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高級N−アセチルキトオリゴ糖の製造方法
説明

高級N−アセチルキトオリゴ糖の製造方法

【課題】より安定な高級N−アセチルキトオリゴ糖を高効率で製造する方法を提供する。
【解決手段】低級N−アセチルキトオリゴ糖を基質とし、N−アセチルキトオリゴ糖に対して加水分解能を有する酵素を作用させて生成物として高級N−アセチルキトオリゴ糖を得る高級N−アセチルキトオリゴ糖の製造方法において、前記基質に前記酵素を作用させた後、作用させた酵素を除去する処理を施す。酵素を除去する処理は、蛋白解離剤を添加することにより行うことが好ましい。また、酵素を除去する処理は、前記酵素をイオン交換担体に吸着させることにより行うことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より安定な高級N−アセチルキトオリゴ糖を低級N−アセチルキトオリゴ糖から高効率で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N−アセチルキトオリゴ糖は、N−アセチルグルコサミンがβ−1,4結合で結合しているオリゴ糖である。N−アセチルキトオリゴ糖は、これまでに乳酸菌・ビフィズス菌増殖効果、免疫機能増強による抗腫瘍作用、植物生体防御機構活性化作用等が報告されおり、また、リゾチームやキチナーゼ等の酵素活性測定用基質としての有用性も見出されていることから、機能性食品素材、農業用資材、研究用試薬等の分野で幅広く利用されている。
【0003】
特に、高級N−アセチルキトオリゴ糖については、免疫機能増強による抗腫瘍作用、植物生体防御機構活性化等の面で、低級N−アセチルキトオリゴ糖よりも強い活性を有することが報告されており、その有用性が期待されている。
【0004】
N−アセチルキトオリゴ糖の製造方法として、例えば特許文献1には、キチンを酸により部分加水分解し、アルカリによる中和後、副生塩を分離除去するためにイオン交換膜電気透析による脱塩を行う方法が記載されている。また、特許文献2には、クロモバクテリウム(Chromobacterium)属に属し、キチン分解能を有する微生物を、キチンを含む培地で培養し、この培養物から調製した濾液成分及び/又は菌体成分を、キチンに作用させることを特徴とするキチン分解物の製造方法が記載されている。しかしながら、キチンを原料として酸や酵素を作用させて分解する方法は、重合度2〜4の低級N−アセチルキトオリゴ糖を得るのには適しているが、重合度5以上の高級N−アセチルキトオリゴ糖を高収率で得ることができない。
【0005】
その一方、高級N−アセチルキトオリゴ糖の製造方法としては、低級N−アセチルキトオリゴ糖を基質として、リゾチームやキチナーゼ等のN−アセチルキトオリゴ糖に対して加水分解能を有する酵素を作用させる手法が知られている。例えば、特許文献3にはキチンの加水分解により得られた重合度4〜5のN−アセチルキトオリゴ糖を基質とし、これにノカルデイア属の生産するキチナーゼを作用させる高級N−アセチルキトオリゴ糖の製造方法が記載されている。また、特許文献4には低級N−アセチルキトオリゴ糖を基質とし、リゾチームを親水性有機溶媒の存在下で作用させる高級N−アセチルキトオリゴ糖の製造方法が記載されている。更に、特許文献5には低級N−アセチルキトオリゴ糖を基質とし、N−アセチルキトオリゴ糖に対して加水分解能を有する酵素を塩析剤の存在下で作用させる高級N−アセチルキトオリゴ糖の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−271296号公報
【特許文献2】特開平04−187094号公報
【特許文献3】特開昭62−146598号公報
【特許文献4】特開平01−112995号公報
