説明

高繰返周波数の超高速パルスレーザ溶発による、有機化合物のナノ粒子の液中生成方法

超高速パルスレーザ溶発プロセスを用いて、化学的に純粋で安定して分散される有機性のナノ粒子のコロイド懸濁液を生成する方法が開示されている。この方法は、高い繰返周波数で非常に短いレーザパルスで貧溶媒と接触している有機化合物材料のターゲットを照射することと、生成した有機化合物のナノ粒子を集めることとを含んでいる。この方法は、高繰返周波数の超高速パルスレーザ発振器と、パルスレーザビームを集光して移動する光学的システムと、貧溶媒と接触している有機化合物ターゲットと、レーザ焦点ボリュームを冷却すると共に生成したナノ粒子の生成物を集める溶媒循環システムとから成り立っている。様々なレーザ・パラメータを制御し、オプションの貧溶媒の流れの動きにより、この方法は、任意の安定剤がない場合に、貧溶媒に分散した有機性のナノ粒子の安定したコロイドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2010年2月10日に出願した米国仮出願第61/302,984号明細書の利益を請求するものである。
【0002】
本発明は、超高速パルスレーザで溶発(アブレーション)して、有機化合物から100nm以下の平均直径を有するナノ粒子に関して安定した親水コロイドを生成することに一般的に関する。
【背景技術】
【0003】
大半の砂糖は水に高度に溶けるが、すべての固体の有機化合物が妥当な溶解度で水に溶けるわけでない。多くの固体の有機化合物が水に溶けること、又は固体の有機化合物が水中に分散して、安定した親水コロイドを形成することが特に望まれている。最大幅の様々な有機固体に適用できる方法を実現すると、最も有益になると考えられる。クルクミン,1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,6−ヘプタジエン−3,5−ジオンは、クルクマ・ロンガLの根茎から抽出した自然の黄−オレンジ染料であり、様々な生物学的活性と薬理作用とを有する。残念なことに、クルクミンは水溶性でなく、その効果的な生物学的利用効率が数多くのシステムで制限されている。多くの試みが、クルクミンを水中に分散させて、その生物学的な利用効率を改善するために行われてきた。油分と界面活性剤とをもつクルクミンのマイクロ乳剤を含有するセルフ−マイクロ乳化性ドラッグ送達システムが、水中のクルクミンの溶解性を改善すると報告されていた(非特許文献1参照。)。クルクミン−リン脂質複合体は、公式化されていないクルクミンと比べると、生物学的利用効率と代謝体の形成の両方を大幅に改善すると報告されていた(非特許文献2参照。)。「ナノクルクミン」というニックネームのポリメリックでナノ粒子で密閉されたクルクミンも、クルクミンの生物学的利用効率を改善する新規の方策として報告されていた(非特許文献3参照。)。これらの方法のすべてが、水中における生物学的利用効率と溶解度とが改善された複合体を形成するために、これらの関連したクルクミンにおいて、要望された有機化合物に加えて、他の化学化合物を使用することに関連している。
【0004】
金属又は金属合金のターゲットをパルスレーザで液体中で溶発することは、金属と金属合金のナノ粒子を生成する際に用いる物理的方法の一つである。このプロセスで、パルスレーザのビームは、液体中に浸されているターゲットの表面に焦点が設定されている。溶発された材料は、液体で再び凝集してナノ粒子を形成する。近年、パルスレーザ溶発技術を非常に少量の有機性ナノ粒子の作成に応用するレポートがあり、そこでは、貧溶媒に懸濁された有機性微結晶粉末が、初期結晶の分裂をまねく、強力なレーザで照射されている(例えば、非特許文献4〜6参照。)。貧溶媒は、ターゲットの有機材料が溶解しないか、溶解度が低い液体である。十分な量のレーザビームに対する露出後に、有機性の微結晶粉末の不透明な懸濁液が、透明なコロイド状の懸濁液に転化される。このレーザ溶発の手法は、有機性の微結晶粉末を安定したナノコロイドの懸濁液に、添加剤や化学薬品を用いずに直接的に転化すると思われる。今まで報告されてきた結果のすべては、総容量が3mLのキュベット(容器)で行われてきた。このレーザ溶発手法を用いて、この少容量から大量生産の有機性ナノ粒子にスケールアップすることは難しい。固定容量の小さなキュベットで有機性の微結晶粉末懸濁液をパルスレーザで溶発することは、溶発プロセス中に使用できる微結晶粉末の量が減少するので、有機性のナノ粒子の生成を一定の効率で維持できないことは明らかである。同様の結果が、いくつかの他のグループからも報告されていた(例えば、非特許文献7及び8参照。)
