説明

高純度有機金属化合物の分析用処理液及び当該処理液を用いた微量不純物の分析方法、並びに当該分析方法を経た高純度有機金属化合物

【課題】 本発明の課題は、高純度有機金属化合物の微量分解不純物を分析するに当たり、その使用に適した高純度有機金属化合物の分析用処理液を提供することを課題とする。本発明の課題は、又、当該処理液を用いた高純度有機金属化合物中の微量不純物の分析方法を提供することも課題とする。
【解決手段】 本発明の課題は、高純度有機金属化合物を無機酸水溶液と有機溶媒とで分解処理した後、酸性水溶液を用いて金属濃度を0.001〜1質量%とした高純度有機金属化合物の分析用処理液によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度有機金属化合物の分析用処理液及び当該処理液を用いた微量分解不純物の分析方法に関する。更に、本発明は、当該分析方法を経て合格品(高純度品)とされた高純度有機金属化合物にも関する。高純度有機金属化合物は、例えば、化合物半導体MO−CVD材料等として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来、高純度有機金属化合物は高マトリックス成分を含有するため、その分析用液の調製や分析方法は極めて困難で煩雑なものであり、ガスクロマトグラフィーやICP−AES(発光分析)法を用いて過去に様々な検討がなされている(例えば、特許文献1〜2参照)。最近、ICP−DRC(ダイナミックリアクションセル)−MS法により分析する方法が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−20136号公報
【特許文献2】特開平5−10939号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「ICP−DRC−MS法による高マトリックスサンプル中の微量成分の測定方法の基礎的検討,第66回分析化学討論会講演要旨集,1005ページ,2005年.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1記載のICP−DRC−MS法においても、一般的な金属化合物中の少量の微量成分の分析を行ったことのみが開示されているに留まり、具体的に化合物半導体MO−CVD材料の分析用処理液及びその調製方法、並びにそれを用いた分析方法については何ら開示されていなかった。そのため、工業的規模で製造されている高純度有機金属化合物中の微量不純物の具体的な分析方法の提案が求められていた。
【0006】
一方、高純度有機金属化合物については、当該化合物に含まれる不純物含量に注目され品質が厳格に管理されているものの、分析用処理液の取得から、高精度の分析手法を経て合格品(即ち、高純度品)が決定された、いわゆる品質が保証された具体的な高純度有機金属化合物については何ら開示されていなかった。
【0007】
本発明の課題は、即ち、高純度有機金属化合物の微量分解不純物を分析するに当たり、その使用に適した高純度有機金属化合物の分析用処理液を提供することを課題とする。
【0008】
本発明の課題は、又、当該処理液を用いた高純度有機金属化合物中の微量不純物の分析方法を提供することも課題とする。
【0009】
更に、本発明の課題は、高精度な分析方法を経て合格品(高純度品)とされた高純度有機金属化合物を提供することをも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は、高純度有機金属化合物を無機酸水溶液と有機溶媒とで分解処理した後、酸性水溶液を用いて金属濃度を0.001〜1質量%とした高純度有機金属化合物の分析用処理液によって解決される。
【0011】
本発明の課題は、又、当該分析処理液を用いて、標準添加法によりICP質量分析する高純度有機金属化合物中の微量不純物の分析方法によっても解決される。
【0012】
更に、本発明の課題は、本発明の高純度有機金属化合物は、全微量不純物の合計値が1質量ppm以下であり、スズが0.2質量ppm以下で、且つ水銀が0.2質量ppm以下である高純度有機金属化合物によって解決され、特に、高純度有機金属化合物を無機酸水溶液と有機溶媒とで分解処理し、酸性水溶液を用いて金属濃度が0.001〜1質量%である高純度有機金属化合物の分析用処理液を得た後、標準添加法によりICP質量分析することを経て、全微量不純物の合計値が1質量ppm以下であり、スズが0.2質量ppm以下で、且つ水銀が0.2質量ppm以下であることにより合格品とされ高純度有機金属化合物によって解決される。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、高純度有機金属化合物の微量分解不純物を分析するに当たり、その使用に適した高純度有機金属化合物の分析用処理液を提供することができる。又、当該処理液を用いた高純度有機金属化合物中の微量不純物の分析方法を提供することもできる。更に、本発明により、特定の分析を経ることで、前記微量不純物を含んでいないことが確実に保証されうる極めて信頼性の高い高純度有機金属化合物を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(高純度有機金属化合物の分析用処理液)
