。
【0006】
したがって、このようなベータアルミナの原料としてのアルミン酸ナトリウムとしては、当然のことながら高純度でなければならず、特にカルシウム、鉄、カリウムなどの不純物含有量は少ないことが要求される。
【0007】
アルミン酸ナトリウム水溶液の精製方法として、特許文献2には、アルミン酸ナトリウム水溶液中に、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムを添加し、該溶液を撹拌後濾過することが記載されている。
【0008】
しかしながら、このような方法では、アルミン酸ナトリウム水溶液中のカルシウムの含有量はかえって増加してしまい、電池用ベータアルミナの原料として使用することはできない。
【0009】
また特許文献3には、高純度水酸化アルミニウム製造の前段階として、アルミン酸ナトリウム水溶液中の不純物を低減する方法が記載されている。この方法によると、過飽和のアルミン酸ナトリウム水溶液に種結晶として比表面積の大きい水酸化アルミニウムを添加し、アルミン酸ナトリウムを一部水酸化アルミニウムとして析出させ、同時に不純物を共沈させて低減することが記載されている。
【0010】
この方法では、水酸化カルシウムなどを添加する方法ではないため、特定の不純物が増加する危険性はないが、プロセスとしては、種結晶の状態、過飽和度の状態、析出の状態等を厳密に制御することが必要で、不純物のレベルがバラツキやすく、また析出物の量も比較的多くなるため濾過にコストがかかり、原料のロスも大きく、簡便なプロセスとは言えない。
【0011】
さらに、リチウム二次電池の正極に使用する場合、有害不順物となるカチオン、とりわけカリウム、鉄、カルシウム、チタンなどが含まれていると電池性能に悪影響を及ぼすので好ましくないという問題があり、出来る限り、不純物を含まない高純度のアルミン酸ナトリウムが好ましいものの、簡便な方法は確立されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭46−105649号公報
【特許文献2】特開2004−203674号公報
【特許文献3】特公平3−51654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、工業的に簡便な方法による高純度アルミン酸ナトリウムの製造方法およびその製造方法による高純度アルミン酸ナトリウムを提供することにあり、さらには、電池用ベータアルミナやリチウム二次電池の正極の原料として使用できる高純度アルミン酸ナトリウムの製造方法およびその製造方法による高純度アルミン酸ナトリウムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、水酸化ナトリウム水溶液に、少なくとも水酸化アルミニウムまたは酸化アルミニウムのいずれか1種以上を添加し、反応させてアルミン酸ナトリウム水溶液とし、該アルミン酸ナトリウム水溶液を活性炭またはセルロースと接触させることを特徴とする高純度アルミン酸ナトリウムの製造方法である。
【0015】
また本発明は、水酸化ナトリウム水溶液に、少なくとも水酸化アルミニウムまたは酸化アルミニウムのいずれか1種以上を添加し、反応させてアルミン酸ナトリウム水溶液とし、該アルミン酸ナトリウム水溶液を活性炭およびセルロースと接触させることを特徴とする高純度アルミン酸ナトリウムの製造方法である。
【0016】
また本発明は、前記セルロースの量が、前記アルミン酸ナトリウム水溶液中の固形分100重量部に対し、0.4重量部以上であることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記活性炭の量が、前記アルミン酸ナトリウム水溶液中の固形分100重量部に対し、0.08重量部以上であることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記水酸化ナトリウム水溶液中のカリウムが、水酸化ナトリウム固形分に対して20ppm以下であることを特徴とする。
【0019】
さらに本発明は、前記方法で製造された高純度アルミン酸ナトリウムであって、その純度が、アルミン酸ナトリウム固形分に対し、カルシウムが15ppm以下およびカリウムが10ppm以下であることを特徴とする電池用ベータアルミナ製造に用いる高純度アルミン酸ナトリウムである。
