説明

高繊維大豆食品およびその製造方法

大豆の栄養成分を損失することなく大豆食品を製造することができると共に、大豆皮の副産物を生成させないで、親環境的な製造方法の提供する。本発明の大豆食品の製造方法は、浸漬大豆または発芽大豆を機械的に粗摩砕する段階;粗摩砕物を酵素的手段、機械的手段、またはこれらの組み合わせにより微細化して豆乳を得る段階;及び前記豆乳を均質化する段階を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆皮及びおからを分離排出することなく、大豆全体の栄養成分を含む高纎維全成分豆乳及びこれを用いる大豆食品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆皮(または大豆外皮、soybean hull)は、大豆油(soybean oil)、豆乳液、及び豆腐を製造する工程において多量発生する副産物であって、その粗繊維質の含量が40%以上であり、この大豆皮の粗繊維質は高い消化吸収率を示すと知られている(Klopfenstein, T.and F. Owen, April, 1987, Soybean Hulls, Animal Health & Nutrition, 28)。
【0003】
また、相対的に粗タンパク質の含量が低い大豆皮は畜産分野で高品質の飼料として用いられており、最近は、大豆加工の副産物として栄養学的に価値が認められて高纎維質の素材で食品分野の原料物質として、特に、製菓分野でクッキー、マフィン及びパンに添加して不足しがちな纎維質を補強する研究が活発に行われている(Seung-Ho Kim, Korea Food Research Institute, 1995)。
【0004】
大豆皮と大豆胚芽から得られる生理活性成分としては、粗繊維質、癌を予防し、ホルモンの代謝を円滑にするイソフラボン、脂質代謝を高め、かつ抗酸化効果のあるサポニン、コレステロール代謝を調節するフィチン、消化機能を高めるオリゴ糖、生体防御反応機構に関与するレシチンなどがある(M.Suganoら、日本醸造協会誌、99(3)、148−155)。しかしながら、既存の大豆食品の製造工程においては、おからだけでなく大豆皮と胚芽がほとんど除去されて失われるので、既存の方法で製造された大豆食品からは大豆の栄養成分の一部のみを摂取することになる。
【0005】
従来の豆腐は、一般的に大豆の選別、脱皮、洗浄、水浸漬、摩砕、加熱、ろ過によるおからの除去、ろ過された豆乳液の凝固及び成形段階などの一連の工程を含む方法によって製造されるが、おからの除去過程でおからに含まれている纎維質、無機質などの栄養成分が失われると共に、大豆皮の豊かな纎維質成分が多量廃棄されてきた。また、脱皮大豆を用いる製造工程の場合、一般の脱皮法で外皮を剥く工程において高濃度の栄養が含まれている大豆胚芽も共に取り除かれる。
【0006】
このような栄養成分の損失問題を解消するために、生大豆を乾燥法で微細粉末化して全豆腐を製造する方法が提示されている(韓国特許出願公開第2002−92272号及び第2002−92282号)。また、大豆を水に浸漬した後で、摩砕、微粉砕、及び均質化によっておから成分が含まれた全成分豆腐(全豆腐)を製造する方法が提示された(韓国特許出願公開第2005−23778号及び第2005−34176号)。
【0007】
しかし、生大豆粉末を用いた大豆食品の製造方法は、大豆乾燥粉末を均質に微細化することが困難であるため、製造された大豆食品の組織が粗くて舌当りが良くないという問題がある。また、大豆乾燥粉末は保存が困難であると共に、保存する過程中に油脂の酸化をもたらすので、製造された豆腐の味と栄養が低下するという短所がある。
【0008】
特に、大豆食品の製造において、予め脱皮した大豆を浸漬して加工する場合には、浸漬時間や温度に応じて大豆の栄養成分のうち、タンパク質と糖類とが浸漬水に容易に溶解するため、栄養成分の流失問題が発生する(Y. H. Leeら、 Journal of Korean Society of Food Science and Technology, 19(6): 491-492, 1987)。
【0009】