【特許文献5】特開平01−228491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の高級N−アセチルキトオリゴ糖の製造方法では、N−アセチルキトオリゴ糖に対して加水分解能を有する酵素を作用させることにより得られた高級N−アセチルキトオリゴ糖を反応液から分離精製する際の回収率が低く、重合度5以上の高級N−アセチルキトオリゴ糖を高収率で得ることが困難であった。また、得られた高級N−アセチルキトオリゴ糖は、水溶液中で低分子化を生じるという欠点があった。このため、これまで利用されてきたN−アセチルキトオリゴ糖は、キチンの分解により得られる低級N−アセチルキトオリゴ糖が大半であり、高級N−アセチルキトオリゴ糖は比較的重合度の低いものが研究試薬等でわずかに使用されているにすぎなかった。更に、重合度7以上の高級N−アセチルキトオリゴ糖に至っては、研究用試料の確保も困難であった。これら高級N−アセチルキトオリゴ糖は、極めて少量しか得ることができないため、免疫機能増強による抗腫瘍作用、植物生体防御機構活性化等の面で低級N−アセチルキトオリゴ糖よりも高い有用性が期待されているにも関わらず、その実用化に至っていないのが現状である。
【0008】
したがって、本発明の目的は、その有用性が期待される高級N−アセチルキトオリゴ糖の製造方法に関し、上記欠点を克服して、より安定な高級N−アセチルキトオリゴ糖を高効率で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明者らが鋭意研究した結果、上記特許文献3〜5に記載の方法などで得られた高級N−アセチルキトオリゴ糖には、加水分解能を有する酵素の活性が残存しており、それが原因となって酵素分解による低分子化が生じていたことを突き止めた。また、分離精製時における収率低下の原因も、水への溶解度が低い高級N−アセチルキトオリゴ糖を分離精製するために希釈溶解した際に、残存する酵素活性により分解されることにあることを突き止めた。本発明者らは、これらの知見に基づき、低級N−アセチルキトオリゴ糖を基質とし、N−アセチルキトオリゴ糖に対して加水分解能を有する酵素を作用させた後、作用させた酵素を除去する処理を施すことにより、従来の製造方法の欠点を克服して、より安定な高級N−アセチルキトオリゴ糖を高効率で製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の高級N−アセチルキトオリゴ糖の製造方法は、低級N−アセチルキトオリゴ糖を基質とし、N−アセチルキトオリゴ糖に対して加水分解能を有する酵素を作用させて生成物として高級N−アセチルキトオリゴ糖を得る高級N−アセチルキトオリゴ糖の製造方法であって、前記基質に前記酵素を作用させた後、該作用させた酵素を除去する処理を施すことを特徴とする。
【0011】
本発明においては、前記N−アセチルキトオリゴ糖に対して加水分解能を有する酵素がリゾチームであることが好ましい。
【0012】
また、本発明においては、前記酵素を除去する処理を、蛋白解離剤を添加することにより行うことが好ましい。また、前記酵素を除去する処理を、前記酵素をイオン交換担体に吸着させることにより行うことが好ましい。
【0013】
本発明においては、前記酵素を除去する処理を施した後、前記生成物である高級N−アセチルキトオリゴ糖を溶解した状態で、該高級N−アセチルキトオリゴ糖の分離精製を行ってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の高級N−アセチルキトオリゴ糖の製造方法によれば、低級N−アセチルキトオリゴ糖を基質とし、N−アセチルキトオリゴ糖に対して加水分解能を有する酵素を作用させた後、作用させた酵素を除去する処理を施すことにより、高級N−アセチルキトオリゴ糖を、従来よりも安定的に高効率で製造することができる。また、得られた高級N−アセチルキトオリゴ糖は、酵素が除去されていることから、溶液状態での安定性も高く、また、アレルギー等の安全性の面での心配もなくなるので、食品、農業用資材、化粧品、医薬品等の分野で幅広く利用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の高級N−アセチルキトオリゴ糖の製造方法においては、低級N−アセチルキトオリゴ糖を基質とし、N−アセチルキトオリゴ糖に対して加水分解能を有する酵素を作用させて生成物として高級N−アセチルキトオリゴ糖を得る。
