説明

高純度メタリン酸アルミニウムの製造方法

【課題】メタリン酸アルミニウムを高純度で製造することを目的とし、製造効率が高く、焼成時の固結が防止された製造方法を提供する。
【解決手段】
リン酸源とアルミニウム化合物とを反応又は混合させる第一工程、
第一工程で得られた生成物を210〜370℃で焼成する第二工程、
第二工程で得られた生成物を吸湿又は吸水させる第三工程、
第三工程で得られた生成物単独で、又はこれに更に第一工程で得られた生成物を混合し、400℃以上で焼成する第四工程
からなることを特徴とする、高純度メタリン酸アルミニウムの粉砕工程を必要としない製造方法。
これにより、製造効率が高く、焼成時の固結が防止され、高純度品が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学材料の原料として有用な高純度メタリン酸アルミニウムの、粉砕工程を必要としない製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、増幅用ファイバや光学レンズ等にリン酸塩が使用され、用途によって異なるがリン酸塩の中ではメタリン酸アルミニウムが最も多く使用されている。一般に、光学ガラス用途には高純度の原料が必要であり、中でも、鉄、クロム、ニッケル、マンガン、亜鉛、銅等の遷移金属は、ガラスの着色原因となる。そのため、光学ガラス用メタリン酸アルミニウムにおいても高純度化が要求されており、とりわけこれら金属の不純物濃度は5ppm以下まで低減することが要望されている。また、ハンドリングの悪さやガラスの屈折率の変動等の問題を防止するため、強熱減量および遊離リン酸は2重量%以下が要望されている。
【0003】
本発明において、示性式Al(PO3)3で表されるものを総称してメタリン酸アルミニウムとし、環状構造のA型、鎖状構造のB、C、D、E型を含む。
【0004】
メタリン酸アルミニウムは、リン酸源とアルミニウム化合物、あるいはリン酸アルミニウム化合物を焼成することにより製造されるが、固結した状態で生成するために作業性が悪く、更には粉砕などの工程が必要となり、不純物混入の原因となっている。
この固結を防止する方法がいくつか提案されている。非特許文献1には、第一リン酸アルミニウムの反応液をスプレードライヤーを用いて700〜750℃で加熱しているが、スプレーノズルに由来する不純物混入が避けられない。特許文献1には、原料粉末にメタリン酸アルミニウムを混合して焼成する方法が記載されている。しかし、混合するメタリン酸アルミニウムの添加量は焼成する物質全体量の50〜70%であり、一度の反応で新しく生成するメタリン酸アルミニウムの量は少なく、反応効率が低い。また、混合するメタリン酸アルミニウムを製造する際には、最初の1回はどうしても固結が生じてしまい、焼成容器や粉砕に起因する不純物の混入は避けられない。特許文献1と同様、固結防止する方法として、特許文献2には、リン酸とアルミニウム化合物を反応させて粘性液体を得、焼成容器にメタリン酸アルミニウム粉末を敷いた状態で第一工程の粘性液体を加えて焼成する方法が記載されている。敷き詰めるメタリン酸アルミニウムの量は、焼成する物質全体の40〜60%と、この方法も効率が悪い。更に、実施例にも明記されているように、生成するメタリン酸アルミニウムは塊の形状であり、固結が完全に防止される方法ではなく、スケールが大きくなるにつれ固結の程度は増大する。したがって、この方法においては粉砕が不可欠であり、粉砕機の材質に起因する不純物の混入が避けられない。
非特許文献2には、メタリン酸アルミニウムを摩砕すると、摩砕時間とともに溶解率が急激に増加することが示されている。このように粉砕は、不純物混入や遊離リン酸増大を招く工程である。したがって、粉砕工程は、光学ガラス用メタリン酸アルミニウムの製造方法としては極力避けるべき工程であり、粉砕を行なう場合には、できるだけ負荷がかからないような粉砕しやすい形状の生成物であることが好ましい。
【特許文献1】特許第3865604号公報
【特許文献2】特許第3802916号公報
【非特許文献1】Kuz’menkov,M.I. 他3名,「メタリン酸アルミニウムの製造」,1982年,Khimicheskaya Promyshlennost,10号,p.595-597
【非特許文献2】西宮辰明,「メタリン酸アルミニウムのメカノケミストリー」,1975年,東京工業専門学校研究報告書,7号p.79-84