そこで、本発明者らは、大豆おから及び大豆皮を分離排出する別途の工程を含まない、味の良い大豆食品を製造することができる工程に関する研究を鋭意重ねた結果、大豆皮を分離排出せずに効率的な大豆粒子の微細化によって、大豆の栄養成分を100%保ちながら味が良く、かつ舌当りの良い発芽大豆食品を製造することによって本発明を完成するに至った。
【特許文献1】韓国特許出願公開第2002−92272号
【特許文献2】韓国特許出願公開第2002−92282号
【特許文献3】韓国特許出願公開第2005−23778号
【特許文献4】韓国特許出願公開第2005−34176号
【非特許文献1】Klopfenstein,T.and F.Owen,April,1987,Soybean Hulls, Animal Health & Nutrition,28
【非特許文献2】Seung−Ho Kim,Korea Food Research Institute,1995
【非特許文献3】M.Suganoら、日本醸造協会誌、99(3),148−155
【非特許文献4】Y. H. Leeら、Journal of Korean Society of Food Science and Technology, 19(6): 491−492, 1987
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、大豆皮とおからを分離排出する必要がなく、纎維質を含んだ大豆の全栄養成分が保存された全成分豆乳との製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、前記全成分豆乳を用いて食感、風味などに優れた大豆食品を製造する方法及びこの方法によって製造された大豆食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的により、本発明は浸漬大豆または発芽大豆を機械的に粗摩砕する段階;得られた粗摩砕物を酵素的手段、機械的手段、またはこれらの組み合わせにより微細化して豆乳を得る段階;及び前記豆乳液を均質化する段階を含む、全成分豆乳の製造方法を提供する。
【0012】
また、前記目的により、本発明は浸漬大豆または発芽大豆を機械的に粗摩砕する段階;得られた粗摩砕物をろ過して固形分と豆乳液とに分離した後、固形分を酵素的手段、機械的手段、またはこれらの組み合わせにより微細化する段階;前記微細化された固形分を微細均質化した後、前記で分離された豆乳液と混合する段階を含む、全成分豆乳の製造方法を提供する。
【0013】
また、前記他の目的により、本発明は前記方法で製造された全成分豆乳を用いて大豆全成分食品を製造する方法およびこの方法で製造された全成分大豆食品を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によれば、おからはもちろん、大豆皮の栄養成分も全て含むので、大豆全体の栄養成分を全て含有しながら、食感と風味などの品質に優れた全成分大豆食品を製造することができる。本発明の製造方法は、従来の方法において廃棄された大豆皮の副産物を生成しないため、親環境的な製造工程を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本明細書において「大豆食品」とは、大豆全体を加工して得られる食品を意味するものであって、大豆の一部成分のみを用いて製造する大豆油や醤油類などを指すものでなく、大豆全成分を用いて製造する豆乳、豆腐、大豆汁、加工スナックなどの通称である。
「大豆全成分」とは、大豆のおからだけではなく、大豆皮まで含まれた概念であって、大豆全体の成分を意味する。
【0016】
また、「発芽大豆」とは、大豆を適当な温度及び湿度の下で発芽させたものを意味する。大豆は発芽すると、大豆タンパク質の一部が甘口と風味のある遊離アミノ酸に変化する。また、ビタミンCが生成し、ビタミンBは大豆の2倍、B16は10倍にもなる反面、カロリーや脂肪成分は低減する。
【0017】
本発明において、大豆としては大豆皮を除去しないでそのまま浸漬した浸漬大豆または発芽大豆を用いることができる。
【0018】