【0020】
さらに本発明は、前記方法で製造された高純度アルミン酸ナトリウムであって、その純度が、アルミン酸ナトリウム固形分に対し、カルシウムが15ppm以下およびカリウムが10ppm以下であることを特徴とするリチウム二次電池正極製造に用いる高純度アルミン酸ナトリウムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、水酸化ナトリウム水溶液と、少なくとも水酸化アルミニウムまたは酸化アルミニウムのいずれか1種以上との反応生成物であるアルミン酸ナトリウム水溶液を活性炭またはセルロースと接触させるか、あるいは活性炭およびセルロースと接触させるという、工業的に簡便な方法による高純度のアルミン酸ナトリウムを製造できる。
【0022】
また本発明によれば、製造される高純度アルミン酸ナトリウムは、アルミン酸ナトリウム固形分に対し、鉄が5ppm以下、カルシウムが15ppm以下、チタンが6ppm以下、およびカリウムが10ppm以下という極めて高純度のアルミン酸ナトリウムであり、電池用ベータアルミナ製造またはリチウム二次電池正極製造に最適な純度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、水酸化ナトリウム水溶液に、少なくとも水酸化アルミニウムまたは酸化アルミニウムのいずれか1種以上を添加し、反応させてアルミン酸ナトリウム水溶液とし、該アルミン酸ナトリウム水溶液を吸着剤である活性炭またはセルロースと接触させるか、あるいは活性炭およびセルロースと接触させることにより実施することができる。
【0024】
水酸化ナトリウムとしては、市販の水酸化ナトリウムを用いることができるが、普通グレードの水酸化ナトリウム中には、カリウムが約200ppm以上含まれており、この溶液をそのまま活性炭または活性炭とセルロースに接触させても低減効果はあまりない。このため、電池用ベータアルミナ用には、原料としてカリウムの含有量の少ない水酸化ナトリウムの高純度グレードを選択することが望ましい。または予め普通グレードの水酸化ナトリウム中のカリウムイオンを除去するプロセスを付加することも可能である。
【0025】
したがって、水酸化ナトリウムとしては、カリウムの含有量が20ppm以下のものが好ましい。カリウムの含有量が20ppmを超えたものは、電池用ベータアルミナの原料として使用した場合、アルミン酸ナトリウム水溶液中のカリウムにより、電池性能が劣ることになるため好ましくない。
【0026】
水酸化ナトリウム水溶液の濃度は、NaOHとして、30〜50%程度の濃度となるよう調製するのが好ましい。濃度が低すぎると得られるアルミン酸ナトリウムの濃度も低くなり、その後の濾過などの工程に悪影響を与えるため好ましくなく、また濃度が高すぎると反応時、反応後の溶液の安定性が悪くなるので好ましくない。
【0027】
次いで、このように調製した水酸化ナトリウム水溶液に、少なくとも水酸化アルミニウムまたは酸化アルミニウムのいずれか1種以上の粉末を添加する。反応性の観点からは、酸化アルミニウムより水酸化アルミニウムの方が好ましい。また、場合によっては、アルミナ源として金属アルミニウムを使用することもできる。
【0028】
水酸化アルミニウム粉末または酸化アルミニウム粉末の粒径は、小さい方が反応しやすいが、粉体の取扱いの観点から適度な粒径のものを選択する。通常は、50〜150μmの粒径のものを用いる。また純度は、後工程による精製が可能なことより、普通グレードの純度のものまたは、それより不純物の少ないもので十分である。
【0029】
水酸化ナトリウムと少なくとも水酸化アルミニウムまたは酸化アルミニウムのいずれか1種以上との反応は、室温もしくは加温下に攪拌することによって実施できる。
【0030】
反応は、室温でも可能であるが、反応時間を考慮すると必要に応じ沸点(Al濃度19.0%、NaO濃度19.5%で約116℃。)までの温度を選択することも可能である。好ましい反応温度は70〜100℃である。
【0031】
水酸化ナトリウムと水酸化アルミニウム等の比率は、モル比(NaO/Al)が1.40〜1.79になるよう調製するのが好ましい。このモル比が1.39以下であれば合成後の冷却時に固化が起こり好ましくなく、1.80以上であるとAl濃度が低くの原料としては好ましくない。
【0032】