生物学的システムで生物学的使用効率と使用性とを増加するために、水及び他の液体で溶解度が不十分な有機化合物からナノ粒子を形成する方法を開発することが望まれる。そのうえ、凝集を回避し、安定剤の任意の必要性を解消し、迅速なスループットを提供し、大量生産のレベルをスケールアップする、有機性のナノ粒子を生産する方法を開発することが有用と思われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ジン・クイ(Jing Cui), ボー・ユー(Bo Yu), ユー・ザオ(Yu Zhao), ウエイウェイ・ズー(Weiwei Zhu), ハウリィ・リィー(Houli Li), ホンシャン・ロー(Hongxiang Lou),グアンシー・ザイ(Guangxi Zhai) 、「セルフ−マイクロ乳化性ドラッグ送達システムによるクルクミンの経口吸収の拡張("Enhancement of oral absorption of curcumin by self-microemulsifying drug delivery systems")」、薬剤学のインターナショナル・ジャーナル(International Journal of Pharmaceutics)、第371巻、p148〜155、2009年
【非特許文献2】T. H. マルツェロ(Marczylo), R. D. ベルチョイル(Verschoyle), D. N. クック(Cooke), P. マラツォーニ(Morazzoni), W. P. スチューワート(Steward), A. J . ゲッシャー(Gescher) 、「クルクミンのシステム的な利用効率とホスファチジルコリンで公式化されたクルクミンの利用効率との比較("Comparison of systemic availability of curcumin with that of curcumin formulated with phosphatidylcholine")」、癌化学療法薬理学(Cancer Chemother. Pharmacol.)、第60巻、p171〜177、2007年
【非特許文献3】S. ビッシュ(Bisht), G. フェルドマン(Feldmann), S. ソニ(Soni), R. ラビ(Ravi), C. カリカー(Karikar), A. マイトラ(Maitra),A. マイトラ(Maitra),、「ポリメリックでナノ粒子で密閉されたクルクミン(「ナノクルクミン」):人の癌療法のための新規の方策("Polymeric nanoparticle-encapsulated curcumin ("nanocurcumin"): a novel strategy for human cancer therapy")」、ジャーナル・オブ・ナノバイオテクノロジー(Journal of Nanobiotechnology)、第5巻:p3、2007年
【非特許文献4】玉城喜章、朝日剛、増原宏、「エキシマ・レーザ照射による芳香族化合物のナノ粒子と色素分子の調製("Tailoring nanoparticles of aromatic and dye molecules by excimer laser irradiation")」、アプライド・サーフェイス・サイエンス(Applied Surface Science)、第168巻、p85〜88、2000年
【非特許文献5】杉山輝樹、朝日剛、増原宏、「水中におけるフェムト秒のレーザ溶発による10nmサイズのOxo(フタロシアニナト)バナジウム(IV)粒子の形成("Formation of 10 nm-sized Oxo(phtalocyaninato)vanadium(IV) Particles by Femtosecond Laser Ablation in Water")」、ケミストリー・レターズ(Chemistry Letters) 、第33巻、第6号、p724,2004年
【非特許文献6】朝日剛、杉山輝樹、増原宏、「有機ナノ粒子のレーザ製作と分光法("Laser Fabrication and Spectroscopy of Organic Nanoparticles")」、アカウンツ・オブ・ケミカル・リサーチ(Accounts of Chemical Research)、第41巻、第12号、2008年
【非特許文献7】I.エラブディ(Elaboudi), S.ラザール(Lazare), C.ベリン(Belin), D. タラガ(Talaga). C. ラブルーゲル(Labrugere)、「水中におけるエキシマ・レーザ溶発によるポリマーフィルムから有機性のナノ粒子懸濁液("From polymer films to organic nanoparticles suspensions by means of excimer laser ablation in water")」、アプライド・フィジックス(Appl. Phys)A,第93巻、p827〜831、2008年
