説明

高繊維高カロリーの液状又は粉末状栄養組成物

本発明は、液状で貯蔵安定又は粉末状で再構成可能な栄養組成物に関する。この組成物の繊維含有量は、組成物100ml当り2.5g/繊維より多い。さらに、そのエネルギー含有量は、1.3〜1.8kcal/mlである。この組成物は、特に栄養不良の傾向がある老人患者において、腸管の快適性の改善及び維持、バランスの良い腸管フローラの回復に有用である。本発明はさらに、この栄養組成物を調製するプロセスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栄養組成物、腸管の快適性を促すための栄養組成物の使用、及び栄養組成物を調製するためのプロセスに関する。さらに、本発明は、栄養を供給し、且つ消化管及び腸の機能を改善する方法並びに粘膜の機能を強化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人生の数え切れない状況の中で栄養不良のリスクは高く、例えば、US6200950で論じているように、胃腸管に影響する疾患による消化又は吸収のどちらかの障害に苦しんでいる代謝的にストレスがある患者は、栄養不良の傾向がある。こうした疾患の例には、数例を挙げると、機能性消化不良、様々な形の胃炎、消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎、胃の腫瘍、膵炎、下痢、便秘、クローン病、IBS、胃腸手術後の術後状態がある。
【0003】
栄養不良又は胃腸障害、より一般に腸管不快感又は痛みは、単純に不健康又は偏った栄養行動の結果であることがある。特に、ファストフードは、多くの場合コレステロールが高く、一般に偏った栄養特徴をもち、したがって栄養不良を招く可能性がある。
【0004】
例えば、EP0721742は、高齢者又は患者における栄養不良の発生を指摘しており、且つこの状況に対処する栄養組成物を開示している。
【0005】
一方、外傷又は手術患者は、US5221668に開示されているような、高カロリーで栄養になる栄養生成物を必要としている場合がある。
【0006】
しかし、栄養不良は、激しい運動の後の運動選手又は他のスポーツマンの場合のような、エネルギー消費の増大のために、また例えば妊娠など他の状況で、完全に健康な人々にも影響を与える場合がある。
【0007】
生涯を通じての様々な状況、特に高齢者又は病気の人々においての栄養不良の発生が、主に高カロリー及び高栄養組成物に導いている。この概念は、摂取すべき最小限量で最大限のエネルギー及び必須栄養素を提供することであった。
【0008】
しかし、現況技術の組成物の摂取は、特に偏った腸管フローラ及び腸管欠陥をもつ患者ではしばしば問題であった。これらの組成物は、腸管痛又は腸管不快感を引き起こす可能性があり、常に十分に対応しているとは限らない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
エネルギー含有量が高く、消化管の健康を改善する栄養組成物を提供することが本発明の目的である。
【0010】
バランスの良い腸管フローラを改善及び維持し、腸管通過を改善する、例えば栄養補給剤の形の栄養組成物を提供することがさらなる目的である。
【0011】
特に、下痢又は便秘に苦しんでいる人にも適した、腸管運動性を調節し、及び/又は腸管通過を改善するための栄養組成物を提供することが本発明の目的である。
【0012】
繊維含有量が増大した、より具体的には最適化した異なるクラスの繊維の混合物を含む栄養組成物を提供することが本発明の別の目的である。
【0013】
高繊維及び高エネルギー含有量であり、且つ他の必須栄養素をさらに含むこともできる栄養補給剤を提供することが本発明のさらなる目的である。
【0014】
健康、腸管快適性などの非常に優れた腸管利益をもたらし、便秘及び下痢を防ぎ軟便をもたらす、特定の範囲の繊維密度を有する生成物を提供することが本発明の別の目的である。
【0015】
味が良い液状生成物、及び貯蔵安定性のある生成物を提供することがさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
注目すべきことには、繊維が豊富で、腸管の健康を促すために異なるクラスの食物繊維を含み、且つ高エネルギー含有量を有する栄養組成物を提供する。注目すべきことには、このような組成物は、必要に応じて、栄養上完全でバランスがとれているように調製されていてもよい。
