高結合、低損失のSAWフィルタ及び関連する方法
【課題】高い電気機械結合と、低いスプリアス応答と、望ましい周波数-温度特性とを同時に示すSAWデバイスを提供する。
【解決手段】SAWデバイス10は、ニオブ酸リチウムを含むとともに弾性波の伝搬を行なうように構成される基板12と、基板12の表面22上の第1及び第2の電極パターン18、20により第1及び第2の共振器14、16が形成され、その上にプラスのTCFを有する誘電保護膜24が形成される。そして、第1及び第2の電極パターン18、20が個々の電極幅a1、a2を有するとともに異なる電極周期p1、p2をもって配置され、異なる電極周期p1、p2のそれぞれが電極周期p1、p2に対する電極幅a1、a2のそれぞれの比率と関連付けられる。
【解決手段】SAWデバイス10は、ニオブ酸リチウムを含むとともに弾性波の伝搬を行なうように構成される基板12と、基板12の表面22上の第1及び第2の電極パターン18、20により第1及び第2の共振器14、16が形成され、その上にプラスのTCFを有する誘電保護膜24が形成される。そして、第1及び第2の電極パターン18、20が個々の電極幅a1、a2を有するとともに異なる電極周期p1、p2をもって配置され、異なる電極周期p1、p2のそれぞれが電極周期p1、p2に対する電極幅a1、a2のそれぞれの比率と関連付けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、表面弾性波(SAW)デバイスに関し、特に、強力な電気機械結合と、低いスプリアス応答と、無線通信のための高周波(RF)フィルタリングにおける用途にとって望ましい周波数-温度特性とを有するSAWデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
SAWデバイス(“SAWフィルタ”と称されてもよい)は、高い電気機械結合係数を有する圧電基板上に形成される共振器型構造により与えられる低い挿入損失及びそれらの小さいサイズの結果として、無線通信システムでうまく用いられている。そのようなデバイスは、一般に、高い電気機械結合係数によって特徴付けられる低減衰準バルク漏洩表面弾性波(LSAW)を利用する。そのような波は、同じ3m対称クラスに属する2つの圧電性結晶において存在することが知られている。既知の結晶は、タンタル酸リチウムLiTaO3(LT)及びニオブ酸リチウムLiNbO3(LN)である。
【0003】
最近、漏洩しない準剪断水平波デバイスを使用して製造されるデバイスが報告されている。漏洩効果の抑制は、弾性波が伝搬する表面に例えば電極及び/又は誘電保護膜で十分に負荷を与えて波の速度をその値が同じ方向で伝搬する遅い準剪断バルク波の値よりも小さくなるように遅らせるときに生じる。
【0004】
既知のSAWデバイスは、Y回転X伝搬ニオブ酸リチウム(YX−LN)基板上に堆積されるとともにプラスの周波数温度係数(TCF)を有する誘電保護膜の下側に埋め込まれる重金属電極を含む。これらのデバイスは、Y回転X伝搬タンタル酸リチウム(YX−LT)基板を指向して形成されるデバイスに関しては見出されない難題に見舞われる場合がある。例えば、フィルタの通過帯域で著しいスプリアス応答をもたらし得るYX−LN基板の表面上を伝搬する第2の弾性波モードが見出される。
【0005】
従来のSAWデバイスの性能特性は、主に、その電気機械結合係数、伝搬の減衰、TCF、及び、スプリアス弾性波モードの不存在に依存し得る。YX−LN基板では、2つのSAWモードが異なる速度と異なる電気機械結合係数とを伴って伝搬し得る。更に高い結合を伴うSAWモードを利用するSAWデバイスでは、低い結合を伴うSAWモードがスプリアス応答をもたらす。したがって、SAWデバイスの性能は、スプリアス応答が抑制される度合いに依存し得る。以下、説明の都合上、高結合モードを「所望のモード」と称する場合があり、また、低結合モードを「スプリアスモード」と称する場合がある。
【0006】
2つのSAWモードの分極は、基板の回転角、機械的負荷(基板の表面上の電極の特性に依存し得る)、及び、電気的な境界条件に依存し得る。分極成分は、一般に、縦(L)成分、剪断水平(SH)成分、及び、剪断垂直(SV)成分を含む場合がある。SH成分又はL成分とSV成分との組み合わせの寄与度が特定の回転角においてゼロになる場合があり、それにより、L成分とSV成分との対応する組み合わせ或いはSH成分がそのような選択された方向で伝搬できる。これにより、分極を使用して、任意の回転角及び電極厚さ(又は質量)に関して2つのSAWモード間を区別することが困難になり得る。
【0007】
したがって、任意の回転角及び電極厚さ(又は質量)に関して、これらの2つのSAWモード間をそれらの分極を調べることにより区別できない場合がある。代わりに、それらの伝搬速度が使用される場合がある。あるいは、かなり大きい結合係数を有するSAWモードが「所望のSAWモード」と見なされる場合があり、また、より弱いSAWモードが「スプリアスSAWモード」と見なされる場合がある。
【0008】
無負荷表面の場合、すなわち、電極がその上に配置されていない表面の場合、YX−LN基板中で伝搬する2つのSAWモードのうちの一方は、基板回転角とは無関係に、同じ基板中で伝搬する遅い剪断バルク波よりも遅い。この比較的ゆっくりと移動するSAWモードの分極へのSH成分の寄与度は、表面が無負荷の場合、任意の伝搬角に関して小さい場合がある。その垂直剪断成分及び縦成分と比べて小さい水平剪断成分を有するこの比較的ゆっくりと移動するSAWモードは、時として、レイリー型波と称される場合がある。
【0009】
比較的速く移動するSAWモードの速度は、表面が無負荷の場合には、遅い剪断バルク波の速度と速い剪断バルク波の速度との間にあり、そのため、この波が漏れやすくなる。この波は、表面に十分に負荷が与えられるときには「漏れなく」なる。比較的速く移動するSAWモードは、時として、ラブ型波と称される場合がある。ラブ型波は、レイリー型波と比べて比較的大きいSH成分を含む場合があるが、一般にSH分極されない。
【発明の概要】
【0010】
SAWデバイスの性能を高めるために多大な努力がなされてきたが、強力な電気機械結合と、低いスプリアス応答と、無線通信のための高周波(RF)フィルタリングにおける用途にとって望ましい周波数-温度特性とを同時に示すSAWデバイスの必要性が依然としてある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面に関連して一例として開示される本明細書中の実施形態の以下の詳細な説明から更に明らかになる。
【0012】
【図1】図1は、2つ以上の共振器及び電極間隔を伴う2つ以上の電極周期が、各共振器ごとにスプリアスモードにおける結合係数を抑制するべく特定の幅に調整される、幾つかの実施形態に係る1つのSAWデバイスを示す図式的な断面図である。
【0013】
【図2】図2は、本明細書中で規定されるオイラー角(λ、μ、θ)を図式的に示している。
【0014】
【図3】図3は、所望のモード及びスプリアスモードの両方における応答を含む1ポート共振器のアドミタンス周波数応答を示すグラフである。
【0015】
【図4】図4は、スプリアスモードの応答を含む1ポート共振器を使用する一対のフィルタにおける通過帯域を示すグラフである。
【0016】
【図5】図5は、電極周期(p)に対する電極幅(a)の比率(以下、この比率が「デューティファクタ」とも称される)が0.4である幾つかの実施形態に係る共振器を示すグラフである。
【0017】
【図6】図6は、デューティファクタが0.5である幾つかの実施形態に係る共振器を示すグラフである。
【0018】
【図7】図7は、電極厚さ(h_el)を周期(p)で割った値が0.10に等しく且つ誘電保護膜厚さ(h_do)を周期(p)で割った値が0.60に等しい幾つかの実施形態に係るYX−LN基板に関する所望のモード及びスプリアスモードにおける結合係数を示すグラフである。
【0019】
【図8】図8は、h_el/p=0.30及びh_do/p=0.60である幾つかの実施形態に係るYX−LN基板に関する所望のモード及びスプリアスモードにおける結合係数を示すグラフである。
【0020】
【図9】図9は、幾つかの実施形態に係る127°YX−LN基板に関するスプリアスモード(log10(K2))における結合係数を示すグラフである。
【0021】
【図10】図10は、幾つかの実施形態に係る127°YXLN基板における結合係数パーセンテージを示すグラフである。
【0022】
【図11】図11は、幾つかの実施形態に係る127°YX−LN基板に関するスプリアスモード(log10(K2))における結合係数を示すグラフである。
【0023】
【図12】図12は、幾つかの実施形態に係る127°YXLN基板における結合係数パーセンテージを示すグラフである。
【0024】
【図13】図13は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するスプリアスモード(log10(K2))における結合係数を示すグラフである。
【0025】
【図14】図14は、150°YX−LN基板における結合係数パーセンテージを示すグラフである。
【0026】
【図15】図15は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板における共振でのTCFを示すグラフである。
【0027】
【図16】図16は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板における反共振でのTCFを示すグラフである。
【0028】
【図17】図17は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタ a/p=0.4の銅電極を有するデバイスにおけるスプリアスモード結合(log10(K2))を示すグラフである。
【0029】
【図18】図18は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタa/p=0.4の銅電極を有するデバイスにおける結合パーセンテージを示すグラフである。
【0030】
【図19】図19は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタa/p=0.45の銅電極を有するデバイスにおけるスプリアスモード結合(log10(K2))を示すグラフである。
【0031】
【図20】図20は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタa/p=0.45の銅電極を有するデバイスにおける結合パーセンテージを示すグラフである。
【0032】
【図21】図21は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタa/p=0.5の銅電極を有するデバイスにおけるスプリアスモード結合(log10(K2))を示すグラフである。
【0033】
【図22】図22は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタa/p=0.5の銅電極を有するデバイスにおける結合パーセンテージを示すグラフである。
【0034】
【図23】図23は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタa/p=0.55の銅電極を有するデバイスにおけるスプリアスモード結合(log10(K2))を示すグラフである。