【0016】
上記基質として用いられる低級N−アセチルキトオリゴ糖とは、重合度2〜4のN−アセチルキトオリゴ糖を指し、例えば、カニ、エビの甲殻から調製したキチンを、酸や酵素で加水分解して得ることができる。本発明においては、重合度別に単離された低級N−アセチルキトオリゴ糖を用いてもよく、これらの混合物を用いてもよい。また、キチンを酸や酵素で加水分解して得られた、低級N−アセチルキトオリゴ糖を含むキチン分解物を用いてもよい。この場合、N−アセチルキトオリゴ糖に対して加水分解能を有する酵素を作用させる際には、その基質からは、その後の酵素反応の阻害要因となる、N−アセチルグルコサミン、グルコサミン、塩類等の夾雑物を除去しておくことが好ましい。N−アセチルグルコサミンについては、低級N−アセチルキトオリゴ糖100重量部に対し、30重量部以下にすることが好ましく、15重量部以下にすることがより好ましい。また、グルコサミンについては、低級N−アセチルキトオリゴ糖100重量部に対し、10重量部以下にすることが好ましく、5重量部以下にすることがより好ましい。また、塩類等については、低級N−アセチルキトオリゴ糖100重量部に対し、10重量部以下にすることが好ましく、5重量部以下にすることがより好ましい。これらの夾雑物は、除去する夾雑物に応じて、電気透析、逆浸透膜、限外ろ過膜、イオン交換樹脂、ゲル濾過等、公知の分離手法を適宜選択して行なうことができる。
【0017】
本発明に用いるN−アセチルキトオリゴ糖に対して加水分解能を有する酵素としては、リゾチーム、キチナーゼ、キトビアーゼなどが挙げられる。例えば、市販の卵白リゾチームやトリコデルマ・リーセイ(Torichoderma reesei)の生産するキチナーゼ、アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)の生産するキチナーゼ、キトビアーゼなどを用いることができる。
【0018】
本発明においては、まず、低級N−アセチルキトオリゴ糖にN−アセチルキトオリゴ糖に対して加水分解能を有する酵素を作用させる。反応に用いる低級N−アセチルキトオリゴ糖の量は、反応溶液の飽和濃度付近であることが好ましい。
【0019】
また、酵素の量は、用いる酵素によっても異なるが、例えば、リゾチームを用いる場合には、低級N−アセチルキトオリゴ糖1mgに対し、リゾチーム活性として1,000〜10,000Uが好ましく、キチナーゼを用いる場合には、キチナーゼ活性として0.01〜10Uが好ましい。なお、本発明において、リゾチーム活性は、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)の細胞壁を基質とし、35℃、pH6.2で540nmにおける吸光度を1分間に0.001減少させる酵素量を1Uとするものである。また、本発明において、キチナーゼ活性は、コロダイルキチンを基質とし、40℃、pH5.5で1分間に1μモルのN−アセチル−D−グルコサミンに相当する還元糖を遊離する酵素量を1Uとするものである。
【0020】
反応温度、およびpHは使用する酵素の種類に応じて適宜設定できるが、例えば、上記リゾチーム、キチナーゼもしくはキトビアーゼを用いた場合、反応温度は、20〜60℃、好ましくは30〜50℃で、反応pHは4〜7が好ましい。また、反応時間は酵素量、反応温度、pHによって異なるが、通常は12〜120時間で目的とする反応生成物が最大量となる。
【0021】
なお、目的とする重合度5以上の高級N−アセチルキトオリゴ糖は、非常に溶解度が低く、反応液中に不溶物として析出してくるので、反応の進行状況が確認できる。
