高純度尿素水の製造方法
【課題】原料尿素として、尿素水とした際に白濁成分と成る不純物を含有する尿素を使用し、透明性に優れ、且つ、内燃機関排気処理用ＮＯｘ還元触媒におけるアンモニア源として好適な高純度尿素水の製造方法を提供する。
【解決手段】白濁成分の除去手段として、孔径が１０μｍ以下のメンブレンフィルターやカートリッジフィルターなど、白濁成分の除去後の尿素水の濁度が５度（カオリン）以下となる濾過材を備えた濾過手段を使用する高純度尿素水の製造方法。
【解決手段】白濁成分の除去手段として、孔径が１０μｍ以下のメンブレンフィルターやカートリッジフィルターなど、白濁成分の除去後の尿素水の濁度が５度（カオリン）以下となる濾過材を備えた濾過手段を使用する高純度尿素水の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は高純度尿素水の製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
ディーゼルエンジン等の内燃機関の排気ガスに含まれるＮＯｘを還元浄化する方法として、尿素水とＳＣＲ（Ｓｅｌｅｃｔｉｖｅ Ｃａｔａｌｙｔｉｃ Ｒｅｄｕｃｔｉｏｎ、選択還元触媒）方式の触媒コンバータによりＮＯｘを大幅に低減する方法が提案されている（特許文献１）。この尿素ＳＣＲ方式は、尿素水を還元剤とし、これを前記ＳＣＲ触媒コンバータに入る直前に排気ガスに混合させる方式であり、尿素は排気ガス中でアンモニアに変化し、ＳＣＲ触媒コンバータ内で排気ガス中のＮＯｘがアンモニアと結びついて水と無害な窒素に分解されるので、排気ガスのクリーン化に有望な技術とされている。そして、内燃機関排気処理用ＮＯｘ還元触媒におけるアンモニア源として好適な高純度尿素水の製造方法として、例えば尿素水を濾過する工程およびオイル吸着剤で処理する工程からなることを特徴とする高純度尿素水の製造方法が提案されている（特許文献２）。
【０００３】
上記の高純度尿素水の製造方法において、濾過器としては、ストレーナー等で十分であり、ストレーナーとしてはバケット型などを使用でき、異物の大きさによりメッシュ型スクリーン、繊維成型型、不織布プリーツ型等のエレメントを使用すると記載され、また、オイル吸着剤としては、ケイソウ土、活性炭、オイル吸着樹脂が例示されている。そして、濾過対象の固形物については、配管などから混入する僅かな異物などが例示され、その大きさは数〜数十μｍとされている。なお、上記のオイルは、工業的製造プロセスから尿素に混入する不純物である（特許文献３）
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００４−２９０８３５号公報
【特許文献２】特開２００６−２９８８２８号公報
【特許文献３】特開２００７−１４５７９６号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
ところで、尿素は、基本的には、尿素合成に適した高温圧力下にアンモニアと二酸化炭素とを反応して得られる。そして、肥料用途や工業用途などに使用される尿素は、造粒塔においてプリル化された後、建屋内の受入ヤードに搬入して貯蔵される。一般に、需要者にはフレコンバッグ等に充填されて出荷される。
【０００６】
ところが、本発明者の検討の結果、尿素には尿素−オイル不溶物が不純物として含まれていることが判明した。尿素水中の尿素−オイル不溶物は、前述の先行技術で指摘されたオイルのみから成る不溶物と異なり、尿素水に白濁を与える。尿素水中のオイルのみから成る不溶物は、液体であり流動性を呈し、尿素水を噴霧する設備の配管やバルブの閉塞原因となる恐れは少ないものの、上記のような尿素−オイル不溶物は、上記の配管やバルブの閉塞原因となる可能性が高い。また、尿素−オイル不溶物によって白濁した尿素水は、品質の面で不安感を与えて商品価値が低い。