【0035】
【図24】図24は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタa/p=0.55の銅電極を有するデバイスにおける結合パーセンテージを示すグラフである。
【0036】
【図25】図25は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタa/p=0.6の銅電極を有するデバイスにおけるスプリアスモード結合(log10(K2))を示すグラフである。
【0037】
【図26】図26は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタa/p=0.6の銅電極を有するデバイスにおける結合パーセンテージを示すグラフである。
【0038】
【図27】図27は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタa/p=0.4、0.45、0.5、0.55、0.6の銅電極を有するデバイスにおける最小スプリアスモードのラインを示すグラフである。
【0039】
【図28】図28は、幾つかの実施形態における保護膜厚さと電極厚さの比率及び正規化された周期に応じた一定デューティフアクタにおけるスプリアスフリーラインを示すグラフである。
【0040】
【図29】図29は、150°YX−LN基板を有するh_do/h_el=2.0の幾つかの実施形態に係るデバイスにおける周期に伴ってほぼ線形のスプリアスデューティファクタを示すグラフである。
【0041】
【図30】図30は、140°YX−LN基板を有するh_do/h_el=2.0の幾つかの実施形態に係るデバイスにおける周期に伴ってほぼ線形のスプリアスフリーデューティファクタを示すグラフである。
【0042】
【図31】図31は、周期の幅広い変化においてスプリアス結合を無視できることを示す幾つかの実施形態に係るグラフである。
【0043】
【図32】図32は、幾つかの実施形態に係るスプリアス含有量が無視できる領域にわたる結合係数パーセンテージを示すグラフである。
【0044】
【図33】図33は、140°YX−LN基板を有するh_do/h_el=2.5の幾つかの実施形態に係るデバイスにおける周期に伴ってほぼ線形のスプリアスフリーデューティファクタを示すグラフである。
【0045】
【図34】図34は、周期の幅広い変化においてスプリアス結合を無視できることを示す幾つかの実施形態に係るグラフである。
【0046】
【図35】図35は、幾つかの実施形態に係るスプリアス含有量が無視できる領域にわたる結合係数パーセンテージを示すグラフである。
【0047】
【図36】図36は、150°YX−LN基板を有するh_do/h_el=2.0の幾つかの実施形態に係るデバイスにおける周期に伴ってほぼ線形のスプリアスフリーデューティファクタを示すグラフである。
【0048】
【図37】図37は、周期の幅広い変化においてスプリアス結合を無視できることを示す幾つかの実施形態に係るグラフである。
【0049】
【図38】図38は、幾つかの実施形態に係るスプリアス含有量が無視できる領域にわたる結合係数パーセンテージを示すグラフである。
【0050】
【図39】図39は、150°YX−LN基板を有するh_do/h_el=2.5の幾つかの実施形態に係るデバイスにおいてスプリアスフリーデューティファクタが周期に伴ってほぼ線形であることを示すグラフである。
【0051】
【図40】図40は、周期の幅広い変化においてスプリアス結合を無視できることを示す幾つかの実施形態に係るグラフである。
【0052】
【図41】図41は、スプリアス含有量が無視できる領域にわたる結合係数パーセンテージが127°及び140°のYX−LN基板を有する幾つかの実施形態に係るデバイスと比べて向上されることを示すグラフである。
【0053】
【図42】図42は、160°YX−LN基板を有するh_do/h_el=2.0の幾つかの実施形態に係るデバイスにおいてスプリアスフリーデューティファクタが周期に伴ってほぼ線形であることを示すグラフである。
【0054】
【図43】図43は、周期の幅広い変化においてスプリアス結合を無視できることを示す幾つかの実施形態に係るグラフである。
【0055】
【図44】図44は、スプリアス含有量が無視できる領域にわたる結合係数パーセンテージが127°、140°、及び、150°のYX−LN基板を有する幾つかの実施形態に係るデバイスと比べて向上されることを示すグラフである。
【0056】
【図45】図45は、160°YX−LN基板を有するh_do/h_el=2.5の幾つかの実施形態に係るデバイスにおいてスプリアスフリーデューティファクタが周期に伴ってほぼ線形であることを示すグラフである。
【0057】
【図46】図46は、周期の幅広い変化においてスプリアス結合を無視できることを示す幾つかの実施形態に係るグラフである。
【0058】
【図47】図47は、スプリアス含有量が無視できる領域にわたる結合係数パーセンテージが127°、140°、及び、150°のYX−LN基板を有する幾つかの実施形態に係るデバイスと比べて向上されることを示すグラフである。
【0059】
【図48】図48は、幾つかの実施形態に係る保護膜-対-電極厚さの比率及びy回転に応じたデューティファクタ勾配(α)の等高線を示すグラフである。
【0060】
【図49】図49は、幾つかの実施形態に係る保護膜厚さと電極厚さの比率及びy回転に応じた電極厚さ/基準周期(p_ref)の等高線を示すグラフである。
【0061】
【図50】図50は、幾つかの実施形態に係る保護膜厚さと電極厚さの比率及びy回転に応じた結合係数(K2 in %)の等高線を示すグラフである。
【0062】
【図51】図51は、幾つかの実施形態に係る保護膜厚さと電極厚さの比率及びy回転に応じた共振周波数TCF(ppm/°C)の等高線を示すグラフである。
【0063】
【図52】図52は、幾つかの実施形態に係る保護膜厚さと電極厚さの比率及びy回転に応じた反共振周波数TCF(ppm/°C)の等高線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
ここで、以下、本発明の好ましい実施形態が示される添付図面を参照して、本発明を更に十分に説明する。別に規定されなければ、本明細書中で使用される技術用語及び科学用語は、この発明が出願日に関連する当該技術において共通に理解される意味と同じ意味を有するように意図される。本明細書中に記載される方法及び材料と同様の或いは等価な様々な方法及び材料を本発明の実施又は試験で使用できるが、以下では適した方法及び材料が記載される。しかしながら、当業者であれば分かるように、使用されて記載される方法及び材料は、一例であって、本発明で用いるのに適する唯一の方法及び材料でない場合がある。
【0065】
また、本明細書中で与えられる温度、重量、体積、時間間隔、範囲、他の測定値、量、及び、数式は、それに反することが明確に述べられていなければ、おおよそのものであって、正確な値又は臨界値ではないように意図されていることは言うまでもない。本発明に適切な場合には、当業者により理解されるように、寸法付けられる、約、おおよそ、実質的に、本質的に、備える、など、出願で一般に使用される近似的な或いは相対的な用語及び度合いの用語を用いて本発明の様々な態様について説明することが適切である。
【0066】
与えられる材料、方法、及び、実施例は、実際は単なる例示であり、限定しようとするものではない。
【0067】
したがって、この発明は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、また、本明細書中に記載される例示的な実施形態に限定されると解釈されるべきでない。むしろ、これらの例示的な実施形態は、この開示が完全で、完備しているとともに、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように与えられる。
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかである。
【0068】
最初に図1を参照すると、ここには、本発明の1つの実施形態が、一例として、表面弾性波(SAW)デバイス10として記載されており、該デバイス10は、弾性波、例えば漏洩弾性波の伝搬を行なうために、基板12、例えば単結晶圧電基板を備える。本明細書中に一例として記載される実施形態の場合には、第1及び第2の共振器14、16が基板12の表面22上の第1及び第2の電極パターン18、20によって形成される。第1の共振器14は、電極30間及び電極30上にわたって配置される厚さ26(h_doとも称される)の酸化ケイ素層の形態を成すプラスのTCFを有する誘電保護膜24と、電極周期28(p1とも称される)と、電極幅32(a1とも称される)を有する電極30とを有する。第2の共振器16は、酸化ケイ素の誘電保護膜24を第1の共振器18と共有するとともに、電極周期28A(p2とも称される)と、電極幅32A(a2とも称される)を有する電極30Aとを有する。
【0069】
様々な実施形態において、電極の周期と幅との間の関係は、特に、SAWデバイス10の効率的な動作を容易にするように設定されてもよい。効率的な動作としては、例えば、強力な電気機械結合係数を示すこと、小さい周波数温度係数(TCF)を有すること、及び/又は、スプリアスモードのロバスト抑制を挙げることができる。幾つかの実施形態において、電極周期に対する電極幅の関係は、各電極周期、例えばp1が電極周期に対する電極幅のそれぞれの比率、例えばa1/p1と関連付けられるようになっていてもよい。電極周期に対する電極幅の比率が「デューティファクタ」と称されてもよい。したがって、例えば、実施形態は、複数の異なる電極周期をもって配置される電極を有してもよく、この場合、複数の異なる電極周期のそれぞれは、電極周期に対する電極幅のそれぞれの比率と関連付けられる。図1に示される実施形態は一般に2つの共振器を描いており、この場合、各共振器内の電極は、共通の電極周期及び幅を有する。しかしながら、他の実施形態は他の数の共振器を有してもよく、その場合、共振器のうちの1つ以上が1つ以上の異なる電極周期及び/又は電極幅を有する。
【0070】
幾つかの実施形態では、電極30、30Aの幅32、32Aが定められた関係にしたがう。この関係は、幾つかの実施形態によれば、隣接する電極間の正規化された間隔(pN-aN)/pNを使用して都合良く表わされる。一例として、第1の共振器14の周期28が第2の共振器16の周期28Aよりも小さい場合、すなわち、(p1<p2)の場合には、第1の共振器14の電極30間の相対間隔が、第2の共振器16の電極30A間の相対間隔よりも大きくなる。すなわち、(p1-a1)/p1>(p2-a2)/p2となる。
【0071】
幾つかの実施形態では、第1及び第2の共振器の電極間の間隔が共振器の電極周期に反比例し、したがって、電極周期が減少するにつれて前記間隔が増大する。すなわち、a2/p2>a1/p1となる。
【0072】
幾つかの実施形態において、2つの共振器14、16は、関係(a1-a2)/(p1-p2)>1を満たすそれぞれの電極周期28、28A及び幅32、32Aを有してもよい。
【0073】