【0022】
また、本発明においては、反応溶液に塩析剤もしくは親水性有機溶媒を添加してもよい。これらを添加することにより、反応溶液への高級N−アセチルキトオリゴ糖の溶解度が低下し、生成した高級N−アセチルキトオリゴ糖が不溶物として析出しやすくなるので、高級N−アセチルキトオリゴ糖の収率が向上する。また、使用する基質や酵素に応じて、反応溶液に塩析剤もしくは親水性有機溶媒を添加して、得られる高級N−アセチルキトオリゴ糖の重合度を変化させることも可能である。
【0023】
使用する塩析剤としては、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられ、これらのうち1種類以上を用いることができるが、好ましくは硫酸アンモニウムである。適当な濃度としては1〜50w/v%、好ましくは20〜30w/v%の濃度になるように水または緩衝液を加えて調整する。また、親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、ジメチルスルホキサイド、ジオキサン、ホルムアミド、アセトンのうち1種類以上を用いることができ、親水性有機溶媒は20〜80v/v%、好ましくは30〜70v/v%の濃度になるように水または緩衝液を加え調整する。
【0024】
次いで、反応を停止させるが、従来は、酵素反応後、加熱による酵素失活を行い反応を停止させていたが、その方法では酵素失活が不十分となり、得られた高級N−アセチルキトオリゴ糖を水に溶解させた際に残存する酵素によって低分子化する、もしくは加熱によって高級N−アセチルキトオリゴ糖の低分子化が起こる等の不具合が生じる。その問題を解決するために、本発明においては、反応後に基質に作用させた酵素を除去する処理を施す。
【0025】
本発明において「酵素を除去する処理を施す」とは、その後に実質的な反応を起こさないように酵素を取り除くことを意味する。すなわち、基質に作用させた酵素が、生成物である高級N−アセチルキトオリゴ糖に作用しないように酵素を除去することである。ここで、高級N−アセチルキトオリゴ糖は、蛋白質と結合しやすく、重合度が大きくなるにつれより結合が強くなるため、反応溶液中に析出した高級N−アセチルキトオリゴ糖を遠心分離、濾過等の操作で回収するだけでは、残存する酵素を除去することができない。したがって、基質に作用させた酵素を生成物である高級N−アセチルキトオリゴ糖から遊離させる処理を施すことが必要とされる。そのための手段としては、基質に作用させた酵素が、生成物である高級N−アセチルキトオリゴ糖に作用しないように酵素を除去することができれば特に制限を受けないが、例えば、蛋白解離剤を用いて行うことができる。また、他の手段の例としては、イオン交換担体に吸着させることにより行うことができる。更に本発明においては、上記のような酵素除去方法の2種以上を組み合わせて行ってもよい。
【0026】
まず、酵素を除去する処理を、蛋白解離剤を用いて行う場合について説明する。
【0027】
本発明に用いられる蛋白解離剤としては、蛋白変性剤もしくは塩類が挙げられる。
【0028】
蛋白変性剤としては、尿素、グアニジン塩酸塩等が挙げられ、効果の面において尿素が好ましく用いられる。蛋白変性剤を用いる場合、高級N−アセチルキトオリゴ糖を含む反応溶液に蛋白変性剤を添加し、酵素を変性させる。変性した酵素は高級N−アセチルキトオリゴ糖から遊離するので、その後、遠心分離、濾過等の操作で高級N−アセチルキトオリゴ糖を回収することにより酵素を除去するができる。または、高級N−アセチルキトオリゴ糖を含む反応溶液から、高級N−アセチルキトオリゴ糖を回収し、ついで、蛋白変性剤を含む溶液中に高級N−アセチルキトオリゴ糖を溶解又は懸濁させて、酵素を変性させたのち、高級N−アセチルキトオリゴ糖を回収してもよい。
【0029】