【0017】
第1の態様では、本発明は、1.4〜1.8kcal/mlのエネルギー密度及び2.5g/100mlより多い量(いずれの場合にも適切な場合には再構成後)の食物繊維を有することを特徴とする、タンパク質供給源、可消化炭水化物の供給源及び食物繊維の供給源を含む、液状又は粉末状で再構成可能な栄養組成物を提供する。
【0018】
第2の態様では、本発明は、
− 組成物の成分を混合するステップ、及び
− 成分を水和させて液状混合物を提供するステップ
を含む、本発明による栄養組成物を調製する方法を提供する。
【0019】
第3の態様では、本発明は、個体に本発明による栄養組成物を投与するステップを含む、栄養を供給し、且つ消化管及び腸機能を改善し、及び/又はバランスの良い腸管フローラを維持若しくは回復させる方法を提供する。
【0020】
第4の態様では、本発明は、本発明による栄養組成物をヒト個体に投与するステップを含む、ヒト個体の粘膜機能を高める方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明において、「食物繊維」という用語は、胃及び小腸内で消化又は吸収されず、したがって実質的に大腸に到達する炭水化物を表す。
【0022】
異なる形態の食物繊維は、異なるパラメーターによって複数のクラスに分類されている。したがって、食物繊維は、水への溶解度に応じて可溶性及び不溶性繊維に分けることができ、この標準プロトコルは、L.Proskyら、J.Assoc.Off.Anal.Chem.71、1017〜1023(1988)に見られる。一般に可溶性繊維の例には、イヌリン、ペクチン、β−グルカン類、例えばアラビアゴム、トラガカントゴム、ゴム糊、グアーゴム及びローカストビーンガム、寒天、カラギーナン類、アルジネート類、キサンタンガムなどの様々なゴム類がある。これらの成分は市販されている。
【0023】
不溶性繊維にはセルロースなどが含まれ、不溶性食物繊維の適当な供給源は、豆類及び穀類由来の外皮繊維;例えばエンドウ豆外皮繊維、オート麦外皮繊維、大麦外皮繊維、及び大豆外皮繊維である。エンドウ豆外繊維(pea outer fibre)は、エンドウ豆外皮繊維(pea hull fibre)という用語と同じである。
【0024】
しばしば、繊維が豊富な原料は、異なる種類又はクラスの繊維を含む。例えば、エンドウ豆内繊維はエンドウ豆細胞壁とも呼ばれており、一般にセルロース10〜20%、ヘミセルロース40〜50%及びペクチン35〜45%を含む(繊維のみ)。エンドウ豆内繊維は、例えば、さらにデンプンを含む生成物であるCosucra製の商標名Swelite(登録商標)として商業的に得ることができる。
【0025】
繊維は、結腸細菌フローラに対する基質となる能力に応じてさらに発酵性及び非発酵性繊維に分類することができる。発酵性繊維は通常、短鎖脂肪酸などのより小さな分子に分解されるが、非発酵性繊維はヒト結腸中の微生物によって分解されない又はほとんど分解されず、したがって基本的に便中に現れる。
【0026】
さらに、炭水化物、したがってとりわけ繊維は、単繊維分子を構成している単糖ユニットの重合度(DP)に応じて広く分類されている。本発明において、オリゴ糖のDPは3から10であると定義しているが、多糖類はより高いDPを有するすべての炭水化物を対象としている。したがって、オリゴ糖は、DPが異なるものを除いた特定の構造をもつ糖類の混合物であってよいが、その内すべての糖類の50重量%超のDPは、3〜10の範囲である。例えば、FOSは、このような混合物の形で商業的に入手することができる。
【0027】
オリゴ糖の例には、フラクトオリゴ糖(FOS)があり、これは、イヌリンの加水分解又は真菌性β−フルクトフラノシダーゼの作用によるスクロースからの合成によって得ることができる。他のオリゴ糖は、例えば、ラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、グルコオリゴ糖である。
【0028】
通常その名称を決定する特定の繊維の構造は、特定の単糖ユニットの種類、順序及び量、並びに単糖ユニット間の結合の種類によって決まる。
【0029】