本明細書中に一例として記載される実施形態に関しては、本明細書中で一例として与えられて記載される結果として得られる性能データから、電極30、30Aの質量が、主に、「重い電極」と称されてもよいものを与える銅(Cu)によって与えられてもよい。これらの重い電極は、誘電保護膜24の密度を実質的に超える密度を有してもよい。幾つかの実施形態において、電極30、30Aの長さ寸法、例えば厚さ36(h_elとも称される)又は幅(a)は、主に、1つ以上の他の材料、例えばアルミニウムによって与えられる。様々な実施形態において、厚さ36は、個々の電極と関連付けられる周期の約10〜40パーセントの範囲内にあってもよい。様々な実施形態において、厚さ36は、個々の電極と関連付けられる周期の約15〜25パーセントの範囲内にあってもよい。厚さ36は図1の電極の全てにおいてほぼ同じであるように示されているが、他の実施形態では、様々な電極厚さが使用されてもよい。
【0074】
幾つかの実施形態において、重い電極、例えば電極30、30Aは、基板12上に存在する漏れやすい波、例えばLSAWが十分に遅らされるようにし、それにより、波速度が遅い剪断バルク波の速度未満に減少されるようにしてもよい。そのような場合には、バルク弾性波中へ漏れるLSAWエネルギーに起因するこれらのLSAWの漏れ性を抑制できる。
【0075】
重い電極の形態の選択は、スプリアスモードの応答が抑制されてフィルタの応答に対する任意の悪影響を制限するようにするべく誘電保護膜24の厚さ26の好ましい選択に伴うものでもよい。幾つかの実施形態において、電極の上端から誘電保護膜24の上端面まで測定されてもよい厚さ26は、厚さ36の約3倍〜4倍より小さくてもよい。幾つかの実施形態では、厚さ36に関連する厚さ26がほぼh_el<h_do<4*h_elの範囲内にあってもよい。幾つかの実施形態において、厚さ26は、基準電極周期の約20パーセントから基準電極周期の約80パーセントまでの範囲内であってもよい。基準電極周期は、特定のSAWデバイスの任意の電極周期であってもよく、あるいは、さもなければSAWデバイスの電極周期、例えば平均電極周期に基づいてもよい。随意的に、厚さ26は、基板12の表面上で励起されるSAWの弾性波長の0〜75パーセントの範囲であってもよい。
【0076】
様々な実施形態において、基板12は、5%を超える電気機械結合係数を有してもよく、また、オイラー角(0±3°、μ、0±3°)により規定される方向性を有してもよい。ここで、角度μ=μ’−90であり、μ’は約140°〜約170°の範囲である。オイラー角(λ、μ、θ)は、本明細書では、図2に更に関連して前述したように規定される。
【0077】
本実施形態は、ここでは、有限要素法/境界要素法(FEM/BEM)又は有限要素法/スペクトル領域解析(FEM/SDA)を使用してYX−LN基板における所望のモード及びスプリアスモードの挙動を計算する解析を適用して例示される。特に、各モードの結合及び速度の依存性が推定された。
【0078】
本発明の実施形態からの実験結果を検討する前に、スプリアスモードの応答を含む1ポート共振器における周波数の関数としてのアドミタンスを示す図3のグラフを参照して、当該技術分野における典型的な結果を一例として考察する。そのようなスプリアスモードは、フィルタ応答を著しく低下させ得る。図4は、従来技術のフィルタの応答を示すグラフである。フィルタの通過帯域におけるノッチは、スプリアスモードの存在に起因する。市販のSAWフィルタにおける適用においては、そのようなスプリアス応答を克服する必要がある。
【0079】
スプリアス応答の抑制は特別な注意を必要とする。ある程度の抑制は、電極厚さと誘電保護膜の厚さとの適切な選択と組み合わせとによって達成されてもよい。
【0080】
ここで、図5及び図6を参照すると、150°YXLN基板上に形成される1ポート共振器のアドミタンスの実験測定値を示すためにグラフが示されており、この場合、共振器における電極隙間、例えば電極間の間隔は、幾つかの実施形態によれば1.2μmである。図5における共振器は、40%のデューティファクタ(a/p=0.4)と、1.6、1.8、2.0、2.2及び2.4ミクロン(μm)の電極周期とを有する。40%のデューティファクタにおいては、2.0μmの周期を伴う共振器におけるスプリアスモードがうまく抑制される。図6における共振器は50%のデューティファクタを有しており、2.4μmの周期を伴う共振器におけるスプリアスモードがうまく抑制される。図5及び図6に見られる結果は、共振器のデューティファクタがこの特定のケースでは共振器におけるスプリアス応答を抑制するべく変更されてもよいことを明らかにしている。
この詳細な説明は、電極のデューティファクタを変えることによりスプリアスモードの抑制を達成するために何の条件が必要とされるのかに基づいて論じる。
【0081】
図7及び図8は、90〜180°のY回転における所望のモード及びスプリアスモードの結合係数の依存性を示す幾つかの実施形態に係るグラフである。所望のモード及びスプリアスモードにおける結合係数は、開口及び長さが無限のデバイスにおける理論的な共振速度及び反共振速度vR、vAから決定される。
【数1】
【0082】
複数のモードが存在する場合、各モードの反共振速度は、存在する他のモードの結合強度に依存する。これは、1つのモードの結合の他のモードに対する暗示的な依存性をもたらす。この依存性を除去するために、アドミタンスが以下のように表わされてもよい。
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【0083】
したがって、反共振周波数及び速度、すなわち、方程式(3)及び(5)は、他のモードが存在しない状態で個々のモードが存在した場合に予期されるものの効果的な表示となる。所望のモード及びスプリアスモードにおける結合係数のこの効果的な表示は、FEM/SDAシミュレーションのFEM/BEMを使用して魅力的な物理的実施形態を特定する際に有益である。
【0084】
図9は、幾つかの実施形態に係る127°YX−LN基板におけるスプリアスモードの結合係数の等高線を示すグラフである。図9において、スプリアス結合係数の等高線は、電極の厚さh_el及び誘電保護層の厚さh_doの両方の関数である。図9に表わされる共振器のデューティファクタは、50%に等しく、変化しない。図9に示される破線は、電極厚さ36に対する保護膜厚さ26の比率(例えば、保護膜厚さと電極厚さの比率)に関する特定の値に対応する。SAWデバイスの製造においては、電極厚さ及び保護膜厚さがウエハの全域にわたって一定のままであることが都合良い。このことは、保護膜厚さと電極厚さの比率h_do/h_elが、SAWデバイス10を構成するために使用される全ての共振器、例えば共振器14、16に関して一定であってもよいことを意味する。図9に表わされるh_do/h_elの比率は1、2、3、・・・、7である。図9において、最小スプリアスモード結合は、h_do/h_el=3付近の比率に対応する。
【0085】
図10は、幾つかの実施形態に係る図9に示されるスプリアスモードに伴って起こる所望のモードにおける結合係数を示すグラフである。図10において、破線は、保護膜厚さと電極厚さの一定の比率に対応するが、破線の必要性を排除するために、保護膜厚さと電極厚さの比率(h_do/h_el)及び電極厚さh_elの関数としての結合係数を与えるように等高線が変更されてもよい。図11及び図12は、図9及び図10に見られる同じ情報を表わすが保護膜厚さと電極厚さの比率及び電極厚さの関数としての結合係数を表わすグラフを与える。図11では、無視できるスプリアス含有量が右下に存在する場合がある。図9、10、11における結果は、50%のデューティファクタを有する共振器を表わしている。
【0086】
SAWフィルタを製造するためには、スプリアスモードが電極周期の実質的範囲において抑制されたままであることが望ましい。図9及び図11は、h_el=0.1p〜0.3pの電極厚さ及びh_do=3 h_elの誘電保護膜厚さにおいてスプリアスモードの結合係数が0.0001の値を下回ったままとなり得ることを示している。これは、SAWフィルタの製造にとって十分な抑制となり得る。
【0087】
ニオブ酸リチウム基板のY回転を変更することにより、所望のモードの結合係数を増大させることができる場合がある。 図13、14、15、16は、幾つかの実施形態に係る50%のデューティファクタを有する150°YXLN上に構成される共振器の性能指標を示すグラフである。図13及び図14のグラフはそれぞれ、スプリアスモード及び所望のモードの結合係数を示している。図13は、スプリアスモードの結合係数が最小限に抑えられる場合の位置を表わす破線曲線を含む。図15及び図16のグラフは、幾つかの実施形態に係る50%のデューティファクタを有する150°YX−LN基板上の共振器における共振及び反共振での温度ドリフトに関するモデルを示している。
【0088】
図13の150°YX−LN基板におけるスプリアスモードの結合係数と図11の127°YX−LNのスプリアスモードの結合係数との比較が問題を露呈する。図13においては、スプリアスモードの結合が抑制されたままである周期の実質的範囲が存在しない。結果として、50%のデューティファクタを有する異なる電極周期を有するSAWフィルタの製造が不可能な場合がある。
【0089】
図17及び図18は、幾つかの実施形態に係る40%のデューティファクタを有する150°YX−LN基板上の共振器におけるスプリアスモード及び所望のモードの結合係数をそれぞれ表わすグラフを与える。図13及び図14に見られるように、40%のデューティファクタにおける最小スプリアスモード結合の領域は、50%のデューティファクタにおける最小スプリアスモード結合の領域と比較してシフトしている。これは、スプリアスモード抑制の維持がデューティファクタに影響され、それにより、デバイスの製造が複雑になることを示唆している。しかしながら、異なる周期を有する共振器におけるスプリアスモードを共振器のデューティファクタの調整によって抑制でき、それにより、電極周期に比例してデューティファクタを変えて所望の目的を達成するべく異なる電極周期を有するデバイスを製造できる場合があることも示唆する。
【0090】
図17〜図26は、幾つかの実施形態に係るデューティファクタが40%、45%、50%、55%及び60%から変動する150°YXLN上の共振器におけるスプリアスモード及び所望のモードの結合係数を表わすグラフを与える。各デューティファクタにおいては、破線が最小スプリアスモード結合の位置を表わす。これらのラインのそれぞれが図27に示されている。図27における結果を用いると、スプリアスモードに対する結合が電極周期の実質的範囲にわたって抑制されたままとなるように電極周期に応じたデューティファクタの変化を定めることができる。適切に定められる場合には、これにより、フィルタの共振器のそれぞれにおけるスプリアスモードを抑制しつつ、結合が高いフィルタを製造することができる。
【0091】
50%のデューティファクタに対応する電極周期を基準として選択することにより、正規化された電極周期を表わすべく図27における垂直軸が変えられてもよい。結果が図28のグラフに示されている。図28は、スプリアスモードを抑制するために必要とされる所定のデューティファクタを直線関係によって推定できることを示している。図29は、150°YX−LN基板における所定の関係を示すグラフであり、周期の変化 が+/−25%よりも大きい幾つかの実施形態に係る共振器におけるスプリアスモードを抑制するのに0.4〜0.6のデューティファクタの変化で十分であることを明らかにしている。
