説明

高級脂肪族化合物を含有する水性混合体

【課題】エステル基又はカルボキシル基を有する高級脂肪族化合物を含有する水性混合体を提供する。
【解決手段】高級脂肪族化合物を含有する水性混合体Mであって、(i)エステル基又はカルボキシル基を有する炭素数12以上の少なくとも1つの高級脂肪族化合物A(その比重は1以下である)、(ii)高級脂肪族基を有しないポリオール化合物P(その比重は1より大きい)、(iii)界面活性剤S及び(iv)水からなり、該化合物P及び界面活性剤Sはいずれも水溶液として存在し、かつ該混合体Mは、ホモジナイザーによる強力撹拌処理を受けていないことを特徴とする前記水性混合体M。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高級脂肪族化合物を含有する水性混合体、その製造方法及び高級脂肪族化合物を含む飲食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は、多価不飽和脂肪酸である。その生理活性としては、記憶力増強作用・視力低下抑制作用・制癌作用(特に大腸癌、乳癌、肺癌)・血中脂質低下作用・抗血栓作用・抗アレルギー作用・抗炎症作用・抗糖尿病作用・抗痴呆効果があるとの研究成果が発表され注目されている。DHAやEPAは魚介類から抽出される油中に多く含まれており、パン、菓子、豆腐、味噌等の一般食品への添加が試みられている。一方で、最近、公的機関より、平均的日本人は、「1日当たりのDHAを300mg以上摂取すればその効果が期待できる」と研究発表されている。
DHAやEPA又はそのエステルを牛乳や豆乳、ヨーグルト等の水性液状食品に添加し、分散(乳化)することにより、DHAやEPA含有水性液状食品を得ることがことができる。しかし、DHAやEPA又はそのエステルを水性液状食品に添加し、単に分散させただけでは、DHAやEPA又はそのエステルは油性物質であるため、時間が経過すると、水性液状食品の上層に浮上してしまう。従って、DHAやEPA又はそのエステルが水性液状食品中に均一に分散した分散安定性のよい製品を得ることは非常に困難であった。
【0003】
一般的には、高級脂肪酸や高級脂肪酸エステル等の高級脂肪族化合物は、その比重が1以下の油性液体であるため、水や牛乳、豆乳、ヨーグルト等の水性液状媒体中に長時間にわたって安定的に分散(乳化)させることは非常に困難である。従って、高級脂肪族化合物を水性液状媒体に長時間にわたって安定的に分散させる技術の出現が強く要望されている。
【0004】
DHAやEPA等の不飽和脂肪酸やそれらのエステルは、その不飽和結合が酸化を受けやすいために、それを長期にわたって安定的に保存することが非常に困難である。従って、これまで、高級不飽和脂肪族化合物の酸化を長期にわたって安定的に防止し得る方法の出現が強く要望されている。
【0005】
特開2004−248593号公報には、DHAやEPAを含有する平均乳化粒子径が0.1〜0.6μmの魚油乳化物を得るために、特定の乳化剤(デカグリセリンモノステアレート及び/又はデカグリセリンモノオレート)を用いる方法が示されている。
この方法の場合、0.1〜0.6μmという極めて微細な乳化粒子を形成させる必要があることから、その乳化装置としては、ホモジナイザー等の強力な撹拌混合装置を用いることが必要になる。このような強力な撹拌混合装置を使用する場合は、その使用に際して発生する摩擦熱や、その強力な剪断応力のために、DHAやEPAが変質を生じるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は以下の通りである。
(1)エステル基又はカルボキシル基を有する高級脂肪族化合物を含有する水性混合体Mを提供すること。
(2)該混合体Mの製造方法を提供すること。
(3)該混合体Mを含有する飲食品及びその製造方法を提供すること。
(4)粉末状の飲食品添加剤を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下に示す発明が提供される。

(1)高級脂肪族化合物を含有する水性混合体Mであって、(i)エステル基又はカルボキシル基を有する炭素数12以上の少なくとも1つの高級脂肪族化合物A(その比重は1以下である)、(ii)高級脂肪族基を含有しないポリオール化合物P(その比重は1より大きい)、(iii)界面活性剤S及び(iv)水からなり、該化合物P及び該界面活性剤Sはいずれも水溶液として存在し、かつ該混合体Mは、ホモジナイザーによる強力撹拌処理を受けていないことを特徴とする混合体M。

(2)該水の割合が、該化合物Pに対して50重量%以下であることを特徴とする(1)に記載の混合体M。

(3)該水の割合が、該化合物Pに対して30重量%以下であることを特徴とする(1)に記載の混合体M。

(4)該界面活性剤Sの割合が、該化合物Aに対して20重量%以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の混合体M。

(5)該混合体Mが、該化合物Aを、該化合物Pの水溶液と、該界面活性剤Sの水溶液との混合物に回転数6000rpm以下の条件で撹拌混合することによって形成されたものであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の混合体M。

(6)該混合体Mが、該化合物A、該化合物Pの水溶液及び該界面活性剤Sの水溶液を回転数6000rpm以下の条件で撹拌混合して形成されたものであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の混合体M。

(7)該化合物Aが、脂肪酸エステルであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の混合体M。

(8)該脂肪酸エステルが、不飽和脂肪酸エステルからなるか又は不飽和脂肪酸エステルを含有する脂肪酸エステルであることを特徴とする(7)に記載の混合体M。

(9)該不飽和脂肪酸エステルが、ドコサヘキサエン酸(DHA)のエステル及び/又はエイコサペンタエン酸(EPA)そのエステルであることを特徴とする(8)に記載の混合体M。

(10)該化合物Aが、植物油及び/又は動物油からなることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の混合体M。

(11)該化合物Aが、ドコサヘキサエン酸エステル及び/又はエイコサペンタエン酸エステルを含有する魚油からなることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載の混合体M。

(12)該魚油中のドコサヘキサエン酸成分の割合が、魚油中に含まれる全脂肪酸に対する割合で、10〜40重量%であることを特徴とする(11)に記載の混合体M。

(13)該化合物Pが、糖化合物及び/又はグリセリン化合物からなることを特徴とする(1)〜(12)のいずれかに記載の混合体M。

(14)該糖化合物が、糖又は糖アルコールからなることを特徴とする(13)に記載の混合体M。

(15)該糖化合物が、マルチトール又はソルビトールからなることを特徴とする(13)に記載の混合体M。

(16)該界面活性剤Sが、ノニオン性界面活性剤及び/又はイオン性界面活性剤からなることを特徴とする(1)〜(15)のいずれかに記載の混合体M。

(17)該界面活性剤Sが、ポリグリセンエステル系界面活性剤からなることを特徴とする(1)〜(15)のいずれかに記載の混合体M。

(18)該界面活性剤Sが、ポリグリセリンの高級脂肪酸エステルEとレシチンLとの混合物からなることを特徴とする(1)〜(17)のいずれかに記載の混合体M。

(19)該レシチンLと該エステルEとの重量比[L]/[E]が、0.1〜0.9であることを特徴とする(18)に記載の混合体M。

(20)高級脂肪族化合物を含有する水性混合体Mであって、(i)エステル基を有する炭素数12以上の少なくとも1つの高級脂肪族化合物A(その比重は1以下である)、(ii)ポリオール化合物P(その比重は1より大きい)及び(iii)水からなり、該化合物Pは水溶液として存在し、かつ該混合体Mは、ホモジナイザーによる強力撹拌処理を受けていないことを特徴とする混合体M。