【非特許文献8】安國良平、M. スリワ(Sliwa), J. ホフケンズ(Hofkens), F. C.ド・シュライバー(De Schryver), A. ハーマン(Herrmann), K. ムラン(Mullen), 、朝日剛、「水中でレーザ溶発によって作成したデンドロナイズ・ペリレンジイミデ・ナノ粒子のサイズ依存性の光学的特性("Size-Dependent Optical Properties of Dendronized Perylenediimide Nanoparticle Prepared by Laser Ablation in Water")」ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics)、第48巻、p065002、2009年
【発明の概要】
【0006】
大まかに説明すれば、本発明は、レーザ溶発を用いて、有機化合物からナノ粒子に関して化学的に純粋で安定したコロイド状の懸濁液を製造する方法とシステムとを提供する。この方法は、高繰返周波数の超高速パルスレーザビームを生成し、有機化合物のターゲットを提供し、有機化合物のターゲットにおいて、パルスレーザビームの波長に対して実質的に透明の液中に位置決めされた前述のターゲットを、パルスレーザビームで照射し、溶発により液中にターゲットのナノ粒子懸濁液を照射して生成し、ターゲットの表面に対する液体の流れと、パルスレーザビームとターゲットとの間の相対運動の一方又は両方を行うステップを含んでいる。この方法とシステムは、非常に効率的であり、有機性のナノ粒子のコロイド懸濁液に対して高い生成率が可能である。コロイド懸濁液は、任意の安定剤がない場合でも少なくとも一週間25℃で安定している。本明細書と本特許請求の範囲の記載において、「単一のナノ粒子」又は「複数のナノ粒子」という用語は、本発明に係る製造方法において、生産した粒子に関して、平均直径が100nm以下の粒子を意味する。貧溶媒は、溶解性があるにしても、ターゲットの有機材料が非常に低い溶解性である場合の液体として定義されている。
【0007】
本発明の上記及び他の特徴と長所は、好ましい実施例に係る発明の詳細な説明から、当業者には更に明白になると思われる。発明の詳細な説明に添える図面について次に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の製造方法に係る、液中に有機性のナノ粒子をつくるレーザ準拠システムを概略的に示す図である。
【図2】本発明の製造方法に係る、液中に有機性のナノ粒子をつくる別のレーザ準拠システムを概略的に示す図である。
【図3】円柱形状のターゲットを溶発することにより、本発明の製造方法に係る、液中に有機性のナノ粒子をつくるレーザ準拠システムを概略的に示す図である。
【図4】クルクミンのナノ粒子の親水コロイド分散に関する吸収と波長の関係を示す、プロットである。
【図5】メタノールに分解した純粋のクルクミン粉末の溶液の吸収スペクトルと、メタノールで混合した本発明に係る製造方法により作成したクルクミンのナノ粒子の親水コロイドのスペクトルとを示す図である。
【図6】TEMサンプリング・グリッド上に、本発明に係る製造方法により作成したクルクミンのナノ粒子の親水コロイドの滴下物の乾燥サンプルの透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図7】図7(a)は、純粋のクルクミンの粉末サンプルの質量スペクトルで、図7(b)は、本発明に係る製造方法により作成したクルクミンのナノ粒子の親水コロイド試料の質量スペクトルである。
【図8】本発明に係るナノ粒子製造の効率とレーザ繰返周波数の関係を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、超高速パルスレーザ溶発プロセスを用いて、有機材料から安定したナノ粒子のコロイド懸濁液をつくるレーザ・システムを意図している。
【0010】