【0092】
図30は、幾つかの実施形態に係る2.0の保護膜厚さと電極厚さの比率を有する140°YX−LNにおけるスプリアスモード抑制のための所定の関係を示すグラフである。図31は、幾つかの実施形態にしたがって図30における規定に従う場合に予測されるスプリアスモード結合のレベルにおける等高線を示すグラフである。図31には、SAWフィルタの製造にとって十分な範囲である電極周期の±10%範囲を示すバーが含まれている。図32は、幾つかの実施形態に係る所望のモードの結合係数を示すグラフである。図32と図12との比較は、所望のモードにおける結合係数のかなりの増大が本明細書中に記載されるようにデューティファクタと周期との間の関係を定めることにより達成され得ることを示す。
【0093】
図33は、幾つかの実施形態に係る2.5の保護膜厚さと電極厚さの比率を有する140°YX−LN基板における所定のデューティファクタを示すグラフである。図34及び図35は、幾つかの実施形態に係る図33の規定に起因するスプリアスモード及び所望のモードにおける結合係数を示すグラフである。
【0094】
更なる規定及びそれに伴うスプリアスモード及び所望のモードの結合係数が、YX−LN基板の様々な回転及び保護膜厚さと電極厚さ比率に関して、幾つかの実施形態に係る図37−図46に示されている。Y回転が増大するにつれて、所望のモードの結合係数に関してより大きな値を得ることができる。
【0095】
これらの規定のそれぞれは、以下の形を成す線形関係により特徴付けられる。
【数6】
ここで、p_refは、SAWデバイスの最小電極周期p_minとSAWデバイスの最大電極周期p_maxとの間の値であり、a_ref/p_refはa_max/p_maxとa_min/p_minとの間の値であり、この場合、a_maxはSAWデバイスの最大電極幅であり、a_minはSAWデバイスの最小電極幅である。
【0096】
所定の勾配を規定する変数mは、YX−LN基板のY回転及び保護膜厚さと電極厚さの比率に依存する場合がある。Y回転及び保護膜厚さと電極厚さの比率に対する所定の勾配の依存性が図48のグラフに示されている。所定の勾配が約0.4〜1.0の間にあってもよい。所定の実施形態における公称電極厚さが図49に示されている。所定の電極厚さは、約0.1*p_ref<h_el<0.4*p_refの範囲内であってもよい。
【0097】
従来技術とは異なり、電極幅は、電極の周期に機能的に依存するように定められる。この規定は、大きな結合係数と低い温度ドリフトとを伴ってSAWフィルタを製造できるようにする実用性を与える。
【0098】
図50、51、52は、電極周期とデューティファクタとの間の所定の関係を使用して製造される共振器における共振及び反共振での結合係数及び温度ドリフトを示すグラフを与える。規定された関係を使用しないで製造される127°YX−LN基板上の共振器と比べて著しい向上が明らかである。これらの実施形態の値を例示するために、平面SiOx誘電保護膜を有する重い銅電極が使用された。しかしながら、電極の組成は銅である必要はない。本発明の教示内容と一致する任意の重い金属又は導電材料が使用されてもよく、また、これらに本発明が及ぶものである。140〜170°のY回転のYX−LN基板について言及してきたが、この発明は、他のYX−LN基板においても実用性を有し得る。170及び180YX−LN基板は、それらの高い結合係数に起因して特に魅力的である。例えば図8を参照されたい。非平面SiOx誘電保護膜も本発明の実施形態に含められるように意図される。誘電保護膜が更なる誘電体層を含んでもよい。例えば、窒化ケイ素層が、SiOx層の上端に堆積されて、正確な周波数の調整をもたらすような厚さでトリミングされてもよい。第2の例として、窒化アルミニウムの層が他の層の上端に堆積され、それにより、境界波(又は界面波)が引き起こされるように窒化アルミニウム層の下側の波が捕捉されてもよい。誘電保護膜は、溝、ドット、ボイド、又は、他の幾何学的形態をもたらして開示される好ましい実施形態と一致したままとなるように、それらの表面がエッチングされ或いはパターニングされてもよい。
【0099】
本発明の多くの変更及び他の実施形態は、当業者が想起でき、先の説明及び関連する図面で与えられる教示の利点を有する。したがって、本発明が開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、また、改変及び実施形態が添付の特許請求の範囲内に含まれるように意図されることは言うまでもない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、表面弾性波(SAW)デバイスに関し、特に、強力な電気機械結合と、低いスプリアス応答と、無線通信のための高周波(RF)フィルタリングにおける用途にとって望ましい周波数-温度特性とを有するSAWデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
SAWデバイス(“SAWフィルタ”と称されてもよい)は、高い電気機械結合係数を有する圧電基板上に形成される共振器型構造により与えられる低い挿入損失及びそれらの小さいサイズの結果として、無線通信システムでうまく用いられている。そのようなデバイスは、一般に、高い電気機械結合係数によって特徴付けられる低減衰準バルク漏洩表面弾性波(LSAW)を利用する。そのような波は、同じ3m対称クラスに属する2つの圧電性結晶において存在することが知られている。既知の結晶は、タンタル酸リチウムLiTaO3(LT)及びニオブ酸リチウムLiNbO3(LN)である。
【0003】
最近、漏洩しない準剪断水平波デバイスを使用して製造されるデバイスが報告されている。漏洩効果の抑制は、弾性波が伝搬する表面に例えば電極及び/又は誘電保護膜で十分に負荷を与えて波の速度をその値が同じ方向で伝搬する遅い準剪断バルク波の値よりも小さくなるように遅らせるときに生じる。
【0004】
既知のSAWデバイスは、Y回転X伝搬ニオブ酸リチウム(YX−LN)基板上に堆積されるとともにプラスの周波数温度係数(TCF)を有する誘電保護膜の下側に埋め込まれる重金属電極を含む。これらのデバイスは、Y回転X伝搬タンタル酸リチウム(YX−LT)基板を指向して形成されるデバイスに関しては見出されない難題に見舞われる場合がある。例えば、フィルタの通過帯域で著しいスプリアス応答をもたらし得るYX−LN基板の表面上を伝搬する第2の弾性波モードが見出される。
【0005】
従来のSAWデバイスの性能特性は、主に、その電気機械結合係数、伝搬の減衰、TCF、及び、スプリアス弾性波モードの不存在に依存し得る。YX−LN基板では、2つのSAWモードが異なる速度と異なる電気機械結合係数とを伴って伝搬し得る。更に高い結合を伴うSAWモードを利用するSAWデバイスでは、低い結合を伴うSAWモードがスプリアス応答をもたらす。したがって、SAWデバイスの性能は、スプリアス応答が抑制される度合いに依存し得る。以下、説明の都合上、高結合モードを「所望のモード」と称する場合があり、また、低結合モードを「スプリアスモード」と称する場合がある。
【0006】
2つのSAWモードの分極は、基板の回転角、機械的負荷(基板の表面上の電極の特性に依存し得る)、及び、電気的な境界条件に依存し得る。分極成分は、一般に、縦(L)成分、剪断水平(SH)成分、及び、剪断垂直(SV)成分を含む場合がある。SH成分又はL成分とSV成分との組み合わせの寄与度が特定の回転角においてゼロになる場合があり、それにより、L成分とSV成分との対応する組み合わせ或いはSH成分がそのような選択された方向で伝搬できる。これにより、分極を使用して、任意の回転角及び電極厚さ(又は質量)に関して2つのSAWモード間を区別することが困難になり得る。
【0007】
したがって、任意の回転角及び電極厚さ(又は質量)に関して、これらの2つのSAWモード間をそれらの分極を調べることにより区別できない場合がある。代わりに、それらの伝搬速度が使用される場合がある。あるいは、かなり大きい結合係数を有するSAWモードが「所望のSAWモード」と見なされる場合があり、また、より弱いSAWモードが「スプリアスSAWモード」と見なされる場合がある。
【0008】
無負荷表面の場合、すなわち、電極がその上に配置されていない表面の場合、YX−LN基板中で伝搬する2つのSAWモードのうちの一方は、基板回転角とは無関係に、同じ基板中で伝搬する遅い剪断バルク波よりも遅い。この比較的ゆっくりと移動するSAWモードの分極へのSH成分の寄与度は、表面が無負荷の場合、任意の伝搬角に関して小さい場合がある。その垂直剪断成分及び縦成分と比べて小さい水平剪断成分を有するこの比較的ゆっくりと移動するSAWモードは、時として、レイリー型波と称される場合がある。
【0009】
比較的速く移動するSAWモードの速度は、表面が無負荷の場合には、遅い剪断バルク波の速度と速い剪断バルク波の速度との間にあり、そのため、この波が漏れやすくなる。この波は、表面に十分に負荷が与えられるときには「漏れなく」なる。比較的速く移動するSAWモードは、時として、ラブ型波と称される場合がある。ラブ型波は、レイリー型波と比べて比較的大きいSH成分を含む場合があるが、一般にSH分極されない。
【発明の概要】
【0010】
SAWデバイスの性能を高めるために多大な努力がなされてきたが、強力な電気機械結合と、低いスプリアス応答と、無線通信のための高周波(RF)フィルタリングにおける用途にとって望ましい周波数-温度特性とを同時に示すSAWデバイスの必要性が依然としてある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面に関連して一例として開示される本明細書中の実施形態の以下の詳細な説明から更に明らかになる。
【0012】
【図1】図1は、2つ以上の共振器及び電極間隔を伴う2つ以上の電極周期が、各共振器ごとにスプリアスモードにおける結合係数を抑制するべく特定の幅に調整される、幾つかの実施形態に係る1つのSAWデバイスを示す図式的な断面図である。
【0013】
【図2】図2は、本明細書中で規定されるオイラー角(λ、μ、θ)を図式的に示している。
【0014】
【図3】図3は、所望のモード及びスプリアスモードの両方における応答を含む1ポート共振器のアドミタンス周波数応答を示すグラフである。
【0015】
【図4】図4は、スプリアスモードの応答を含む1ポート共振器を使用する一対のフィルタにおける通過帯域を示すグラフである。
【0016】
【図5】図5は、電極周期(p)に対する電極幅(a)の比率(以下、この比率が「デューティファクタ」とも称される)が0.4である幾つかの実施形態に係る共振器を示すグラフである。
【0017】
【図6】図6は、デューティファクタが0.5である幾つかの実施形態に係る共振器を示すグラフである。
【0018】
【図7】図7は、電極厚さ(h_el)を周期(p)で割った値が0.10に等しく且つ誘電保護膜厚さ(h_do)を周期(p)で割った値が0.60に等しい幾つかの実施形態に係るYX−LN基板に関する所望のモード及びスプリアスモードにおける結合係数を示すグラフである。
【0019】
【図8】図8は、h_el/p=0.30及びh_do/p=0.60である幾つかの実施形態に係るYX−LN基板に関する所望のモード及びスプリアスモードにおける結合係数を示すグラフである。