【０００７】
尿素水とした際に白濁成分と成る不純物が生成する理由は、必ずしも明らかではないが、尿素製造プロセスの、コンプレッサー等を含む尿素製造設備の設計精度や保守管理技術が低いことに起因し、混入した潤滑油と尿素とが長期に亘って熱を受けて生成するのではないかと推定される。
【０００８】
本発明の目的は、原料尿素として、尿素水とした際に白濁成分と成る不純物を含有する尿素を使用し、透明性に優れ、且つ、内燃機関排気処理用ＮＯｘ還元触媒におけるアンモニア源として好適な高純度尿素水の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
本発明者は、上記の目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、次のような知見を得た。すなわち、尿素水中のオイルのみから成る不溶物は、オイル吸着剤で容易に除去し得るが濾過手段では除去できないのに対し、尿素水中の尿素−オイル不溶物は、濾過手段によって除去することが出来る。そして、適切な濾過材は、尿素水中の尿素−オイル不溶物の量（すなわち濁度）によって異なる。
【００１０】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、尿素を水に溶解して尿素水とした後に当該尿素水中の白濁成分を除去する高純度尿素水の製造方法であって、原料尿素として、濁度０度（カオリン）の水に溶解させて３３重量％の尿素水とした際、尿素−オイル不溶物から成る白濁成分を生成し且つ濁度が５度（カオリン）を超える尿素を使用し、白濁成分の除去手段として、白濁成分の除去後の尿素水の濁度が５度（カオリン）以下となる濾過材を備えた濾過手段を使用することを特徴とする高純度尿素水の製造方法に存する。
【発明の効果】
【００１１】
本発明によれば、原料尿素として、尿素水とした際に白濁成分と成る不純物を含有する尿素を使用し、透明性に優れ、且つ、内燃機関排気処理用ＮＯｘ還元触媒におけるアンモニア源として好適な高純度尿素水の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下、本発明を詳細に説明する。
【００１３】
本発明においては、原料尿素として、濁度０度（カオリン）の水に溶解させて３３重量％の尿素水とした際、尿素−オイル不溶物から成る白濁成分を生成し且つ濁度が５度（カオリン）を超える尿素を使用する。斯かる尿素は、各種用途向けの尿素の中から、後述の実施例に示す簡単な試験により容易に選択することが出来る。尿素水の調製に使用する原料水は、濁度０度（カオリン）であれば特に制限されない。一般に、工業用水を濾過した後にイオン交換樹脂で処理した純水が使用される。斯かる純水は電気伝導度が０．１ｍＳ／ｃｍ以下である。
【００１４】
先ず、本発明においては、尿素を水に溶解して尿素水とする。尿素水調製時の水温は通常１０〜７０℃である。尿素水中の尿素の濃度は、通常２０〜６０重量％、好ましくは３０〜３５重量である。また、尿素−オイル不溶物に起因する濁度の上限は、通常２００度（カオリン）、好ましくは５０度（カオリン）である。
【００１５】
次いで、本発明においては、必要に応じ、ストレーナー等を使用し、尿素水中の比較的大きな異物を除去する。
【００１６】
次いで、本発明においては、白濁成分（尿素−オイル不溶物）を除去する。手段としては、白濁成分の除去後の尿素水の濁度が５度（カオリン）以下となる濾過材を備えた濾過手段を使用する。
【００１７】
濾過材の材質としては、例えば、ＰＰ（ポリプロピレン）、ナイロン、ポリスルホン、ＰＶＤＦ（ポリビニリデンフロライド）、ガラス繊維、ステンレス等の金属、焼結金属、セラミック等が挙げられる。
【００１８】