(21)該水の割合が、該混合物Pに対して50重量%以下であることを特徴とする(20)に記載の混合体M。

(22)該水の割合が、該化合物Pに対して30重量%以下であることを特徴とする(20)に記載の混合体M。

(23)該混合体Mが、該化合物Aと該化合物Pの水溶液とを回転数6000rpm以下の条件で撹拌混合することによって形成されたものであることを特徴とする(20)〜(22)のいずれかに記載の混合体M。

(24)該化合物Aが、不飽和脂肪酸エステル又はそれを含有する脂肪酸エステルであることを特徴とする(20)〜(23)のいすれかに記載の混合体M。

(25)該不飽和脂肪酸エステルが、ドコサヘキサエン酸(DHA)のエステル及び/又はエイコサペンタエン酸(EPA)のエステルであることを特徴とする(24)に記載の混合体M。

(26)高級脂肪族化合物を含有する水性混合体Mであって、(i)カルボキシル基を有する炭素数12以上の少なくとも1つの高級脂肪族化合物A(その比重は1以下である)、(ii)グリセリン化合物P(その比重は1より大きい)及び(iii)水からなり、該化合物Pは水溶液として存在し、かつ該混合体Mは、ホモジナイザーによる強力撹拌処理を受けていないことを特徴とする混合体M。

(27)該水の割合が、該化合物Pに対して50重量%以下であることを特徴とする(26)に記載の混合体M。

(28)該水の割合が、該化合物Pに対して30重量%以下であることを特徴とする(26)に記載の混合体M。

(29)該混合体Mが、該化合物Aと、該化合物Pの水溶液とを回転数6000rpm以下の条件で撹拌混合することによって形成されたものであることを特徴とする(26)〜(28)のいずれかに記載の混合体M。

(30)該化合物Aが、不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸を含有する脂肪酸であることを特徴とする(26)〜(29)のいずれかに記載の混合体M。

(31)該グリセリン化合物Pが、グリセリン又はポリグリセリンからなることを特徴とする(26)〜(30)のいずれかに記載の混合体M。

(32)該グリセリン化合物Pが、ポリグリセリンの高級脂肪酸エステルからなることを特徴とする(26)〜(30)のいずれかに記載の混合体M。

(33)レシチンを含有する(32)に記載の混合体M。

(34)カテキン化合物を含むことを特徴とする(1)〜(33)のいずれかに記載の混合体M。

(35)比重が1.01〜2.0であることを特徴とする(1)〜(34)のいずれかに記載の混合体M。

(36)高級脂肪族化合物を含有する水性混合体Mの製造方法であって、(i)エステル基又はカルボキシル基を有する炭素数12以上の少なくとも1つの高級脂肪族化合物A(その比重は1以下である)を、(ii)高級脂肪族基を有しないポリオール化合物P(その比重は1より大きい)の水溶液と界面活性剤Sの水溶液との混合物に常温ないし75℃の温度において、回転数6000rpm以下の条件で撹拌混合することを特徴とする前記の方法。

(37)高級脂肪族化合物を含有する水性混合体Mの製造方法であって、(i)エステル基又はカルボキシル基を有する炭素数12以上の少なくとも1つの高級脂肪族化合物A(その比重は1以下である)と(ii)高級脂肪族基を有しないポリオール化合物P(その比重は1より大きい)の水溶液と、(iii)界面活性剤Sの水溶液とを、常温ないし75℃の温度において、回転数6000rpm以下の条件で撹拌混合することを特徴とする前記の方法。

(38)(1)〜(35)のいずれかに記載の混合体M又はそれを含む液状媒体を、水溶性高分子物質の存在下又は非存在下でスプレードライ又は真空ドライして形成された粉体からなる飲食品用添加剤。

(39)(1)〜(35)のいずれかに記載の混合体M又は(38)に記載の添加剤を含有することを特徴とする高級脂肪族化合物を含有する飲食品。

(40)該飲食品が、飲料水又は水溶性液状食品であることを特徴とする(39)に記載の飲食品。

(41)該飲食品が、水分を含む固体状又は半固体状の食品であることを特徴とする(39)に記載の飲食品。

(42)加熱殺菌工程を含む飲料水の製造方法において、原料水に対して、(1)〜(35)のいずれかに記載の混合体M又は(38)に記載の添加剤を撹拌混合する工程と、該原料水に対して、ポリグリセリン系界面活性剤を撹拌混合する工程を含むことを特徴とする高級脂肪族化合物を含有する飲料水の製造方法。

(43)加熱殺菌工程を含む水性液状食品の製造方法において、液状原料に対して(1)〜(35)のいずれかに記載の混合体M又は(38)に記載の添加剤を撹拌混合する工程と、液状原料に対して、ポリグリセリン系界面活性剤を撹拌混合する工程を含むことを特徴とする高級脂肪族化合物を含有する水性液状食品の製造方法。