前記浸漬大豆の製造方法は次のとおりである。まず、大豆を選別及び洗浄した後、3〜5倍量の水に浸漬して大豆の内部まで水が浸透するようにする。浸漬される水の温度は、10℃〜20℃の温度範囲が好ましく、冬には温度をさらに高めても良いが、35℃以上ではある大豆成分が溶出するか、或いは変質する可能性がある。浸漬時間は、好ましくは5〜20時間であり、浸漬水の温度に応じて時間を調節することができる。浸漬水の温度が高くなるほど浸漬時間を短くするが、例えば、20℃の水を用いる場合には10時間程度が適当である。浸漬した後の大豆の体積は浸漬前と比べて、約2〜2.3倍増加する。
発芽大豆は購入するか、或いは次のような方法で製造することができる。
【0019】
前記の方法で得られた浸漬大豆の浸漬水を除去し、20〜25℃で発芽させる。この時、大豆が乾燥しないで保温できるように蓋をするか、または布などで覆せて、2〜3時間の間隔で18〜22℃の水を十分にふりかけ、芽が出やすくする。発芽大豆を用いて製造される食品の味を高めるためには、発芽大豆の芽(胚軸)の長さが30mm以下、好ましくは3〜15mm程度になるように発芽させることが好ましい。このような発芽大豆は、例えば、20〜25℃の温度範囲で72時間以下、好ましくは36時間〜60時間発芽させて製造することが可能である。
【0020】
本発明の全成分豆乳の一つの具体的な製造方法は、大豆を機械的に、例えば、摩砕機で粗摩砕する工程;得られた粗摩砕物を酵素分解反応、回転式粉砕機を用いる機械的微細化、またはこれらの組み合わせによって微細化する工程;及び得られた微細化された摩砕物を均質化する工程を含む。この方法において、前記粗摩砕物をろ過機に通しておから及び大豆皮成分が含有された固形分と第一豆乳液とに分離した後、固形分のみの微細化及び均質化工程を通して得られた第二豆乳液を第一豆乳液と混合することによって全成分豆乳を製造する選択的方法を用い得る。この選択工程においては、微細化された固形分を第一豆乳液と混合した後、均質化工程によって全成分豆乳を製造してもよい。
また、本発明の他の製造方法によれば、おからはもちろん、大豆皮の栄養成分の全体を含有し、大豆の栄養成分のいずれも流失することなく、舌当りや風味などの品質に優れた全成分大豆食品を製造することができる。本発明の製造方法は、従来の方法で廃棄された大豆皮の副産物を生成させずに親環境的な製造工程であるという長所がある。
【0021】
本発明の製造方法は、具体的には次のような各工程に従って行うことができる。
1)摩砕工程及び酵素不活性化工程
室温で大豆に4.5〜4.9倍容量の水を加えた後、機械的粉砕装置、例えば、摩砕機を用いて摩砕する。この際、大豆の可溶化成分が大豆外被とおからから十分に遊離するレベルまで摩砕することが好ましい。
また、摩砕工程の前に大豆または摩砕された後の摩砕物を95〜110℃で2〜5分間加熱して摩砕液または大豆内の酵素を不活性化させる。
2)豆乳液と固形分の選択的の分離工程
固形成分の微細化効率を高めるために、前記工程1)で得られた大豆スラリーをろ過装置を通して大部分が大豆皮成分からなるおからと第一豆乳液とに分離する。
3)微細化工程及び酵素分解工程
【0022】
前記工程2)で得られた固形物の粒子を回転式粉砕機を用いて微細化する。この時に用いられる回転式粉砕機は、通常上下部に備えられた石臼型のカッターが一定の間隙をおいて高速に回転しながら微粉砕を行うが、高速ミリング加工機が例として挙げられる。回転微粉砕中には、温度を50〜65℃、好ましくは60℃に維持しながら、植物組職分解酵素であるセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼを単独にまたは混合投入して酵素分解反応を引き起すようにしても良い。このように固形物を微細化することによって得られた第二豆乳液は、第一豆乳液と混合される。
【0023】
4)微細均質化工程
この微細均質化工程においては、前記工程3)で得られた豆乳液を高圧均質化、超音波処理、電気分解または空気圧噴射によって均質化して全成分豆乳が得られる。この時、微細均質化は粒子の微細化を促進し、均一な粒子分布を維持して固液分離による沈殿や脂肪球の凝集及び大豆粒子のゲル化を防止する目的で行われる。