このようにして、得られるアルミン酸ナトリウム水溶液は、活性炭または活性炭とセルロースと接触させる。これにより、溶液中の鉄、カルシウムなどの不純物濃度を低減することができ、電池用ベータアルミナの原料とすることができる。活性炭とセルロースを併用することにより、この低減効果を飛躍的に高めることができる。
【0033】
アルミン酸ナトリウム水溶液と接触させる活性炭は、メチレンブルー脱色力の大きい、濾過速度の大きい活性炭を用いるのが好ましい。
【0034】
このような活性炭としては、花DW50(セラケム株式会社)、星B1W50(同前)などを挙げることができる。
【0035】
またアルミン酸ナトリウムと接触させる活性炭の量は、前記アルミン酸ナトリウム水溶液中の固形分100重量部に対し、0.08重量部以上である。0.08重量部より少ないとFe、Caなどの除去が十分でなく好ましくない。活性炭量は多いほど不純物量は減少するので、その上限は特にないが、一例をあげるとすれば、アルミン酸ナトリウム水溶液中の固形分100重量部に対して2重量部程度であるのが製造面で好ましい。
【0036】
また、活性炭と共に、アルミン酸ナトリウムと接触させるセルロースは、粉末セルロースや微結晶セルロースなどが使用できるが、濾過性の良いものを使用するのが好ましい。
【0037】
このようなセルロースとしては、ソルカフロック(登録商標、微結晶セルロース、今津薬品工業株式会社)を挙げることができる。
【0038】
またアルミン酸ナトリウムと接触させるセルロースの量は、前記アルミン酸ナトリウム水溶液中の固形分100重量部に対し、0.4重量部以上である。0.4重量部より少ないとFe、Caなどの除去が十分でなく好ましくない。セルロース量は多いほど不純物量は減少するので、その上限は特にないが、一例をあげるとすれば、アルミン酸ナトリウム水溶液中の固形分100重量部に対して2重量部程度であるのが製造面で好ましい。
【0039】
活性炭またはセルロースは、それぞれ単独でも使用できるが、併用することにより、その精製効果を飛躍的に高めることができる。
【0040】
かくして得られたアルミン酸ナトリウム水溶液は、そのまま電池用ベータアルミナの原料として使用することができるほか、適宜の方法で濃縮し粉砕することにより、アルミン酸ナトリウムの粉末として得ることができる。
【0041】
かくして得られたアルミン酸ナトリウムは、不純物含量がアルミン酸ナトリウム固形分に対し、鉄が5ppm以下、カルシウムが15ppm以下、およびカリウムが10ppm以下であり、電池用ベータアルミナまたはリチウム二次電池正極の原料として優れたものである。
【0042】
上記アルミン酸ナトリウムを原料として、リチウム二次電池の正極を製造する場合には、公知の方法により製造することができる。
【0043】
たとえば、前記のようにして得られたアルミン酸ナトリウム溶液に、コバルトを含有する水酸化ニッケル(Ni:494重量%、Co:101重量%)を加え、精製水をさらに加えて攪拌し、コバルト含有水酸化ニッケルを懸濁させ、当該懸濁液を酸で中和することにより、水酸化ニッケルの粒子表面に、中和により析出した水酸化アルミニウム粒子が吸着し、両者が均一に分散した沈殿物を得ることができる。ついで、このコバルトを含有する水酸化ニッケルと水酸化アルミニウムとからなる沈澱物を乾燥したのち、Li/Ni+Co+Alのモル比が103となるように水酸化リチウムを添加して、充分に撹拌混合すれば、正極材料の前駆体組成物を得ることができる。
【0044】
さらにこの正極材料の前駆体組成物は、オゾン含有酸素を吹き込みつつ、高温(例えば700℃程度)で焼成することによって、AlとCoとNiが充分に拡散して均一に固溶したリチウム二次電池の正極を得ることができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。なお、実施例および比較例中、%またはppmは全て質量基準である。
【0046】
また、実施例および比較例において、各原料中の不純物である鉄、カルシウム、チタンまたはカリウムの含有量についての記載がないときは、いずれもそれらの含有量が1ppm以下であることを示す。
【0047】
アルミン酸ナトリウム中の各成分の分析は以下の方法により行った。
1)Al濃度:滴定法
2)NaO濃度:滴定法
3)Fe含有量:ICP発光分析
4)Ca含有量:ICP発光分析