濾過材の形状としては、例えば、シートをプリーツ折り加工したプリーツ型、濾材を積層してテーパー孔構造の厚みのあるデプス型、デプス状の濾材をプリーツ折り加工したプリーテッド・デプス型やハイブリッド型、バケツのような形状に加工したバッグ型などが挙げられる。
【００１９】
プリーツ型の商品としては、例えば、日本ポール社「ポリファインII」、「ウルチポアＮ６６」、「ウォーターファイン」、「フロロダインＶＡ」、住友スリーエム（住友３Ｍ）社「ライフアシュア」、ＡＤＶＡＮＴＥＣ社「濾紙プリーツカートリッジフィルター」、「ＰＥＳメンブレンカートリッジフィルター」、「ＰＰプリーツカートリッジフィルター」等が挙げられる。
【００２０】
デプス型の商品としては、例えば、日本ポール社「プロファイルII」、「ネクシスＮＸＴ」、住友３Ｍ社「マイクロ・ワインドII」、「ポリネット」、ＡＤＶＡＮＴＥＣ社「デプスカートリッジフィルター」等が挙げられる。
【００２１】
プリーテッド・デプス型やハイブリッド型の商品としては、例えば、日本ポール社「プロファイル・スター」、「ウルチプリーツ・プロファイル」等が挙げられる。
【００２２】
バッグ型の商品としては、例えば、住友３Ｍ社「リキッドフィルターバッグ」等が挙げられる。
【００２３】
金属型の商品としては、例えば、粉末ステンレスを焼結した、日本ポール社「ＰＭＭメタルメンブレン」や住友３Ｍ社「ポロ・クリーン」、ステンレス製の焼結金属不織布、焼結金属、非焼結金属を使用した、住友３Ｍ社「マイクロ・スクリーンＥ」、ＡＤＶＡＮＴＥＣ社「ステンレスカートリッジフィルター」等が挙げられる。
【００２４】
更には、セライト濾過材を使用することも出来、純水の製造プロセスにおいて前処理として使用されている砂濾過を使用することも可能である。また、濾過手段による処理は複数回行ってもよい。
【００２５】
濾過材の性能が孔径で規定される場合、孔径は、尿素水中の濁度（５を超え且つ２００以下）によって異なるが、一般的には１５μｍ以下、好ましくは１０μｍ以下である。
【００２６】
本発明製造法で得られた高純度尿素水は、内燃機関排気処理用ＮＯｘ還元触媒におけるアンモニア源の他、木質ボードにおけるホルムアルデヒドキャッチャー剤（特開２００２−３３１５０４号公報）、化粧水用原料（特開平６−２４９５４号公報）、蚕の繭からのセリシンの溶出溶剤（特開２００８−１７３３１２号公報）として好適に使用することが出来る。
【実施例】
【００２７】
次に、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例で使用した測定法は次の通りである。
【００２８】
＜濁度の測定方法＞
ＪＩＳ Ｋ０１０１「工業用水試験方法」の９．２項「透過光濁度」に従い、試薬としてカオリン標準液を使用し、次の要領で濁度を測定した。
【００２９】
すなわち、試薬として濁度１００度（カオリン）のカオリン標準液（キシダ化学製）を使用し、装置として分光光度計「ＵＶ−１２００」（島津製作所製）を使用し、検量線の作成と試料の濁度測定を行った。
【００３０】
（１）検量線の作成：
先ず、カオリン標準液５０、２５、１０、５ｍｌを全量フラスコ１００ｍｌに段階的に採り、純水を標線まで加えて検量線用カオリン標準液［（５０、２５、１０、５度（カオリン）］を調製した。
次いで、検量線用カオリン標準液をよく振り混ぜた後、吸収セル１０ｍｍに採り、波長６６０ｎｍ付近における検量線用カオリン標準液の透過光濁度［度（カオリン）］と吸光度との関係線を作成した。
【００３１】
（２）試料の濁度測定：
試料をよく振り混ぜた後、吸収セル１０ｍｍにとり、波長６６０ｎｍ付近における透過光の強度を見掛けの吸光度で測定する。
【００３２】
実施例１（メンブレンフィルターを使用した例）：
原料尿素としてフレコンバッグで輸入した工業用尿素を使用した。原料水として濁度が０度（カオリン）の工業用純水を使用した。