前述した様々な微細均質化の方法のうち、高圧均質化法を用いることが好ましく、高圧均質化法は豆乳液を高圧均質化機に移送し、150〜700バール(bar)の圧力を少なくとも一回以上、好ましくは1〜6回、さらに好ましくは3〜5回加えることによって行われる。
【0024】
この時、加えられる圧力や加圧回数は、最終産物である大豆食品の種類に応じて適宜調節することができ、豆乳液の場合には最も強い均質化が求められるが、大豆汁や豆腐の場合は相対的に低い強度の均質化でも十分である。
均質化の圧力と加圧回数によって平均粒度が30〜150μmの範囲内で変化するが、豆乳液を500バール下で3回均質化すれば、60〜90μmの平均粒径の固形粒子を有する適合な全成分豆乳を製造することができる。凝固段階で得られた豆腐の場合は、300バール下で1回の均質化することによって100〜120μmの平均粒径を有する粒子が得られる。
【0025】
また、微細均質化を通じて得られた全成分豆乳は、大豆食品への加工が容易になるように固形分含量を11〜15ブリックス%、好ましくは約12〜13ブリックス%のレベルになるように温度を調節して維持することが好ましい。この時、固形分含量が過度に高いと粘度が高くなり豆乳液の加工性が顕著に低下し、低い固形分含量は豆腐及びスナック類などの固形の大豆食品に加工する場合に成形が困難になる。
【0026】
5)脱気工程
微細均質化を通じて得られた全成分豆乳は、700〜760mmHgの圧力範囲で15〜50分間脱気する。この脱気工程によって豆乳液中の微細空気粒子と共に豆乳液に残っている異臭が除去され、また保存性を高め、豆腐のような固形の大豆食品の製造の際に舌当りを良くする利点がある。
【0027】
6)大豆食品の製造工程
以下に説明するように、大豆の栄養成分全体を含有する豆乳、豆腐などの多様な大豆食品は前記で製造された全成分豆乳を用いて次のように製造し得る。
【0028】
6−1)全成分豆乳の製造
前記工程5)で得られた全成分豆乳は、通常の豆乳液後処理工程を通じて包装された豆乳液として生産される。この時、生産された全成分豆乳の粘度を調節するための添加剤、及び香味を加えるための果物濃縮液、ジュースなどの食品添加剤を添加してもよい。紙パック内に包装される際には、豆乳液を150℃で3秒間滅菌した後で包装することによって、室温での貯蔵・流通が可能になる。瓶包装の場合は、豆乳液を瓶に充填した後で約121℃で5〜20分間滅菌する。全成分豆乳製品は50μm以下の平均粒径、20〜100cpsの粘度範囲のものが適当である。
【0029】
6−2)全成分豆腐の製造
前記工程5)で得られた全成分豆乳に0.3〜0.9重量%の化学凝固剤を加えて豆乳液を凝固させ、この凝固物を圧搾して豆腐製品を製造する。この時、選択的に0.1〜0.5重量%のタンパク質結合酵素であるトランスグルタミナーゼを添加することができ、化学的凝固剤とタンパク質結合酵素を同時に投与すると、豆腐の弾力性と強度を増加させることができる。化学的凝固剤としては塩化マグネシウム、乳化塩化マグネシウム、グルコノデルタラクトン(GDL)、硫酸カルシウム、またはこれらの混合物を用いることができる。
【0030】
また、好ましい凝固物を得るためには、まず、豆乳液を50〜85℃で40分〜110分間凝固させることが好ましく、凝固及び圧搾の程度を調節することにより、凝固されていない豆腐、軟豆腐、硬豆腐など様々な形態の全豆腐を製造することができる。
前記凝固過程を凝固前の豆乳液を容器に充填した後で行う場合は充填式豆腐を、凝固過程を終えた後で豆腐を切断して包装する場合は切断式豆腐を製造することができる。
包装後に、豆腐を約80〜90℃で殺菌処理してから10℃以下に冷却する。硬度が低い凝固されていない豆腐や軟豆腐の場合は、包装後凝固及び殺菌処理することが好ましい。
豆腐の場合、全成分豆乳の平均粒径が40〜90μm程度のものが好ましく、舌当りの良い豆腐の製造が可能である。
【0031】
6−3)豆乳液加工食品の製造
前記工程5)で得られた全成分豆乳を希釈した後、食品学的に許容される甘味剤を適量混入し、パックなどに入れた形態のインスタント豆乳液を製造することができる。この時、前記豆乳の固形粒子は、他の製品に比べ比較的大きい90〜120μmの平均粒径を有してもよい。
