説明

高純度尿素の製造方法

【課題】例えば、1,3−ジ(メタ)アリル尿素の製造原料として好適に使用することが出来る高純度尿素の製造方法を提供する。
【解決手段】不純物としてオイルを含有する尿素を水に溶解して尿素水とした後、当該尿素水中の白濁成分を濾過材で除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高純度尿素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
尿素と(メタ)アリルアルコールとを反応して得られる1,3−ジ(メタ)アリル尿素は、医薬、農薬の中間体として有用である。上記の反応で得られた(メタ)アリル化尿素類の混合物から1,3−ジ(メタ)アリル尿素を効率的に高純度化させる精製方法として、特定のpHの水溶液を使用した抽出法が提案されている(特許文献1)。この方法は、副生する1,1−ジ(メタ)アリル尿素の除去を目的としたものである。
【0003】
ところで、尿素には、その製造プロセスで使用された潤滑油などに起因して不純物量のオイルが混入している(特許文献2)。このような尿素中のオイルは、医薬、農薬の中間体として有用な1,3−ジ(メタ)アリル尿素の製造においても除外することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−068106号公報
【特許文献2】特開昭54−52032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、例えば、1,3−ジ(メタ)アリル尿素の製造原料として好適に使用することが出来る高純度尿素の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、次のような知見を得た。
【0007】
尿素中に不純物として混入するオイルは、尿素を水に溶解することにより、白濁成分として現出させることが出来る。尿素水に白濁を与えるオイルは、尿素と一体となって尿素−オイル不溶物を形成している。従って、この白濁成分(尿素−オイル不溶物)は、濾過材で効率的かつ高度に除去することが出来る。尿素−オイル不溶物が生成する理由は、必ずしも明らかではないが、尿素製造プロセスの、コンプレッサー等を含む尿素製造設備の設計精度や保守管理技術が低いことに起因し、混入した潤滑油と尿素とが長期に亘って熱を受けて生成するのではないかと推定される。
【0008】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、不純物としてオイルを含有する尿素を水に溶解して尿素水とした後、当該尿素水中の白濁成分を濾過材で除去することを特徴とする高純度尿素の製造方法に存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、1,3−ジ(メタ)アリル尿素の製造原料として好適に使用することが出来る高純度尿素の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明で使用する尿素は、固体状であり、液体アンモニアと炭酸ガスを加圧する周知の方法で工業的に生産され市販されている。斯かる尿素には、その製造プロセスで使用された潤滑油などに起因して不純物量のオイルが混入されている。そして、前述の通り、尿素水に白濁を与えるオイルは、尿素と一体となって尿素−オイル不溶物を形成している。
【0012】
先ず、本発明においては、尿素を水に溶解して尿素水とする。尿素水の調製に使用する水としては、一般に、工業用水を濾過した後にイオン交換樹脂で処理した純水が使用される。斯かる純水は電気伝導度が0.1mS/cm以下である。また、尿素水中の尿素の濃度は通常20〜60重量%であり、調製時の温度は例えば10〜70℃である。
【0013】
次いで、本発明においては、必要に応じ、ストレーナー等を使用し、尿素水中の比較的大きな異物を除去する。
【0014】
次いで、本発明においては、白濁成分(尿素−オイル不溶物)を除去する。手段としては、濾過材を備えた濾過手段を使用する。濾過材としては、白濁成分の除去後の尿素水の濁度が5度(カオリン)以下となる濾過材が好適に使用される。
【0015】
濾過材の材質としては、例えば、PP(ポリプロピレン)、ナイロン、ポリスルホン、PVDF(ポリビニリデンフロライド)、ガラス繊維、ステンレス等の金属、焼結金属、セラミック等が挙げられる。
【0016】
濾過材の形状としては、例えば、シートをプリーツ折り加工したプリーツ型、濾材を積層してテーパー孔構造の厚みのあるデプス型、デプス状の濾材をプリーツ折り加工したプリーテッド・デプス型やハイブリッド型、バケツのような形状に加工したバッグ型などが挙げられる。
【0017】
プリーツ型の商品としては、例えば、日本ポール社「ポリファインII」、「ウルチポアN66」、「ウォーターファイン」、「フロロダインVA」、住友スリーエム(住友3M)社「ライフアシュア」、ADVANTEC社「濾紙プリーツカートリッジフィルター」、「PESメンブレンカートリッジフィルター」、「PPプリーツカートリッジフィルター」等が挙げられる。
【0018】
デプス型の商品としては、例えば、日本ポール社「プロファイルII」、「ネクシスNXT」、住友3M社「マイクロ・ワインドII」、「ポリネット」、ADVANTEC社「デプスカートリッジフィルター」等が挙げられる。