塩類としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム等が挙げられるが、安価で入手でき且つ食品等にも用いることが可能な点で塩化ナトリウムが好ましく用いられる。塩類を用いる場合、高級N−アセチルキトオリゴ糖を含む反応溶液から、高級N−アセチルキトオリゴ糖を回収し、ついで、塩類を含む溶液で高級N−アセチルキトオリゴ糖を洗浄する。このとき、塩溶液のイオン強度により酵素が高級N−アセチルキトオリゴ糖から遊離し、酵素を除去することができる。使用する塩溶液の溶媒としては、水、メタノール、エタノール等が挙げられ、また2種類以上を混合してもよい。また、塩濃度としては使用する塩類にもよるが、0.5〜2.0Mの範囲であることが好ましい。ただし、塩溶液中で酵素蛋白が不溶化してしまうと、高級N−アセチルキトオリゴ糖との分別回収が困難であるため、そのような塩濃度は好ましくない。
【0030】
つぎに、酵素を除去する処理を、酵素をイオン交換担体に吸着させることにより行う場合について説明する。
【0031】
イオン交換担体に吸着させる場合、高級N−アセチルキトオリゴ糖を含む反応溶液に必要に応じて適宜水等の溶媒を添加して希釈し、イオン交換樹脂、イオン交換膜等のイオン交換担体に接触させて、非吸着画分を回収する。または、高級N−アセチルキトオリゴ糖を含む反応溶液から遠心分離、濾過等の操作で高級N−アセチルキトオリゴ糖を回収したのち、所定量の水等の溶媒を添加して、イオン交換樹脂、イオン交換膜等のイオン交換担体に接触させて、非吸着画分を回収する。これにより、酵素はイオン交換担体に吸着し高級N−アセチルキトオリゴ糖から遊離するので、その非吸着画分に高級N−アセチルキトオリゴ糖を回収することにより、酵素を除去するができる。上記イオン交換体の属性としては、酵素の静電的特徴に応じて酵素を吸着して高級N−アセチルキトオリゴ糖を遊離することができるものを、適宜選択すればよい。例えば、上述したリゾチームの場合には、陽イオン交換樹脂又は陽イオン交換膜等が好ましく用いられる。
【0032】
本発明においては、高級N−アセチルキトオリゴ糖を含む反応溶液を希釈せずに、高級N−アセチルキトオリゴ糖濃度が好ましくは0.5〜5w/v%の状態で、イオン交換樹脂に接触させて、非吸着画分を回収することが好ましい。これによれば、反応溶液を希釈する、もしくは反応液から回収した高級N−アセチルキトオリゴ糖に水等の溶媒を添加する際に、残存している酵素活性により、高級N−アセチルキトオリゴ糖が低分子化することがなく、高効率で酵素除去を行うことができる。
【0033】
上記方法で得られた高級N−アセチルキトオリゴ糖は、さらに水、メタノール、エタノール等により洗浄することが好ましい。
【0034】
このようにして得られた、高級N−アセチルキトオリゴ糖は、酵素が除去されており溶液状態での安定性も高いことから、所定の濃度に希釈、もしくは所定の溶媒に溶解したのち、活性炭に吸着させ、アルコール濃度勾配法により分離溶出する方法や、ゲル濾過、高速液体クロマトグラフィー等の公知の手段で効率的に分離精製を行うことができる。
【実施例】
【0035】
以下に例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0036】
実施例1(陽イオン交換膜)
200mgのN−アセチルキトビオース(NAG2)を2mlの0.1M酢酸緩衝液(pH3.8)に溶解させた後、600mgの硫酸アンモニウムを添加して混合し、70℃に昇温させた後、市販の卵白リゾチーム(生化学工業株式会社製)を2×10U添加して、70℃で8時間反応させた。反応終了後、生成した不溶物を遠心分離によって回収し、得られた不溶物を5mlの50%エタノールに懸濁し、再び遠心分離によって不溶物を回収する洗浄を5回行った。得られた不溶物を1w/v%の濃度で氷冷水に溶解した後、陽イオン交換膜(商品名「Acodisc Unit with MustangTM」、PALL社製)で濾過を行い、濾液を減圧乾燥し、白色粉末(32.2mg)を得た。この白色粉末の生成物組成を、高速液体クロマトグラフィーによって確認したところ、N−アセチルキトヘプタオース(NAG7)11.0%、N−アセチルキトヘキサオース(NAG6)61.7%、N−アセチルキトペンタオース(NAG5)22.1%が含まれていた。