また、前記工程5)で得られた全成分豆乳は果汁などと混合して豆乳液の混合飲料として製造してもよい。
【0032】
6−4)豆腐加工食品の製造
前記工程6−2)で製造された豆腐は、小麦粉、卵、及びその他の原料と混合して作られたパン生地を油で揚げて豆腐スナックを製造することができる。また、前記豆腐はかまぼこと一緒に加工して豆腐かまぼこを製造してもよい。前記で製造された豆腐製品は滅菌包装後には流通のために冷凍することが好ましい。
【0033】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲が下記実施例によって制限されない。
【実施例】
【0034】
実施例1:発芽大豆全成分豆乳の製造1
(段階1)発芽大豆の製造
皮を剥いていない丸ごとの大豆300kgを選別して洗浄した後、20℃の水1200Lに10時間浸漬した。
【0035】
このように膨らせた大豆を水から分離し、発芽箱に20〜30mmの厚さにして広げ、表面が乾燥しないように蓋をして20〜25℃で0時間、5時間、10時間、15時間及び20時間それぞれ発芽させた。この時、発芽が促進されるように2〜3時間ごとに18〜30℃の水を十分に噴射した。
発芽が終わってから水できれいに洗浄して次の製造工程に用いた。
【0036】
(段階2)発芽大豆全成分豆乳の製造1
前記段階1で得られた発芽大豆650kgを摩砕機(クラッシャー、精研社製、日本)に移送して1,500Lの精製水と一緒に投入した後で攪拌摩砕した。得られた摩砕物を105℃で3分間維持し酵素を不活性化させた後、70gの酵素混合物(セルラーゼ:ペクチナーゼ=2:1)(セルラーゼ、天野製薬社製、日本;ペクチナーゼ、Sungwoo Chem.、韓国)を投入し、60℃に維持させた回転式微粉砕機(Hansung pulverulent machine、韓国)で連続回転微粉砕及び酵素分解を行った。
【0037】
微細化された豆乳液を高圧均質化機(Donga homogenizer、中国)を用いて300バールの圧力下で微細均質化し、平均粒径が100μmである固形分を含む発芽大豆全成分豆乳(約13ブリックス%)を得た。
【0038】
実施例2:発芽大豆全成分豆乳の製造2
前記実施例1の段階1で得られた発芽大豆650kgを摩砕機(クラッシャー、精研社製、日本)に移送して1,500Lの水と一緒に投入した後で攪拌摩砕した。得られた摩砕物を105℃で3分間維持し酵素を不活性化させた後、ろ過装置によって豆乳液と固形物とに分離した。固形物と50gの酵素混合物(セルラーゼ、天野製薬社製、日本;ペクチナーゼ、Sungwoo Chem.、韓国)を投入して60℃に維持させた回転式微粉砕機(Hansung pulverulent machine、韓国)によって連続回転微粉砕及び酵素分解を行った。
微細化された豆乳液を高圧均質化機(Donga homogenizer、中国)を用いて500バールの圧力下で微細均質化し、前記で分離した豆乳液を混合して平均粒径が90μmである固形分を含む発芽大豆全成分豆乳(約13ブリックス%)を得た。
【0039】
実施例3:浸漬大豆全成分豆乳の製造1
皮を剥いていない丸ごとの大豆300kgを選別して洗浄した後、15℃の水1,000Lに15時間浸漬した。浸漬液を排出した後、大豆を摩砕機(クラッシャー、精研社製、日本)に移送して1,500Lの精製水と一緒に投入した後で攪拌摩砕した。得られた摩砕物を105℃で3分間維持して酵素を不活性化させた後、70gの酵素混合物(セルラーゼ:ペクチナーゼ=2:1)(セルラーゼ、天野製薬社製、日本;ペクチナーゼ、Sungwoo Chem.、韓国)を投入して60℃に維持させた回転式微粉砕機(Hansung pulverulent machine、韓国)で連続回転微粉砕及び酵素分解を行った。
微細化された豆乳液を高圧均質化機(Donga homogenizer、中国)を用いて300バールの圧力下で微細均質化し、平均粒径が100μmである固形分を含む大豆全成分豆乳(約13ブリックス%)を得た。
【0040】
実施例4:浸漬大豆全成分豆乳の製造2