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、メタリン酸アルミニウムが、固結しない状態で、かつ高純度で得られる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意研究した結果、メタリン酸アルミニウムの製造に関して、210〜370℃付近で焼成した後吸湿又は吸水させその後400℃以上で焼成することにより、固結が防止できることを発見し、本発明を完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
リン酸源とアルミニウム化合物とを反応又は混合させる第一工程、
第一工程で得られた生成物を210〜370℃で焼成する第二工程、
第二工程で得られた生成物を吸湿又は吸水させる第三工程、
第三工程で得られた生成物単独で、又はこれに更に第一工程で得られた生成物を混合し、400℃以上で焼成する第四工程からなることを特徴とする、
粉砕工程を必要としない高純度メタリン酸アルミニウムの製造方法(請求項1)であり、更に、
第一工程のリン酸源とアルミニウム化合物のP/Alモル比が2.9〜3.1であること(請求項2)、
第二工程の焼成温度が275〜350℃であること(請求項3)、
第一工程のリン酸源がリン酸であって、反応が120〜130℃で発泡が始まるまで加熱して粘性液体の状態で止めること(請求項4)、
第三工程の吸湿又は吸水が、加圧水蒸気下で行われること(請求項5)、
第三工程の吸湿又は吸水が、水浸漬で行われること(請求項6)、
第四工程における焼成温度が500〜800℃であること(請求項7)、
第二工程及び第四工程で用いる焼成容器が、金属アルミニウム又はアルミナからなること(請求項8)、
第四工程の生成物を水洗浄後乾燥して遊離リン酸を除去すること(請求項9)、
といった特徴を付加した高純度メタリン酸アルミニウムの製造方法であり、更には、
不純物の各有色金属元素が、鉄、クロム、ニッケル、マンガン、亜鉛、又は銅の少なくとも1種であり(請求項11)、5ppm以下であること(請求項10)、
遊離リン酸含有量が2重量%以下であること(請求項12)
強熱減量が2重量%以下であること(請求項13)
を特徴とする粉砕工程を必要としない高純度メタリン酸アルミニウムの製造方法である。
【0008】
本発明において、焼成により生成するメタリン酸アルミニウムは固結しておらず、あるいは容易にほぐせ100μm以下の状態で得られることを、「粉砕工程を必要としない」と表現する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、 高純度メタリン酸アルミニウムの固結しない製造方法が提供される。また、これにより粉砕工程が省け、粉砕による不純物の混入がなく、高純度のメタリン酸アルミニウムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。以下の説明において特に断らない限り、「%」および「ppm」はそれぞれ重量基準である。
【0011】
第一工程で使用するリン酸源としては、リン酸、無水リン酸、ポリリン酸、リン酸二水素アンモニウム等が用いられる。特に、リン酸は電子材料用等の高純度品が市販されており、高純度メタリン酸アルミニウムを製造する場合は、作業性、入手性、純度の点で好ましい。アルミニウム化合物としては、例えば、水酸化アルミニウム、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ等が用いられる。特に、水酸化アルミニウムは高純度品が容易に入手できる点で好ましい。
【0012】
リン酸源としてリン酸を用いる場合は、アルミニウム化合物と室温または加熱下で反応させることができる。反応温度は、150℃以下、好ましくは100〜130℃であり、乾固してもよいが、反応容器からの不純物混入や取扱い性、後工程の反応性の点で、特に120〜130℃で発泡し始めたら加熱をやめ粘性液体の状態で取り出すことが好ましい。
リン酸源として無水リン酸やポリリン酸を用いる場合は、単に混合するだけでもよいが、組成の均一性、操作性が向上するよう、適宜水分を添加して混合することができる。
リン酸源として、リン酸二水素アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、ピロリン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム等のリン酸塩粉末を用いる場合は、リン酸塩とアルミニウム化合物を単に混合するだけでよい。