本発明の高純度有機金属化合物の分析用処理液は、高純度有機金属化合物を無機酸水溶液と有機溶媒とで分解処理した後、酸性水溶液を用いて金属濃度を0.001〜1質量%にすることによって調製される。
【0015】
本発明の高純度有機金属化合物とは、金属と炭素とが直接化学結合している化合物(例えば、アルキル金属等)のみならず、酸素やリン等のヘテロ原子を介してできる広義の有機金属化合物(例えば、金属−アセチルアセトナト錯体等)を含み、純度が99.99%以上である、例えば、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム等の有機ガリウム化合物;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物;トリメチルインジウム等の有機インジウム化合物;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛等の有機亜鉛化合物;ジエチルマグネシウム、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)マグネシウム等の有機マグネシウム化合物が好適に適用される。
【0016】
本発明の分解処理液(高純度有機金属化合物の分析用処理液)の調製においては、高純度有機金属化合物を無機酸水溶液と有機溶媒とで分解処理する必要がある。前記無機酸としては、当該有機金属化合物が分解して金属無機酸塩となるものならば特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられるが、好ましくは塩酸、硝酸が使用される。なお、これらの無機酸は単独又は二種以上を混合して使用することもでき、上記無機酸を使用することで微量不純物の分析誤差が少なくなる。
【0017】
前記無機酸水溶液の濃度は、前記金属無機酸塩が水に溶解するものであれば、無機酸水溶液の濃度は特に限定されず、その使用量は適宜調節する。
【0018】
前記有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン(各種異性体を含む)等の芳香族炭化水素類が使用されるが、好ましくは芳香族炭化水素類、更に好ましくはトルエン、キシレンが使用される。なお、これらの有機溶媒は単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0019】
前記有機溶媒の使用量は、高純度有機金属化合物を実質的に溶解させる量ならば特に制限されず、有機溶媒の種類により適宜決定する。
【0020】
本発明の分解処理温度は特に制限されず、通常は室温で行うが、反応熱により溶液の温度上昇が確認される場合もある。
【0021】
前記の分解処理により得られた高純度有機金属化合物の分析用処理液は、酸性水溶液を用いて金属濃度を0.001〜1質量%とするが、工業的規模においては、好ましくは0.005〜0.5質量%、更に好ましくは0.01〜0.25質量%とする。当該濃度範囲とすることで分析誤差が少なくなる。なお、この濃度に希釈しても工業的には特段大きな容量とはならないため好適に使用できる。
【0022】
前記酸性水溶液としては、分解処理によって得られた金属無機酸塩を析出させずに希釈させるものならば特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられるが、好ましくは塩酸、硝酸が使用される。なお、前記分解の際に使用した無機酸水溶液と同一であっても異なっていても良く、単独又は二種以上を混合して使用しても良く、上記無機酸を使用することで微量不純物の分析誤差が少なくなる。
【0023】
前記酸性水溶液の濃度は、金属塩等を析出させない均一な希釈液(金属濃度が0.001〜1質量%である)となる濃度、量であれば特に制限されない。
【0024】
本発明の高純度有機金属化合物の分析用処理液の最良の形態は、高純度有機金属化合物を希塩酸(5〜37%)と芳香族炭化水素で分解処理した後、硝酸(60〜80%)を加えて最終的な金属濃度を0.001〜1質量%、好ましくは0.005〜0.5質量%、更に好ましくは0.01〜0.25質量%としたものである。
