説明

高純度シリカの製造方法

【課題】高純度のシリカを、簡易にかつ低コストで製造しうる方法を提供する。
【解決手段】(B)液分中のSi濃度が10.0質量%以上のケイ酸アルカリ水溶液と10.0体積%以上の濃度の鉱酸を混合して、液分中のSiを非ゲル状の沈降性シリカとして析出させるシリカ回収工程と、(C)工程(B)で得られたSiOを含む固形分と鉱酸を混合する酸洗浄工程と、(D)工程(C)で得られたSiOを含む固形分と水道水を混合する水道水洗浄工程と、(E)前工程で得られたSiOを含む固形分とイオン交換水を混合するイオン交換水洗浄工程と、を含む高純度シリカの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度シリカの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高純度シリコンは、半導体デバイス、触媒担体等に用いられている。
高純度シリコンの製造方法として、例えば、金属シリコンから製造された高純度のシリコン塩化物(トリクロロシラン)を原料として用いる方法が提案されている(特許文献1)。
特許文献1に記載の方法によると、非常に高純度のシリコンを得ることができる。しかし、この方法は、工程が煩雑でかつ高コストであるという問題がある。このような事情下において、高純度のシリコンを、低コストかつ大量に製造することのできる技術が望まれている。
これを解決すべく、二酸化ケイ素を含有しかつ多孔質で微細構造を有する原料を精製して高純度シリカを製造し、次いで、この高純度シリカを原料としてシリコンを生成し、得られたシリコンにレーザを照射することなどによって、高純度シリコンを製造する方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−001804号公報
【特許文献2】特開2006−188367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載の方法によると、従来技術に比して、低コストでかつ簡易に、高純度のシリコンを得ることができる。シリコンの原料となる高純度シリカを、より低コストでかつ簡易に得ることができれば、好都合である。
そこで、本発明は、高純度シリカを、簡易にかつ低コストで製造することのできる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を混合して、非ゲル状の沈降性シリカとして析出させた後、酸洗浄、水道水洗浄、及びイオン交換水洗浄を行うことで、前記の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[10]を提供するものである。
[1](B)液分中のSi濃度が10.0質量%以上のケイ酸アルカリ水溶液と10.0体積%以上の濃度の鉱酸を混合して、液分中のSiを非ゲル状の沈降性シリカとして析出させ、沈降性シリカ含有液状物を得た後、該液状物を固液分離して、SiOを含む固形分と、不純物を含む液分を得るシリカ回収工程と、(C)工程(B)で得られたSiOを含む固形分と鉱酸を混合して、pHが3.0未満の酸性スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物を溶解させた後、上記酸性スラリーを固液分離して、SiOを含む固形分と、不純物を含む液分を得る酸洗浄工程と、(D)工程(C)で得られたSiOを含む固形分と水道水を混合して、水道水スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物を溶解させた後、上記水道水スラリーを固液分離して、SiOを含む固形分と、不純物を含む液分を得る水道水洗浄工程と、(E)前工程で得られたSiOを含む固形分とイオン交換水を混合して、イオン交換水スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物を溶解させた後、上記イオン交換水スラリーを固液分離して、SiOを含む固形分と、不純物を含む液分を得るイオン交換水洗浄工程と、を含む高純度シリカの製造方法。
[2]工程(C)で得られた不純物を含む液分と工程(D)で得られた不純物を含む液分を混合して、混合液を得た後、該混合液を工程(B)の上記鉱酸として再使用する前記[1]に記載の高純度シリカの製造方法。
[3]前記工程(D)と工程(E)の間に、工程(D)で得られたSiOを含む固形分と水道水を混合して、スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物を溶解させた後、上記スラリーを固液分離して、SiOを含む固形分と、不純物を含む液分を得る第二の水道水洗浄工程を含み、第二の水道水洗浄工程で得られた不純物を含む液分と鉱酸を混合して、鉱酸溶液を得た後、該鉱酸溶液を工程(C)の上記鉱酸として再使用する前記[1]または[2]に記載の高純度シリカの製造方法。
[4]工程(E)で得られた不純物を含む液分を工程(E)の上記イオン交換水として再使用する前記[1]〜[3]のいずれかに記載の高純度シリカの製造方法。
[5]工程(B)において、前記ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を、混合後のpHが1.0以下に保たれるように混合する、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の高純度シリカの製造方法。