図1は、本発明の製造方法に係る、液中に有機性のナノ粒子をつくるレーザ準拠システムを概略的に示す。ある実施例においては、レーザビーム1は、図示を省略した超高速パルス源から受光し、レンズ2で集光される。レーザビーム1の光源は、次に述べるような任意のパルス持続期間、繰返周波数、及び/又は電力レベルを提供できる、適切な超高速パルスレーザ発振器である。集光されたレーザビーム1は、レンズ2から、レーザビーム1の動きを制御するガイド機構3に進む。ガイド機構3は、例えば圧電ミラー、音響光学的偏向器、回転ポリゴン、振動ミラー、プリズムを含めて、従来技術で周知のものでよい。ガイド機構3は、集光されたレーザビーム1の制御された迅速な動きを可能にする振動ミラー3が好都合である。ガイド機構3は、集光されたレーザビーム1をターゲット4に向ける。ある実施例においては、ターゲット4は、ナノ粒子に変換される、有機化合物を圧縮したペレットである。圧縮されたペレットは、有機材料の様々な粉末原料から形成できる。原料となる粉末の柔らかさに基づいて、サブミクロンからミリメータのサイズ、好ましくは、サブミクロンからサブミリメータのサイズの平均粒子径を有する、有機化合物の粉末原料を用いることが好ましい。粉末原料材料は、金型と加圧装置を用いて、ペレットに圧縮できる。用いる加圧装置は原料となる材料によるが、ターゲット4ペレットは、次に述べるように、自立できて、液体5の流れと容器7との整合性を維持できなければならない。圧縮されたターゲット4のサイズは、少なくとも一つの寸法で1mmより大きい。代わりに、ターゲット4は有機化合物材料の別の原料でも可能である。それらは、基板上に堆積した有機化合物の膜、5mmより大きい少なくとも一つの寸法をもつ有機化合物の膜、ノズルから液体5に向けて押し出されたバルク有機化合物のストリーム、又は液体5に導入されたバルク有機化合物のペースト等である。これらのなかの任意のものが、本発明のターゲット4材料として機能できる。ターゲット4の少なくとも一部は液体5と接触し、ターゲット4は、液体5の表面の下方数mmから1cm未満の距離で、液体5に浸されるのが好ましい。ターゲット4は、容器7の最上部に除去自在のガラス窓6を有する容器7に位置決めされるのが好ましい。Oリング・タイプのシール8は、液体5が容器7から漏出することを防ぐために、ガラス窓6と容器7の最上部との間に置かれている。容器7は、導入パイプ12と排出パイプ14とを備えており、液体5がターゲット4上を通過できるので、再循環が可能になる。容器7は、容器7の並進運動と液体5の動きとを可能にする、可動ステージ9上にオプションで設置できる。液体5の流れを用いて、生成したナノ粒子10を容器7から移行し、どこにでも集められるようにする。ターゲット4上の液体5の流れは、レーザの集光部分の容積も冷却する。液体5の流速と容量は、説明するように、ターゲット4とガラス窓6との間のギャップを十分に満たすべきである。そのうえ、それは、レーザ溶発中に生じた任意の気泡が、ガラス窓6に滞ることを十分に妨げるものでなければならない。液体5は、レーザビーム1の波長に対して十分に透明であり、ターゲット材料4に対して好都合に貧溶媒となる、任意の液体でよい。ある実施例においては、液体5は、好ましくは0.05MΩ.cmより大きい抵抗率、より好ましくは1MΩ.cmより大きい抵抗率を有する、脱イオン水である。
【0011】
超高速パルスのレーザビーム1は、500ピコ秒以下、好ましくは約10フェムト秒〜500ピコ秒、より好ましくは10フェムト秒〜200ピコ秒、最も好ましくは100フェムト秒〜10ピコ秒のパルス幅を好都合に有している。パルス繰返周波数は、好ましくは1Hz〜100MHz、より好ましくは10kHz〜10MHz、最も好ましくは100kHz〜5MHzである。好ましい波長は約1045nmであるが、約400nm〜4000nmの適切な波長を使用できる。1045nmの波長において、ターゲット4上の数mmの厚みの水の層に、吸収があるが、この波長では無視できる。レーザビーム1は、ナノ粒子10の生成のために、約1nJ〜10mJの範囲が好ましく、より好ましくは100nJ〜10μJの範囲のパルスエネルギがある。レーザビーム1は、約100μJ/cm〜100J/cmが好ましく、より好ましくは10mJ/cm〜100J/cmの範囲において、ターゲット4の表面の焦点にレーザ・フルエンスがある。
【0012】
ある実施例においては、ガイド機構3は、ターゲット4の表面にレーザビーム1の高速ラスタリング又は他の動きを行うように構成された振動ミラー3が用いられる。ミラー3の振動周波数は、好ましくは10Hz以上であり、好ましくは0.1mrad以上、より好ましくは1.0mrad以上の角度振幅を有しているので、ターゲット4の表面のラスタリング速度は、0.01m/秒以上であり、最も好ましくは0.1m/秒以上である。このようなミラー3は、圧電駆動ミラー、検流計ミラー、又はレーザビーム1を動かす他の適切な装置でよい。
【0013】