デンプンも必ずしも小腸で完全に分解されるとは限らないので(=「耐性デンプン」)、「非デンプン多糖類」という用語は、デンプンと異なる炭水化物繊維を示していることを明らかにするために一般に使用される。
【0030】
本発明において、可消化炭水化物という用語は、糖、デンプン及び小腸で酵素によって吸収性単糖に分解される他の炭水化物を意味する。
【0031】
特に指示がない限り、すべてのパーセント値は重量パーセントを意味する。
【0032】
本発明による組成物は、異なるクラスの繊維、及び/又は異なる構造からなる繊維を含むことが好ましい。
【0033】
本発明の一実施形態では、本発明による栄養組成物の繊維の供給源は、可溶性非デンプン多糖類、不溶性非デンプン多糖類、オリゴ糖、及びこれらの混合物の群から選択される。
【0034】
本発明の他の実施形態では、組成物の食物繊維の供給源は、全繊維の重量パーセントで、可溶性非デンプン多糖類20〜40%、不溶性非デンプン多糖類30〜60%、及びオリゴ糖20〜40%を含む。組成物は、量を増大させて、不溶性非デンプン多糖類、可溶性非デンプン多糖類及びオリゴ糖を含むことが好ましい。
【0035】
食物繊維の供給源は、全繊維の重量パーセントで、可溶性非デンプン多糖類25〜35重量%、例えば30重量%、不溶性非デンプン多糖類37〜47重量%、例えば42重量%、及びオリゴ糖25〜35重量%、例えば30重量%を含むことがより好ましい。
【0036】
好ましくは、本発明による組成物は、液状又は粉末状で水中で再構成した場合、100ml当り食物繊維を2.4g、2.45g、2.5g、2.55g、又は2.6gより多く含むことが好ましく、2.65gより多く、例えば少なくとも2.7g含むことがより好ましい。
【0037】
例えば、本発明による組成物は、100ml当り食物繊維2.5〜3.3g、好ましくは100ml当り2.55〜3g、最も好ましくは100ml当り食物繊維2.6〜2.9gを含む。
【0038】
好ましくは、本発明による組成物は、1人前の分量200ml当りの食物繊維の重量で表して、本発明による組成物200ml当り可溶性非デンプン多糖類1〜2g、好ましくは1.3〜1.8g、200ml当りオリゴ糖1〜2g、好ましくは1.3〜1.8g、並びに200ml当り不溶性非デンプン多糖類1.5〜3g、及び/又は好ましくは2〜2.5gを供給する。
【0039】
存在する場合、オリゴ糖を含めた可溶性繊維と不溶性繊維の比は、好ましくは0.8〜2、より好ましくは1〜1.8、最も好ましくは1.3〜1.7の範囲である。
【0040】
本発明による組成物は、当業者に周知であるか、前述の可溶性若しくは不溶性非デンプン多糖類及び/又はオリゴ糖などの、食物繊維の任意の適当な供給源を含んでいてよい。
【0041】
しかし、本発明による組成物の一実施形態では、可溶性非デンプン多糖類の供給源はアラビアゴムであり、不溶性非デンプン多糖類の供給源はエンドウ豆外繊維であり、またオリゴ糖はフラクトオリゴ糖である。
【0042】
エンドウ豆外繊維(エンドウ豆外皮繊維)は、Cosucra製の商標名Exafine(登録商標)、又はフランスPuteauxにあるSofalia製のSofalite(登録商標)として市販されている。エンドウ豆外繊維は、イエローピー(エンドウマメ(Pisum sativum))から得ることができ、一般にセルロース65〜70%、ヘミセルロース22〜28%及びリグニン約5〜10%を含む。
【0043】
本発明による組成物は、少なくとも1つの可消化炭水化物の供給源を含む。可消化炭水化物の供給源は、任意の適当な炭水化物又は炭水化物混合物であってよい。例えば、炭水化物供給源は、例えば、マルトデキストリン、タピオカ由来の天然又は化工デンプン、トウモロコシ、米、他の穀物、ジャガイモ、或いは高アミラーゼデンプン、スクロース、グルコース、フルクトース、及び/又はその混合物であってよい。可消化炭水化物供給源は、マルトデキストリン及びスクロースを含むことが好ましい。炭水化物供給源にマルトデキストリンが含まれる場合、DE(デキストロース当量)が10〜40、好ましくは15〜30、より好ましくは21〜23のマルトデキストリンが好ましい。
【0044】
本発明の一実施形態では、組成物は、臨床的にラクトースを含まない。「臨床的にラクトースを含まない」という用語は、本発明において、組成物100kcal当りラクトース最大0.2gを含む栄養組成物を意味する。好ましくは、組成物が、組成物100kcal当りラクトースを0.2未満、より好ましくは0.17g未満含む。