[6]工程(B)において、前記ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸の混合が、ケイ酸アルカリ水溶液を鉱酸に添加することによって行われる、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の高純度シリカの製造方法。
[7]工程(B)の前に、(A)シリカ含有鉱物とアルカリ水溶液を混合して、pHが11.5以上のアルカリ性スラリーを調製し、液分中のSi濃度が10.0質量%以上となるように、上記シリカ含有鉱物中のSiを液分中に溶解させた後、上記アルカリ性スラリーを固液分離して、ケイ酸アルカリ水溶液と、固形分を得るアルカリ溶解工程、を含む前記[1]〜[6]のいずれかに記載の高純度シリカの製造方法。
[8]工程(A)と工程(B)の間に、(B1)工程(A)で得られたケイ酸アルカリ水溶液と酸を混合して、pHを10.3を超え、11.5未満であり、かつ液分中のSi濃度が10質量%以上のアルカリ性スラリーを調製し、液分中の不純物を析出させた後、上記アルカリ性スラリーを固液分離し、ケイ酸アルカリ水溶液と、固形分を得る不純物回収工程、を含む、前記[7]に記載の高純度シリカの製造方法。
[9]工程(A)の前に、(A1)シリカ含有鉱物を水洗して、粘土分及び有機物を除去する原料水洗工程、を含む前記[7]または[8]に記載の高純度シリカの製造方法。
[10]工程(A)の前に、(A2)シリカ含有鉱物粉末を300〜1000℃で0.5〜2時間焼成して、有機物を除去する原料焼成工程、を含む前記[7]〜[9]のいずれかに記載の高純度シリカの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の高純度シリカの製造方法によると、操作が簡易であり、処理効率が高く、さらには、高価なイオン交換水を用いて洗浄する前に、安価な水道水を用いて洗浄しているため、従来技術に比して低い製造コストで高純度シリカを得ることができる。
さらに、本発明の製造方法により得られる高純度シリカは、シリカの含有率が高く、またアルミニウム(Al)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、ホウ素(B)、リン(P)、有機物(C)などの不純物の含有率が低いという特長がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の高純度シリカの製造方法の実施形態の一例を示すフロー図である。
【図2】本発明の高純度シリカの製造方法中のイオン交換水洗浄工程の実施形態の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の高純度シリカの製造方法を詳しく説明する。
なお、以下の工程(A1)〜工程(E)中、工程(B)〜(E)は、本発明において必須の工程であるが、工程(A)は、シリカ含有鉱物を原料としてケイ酸アルカリ水溶液を調製する場合に追加される工程であり、工程(A1)、(A2)、及び(B1)は本発明において必須ではなく、任意で追加可能な工程である。
[工程(A1);原料水洗工程]
工程(A1)は、シリカ含有鉱物(岩石状又は粉末状)を水洗して、粘土分及び有機物を除去する工程である。水洗後のシリカ含有鉱物は、通常、フィルタープレス等を用いて、さらに脱水させる。
シリカ含有鉱物としては、珪藻土、珪質頁岩等が挙げられる。シリカ含有鉱物は、アルカリに対する溶解性が高いことが望ましい。
ここで、珪藻土とは、珪藻が海底や湖底に沈積し、長い年月の間に体内の原形質その他の有機物が分解し、非晶質シリカを主体とした珪藻殻が集積して堆積したものである。
珪質頁岩とは、珪質の生物遺骸等に由来する頁岩である。すなわち、海域には、珪質の殻を有する珪藻などのプランクトンが生息するが、このプランクトンの死骸が海底中に堆積すると、死骸中の有機物の部分は徐々に分解され、珪質(SiO;シリカ)の殻のみが残る。この珪質の殻(珪質堆積物)が、時間の経過や温度・圧力の変化などに伴い、続成作用により変質して、硬岩化することにより珪質頁岩となる。なお、珪質堆積物中のシリカは、続成作用によって、非晶質シリカから、結晶化してクリストバライト、トリデイマイトへ、さらに石英へと変化する。
【0010】
珪藻土は、主に非晶質シリカであるオパールAからなる。珪質頁岩は、オパールAより結晶化が進んだオパールCTまたはオパールCを主に含む。オパールCTとは、クリストバライト構造とトリディマイト構造からなるシリカ鉱物である。オパールCとは、クリストバライト構造からなるシリカ鉱物である。このうち、本発明では、オパールCTを主とする珪質頁岩が好ましく用いられる。
さらに、Cu−Kα線による粉末X線回折において、石英の2θ=26.6degのピーク頂部の回折強度に対するオパールCTの2θ=21.5〜21.9degの回折強度は、石英を1とした場合の比率で0.2〜2.0の範囲が好ましく、0.4〜1.8の範囲がより好ましく、0.5〜1.5の範囲が特に好ましい。該値が0.2に満たない場合には、反応性に富むオパールCTの量が少ないため、シリカの収量が低下する。一方、該値が2.0を超える場合には、オパールCTの量が石英よりはるかに多くなり、このような珪質頁岩は資源的に少なく、経済性に劣る。
なお、石英に対するオパールCTの回折強度の比率は、以下の式で求める。