5)Ti含有量:ICP発光分析
6)K含有量:原子吸光
7)色度:分光色彩計
【0048】
実施例1
水酸化ナトリウム溶液(48%濃度)524gに、不純物として鉄60ppm、カルシウム90ppm、チタン20ppm、カリウム2.0ppmを含む普通グレードの水酸化アルミニウム(HO 1.3%含む)292gを加え75℃に加温した。加温後1時間撹拌し反応させアルミン酸ナトリウム水溶液を得た。次いで不純物としてカルシウム12ppm、カリウム2.0ppmを含む水184gを添加した後、活性炭(セラケム社、花DW50、メチレンブルー脱色力190ml/g)4.0gおよびセルロース(今津薬品工業株式会社、ソルカフロック#40、登録商標)4.0gを添加し、2時間撹拌した。その後、吸引濾過を行いアルミン酸ナトリウムの溶液と、活性炭およびセルロースを分離することにより、アルミン酸ナトリウム水溶液を得た。
【0049】
得られたアルミン酸ナトリウム水溶液のAl濃度、NaO濃度およびモル比(NaO/Al)、不純物分析の結果、色度の測定結果は、表1に示すとおりであり、Al濃度18.8%、NaO濃度19.4%で、モル比(NaO/Al)が1.69であった。
【0050】
また、このアルミン酸ナトリウム溶液中の鉄は1.3ppm(アルミン酸ナトリウム固形分換算で3.4ppm)、カルシウムは5.6ppm(同14.7ppm)、カリウムは1ppm以下(同1ppm以下)、チタンは2.3ppm(同6.0ppm)であった。
【0051】
色度の測定結果では、L値96.8、a値−0.35、b値2.90であった。ここでb値が大きいほど黄色度の程度が大きい。
【0052】
実施例2
実施例1と同じ活性炭を6.0g、実施例1と同じセルロースを6.0g使用した他は、実施例1と同様の原料および方法でアルミン酸ナトリウムの溶液を得た。得られたアルミン酸ナトリウム水溶液のAl濃度、NaO濃度およびモル比(NaO/Al)、不純物分析の結果、色度の測定結果は、表1に示すとおりであり、Al濃度18.8%、NaO濃度19.3%で、モル比(NaO/Al)が1.69であった。
【0053】
また、このアルミン酸ナトリウム溶液中の鉄は0.75ppm(アルミン酸ナトリウム固形分換算で2.0ppm)、カルシウムは5.2ppm(同13.6ppm)、チタンは1.9ppm(同5.0ppm)、カリウムは1ppm以下(同1ppm以下)であった。
色度は、L値95.2、a値−0.33、b値2.67であった。
【0054】
実施例3
実施例1において、セルロースを使用しない他は、実施例1と同様の原料および方法でアルミン酸ナトリウムの溶液を得た。得られたアルミン酸ナトリウム水溶液のAl濃度、NaO濃度およびモル比(NaO/Al)、不純物分析の結果、色度の測定結果は、表1に示すとおりであり、Al濃度18.9%、NaO濃度19.6%で、モル比(NaO/Al)が1.71であった。
【0055】
また、このアルミン酸ナトリウム溶液中の鉄は5.8ppm(アルミン酸ナトリウム固形分換算で15.1ppm)、カルシウムは5.7ppm(同14.8ppm)、チタンは3.4ppm(同8.8ppm)、カリウムは1ppm以下(同1ppm以下)であった。
色度は、L値96.8、a値−0.47、b値3.20であった。
【0056】
実施例4
実施例1の水酸化ナトリウム溶液に代えて、普通グレードの水酸化ナトリウム溶液(48%濃度)を使用した他は、実施例1と同様の原料および方法でアルミン酸ナトリウムの溶液を得た。なお、前記普通グレードの水酸化ナトリウム溶液中には不純物の鉄が17ppm、カリウムが760ppm(いずれも水酸化ナトリウム固形分換算値)含有されていた。
【0057】
得られたアルミン酸ナトリウム溶液の、Al濃度18.8%、得られたアルミン酸ナトリウム水溶液のAl濃度、NaO濃度およびモル比(NaO/Al)、不純物分析の結果、色度の測定結果は、表1に示すとおりであり、Al濃度18.8%、NaO濃度19.3%で、モル比(NaO/Al)が1.69であった。
【0058】
また、このアルミン酸ナトリウム溶液中の鉄は1.5ppm(アルミン酸ナトリウム固形分換算で3.9ppm)、カルシウムは5.5ppm(同14.4ppm)、チタンは2.3ppm(同6.0ppm)、カリウムは139ppm(同365ppm)であった。
色度は、L値95.7、a値−0.38、b値2.86であった。