【0013】
リン酸と水酸化アルミニウムを原料とする場合、メタリン酸アルミニウムの生成反応の概略は次の式で表され、メタリン酸アルミニウムのP/Alモル比は化学量論的には3である。
Al(OH)3+3H3PO4→Al(H2PO4)3+3H2O (式1)
Al(H2PO4)3→Al(PO3)3+3H2O (式2)
本発明において、原料全体のP/Alモル比は、2.7〜3.3が好ましく、より好ましくは2.9〜3.1である。モル比がこの範囲内であれば、未反応物やメタリン酸アルミニウム以外の生成物を少なくすることができる。
【0014】
第二工程の焼成温度は210〜370℃、より好ましくは275〜350℃で行う。原料のP/Alモル比、被焼成物の水分量によって第二工程の生成物の性状が変動するため、焼成温度をこの範囲内で適宜調整することができる。第二工程の焼成時間は、被焼成物の量、焼成温度、被焼成物の水分量などによって異なるが、通常1時間以上必要である。
【0015】
第三工程の吸湿又は吸水の方法としては、室温放置して空気中の水分を吸収させる方法、水蒸気を吹きつける方法、高温加湿下で処理する方法、水に浸漬する方法等があるが、特に限定はされない。P/Alモル比の維持、吸湿効率の点で、加圧水蒸気下で行うことが好ましい。また、遊離リン酸を低減する点では、水浸漬で行うことが好ましい。水浸漬の場合は、その後ろ過すると可溶性成分が除去されて最終生成物のP/Al比が崩れるので、可溶性のオルソ塩や未反応物が残らないように、焼成温度や焼成時間を調整して第二工程を行うことが好ましい。
第四工程は、「第三工程で得られた生成物単独」、あるいは、「第一工程で得られた生成物と第三工程で得られた生成物の混合物」を400℃以上で焼成するものであり、どちらを選択してもよい。第四工程の被焼成物が「第三工程で得られた生成物単独」である場合は、第一工程から第四工程までを有した二段焼成法とみなせる。また、第四工程の被焼成物が「第一工程で得られた生成物と第三工程で得られた生成物の混合物」となる例としては、第一工程の生成物を主原料とし、予め作っておいた第三工程の生成物を、固結防止のために混在させるというものである。
【0016】
第四工程の焼成温度は、400℃以上、好ましくは500〜800℃、更に好ましくは550〜700℃である。被焼成物の量、組成、水分量などによって最適焼成温度を決める。最適焼成時間は、被焼成物の量、組成、水分量などによって異なるが、2時間以上が好ましい。焼成温度が低すぎる、あるいは、被焼成物量が多すぎると、脱水が完了しないことに起因して、遊離リン酸が増える傾向にある。また、焼成温度の上限に特に制限はなく、焼成容器の融点等に依存する。焼成容器が金属アルミニウムからなる場合、焼成温度の上限は約650℃である。
【0017】
第二工程および第四工程で用いる焼成容器は特に限定されないが、高純度化、特に有色金属を混入させないために、金属アルミニウムまたはアルミナからなる容器が好ましい。
第四工程の生成物を水洗浄後乾燥して遊離リン酸を除去する工程を更に行ってもよい。これにより、過剰のリン酸分が除去されて高純度化し、また、残存リン酸による表面吸湿やダマの発生が防止できる。
【0018】
原料、設備の材質、および各工程の条件を適宜選択する事により、例えば、鉄、クロム、ニッケル、マンガン、亜鉛、又は銅等の各有色金属元素濃度が5ppm以下、遊離リン酸含有量が2重量%以下、強熱減量が2重量%以下等の高純度メタリン酸アルミニウムを製造することができる。
以上述べた本発明の方法により、メタリン酸アルミニウムが固結せず、あるいは容易にほぐせ、粉砕工程を必要とせずに、高純度で製造することができる。
メタリン酸の他の金属塩の製造においても従来法では固結し易いが、原料のアルミニウム化合物を所望する金属化合物に代えて本発明の方法を適用すれば、メタリン酸の他の金属塩を、粉砕工程を必要とせずに、高純度で製造できる。
【実施例】
【0019】
次に、本発明の実施例について、比較例と対比して具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