ある実施例においては、容器7を経由する液体5の流れは、循環システムで行われ、流速は、好ましくは1.0mL/秒以上、より好ましくは10.0mL/秒以上である。液体5の流れは、生成したナノ粒子10を液体5に均一に分布させて、それらを容器7から除去するために必要である。十分な容量の液体5を維持して、ターゲット4上方の液体5の厚みに任意の変動を生じないようにすることが必要である。液体5の厚みが変動すると、レーザビーム1の光学的通路の特性も変わるので、生成したナノ粒子10の粒径分布も非常に広いものになる。流れている液体5上方の光学窓6は、ターゲット4上方における液体5の厚みを一定に維持するように機能する。循環システムを使用できない時に、横方向の振動を、例えば、レーザビーム1に対して垂直に、図1に示すように、可動ステージ9に対して与えると、液体5が、溶発スポットを局部的に横断して流れることになる。可動ステージ9は、数Hzの振動周波数と数mmの振幅とを有しているのが好ましい。撹拌器は液体5を循環させるために使用可能であり、撹拌器の循環運動は容器7の液体5にも循環運動を行わせるので、有機性のナノ粒子10は液体5の内部に均一に分布することができる。液体5を循環させる、これらの二つの方法のなかの何れかを用いるとガラス窓6は不要になる。しかし、何れかを使用すると、ターゲット4上方の液体5の厚みが不均一になるので、ナノ粒子10が幅広いサイズで分布することになる。
【0014】
本発明は、安定した化学的に純粋のナノ粒子のコロイド懸濁液を有機化合物から形成するシステム及び方法とを提供する。「安定」とは、水中でつくった場合の親水コロイドが、又は別の液体でつくった場合のコロイド懸濁液が、これらの条件のもとで、少なくとも7日間、25℃に、より好ましくは少なくとも2ヶ月間安定して貯蔵後に、粒子の凝集がないことを意味する。化学的に純粋であることにより、コロイド懸濁液が抽出される液体5とターゲット4に見受けられる有機材料だけからなることになる。コロイドを安定状態に維持するために、安定剤又は表面活性剤を添加する必要性はない。本発明は、パルス幅、パルスエネルギ、パルス繰返周波数、ターゲット4上のレーザビーム1の動きとを含めた、レーザ・パラメータを適切に制御することにより、このような安定したナノ粒子のコロイド懸濁液を生成できることを発見した。レーザビーム1の運動率と液体5の流速の両方が、本発明で用いる好ましい高パルス繰返周波数から生じる蓄熱作用を制御することにより、プロセスを支援するために使用できる。
【0015】
本発明では、超短パルス幅が好まれる。パルス幅又はパルス持続時間は、10フェムト秒〜200ピコ秒、より好ましくは100フェムト秒〜10ピコ秒の範囲であることが好ましい。これらの短い持続時間のパルスは、溶発サイトにおける非常に高いピーク電力と小さい溶発熱影響部のために、溶発効率を高めると考えられる。
【0016】
金属と金属酸化物とからナノ粒子をつくるレーザ溶発に関する以前の研究から、低いパルスエネルギ、より正確に言うと溶発閾値の又はそれに近い低いレーザ・フルエンスが、これらの無機性ターゲット材料からのナノ粒子の形成に好ましいことが分かった(例えば、 B.リュウ(Liu), Z. D. フー(Hu), Y. チェ(Che), 「超高速光源:超高速レーザがナノ粒子をつくる("Ultrafast sources: ultrafast lasers produce nanoparticles")」、レーザ・フォーカス・ワールド(Laser Focus World),、第43巻、p74、2007年及び B.リュウ(Liu), Z. D. フー(Hu), Y. チェ(Che), Y. B.チェン(Chen), X. Q.パン(Pan)、「ニッケルの超高速パルスレーザ溶発におけるナノ粒子の生成("Nanoparticle generation in ultrafast pulsed laser ablation of nickel")」、アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters) 、第90巻、p044103、2007年参照。)。 金属基板のこれらの研究から、溶発した材料は、狭い粒径分布状態でナノ粒子の形態で多くが存在することが分かった。2007年3月2日に出願され、米国出願公開第2008/0006524号公報として2008年1月10日に公開された、米国特許出願第11/712,924号明細書では、真空と周辺気体の金属と金属酸化物とからナノ粒子を生成し、それらを基板上に堆積させる方法も示唆している。発明者は、溶発閾値に近い低いパルスエネルギは、有機性のナノ粒子コロイドの形成に好ましいことに気づいた。パルスが、1nJ〜10mJ、より好ましくは100nJ〜10μJのパルスエネルギを有することは、本発明にとって好ましいことである。
【0017】