石英に対するオパールCTの回折強度の比率=(21.5〜21.9degのピーク頂部の回折強度)/(26.6degのピーク頂部の回折強度)
また、珪質頁岩のCu−Kα線による粉末X線回折において、オパールCTの2θ=21.5〜21.9degの間に存在するピークの半値幅は0.5°以上が好ましく、0.75°以上がより好ましく、1.0°以上がさらに好ましい。該値が0.5°未満では、オパールCTの結晶の結合力が増大し、アルカリとの反応性が低下して、シリカの収量が減少する。ここで、半値幅とは、ピーク頂部の回折強度の1/2に位置する回折線の幅をいう。
本発明で用いる珪質頁岩は、シリカ(SiO)の含有率が70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。このような珪質頁岩を用いることにより、より高純度のシリカを低コストで製造することができる。
シリカ含有鉱物は、例えば、珪質頁岩等のシリカ含有鉱物を粉砕装置(例えば、ジョークラッシャー、トップグラインダーミル、クロスビーターミル、ボールミル等)で粉砕することによって得ることができる。
[工程(A2);原料焼成工程]
工程(A2)は、シリカ含有鉱物を300〜1000℃で0.5〜2時間焼成し、有機物を除去する工程である。
なお、工程(A1)と工程(A2)の双方を実施する場合、その順序は特に限定されないが、有機物の除去効率の観点から工程(A1)を先に行うことが好ましい。
【0011】
[工程(A);アルカリ溶解工程]
工程(A)は、シリカ含有鉱物とアルカリ水溶液を混合して、pHが11.5以上のアルカリ性スラリーを調製し、液分中のSi濃度が10.0質量%以上となるように、上記シリカ含有鉱物中のSiを液分中に溶解させた後、上記アルカリ性スラリーを固液分離して、Siを含むケイ酸アルカリ水溶液と、固形分を得るアルカリ溶解工程である。
ここで、本明細書中、ケイ酸アルカリ水溶液とは、化学式中にシリカ(SiO)を含む物質を含有するアルカリ性の水溶液をいう。
シリカ含有鉱物とアルカリ水溶液を混合してなるアルカリ性スラリーのpHは、11.5以上、好ましくは12.5以上、より好ましくは13.0以上となるように調整される。該pHが11.5未満であると、シリカを十分に溶解させることができず、シリカが固形分中に残存してしまうため、得られるシリカの収量が減少する。
pHを上記数値範囲内に調整するためのアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等が用いられる。
スラリーの固液比(アルカリ水溶液1リットルに対するシリカ含有鉱物の質量)は、好ましくは100〜500g/リットル、より好ましくは200〜400g/リットルである。該固液比が100g/リットル未満では、スラリーの固液分離に要する時間が増大するなど、処理効率が低下する。該固液比が400g/リットルを超えると、シリカ等を十分に溶出させることができないことがある。
スラリーは、通常、所定時間(例えば、30〜90分間)攪拌される。
攪拌後のスラリーは、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離される。液分は、Si及び他の成分(Al、Fe等の不純物)を含むケイ酸アルカリ水溶液であり、次の工程(B1)または工程(B)で処理される。液分中に含まれるSiの濃度は、10.0質量%以上、好ましくは10.0〜20.0質量%、より好ましくは12.0〜18.0質量%、特に好ましくは13.0〜16.0質量%である。Si濃度が10.0質量%未満であると、後述する工程(B)においてシリカがゲル状で析出する場合があり、固液分離に時間がかかるとともに、得られるシリカの量が低下する。
なお、本工程においてアルカリ性スラリーを得る際の液温は、エネルギーコストの観点から、5〜100℃に保持されることが好ましく、10〜80℃に保持されることがより好ましく、10〜40℃に保持されることが特に好ましい。液温を上記範囲内とすることにより、処理効率を高めることができる。
【0012】
[工程(B1);不純物回収工程]
本工程は、工程(A)で得られたケイ酸アルカリ水溶液と酸を混合して、pHを10.3を超え、11.5未満であり、かつ液分中のSi濃度が10質量%以上のアルカリ性スラリーを調製し、液分中のSi以外の不純物(例えば、Al及びFe)を析出させた後、上記アルカリ性スラリーを固液分離し、ケイ酸アルカリ水溶液と、固形分を得る工程である。
なお、本工程で回収されずに液分中に残存する不純物は、工程(B)以降の工程で回収される。
本工程において、酸との混合後の液分のpHは、10.3を超え、11.5未満、好ましくは10.4以上、11.0以下、特に好ましくは10.5以上、10.8以下である。該pHが10.3以下であると、不純物(例えば、Al及びFe)と共にSiも析出してしまう。一方、該pHが11.5以上では、十分に析出せずに液分中に残存する不純物(例えば、Al及びFe)の量が多くなる。
また、酸と混合後の液分中に含まれるSiの濃度は、10質量%以上、好ましくは10〜20質量%、より好ましくは12〜18質量%、特に好ましくは13〜16質量%である。Siの濃度が10質量%未満であると、後述する工程(B)においてシリカがゲル状で析出する場合があり、固液分離に時間がかかるとともに、得られるシリカの量が低下する。
pHを上記数値範囲内に調整するための酸としては、硫酸、塩酸、シュウ酸等が用いられる。