【0059】
実施例5
実施例1と同じ活性炭を6.5g、実施例1と同じセルロースを4.0g使用した他は、実施例1と同様の原料および方法でアルミン酸ナトリウムの溶液を得た。
【0060】
得られたアルミン酸ナトリウム水溶液のAl濃度、NaO濃度およびモル比(NaO/Al)、不純物分析の結果、色度の測定結果は、表1に示すとおりであり、Al濃度18.9%、NaO濃度19.4%で、モル比(NaO/Al)が1.69であった。
【0061】
また、このアルミン酸ナトリウム溶液中の鉄は1.3ppm(アルミン酸ナトリウム固形分換算で3.3ppm)、カルシウムは5.4ppm(同14.3ppm)、チタンは2.3ppm(同6.0ppm)、カリウムは1ppm以下(同1ppm以下)であった。
色度は、L値95.1、a値−0.46、b値2.70であった。
【0062】
実施例6
実施例1と同じ活性炭を4.0g、実施例1と同じセルロースを0.15g使用した他は、実施例1と同様の原料および方法でアルミン酸ナトリウムの溶液を得た。
【0063】
得られたアルミン酸ナトリウム水溶液のAl濃度、NaO濃度およびモル比(NaO/Al)、不純物分析の結果、色度の測定結果は、表1に示すとおりであり、Al濃度18.8%、NaO濃度19.4%で、モル比(NaO/Al)が1.70であった。
【0064】
また、このアルミン酸ナトリウム溶液中の鉄は5.7ppm(アルミン酸ナトリウム固形分換算で15.0ppm)、カルシウムは5.6ppm(同14.7ppm)、チタンは3.3ppm(同8.7ppm)、カリウムは1ppm以下(同1ppm以下)であった。
色度は、L値96.4、a値−0.42、b値3.22であった。
【0065】
実施例7
実施例1と同じ活性炭を4.0g、実施例1と同じセルロースを6.5g使用した他は、実施例1と同様の原料および方法でアルミン酸ナトリウムの溶液を得た。
【0066】
得られたアルミン酸ナトリウム水溶液のAl濃度、NaO濃度およびモル比(NaO/Al)、不純物分析の結果、色度の測定結果は、表1に示すとおりであり、Al濃度18.9%、NaO濃度19.5%で、モル比(NaO/Al)が1.70であった。
【0067】
また、このアルミン酸ナトリウム水溶液中の鉄は0.9ppm(アルミン酸ナトリウム固形分換算で2.4ppm)、カルシウムは5.4ppm(同14.3ppm)、チタンは2.2ppm(同5.9ppm)、カリウムは1ppm以下(同1ppm以下)であった。
色度は、L値98.0、a値−0.49、b値2.89であった。
【0068】
実施例8
活性炭を使用しない他は、実施例1と同様の原料および方法でアルミン酸ナトリウムの溶液を得た。
得られたアルミン酸ナトリウム水溶液のAl濃度、NaO濃度およびモル比(NaO/Al)、不純物分析の結果、色度の測定結果は、表1に示すとおりであり、Al濃度19.2%、NaO濃度19.7%で、モル比(NaO/Al)が1.69であった。
【0069】
また、このアルミン酸ナトリウム中の鉄は1.8ppm(アルミン酸ナトリウム固形分換算で4.8ppm)、カルシウムは6.7ppm(同17.3ppm)、チタンは2.4ppm(同6.3ppm)、カリウムは1ppm以下(同1ppm以下)であった。色度は、L値97.7、a値−0.64、b値5.06であった。
【0070】
実施例9
実施例1の水酸化ナトリウム溶液に代えて、カリウム含有量が、水酸化ナトリウム固形分換算で18.9ppmの水酸化ナトリウム溶液(48%濃度)524g、実施例1と同じ活性炭を4.0gおよび実施例1と同じセルロースを4.0g使用した他は、実施例1と同様の原料および方法でアルミン酸ナトリウムの溶液を得た。
【0071】
得られたアルミン酸ナトリウム水溶液のAl濃度、NaO濃度およびモル比(NaO/Al)、不純物分析の結果、色度の測定結果は、表1に示すとおりであり、Al濃度19.1%、NaO濃度19.6%で、モル比(NaO/Al)が1.69であった。
【0072】
また、このアルミン酸ナトリウム中の鉄は1.6ppm(アルミン酸ナトリウム固形分換算で4.1ppm)、カルシウムは5.6ppm(同14.6ppm)、チタンは2.7ppm(同7.1ppm)、カリウムは3.5ppm(同9.2ppm)であった。色度は、L値96.5、a値−0.43、b値3.11であった。
【0073】