(44)炊飯に際して用いる添加剤であって、(i)エステル基又はカルボキシル基を有する炭素数12以上の少なくとも1つの高級脂肪族化合物A(その比重は1以下である)の水溶液と(ii)ポリグリセリンの高級脂肪酸エステル(その比重は1より大きい)の水溶液とを、撹拌速度6000rpm以下の条件で撹拌混合して形成した混合体Mからなることを特徴とする炊飯用添加剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高級脂肪族化合物を含有する水性混合体Mが提供される。
また、本発明によれば、該混合体Mの有利な製造方法提供される。さらに本発明によれば、高級脂肪族化合物を含有する水分散性のよい粉末状食品添加剤が提供される。さらにまた、本発明によれば、該混合体Mを含有する飲食品及びその有利な製造方法が提供される。さらにまた、本発明によれば、該混合体Mを含有する固体状ないし半固体状の食品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における高級脂肪族化合物Aは、カルボキシル基(−COOH)又はエステル基(−COOR、R:アルコール残基)を有するものである。
本発明で用いる高級脂肪族化合物A(RCOOX、Xは水素又はアルコール残基)において、その炭素数(RC)は12以上であり、その上限値は、特に制限されないが、通常、24程度である。本明細書で言う高級脂肪族化合物とは、このような化合物を意味する。
【0010】
本発明で用いる該高級脂肪族化合物Aは、飽和脂肪族化合物であってもよいし、不飽和脂肪族化合物であってもよく、それらの混合物であってもよい。また、該高級脂肪族化合物Aは、少なくとも2種の高級脂肪族化合物の混合物であることができる。例えば、このような混合物としては、少なくとも2種の高級脂肪酸エステルの混合物、少なくとも2種の高級脂肪酸の混合物、高級脂肪酸エステルと高級脂肪酸との混合物、高級飽和脂肪酸エステルと高級不飽和脂肪酸エステルとの混合物、少なくとも2種の高級不飽和脂肪酸エステルの混合物等が挙げられる。
【0011】
本発明で用いる前記高級脂肪族化合物A、又はその混合物において、その融点は好ましくは90℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは0℃以下である。該高級脂肪族化合物A又はその混合物は、常温において、液状又はペースト状あるいは半固体状を示すものであることが好ましい。本発明の場合、使用する高級脂肪族化合物Aが常温において固体の場合には、該化合物よりも融点の低い高級脂肪族化合物を混合して融点が所要の温度に降下された常温において液状ないしペースト状の混合物として好ましく使用することができる。
本発明で用いる高級脂肪族化合物Aの具体例としては、例えば、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等の不飽和脂肪酸又はそれら脂肪酸エステルの他、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、アラキン酸等の飽和脂肪酸の他、それら脂肪酸のエステル等が挙げられる。
【0012】
該高級脂肪酸エステルには、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル等の炭素数1〜6、好ましくは1〜3のアルキルエステルや、グリセリンのモノエステル、ジエステル、トリエステル(トリグリセライド)等のグリセリンエステルが包含される。
【0013】
本発明で用いる高級脂肪族化合物Aは、植物油や動物油等の油脂(脂肪酸トリグリセリド)であることができる。このような油脂としては、例えば、魚油(マグロ油、イワシ油等)、オリーブ油、大豆油、ナタネ油、ヒマシ油、コーン油、アマニ油、牛脂、綿実油、ココナッツ油、メンハーディン油、シソ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、硬化油、キリ油等が挙げられる。
【0014】
本発明で用いるポリオール化合物Pは、分子中に水酸基を少なくとも2つ、好ましくは3つ以上、より好ましくは5つ以上有するものであり、その水酸基の数の上限値は特に制約されない。このようなポリオール化合物Pには、各種の糖化合物(例えば、単糖、オリゴ糖(トレハロース、ショ糖、乳糖、麦芽糖、ゼロビオース糖)、多糖、糖アルコール等)及び各種のグリセリン化合物が包含される。その具体例を示すと、例えば、グリセリン、ポリグリセリン、グルコース、D−グルコサミン、フルリトース、リボース、キシロース、マルトース、還元糖水あめ、糖みつ、でんぷん糖、アルギン酸、キトサン、ソルビトール(ソルビット)、マンニトール、マルチトール、キシリトール、イノシトール等が挙げられる。本発明においては、それらポリオール化合物は、混合物の形態で好ましく用いることができる。例えば、ソルビトール/グリセリン混合物、マルチトール/ポリグリセリン混合物、グリセリン/グルコース混合物、マルチトール/グリセリン混合物、マルチトール/グルコース混合物等が挙げられる。
本発明においては、ポリグリセリンの使用が好ましい。このポリグリセリンにおいて、その重合度は2以上、好ましくは5以上、より好ましくは8以上であり、その上限値は特に制約されないが、通常、20程度である。本発明においては、特に、重合度8〜15のポリグリセリンを有利に用いることができる。このポリグリセリンは、前記高級脂肪族化合物Aに対する結合力が強く、その結合力の弱いポリオール化合物P(1)にポリグリセリンを混入させることにより、結合力の高められたポリオールP(1)混合物を得ることができる。このポリオールP(1)混合物において、ポリオールP(1)としては、グルコースやショ糖、ソルビトール、マルチトール等の糖化合物が包含される。ポリグリセリン混入量は、全ポリオール化合物P中、5重量%以上、好ましくは15重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。その上限値は特に制約されないが、通常50〜90重量%程度である。
【0015】
本発明においては、前記ポリオール化合物Pは、水溶液として用いられる。このポリオール化合物水溶液において、その水の含有量は、50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。ポリオール化合物Pの含有量は50重量%以上であり、その上限値は飽和濃度である。ポリオール化合物Pは、高級脂肪族化合物Aと一体的に会合(結合)し、該化合物の比重調節剤として作用するとともに、化合物A を包囲し、化合物Aを酸化から防止するための保護剤として作用するものである。該ポリオール化合物水溶液の比重は、そのポリオール化合物Pの種類及びその濃度で調節することができる。
【0016】
本発明においては、前記少なくとも1種の高級脂肪族化合物Aは、該ポリオール化合物Pの水溶液との混合体Mに形成される。この混合体Mを形成するには、該高級脂肪族化合物又はその混合物を、ポリオール化合物Pの常温ないし加熱下で撹拌混合する。この場合、撹拌混合温度は、該高級脂肪族化合物A又はその混合物が撹拌に適した液状ないしペースト状を示す温度であり、通常、50〜70%である。
【0017】