pH調整後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離する。
このうち、固形分(ケーキ)は、不純物(例えば、Al及びFe)を含むものである。
液分は、Siを含むものであり、次の工程(B)で処理される。
なお、本工程においてpH調整を行う際の液温は、エネルギーコストの観点から、5
〜100℃に保持されることが好ましく、10〜80℃に保持されることがより好ましく、10〜40℃に保持されることが特に好ましい。液温を上記範囲内とすることにより、処理効率を高めることができる。
【0013】
[工程(B);シリカ回収工程]
図1は、工程(B)〜工程(E)の製造フローの一例を示す図である。また、図2は、工程(E)の実施形態の一例を示すフロー図である。以下、図面を参照にしつつ各工程を説明する。
本工程は、液分中のSi濃度が10.0質量%以上のケイ酸アルカリ水溶液と10.0体積%以上の濃度の鉱酸を混合して、液分中のSiを非ゲル状の沈降性シリカとして析出させ、沈降性シリカ含有液状物を得た後、該液状物を固液分離して、SiOを含む固形分と、不純物を含む液分を得る工程である。
なお、沈降性シリカは、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸との混合と同時に生成する。
本工程において用いられるケイ酸アルカリ水溶液は、特に限定されないが、具体的には前工程(工程(A)または工程(B1))で得られたケイ酸アルカリ水溶液、及びケイ酸ナトリウム水溶液(例えば水ガラス)等が挙げられる。
本発明で用いられるケイ酸ナトリウム水溶液としては、例えば市販の水ガラスを使用することができる。市販の水ガラスとしてはJIS規格により規定される1号、2号、3号の他に、各水ガラスメーカーで製造販売されているJIS規格外の製品も使用することができる。
ケイ酸アルカリ水溶液中に含まれるSiの濃度は、10.0質量%以上、好ましくは
10.0〜20.0質量%、より好ましくは12.0〜18.0質量%、特に好ましくは13.0〜16.0質量%である。Si濃度が10.0質量%未満であると、シリカがゲル状で析出する場合があり、固液分離に時間がかかるとともに、得られるシリカの量が低下する。
Si濃度が20質量%を超えると、ケイ酸アルカリ水溶液のハンドリング(輸送等)が悪化するとともに、不純物の除去が不十分となる場合がある。
本工程において用いられる鉱酸は、例えば硫酸、塩酸、硝酸等が挙げられ、硫酸を用いることが薬剤コスト低減の理由で好ましい。
また、後述する工程(C)で得られた不純物を含む液分と、必要に応じて混合される水または工程(D)で得られた不純物を含む液分を混合して、混合液を得た後、該混合液を工程(B)で用いられる10.0体積%以上の濃度の鉱酸として再使用してもよい。
鉱酸の濃度は、10.0体積%以上、より好ましくは10.0〜20.0体積%、特に好ましくは10.0〜15.0体積%である。鉱酸の濃度が、10.0体積%未満の場合には、沈降性シリカが生成しない、あるいは沈降性シリカとゲル状シリカの両方が生成するおそれがある。このゲル状シリカが生成すると、最終シリカ生成物中の不純物濃度が高くなる。20.0体積%を超えるとコストの面から好ましくない。
ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸の混合方法は、特に限定されるものではないが、沈降性シリカのみを生成させる観点から、ケイ酸アルカリ水溶液を鉱酸に添加する方法が好ましい。具体的には、ケイ酸アルカリ水溶液を鉱酸に滴下する方法や、ケイ酸アルカリ水溶液を、1.0mmφ以上、好ましくは4.0mmφ以上のチューブ等から、鉱酸中に直接押し出す方法等が挙げられる。
また、混合後のpHが、好ましくは1.0以下に保たれるように混合する。pHが1.0を超えるとシリカがゲル状で析出する場合があり、固液分離に時間がかかるとともに、得られるシリカの量が低下する。pHが低すぎる場合、使用後に鉱酸を廃棄するために行われる中和処理のコストが増大することから、pHは1.0〜0.9がより好ましい。
また、ケイ酸アルカリ水溶液の鉱酸中への流出速度は限定されないが、混合する際にpHが1.0を超え、かつ流出速度が大きい場合には、沈降性シリカが生成しない、あるいは沈降性シリカとゲル状シリカの両方が生成するおそれがある。
本工程において、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を混合する際の沈降性シリカの析出温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは10〜80℃、より好ましくは15〜40℃、特に好ましくは20〜30℃であり、通常、常温(例えば10〜40℃)である。80℃を超えると、エネルギーコストが上昇するとともに、設備の腐食が生じ易くなる。
上記ケイ酸アルカリ水溶液中のSiを沈降性シリカとして析出させた後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、SiOを含む固形分と、不純物を含む液分に分離する。得られた沈降性シリカはゲル状ではなく、粒子状であるため、固液分離に要する時間を短くすることができる。
【0014】
工程(B)で得られた不純物を含む液分を、工程(B)で用いられる10.0体積%以上の濃度の鉱酸として再使用してもよい。再使用は複数回行ってもよいが、鉱酸のpHが1.0を超えないことが好ましい。鉱酸のpHが1.0を超えるとシリカがゲル状で析出する場合があり、固液分離に時間がかかるとともに、得られるシリカの量が低下する。