【0045】
可消化炭水化物供給源は、組成物のエネルギーの35%〜65%を供給することができ;好ましくはエネルギーの40%〜約60%、より好ましくは45〜55%、最も好ましくは48〜54%である。例えば、炭水化物供給源は、組成物のエネルギーの約50%を供給することができる。
【0046】
本発明による栄養組成物はタンパク質供給源を含み、それは、栄養組成物中の成分として有用な任意のタンパク質供給源から選択できる。高品質のタンパク質供給源を使用することが好ましく;例えば乳タンパク質、乳清、カゼイン、又は大豆タンパク質、或いはこれらのタンパク質の混合物である。タンパク質供給源は、分解していないタンパク質の形であってよく、或いは加水分解されていてよい。米、エンドウ豆及びオート麦タンパク質、又はその混合物など他のタンパク質供給源を使用してもよい。さらに、必要に応じて、タンパク質供給源は、遊離アミノ酸を含んでいてよい。タンパク質供給源は、カゼインナトリウム及び/又はカリウムなどのカゼイン塩、並びに/又は乳タンパク質濃縮物を含んでいることが好ましい。
【0047】
本発明による組成物が液状組成物である場合、一実施形態では、組成物はタンパク質4.5〜6g/100mlを含む。組成物は、好ましくは、タンパク質5.2〜5.8g/100ml、より好ましくはタンパク質5.4〜5.7g/100mlを含む。
【0048】
タンパク質供給源は、組成物のエネルギーの約8%〜約20%を供給することができる。タンパク質供給源は、組成物のエネルギーの約11%〜約19%を供給することが好ましい。これは、組成物のエネルギーの13〜約17%、例えば約15%を供給することがより好ましい。
【0049】
本発明の一実施形態では、組成物は、脂質の供給源をさらに含む。栄養組成物で使用する脂質の供給源は、例えば、オリーブ油、オレイン酸に富んだひまわり油、オレイン酸に富んだ(低エルカ酸)菜種油、ヘーゼルナッツ油、ベニバナ油、大豆油、トウモロコシ油、ココナッツ油、乳脂肪、黒スグリ種油、魚油、ヤシ油、ピーナッツ油、及びこれらの混合物から選択することができる。脂質供給源は、大豆油、乳脂肪、低エルカ酸菜種油、トウモロコシ油、及びこれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0050】
好ましくは、組成物のn−6/n3の比は、4〜12、より好ましくは5〜10、最も好ましくは7〜8の範囲である。
【0051】
脂質供給源は、飽和脂肪酸(SFA)、単不飽和脂肪酸(MUFA)、及び/又は多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含んでいてよい。SFAは、部分的に中鎖トリグリセリド(MCT)として存在していてよく、MCTは、C〜C12脂肪酸を含んでいるトリグリセリドを意味する。
【0052】
脂質供給源は、量を増大させてSFA、MUFA、PUFAを含んでいることが好ましい。脂質供給源の重量パーセントで、組成物は、SFA 10〜15%、MUFA 30〜50%、PUFA 35〜55%を含むことが好ましい。
【0053】
脂質供給源は、組成物のエネルギーの25〜45%を供給することができる。脂質供給源は、組成物のエネルギーの30〜40%、より好ましくは32〜38%を供給することが好ましい。
【0054】
組成物は、100ml当りコレステロールを1mg未満、より好ましくは0.5mg未満含むことが好ましい。
【0055】
食品用乳化剤を必要に応じて加えてもよい。
【0056】
組成物は、完全なビタミン及びミネラル特徴を含むことが好ましい。例えば、栄養組成物1000カロリー当りのビタミン及びミネラルの推奨一日許容量の約75%〜約250%の十分なビタミン及びミネラルを補給することができる。栄養組成物が唯一の栄養ではない場合、これらの値を調整してもよい。Mg及びZnなどのいくつかのミネラル及びビタミンは、より低濃度で加えてもよい。
【0057】
本発明による組成物のエネルギー含有量は、1.3〜1.8kcal/mlである。エネルギー含有量が1.4〜1.6kcal/mlであることが好ましい。
【0058】