【００３３】
（原料尿素の濁度）
上記の工業用尿素６．５ｇを上記の原料水１３．０ｇに溶解させて３３重量％の尿素水を調製し、その濁度を測定した結果、８．１度（カオリン）であった。
【００３４】
（尿素水中の不溶成分の同定）
０．２μｍのポリテトラフルオロエチレン（ＰＴＦＥ）製メンブレンフィルター（ＡＤＶＡＮＴＥＣ社製）を使用し、上記の尿素水を濾過し（濾液の濁度は０度（カオリン））、尿素水の不溶成分をメンブレンフィルター上に採取し、純水で３０ｍｌで３回洗浄した後、真空ポンプ（佐藤真空（株）製「ＴＳＷ−３００型」）と真空乾燥器（東京理化器械（株）製「ＶＯＳ−６０１ＳＤ型」）とを使用し、減圧（１０Ｐａ以下）下に５０℃１０時間乾燥した。次いで、メンブレンフィルター上の不溶成分についてフィルターと共にＩＲ分析を行った結果、尿素と潤滑油の特有の吸収が認められた。
【００３５】
（高純度尿素水の製造）
先ず、原料尿素６５ｇを６５℃の原料水１３０ｇに溶解させて３３重量％の尿素水を調製した。得られた尿素水を、４０メッシュＳＵＳ網と４００メッシュＳＵＳ網とで順次に処理した。次いで、減圧濾過用フィルターホルダー（ＡＤＶＡＮＴＥＣ社製）に表１に示す各種の４５ｍｍメンブレンフィルターをそれぞれ装着し、上記の尿素水５０ｇを濾過した。濾過後の尿素水の濁度測定しその結果を表１に示した。
【００３６】
【表１】
【００３７】
実施例２（メンブレンフィルターを使用した例）：
原料尿素として、実施例１におけるものと異なるロット番号の工業用尿素を使用した。
【００３８】
（原料尿素の濁度）
実施例１と同様に、原料尿素の濁度を測定した結果、２３．０度（カオリン）であった。
【００３９】
（尿素水中の不溶成分の同定）
実施例１と同様に、尿素水中の不溶成分の同定を行った。尿素と潤滑油の特有の吸収が認められた。
【００４０】
（高純度尿素水の製造）
実施例１において、表２に示す各種の４５ｍｍメンブレンフィルターをそれぞれ使用した以外は、実施例１と同様にして高純度尿素水を製造した。濾過後の尿素水の濁度測定しその結果を表２に示した。
【００４１】
【表２】
【００４２】
実施例３〜５（カートリッジフィルターを使用した例）：
原料尿素として、実施例１及び２におけるものと異なるロット番号の工業用尿素を使用した。
【００４３】
（原料尿素の濁度）
実施例１と同様に、原料尿素の濁度を測定した結果、６．２度（カオリン）であった。
【００４４】
（尿素水中の不溶成分の同定）
実施例１と同様に、尿素水中の不溶成分の同定を行った。尿素と潤滑油の特有の吸収が認められた。
【００４５】
（高純度尿素水の製造）
先ず、原料尿素６．５ｋｇを６５℃の原料水１３．０ｋｇに溶解させて３３重量％の尿素水を調製した。得られた尿素水を、４０メッシュＳＵＳ網と４００メッシュＳＵＳ網とで順次に処理した。次いで、日本ポール社製のフィルターハウジング（型番「Ｍ０１ＤＳ−１Ｇ１６」）の内部に表３に示す濾過材（１０インチのカートリッジフィルター）をそれぞれ装着し、上記の尿素水を濾過した。濾過後の尿素水について濁度を測定し、その結果を表３に示した。
【００４６】
【表３】
【技術分野】
【０００１】
本発明は高純度尿素水の製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
ディーゼルエンジン等の内燃機関の排気ガスに含まれるＮＯｘを還元浄化する方法として、尿素水とＳＣＲ（Ｓｅｌｅｃｔｉｖｅ Ｃａｔａｌｙｔｉｃ Ｒｅｄｕｃｔｉｏｎ、選択還元触媒）方式の触媒コンバータによりＮＯｘを大幅に低減する方法が提案されている（特許文献１）。この尿素ＳＣＲ方式は、尿素水を還元剤とし、これを前記ＳＣＲ触媒コンバータに入る直前に排気ガスに混合させる方式であり、尿素は排気ガス中でアンモニアに変化し、ＳＣＲ触媒コンバータ内で排気ガス中のＮＯｘがアンモニアと結びついて水と無害な窒素に分解されるので、排気ガスのクリーン化に有望な技術とされている。そして、内燃機関排気処理用ＮＯｘ還元触媒におけるアンモニア源として好適な高純度尿素水の製造方法として、例えば尿素水を濾過する工程およびオイル吸着剤で処理する工程からなることを特徴とする高純度尿素水の製造方法が提案されている（特許文献２）。