工程(B)で得られた不純物を含む液分は、最終的に中和処理されてから廃棄される。中和処理は水酸化ナトリウム、及び水酸化カルシウム等を混合することによって行われる。
例えば、図1の製造フローにおいては、工程(B)(シリカ回収工程)を行うためのタンク(1〜3)を3つ用意し、まず、タンク1でケイ酸アルカリ混合液と硫酸の混合をし、工程(B)が行われた結果、得られた不純物を含む硫酸はタンク1からタンク2に運ばれて、次のバッチの工程(B)で用いられる10.0体積%以上の濃度の鉱酸として、タンク2において再び使用される。次いで、タンク2で工程(B)が行われた結果、得られた不純物を含む硫酸はタンク2からタンク3に運ばれて、次のバッチの工程(B)で用いられる10.0体積%以上の濃度の鉱酸として再び使用される。硫酸は上述したように3回使用された後、最終的にはNaOH、CaO、又はCa(OH)等と混合することで中和処理され、硫酸塩として廃棄される。
工程(B)で得られた不純物を含む液分を、工程(B)で用いられる鉱酸として再使用することで、鉱酸の使用量を低減できるとともに、中和処理の際に用いられる中和剤の量を低減することができる。
また、工程(B)において用いられる鉱酸が硫酸である場合、工程(B)で得られた不純物を含む液分を水酸化カルシウムで中和処理し、液分中の不純物を石膏として析出してセメントの原料として再使用してもよい。
【0015】
[工程(C);酸洗浄工程]
工程(B)で得られたSiOを含む固形分は、Al、Fe、Ti、B、P、C等の不純物が低減された高純度シリカである。
工程(B)で得られたSiOを含む固形分に対して、工程(C)(酸洗浄工程)を行うことにより、より高純度のシリカを得ることができる。
工程(C)は、工程(B)で得られたSiOを含む固形分と鉱酸を混合して、pHが3.0未満の酸性スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物(例えば、Al、Fe)を溶解させた後、上記酸性スラリーを固液分離して、SiOを含む固形分と、不純物(例えば、Al、Fe)を含む液分を得る工程である。
鉱酸の濃度は、好ましくは10.0体積%以上、より好ましくは15.0〜30.0体積%、特に好ましくは20.0〜30.0体積%である。
また、鉱酸の濃度は工程(B)に用いられる鉱酸の濃度よりも高いことが好ましい。鉱酸の濃度を工程(B)で用いられる鉱酸よりも高くすることで、工程(B)を行った結果、固形分にわずかに残存する不純物を効果的に溶解することができる。また、工程(C)で得られた不純物を含む液分と後述する工程(D)で得られた液分を混合して希釈し、工程(B)に用いられる鉱酸にすることで、硫酸の使用量並びに水の使用量をさらに低減できる。
本工程における酸性スラリーのpHは、3.0未満、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.0以下である。酸性スラリーのpHを上記範囲内に調整して酸洗浄を行うことにより、工程(B)で得られた固形分にわずかに残存するアルミニウム分、鉄分等の不純物を溶解して液分中へ移行させることができ、固形分中のシリカ含有率を上昇させることができるため、さらに高純度のシリカを得ることができる。
pHを上記数値範囲内に調整するための鉱酸としては、硫酸、塩酸、硝酸等が用いられる。
また、後述する工程(D)で得られた不純物を含む液分と市販の鉱酸の混合液を、工程(C)で用いられる鉱酸として再使用してもよい。
pH調整後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離する。
なお、本工程においてpH調整を行う際の液温は、特に限定されるものではないが、エネルギーコストの観点から、好ましくは10〜80℃、より好ましくは15〜40℃、特に好ましくは20℃〜30℃であり、通常、常温(例えば10〜40℃)である。液温を上記範囲内とすることにより、処理効率を高めることができる。
また、工程(B)で得られたSiOを含む固形分と鉱酸を混合して、不純物を溶解させる時間(浸漬時間)は、鉱酸の濃度等によって異なるが、好ましくは6時間以上である。
【0016】
工程(C)で得られた不純物を含む液分を、工程(C)で用いられる鉱酸として再使用してもよい。再使用は複数回行ってもよく、鉱酸の使用回数は特に限定されない。
鉱酸を複数回再使用することで、鉱酸の使用量を減らすことができる。
また、工程(C)で得られた不純物を含む液分は、工程(B)で用いられる鉱酸として使用することができる。工程(B)で用いられる鉱酸として使用することで、鉱酸の使用量を低減できる。さらに、前述したように、工程(C)で得られた不純物を含む液分を工程(C)で用いられる鉱酸として複数回再使用した後に、工程(B)で用いられる鉱酸として使用すれば、鉱酸の使用量をさらに低減できる。
工程(C)で得られた不純物を含む液分は、そのまま工程(B)で用いてもよいが、工程(C)で用いられる鉱酸の濃度が工程(B)で用いられる鉱酸の濃度よりも高い場合は、必要に応じて水または後述する工程(D)で得られた不純物を含む液分と混合して、混合液を得た後、該混合液を工程(B)で用いられる鉱酸として使用してもよい。
特に工程(D)で得られた不純物を含む液分と混合することで、水の使用量及び廃液の量を低減できる。