このようにして得られる混合体Mにおいて、その高級脂肪族化合物Aとポリオール化合物Pは一体的に結合(会合)したもので、1つの分子のように挙動する。この場合の結合は、水素結合によるものと考えられる。また、混合体M中に存在する水は、結合水や構造水のように挙動する。
なお、高級脂肪族化合物Aとポリオール化合物Pとが一体に結合していることは、前記混合体Mを水中に投入したときに、その高級脂肪族化合物Aが実質上水面上に浮上しないことによって確認することができる。
【0018】
混合体M中には、必要に応じ、各種の親水性物質を含有させることができる。このような物質には、酸化防止剤、界面活性剤(乳化剤)、pH調整剤、粘性調節剤等が包含される。本発明では、酸化防止剤として、トコフェロールやポリフェノール(カテキン化合物等)、パルミトイル−アスコルビン酸等を好ましく用いることができる。カテキン化合物の具体例としては、茶カテキン等がある。
【0019】
該高級脂肪族化合物Aと該ポリオール化合物Pの水溶液との混合割合は、両者の混合体Mが水中に安定に存在し得るような割合であればよい。一般的には、ポリオール化合物水溶液は、該高級脂肪族化合物1重量部当り、ポリオール化合物Pが0.5〜5重量部、好ましくは1.2〜4重量部、より好ましくは1.5〜3重量部となる割合である。ポリオール化合物Pと高脂肪族化合物Aとの重量比[P]/[A]は、0.5〜5、好ましくは1.2〜4、より好ましくは1.5〜3の範囲にするのがよい。
【0020】
次に本発明の混合体Mの製造方法について詳述する。
高級脂肪族化合物Aとポリオール化合物Pと水からなり、界面活性剤Sを含有しない混合体M(以下M(I)とも言う)を製造するには、該化合物Aと該化合物Pの水溶液とを撹拌混合する。この場合、撹拌混合装置としては、その回転速度が6000rpm以下、好ましくは、2000rpm以下、より好ましくは1000rpm以下、特に好ましくは500rpm下の低速撹拌混合装置が用いられる。化合物Aの濃度が高い混合物に対して、ホモジナイザー等の高剪断応力を与える高速の撹拌混合装置を使用することは好ましくない。高級脂肪族化合物AがDHAやEPA等の不飽和脂肪酸やそのエステル等の熱や剪断応力、酸化反応等により変質を生じやすいものである場合、その撹拌混合にそのような高速撹拌混合装置を用いると、その高速撹拌により発生する高剪断応力や摩擦熱により、該不飽和化合物は変質を生じ、さらに、該不飽和化合物は外気(空気)や溶存酸素と強く接触するので、酸化による変質も生じる。しかも、強力な撹拌混合により、液状の該不飽和化合物は、高表面積の微細粒子化されるため、酸化による変質は一層大きくなる。その結果、該不飽和化合物の変質による不快臭が生じるようになる。
前記撹拌混合温度は、低い方が好ましいが、一般的には、常温〜75℃であり、好ましくは50〜70℃、より好ましくは40〜65℃である。
【0021】
本発明における撹拌混合は、撹拌速度を連続的又は間欠的に徐々に上昇させるように実施するのが好ましい。例えば、この撹拌混合は、以下のようにして実施することが好ましい。例えば、撹拌を500rpm以下の撹拌速度で開始し、この条件で所定時間(0.3〜5分、好ましくは0.5〜2分)撹拌を行った後、連続的又は間欠的に所定撹拌速度(800〜6000rpm)まで撹拌速度を上げ、この撹拌条件で所定時間(0.5〜5分、好ましくは0.8〜3分)撹拌を行う。
前記のようにして得られる混合体M(I)は、油性の高級脂肪族化合物Aを含有するものでありながら、水中滞在性(保持性)のよいものである。このものは、水中に投入すれば、水面に浮上分離することなく、水底に油性液球状で保持される。撹拌すれば、該混合体M(I)は、微粒子となり、水中に分散されるが、撹拌を停止すれば、再び水底に沈降する。この場合、混合体Mを投入する水中に界面活性剤を存在させると、その混合体Mを水中に微粒子状態で分散させることができる。
この混合体M(I)の比重は、1.01以上、好ましくは1.02以上、好ましくは1.05以上で、その上限値は2.0程度である。
混合体M(I)は、これを水中に投入すると、水中の底部に油性の液球となって保持される。従って、この混合体M(I)は、これを水を含む固体状や半固体状の食品に含有させると、該混合体は表面に浮上分離されることなく、食品中に安定的に保持される。従って、大気との接触が防止され、混合体M(I)の酸化による変質が効果的に防止される。
【0022】
本発明においては、該混合体M(I)は、水中に濃度20重量%以上、好ましくは30重量%以上の割合で保持した液状体として用いるのが好ましい。この場合、その該混合体M(I)の濃度の上限値は、通常、45重量%程度である。
このような混合体M(I)は、混合体M(I)が水よりも比重が大きく、水中に保持されていることから、該混合体M(I)は外気(空気)との接触が遮断される。その結果、混合体M(I)の酸化による変質が効果的に防止される。
【0023】
次に、高級脂肪族化合物Aとポリオール化合物Pと界面活性剤Sと水とからなる混合体M(以下、M(II)とも言う)を製造する方法を示すと、化合物Aを、ポリオール化合物Pの水溶液と界面活性剤Sの水溶液との混合物に撹拌混合する方法(方法A)や、化合物Aと、化合物Pの水溶液と、界面活性剤Sの水溶液とを同時に撹拌混合する方法(方法B)等がある。
前記方法A及び方法Bにおいて用いる撹拌混合装置及び撹拌条件は、前記混合体M(I)の製造方法に関連して示したのと同様である。
該混合体M(II)を製造する場合に用いる界面活性剤Sとしては、混合体M(II)の形成を妨げないものであれば任意のものを用いることができる。このような界面活性剤Sには、イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が包含される。又、イオン性界面活性剤には、アニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤が包含される。
【0024】
混合体M(II)を食品添加剤として用いる場合には、該界面活性剤としては、可食性のもの、例えば、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。本発明においては非イオン性界面活性剤であるポリグリセン系界面活性剤を好ましく用いることができる。このものは重合度2〜20、好ましくは5〜15のポリグリセンに炭素数12〜24、好ましくは16〜20の高級脂肪族基を1〜3個導入したものである。
本発明においては、このポリグリセン系界面活性剤は、イオン性界面活性剤であるレシチンとの混合物として用いるのが好ましい。この混合物において、レシチンLとポリグリセン脂肪酸エステルEの重量比[L]/[E]は、0.1〜0.9、好ましくは0.2〜0.8、より好ましくは0.4〜0.6である。
界面活性剤Sは、通常水溶液として用いられるが、この場合、その界面活性剤Sの濃度は5〜20重量%、好ましくは8〜15重量%である。この混合体M(II)において、ポリオール化合物Pの割合は、水溶液として、該高級脂肪族化合物A1重量部当り、0.5〜5重量部、好ましくは1〜3重量部、より好ましくは1.5〜2重量部となる割合である。界面活性剤Sの割合は、該高級脂肪族化合物Aに対して0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%である。水の含有量は、ポリオール化合物Pに対して、25〜50重量%、好ましくは30〜45重量%である。