好ましい一実施形態では、本発明による栄養組成物は、非GMOである。「非GMO」という用語は、生成物の起源(すべての原料)にGMOが含まれないことを表す。しかし、微量の遺伝子操作生物が生成物中に見られることもあり、これは、例えば、輸送中の原料の混入が原因の可能性がある。より正確には、「非GMO」は、本発明による生成物の乾物の0.9wt%以下がGMOであってよい、又はそれを含んでいてよいことを表す。
【0059】
本発明による栄養組成物は、GMOを含まない、言い換えれば、任意の既知の方法を用いて生成物中に検出可能な微量のGMOが見られないことがより好ましい。
【0060】
例えば、本発明による栄養組成物は、タンパク質供給源、脂質供給源及び可消化炭水化物の供給源を含み、タンパク質供給源は組成物の全エネルギーの10〜20%を供給し、脂質供給源は30〜40%を供給し、また可消化炭水化物供給源は45〜55%を供給する。これらの供給源は、それぞれ組成物のエネルギーの12〜17、32〜37、及び47〜53%を供給することがより好ましい。
【0061】
一実施形態では、本発明による組成物の粘度は、30〜80mPaである。粘度は、HAAKE RS100装置を用いて20℃で、且つ剪断速度0〜300s−1で測定することが好ましい。
【0062】
本発明の栄養組成物は、液状で貯蔵安定性のある、或いは粉末状で再構成可能な組成物であってよい。液状組成物である場合、約150〜400ml、より好ましくは180〜300ml、例えば200〜250mlの1人前の量のカップ、ボトル、テトラ又はCombiblocパック或いは他の容器で供給することが好ましい。
【0063】
本発明による組成物は、貯蔵安定性のある、液状で即利用可能な組成物であることが好ましい。その貯蔵期限は、室温で少なくとも4カ月、好ましくは5〜13カ月、より好ましくは7〜12カ月であることが好ましい。
【0064】
組成物が液状で貯蔵安定性のある組成物である場合、摂取前に少し簡単に撹拌して、おそらく沈殿又は沈降したある種の繊維などの不溶性成分を再分散させることが好ましい。
【0065】
組成物が粉末状配合物の場合、栄養上安全な水道水又は濾水などの水で再構成することが好ましい。
【0066】
栄養組成物は従来、浸透圧重量モル濃度が約350〜670mosm/kg HO、好ましくは500〜650mosm/kg HO、より好ましくは570〜640mosm/kg HOであってよい。
【0067】
栄養組成物の浸透圧モル濃度は、400〜500mosm/Lであることが好ましい。
【0068】
本発明による栄養組成物は、繊維が豊富である、すなわち、1人前当り繊維を5gより多く含む。本発明による栄養組成物はバランスの良い腸管フローラを改善及び維持するのに有用である。さらに、便秘及び/又は下痢を緩和するために腸管通過を改善するのに適当である。したがって、本発明による組成物は、腸管痛を治療又は予防し、且つ腸管の快適性を維持するのに適している。
【0069】
好ましくは、本発明は、予防及び/又は治療栄養として使用する組成物を提供する。特に、栄養組成物は、疾患又は栄養不良からの回復及び/又は治癒を助ける。
【0070】
他の一実施形態では、組成物は、栄養を供給し、消化管及び腸機能を改善し、及び/又はバランスの良い腸管フローラを維持若しくは回復させる。
【0071】
さらに他の一実施形態では、本発明による組成物は、粘膜バリア機能を強化するのに有用である。
【0072】
別の実施形態では、組成物は、例えば老人患者の、腸管の健康又は快適性を向上させるのに使用する。
【0073】
栄養組成物は、従来のように生成することができる。いくつかの成分は他のものよりも水に溶解しにくく、またいくつかのビタミンは熱に影響されやすいことを考慮することができる。
【0074】
例えば、繊維供給源、タンパク質供給源、及び脂質供給源は、ブレンドし、任意選択でコロイドミルに通して水、好ましくは逆浸透にかけた水に溶解して、液状混合物を生成することができる。水の温度は、成分の分散を助けるために、好都合には約50℃〜約80℃である。市販されている液化機を使用して液状混合物を生成することができる。液状混合物のpHは、食品用水酸化物を用いて約6.3〜7に調整することが好ましい。
【0075】