皮を剥いていない丸ごとの大豆300kgを選別して洗浄した後、15℃の水1,000Lに15時間浸漬した。浸漬液を排出した後、大豆を摩砕機(クラッシャー、精研社製、日本)に移送して1,500Lの精製水と一緒に投入した後で攪拌摩砕した。得られた摩砕物を105℃で3分間維持して酵素を不活性化させた後、ろ過装置により豆乳液と固形物を分離した。固形物と50gの酵素混合物(セルラーゼ:ペクチナーゼ=2:1)(セルラーゼ、天野製薬社製、日本;ペクチナーゼ、Sungwoo Chem.、韓国)を投入し、60℃に維持された回転式微粉砕機(Hansung pulverulent machine、韓国)で連続回転微粉砕及び酵素分解を行った。
【0041】
微細化された豆乳液を高圧均質化機(Donga homogenizer,中国)を用いて500バールの圧力下で微細均質化し、前記で分離した豆乳液を混合して平均粒径が90μmである固形分を含む浸漬大豆全成分豆乳を得た。
【0042】
実施例5:粉末化工程を経ない全成分豆乳の製造
丸ごとの大豆を選別して洗浄した後で丸ごとの大豆1kgに3Lの精製水を加え、10〜20時間浸漬した。浸漬液を排出した後、浸漬大豆を摩砕機(クラッシャー、精研社製、日本)に移送して5Lの精製水を投入した後で攪拌摩砕した。得られた摩砕物を100℃で約2分間維持して摩砕液内の酵素を不活性化させた後、高圧均質化機(Donga homogenizer、中国)を用いて500バールの圧力下で微細均質化して最終粒子の平均粒径が110μm、固形分の含量が13ブリックス%である固形分を含む全成分豆乳を得た。
【0043】
実施例6:木綿豆腐の製造1
前記実施例1で得られた発芽全成分豆乳10kgを5℃に冷却させ、タンパク質結合酵素としてトランスグルタミナーゼ(天野製薬社製、日本)30g、化学的凝固剤として塩化マグネシウム27.5g及び食塩5gを添加して、60℃で1時間凝固工程を行った後、得られた凝固物を切断、包装してから殺菌/冷却して木綿豆腐を製造した。
【0044】
実施例7:木綿豆腐の製造2
前記実施例3で得られた全成分豆乳520kgを5℃に冷却させ、タンパク質結合酵素としてトランスグルタミナーゼ(天野製薬社製、日本)1.6kg、化学的凝固剤として塩化マグネシウム1.5kg及び食塩500gを添加して、60℃で1時間凝固工程を行った後、得られた凝固物を切断、包装してから殺菌及び冷却して木綿豆腐を製造した。
【0045】
実施例8:木綿豆腐の製造3
実施例5で得られた全成分豆乳5kgを5℃に冷却させて、凝固槽に充填し、タンパク質結合酵素としてトランスグルタミナーゼ15g、化学的凝固剤として塩化マグネシウム15g及び食塩5gを添加して60℃で1時間凝固工程を行った後、得られた凝固物を切断、包装、殺菌及び冷却して木綿豆腐を製造した。
【0046】
実施例9:木綿豆腐の製造4
凝固工程において、85℃で30分間の追加凝固を行うことを除いては、実施例8と同一の方法によって木綿豆腐を製造した。
【0047】
実施例10:木綿豆腐の製造5
化学的凝固剤として塩化マグネシウム10g及びグルコノデルタラクトン5gを用いることを除いては、実施例8と同一の方法によって木綿豆腐を製造した。
【0048】
実施例11:木綿豆腐の製造6
化学凝固剤として塩化マグネシウム10g及びグルコノデルタラクトン5gを用いて、凝固工程において85℃で30分間の追加凝固を行うことを除いては、実施例8と同一の方法によって木綿豆腐を製造した。
【0049】
実施例12:充填豆腐の製造1
前記実施例1で得られた発芽全成分豆乳10kgを5℃に冷却させ、タンパク質結合酵素としてトランスグルタミナーゼ30g、化学的凝固剤として塩化マグネシウム20g及びグルコノデルタラクトン10gを添加し、容器に充填封止した後、60℃で1時間及び85℃で30分間の追加凝固を行って充填豆腐を製造した。
【0050】
実施例13:充填豆腐の製造2
前記実施例3で得られた全成分豆乳520kgを5℃に冷却させ、タンパク質結合酵素としてトランスグルタミナーゼ1.6kg、化学的凝固剤として塩化マグネシウム1kg及びグルコノデルタラクトン500gを添加し、容器に充填封止した後、60℃で1時間及び85℃で30分間の追加凝固を行って充填豆腐を製造した。