【０００３】
上記の高純度尿素水の製造方法において、濾過器としては、ストレーナー等で十分であり、ストレーナーとしてはバケット型などを使用でき、異物の大きさによりメッシュ型スクリーン、繊維成型型、不織布プリーツ型等のエレメントを使用すると記載され、また、オイル吸着剤としては、ケイソウ土、活性炭、オイル吸着樹脂が例示されている。そして、濾過対象の固形物については、配管などから混入する僅かな異物などが例示され、その大きさは数〜数十μｍとされている。なお、上記のオイルは、工業的製造プロセスから尿素に混入する不純物である（特許文献３）
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００４−２９０８３５号公報
【特許文献２】特開２００６−２９８８２８号公報
【特許文献３】特開２００７−１４５７９６号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
ところで、尿素は、基本的には、尿素合成に適した高温圧力下にアンモニアと二酸化炭素とを反応して得られる。そして、肥料用途や工業用途などに使用される尿素は、造粒塔においてプリル化された後、建屋内の受入ヤードに搬入して貯蔵される。一般に、需要者にはフレコンバッグ等に充填されて出荷される。
【０００６】
ところが、本発明者の検討の結果、尿素には尿素−オイル不溶物が不純物として含まれていることが判明した。尿素水中の尿素−オイル不溶物は、前述の先行技術で指摘されたオイルのみから成る不溶物と異なり、尿素水に白濁を与える。尿素水中のオイルのみから成る不溶物は、液体であり流動性を呈し、尿素水を噴霧する設備の配管やバルブの閉塞原因となる恐れは少ないものの、上記のような尿素−オイル不溶物は、上記の配管やバルブの閉塞原因となる可能性が高い。また、尿素−オイル不溶物によって白濁した尿素水は、品質の面で不安感を与えて商品価値が低い。
【０００７】
尿素水とした際に白濁成分と成る不純物が生成する理由は、必ずしも明らかではないが、尿素製造プロセスの、コンプレッサー等を含む尿素製造設備の設計精度や保守管理技術が低いことに起因し、混入した潤滑油と尿素とが長期に亘って熱を受けて生成するのではないかと推定される。
【０００８】
本発明の目的は、原料尿素として、尿素水とした際に白濁成分と成る不純物を含有する尿素を使用し、透明性に優れ、且つ、内燃機関排気処理用ＮＯｘ還元触媒におけるアンモニア源として好適な高純度尿素水の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
本発明者は、上記の目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、次のような知見を得た。すなわち、尿素水中のオイルのみから成る不溶物は、オイル吸着剤で容易に除去し得るが濾過手段では除去できないのに対し、尿素水中の尿素−オイル不溶物は、濾過手段によって除去することが出来る。そして、適切な濾過材は、尿素水中の尿素−オイル不溶物の量（すなわち濁度）によって異なる。
【００１０】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、尿素を水に溶解して尿素水とした後に当該尿素水中の白濁成分を除去する高純度尿素水の製造方法であって、原料尿素として、濁度０度（カオリン）の水に溶解させて３３重量％の尿素水とした際、尿素−オイル不溶物から成る白濁成分を生成し且つ濁度が５度（カオリン）を超える尿素を使用し、白濁成分の除去手段として、白濁成分の除去後の尿素水の濁度が５度（カオリン）以下となる濾過材を備えた濾過手段を使用することを特徴とする高純度尿素水の製造方法に存する。