高純度水酸化アルミニウム(住友化学(株)製、品名CHP-340S)31.2gと高純度リン酸(燐化学工業(株)製、品名 85%リン酸ELグレード)138.4gをビーカー中で混合した。原料のP/Alモル比は3.0であった。ビーカーを約150℃のホットプレート上に置き、120〜130℃で発泡するまで加熱すると、粘性のある液体が得られた(第一工程)。この粘性液体をアルミナるつぼに入れ、電気炉を使用し、300℃で2時間焼成した(第二工程)。白い膨張した硬い塊が生成し、これを105℃、湿度100%に設定した加圧装置に入れ、20分間放置した(第三工程)。生成物は剥片状に砕け、るつぼから剥がれた。生成物を再びアルミナるつぼに入れ、550℃で4時間焼成した(第四工程)。得られた生成物のX線回折を行うと、A型のメタリン酸アルミニウムが100%であった。
【0020】
<実施例2>
実施例1の第一工程と同様に調製した粘性液体をアルミナるつぼに流し込み、電気炉を使用し、300℃で3時間焼成した。焼成後、るつぼごと純水400mlが入ったビーカーに浸したところ、平均粒径4.8μmの微細粒子の生成物が得られた。水によく分散させた後、ろ紙(5C)を用いて吸引ろ過し、45℃の乾燥機に入れ、時折プラスチックススプーンでほぐしながら3時間乾燥した。乾燥物を再びアルミナるつぼに入れ、500℃で4時間焼成した。凝集物が混在するが手で触ると崩れ、粒度の細かいメタリン酸アルミニウムを得た。この平均粒径は5.1μmであった。
【0021】
<実施例3>
高純度水酸化アルミニウム(住友化学(株)製、品名CHP-340S)7.8gとリン酸(燐化学工業(株)製、品名 食添用85%リン酸)34.6gをビーカー中で混合した。原料のP/Alモル比は3.0であった。ビーカーをホットプレートにて加熱、乾固し、37.0gの固体を得た(第一工程)。この半分量をアルミナるつぼに入れ、電気炉を使用し、240℃で2時間焼成した(第二工程)。第二工程の生成物を室温、空気中で2日間放置した(第三工程)。第一工程の生成物と第三工程の生成物を同量混合し、アルミナるつぼに入れ、電気炉を使用し、450℃で2時間焼成した。生成物に粒子接着や容器への付着が殆ど見られず、X線回折によりメタリン酸アルミニウムであることを確認した。
【0022】
<実施例4>
高純度水酸化アルミニウム(住友化学(株)製、品名CHP-340S)140.4gと高純度リン酸(燐化学工業(株)製、品名 85%リン酸ELグレード)622.8gを2lビーカーに入れ、混合した。原料のP/Alモル比は3.0であった。ビーカーを約150℃のホットプレート上に置き、120〜130℃で発泡するまで加熱すると、粘性のある液体が得られた。この粘性液体をアルミナるつぼに入れ、電気炉を使用し、350℃で2時間焼成した。これを105℃、湿度100%に設定した加圧装置に入れ、20分間放置した。プラスチックススプーンで生成物に触れると容易に崩れ、るつぼから全て剥がすことができた。生成物を再びアルミナるつぼに入れ、550℃で4時間焼成し、放冷した後水洗、乾燥し、メタリン酸アルミニウムを得た。X線回折を行うと、A型のメタリン酸アルミニウムの割合が70%であり、残りは型の異なるメタリン酸アルミニウムであった。
【0023】
<実施例5>
リン酸二水素アンモニウム(純正化学(株)製、特級)34.5gと高純度水酸化アルミニウム(住友化学(株)製、品名CHP-340S)7.8gをメノー乳鉢で充分混合した。原料のP/Alモル比は3.0であった。この混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉を使用し、300℃で2時間焼成した。これを105℃、湿度100%に設定した加圧装置に入れ、10分間放置した。プラスチックススプーンで生成物に触れると容易に崩れ、るつぼから全て剥がすことができた。その後600℃で3時間焼成し、放冷した後水洗、乾燥し、メタリン酸アルミニウムを得た。
【0024】
<比較例1>
高純度水酸化アルミニウム(住友化学(株)製、品名CHP-340S)15.6gと高純度リン酸(燐化学工業(株)製、品名 85%リン酸ELグレード)69.2gをビーカー中で混合した。原料のP/Alモル比は3.0であった。ビーカーをホットプレートにて加熱、乾固し、73.6gの固体を得た。この固体をアルミナるつぼに入れ、電気炉を使用し、550℃で4時間焼成した。生成物は、るつぼに固着した硬い塊状であり、ステンレススプーンで掻き出したが、すべてを取り出すことはできなかった。これをメノウ乳鉢で粉砕しメタリン酸アルミニウムを得た。
【0025】
<比較例2>
実施例1の第一工程と同様に粘性液体を調製した。試薬(Aldlich Chemical Company製)のメタリン酸アルミニウムを底と壁面に敷き詰めたアルミナるつぼに粘性液体を入れ、電気炉を使用し、550℃で4時間焼成し、放冷した。生成したメタリン酸アルミニウムはるつぼに固着していなかったが、中央部分は硬い塊となったので、アルミナ乳鉢にて粉砕した。