本発明者は、高いパルス繰返周波数は、有機原料材料から、本発明に係る製造方法によって、ナノ粒子を生成する際に非常に有益であることを発見した。好ましいパルス繰返周波数は、1Hz〜100MHz、より好ましくは10kHz〜10MHz、最も好ましくは100kHz〜5MHzの範囲である。これらの高い繰返周波数は少なくとも三つの理由で有益である。第1に、これらの繰返周波数は、高繰返周波数のパルスレーザ溶発において多様なパルス効果を呈する。100kHz以上の繰返周波数により、例えば、パルス間隔は、10マイクロ秒以下になる。この時間的な間隔は、溶発された材料が、レーザの集光部分の容積から離れてドリフトするまえに、多様なレーザパルスを受信して、高度に帯電されるように短く設定されている。発明者は、安定したナノ粒子のコロイドが、この帯電のために、更なる安定化学薬剤を添加しなくても、このような高繰返周波数でつくることを発見した。第2に、溶発プロセスが溶発された材料の多様なパルスを含む時に、初期には大きな粒子の分裂が生じ、最終的にナノ粒子が圧倒的に多く存在する粒径分布状態になる。結果的に、高い繰返周波数が、ナノ粒子の高い生成率を導くことになる。
【0018】
発明者は、溶発プロセス中におけるレーザビーム1の高速ラスタリングは、高繰返周波数と連携して、有機原料からナノ粒子をつくるうえで有益であることも発見した。好ましいラスタリング速度は、0.01m/秒以上であり、より好ましくは0.1m/秒以上のラスタリング速度である。このようなレーザビーム1の高速ラスタリングでなくても、最初のレーザパルスで生成したナノ粒子10のストリームは、レーザビーム1を散乱して吸収することにより、後に続くレーザパルスを事実上ブロックする。更に重要なことは、高繰返周波数に起因する液体5の蓄熱作用が、ナノ粒子10の凝集も誘発できることである。
【0019】
前述のレーザ・パラメータに加えて、発明者は、液体5の動きが、安定したナノ粒子のコロイドをつくるうえでも有用なことに気づいた。これは、水のような液体5にナノ粒子10が分散したコロイド懸濁液が、熱力学的な安定状態でなく、本質的に準安定状態、すなわち、動力学的な安定状態であることに主として起因する。生成中の液体5の流れは、ナノ粒子10の熱運動を低減するうえで役立つので、凝集に対する動力学的な障害を克服することになる。液体5の流速は、1mL/秒以上が好ましく、より好ましくは10mL/秒以上である。レーザビーム1の高速ラスタリングはナノ粒子10の熱運動を低減するうえでも有益である。
【0020】
図2は、本発明に係る製造方法において、液体中に有機性のナノ粒子を生成する別のレーザ準拠システムを概略的に示す。本実施例において、レーザビーム1は、図示を省略した超高速パルス源から受光して、レンズ2で集光される。レーザビーム1の光源は、前述した任意のパルス幅、繰返周波数、及び/又は電力レベルを提供できる適切なパルスレーザ発振器でよい。集光されたレーザビーム1は、レンズ2から、レーザビーム1の動きを制御するガイド機構3に進む。ガイド機構3は、例えば圧電ミラー、音響光学的な偏向器、回転ポリゴン、振動ミラー、プリズムを含めた従来技術で任意の周知のものでよい。ガイド機構3は、集光されたレーザビーム1に関して制御された迅速の動きを可能にする振動ミラー3を用いるのが好ましい。ガイド機構3は、集光されたレーザビーム1をターゲット4に向ける。ターゲット4は、ナノ粒子に変換される有機化合物を圧縮したペレットが好都合である。圧縮されたペレットは、有機材料の様々な粉末原料から形成できる。粉末状の原料となる材料は、次に金型と加圧装置とを用いてペレットに圧縮される。容器7の底部は、集光されたレーザビーム1が有機化合物ターゲット4の溶発を可能にするように、ガラス窓6として機能する。ターゲットは液体5に浸すことができる、又はターゲット4の底部は液体5の最上部の表面に触れることができる。ターゲット4の底部とガラス窓6との間の距離は、数mm〜好ましくは1cm未満である。容器7は導入パイプ12と排出パイプ14とを含むので、液体5はターゲット4の下を通過することになり、再循環が可能になる。液体5の流れを用いて、生成したナノ粒子10を容器7から移行し、どこにでも集められるようにする。ターゲット4の下の液体5の流れは、レーザの集光範囲の容積も冷却する。液体5は、レーザビーム1の波長に対して特に透明であり、好都合にターゲット材料4に対して貧溶媒になる、任意の液体でよい。ある実施例では、ターゲット4は、回転機構に組み込んで、図の矢印で示すように、数回転/分〜数百回転/分のスピン速度で溶発中にスピンできる。ターゲット4が回転すると、流体力学的な境界層としての液体の一部は、スピンにより引きずり回される。液体は、ターゲット4に対して垂直に、底部から上方に流れて、境界層を交換してしまう。全体の結果として、ターゲット4に向かい、且つターゲット4を横断する液体5の層流になり、生成したナノ粒子10が液体5中に分布することになる。これは、レーザ溶発中に生成した任意の気泡がターゲット4の下に滞ることを防ぐ。