【0037】
実施例2(8M尿素溶液)
200mgのN−アセチルキトビオースを2mlの0.1M酢酸緩衝液(pH3.8)に溶解させた後、600mgの硫酸アンモニウムを添加して混合し、70℃に昇温させた後、市販の卵白リゾチーム(生化学工業社製)を2×10U添加して、70℃で8時間反応させた。反応終了後、生成した不溶物を遠心分離によって回収し、ついで8mlの8Mの尿素を含む50%エタノールに懸濁し、37℃で1時間保持した後、再び遠心分離によって不溶物を回収した。得られた不溶物を5mlの50%エタノールに懸濁し、再び遠心分離によって不溶物を回収する洗浄を5回行った。得られた不溶物を少量の水に溶解した後、凍結乾燥し、白色粉末(29.7mg)を得た。この白色粉末の生成物組成を、高速液体クロマトグラフィーによって確認したところ、N−アセチルキトオクタオース(NAG8)0.1%、N−アセチルキトヘプタオース(NAG7)14.9%、N−アセチルキトヘキサオース(NAG6)63.2%、N−アセチルキトペンタオース(NAG5)16.9%が含まれていた。
【0038】
実施例3(1.5M塩化ナトリウム溶液)
200mgのN−アセチルキトビオースを2mlの0.1M酢酸緩衝液(pH3.8)に溶解させた後、600mgの硫酸アンモニウムを添加して混合し、70℃に昇温させた後、市販の卵白リゾチーム(生化学工業社製)を2×10U添加して、70℃で8時間反応させた。反応終了後、生成した不溶物を遠心分離によって回収した。得られた不溶物を5mlの1.5Mの塩化ナトリウムを含む50%エタノールに懸濁し、再び遠心分離によって不溶物を回収する操作を3回行い、酵素を除去した。更に、得られた不溶物を5mlの50%エタノールに懸濁し、再び遠心分離によって不溶物を回収する洗浄を3回行った。得られた不溶物を少量の水に溶解した後、凍結乾燥し、白色粉末(70.5mg)を得た。この白色粉末の生成物組成を、高速液体クロマトグラフィーによって確認したところ、N−アセチルキトヘプタオース(NAG7)6.5%、N−アセチルキトヘキサオース(NAG6)65.8%、N−アセチルキトペンタオース(NAG5)21.9%が含まれていた。
【0039】
比較例1(遠心分離での洗浄のみ)
200mgのN−アセチルキトビオースを2mlの0.1M酢酸緩衝液(pH3.8)に溶解させた後、600mgの硫酸アンモニウムを添加して混合し、70℃に昇温させた後、市販の卵白リゾチーム(生化学工業社製)を2×10U添加して、70℃で8時間反応させた。反応終了後、生成した不溶物を遠心分離によって回収した。得られた不溶物を5mlの50%エタノールに懸濁し、再び遠心分離によって不溶物を回収する洗浄を5回行った。得られた不溶物を少量の水に溶解した後、凍結乾燥し、白色粉末(53.9mg)を得た。この白色粉末の生成物組成を、高速液体クロマトグラフィーによって確認したところ、N−アセチルキトオクタオース(NAG8)0.2%、N−アセチルキトヘプタオース(NAG7)10.4%、N−アセチルキトヘキサオース(NAG6)61.3%、N−アセチルキトペンタオース(NAG5)20.6%が含まれていた。
【0040】
比較例2(100℃10分間加熱)
200mgのN−アセチルキトビオースを2mlの0.1M酢酸緩衝液(pH3.8)に溶解させた後、600mgの硫酸アンモニウムを添加して混合し、70℃に昇温させた後、市販の卵白リゾチーム(生化学工業社製)を2×10U添加して、70℃で8時間反応させた。反応終了後、100℃で10分間加熱した後、生成した不溶物を遠心分離によって回収した。得られた不溶物を5mlの50%エタノールに懸濁し、再び遠心分離によって不溶物を回収する洗浄を5回行った。得られた不溶物を少量の水に溶解した後、凍結乾燥し、白色粉末(73.8mg)を得た。この白色粉末の生成物組成を、高速液体クロマトグラフィーによって確認したところ、N−アセチルキトヘプタオース(NAG7)6.2%、N−アセチルキトヘキサオース(NAG6)62.9%、N−アセチルキトペンタオース(NAG5)20.7%が含まれていた。