この混合体M(II)の比重は、1.01以上、好ましくは、1.02以上であり、その上限値は、2.0程度である。
該混合体M(II)は、これを水や水性液状食品に加えて乳化すると、分散安定性及び保存安定性の良好な混合体M(II)の乳化微粒子を得ることができる。
【0025】
本発明においては、該混合体M(II)は、これを濃度20重量%以上の割合で分散させた分散液(乳化液)として用いるのが好ましい。該混合体M(II)の濃度の上限値は、通常45重量%程度である。
このような混合体M(II)を含む水性組成物は、混合体M(II)の比重が水の比重よりも重いため、混合体M(II)は水中に常時存在して外気(空気)との接触が遮断される。その結果、混合体M(II)の酸化による変質が効果的に防止される。
この混合体M(II)は、水分散性及び乳化粒子形成性のすぐれたものであり、これを水中に投入し撹拌すると、水中に微細粒子となって分散する。この状態はその撹拌を停止しても、長時間にわたって保持される。
この混合体M(II)は、水分散性及び乳化粒子形成性のよいものであるから、これを水性液状媒体に添加混合することにより、該混合体M(II)を乳化粒子状で含有する水性組成物を得ることができる。
【0026】
前記混合体M(I)及び混合体M(II)には、親水性物質を含有させることができる。このような物質には、酸化防止剤、pH調節剤、粘性調節剤等が包含される。本発明においては、特に、ポリフェノール、好ましくはカテキン化合物の使用が有利である。このポリフェノール化合物の使用割合は、該高級脂肪族化合物Aに対して、5〜50重量%、好ましくは10〜25重量%である。このようなポリフェノール化合物を含む混合体M(I)及びM(II)は、その高級脂肪族化合物の酸化が効果的に防止されたものである。
【0027】
本発明の混合体M(I)において、該ポリオール化合物Pとして、ポリグリセリン系界面活性剤を用いることにより、混合体(II)と同等の作用を示す混合体M(III)を得ることができる。この場合のポリグリセリン系界面活性剤は、多数の水酸基を有することから、本発明におけるポリオール化合物Pとしても作用するものである。
【0028】
本発明によれば、前記混合体M(II)又はM(III)を各種水性液状媒体中に撹拌混合させることにより、高級脂肪族化合物Aを分散状で含有する各種水性組成物を得ることができる。この場合の撹拌混合装置としては、慣用の各種のもの、例えば、通常の撹拌混合器の他、ホモジナイザー、ホモミキサー等が挙げられる。
さらに、混合体Mを添加する相手となる前記水性液状媒体には、必要に応じ、界面活性剤、酸化防止剤、消臭剤、香料、着色剤、ビタミン、pH調整剤等の慣用の補助成分を適量加えることができる。
【0029】
前記撹拌混合温度は、混合体Mが分散しやすいように、混合体Mが液状ないしペースト状を示す温度であればよい。
なお、前記「分散」は、当然のことながら、「乳化」を包含するものである。
【0030】
前記のようにして、水性液状媒体中に該高級脂肪族化合物Aが分散した分散物(水性組成物)が得られる。この水性組成物は、前記したように、該高級脂肪族化合物Aには比重が1より大きいポリオール化合物が一体的に結合しているため、該高級脂肪族化合物Aは、その浮上分離が防止され、非常に分散安定性の良いものとなっている。
【0031】
高級脂肪族化合物Aが長時間にわたって均一に分散し、しかも表面に浮上分離することのない分散安定性のよい水性組成物を得るには、該混合体Mの比重[M]と水性液状媒体Wの比重[W]との比[M]/[W]を、1.0〜2.0、好ましくは1.01〜1.5、より好ましくは1.02〜1.2、特に好ましくは1.05〜1.15の範囲に調節するのがよい。
【0032】
本発明における水性液状媒体は、水からなるか又は水を含む各種の液状組成物である。このようなものには、飲料水、水性液状食品、水性液状化粧料、水性液状医薬品等の各種の水性組成物が包含される。
【0033】
水性液状食品は、水を含みかつ各種の栄養物やし好物等を含有するものである。このようなものには、牛乳、豆乳、ヨーグルト、しょう油、ソース、各種ジュース、お茶、乳酸菌飲料水、乳酸発酵飲料水等が包含される。これらの水性液状食品の比重は、通常、1.01以上である。
【0034】
水性液状媒体が液状食品の場合、これに分散される該高級脂肪族化合物Aは、例えば、DHAやEPA又はそれらのエステル(グリセリンエステル、エチルエステル等)であることができる。本発明では、高級脂肪族化合物Aとしては、特に、DHAやEPAを含有する魚油(マグロ油、カツオ油、イワシ油等)を用いるのが好ましい。DHAやEPAは、各種のすぐれた生理活性を有し、これらの物質を常食する食品とともに毎日接摂することは、人体の健康上非常に好ましいことである。
【0035】
魚油において、それに含まれるDHA及び/又はEPAは魚油中に含まれる全脂肪酸に対して、少なくとも5重量%、好ましくは10重量%以上であり、通常、10〜40重量%程度である。
【0036】
水性液状媒体が水性液状食品の場合、そのDHA及び/又はEPA成分の含有量は、その液状食品の種類に応じて適宜選定されるが、通常、0.1〜30重量%、好ましくは0.2〜10重量%である。
【0037】
混合体M(III)を含有する飲料水又は水性液状食品は、通常、加熱殺菌処理に付される。本発明者らの研究によれば、この加熱殺菌処理後の液状食品においては、その液体表面に微量の油分(化合物A)が浮上してくるのが観察された。この浮上分離した油分は、製品の商品価値を低下させるので、その油分の浮上分離を防止することは非常に望ましいことである。本発明者らの研究によれば、この油分の浮上分離は、混合体Mを含有させた飲料水又は水性液状食品に対して、ポリグリセリン系界面活性剤を添加することによって防止し得ることが発見された。すなわち、本発明によれば、加熱殺菌工程を含む飲料水の製造方法において、原料水に対して、混合体M又は粉体状添加剤を撹拌混合する工程と、該原料水に対して、ポリグリセリン系界面活性剤を撹拌混合する工程を含むことを特徴とする高級脂肪族化合物を含有する飲料水の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、加熱殺菌工程を含む水性液状食品の製造方法において、液状原料に対して混合体M又は粉体状添加剤を撹拌混合する工程と、液状原料に対して、ポリグリセリン系界面活性剤を撹拌混合する工程を含むことを特徴とする高級脂肪族化合物を含有する水性液状食品の製造方法が提供される。
前記ポリグリセリン系界面活性剤を飲料水や水性液状食品に混合する場合の撹拌装置としては、通常の低速撹拌機の他、強力撹拌タイプのホモジナイザーやホモミキサーを用いることができる。また、撹拌混合温度としては、50〜75℃、好ましくは55〜65℃が用いられる。ポリグリセリン系界面活性剤は水溶液として用いられ、その濃度は2〜15重量%程度である。また、その添加量は、飲料水又は水性液状食品に対して、0.2〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%程度である。
なお、前記加熱殺菌工程において、その加熱温度は、通常80〜140℃であである。
【0038】
本発明の水性組成物において、該水性液状媒体として水性液状化粧料や水性液状医薬品(例えば、水性ローションタイプの化粧料や医薬品等)を用いることによって、DHAやNPA等の高級脂肪族化合物を含有する製品を得ることができる。