【0051】
比較例1:発芽時間を異にした発芽大豆を用いた豆腐の製造
皮を剥いていない丸ごとの大豆を実施例1の段階1と同様な方法によって水に浸漬した後、4日及び5日間それぞれ発芽させた。前記発芽大豆を用いて実施例1の段階2の方法によって全成分豆乳を製造し、実施例6の方法によって木綿豆腐を製造した。
【0052】
比較例2:脱皮大豆を用いた全成分豆乳の製造
脱皮大豆300kgを用いて前記実施例3と同一の方法によって豆乳液を得ることができた。
【0053】
比較例3:生大豆粉末を用いた全成分豆腐の製造
全成分豆乳であって、350メッシュ大きさの生大豆粉末を水と1:6の重量比で混合した後、蒸熟及び冷却工程により得られた13ブリックス%の豆乳液を用いて、凝固工程において、85℃で30分間の追加凝固を行うことを除いては、実施例8と同一の方法によって硬豆腐を製造した。
【0054】
試験例1:栄養成分の分析試験
実施例3と比較例2でそれぞれ製造された豆乳液の栄養成分について、タンパク質含量は少量ケルダール法、粗脂肪含量はエーテル抽出法、粗繊維質含量はAOAC法によってそれぞれ分析した後、乾燥重量を基準として百分率で表記して表1に表す。
表1
【表1】

前記表1から分かるように、実施例3で製造された豆乳液は、比較例2で製造された豆乳液に比べ、栄養成分のうち、特に食物纎維の含量が27%程度増量されており、これは大豆皮に豊かな食餌纎維質成分が含有されていることが分かる。
【0055】
試験例2:官能試験1
前記実施例6と比較例1で製造した豆腐を、10人の専門家の集団にサンプルの種類を知らせずに試食させた後、豆腐の弾力性、強度、味のそれぞれの項目別に5点満点にして評価した。その結果を表2に示す。
表2
【表2】

前記表2によれば、1.5日〜3日間発芽させた発芽大豆を用いて製造された豆腐が弾力性、強度及び味の項目で高い点数を得たことが分かる。特に、2日間発芽させた発芽大豆を用いて製造された豆腐が最も良い結果を示した。
また、3日以上発芽させた大豆は、芽が長すぎてタンパク質の含量が減少し、また、これを用いて製造された豆腐の強度が低下し、風味が不満足である。
【0056】
試験例3:官能試験2
前記実施例7で製造された豆腐と前記比較例2との豆乳液を用いて実施例7の方法によって製造した豆腐を、10人の専門家集団を対象にサンプルの種類を知らせずに試食させた後、豆腐の弾力性、強度、香り、味のそれぞれの項目別に5点満点にして評価した。その結果を表3に示す。
表3
【表3】

前記表3によれば、全成分豆乳を用いて製造された実施例7の豆腐は、比較例2の豆乳液を用いて実施例7の製造方法によって製造された豆腐に比べ、弾力性と強度はやや落ちるものの、味には大きな差がなく、大豆皮成分により香りはむしろ強くなる効果が現われた。
【0057】
試験例4:官能検査3
実施例8〜11及び比較例3で製造された全成分豆腐を用いて比較官能検査を行った。10人の専門家集団に豆腐種類を知らせずに試食させた後、豆腐の弾力性、強度、香り、味のそれぞれの項目別に5点満点にして評価した。その結果を表4に示す。
表4
【表4】

【0058】
前記表4から分かるように、実施例8〜11の方法によって大豆の粉末化工程を踏まずに製造された全成分豆腐は弾力性/強度/香り/味の全ての項目で高く評価された。一方、比較例3の方法によって生大豆粉末を用いて製造された豆腐は、弾力性と強度において多少低く評価されたし、特に、香りと味においては非常に低く評価された。これは、生大豆粉末と空気との接触により酸化が進行されて異臭が発生し、豆腐の組職が粗くなって歯応えが悪くなったためである。
【0059】
本発明を前記具体的な実施例と関連して記述したが、添付された特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲内で当分野の熟練者が本発明を多様に変形及び変化させ得ることを理解しなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸漬大豆または発芽大豆を機械的に粗粉砕する段階;得られた粗粉砕物を酵素的手段、機械的手段、またはこれらの組み合わせにより微細化して豆乳を得る段階;及び前記豆乳を均質化する段階を含む、大豆の副産物を生成しない全成分豆乳の製造方法。