【0019】
プリーテッド・デプス型やハイブリッド型の商品としては、例えば、日本ポール社「プロファイル・スター」、「ウルチプリーツ・プロファイル」等が挙げられる。
【0020】
バッグ型の商品としては、例えば、住友3M社「リキッドフィルターバッグ」等が挙げられる。
【0021】
金属型の商品としては、例えば、粉末ステンレスを焼結した、日本ポール社「PMMメタルメンブレン」や住友3M社「ポロ・クリーン」、ステンレス製の焼結金属不織布、焼結金属、非焼結金属を使用した、住友3M社「マイクロ・スクリーンE」、ADVANTEC社「ステンレスカートリッジフィルター」等が挙げられる。
【0022】
更には、セライト濾過材を使用することも出来、純水の製造プロセスにおいて前処理として使用されている砂濾過を使用することも可能である。また、濾過手段による処理は複数回行ってもよい。
【0023】
濾過材の性能が孔径で規定される場合、孔径は、尿素水中の濁度(5を超え且つ200以下)によって異なるが、一般的には15μm以下、好ましくは10μm以下である。
【0024】
次いで、本発明においては、白濁成分(オイル)が除去された尿素水から水をドライアップして固体状の尿素を回収するが、用途によっては、完全に固体化する必要はなく、スラリー状態であってもよいし、尿素水のまま使用してもよい。なお、白濁成分とはならずに尿素水の表面に薄膜を生じるオイルは、ドライアップの前に、常法に従い、ケイソウ土、活性炭、オイル吸着樹脂などのオイル吸着剤で処理することにより、容易に除去することが出来る。
【0025】
本発明製造法で得られた高純度尿素は、1,3−ジ(メタ)アリル尿素の製造原料の他、木質ボードにおけるホルムアルデヒドキャッチャー剤(特開2002−331504号公報)、化粧水用原料(特開平6−24954号公報)、蚕の繭からのセリシンの溶出溶剤(特開2008−173312号公報)として好適に使用することが出来る。
【実施例】
【0026】
次に、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例で使用した測定法は次の通りである。
【0027】
<濁度の測定方法>
JIS K0101「工業用水試験方法」の9.2項「透過光濁度」に従い、試薬としてカオリン標準液を使用し、次の要領で濁度を測定した。
【0028】
すなわち、試薬として濁度100度(カオリン)のカオリン標準液(キシダ化学製)を使用し、装置として分光光度計「UV−1200」(島津製作所製)を使用し、検量線の作成と試料の濁度測定を行った。
【0029】
(1)検量線の作成:
先ず、カオリン標準液50、25、10、5mlを全量フラスコ100mlに段階的に採り、純水を標線まで加えて検量線用カオリン標準液[(50、25、10、5度(カオリン)]を調製した。
次いで、検量線用カオリン標準液をよく振り混ぜた後、吸収セル10mmに採り、波長660nm付近における検量線用カオリン標準液の透過光濁度[度(カオリン)]と吸光度との関係線を作成した。
【0030】
(2)試料の濁度測定:
試料をよく振り混ぜた後、吸収セル10mmにとり、波長660nm付近における透過光の強度を見掛けの吸光度で測定する。
【0031】
実施例1:
原料尿素としてフレコンバッグで輸入した工業用尿素を使用した。原料水として濁度が0度(カオリン)の工業用純水を使用した。
【0032】
(原料尿素の濁度)
上記の工業用尿素6.5gを上記の原料水13.0gに溶解させて33重量%の尿素水を調製し、その濁度を測定した結果、8.1度(カオリン)であった。
【0033】
(尿素水中の不溶成分の同定)
0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製メンブレンフィルター(ADVANTEC社製)を使用し、上記の尿素水を濾過し(濾液の濁度は0度(カオリン))、尿素水の不溶成分をメンブレンフィルター上に採取し、純水で30mlで3回洗浄した後、真空ポンプ(佐藤真空(株)製「TSW−300型」)と真空乾燥器(東京理化器械(株)製「VOS−601SD型」)とを使用し、減圧(10Pa以下)下に50℃10時間乾燥した。次いで、メンブレンフィルター上の不溶成分についてフィルターと共にIR分析を行った結果、尿素と潤滑油の特有の吸収が認められた。
【0034】
(高純度尿素の製造)
先ず、原料尿素65gを65℃の原料水130gに溶解させて33重量%の尿素水を調製した。得られた尿素水を、40メッシュSUS網と400メッシュSUS網とで順次に処理した。次いで、減圧濾過用フィルターホルダー(ADVANTEC社製)に表1に示す各種の45mmメンブレンフィルターをそれぞれ装着し、上記の尿素水50gを濾過した。濾過後の尿素水の濁度測定しその結果を表1に示した。次いで、濾過後の各尿素水をロータリーエバポレーターのフラスコに入れ、アスピレーターで減圧しながら50℃水浴中で濃縮、脱水を行った。その後、50℃オーブンで10hr減圧乾燥して、粉末尿素を得た。
【0035】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物としてオイルを含有する尿素を水に溶解して尿素水とした後、当該尿素水中の白濁成分を濾過材で除去することを特徴とする高純度尿素の製造方法。