【0039】
本発明によれば、水(飲料水)や各種食品に対して高級脂肪族化合物Aを添加するための添加剤として、該化合物Aを含む混合体Mが提供される。この場合、混合体Mとしては、DHA及び/又はそのエステル、あるいはEPA及び/又はそのエステル等の高級不飽和脂肪族化合物を含有するものが好ましく用いられる。
【0040】
本発明によれば、前記混合体M(I)やM(II)、M(III)を所定の飲食品又はその原料に含有させることにより、高級脂肪族化合物Aを含有する飲食品を得ることができる。
混合体M(I)は、水中に沈降する特性を有することから、水分を含む固体状、半固体状の食品用添加剤として有利に用いることができる。
混合体M(II)及びM(III)は、水中で容易に乳化微粒子を形成するので、飲料水や水性液状食品中に分散させることにより、各種の液状乳化食品を得ることができる。
【0041】
本発明によれば、米を炊いて炊飯米を作るに際して用いる添加剤が提供される、この場合の添加剤は(i)エステル基又はカルボキシル基を有する炭素数12以上の少なくとも1つの高級脂肪族化合物A(その比重は1以下である)と(ii)ポリグリセリンの高級脂肪酸エステル(その比重は1より大きい)の水溶液とを、攪拌速度6000rpm以下の条件で攪拌混合して形成した混合体Mからなる。
この添加剤を用いて得られた炊飯米はその中に高級脂肪族化合物Aが均一性よく分散したものである。
しかも、この添加剤の場合、炊飯に際して、該混合体から油分が分散するようなこともない。
【0042】
本発明によれば、前記混合体M(I)、M(II)又はM(III)あるいはそれを含む水性液状媒体を、水溶性高分子物質の存在下又は非存在下でスプレードライ又は真空ドライして形成された粉体状食品添加剤が提供される。この場合、高分子物質としては、可食性の各種のもの、例えばデンプン、タンパク質、デキストリン等が好ましく用いられる。スプレードライ法は、従来良く知られている方法であり、本発明では、一般的なスプレードライ法を好ましく用いることができる。
このスプレードライ法においては、混合体M(I)やM(II)、M(III)が水中に存在することから、高級脂肪族化合物Aの酸化による変質が防止される。高分子物質の割合は、全粉体中、1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%である。
【実施例】
【0043】
次に本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例において用いた素材は以下の通りである。
【0044】
(素材)
魚油A:比重0.9 脂肪酸組成:DHA22%以上・EPA6%以上、
計28%以上、酸価1.00以下、過酸化物価5meq/kg以下(製品名DHA−22HDH 日本水産製)
グリセリン G:比重1.26、グリセリン分99.8%。
(食品添加物用、坂本薬品工業製)
マルチトール MAL:比重1.4、還元麦芽糖水飴水溶液。水分25%(製品名MU−75、上野製薬製)
乳化剤液 E:(i)乳化剤(1)「サンソフトQ−18SW」(デカグリセリン脂肪酸エステル40%を含有するペースト状物)5%と、
(ii)乳化剤(2)「サンレシチンA−1」(酵素分解レシチン33%含有物、太陽化学株式会社製)5%と、
水90%を50〜70℃にて撹拌混合して形成した。
【0045】
実施例1
(混合体M1)
魚油A:10g、グリセリンG液:20g、水:4gを常温でミキサー(400rpm)で撹拌混合すると、DHA・EPA入りグリセリン混合体M1が30g得られた。この混合体M1は比重1.14で、その1g中のDHA・EPA含有量は93mgである。
この混合体M1の5gを100mlの水に入れると、油性の液玉になって沈み、撹拌しても撹拌停止後には再び底に沈み浮上しない。この混合体M1は、味噌、豆腐、ご飯、ソース、ドレッシング等の食品用添加剤として好適のものである。
【0046】
実施例2
(混合体M2)
魚油A:10g、マルチトールMAL:15gを常温でミキサーで撹拌混合すると、DHA・EPA入りマルチトール混合体M2が25g得られた。この混合体M2は比重1.2で、その1g中のDHA・EPA含有量は112mgである。
この混合体M2の5gを100mlの水に入れると混合体M2は油性の液玉になって沈み、撹拌して分散させても撹拌停止後には再び底に沈み浮上しない。このものは、豆腐、小豆あんこ、ジャム、味噌等の固形食品用添加剤として好適のものである。
【0047】
実施例3
(混合体M3)
魚油A(50℃):3g、グリセリンG(50℃):6g、乳化剤溶液E(60℃)2gをビーカーに加え、ミキサー(400rpm)で撹拌混合し、白く乳化した混合体M3を11g得た。この混合体M3の比重は1.12である。その1g中のDHA・EPA含有量は76mgである。得られた混合体M3は、これを急速冷蔵にて10℃以下(7℃)に冷やし、この温度で保存した。次に、この混合体M3を15℃に加温し、水に入れると、このものは、比重が1.12であり、乳化剤を含むことから、いったん底に沈むが、乳化剤の作用により、底の方から静かに水全体に分散する。この状態は完全に魚油が水に分散したことを示している。この分散液においては水の方が比重が低いため混合体の分散が水の中間で起こり、混合体は水の表面に浮き出てこない。この現象は、魚油(DHA、EPA等の不飽和脂肪酸)は水の中で安定化され、酸化防止・保存安定性・分散安定に優れている分散液を与えることを示す。又食品加工時に於いても魚油が混合体から分離し表面に浮き出てこないことから、加熱に耐え空気に触れることがない。
【0048】
実施例4
(混合体M4)
魚油A(50℃):3g、マルチトールMAL(50℃):4gをビーカーに入れ、これに60℃の乳化剤溶液E:1gを加え、ミキサー(400rpm)を用いて撹拌混合し、白く乳化した混合体M4を8g得た。これを急速冷蔵にて7℃に急冷した。この混合体(白色)M4の比重は1.18であった。この混合体M4の1g中のDHA・EPA含有量は105mgである。
この混合体の特徴は、比重が1.18でり、乳化剤を含むため、水に入れると、いったん底に沈むが、乳化剤の作用により底の方から静かに水全体に分散する。この分散液において水の方が比重が低いため混合体の分散が水の中間で起こり、混合体は表面に浮き出てこない。
この現象は、魚油(DHA、EPA等の不飽和脂肪酸)は水の中で安定化され、酸化防止・保存安定性・分散安定に優れている分散液を与えることを示している。又食品加工時に於いても魚油が混合体から分離して表面に浮き出すようなこともなく、加熱に耐え空気に触れないことで、あらゆる食品に大量のDHA、EPA等の不飽和脂肪酸を添加することが可能になった。
【0049】
実施例5
魚油A(50℃):6g、マルチトールMAL(50℃):9g及び乳化剤水溶液E:1g(60℃)を撹拌混合(400rpm)し、これを急速冷蔵にて7℃まで冷やし、白く乳化した混合体M5:17gを得た。この混合体M5の比重は1.26で、1g中のDHA・EPA含有量は99mgである。この混合体M5を常温に加温し、980gの水に加えたところ、該混合体M5はいったん底に沈むが、乳化剤の作用により底の方から静かに水全体に分散した。この場合、混合体M5は水の表面に浮き出てこない。この現象は、魚油は水の中で安定化され、酸化防止・保存安定性・分散安定に優れている分散液が得られたことを示している。