【0020】
【図9】図9は、幾つかの実施形態に係る127°YX−LN基板に関するスプリアスモード(log10(K2))における結合係数を示すグラフである。
【0021】
【図10】図10は、幾つかの実施形態に係る127°YXLN基板における結合係数パーセンテージを示すグラフである。
【0022】
【図11】図11は、幾つかの実施形態に係る127°YX−LN基板に関するスプリアスモード(log10(K2))における結合係数を示すグラフである。
【0023】
【図12】図12は、幾つかの実施形態に係る127°YXLN基板における結合係数パーセンテージを示すグラフである。
【0024】
【図13】図13は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するスプリアスモード(log10(K2))における結合係数を示すグラフである。
【0025】
【図14】図14は、150°YX−LN基板における結合係数パーセンテージを示すグラフである。
【0026】
【図15】図15は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板における共振でのTCFを示すグラフである。
【0027】
【図16】図16は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板における反共振でのTCFを示すグラフである。
【0028】
【図17】図17は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタ a/p=0.4の銅電極を有するデバイスにおけるスプリアスモード結合(log10(K2))を示すグラフである。
【0029】
【図18】図18は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタa/p=0.4の銅電極を有するデバイスにおける結合パーセンテージを示すグラフである。
【0030】
【図19】図19は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタa/p=0.45の銅電極を有するデバイスにおけるスプリアスモード結合(log10(K2))を示すグラフである。
【0031】
【図20】図20は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタa/p=0.45の銅電極を有するデバイスにおける結合パーセンテージを示すグラフである。
【0032】
【図21】図21は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタa/p=0.5の銅電極を有するデバイスにおけるスプリアスモード結合(log10(K2))を示すグラフである。
【0033】
【図22】図22は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタa/p=0.5の銅電極を有するデバイスにおける結合パーセンテージを示すグラフである。
【0034】
【図23】図23は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタa/p=0.55の銅電極を有するデバイスにおけるスプリアスモード結合(log10(K2))を示すグラフである。
【0035】
【図24】図24は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタa/p=0.55の銅電極を有するデバイスにおける結合パーセンテージを示すグラフである。
【0036】
【図25】図25は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタa/p=0.6の銅電極を有するデバイスにおけるスプリアスモード結合(log10(K2))を示すグラフである。
【0037】
【図26】図26は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタa/p=0.6の銅電極を有するデバイスにおける結合パーセンテージを示すグラフである。
【0038】
【図27】図27は、幾つかの実施形態に係る150°YX−LN基板に関するデューティファクタa/p=0.4、0.45、0.5、0.55、0.6の銅電極を有するデバイスにおける最小スプリアスモードのラインを示すグラフである。
【0039】
【図28】図28は、幾つかの実施形態における保護膜厚さと電極厚さの比率及び正規化された周期に応じた一定デューティフアクタにおけるスプリアスフリーラインを示すグラフである。
【0040】
【図29】図29は、150°YX−LN基板を有するh_do/h_el=2.0の幾つかの実施形態に係るデバイスにおける周期に伴ってほぼ線形のスプリアスデューティファクタを示すグラフである。
【0041】
【図30】図30は、140°YX−LN基板を有するh_do/h_el=2.0の幾つかの実施形態に係るデバイスにおける周期に伴ってほぼ線形のスプリアスフリーデューティファクタを示すグラフである。
【0042】
【図31】図31は、周期の幅広い変化においてスプリアス結合を無視できることを示す幾つかの実施形態に係るグラフである。
【0043】
【図32】図32は、幾つかの実施形態に係るスプリアス含有量が無視できる領域にわたる結合係数パーセンテージを示すグラフである。
【0044】
【図33】図33は、140°YX−LN基板を有するh_do/h_el=2.5の幾つかの実施形態に係るデバイスにおける周期に伴ってほぼ線形のスプリアスフリーデューティファクタを示すグラフである。
【0045】
【図34】図34は、周期の幅広い変化においてスプリアス結合を無視できることを示す幾つかの実施形態に係るグラフである。
【0046】
【図35】図35は、幾つかの実施形態に係るスプリアス含有量が無視できる領域にわたる結合係数パーセンテージを示すグラフである。
【0047】
【図36】図36は、150°YX−LN基板を有するh_do/h_el=2.0の幾つかの実施形態に係るデバイスにおける周期に伴ってほぼ線形のスプリアスフリーデューティファクタを示すグラフである。
【0048】
【図37】図37は、周期の幅広い変化においてスプリアス結合を無視できることを示す幾つかの実施形態に係るグラフである。
【0049】
【図38】図38は、幾つかの実施形態に係るスプリアス含有量が無視できる領域にわたる結合係数パーセンテージを示すグラフである。
【0050】
【図39】図39は、150°YX−LN基板を有するh_do/h_el=2.5の幾つかの実施形態に係るデバイスにおいてスプリアスフリーデューティファクタが周期に伴ってほぼ線形であることを示すグラフである。
【0051】
【図40】図40は、周期の幅広い変化においてスプリアス結合を無視できることを示す幾つかの実施形態に係るグラフである。
【0052】
【図41】図41は、スプリアス含有量が無視できる領域にわたる結合係数パーセンテージが127°及び140°のYX−LN基板を有する幾つかの実施形態に係るデバイスと比べて向上されることを示すグラフである。
【0053】
【図42】図42は、160°YX−LN基板を有するh_do/h_el=2.0の幾つかの実施形態に係るデバイスにおいてスプリアスフリーデューティファクタが周期に伴ってほぼ線形であることを示すグラフである。
【0054】
【図43】図43は、周期の幅広い変化においてスプリアス結合を無視できることを示す幾つかの実施形態に係るグラフである。
【0055】
【図44】図44は、スプリアス含有量が無視できる領域にわたる結合係数パーセンテージが127°、140°、及び、150°のYX−LN基板を有する幾つかの実施形態に係るデバイスと比べて向上されることを示すグラフである。
【0056】
【図45】図45は、160°YX−LN基板を有するh_do/h_el=2.5の幾つかの実施形態に係るデバイスにおいてスプリアスフリーデューティファクタが周期に伴ってほぼ線形であることを示すグラフである。
【0057】
【図46】図46は、周期の幅広い変化においてスプリアス結合を無視できることを示す幾つかの実施形態に係るグラフである。
【0058】
【図47】図47は、スプリアス含有量が無視できる領域にわたる結合係数パーセンテージが127°、140°、及び、150°のYX−LN基板を有する幾つかの実施形態に係るデバイスと比べて向上されることを示すグラフである。
【0059】
【図48】図48は、幾つかの実施形態に係る保護膜-対-電極厚さの比率及びy回転に応じたデューティファクタ勾配(α)の等高線を示すグラフである。
【0060】
【図49】図49は、幾つかの実施形態に係る保護膜厚さと電極厚さの比率及びy回転に応じた電極厚さ/基準周期(p_ref)の等高線を示すグラフである。
【0061】
【図50】図50は、幾つかの実施形態に係る保護膜厚さと電極厚さの比率及びy回転に応じた結合係数(K2 in %)の等高線を示すグラフである。
【0062】
【図51】図51は、幾つかの実施形態に係る保護膜厚さと電極厚さの比率及びy回転に応じた共振周波数TCF(ppm/°C)の等高線を示すグラフである。
【0063】
【図52】図52は、幾つかの実施形態に係る保護膜厚さと電極厚さの比率及びy回転に応じた反共振周波数TCF(ppm/°C)の等高線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
ここで、以下、本発明の好ましい実施形態が示される添付図面を参照して、本発明を更に十分に説明する。別に規定されなければ、本明細書中で使用される技術用語及び科学用語は、この発明が出願日に関連する当該技術において共通に理解される意味と同じ意味を有するように意図される。本明細書中に記載される方法及び材料と同様の或いは等価な様々な方法及び材料を本発明の実施又は試験で使用できるが、以下では適した方法及び材料が記載される。しかしながら、当業者であれば分かるように、使用されて記載される方法及び材料は、一例であって、本発明で用いるのに適する唯一の方法及び材料でない場合がある。
【0065】
また、本明細書中で与えられる温度、重量、体積、時間間隔、範囲、他の測定値、量、及び、数式は、それに反することが明確に述べられていなければ、おおよそのものであって、正確な値又は臨界値ではないように意図されていることは言うまでもない。本発明に適切な場合には、当業者により理解されるように、寸法付けられる、約、おおよそ、実質的に、本質的に、備える、など、出願で一般に使用される近似的な或いは相対的な用語及び度合いの用語を用いて本発明の様々な態様について説明することが適切である。
【0066】
与えられる材料、方法、及び、実施例は、実際は単なる例示であり、限定しようとするものではない。
【0067】
したがって、この発明は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、また、本明細書中に記載される例示的な実施形態に限定されると解釈されるべきでない。むしろ、これらの例示的な実施形態は、この開示が完全で、完備しているとともに、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように与えられる。
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかである。