【0026】
<比較例3>
高純度水酸化アルミニウム(住友化学(株)製、品名CHP-340S)7.8gとリン酸(燐化学工業(株)製、品名 食添用85%リン酸)34.6gをビーカー中で混合した。原料のP/Alモル比は3.0であった。ビーカーをホットプレート上にて加熱、乾固し、37.0gの固体を得た(第一工程)。この固体をアルミナるつぼに入れ、電気炉を使用し、500℃2時間焼成した。生成物はるつぼに固着した塊状物であり、ステンレススプーンで掻き出したが、すべて取り出すことはできなかった。これをメノウ乳鉢で粉砕しメタリン酸アルミニウムを得た。同様に第一工程を行い、その生成物と先に作った粉砕メタリン酸アルミニウムを同量混合し、アルミナるつぼに入れ、電気炉を使用し、500℃2時間焼成した。生成物はるつぼへの固着が見られ、完全には固結を防止できなかった。
実施例および比較例によって得られたメタリン酸アルミニウムについて、次の方法で測定した。
〔純度測定〕
(1)P2O5含有量
(1)試料1gを石英フラスコに正確にはかりとる。
(2)水酸化ナトリウム溶液 (20wt/vol%)30mlを加える。
(3)サンドバス上で加熱溶解する。
(4)室温まで冷却し、塩酸18mlを加え、加熱した。塩酸を加え、結晶が析出した場合は純水を少量加える。
(5)室温まで冷却後、250mlメスフラスコに移し、水を標線まで加え、よく振り混ぜ、これを供試液とする。
(6)25mlを250mlメスフラスコに分取し、水を標線まで加えてよく振り混ぜる。
(7)(6)で調製した液20mlを100mlメスフラスコに分取すると同時に、五酸化二リン標準液(1ml=0.58mg P2O5)10ml、五酸化二リン標準液(1ml=0.66mg P2O5)10mlをそれぞれ100mlメスフラスコ2本に分取し、それぞれのサンプルに純水を加えて、約30mlとする。
(8)硝酸(1+1)を4ml加え、ホットプレート上(約170℃)で15分間加熱する。
(9)水を加えて液量を約70mlにし、ウォーターバスで約20分間冷却する。
(10)バナドモリブデン酸アンモニウム発色試薬20mlを加え、標線まで水を加えてよく振り混ぜ、30分間放置し、それぞれ、試料液、標準第1液、標準第2液とする。
(11)分光光度計(420nm、セル20mm)を使用し、標準第1液を対照液として、セル補正を行った後、試料液及び標準第2液の透過率を小数点以下1桁まで読み取る。その透過率から吸光度を求め、試料液の吸光度をA、標準第2液の吸光度をBとする。
(12)次式からP2O5の含有量(wt%)を小数点以下1桁まで求める。
【0027】
【数1】

【0028】
(2)Al2O3含有量
(1)P2O5含有量測定時に分解、調製した共試液を使用する。
(2)共試液15mlを200mlビーカー3つにそれぞれ分取する。
(3)pHメーターを用い、5%酢酸アンモニウム溶液を加えて、pHを3〜4に調整する。
(4)Cu−PAN指示薬0.5mlを加え、赤紫色から黄色になるまで0.01mol/lのEDTA溶液(1ml=0.27mg Al)を加える。
(5)その黄色が加熱すると再び赤紫色に変わる時、引き続きEDTAを滴下し、1分間加熱沸騰させても変化しない点を終点とする。
(6)次式からAl2O3含有量(wt%)を小数点以下1桁まで求める。
【0029】
【数2】

【0030】
(3)純度
P2O5含有量とAl2O3含有量の合計を算出する。
(4)P2O5/Al2O3モル比
次式より算出する。
【0031】
【数3】

【0032】
(5)遊離リン酸含有量
(1)試料2gを250mlメスフラスコに正確にはかり、水を約150ml加える。
(2)ホットプレート上で上記メスフラスコを約5分間加熱する。冷却後、上記メスフラスコに水を標線まで加え、よく振り混ぜる。
(3)上記メスフラスコ中の液を乾燥ろ紙(No.5C)を用いてろ過する。
(4)ろ液100mlをホールピペットを用い300mlビーカーに分取する。
(5)メチルオレンジ・インジゴカルミン混合指示薬を上記ビーカーに2〜3滴加え、0.1mol/lの水酸化ナトリウム溶液で滴定する。終点は、液の色が紫から鉛灰色に変わった点とする。
(6)遊離リン酸の含有量(wt%)をP2O5換算で次式から小数点以下1桁まで求める。
【0033】
【数4】

【0034】
(6)強熱減量
(1)重量既知の磁性るつぼに試料5gを入れ、0.1mgまで正確にはかる。