使用する場合、乳化剤は、ブレンド中に含めることができる。ビタミン及びミネラルは、この時点で加えることができるが、熱崩壊を避けるために通常もっと後に加える。乳化剤などは、脂質供給源中に溶解してからブレンドすることができる。植物供給源由来の食品用乳化剤を使用することが好ましい。商業的に得られる食品用乳化剤の例は、Cutina GMS V(フランスのCognis社)である。
【0076】
液状混合物を調製した後、加熱の停止又は混合物の冷却並びに他の成分、例えばDEが15〜25のスクロース及びマルトデキストリンなど容易に溶解する可消化炭水化物の添加を行うことができる。他の容易に溶解する成分には、例えば、オリゴ糖、ビタミン、ミネラル、香味料及び着色剤がある。
【0077】
pHを15〜20℃の温度で約6.9〜7に再度調整することが好ましい。
【0078】
次いで、液状混合物を熱処理して、細菌の取込みを減らすことができる。例えば、液状混合物は、約5秒〜約5分間、約80℃〜約110℃の範囲の温度まで急速に加熱することができる。これは、蒸気噴射又は熱交換器、例えばプレート式熱交換器によって実施することができる。
【0079】
液状で貯蔵安定性のある組成物を調製する場合、超熱処理(UHT)処理は、50〜85℃まで予熱した後に行うことが好ましい。例えば、間接UHT処理は、140〜155℃で5〜8秒間、例えば管式熱交換器中で行うことができる。
【0080】
次いで、液状混合物を、例えばフラッシュ冷却によって約60℃〜約85℃まで冷却することができる。次いで、液状混合物を均質化する;例えば、第1段階では約100〜200バール、また第2段階では約20〜80バールの2段階で行う。
【0081】
液状形態の生成物では、均質化した混合物は、適当な容器内に無菌充填することが好ましい。容器の無菌充填は、液状混合物を、例えば無菌貯蔵タンク中で約18〜30℃の温度に冷却することによって実施することができる。次いで、均質化した混合物を、例えばN雰囲気化で容器中に充填することができる。この性質の無菌充填を実施するための適当な装置は市販されている。
【0082】
粉末状の再構成可能な配合物を生成する場合、均質化した混合物は、その後さらに冷却して、ビタミンやミネラルなど任意の熱感受性成分を加えることができる。均質化した混合物のpH及び固体含有量は、この時点で標準化すると好都合である。粉末形態の生成物では、均質化した混合物は、例えば噴霧乾燥によって乾燥させて粉末にする。従来の手順を使用することができる。
【0083】
したがって、本発明によるプロセスは、
− 組成物の成分を混合するステップ、及び
− その成分を水和して液状混合物を提供するステップ
を含むことが好ましい。
【0084】
さらに、このプロセスは、
− 液状混合物を熱処理及び均質化するステップ、
並びに、液状組成物の場合、
− 組成物を無菌充填するステップ、
又は、粉末状の再構成可能な組成物の場合、
− 液状混合物を乾燥、例えば噴霧又はローラー乾燥させて本発明による組成物を得るステップ
を含むことが好ましい。
【実施例】
【0085】
即利用可能な栄養組成物を調製する。栄養組成物は、以下の成分を含む:
【表1】

【0086】
第1のステップでは、アラビアゴム、イオタ型カラギーナン、モノグリセリド及びジグリセリド、脂質、エンドウ豆外繊維、タンパク質供給源、KOH並びにNaHPO4をミキサートリブレンダー中で混合し、コロイドミルに通し、貯蔵タンクに送り、そこでそれらを水と混合してプレート式熱交換器によって70℃まで加熱した。
【0087】
第2のステップでは、スクロース及びマルトデキストリンをトリブレンダー中で混合して貯蔵タンクに加えた。
【0088】
第3のステップでは、貯蔵タンク中の混合物の温度を30℃まで下げてからフラクトオリゴ糖(FOS)、ビタミン、ミネラル、香味料及び着色剤をトリブレンダー中で混合し、コロイドミルに通して貯蔵タンクに加えた。
【0089】
撹拌した後、水和混合物の温度を18℃まで冷却し、pHを約7に調整し、乾物を30%に調整した。
【0090】
その後、管式熱交換器によって80℃まで予熱し、7秒間150℃まで加熱して75℃まですぐに冷却することによって間接UHTを行った。
【0091】
2段階均質化を、それぞれ120及び40バールで実施した。
【0092】
次いで、水和した、超熱処理及び均質化した混合物の温度を冷却器中で20℃まで下げ、無菌貯蔵タンクに送って無菌充填機によって200ml容器中に充填した。