【発明の効果】
【００１１】
本発明によれば、原料尿素として、尿素水とした際に白濁成分と成る不純物を含有する尿素を使用し、透明性に優れ、且つ、内燃機関排気処理用ＮＯｘ還元触媒におけるアンモニア源として好適な高純度尿素水の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下、本発明を詳細に説明する。
【００１３】
本発明においては、原料尿素として、濁度０度（カオリン）の水に溶解させて３３重量％の尿素水とした際、尿素−オイル不溶物から成る白濁成分を生成し且つ濁度が５度（カオリン）を超える尿素を使用する。斯かる尿素は、各種用途向けの尿素の中から、後述の実施例に示す簡単な試験により容易に選択することが出来る。尿素水の調製に使用する原料水は、濁度０度（カオリン）であれば特に制限されない。一般に、工業用水を濾過した後にイオン交換樹脂で処理した純水が使用される。斯かる純水は電気伝導度が０．１ｍＳ／ｃｍ以下である。
【００１４】
先ず、本発明においては、尿素を水に溶解して尿素水とする。尿素水調製時の水温は通常１０〜７０℃である。尿素水中の尿素の濃度は、通常２０〜６０重量％、好ましくは３０〜３５重量である。また、尿素−オイル不溶物に起因する濁度の上限は、通常２００度（カオリン）、好ましくは５０度（カオリン）である。
【００１５】
次いで、本発明においては、必要に応じ、ストレーナー等を使用し、尿素水中の比較的大きな異物を除去する。
【００１６】
次いで、本発明においては、白濁成分（尿素−オイル不溶物）を除去する。手段としては、白濁成分の除去後の尿素水の濁度が５度（カオリン）以下となる濾過材を備えた濾過手段を使用する。
【００１７】
濾過材の材質としては、例えば、ＰＰ（ポリプロピレン）、ナイロン、ポリスルホン、ＰＶＤＦ（ポリビニリデンフロライド）、ガラス繊維、ステンレス等の金属、焼結金属、セラミック等が挙げられる。
【００１８】
濾過材の形状としては、例えば、シートをプリーツ折り加工したプリーツ型、濾材を積層してテーパー孔構造の厚みのあるデプス型、デプス状の濾材をプリーツ折り加工したプリーテッド・デプス型やハイブリッド型、バケツのような形状に加工したバッグ型などが挙げられる。
【００１９】
プリーツ型の商品としては、例えば、日本ポール社「ポリファインII」、「ウルチポアＮ６６」、「ウォーターファイン」、「フロロダインＶＡ」、住友スリーエム（住友３Ｍ）社「ライフアシュア」、ＡＤＶＡＮＴＥＣ社「濾紙プリーツカートリッジフィルター」、「ＰＥＳメンブレンカートリッジフィルター」、「ＰＰプリーツカートリッジフィルター」等が挙げられる。
【００２０】
デプス型の商品としては、例えば、日本ポール社「プロファイルII」、「ネクシスＮＸＴ」、住友３Ｍ社「マイクロ・ワインドII」、「ポリネット」、ＡＤＶＡＮＴＥＣ社「デプスカートリッジフィルター」等が挙げられる。
【００２１】
プリーテッド・デプス型やハイブリッド型の商品としては、例えば、日本ポール社「プロファイル・スター」、「ウルチプリーツ・プロファイル」等が挙げられる。
【００２２】
バッグ型の商品としては、例えば、住友３Ｍ社「リキッドフィルターバッグ」等が挙げられる。
【００２３】
金属型の商品としては、例えば、粉末ステンレスを焼結した、日本ポール社「ＰＭＭメタルメンブレン」や住友３Ｍ社「ポロ・クリーン」、ステンレス製の焼結金属不織布、焼結金属、非焼結金属を使用した、住友３Ｍ社「マイクロ・スクリーンＥ」、ＡＤＶＡＮＴＥＣ社「ステンレスカートリッジフィルター」等が挙げられる。