【0025】
以上の操作により、高純度有機金属化合物の微量分解不純物を分析するのに適した高純度有機金属化合物の分析用処理液を製造することができる。当該処理液は、高純度有機金属化合物中の微量不純物の分析用液体として極めて有用である。
【0026】
(高純度有機金属化合物中の微量不純物の分析)
本発明の高純度有機金属化合物中の微量不純物の分析は、前記の高純度有機金属化合物の分析用処理液を用いて、標準添加法によりICP質量分析することによって行われる。
【0027】
標準添加法とは、共存物質の影響を受ける系や検量線が直線にならないような場合、未知試料に一定量の既知濃度の標準物質を添加して検量線の系列を作成し、この関係線から未知試料の濃度を定量する方法をいう。
【0028】
本発明においては、酸性水溶液のブランク(例えば、1%酸性水溶液)及び濃度の異なる複数の既知の標準試料(濃度は適宜調整するが、例えば、質量ppbオーダー)を準備し、順次分析対象物(高純度有機金属化合物の分析用処理液)に加えて関係式を導き微量不純物を定量する方法が好適に使用される。
【0029】
本発明におけるICP質量分析は、一般的なICP質量分析装置で行うことができ、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、カドミウム、クロム、銅、鉄、コバルト、ニッケル、マグネシウム、マンガン、亜鉛等の従来分析されていた微量不純物の以外にも、スズ、水銀、ガリウム、銀、ホウ素、ベリリウム、バリウム、ストロンチウム、トリウム、ウラン、タングステン、リチウムを定量分析することができ、特にスズ、水銀の定量分析を精度良く行うことが可能である。なお、ICP質量分析に必要な条件については、分析対象物により適宜調節する。
【0030】
(前記の分析工程を経て合格品とされた高純度有機金属化合物)
本発明の高純度有機金属化合物は、全微量不純物の合計値が1質量ppm以下であり、スズが0.2質量ppm以下で、且つ水銀が0.2質量ppm以下である高純度有機金属化合物である。
【0031】
更に詳しく言えば、高純度有機金属化合物を無機酸水溶液と有機溶媒とで分解処理し、酸性水溶液を用いて金属濃度が0.001〜1質量%である高純度有機金属化合物の分析用処理液を得た後、標準添加法によりICP質量分析することを経て、全微量不純物の合計値が1質量ppm以下であり、スズが0.2質量ppm以下で、且つ水銀が0.2質量ppm以下であることにより合格品とされた高純度有機金属化合物である。
【0032】
従って、本発明の分析方法で得られた高純度有機金属化合物は、前記微量不純物を含んでいないことが確実に保証されうる極めて信頼性の高い高純度有機金属化合物である。
【実施例】
【0033】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。なお、使用した分析装置は以下の通りである。
分析装置;ICP質量分析装置 ELAN(登録商標) DRC II
(パーキンエルマージャパン社製)
【0034】
なお、ICP質量分析における分析条件は以下の通りである。
(分析条件設定)
設定パラメータ:プラズマ出力1600、ネブライザーガス流量0.9
補助ガス流量1.2(標準)、プラズマガス流量17(標準)
最適化パラメータ:レンズ電圧
試料導入系:マイクロフロータイプ導入系(PFA−20)
【0035】
又、分析精度の指標となる回収率は下記の式で算出した。
【0036】

【0037】
実施例1−1(高純度トリメチルインジウムの分析用処理液の調製)
アルゴン雰囲気にて、高純度トリメチルインジウム(宇部興産株式会社製)5gをm−キシレン10mlに溶解させた溶液と30%塩酸12mlを混合し、60℃で1時間攪拌させた。攪拌終了後、分液して高純度トリメチルインジウムの分析用処理液(水層)を得た。
【0038】
実施例1−2(高純度トリメチルインジウム中の微量不純物の分析)
【0039】
(標準添加法による定量のための検量線の作成)
実施例1−1で得られた分析用処理液400μlと70%硝酸200μlとを混合した。次いで、前記混合液に、各種汎用混合標準液(XSTC−13(SPEX社製))を超純水で希釈し、70%硝酸を加えて1%硝酸溶液となるように調製した希釈混合標準液及びスズ標準液(202−16311(WAKO社製))を各々100μl加えた後、更に超純水を添加して全量を20gとした(0.5質量ppb標準添加試料)。同様な操作により1.0質量ppb標準添加試料も調製した。又、70%硝酸200μlと超純水とを混合して全量を20gとしたものをブランク試料とした。