【0068】
最初に図1を参照すると、ここには、本発明の1つの実施形態が、一例として、表面弾性波(SAW)デバイス10として記載されており、該デバイス10は、弾性波、例えば漏洩弾性波の伝搬を行なうために、基板12、例えば単結晶圧電基板を備える。本明細書中に一例として記載される実施形態の場合には、第1及び第2の共振器14、16が基板12の表面22上の第1及び第2の電極パターン18、20によって形成される。第1の共振器14は、電極30間及び電極30上にわたって配置される厚さ26(h_doとも称される)の酸化ケイ素層の形態を成すプラスのTCFを有する誘電保護膜24と、電極周期28(p1とも称される)と、電極幅32(a1とも称される)を有する電極30とを有する。第2の共振器16は、酸化ケイ素の誘電保護膜24を第1の共振器18と共有するとともに、電極周期28A(p2とも称される)と、電極幅32A(a2とも称される)を有する電極30Aとを有する。
【0069】
様々な実施形態において、電極の周期と幅との間の関係は、特に、SAWデバイス10の効率的な動作を容易にするように設定されてもよい。効率的な動作としては、例えば、強力な電気機械結合係数を示すこと、小さい周波数温度係数(TCF)を有すること、及び/又は、スプリアスモードのロバスト抑制を挙げることができる。幾つかの実施形態において、電極周期に対する電極幅の関係は、各電極周期、例えばp1が電極周期に対する電極幅のそれぞれの比率、例えばa1/p1と関連付けられるようになっていてもよい。電極周期に対する電極幅の比率が「デューティファクタ」と称されてもよい。したがって、例えば、実施形態は、複数の異なる電極周期をもって配置される電極を有してもよく、この場合、複数の異なる電極周期のそれぞれは、電極周期に対する電極幅のそれぞれの比率と関連付けられる。図1に示される実施形態は一般に2つの共振器を描いており、この場合、各共振器内の電極は、共通の電極周期及び幅を有する。しかしながら、他の実施形態は他の数の共振器を有してもよく、その場合、共振器のうちの1つ以上が1つ以上の異なる電極周期及び/又は電極幅を有する。
【0070】
幾つかの実施形態では、電極30、30Aの幅32、32Aが定められた関係にしたがう。この関係は、幾つかの実施形態によれば、隣接する電極間の正規化された間隔(pN-aN)/pNを使用して都合良く表わされる。一例として、第1の共振器14の周期28が第2の共振器16の周期28Aよりも小さい場合、すなわち、(p1<p2)の場合には、第1の共振器14の電極30間の相対間隔が、第2の共振器16の電極30A間の相対間隔よりも大きくなる。すなわち、(p1-a1)/p1>(p2-a2)/p2となる。
【0071】
幾つかの実施形態では、第1及び第2の共振器の電極間の間隔が共振器の電極周期に反比例し、したがって、電極周期が減少するにつれて前記間隔が増大する。すなわち、a2/p2>a1/p1となる。
【0072】
幾つかの実施形態において、2つの共振器14、16は、関係(a1-a2)/(p1-p2)>1を満たすそれぞれの電極周期28、28A及び幅32、32Aを有してもよい。
【0073】
本明細書中に一例として記載される実施形態に関しては、本明細書中で一例として与えられて記載される結果として得られる性能データから、電極30、30Aの質量が、主に、「重い電極」と称されてもよいものを与える銅(Cu)によって与えられてもよい。これらの重い電極は、誘電保護膜24の密度を実質的に超える密度を有してもよい。幾つかの実施形態において、電極30、30Aの長さ寸法、例えば厚さ36(h_elとも称される)又は幅(a)は、主に、1つ以上の他の材料、例えばアルミニウムによって与えられる。様々な実施形態において、厚さ36は、個々の電極と関連付けられる周期の約10〜40パーセントの範囲内にあってもよい。様々な実施形態において、厚さ36は、個々の電極と関連付けられる周期の約15〜25パーセントの範囲内にあってもよい。厚さ36は図1の電極の全てにおいてほぼ同じであるように示されているが、他の実施形態では、様々な電極厚さが使用されてもよい。
【0074】
幾つかの実施形態において、重い電極、例えば電極30、30Aは、基板12上に存在する漏れやすい波、例えばLSAWが十分に遅らされるようにし、それにより、波速度が遅い剪断バルク波の速度未満に減少されるようにしてもよい。そのような場合には、バルク弾性波中へ漏れるLSAWエネルギーに起因するこれらのLSAWの漏れ性を抑制できる。
【0075】
重い電極の形態の選択は、スプリアスモードの応答が抑制されてフィルタの応答に対する任意の悪影響を制限するようにするべく誘電保護膜24の厚さ26の好ましい選択に伴うものでもよい。幾つかの実施形態において、電極の上端から誘電保護膜24の上端面まで測定されてもよい厚さ26は、厚さ36の約3倍〜4倍より小さくてもよい。幾つかの実施形態では、厚さ36に関連する厚さ26がほぼh_el<h_do<4*h_elの範囲内にあってもよい。幾つかの実施形態において、厚さ26は、基準電極周期の約20パーセントから基準電極周期の約80パーセントまでの範囲内であってもよい。基準電極周期は、特定のSAWデバイスの任意の電極周期であってもよく、あるいは、さもなければSAWデバイスの電極周期、例えば平均電極周期に基づいてもよい。随意的に、厚さ26は、基板12の表面上で励起されるSAWの弾性波長の0〜75パーセントの範囲であってもよい。
【0076】
様々な実施形態において、基板12は、5%を超える電気機械結合係数を有してもよく、また、オイラー角(0±3°、μ、0±3°)により規定される方向性を有してもよい。ここで、角度μ=μ’−90であり、μ’は約140°〜約170°の範囲である。オイラー角(λ、μ、θ)は、本明細書では、図2に更に関連して前述したように規定される。
【0077】
本実施形態は、ここでは、有限要素法/境界要素法(FEM/BEM)又は有限要素法/スペクトル領域解析(FEM/SDA)を使用してYX−LN基板における所望のモード及びスプリアスモードの挙動を計算する解析を適用して例示される。特に、各モードの結合及び速度の依存性が推定された。
【0078】
本発明の実施形態からの実験結果を検討する前に、スプリアスモードの応答を含む1ポート共振器における周波数の関数としてのアドミタンスを示す図3のグラフを参照して、当該技術分野における典型的な結果を一例として考察する。そのようなスプリアスモードは、フィルタ応答を著しく低下させ得る。図4は、従来技術のフィルタの応答を示すグラフである。フィルタの通過帯域におけるノッチは、スプリアスモードの存在に起因する。市販のSAWフィルタにおける適用においては、そのようなスプリアス応答を克服する必要がある。
【0079】
スプリアス応答の抑制は特別な注意を必要とする。ある程度の抑制は、電極厚さと誘電保護膜の厚さとの適切な選択と組み合わせとによって達成されてもよい。
【0080】
ここで、図5及び図6を参照すると、150°YXLN基板上に形成される1ポート共振器のアドミタンスの実験測定値を示すためにグラフが示されており、この場合、共振器における電極隙間、例えば電極間の間隔は、幾つかの実施形態によれば1.2μmである。図5における共振器は、40%のデューティファクタ(a/p=0.4)と、1.6、1.8、2.0、2.2及び2.4ミクロン(μm)の電極周期とを有する。40%のデューティファクタにおいては、2.0μmの周期を伴う共振器におけるスプリアスモードがうまく抑制される。図6における共振器は50%のデューティファクタを有しており、2.4μmの周期を伴う共振器におけるスプリアスモードがうまく抑制される。図5及び図6に見られる結果は、共振器のデューティファクタがこの特定のケースでは共振器におけるスプリアス応答を抑制するべく変更されてもよいことを明らかにしている。
この詳細な説明は、電極のデューティファクタを変えることによりスプリアスモードの抑制を達成するために何の条件が必要とされるのかに基づいて論じる。
【0081】
図7及び図8は、90〜180°のY回転における所望のモード及びスプリアスモードの結合係数の依存性を示す幾つかの実施形態に係るグラフである。所望のモード及びスプリアスモードにおける結合係数は、開口及び長さが無限のデバイスにおける理論的な共振速度及び反共振速度vR、vAから決定される。
【数1】
【0082】
複数のモードが存在する場合、各モードの反共振速度は、存在する他のモードの結合強度に依存する。これは、1つのモードの結合の他のモードに対する暗示的な依存性をもたらす。この依存性を除去するために、アドミタンスが以下のように表わされてもよい。
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【0083】
したがって、反共振周波数及び速度、すなわち、方程式(3)及び(5)は、他のモードが存在しない状態で個々のモードが存在した場合に予期されるものの効果的な表示となる。所望のモード及びスプリアスモードにおける結合係数のこの効果的な表示は、FEM/SDAシミュレーションのFEM/BEMを使用して魅力的な物理的実施形態を特定する際に有益である。
【0084】
図9は、幾つかの実施形態に係る127°YX−LN基板におけるスプリアスモードの結合係数の等高線を示すグラフである。図9において、スプリアス結合係数の等高線は、電極の厚さh_el及び誘電保護層の厚さh_doの両方の関数である。図9に表わされる共振器のデューティファクタは、50%に等しく、変化しない。図9に示される破線は、電極厚さ36に対する保護膜厚さ26の比率(例えば、保護膜厚さと電極厚さの比率)に関する特定の値に対応する。SAWデバイスの製造においては、電極厚さ及び保護膜厚さがウエハの全域にわたって一定のままであることが都合良い。このことは、保護膜厚さと電極厚さの比率h_do/h_elが、SAWデバイス10を構成するために使用される全ての共振器、例えば共振器14、16に関して一定であってもよいことを意味する。図9に表わされるh_do/h_elの比率は1、2、3、・・・、7である。図9において、最小スプリアスモード結合は、h_do/h_el=3付近の比率に対応する。
【0085】
図10は、幾つかの実施形態に係る図9に示されるスプリアスモードに伴って起こる所望のモードにおける結合係数を示すグラフである。図10において、破線は、保護膜厚さと電極厚さの一定の比率に対応するが、破線の必要性を排除するために、保護膜厚さと電極厚さの比率(h_do/h_el)及び電極厚さh_elの関数としての結合係数を与えるように等高線が変更されてもよい。図11及び図12は、図9及び図10に見られる同じ情報を表わすが保護膜厚さと電極厚さの比率及び電極厚さの関数としての結合係数を表わすグラフを与える。図11では、無視できるスプリアス含有量が右下に存在する場合がある。図9、10、11における結果は、50%のデューティファクタを有する共振器を表わしている。
【0086】
SAWフィルタを製造するためには、スプリアスモードが電極周期の実質的範囲において抑制されたままであることが望ましい。図9及び図11は、h_el=0.1p〜0.3pの電極厚さ及びh_do=3 h_elの誘電保護膜厚さにおいてスプリアスモードの結合係数が0.0001の値を下回ったままとなり得ることを示している。これは、SAWフィルタの製造にとって十分な抑制となり得る。
【0087】