さらに味調味料としてトレハロース(温度15℃)を3g加えた後、高速ミキサーで10分撹拌した。
このようにしてDHA・EPA入り透明の乳化液(エマルジョン)1000gを得た。そのDHA・EPA含有量は乳化液100g中168mgである。このものを、パネラー:男性5人、女性5人で評価したところ、魚臭は全く感じられなかった。また、この混合体M5は、保存安定性、熱安定性にすぐれ、要冷蔵で45日静置しても、DHA・EPA含有魚油は浮上分離することなく、良好な外観を示した。また、殺菌のために、80℃20分間加熱して10℃以下で45日間保存しても、変質を生じることはなく、良好な外観を示した。
【0050】
実施例6
実施例5で得たDHA・EPA含有混合体M5:15gを常温の牛乳(滅菌120℃/2秒)490gと水490gとトレハロース4gとミルク香料(日本香料薬品製23051M)1gの混合物に添加して、ミキサー(400rpm)で撹拌し、1000gのDHA・EPA入り白色飲料を得た。次にこのものを高圧乳化機(ラボラトリーホモゲナイザー、APVゴーリン社製)による均質化(処理圧力:150kg・cm)を行った後、プレートヒーターにより80℃・10秒間の加熱滅菌後、200mlの瓶に詰め(充填量200g)、1瓶200g中DHA・EPA含有量336mgの乳飲料を5本得た。
冷蔵庫で7℃に冷やし、パネルテストに供したところ、魚臭はまったく感じられず、また市販の牛乳に似た風味であるという評価が得られた。また一方において、この乳化物を、10℃で60日間保存して分析した結果、酸価(AV)0.84、過酸化物(POV)1.75meq/kgで変質を生じることなく、良好な外観を示した。
【0051】
実施例7
精製魚油A:3g、マルチトールMAL:5gを常温で撹拌混合し、DHA・EPA入り混合体M7:8gを得た。この混合体の特徴は、水に入れると油性の液玉になって沈み、撹拌しても撹拌後には底に沈み浮上しない。
この混合体M7:8gを、1カップのお米を水で洗って、水米380gに静かに添加した。これを家庭用電気釜で炊飯した。炊飯後常温まで自然に冷やした。280gのご飯が出来た。このご飯のDHA・EPA含有量は100g中300mgである。また、魚油の働きか、艶があり、米の甘みが引き出されて美味しさが増していた。
【0052】
実施例8
(寒天ゼリー)
魚油A:6gとマルチトールMAL:8gを常温でミキサー(400rpm)で撹拌し、混合体M8:14gを得た。これを寒天ゼリー用原料粉末(北原産業株式会社製)のペースト状水溶液500g(80℃)に、静かに撹拌した後冷蔵庫にて約1時間冷やした。このようにして、100g中DHA・EPA含有量336mgの寒天ゼリーが出来た。魚油が表面に浮き出ないきれいなものである。普通のゼリーと試食して比べたところ全く区別が着かず、魚油の臭いや味は感じられなかった。魚油A:6gだけを入れた場合は、魚油が表面に浮き出て臭いが発生し、食べられるゼリーは出来なかった。
【0053】
実施例9
味噌・小豆あんこ・ジャム・豆腐・ヨーグルト等に魚油Aを添加しても油を受け付けない。しかし、魚油A:3g対マルチトールMAL:4gあるいは魚油A:3g対グリセリンG:5gの割合の混合体M9を作り、これを従来の魚油を含まない製品と味噌・小豆あんこ・ジャム・豆腐・ヨーグルト等に添加し撹拌すると、混合体は食品と良くなじみ、魚油が表面に浮き出ることはない。製品としても魚油の臭いは感じられず比較テストしても区別がつかない。
【0054】
実施例10
実施例5で得たDHA・EPA含有混合体M5:30gを常温15℃にカテキン(ポリフェノン70A、三井農林株式会社製)3.5gを加え撹拌した。DHA、EPA、カテキン含有混合体M10:33.5gを得た。
この混合体:33.5gを966.5gの水に静かに加えたところ、水の底に沈んだ後水全体に分散した。実施例5と同じ分散の状態である。さらにミキサーにて撹拌し、80℃20分間滅菌し200mlの瓶につめ冷蔵庫にて7℃に冷やした。200ml中DHA・EPA672mgカテキン(ポリフェノン)581mgのDHA・EPA入りカテキン茶の誕生である。このDHA、EPA入りカテキン茶は、痴呆症予防に効果があるという研究発表がなされている。
【0055】
実施例11
実施例6において、牛乳の代わりに、業務用豆乳を水で希釈して比重約1.02に調節したものを用いた以外は同様にして実験を行った。
この場合にも、乳化安定性のよいDHA含有乳化物が得られた。
【0056】
実施例12
実施例3において、グリセリンの代わりに、ソルビット液(D−ソルビット54%、還元でんぷん糖化物16%、水分30%、「ソルパート」、上野製薬社製)とグリセリンとの混合液(グリセリン混合比率50重量%)を用いた以外は同様にして実験を行った。この場合にも、分散安定性のよい乳化液(混合体M12)が得られた。この乳化液にも、不快臭は感じられなかった。
【0057】
実施例13
実施例2において、魚油Aの代わりに、大豆油とナタネ油の混合油を用いた以外は同様にして実験を行った。この場合にも、混合油とマルチトールMALとが結合した混合体M13が得られた。
【0058】
実施例14
100mlのビーカーに魚油A:30g、カテキン(ポリフェノン):1g及びトレハロース(味調整剤):4gを入れ、撹拌混合し、次いで50℃に加温する一方、100mlのビーカーに、マルチトールMAL:45gを入れ、50℃に加温し、さらに乳化剤水溶液E:20gを入れ、全体を60℃に加温する。
次に前記2つのビーカーの内容物を200mlのビーカーに移し全内容物(温度約53℃)をミキサーを用いて回転速度400rpmで3分間撹拌して混合体M14を形成した。
【0059】
実施例15
実施例4において、魚油Aの代わりに、オリーブ油を用いた以外は同様にして実験を行った。この場合にも、オリーブ油とマルチトールMALとが結合した混合体M15が得られた。この混合体M15も実施例4の混合体M4と同様の挙動を示した。
【0060】
比較例1
実施例3において、あらかじめ形成したマルチトールMALと乳化剤水溶液Eとの混合物に、魚油Aを加えてホモミキサー(回転速度:10000回/分)を用いて、撹拌温度を90℃にして攪拌混合以外は同様にして実験を行った。
この場合には、得られた混合体M−3’には、魚油Aの酸化による不快臭が生じていることが確認された。
【0061】
実施例16
オレイン酸(比重0.890、純度88.9%):5gとグリセリンG:10g、水:2gをミキサー(回転数400rpm)で撹拌混合して混合体M16を得た。このものは、これを水に入れると、水中に沈降し、オレイン酸/グリセリン混合体が形成されていることが確認された。
【0062】
実施例17
実施例16において、乳化剤液(2)を追加した以外は同様に実験を行って、混合体M17を得た。このものは、混合体M3と同様の挙動を示した。
【0063】
実施例18
実施例17において、乳化剤溶液(2)の代わりに界面活性剤(アルキルエーテル硫酸エステルNa)の水溶液を用いた以外は同様にして実験を行って、混合体M18を得た。この混合体M18も、混合体M17と同様の挙動を示した。
【0064】
実施例19
実施例17において、グリセリンGの代わりにマルチトールMALを用いた以外は同様にして実験を行って混合体M19を得た。この混合体M19も混合体M17と同様の挙動を示した。
【0065】
【数1】