【0041】
試験例1
実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた白色粉末をそれぞれ、水に3mg/mlの濃度で溶解し、室温で24時間放置した後、高速液体クロマトグラフィーによって糖組成を確認した。放置前(0時間)及び24時間放置後の糖組成を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1に示されるように、実施例1〜3で得られた白色粉末については、放置前後で糖組成が変化しなかったが、比較例1および2で得られた白色粉末については、放置前後で高級N−アセチルキトオリゴ糖が分解し、重合度の低いN−アセチルキトオリゴ糖(NAG2〜NAG4)に変化していた。
【0044】
実施例4(8M尿素溶液)
卵白リゾチームとの反応の際に、600mgの硫酸アンモニウムを添加混合しない以外は、実施例2と同様にして、白色粉末(25.7mg)を得た。この白色粉末の生成物組成を、高速液体クロマトグラフィーによって確認したところ、N−アセチルキトヘプタオース(NAG7)9.2%、N−アセチルキトヘキサオース(NAG6)73.4%、N−アセチルキトペンタオース(NAG5)11.4%が含まれていた。
【0045】
試験例2
実施例2および4で得られた白色粉末を、MALDI−TOF MSで分析を行った。その結果、実施例2での白色粉末ではN−アセチルキトノナオース(NAG9)までの高級N−アセチルキトオリゴ糖が検出され、実施例4での白色粉末ではN−アセチルキトデカオース(NAG10)までの高級N−アセチルキトオリゴ糖が検出された。これにより、反応溶液に塩析剤を添加しないほうが、収率は低いものの重合度の高い高級N−アセチルキトオリゴ糖が得られることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低級N−アセチルキトオリゴ糖を基質とし、N−アセチルキトオリゴ糖に対して加水分解能を有する酵素を作用させて生成物として高級N−アセチルキトオリゴ糖を得る高級N−アセチルキトオリゴ糖の製造方法であって、前記基質に前記酵素を作用させた後、該作用させた酵素を除去する処理を施すことを特徴とする高級N−アセチルキトオリゴ糖の製造方法。
【請求項2】
前記N−アセチルキトオリゴ糖に対して加水分解能を有する酵素がリゾチームである請求項1記載の高級N−アセチルキトオリゴ糖の製造方法。
【請求項3】
前記酵素を除去する処理を、蛋白解離剤を添加することにより行う請求項1又は2に記載の高級N−アセチルキトオリゴ糖の製造方法。
【請求項4】
前記酵素を除去する処理を、前記酵素をイオン交換担体に吸着させることにより行う請求項1〜3のいずれか1つに記載の高級N−アセチルキトオリゴ糖の製造方法。
【請求項5】
前記酵素を除去する処理を施した後、前記生成物である高級N−アセチルキトオリゴ糖を溶解した状態で、該高級N−アセチルキトオリゴ糖の分離精製を行う請求項1〜4のいずれか1つに記載の高級N−アセチルキトオリゴ糖の製造方法。

【公開番号】特開2010−178642(P2010−178642A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23306(P2009−23306)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(390033145)焼津水産化学工業株式会社 (80)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【Fターム(参考)】