【００２４】
更には、セライト濾過材を使用することも出来、純水の製造プロセスにおいて前処理として使用されている砂濾過を使用することも可能である。また、濾過手段による処理は複数回行ってもよい。
【００２５】
濾過材の性能が孔径で規定される場合、孔径は、尿素水中の濁度（５を超え且つ２００以下）によって異なるが、一般的には１５μｍ以下、好ましくは１０μｍ以下である。
【００２６】
本発明製造法で得られた高純度尿素水は、内燃機関排気処理用ＮＯｘ還元触媒におけるアンモニア源の他、木質ボードにおけるホルムアルデヒドキャッチャー剤（特開２００２−３３１５０４号公報）、化粧水用原料（特開平６−２４９５４号公報）、蚕の繭からのセリシンの溶出溶剤（特開２００８−１７３３１２号公報）として好適に使用することが出来る。
【実施例】
【００２７】
次に、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例で使用した測定法は次の通りである。
【００２８】
＜濁度の測定方法＞
ＪＩＳ Ｋ０１０１「工業用水試験方法」の９．２項「透過光濁度」に従い、試薬としてカオリン標準液を使用し、次の要領で濁度を測定した。
【００２９】
すなわち、試薬として濁度１００度（カオリン）のカオリン標準液（キシダ化学製）を使用し、装置として分光光度計「ＵＶ−１２００」（島津製作所製）を使用し、検量線の作成と試料の濁度測定を行った。
【００３０】
（１）検量線の作成：
先ず、カオリン標準液５０、２５、１０、５ｍｌを全量フラスコ１００ｍｌに段階的に採り、純水を標線まで加えて検量線用カオリン標準液［（５０、２５、１０、５度（カオリン）］を調製した。
次いで、検量線用カオリン標準液をよく振り混ぜた後、吸収セル１０ｍｍに採り、波長６６０ｎｍ付近における検量線用カオリン標準液の透過光濁度［度（カオリン）］と吸光度との関係線を作成した。
【００３１】
（２）試料の濁度測定：
試料をよく振り混ぜた後、吸収セル１０ｍｍにとり、波長６６０ｎｍ付近における透過光の強度を見掛けの吸光度で測定する。
【００３２】
実施例１（メンブレンフィルターを使用した例）：
原料尿素としてフレコンバッグで輸入した工業用尿素を使用した。原料水として濁度が０度（カオリン）の工業用純水を使用した。
【００３３】
（原料尿素の濁度）
上記の工業用尿素６．５ｇを上記の原料水１３．０ｇに溶解させて３３重量％の尿素水を調製し、その濁度を測定した結果、８．１度（カオリン）であった。
【００３４】
（尿素水中の不溶成分の同定）
０．２μｍのポリテトラフルオロエチレン（ＰＴＦＥ）製メンブレンフィルター（ＡＤＶＡＮＴＥＣ社製）を使用し、上記の尿素水を濾過し（濾液の濁度は０度（カオリン））、尿素水の不溶成分をメンブレンフィルター上に採取し、純水で３０ｍｌで３回洗浄した後、真空ポンプ（佐藤真空（株）製「ＴＳＷ−３００型」）と真空乾燥器（東京理化器械（株）製「ＶＯＳ−６０１ＳＤ型」）とを使用し、減圧（１０Ｐａ以下）下に５０℃１０時間乾燥した。次いで、メンブレンフィルター上の不溶成分についてフィルターと共にＩＲ分析を行った結果、尿素と潤滑油の特有の吸収が認められた。
【００３５】
（高純度尿素水の製造）
先ず、原料尿素６５ｇを６５℃の原料水１３０ｇに溶解させて３３重量％の尿素水を調製した。得られた尿素水を、４０メッシュＳＵＳ網と４００メッシュＳＵＳ網とで順次に処理した。次いで、減圧濾過用フィルターホルダー（ＡＤＶＡＮＴＥＣ社製）に表１に示す各種の４５ｍｍメンブレンフィルターをそれぞれ装着し、上記の尿素水５０ｇを濾過した。濾過後の尿素水の濁度測定しその結果を表１に示した。
【００３６】
【表１】
【００３７】
実施例２（メンブレンフィルターを使用した例）：
原料尿素として、実施例１におけるものと異なるロット番号の工業用尿素を使用した。