ニオブ酸リチウム基板のY回転を変更することにより、所望のモードの結合係数を増大させることができる場合がある。 図13、14、15、16は、幾つかの実施形態に係る50%のデューティファクタを有する150°YXLN上に構成される共振器の性能指標を示すグラフである。図13及び図14のグラフはそれぞれ、スプリアスモード及び所望のモードの結合係数を示している。図13は、スプリアスモードの結合係数が最小限に抑えられる場合の位置を表わす破線曲線を含む。図15及び図16のグラフは、幾つかの実施形態に係る50%のデューティファクタを有する150°YX−LN基板上の共振器における共振及び反共振での温度ドリフトに関するモデルを示している。
【0088】
図13の150°YX−LN基板におけるスプリアスモードの結合係数と図11の127°YX−LNのスプリアスモードの結合係数との比較が問題を露呈する。図13においては、スプリアスモードの結合が抑制されたままである周期の実質的範囲が存在しない。結果として、50%のデューティファクタを有する異なる電極周期を有するSAWフィルタの製造が不可能な場合がある。
【0089】
図17及び図18は、幾つかの実施形態に係る40%のデューティファクタを有する150°YX−LN基板上の共振器におけるスプリアスモード及び所望のモードの結合係数をそれぞれ表わすグラフを与える。図13及び図14に見られるように、40%のデューティファクタにおける最小スプリアスモード結合の領域は、50%のデューティファクタにおける最小スプリアスモード結合の領域と比較してシフトしている。これは、スプリアスモード抑制の維持がデューティファクタに影響され、それにより、デバイスの製造が複雑になることを示唆している。しかしながら、異なる周期を有する共振器におけるスプリアスモードを共振器のデューティファクタの調整によって抑制でき、それにより、電極周期に比例してデューティファクタを変えて所望の目的を達成するべく異なる電極周期を有するデバイスを製造できる場合があることも示唆する。
【0090】
図17〜図26は、幾つかの実施形態に係るデューティファクタが40%、45%、50%、55%及び60%から変動する150°YXLN上の共振器におけるスプリアスモード及び所望のモードの結合係数を表わすグラフを与える。各デューティファクタにおいては、破線が最小スプリアスモード結合の位置を表わす。これらのラインのそれぞれが図27に示されている。図27における結果を用いると、スプリアスモードに対する結合が電極周期の実質的範囲にわたって抑制されたままとなるように電極周期に応じたデューティファクタの変化を定めることができる。適切に定められる場合には、これにより、フィルタの共振器のそれぞれにおけるスプリアスモードを抑制しつつ、結合が高いフィルタを製造することができる。
【0091】
50%のデューティファクタに対応する電極周期を基準として選択することにより、正規化された電極周期を表わすべく図27における垂直軸が変えられてもよい。結果が図28のグラフに示されている。図28は、スプリアスモードを抑制するために必要とされる所定のデューティファクタを直線関係によって推定できることを示している。図29は、150°YX−LN基板における所定の関係を示すグラフであり、周期の変化 が+/−25%よりも大きい幾つかの実施形態に係る共振器におけるスプリアスモードを抑制するのに0.4〜0.6のデューティファクタの変化で十分であることを明らかにしている。
【0092】
図30は、幾つかの実施形態に係る2.0の保護膜厚さと電極厚さの比率を有する140°YX−LNにおけるスプリアスモード抑制のための所定の関係を示すグラフである。図31は、幾つかの実施形態にしたがって図30における規定に従う場合に予測されるスプリアスモード結合のレベルにおける等高線を示すグラフである。図31には、SAWフィルタの製造にとって十分な範囲である電極周期の±10%範囲を示すバーが含まれている。図32は、幾つかの実施形態に係る所望のモードの結合係数を示すグラフである。図32と図12との比較は、所望のモードにおける結合係数のかなりの増大が本明細書中に記載されるようにデューティファクタと周期との間の関係を定めることにより達成され得ることを示す。
【0093】
図33は、幾つかの実施形態に係る2.5の保護膜厚さと電極厚さの比率を有する140°YX−LN基板における所定のデューティファクタを示すグラフである。図34及び図35は、幾つかの実施形態に係る図33の規定に起因するスプリアスモード及び所望のモードにおける結合係数を示すグラフである。
【0094】
更なる規定及びそれに伴うスプリアスモード及び所望のモードの結合係数が、YX−LN基板の様々な回転及び保護膜厚さと電極厚さ比率に関して、幾つかの実施形態に係る図37−図46に示されている。Y回転が増大するにつれて、所望のモードの結合係数に関してより大きな値を得ることができる。
【0095】
これらの規定のそれぞれは、以下の形を成す線形関係により特徴付けられる。
【数6】
ここで、p_refは、SAWデバイスの最小電極周期p_minとSAWデバイスの最大電極周期p_maxとの間の値であり、a_ref/p_refはa_max/p_maxとa_min/p_minとの間の値であり、この場合、a_maxはSAWデバイスの最大電極幅であり、a_minはSAWデバイスの最小電極幅である。
【0096】
所定の勾配を規定する変数mは、YX−LN基板のY回転及び保護膜厚さと電極厚さの比率に依存する場合がある。Y回転及び保護膜厚さと電極厚さの比率に対する所定の勾配の依存性が図48のグラフに示されている。所定の勾配が約0.4〜1.0の間にあってもよい。所定の実施形態における公称電極厚さが図49に示されている。所定の電極厚さは、約0.1*p_ref<h_el<0.4*p_refの範囲内であってもよい。
【0097】
従来技術とは異なり、電極幅は、電極の周期に機能的に依存するように定められる。この規定は、大きな結合係数と低い温度ドリフトとを伴ってSAWフィルタを製造できるようにする実用性を与える。
【0098】
図50、51、52は、電極周期とデューティファクタとの間の所定の関係を使用して製造される共振器における共振及び反共振での結合係数及び温度ドリフトを示すグラフを与える。規定された関係を使用しないで製造される127°YX−LN基板上の共振器と比べて著しい向上が明らかである。これらの実施形態の値を例示するために、平面SiOx誘電保護膜を有する重い銅電極が使用された。しかしながら、電極の組成は銅である必要はない。本発明の教示内容と一致する任意の重い金属又は導電材料が使用されてもよく、また、これらに本発明が及ぶものである。140〜170°のY回転のYX−LN基板について言及してきたが、この発明は、他のYX−LN基板においても実用性を有し得る。170及び180YX−LN基板は、それらの高い結合係数に起因して特に魅力的である。例えば図8を参照されたい。非平面SiOx誘電保護膜も本発明の実施形態に含められるように意図される。誘電保護膜が更なる誘電体層を含んでもよい。例えば、窒化ケイ素層が、SiOx層の上端に堆積されて、正確な周波数の調整をもたらすような厚さでトリミングされてもよい。第2の例として、窒化アルミニウムの層が他の層の上端に堆積され、それにより、境界波(又は界面波)が引き起こされるように窒化アルミニウム層の下側の波が捕捉されてもよい。誘電保護膜は、溝、ドット、ボイド、又は、他の幾何学的形態をもたらして開示される好ましい実施形態と一致したままとなるように、それらの表面がエッチングされ或いはパターニングされてもよい。
【0099】
本発明の多くの変更及び他の実施形態は、当業者が想起でき、先の説明及び関連する図面で与えられる教示の利点を有する。したがって、本発明が開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、また、改変及び実施形態が添付の特許請求の範囲内に含まれるように意図されることは言うまでもない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニオブ酸リチウム(LiNbO3)を含むとともに弾性波の伝搬を行なうように構成される基板と、
前記基板の表面上の複数の電極によって形成される1つ以上の共振器であって、前記複数の電極が個々の幅を有するとともに複数の異なる電極周期をもって配置され、前記複数の異なる電極周期のそれぞれが電極周期に対する電極幅のそれぞれの比率と関連付けられる1つ以上の共振器と、
前記複数の電極間及び前記複数の電極上にわたって配置される誘電保護膜と、
を備える表面弾性波(SAW)デバイス。
【請求項2】
電極周期に対する電極幅の比率がa/p=a_ref/p_ref+m*(p/p_ref-1)によって与えられ、ここで、aが電極幅であり、pが電極周期であり、mが約0.4〜1.0の勾配値であり、p_refがSAWデバイスの最小電極周期(p_min)とSAWデバイスの最大電極周期(p_max)との間の値であり、a_ref/p_refがa_max/p_max とa_min/p_minとの間の値であり、a_maxがSAWデバイスの最大電極幅であり、a_minがSAWデバイスの最小電極幅である、請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項3】
mが約0.5である請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項4】
前記基板が約5パーセントよりも大きい電気機械結合係数を有する請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項5】
前記誘電保護膜は、酸化ケイ素(SiOx)を備えるとともに、プラスの周波数温度係数(TCF)と、前記複数の電極の上端面から前記誘電保護膜の上端面まで測定される前記複数の電極の厚さよりも大きい厚さとを有する、請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項6】
電極周期に対する電極幅の前記比率は、前記複数の電極の厚さに対する前記誘電保護膜の厚さの比率に更に基づいている請求項5に記載のSAWデバイス。
【請求項7】
前記誘電保護膜の厚さが前記複数の電極の厚さの約3倍よりも小さい請求項5に記載のSAWデバイス。
【請求項8】
前記誘電保護膜の厚さは、電極周期の約20パーセントから電極周期の約80パーセントまでの範囲内にある請求項5に記載のSAWデバイス。
【請求項9】
前記複数の異なる電極周期は、それぞれが周期に対する電極幅のそれぞれの比率に関連付けられる少なくとも3つの異なる電極周期を含む請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項10】
個々の電極の質量が主に個々の電極に含まれる銅によって与えられる請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項11】
個々の電極は、個々の電極と関連付けられる周期の約10〜40パーセントの範囲内の厚さを有する請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項12】
前記基板は、漏洩しない弾性波の伝搬を行なうように構成されるとともに、オイラー角(λ±3°、μ、θ±3°)により規定される方向性を有し、角度μ=μ’−90°であり、μ’は、基板のY回転であって、約130°〜約170°の範囲である請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項13】