上記の3試料のICP質量分析により得られた値を用いて標準添加法による定量のための検量線(以下、単に検量線と称することもある)を作成した。ここで、検量線の精度は標準添加試料の数に依存し、多くの標準添加試料を用いることでより高精度の検量線を作成できるが、一般的には3〜5つの標準添加試料を用いることで微量不純物の正確な分析が十分可能な検量線を作成できる。
なお、空試験試料(分解処理物が入っていない)も同様な方法で調製して、空試験用検量線も作成した。
(微量不純物の分析)
実施例1−1で得られた分析用処理液400μlと70%硝酸200μlとを混合した。これに、超純水を添加して全量を20gとして測定用試料を調製した(分析用処理液のインジウム濃度;0.12質量%)。当該試料をICP質量分析した後、検量線を用いて微量不純物の値を算出した(測定値A)。なお、分析用処理液の希釈倍率(C)は12、分析試料の希釈倍率(D)は50とし、これにより前記回収率の算出と微量不純物の定量を行った。
【0040】
その結果、各金属の回収率はほぼ100%と高い値を示し、当該分析は高い精度であることが分かる。又、全微量不純物の合計値は1質量ppm以下であった(純度99.9999%以上)。又、スズは0.1質量ppm以下、水銀は0.06質量ppm以下であり、今まで正確な微量不純物として定量分析が困難であったスズ及び水銀が精度良く定量できた。
【0041】
実施例2(高純度トリメチルガリウム中の微量不純物の分析)
実施例1において高純度有機金属化合物を高純度トリメチルガリウム(宇部興産株式会社製)変えたこと以外は、実施例1と同様に分析用処理液を得、次いで実施例2と同様に微量不純物の分析を行った(分析用処理液のガリウム濃度;0.20質量%)。
その結果、回収率はほぼ100%と高い値を示し、当該分析は高い精度であることが分かる。又、全微量不純物の合計値は1質量ppm以下であった(純度99.9999%以上)。又、スズは0.05質量ppm以下、水銀は0.03質量ppm以下であり、今まで正確な微量不純物として定量分析が困難であったスズ及び水銀が精度良く定量できた。
【0042】
実施例3(高純度トリエチルガリウム中の微量不純物の分析)
実施例1において高純度有機金属化合物を高純度トリエチルガリウム(宇部興産株式会社製)変えたこと以外は、実施例1と同様に分析用処理液を得、次いで実施例2と同様に微量不純物の分析を行った(分析用処理液のガリウム濃度;0.15質量%)。
その結果、回収率はほぼ100%と高い値を示し、当該分析は高い精度であることが分かる。又、全微量不純物の合計値は1質量ppm以下であった(純度99.9999%以上)。又、スズは0.05質量ppm以下、水銀は0.03質量ppm以下であり、今まで正確な微量不純物として定量分析が困難であったスズ及び水銀が精度良く定量できた。
【0043】
実施例4(高純度トリメチルアルミニウム中の微量不純物の分析)
実施例1において高純度有機金属化合物を高純度トリメチルアルミニウム(宇部興産株式会社製)変えたこと以外は、実施例1と同様に分析用処理液を得、次いで実施例2と同様に微量不純物の分析を行った(分析用処理液のアルミニウム濃度;0.12質量%)。
その結果、回収率はほぼ100%と高い値を示し、当該分析は高い精度であることが分かる。又、全微量不純物の合計値は1質量ppm以下であった(純度99.9999%以上)。又、スズは0.03質量ppm以下、水銀は0.11質量ppm以下であり、今まで正確な微量不純物として定量分析が困難であったスズ及び水銀が精度良く定量できた。
【0044】
実施例5(高純度トリエチルアルミニウム中の微量不純物の分析)
実施例1において高純度有機金属化合物を高純度トリエチルアルミニウム(宇部興産株式会社製)変えたこと以外は、実施例1と同様に分析用処理液を得、次いで実施例2と同様に微量不純物の分析を行った(分析用処理液のアルミニウム濃度;0.08質量%)。
その結果、回収率はほぼ100%と高い値を示し、当該分析は高い精度であることが分かる。又、全微量不純物の合計値は1質量ppm以下であった(純度99.9999%以上)。又、スズは0.03質量ppm以下、水銀は0.11質量ppm以下であり、今まで正確な微量不純物として定量分析が困難であったスズ及び水銀が精度良く定量できた。
【0045】
実施例6(高純度ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム中の微量不純物の分析)
実施例1において高純度有機金属化合物を高純度ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(宇部興産株式会社製)変えたこと以外は、実施例1と同様に分析用処理液を得、次いで実施例2と同様に微量不純物の分析を行った(分析用処理液のマグネシウム濃度;0.02質量%)。