【請求項2】
浸漬大豆または発芽大豆を機械的に粗粉砕する段階;得られた粗摩砕物をろ過して固形分と第一豆乳液とに分離した後、前記固形分を酵素的手段、機械的手段、及びこれらの組み合わせによって微細化する段階;前記微細化された固形分を均質化して第二豆乳液を得、前記第一豆乳液と第二豆乳液とを混合する段階を含む、大豆の副産物を生成しない全成分豆乳の製造方法。
【請求項3】
前記発芽大豆が、長さが30mm以下の芽(胚軸)を有することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
95〜110℃の温度範囲で2〜5分間粗摩砕して得られる粗摩砕された大豆を加熱して酵素を不活性化する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記微細化工程において、植物組職分解酵素を添加することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記植物組職分解酵素がセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記均質化段階が、高圧均質化、超音波処理、電気分解、空気圧噴射及びこれらの組み合わせからなる群から選択される方法によって行われることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記均質化の段階が、150〜700バール(bar)の圧力を付加する高圧均質化によって行われることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記均質化段階で得られた豆乳液の固形分が、30〜150μmの平均粒径を有することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記均質化段階で得られた前記豆乳液が、11〜15ブリックス%の濃度を有することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
乾燥された大豆の粉末化工程を必要としないことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
請求項1または請求項2に記載の方法によって製造された全成分豆乳に食品学的に許容される添加剤を加えて製造される大豆食品。
【請求項13】
前記大豆食品が豆乳液またはインスタント豆乳液であることを特徴とする請求項12に記載の発芽大豆食品。
【請求項14】
請求項1または請求項2に記載の方法によって製造された全成分豆乳に凝固剤を添加することを含む全成分豆腐の製造方法。
【請求項15】
前記凝固剤が塩化マグネシウム、乳化塩化マグネシウム、グルコノデルタラクトン、硫酸カルシウム及びこれらの混合物からなる群から選択される化学的凝固剤、またはタンパク質架橋結合酵素であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法によって製造される豆腐。
【請求項17】
請求項16に記載の豆腐を加工して製造される食品。
【請求項18】
前記食品が豆腐スナック、豆腐ドーナツ、豆腐パティー、豆腐アイスクリーム、または豆腐かまぼこであることを特徴とする請求項17に記載の食品。

【公表番号】特表2009−514522(P2009−514522A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538796(P2008−538796)
【出願日】平成18年10月9日(2006.10.9)
【国際出願番号】PCT/KR2006/004037
【国際公開番号】WO2007/052903
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(508135356)ハンミ・エフティ・カンパニー・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】HANMI FT CO., LTD.
【Fターム(参考)】