【0021】
図3は、本発明の製造方法に係る、液中に有機性のナノ粒子をつくる別の代わりのレーザ準拠システムを概略的に示す。本実施例において、レーザビーム1は、図示を省略した超高速パルス源から受光し、レンズ2で集光される。レーザビーム1の光源は、前述した任意のパルス幅、繰返周波数、及び/又は電力レベルを提供できる、適切なパルスレーザ発振器でよい。集光されたレーザビーム1は、レンズ2から、レーザビーム1の動きを制御するガイド機構3に進む。ガイド機構3は、例えば圧電ミラー、音響光学的な偏向器、回転ポリゴン、振動ミラー、プリズムを含めて、従来技術で任意の周知のものである。ガイド機構3には、集光されたレーザビーム1に関して制御された迅速動作を可能にする振動ミラー3を用いるのが好ましい。ガイド機構3は、集光されたレーザビーム1をターゲット4に向ける。ターゲット4は、ナノ粒子に変換される有機化合物を圧縮した円柱形状が好ましい。圧縮された円柱形状は、有機材料の様々な粉末原料から形成できる。粉末状の原料となる材料は、次に金型と加圧装置とを用いて、円柱形状に圧縮される。容器7の底部は、集光されたレーザビーム1が有機化合物ターゲット4を通過させて溶発できるように、ガラス窓6として機能する。ターゲット4は液体5に浸すことができる、又はターゲット4の側面は液体5の最上部の表面に触れることができる。ターゲット4の側面とガラス窓6との間の距離は、数mm〜好ましくは1cm未満でよい。容器7は導入パイプ12と排出パイプ14とを含むので、液体5はターゲット4の上を通過することになり、再循環が可能になる。液体5の流れを用いて、生成したナノ粒子10を容器7から移行し、どこにでも集められるようにする。ターゲット4上の液体5の流れは、レーザの集光部分の容積も冷却する。液体5は、レーザビーム1の波長に対して特に透明であり、好都合にターゲット材料4に対して貧溶媒になる、任意の液体でよい。ある実施例においては、ターゲット4は、図の矢印で示すように、回転機構に組み込まれ、数回転/分〜数百回転/分の回転速度で溶発中に回転する。このレイアウトで、ナノ粒子10は、円柱形状のターゲットの末端の表面の代わりに、円柱形状の有機化合物ターゲット4の側面に生成する。ターゲット4が回転すると、その回転は、生成したナノ粒子10が液体5に分布するように支援するので、レーザ溶発中に生じた任意の気泡が、ターゲット4に滞ることを防ぐ。
【0022】
第1の実験において、シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)から購入したクルクミン粉末を有機原料材料として用いた。クルクミン粉末は、3トンの圧力を用いて、直径が0.5インチの金型で圧縮したターゲット材料のペレットに形作った。クルクミン・ペレットは、液体として脱イオン水を用いて本発明に係る製造方法を用いて、溶発した。容器の液体の流速は、約80mL/秒だった。クルクミン・ペレットは、500フェムト秒のパルス幅と、1μJのパルスエネルギと、1Wの電力と、1MHzのパルス繰返周波数とを用いて、1045nmの波長を有する超高速パルスレーザを用いて溶発した。レーザ焦点のサイズは、直径が約30μmだった。フルエンスは、約0.14J/cmで計算した。0.4m/秒での4mmトレースにおいて、振動ミラーの周波数は50Hzだった。得たクルクミン・ナノ粒子の親水コロイド懸濁液は黄色だった。図4は、約420nmに中心がある吸収ピークで表されている、クルクミンのナノ粒子の親水コロイドの吸収スペクトルを示す。親水コロイドは、ピークの広がりと曲線のバックグラウンド吸収度とで明らかなように、いくつかの大きな粒子を含んでいる。y軸は吸収を示し、x軸は波長を示す。クルクミンは水に溶けないので、親水コロイドのクルクミンのナノ粒子と比較すると、参照(標準)用に使用できる水スペクトルに、クルクミンは存在しない。
【0023】
クルクミンはメタノールに溶けるので、原料となるクルクミン粉末は、2.5×10−5Mの濃度のメタノールに溶かして、標準として機能させた。そのうえ、本発明に係る製造方法により作成したクルクミンのナノ粒子の親水コロイドの0.1mLを、1.0mLのメタノールと混合した。作成したナノ粒子の親水コロイドとメタノールの混合物は、メタノールに溶解したクルクミン粉末の溶液のように、透明な黄色の溶液だった。図5は、各クルクミン・メタノール溶液の吸収スペクトルを示す。実線のトレースは、本発明に係る製造方法により作成した親水コロイドのサンプルである。点線のトレースは、クルクミンの標準である。図から明らかなように、二つのスペクトルは事実上は同じであり、420nmの主なピークは親水コロイドのサンプルにおけるクルクミンの存在を示している。少し高いピークが420nmにあるトレースは、本発明に係る製造方法により作成した親水コロイドのサンプルのものである。スペクトル特性が同じであることは、本発明に係る製造方法において、低エネルギの超高速パルスレーザを用いて水中でクルクミン・ペレットを溶発しても、クルクミンの構造を破壊せず、その代わりに、クルクミンのナノ粒子が生成し、水中に分散して、安定したクルクミンのナノ粒子の親水コロイド懸濁液を形成することを示している。