【0093】
栄養組成物のエネルギー含有量は1.5kcal/mlであり、浸透圧モル濃度は610mosm/kg HO、浸透圧モル濃度は646mosm/kg HOである。
【0094】
エンドウ豆外繊維、アラビアゴム及びRaftilose P95(商標)を、それぞれ不溶性、可溶性繊維及びオリゴ糖として使用した。
【0095】
組成物は、8カ月間貯蔵安定であり、良い味がすると評価されている。プラム及びバニラを風味として加えた。
【0096】
組成物は、繊維が豊富であり、腸管通過を改善し、腸管フローラ及び腸管の快適性を改善する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質供給源、可消化炭水化物の供給源及び食物繊維の供給源を含み、1.3〜1.8kcal/mlのエネルギー密度及び2.5g/100mlより多い量の食物繊維を有することを特徴とする、液状又は粉末状で再構成可能な栄養組成物。
【請求項2】
前記エネルギー密度が1.4〜1.6kcal/mlである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記繊維の供給源が、可溶性非デンプン多糖類、不溶性非デンプン多糖類、オリゴ糖、及びこれらの混合物の群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記繊維の供給源が、可溶性非デンプン多糖類20〜40重量%、不溶性多糖類30〜60重量%、及びオリゴ糖20〜40重量%を含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記可溶性繊維がアラビアゴムであり、不溶性繊維がエンドウ豆外繊維から供給され、及びオリゴ糖がフラクトオリゴ糖である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
粘度が30〜80mPaである、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
タンパク質4.5〜6g/100mlを含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
脂質の供給源をさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
臨床的にラクトースを含まないことを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
栄養を供給し、消化管及び腸機能を改善し、及び/又はバランスの良い腸管フローラを維持若しくは回復させる、請求項1から9までのいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
粘膜バリア機能を高める、請求項1から9までのいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
老人患者における腸管の健康又は快適性を向上させる、請求項1から9までのいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
請求項1から9までのいずれかに記載の栄養組成物を調製する方法であって、
− 前記組成物の成分を混合するステップ、及び
− 前記成分を水和して液状混合物を提供するステップ
を含む方法。
【請求項14】
請求項1から12までのいずれかに記載の栄養組成物を個体に投与するステップを含む、栄養を供給し、消化管及び腸機能を改善し、及び/又はバランスの良い腸管フローラを維持若しくは回復させる方法。
【請求項15】
請求項1から12までのいずれかに記載の栄養組成物をヒト個体に投与するステップを含む、ヒト個体の粘膜機能を高める方法。

【公表番号】特表2007−527400(P2007−527400A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519853(P2006−519853)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007674
【国際公開番号】WO2005/013721
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】