(2)500℃に保った電気炉に上記るつぼを入れ、1時間強熱する。
(3)るつぼを電気炉から取り出し、デシケーター中で放冷後、試料の重量を0.1mgまで正確にはかる。
(4)測定値を用い、以下の式から強熱減量(wt%)を小数点以下1桁まで求める。
【0035】
【数5】



【0036】
(7)有色元素含有量
(1)試料0.3gと(1+2)硫酸10mlをテフロン容器に入れる。
(2)テフロン容器をSUS加圧容器に入れ、230℃で16時間加熱する。
(3)冷却後、100mlメスフラスコに入れ、希釈する。
(4)フレームレス原子吸光で分析を行う。
【0037】
実施例および比較例の条件概要および性能評価結果を表1に示した。
【0038】
【表1】

【0039】
以上、詳述したように、本発明のメタリン酸アミニウムの製造方法では、生成したメタリン酸アルミニウムがほぐす程度で容易に粉末状となり、生成物の取り扱いも容易である。また、材料や装置材質を選択し、この方法を用いることにより、光学材料の原料として要求されている高純度品を安価に効率よく製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸源とアルミニウム化合物とを反応又は混合させる第一工程、
第一工程で得られた生成物を210〜370℃で焼成する第二工程、
第二工程で得られた生成物を吸湿又は吸水させる第三工程、
第三工程で得られた生成物単独で、又はこれに更に第一工程で得られた生成物を混合し、400℃以上で焼成する第四工程からなることを特徴とする、
粉砕工程を必要としない高純度メタリン酸アルミニウムの製造方法。
【請求項2】
第一工程のリン酸源とアルミニウム化合物のP/Alモル比が2.9〜3.1であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
第二工程の焼成温度が275〜350℃であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
第一工程のリン酸源がリン酸であって、反応が120〜130℃で発泡が始まるまで加熱して粘性液体の状態で止めることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
第三工程の吸湿又は吸水が、加圧水蒸気下で行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
第三工程の吸湿又は吸水が、水浸漬で行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
第四工程における焼成温度が500〜800℃であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
第二工程及び第四工程で用いる焼成容器が、金属アルミニウム又はアルミナからなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
第四工程の生成物を水洗浄後乾燥して遊離リン酸を除去することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
高純度メタリン酸アルミニウムの不純物の各有色金属元素濃度が5ppm以下である、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
高純度メタリン酸アルミニウムの不純物の各有色金属元素が、鉄、クロム、ニッケル、マンガン、亜鉛、又は銅の少なくとも1種である、請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
高純度メタリン酸アルミニウムの遊離リン酸含有量が2重量%以下である、請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
高純度メタリン酸アルミニウムの強熱減量が2重量%以下である、請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−67608(P2009−67608A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234905(P2007−234905)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000251196)燐化学工業株式会社 (8)