【0066】
上記配合のマルチトールMAL混合液:32.5gをビーカーに入れハンドミキサーで次のように撹拌する。回転速度400rpmで30秒撹拌、次に回転数1200rpmで30秒撹拌、次に回転速度2000rpmで60秒撹拌して、マルチトールMAL混合液:(60℃)32.5g得た。
これに魚油A(60℃)14.3gを加えて回転速度400rpmで30秒撹拌、次に回転速度1200rpmで 60秒撹拌する。以上で46.8g(1g中のDHA・EPA含有量85.4mg)の混合体M20を得た。この混合体を評価するために、お湯200ml(90℃)中に混合体M20:3.6gを投入する。混合体は底に煙状に沈みながら分散する。撹拌しても表面に魚油は浮かばず、その品質は良しと判断された。次に牛乳1000ml(60℃)に無臭乳化DHA混合体M20:18gを入れて静かに撹拌(回転速度400rpm)する。次に乳化溶液B:5g加え30秒撹拌(回転速度400rpm)する。これを間接加熱により80℃30分間滅菌する。滅菌終了後、消毒済みの200mlの瓶に詰めて、急速にて冷蔵庫で7℃まで急速に冷やす。200mlC中308mgDHA・EPA含有のDHA牛乳5本を得た。パネルテストに供したところ、魚臭はまったく感じられず、また市販の牛乳に似た風味であるという評価が得られた。又一方において、この乳化物を、10℃で60日間保存し分析した結果、酸価(AV)0.84、過酸化物価(POV)1.75meq/kgで変質を生じることなく、良好な外観を示した。又このDHA入り牛乳を電子レンジで60℃に加温して味の変化を比較したが、魚臭はなく市販の牛乳に似た風味であるという評価が得られた。
【0067】
実施例21
実施例20で得たDHA混合体M20:28.6gを牛乳1000ml(60℃)に加え実施例20で示したようにして100ml中308mgDHA・EPA含有の牛乳1000mlを得た。この牛乳でカスピ海ヨーグルトを試作したところ、ヨーグルト100g中DHA・EPA308mgのヨーグルトが出来た。
パネルテストに供したところ、魚臭はまったく感じられず、市販のヨーグルトよりも魚油の油が作用したと思われる、酸味が少なく濃くのある風味であるという評価が得られた。
【0068】
実施例22
実施例20で示した、マルチトールMAL混合液(60℃)32.5gと魚油A:(60℃)21.5gをビーカーに入れ実施例20の方法で撹拌混合する。DHA・EPA含有量が2.72g中300mgの混合体M22を得た。
この混合体14.0gを500gのハンバーグの生地に良く混ぜ込み、100g中DHA・EPA300mg含有のハンバーグを得た。これをフライパンで調理したところ、肉汁が表面に出て、フライパンで焼かれたが全く魚臭は出なかった。
パネルテストに供したところ、魚臭は全く感じられず、市販のものと区別がつかないという評価が得られた。これを30日間冷凍したものを解凍し調理してパネルテストに供したところ市販のものと区別がつかないという評価が得られた。
混合体M22は、マルチトールが魚油を包み込んでハンバーグ内に安定に存在し、ハンバーグの中から表面に出てこないため、フライパンに魚油が触れることなく、調理でき、その結果、魚臭を発生しないものと考えられる。
【0069】
実施例23
魚油A:10gと乳化剤溶液B:5gを常温でミキサー(回転速度400rpm)で30秒間撹拌し、1.6g中DHA・EPA300mg含有の混合体M23を得た。この混合体11.9gを米370g、水370gに加え、静かにかき混ぜた。これを電気炊飯器に入れ炊飯した。炊飯中湯気からは魚臭がなく、720gのご飯が炊けた。パネルテストに供したところ、魚臭はまったく感じられず、市販のご飯と区別がつかなかった。おにぎりにして10日間冷凍し、デンシレンジで温め試食したが魚臭は全く感じなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高級脂肪族化合物を含有する水性混合体Mであって、(i)エステル基又はカルボキシル基を有する炭素数12以上の少なくとも1つの高級脂肪族化合物A(その比重は1以下である)、(ii)高級脂肪族基を含有しないポリオール化合物P(その比重は1より大きい)、(iii)界面活性剤S及び(iv)水からなり、該化合物P及び該界面活性剤Sはいずれも水溶液として存在し、かつ該混合体Mは、ホモジナイザーによる強力撹拌処理を受けていないことを特徴とする混合体M。
【請求項2】
該水の割合が、該化合物Pに対して50重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の混合体M。
【請求項3】
該水の割合が、該化合物Pに対して30重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の混合体M。
【請求項4】
該界面活性剤Sの割合が、該化合物Aに対して20重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の混合体M。
【請求項5】
該混合体Mが、該化合物Aを、該化合物Pの水溶液と、該界面活性剤Sの水溶液との混合物に回転数6000rpm以下の条件で撹拌混合することによって形成されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の混合体M。
【請求項6】
該混合体Mが、該化合物A、該化合物Pの水溶液及び該界面活性剤Sの水溶液を回転数6000rpm以下の条件で同時に撹拌混合して形成されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の混合体M。
【請求項7】
該化合物Aが、脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の混合体M。
【請求項8】
該脂肪酸エステルが、不飽和脂肪酸エステルからなるか又は不飽和脂肪族エステルを含有する脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項7に記載の混合体M。
【請求項9】
該不飽和脂肪酸エステルが、ドコサヘキサエン酸(DHA)のエステル及び/又はエイコサペンタエン酸(EPA)のエステルであることを特徴とする請求項8に記載の混合体M。
【請求項10】
該化合物Aが、植物油及び/又は動物油からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の混合体M。
【請求項11】
該化合物Aが、ドコサヘキサエン酸エステル及び/又はエイコサペンタエン酸エステルを含有する魚油からなることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の混合体M。
【請求項12】
該魚油中のドコサヘキサエン酸成分の割合が、魚油中に含まれる全脂肪酸に対する割合で、10〜40重量%であることを特徴とする請求項11に記載の混合体M。
【請求項13】
該化合物Pが、糖化合物及び/又はグリセリン化合物からなることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の混合体M。
【請求項14】
該糖化合物が、糖又は糖アルコールからなることを特徴とする請求項13に記載の混合体M。
【請求項15】
該糖化合物が、マルチトール又はソルビトールからなることを特徴とする請求項13に記載の混合体M。
【請求項16】
該界面活性剤Sが、ノニオン性界面活性剤及び/又はイオン性界面活性剤からなることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の混合体M。
【請求項17】
該界面活性剤Sが、ポリグリセンエステル系界面活性剤からなることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の混合体M。
【請求項18】
該界面活性剤Sが、ポリグリセリンの高級脂肪酸エステルEとレシチンLとの混合物からなることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の混合体M。
【請求項19】
該レシチンLと該エステルEとの重量比[L]/[E]が、0.1〜0.9であることを特徴とする請求項18に記載の混合体M。
【請求項20】
高級脂肪族化合物を含有する水性混合体Mであって、(i)エステル基を有する炭素数12以上の少なくとも1つの高級脂肪族化合物A(その比重は1以下である)、(ii)ポリオール化合物P(その比重は1より大きい)及び(iii)水からなり、該化合物Pは水溶液として存在し、かつ該混合体Mは、ホモジナイザーによる強力撹拌処理を受けていないことを特徴とする混合体M。
【請求項21】
該水の割合が、該混合物Pに対して50重量%以下であることを特徴とする請求項20に記載の混合体M。
【請求項22】
該水の割合が、該化合物Pに対して30重量%以下であることを特徴とする請求項20に記載の混合体M。
【請求項23】
該混合体Mが、該化合物Aと該化合物Pの水溶液とを回転数6000rpm以下の条件で撹拌混合することによって形成されたものであることを特徴とする請求項20〜22のいずれかに記載の混合体M。
【請求項24】
該化合物Aが、不飽和脂肪酸エステル又はそれを含有する脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項20〜23のいすれかに記載の混合体M。
【請求項25】
該不飽和脂肪酸エステルが、ドコサヘキサエン酸(DHA)のエステル及び/又はエイコサペンタエン酸(EPA)のエステルであることを特徴とする請求項24に記載の混合体M。
【請求項26】
高級脂肪族化合物を含有する水性混合体Mであって、(i)カルボキシル基を有する炭素数12以上の少なくとも1つの高級脂肪族化合物A(その比重は1以下である)、(ii)グリセリン化合物P(その比重は1より大きい)及び(iii)水からなり、該化合物Pは水溶液として存在し、かつ該混合体Mは、ホモジナイザーによる強力撹拌処理を受けていないことを特徴とする混合体M。
【請求項27】
該水の割合が、該化合物Pに対して50重量%以下であることを特徴とする請求項26に記載の混合体M。
【請求項28】
該水の割合が、該化合物Pに対して30重量%以下であることを特徴とする請求項26に記載の混合体M。
【請求項29】
該混合体Mが、該化合物Aと、該化合物Pの水溶液とを回転数6000rpm以下の条件で撹拌混合することによって形成されたものであることを特徴とする請求項26〜28のいずれかに記載の混合体M。
【請求項30】
該化合物Aが、不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸を含有する脂肪酸であることを特徴とする請求項26〜29のいずれかに記載の混合体M。
【請求項31】
該グリセリン化合物Pが、グリセリン又はポリグリセリンからなることを特徴とする請求項26〜30のいずれかに記載の混合体M。
【請求項32】
該グリセリン化合物Pが、ポリグリセリンの高級脂肪酸エステルからなることを特徴とする請求項26〜30のいずれかに記載の混合体M。
【請求項33】
レシチンを含有する請求項32に記載の混合体M。
【請求項34】
カテキン化合物を含むことを特徴とする請求項1〜33のいずれかに記載の混合体M。
【請求項35】
比重が1.01〜2.0であることを特徴とする請求項1〜34のいずれかに記載の混合体M。
【請求項36】
高級脂肪族化合物を含有する水性混合体Mの製造方法であって、(i)エステル基又はカルボキシル基を有する炭素数12以上の少なくとも1つの高級脂肪族化合物A(その比重は1以下である)を、(ii)高級脂肪族基を有しないポリオール化合物P(その比重は1より大きい)の水溶液と界面活性剤Sの水溶液との混合物に常温ないし80℃の温度において、回転数6000rpm以下の条件で撹拌混合することを特徴とする前記の方法。
【請求項37】
高級脂肪族化合物を含有する水性混合体Mの製造方法であって、(i)エステル基又はカルボキシル基を有する炭素数12以上の少なくとも1つの高級脂肪族化合物A(その比重は1以下である)と、(ii)高級脂肪族基を有しないポリオール化合物P(その比重は1より大きい)の水溶液と、(iii)界面活性剤Sの水溶液とを、常温ないし80℃の温度において、回転数6000rpm以下の条件で撹拌混合することを特徴とする前記の方法。
【請求項38】
請求項1〜35のいずれかに記載の混合体M又はそれを含む液状媒体を、水溶性高分子物質の存在下又は非存在下でスプレードライ又は真空ドライして形成された粉体からなる飲食品用添加剤。
【請求項39】
請求項1〜35のいずれかに記載の混合体M又は請求項38に記載の添加剤を含有することを特徴とする高級脂肪族化合物を含有する飲食品。
【請求項40】
該飲食品が、飲料水又は水性液状食品であることを特徴とする請求項39に記載の飲食品。
【請求項41】
該飲食品が、水分を含む固体状又は半固体状の食品であることを特徴とする請求項39に記載の飲食品。
【請求項42】
加熱殺菌工程を含む飲料水の製造方法において、原料水に対して、請求項1〜35のいずれかに記載の混合体M又は請求項38に記載の添加剤を撹拌混合する工程と、該原料水に対して、ポリグリセリン系界面活性剤を撹拌混合する工程を含むことを特徴とする高級脂肪族化合物を含有する飲料水の製造方法。
【請求項43】
加熱殺菌工程を含む水性液状食品の製造方法において、液状原料に対して請求項1〜35のいずれかに記載の混合体M又は請求項38に記載の添加剤を撹拌混合する工程と、液状原料に対して、ポリグリセリン系界面活性剤を撹拌混合する工程を含むことを特徴とする高級脂肪族化合物を含有する水性液状食品の製造方法。
【請求項44】
炊飯に際して用いる添加剤であって、(i)エステル基又はカルボキシル基を有する炭素数12以上の少なくとも1つの高級脂肪族化合物A(その比重は1以下である)の水溶液と(ii)ポリグリセリンの高級脂肪酸エステル(その比重は1より大きい)の水溶液とを、撹拌速度6000rpm以下の条件で撹拌混合して形成した混合体Mからなることを特徴とする炊飯用添加剤。

【公開番号】特開2006−296411(P2006−296411A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228052(P2005−228052)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(500579844)
【出願人】(501145295)独立行政法人食品総合研究所 (27)
【Fターム(参考)】