【００３８】
（原料尿素の濁度）
実施例１と同様に、原料尿素の濁度を測定した結果、２３．０度（カオリン）であった。
【００３９】
（尿素水中の不溶成分の同定）
実施例１と同様に、尿素水中の不溶成分の同定を行った。尿素と潤滑油の特有の吸収が認められた。
【００４０】
（高純度尿素水の製造）
実施例１において、表２に示す各種の４５ｍｍメンブレンフィルターをそれぞれ使用した以外は、実施例１と同様にして高純度尿素水を製造した。濾過後の尿素水の濁度測定しその結果を表２に示した。
【００４１】
【表２】
【００４２】
実施例３〜５（カートリッジフィルターを使用した例）：
原料尿素として、実施例１及び２におけるものと異なるロット番号の工業用尿素を使用した。
【００４３】
（原料尿素の濁度）
実施例１と同様に、原料尿素の濁度を測定した結果、６．２度（カオリン）であった。
【００４４】
（尿素水中の不溶成分の同定）
実施例１と同様に、尿素水中の不溶成分の同定を行った。尿素と潤滑油の特有の吸収が認められた。
【００４５】
（高純度尿素水の製造）
先ず、原料尿素６．５ｋｇを６５℃の原料水１３．０ｋｇに溶解させて３３重量％の尿素水を調製した。得られた尿素水を、４０メッシュＳＵＳ網と４００メッシュＳＵＳ網とで順次に処理した。次いで、日本ポール社製のフィルターハウジング（型番「Ｍ０１ＤＳ−１Ｇ１６」）の内部に表３に示す濾過材（１０インチのカートリッジフィルター）をそれぞれ装着し、上記の尿素水を濾過した。濾過後の尿素水について濁度を測定し、その結果を表３に示した。
【００４６】
【表３】
【特許請求の範囲】
【請求項１】
尿素を水に溶解して尿素水とした後に当該尿素水中の白濁成分を除去する高純度尿素水の製造方法であって、原料尿素として、濁度０度（カオリン）の水に溶解させて３３重量％の尿素水とした際、尿素−オイル不溶物から成る白濁成分を生成し且つ濁度が５度（カオリン）を超える尿素を使用し、白濁成分の除去手段として、白濁成分の除去後の尿素水の濁度が５度（カオリン）以下となる濾過材を備えた濾過手段を使用することを特徴とする高純度尿素水の製造方法。
【請求項２】
白濁成分の除去後の尿素水の濁度が０度（カオリン）である請求項１に記載の製造方法。
【請求項１】
尿素を水に溶解して尿素水とした後に当該尿素水中の白濁成分を除去する高純度尿素水の製造方法であって、原料尿素として、濁度０度（カオリン）の水に溶解させて３３重量％の尿素水とした際、尿素−オイル不溶物から成る白濁成分を生成し且つ濁度が５度（カオリン）を超える尿素を使用し、白濁成分の除去手段として、白濁成分の除去後の尿素水の濁度が５度（カオリン）以下となる濾過材を備えた濾過手段を使用することを特徴とする高純度尿素水の製造方法。
【請求項２】
白濁成分の除去後の尿素水の濁度が０度（カオリン）である請求項１に記載の製造方法。
【公開番号】特開２０１０−２８０５９６（Ｐ２０１０−２８０５９６Ａ）
【公開日】平成２２年１２月１６日（２０１０．１２．１６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−１３４０９８（Ｐ２００９−１３４０９８）
【出願日】平成２１年６月３日（２００９．６．３）
【出願人】（０００２３０６５２）日本化成株式会社 (85)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年１２月１６日（２０１０．１２．１６）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年６月３日（２００９．６．３）
【出願人】（０００２３０６５２）日本化成株式会社 (85)
【Ｆターム（参考）】
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