比較例1
実施例1において、活性炭およびセルロースを使用しない他は、実施例1と同様の原料および方法でアルミン酸ナトリウムの溶液を得た。
【0074】
得られたアルミン酸ナトリウム水溶液のAl濃度、NaO濃度およびモル比(Na2O/Al)、不純物分析の結果、色度の測定結果は、表1に示すとおりであり、Al濃度19.0%、NaO濃度19.4%で、モル比(NaO/Al)が1.68であった。
【0075】
また、このアルミン酸ナトリウム水溶液中の鉄は7.0ppm(アルミン酸ナトリウム固形分換算で18.2ppm)、カルシウムは10.5ppm(同27.3ppm)、チタンは3.5ppm(同9.1ppm)、カリウムは1ppm以下(同1ppm以下)であった。
色度は、L値95.7、a値−0.48、b値6.43であった。
【0076】
比較例2
実施例1において、活性炭およびセルロースを使用せず、水酸化ナトリウムとして実施例4と同じ水酸化ナトリウムを使用した他は、実施例1と同様の原料および方法でアルミン酸ナトリウムの溶液を得た。
【0077】
得られたアルミン酸ナトリウム水溶液のAl濃度、NaO濃度およびモル比(NaO/Al)、不純物分析の結果、色度の測定結果は、表1に示すとおりであり、Al濃度18.6%、NaO濃度19.2%で、モル比(NaO/Al)が1.70であった。
【0078】
また、このアルミン酸ナトリウム水溶液中の鉄は7.3ppm(アルミン酸ナトリウム固形分換算で19.3ppm)、カルシウムは11.4ppm(同30.2ppm)、チタンは3.4ppm(同9.0ppm)、カリウムは135ppm(同357ppm)であった。
色度は、L値95.5、a値−0.38、b値6.45であった。
【0079】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化ナトリウム水溶液に、少なくとも水酸化アルミニウムまたは酸化アルミニウムのいずれか1種以上を添加し、反応させてアルミン酸ナトリウム水溶液とし、該アルミン酸ナトリウム水溶液を活性炭またはセルロースと接触させることを特徴とする高純度アルミン酸ナトリウムの製造方法。
【請求項2】
水酸化ナトリウム水溶液に、少なくとも水酸化アルミニウムまたは酸化アルミニウムのいずれか1種以上を添加し、反応させてアルミン酸ナトリウム水溶液とし、該アルミン酸ナトリウム水溶液を活性炭およびセルロースと接触させることを特徴とする高純度アルミン酸ナトリウムの製造方法。
【請求項3】
前記セルロースの量が、前記アルミン酸ナトリウム水溶液中の固形分100重量部に対し、0.4重量部以上であることを特徴とする請求項2記載の高純度アルミン酸ナトリウムの製造方法。
【請求項4】
前記活性炭の量が、前記アルミン酸ナトリウム水溶液中の固形分100重量部に対し、0.08重量部以上であることを特徴とする請求項1または2記載の高純度アルミン酸ナトリウムの製造方法。
【請求項5】
前記水酸化ナトリウム水溶液中のカリウムが、水酸化ナトリウム固形分に対して20ppm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の高純度アルミン酸ナトリウムの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1つに記載の方法で製造された高純度アルミン酸ナトリウムであって、その純度が、アルミン酸ナトリウム固形分に対し、カルシウムが15ppm以下およびカリウムが10ppm以下であることを特徴とする電池用ベータアルミナ製造に用いる高純度アルミン酸ナトリウム。
【請求項7】
請求項1〜5いずれか1つに記載の方法で製造された高純度アルミン酸ナトリウムであって、その純度が、アルミン酸ナトリウム固形分に対し、カルシウムが15ppm以下およびカリウムが10ppm以下であることを特徴とするリチウム二次電池正極製造に用いる高純度アルミン酸ナトリウム。

【公開番号】特開2012−87005(P2012−87005A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234986(P2010−234986)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000213840)朝日化学工業株式会社 (47)
【Fターム(参考)】