例えば、図1の製造フローにおいては、工程(C)(酸洗浄工程)を行うために25体積%の硫酸180Lを収容したタンク(4〜6)が3つ用意され、それぞれのタンクにおいて、工程(B)で得られたSiOを含む固形分と硫酸が混合されて、工程(C)が行われる。その結果、得られた不純物を含む硫酸のうち、二つのタンク(例えばタンク5及び6)内の不純物を含む硫酸は、そのままタンクに残されて、次のバッチの工程(C)の鉱酸として再び使用される。残りのタンク(例えばタンク4)内の不純物を含む硫酸は、後述する水洗浄工程で再使用された水道水180Lと混合されて、12.5体積%の硫酸となり、この硫酸は工程(B)の12.5体積%の硫酸として使用される。なお、本例ではタンク中の硫酸は使用回数が3回を超える前に水道水と混合される。
【0017】
[工程(D);水道水洗浄工程]
本工程は、工程(C)で得られたSiOを含む固形分と水道水を混合して、水道水スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物を溶解させた後、上記水道水スラリーを固液分離して、SiOを含む固形分と、不純物を含む液分を得る工程である。
水道水で洗浄を行うことにより、前工程で得られたSiOを含む固形分にわずかに残存するナトリウム、硫黄等の不純物を溶解して液分中へ移行させることができ、固形分中のシリカ含有率を上昇させることができるため、さらに高純度のシリカを得ることができる。
水道水洗浄後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離する。
本工程において、SiOを含む固形分と水道水を混合は、混合後のpHが、好ましくは3.0以下、より好ましくは1.5〜0.9に保たれるように混合する。pHが3.0を超えると使用する水道水中の微量の不純物が固形分に混入する場合がある。
本工程において、水洗浄に用いられる水を、イオン交換水の代わりに水道水を用いることで、コストを下げることができる。
【0018】
工程(D)で得られた不純物を含む液分は、工程(D)で用いられる水道水として再使用してもよい。再使用は複数回行ってもよく、水道水の使用回数は、混合の際のpHが1.0以下とならない範囲で行う。
また、工程(D)で得られた不純物を含む液分を、工程(A1)、工程(A)、工程(B)、工程(C)に用いられる水として再使用してもよい。具体的には、前述した工程(C)で得られた不純物を含む液分と工程(D)で得られた不純物を含む液分を混合して、混合液を得た後、該混合液を工程(B)で用いられる鉱酸として使用する再使用方法や、市販の鉱酸と混合して濃度を調節し、工程(C)で用いられる鉱酸として使用する再使用方法等が挙げられる。工程(D)で得られた不純物を含む液分を再使用することで水の使用量および排水量を低減できる。
【0019】
また、水道水洗浄工程は複数回行ってもよい。水道水洗浄工程を複数回行うことで、後述するイオン交換水の使用量をさらに減らすことができる。水道水洗浄工程を複数回行う場合、混合の際のpHが1.0以下とならない範囲で行う。
例えば、工程(D)で得られたSiOを含む固形分と、水道水を混合して、スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物を溶解させた後、上記スラリーを固液分離して、SiOを含む固形分と、不純物を含む液分を得る第二の水道水洗浄工程を工程(D)と工程(E)の間に含むことができる。
図1の製造フローは、水道水洗浄工程が2回行われることを表している。まず、第一の水道水洗浄工程を行うためのタンク(7〜9)は3つ用意され、まず、タンク7において、工程(C)で得られたSiOを含む固形分と水道水を混合し、水道水洗浄工程が行われた結果、得られた不純物を含む液分はタンク7からタンク8に運ばれて、次のバッチの水道水洗浄工程で用いられる水道水として、タンク8において再び使用される。次いで、タンク8で水道水洗浄工程が行われた結果、得られた不純物を含む液分はタンク8からタンク9に運ばれて、次のバッチの水道水洗浄工程で用いられる水道水として再び使用される。水道水は3度使用された後、最終的に上述した工程(C)で使用された25体積%の硫酸180Lと混合されて、12.5体積%の硫酸に調製されて、工程(B)で用いられる12.5体積%の硫酸として再使用される。
第二の水道水洗浄工程は前記水道水洗浄工程と同様に3つのタンク(10〜12)を用いて行われる。工程(D)で得られたSiOを含む固形分は、前記第一の水道水洗浄工程と同様に水道水と混合される。最終的に得られた不純物を含む液分135Lは、濃硫酸45Lと混合されて25体積%の硫酸180Lとなり、工程(C)の25体積%の硫酸として再使用される。
【0020】
[工程(E);イオン交換水洗浄工程]
本工程は、工程(D)で得られたSiOを含む固形分とイオン交換水を混合して、スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物を溶解させた後、上記スラリーを固液分離して、SiOを含む固形分と、不純物を含む液分を得る工程である。
イオン交換水で洗浄を行うことにより、前工程で得られた固形分にわずかに残存するナトリウム、硫黄等の不純物を溶解して液分中へ移行させることができ、固形分中のシリカ含有率を上昇させることができるため、さらに高純度のシリカを得ることができる。