電極周期に対する電極幅の前記比率が約40パーセント〜60パーセントである請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項14】
ニオブ酸リチウム(LiNbO3)を含むとともに弾性波の伝搬を行なうように構成される基板と、幅(a1)を有するとともに第1の電極周期(p1)を含む第1のパターンを成して配置される第1の複数の電極を含む第1の共振器と、幅(a2)を有するとともに第2の電極周期(p2)を含む第2のパターンを成して配置される第2の複数の電極を含む第2の共振器とを備え、p1 < p2であり、(p1-a1)/p1>(p2-a2)/p2である表面弾性波(SAW)デバイス。
【請求項15】
前記第1及び第2の複数の電極間及び前記電極上にわたって配置される誘電保護膜であって、酸化ケイ素(SiOx)を含むとともに、プラスの周波数温度係数(TCF)と、前記第1及び第2の複数の電極の上端面から前記誘電保護膜の上端面まで測定される前記第1及び第2の複数の電極の厚さよりも大きい厚さとを有する、誘電保護膜を更に備える請求項14に記載のSAWデバイス。
【請求項16】
前記誘電保護膜の厚さが前記第1及び第2の複数の電極の厚さの約3倍よりも小さい請求項15に記載のSAWデバイス。
【請求項17】
前記誘電保護膜の厚さは、基準電極周期の約20パーセントから基準電極周期の約80パーセントまでの範囲内であり、前記基準電極周期が前記第1の周期又は第2の周期に基づく請求項15に記載のSAWデバイス。
【請求項18】
ニオブ酸リチウム(LiNbO3)を含むとともに弾性波の伝搬を行なうように構成される基板と、幅(a1)を有するとともに第1の電極周期(p1)を含む第1のパターンを成して配置される第1の複数の電極を含む第1の共振器と、幅(a2)を有するとともに第2の電極周期(p2)を含む第2のパターンを成して配置される第2の複数の電極を含む第2の共振器とを備え、(a1-a2)/(p1-p2)>1である表面弾性波(SAW)デバイス。
【請求項19】
前記第1及び第2の複数の電極間及び前記電極上にわたって配置される誘電保護膜であって、酸化ケイ素(SiOx)を含むとともに、プラスの周波数温度係数(TCF)と、前記第1及び第2の複数の電極の上端面から前記誘電保護膜の上端面まで測定される前記第1及び第2の複数の電極の厚さよりも大きい厚さとを有する、誘電保護膜を更に備える請求項18に記載のSAWデバイス。
【請求項20】
前記誘電保護膜の厚さが前記第1及び第2の複数の電極の厚さの約3倍よりも小さい請求項18に記載のSAWデバイス。
【請求項21】
前記誘電保護膜の厚さは、基準電極周期の約20パーセントから基準電極周期の約80パーセントまでの範囲内であり、前記基準電極周期が前記第1の周期又は第2の周期に基づく請求項18に記載のSAWデバイス。
【請求項1】
ニオブ酸リチウム(LiNbO3)を含むとともに弾性波の伝搬を行なうように構成される基板と、
前記基板の表面上の複数の電極によって形成される1つ以上の共振器であって、前記複数の電極が個々の幅を有するとともに複数の異なる電極周期をもって配置され、前記複数の異なる電極周期のそれぞれが電極周期に対する電極幅のそれぞれの比率と関連付けられる1つ以上の共振器と、
前記複数の電極間及び前記複数の電極上にわたって配置される誘電保護膜と、
を備える表面弾性波(SAW)デバイス。
【請求項2】
電極周期に対する電極幅の比率がa/p=a_ref/p_ref+m*(p/p_ref-1)によって与えられ、ここで、aが電極幅であり、pが電極周期であり、mが約0.4〜1.0の勾配値であり、p_refがSAWデバイスの最小電極周期(p_min)とSAWデバイスの最大電極周期(p_max)との間の値であり、a_ref/p_refがa_max/p_max とa_min/p_minとの間の値であり、a_maxがSAWデバイスの最大電極幅であり、a_minがSAWデバイスの最小電極幅である、請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項3】
mが約0.5である請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項4】
前記基板が約5パーセントよりも大きい電気機械結合係数を有する請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項5】
前記誘電保護膜は、酸化ケイ素(SiOx)を備えるとともに、プラスの周波数温度係数(TCF)と、前記複数の電極の上端面から前記誘電保護膜の上端面まで測定される前記複数の電極の厚さよりも大きい厚さとを有する、請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項6】
電極周期に対する電極幅の前記比率は、前記複数の電極の厚さに対する前記誘電保護膜の厚さの比率に更に基づいている請求項5に記載のSAWデバイス。
【請求項7】
前記誘電保護膜の厚さが前記複数の電極の厚さの約3倍よりも小さい請求項5に記載のSAWデバイス。
【請求項8】
前記誘電保護膜の厚さは、電極周期の約20パーセントから電極周期の約80パーセントまでの範囲内にある請求項5に記載のSAWデバイス。
【請求項9】
前記複数の異なる電極周期は、それぞれが周期に対する電極幅のそれぞれの比率に関連付けられる少なくとも3つの異なる電極周期を含む請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項10】
個々の電極の質量が主に個々の電極に含まれる銅によって与えられる請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項11】
個々の電極は、個々の電極と関連付けられる周期の約10〜40パーセントの範囲内の厚さを有する請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項12】
前記基板は、漏洩しない弾性波の伝搬を行なうように構成されるとともに、オイラー角(λ±3°、μ、θ±3°)により規定される方向性を有し、角度μ=μ’−90°であり、μ’は、基板のY回転であって、約130°〜約170°の範囲である請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項13】
電極周期に対する電極幅の前記比率が約40パーセント〜60パーセントである請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項14】
ニオブ酸リチウム(LiNbO3)を含むとともに弾性波の伝搬を行なうように構成される基板と、幅(a1)を有するとともに第1の電極周期(p1)を含む第1のパターンを成して配置される第1の複数の電極を含む第1の共振器と、幅(a2)を有するとともに第2の電極周期(p2)を含む第2のパターンを成して配置される第2の複数の電極を含む第2の共振器とを備え、p1 < p2であり、(p1-a1)/p1>(p2-a2)/p2である表面弾性波(SAW)デバイス。
【請求項15】
前記第1及び第2の複数の電極間及び前記電極上にわたって配置される誘電保護膜であって、酸化ケイ素(SiOx)を含むとともに、プラスの周波数温度係数(TCF)と、前記第1及び第2の複数の電極の上端面から前記誘電保護膜の上端面まで測定される前記第1及び第2の複数の電極の厚さよりも大きい厚さとを有する、誘電保護膜を更に備える請求項14に記載のSAWデバイス。
【請求項16】
前記誘電保護膜の厚さが前記第1及び第2の複数の電極の厚さの約3倍よりも小さい請求項15に記載のSAWデバイス。
【請求項17】
前記誘電保護膜の厚さは、基準電極周期の約20パーセントから基準電極周期の約80パーセントまでの範囲内であり、前記基準電極周期が前記第1の周期又は第2の周期に基づく請求項15に記載のSAWデバイス。
【請求項18】
ニオブ酸リチウム(LiNbO3)を含むとともに弾性波の伝搬を行なうように構成される基板と、幅(a1)を有するとともに第1の電極周期(p1)を含む第1のパターンを成して配置される第1の複数の電極を含む第1の共振器と、幅(a2)を有するとともに第2の電極周期(p2)を含む第2のパターンを成して配置される第2の複数の電極を含む第2の共振器とを備え、(a1-a2)/(p1-p2)>1である表面弾性波(SAW)デバイス。
【請求項19】
前記第1及び第2の複数の電極間及び前記電極上にわたって配置される誘電保護膜であって、酸化ケイ素(SiOx)を含むとともに、プラスの周波数温度係数(TCF)と、前記第1及び第2の複数の電極の上端面から前記誘電保護膜の上端面まで測定される前記第1及び第2の複数の電極の厚さよりも大きい厚さとを有する、誘電保護膜を更に備える請求項18に記載のSAWデバイス。
【請求項20】
前記誘電保護膜の厚さが前記第1及び第2の複数の電極の厚さの約3倍よりも小さい請求項18に記載のSAWデバイス。
【請求項21】
前記誘電保護膜の厚さは、基準電極周期の約20パーセントから基準電極周期の約80パーセントまでの範囲内であり、前記基準電極周期が前記第1の周期又は第2の周期に基づく請求項18に記載のSAWデバイス。
【図1】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図2】
【図2A】
【図3】
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【図5】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【公開番号】特開2013−93852(P2013−93852A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−235495(P2012−235495)
【出願日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【出願人】(599034594)トライクイント・セミコンダクター・インコーポレイテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】TriQuint Semiconductor,Inc.
【住所又は居所原語表記】2300 NE Brookwood Parkway,Hillsboro,Oregon 94124,U.S.A.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−235495(P2012−235495)
【出願日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【出願人】(599034594)トライクイント・セミコンダクター・インコーポレイテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】TriQuint Semiconductor,Inc.
【住所又は居所原語表記】2300 NE Brookwood Parkway,Hillsboro,Oregon 94124,U.S.A.
【Fターム(参考)】
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