その結果、回収率はほぼ100%と高い値を示し、当該分析は高い精度であることが分かる。又、全微量不純物の合計値は1質量ppm以下であった(純度99.999%以上)。又、スズは0.15質量ppm以下、水銀は0.08質量ppm以下であり、今まで正確な微量不純物として定量分析が困難であったスズ及び水銀が精度良く定量できた。
【0046】
実施例7(高純度ジメチル亜鉛中の微量不純物の分析)
実施例1において高純度有機金属化合物を高純度ジメチル亜鉛(宇部興産株式会社製)変えたこと以外は、実施例1と同様に分析用処理液を得、次いで実施例2と同様に微量不純物の分析を行った(分析用処理液の亜鉛濃度;0.23質量%)。
その結果、回収率はほぼ100%と高い値を示し、当該分析は高い精度であることが分かる。又、全微量不純物の合計値は1質量ppm以下であった(純度99.9999%以上)。又、スズは0.05質量ppm以下、水銀は0.03質量ppm以下であり、今まで正確な微量不純物として定量分析が困難であったスズ及び水銀が精度良く定量できた。
【0047】
実施例8(高純度ジエチル亜鉛中の微量不純物の分析)
実施例1において高純度有機金属化合物を高純度ジエチル亜鉛(宇部興産株式会社製)変えたこと以外は、実施例1と同様に分析用処理液を得、次いで実施例2と同様に微量不純物の分析を行った(分析用処理液の亜鉛濃度;0.18質量%)。
その結果、回収率はほぼ100%と高い値を示し、当該分析は高い精度であることが分かる。又、全微量不純物の合計値は1質量ppm以下であった(純度99.9999%以上)。又、スズは0.05質量ppm以下、水銀は0.03質量ppm以下であり、今まで正確な微量不純物として定量分析が困難であったスズ及び水銀が精度良く定量できた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により、高純度有機金属化合物の微量不純物を分析するに当たり、その使用に適した高純度有機金属化合物の分析用処理液を提供することができる。又、当該処理液を用いた高純度有機金属化合物中の微量不純物の分析方法を提供することもできる。更に、本発明により、高精度の分析を経ることで、前記微量不純物を含んでいないことが確実に保証されうる極めて信頼性の高い高純度有機金属化合物を提供することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度有機金属化合物を無機酸水溶液と有機溶媒とで分解処理した後、酸性水溶液を用いて金属濃度が0.001〜1質量%である高純度有機金属化合物の分析用処理液。
【請求項2】
請求項1記載の分析処理液を用いて、標準添加法によりICP質量分析することを特徴とする、高純度有機金属化合物中の微量不純物の分析方法。
【請求項3】
高純度有機金属化合物が、有機インジウム化合物、有機ガリウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機亜鉛化合物及び有機マグネシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の高純度有機金属化合物である請求項2乃至3のいずれかに記載の高純度有機金属化合物中の微量不純物の分析方法。
【請求項4】
全微量不純物の合計値が1質量ppm以下であり、スズが0.2質量ppm以下で、且つ水銀が0.2質量ppm以下である高純度有機金属化合物。
【請求項5】
高純度有機金属化合物を無機酸水溶液と有機溶媒とで分解処理し、酸性水溶液を用いて金属濃度が0.001〜1質量%である高純度有機金属化合物の分析用処理液を得た後、標準添加法によりICP質量分析することを経て、全微量不純物の合計値が1質量ppm以下であり、スズが0.2質量ppm以下で、且つ水銀が0.2質量ppm以下であることにより合格品とされた請求項4記載の高純度有機金属化合物。
【請求項6】
高純度有機金属化合物が、有機インジウム化合物、有機ガリウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機亜鉛化合物及び有機マグネシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の高純度有機金属化合物である請求項4乃至5のいずれかに記載の高純度有機金属化合物。

【公開番号】特開2012−93320(P2012−93320A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242884(P2010−242884)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】