イオン交換水による洗浄後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離する。
また、イオン交換水洗浄工程は複数回行ってもよい。イオン交換水洗浄工程を複数回行うことで、さらに高純度のシリカを得ることができる。イオン交換水洗浄工程を複数回行う場合、回数はSiOを含む固形分とイオン交換水の量比にもよるが好ましくは6回である。
【0021】
工程(E)で得られた不純物を含む液分は、工程(E)で用いられるイオン交換水として再使用してもよい。再使用は複数回行ってもよい。再使用の回数は、SiOを含む固形分とイオン交換水の量比にもよるが好ましくは2〜6回である。6回を超えると洗浄回数が増え、処理時間の点から好ましくない。
例えば、図2の製造フローは、工程(E)(イオン交換水洗浄工程)を行うためのタンク(13〜15)を3つ用意し、イオン交換水洗浄工程を6回行うことを表している。1回目のイオン交換水洗浄工程で得られた、不純物を含む液分は、廃イオン交換水として排水される。2回目〜6回目のイオン交換水洗浄工程で得られた不純物を含む液分は、それぞれ次のロットの1回目〜5回目のイオン交換水のイオン交換水洗浄工程で用いられるイオン交換水として再使用され、その結果、イオン交換水は循環利用されるとともに、使用回数が6回を超える前に排水される。
【0022】
[他の追加し得る工程]
(a)過酸化水素との混合
工程(B)および(C)の少なくともいずれか一方において、適宜、過酸化水素を混合することで、不純物(特にTi)が低減された高純度シリカを得ることができる。
混合方法は特に限定されるものではなく、工程(B)において過酸化水素を混合する方法として、(1)ケイ酸アルカリ水溶液と過酸化水素を混合し、次いで得られた混合物と鉱酸を混合する方法、(2)鉱酸と過酸化水素を混合し、次いで得られた混合物とケイ酸アルカリ水溶液を混合する方法、(3)ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を混合し、次いで得られた混合物と過酸化水素を混合する方法、(4)ケイ酸アルカリ水溶液と、鉱酸と、過酸化水素を同時に混合する方法が挙げられる。また、工程(C)において過酸化水素を混合する方法として、(5)SiOを含む固形分と過酸化水素を混合し、次いで得られた混合物と鉱酸を混合する方法、(6)鉱酸と過酸化水素を混合し、次いで得られた混合物とSiOを含む固形分を混合する方法、(7)SiOを含む固形分と鉱酸を混合し、次いで得られた混合物と過酸化水素を混合する方法、(8)SiOを含む固形分と、鉱酸と、過酸化水素を同時に混合する方法が挙げられる。中でも、工程の上流側で不純物(特にTi)の低減を図るという観点から(1)及び(5)が好ましい。
過酸化水素の添加量は、シリカ(SiO)の質量(100質量%)に対して、好ましくは0.1〜15.0質量%、より好ましくは0.1〜10.0質量%、特に好ましくは0.1〜5.0質量%である。過酸化水素の添加量が0.1質量%未満では不純物(例えばTi)の低減効果が十分ではなく、15.0質量%を超えると、不純物(例えばTi)低減効果が飽和状態となる。
【0023】
(b)イオン交換処理及び/又は活性炭処理
さらに、工程(A)と工程(B)の間で、適宜、イオン交換処理及び/又は活性炭処理を行うことができる。
イオン交換処理及び/又は活性炭処理で回収される不純物は、ホウ素(B)、リン(P)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ナトリウム(Na)、チタン(Ti)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、及び有機物(C)からなる群より選ばれる一種以上である。
イオン交換処理は、キレート樹脂、イオン交換樹脂等のイオン交換媒体を用いて行なうことができる。
イオン交換媒体の種類は、除去対象元素に対する選択性を考慮して、適宜定めればよい。例えば、ホウ素を除去する場合、グルカミン基を有するキレート樹脂や、N−メチルグルカミン基を有するイオン交換樹脂等を用いることができる。
イオン交換媒体の形態は、特に限定されるものではなく、ビーズ状、繊維状、クロス状等が挙げられる。イオン交換媒体への液分の通液方法もなんら限定されるものではなく、例えばカラムにキレート樹脂またはイオン交換樹脂を充填して連続的に通液する方法などを用いることができる。
イオン交換処理及び/又は活性炭処理を行う際の液温は、各処理に用いる材料の耐用温度以下であれば、特に限定されない。
【0024】
(c)乾燥処理及び/又は焼成処理
本発明の製造方法によって最終的に得られたシリカを含む固形分は、適宜、乾燥処理及び/又は焼成処理を行うことができる。乾燥処理及び/又は焼成処理の条件は、例えば、100〜1000℃で1〜5時間である。
また、最終的に得られたシリカを含む固形分をアルカリ溶液(例えば水酸化ナトリウム)に溶解させ、工程(B)のケイ酸アルカリ水溶液として用い、工程(B)から工程(E)を複数回繰り返すことによって、より高純度のシリカを得ることができる。
【0025】
本発明の製造方法で得られるシリカは、シリカの含有率が高く、またアルミニウム(Al)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、ホウ素(B)、リン(P)等の不純物の含有量が低いものである。
本発明の製造方法で得られる高純度シリカ中のSiOの含有率は、好ましくは99.99質量%以上である。また、高純度シリカ中のNa、S、Al、Fe、Ca、B、P、Tiの含有率は、各々、好ましくは5.0ppm以下、5.0ppm以下、1.0ppm以下、1.0ppm以下、1.0ppm以下、0.1ppm以下、1.0ppm以下、1.0ppm以下である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(B)液分中のSi濃度が10.0質量%以上のケイ酸アルカリ水溶液と10.0体積%以上の濃度の鉱酸を混合して、液分中のSiを非ゲル状の沈降性シリカとして析出させ、沈降性シリカ含有液状物を得た後、該液状物を固液分離して、SiOを含む固形分と、不純物を含む液分を得るシリカ回収工程と、
(C)工程(B)で得られたSiOを含む固形分と鉱酸を混合して、pHが3.0未満の酸性スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物を溶解させた後、上記酸性スラリーを固液分離して、SiOを含む固形分と、不純物を含む液分を得る酸洗浄工程と、
(D)工程(C)で得られたSiOを含む固形分と水道水を混合して、水道水スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物を溶解させた後、上記水道水スラリーを固液分離して、SiOを含む固形分と、不純物を含む液分を得る水道水洗浄工程と、
(E)前工程で得られたSiOを含む固形分とイオン交換水を混合して、イオン交換水スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物を溶解させた後、上記イオン交換水スラリーを固液分離して、SiOを含む固形分と、不純物を含む液分を得るイオン交換水洗浄工程と、
を含む高純度シリカの製造方法。
【請求項2】
工程(C)で得られた不純物を含む液分と工程(D)で得られた不純物を含む液分を混合して、混合液を得た後、該混合液を工程(B)の上記鉱酸として再使用する請求項1に記載の高純度シリカの製造方法。
【請求項3】
前記工程(D)と工程(E)の間に、工程(D)で得られたSiOを含む固形分と水道水を混合して、スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物を溶解させた後、上記スラリーを固液分離して、SiOを含む固形分と、不純物を含む液分を得る第二の水道水洗浄工程を含み、第二の水道水洗浄工程で得られた不純物を含む液分と鉱酸を混合して、鉱酸溶液を得た後、該鉱酸溶液を工程(C)の上記鉱酸として再使用する請求項1または2に記載の高純度シリカの製造方法。
【請求項4】
工程(E)で得られた不純物を含む液分を工程(E)の上記イオン交換水として再使用する請求項1〜3のいずれか1項に記載の高純度シリカの製造方法。
【請求項5】
工程(B)において、前記ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を、混合後のpHが1.0以下に保たれるように混合する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の高純度シリカの製造方法。
【請求項6】
工程(B)において、前記ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸の混合が、ケイ酸アルカリ水溶液を鉱酸に添加することによって行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の高純度シリカの製造方法。
【請求項7】
工程(B)の前に、(A)シリカ含有鉱物とアルカリ水溶液を混合して、pHが11.5以上のアルカリ性スラリーを調製し、液分中のSi濃度が10.0質量%以上となるように、上記シリカ含有鉱物中のSiを液分中に溶解させた後、上記アルカリ性スラリーを固液分離して、ケイ酸アルカリ水溶液と、固形分を得るアルカリ溶解工程、を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の高純度シリカの製造方法。
【請求項8】
工程(A)と工程(B)の間に、(B1)工程(A)で得られたケイ酸アルカリ水溶液と酸を混合して、pHを10.3を超え、11.5未満であり、かつ液分中のSi濃度が10質量%以上のアルカリ性スラリーを調製し、液分中の不純物を析出させた後、上記アルカリ性スラリーを固液分離し、ケイ酸アルカリ水溶液と、固形分を得る不純物回収工程、を含む、請求項7に記載の高純度シリカの製造方法。
【請求項9】
工程(A)の前に、(A1)シリカ含有鉱物を水洗して、粘土分及び有機物を除去する原料水洗工程、を含む請求項7または8に記載の高純度シリカの製造方法。
【請求項10】
工程(A)の前に、(A2)シリカ含有鉱物粉末を300〜1000℃で0.5〜2時間焼成して、有機物を除去する原料焼成工程、を含む請求項7〜9のいずれか1項に記載の高純度シリカの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−28479(P2013−28479A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164738(P2011−164738)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】