【0024】
より高いパルスエネルギを用いて水中でクルクミン・ペレット・ターゲットを溶発すると、より大きな粒子を生成するが、これらの大きな粒子は親水コロイド懸濁液から沈殿する傾向を示すことが分かった。従って、パルスエネルギが増加するにつれて、大きな粒子の数も増える。これらの大きな粒子は、2000rpmで3〜5分間、遠心分離又は濾過作用を行うと、親水コロイド懸濁液から容易に分離することができる。濾紙を用いて大きなクルクミンの凝集体を保持すると、それらをクルクミン親水コロイドから分離することができる。濾紙は、保持した凝集体を溶解するためにメタノールで洗浄する。例えば、25μmの粒子保持サイズをもつフィッシャー(Fisher) P8濾紙を使用できる。メタノールに溶かした純粋のクルクミン粉末を用いると、420nm標準曲線の吸収度を実現できる。次に、クルクミン・レベルは、フィルタで洗浄した濾過後の液体とナノ粒子の親水コロイドの両方で決定できる。次に、レーザ溶発してクルクミンのナノ粒子を生成する際の効率を決定できる。レーザパルスエネルギが減少すると、ナノ粒子を生成する効率が増えることが分かった。図8は、ナノ粒子を生成する際の効率とレーザ繰返周波数との関係を示す。レーザの総電力を1Wに固定した。従って、繰返周波数の増加は、パルスエネルギの減少を表すことになる。効率は、全体のパーセンテージとして濾紙上に保持された粒子の量とコロイド溶液のナノ粒子の量とから計算した。各々の量は、紫外・可視(UV-Vis )吸収曲線における、コロイド/メタノール(MeOH) の420nmにおける吸収度から計算した。濾紙は、前述のように、メタノールに溶解した粒子を保持していた。レーザパルスエネルギが過度に減少すると、生成率も遅くなる。繰返周波数を高めると、低パルスエネルギにおける低生成率もある程度補償できる。
【0025】
図6は、本発明に係る脱イオン水のクルクミンのペレットから生成したクルクミン・ナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)の画像である。用いたレーザの平均電力は0.9W、繰返周波数が100kHz、パルスエネルギが9μJ、波長が1045nm、パルス幅が500フェムト秒だった。レーザビームは、焦点直径が50μmであり、ラスター速度が前述と同じだった。生成したナノ粒子の親水コロイド懸濁液は、25μmの保持サイズを有するフィッシャーP8濾紙を介して濾過した。濾過後の溶液の滴下物を、TEMサンプリング・グリッドに転送して乾燥した。クルクミンのナノ粒子は乾燥プロセス中に凝集するが、元々のナノ粒子は已然として認識可能であり、大半が100nm未満のサイズを有していることが分かった。
【0026】
図7(a)は純粋のクルクミンの原料となる粉末の質量スペクトル(MS)を示し、図7(b)は本発明に係る製造方法により作成したクルクミンの親水コロイド試料のMSを示す。クルクミンの親水コロイド試料は、容器中で、次に示すレーザ・パラメータにおいて、本発明に係る超高速レーザ溶発を用いて作成した。すなわち、電力が1ワット、繰返周波数が1MHz、波長が1045nm、パルス幅が500フェムト秒であり、前述と同じラスター速度だった。液体は脱イオン水だった。両方のMSトレースにおいて最大のピークは、標準のクルクミンと親水コロイドのサンプルの両方で391の質量数であり、これは、クルクミンの分子が本発明に係るレーザ溶発中において変わらないことを示している。質量数391での大きなピークは、クルクミン、質量数368とナトリウム、質量数23の複合体のためと考えることができる。原料となるクルクミン粉末は、エネルギ分散分光法を用いて調べたが、クルクミン粉末におけるナトリウムの存在は見受けられなかった。これは、ナトリウムがMSプロセス中に両方のサンプルに注入されたことを示している。標準クルクミンと親水コロイド試料の両方でMSにナトリウムが現れているにもかかわらず、これは、ナノ粒子の親水コロイドを形成するために、水中でクルクミン・ペレットをレーザ溶発しても、クルクミンの分子構造が破壊しなかったという事実を変えるものでない。
【0027】
本発明は、有機ターゲット材料としてクルクミンを及び液体として脱イオン水を用いて説明してきたが、更に幅広く応用できる。ターゲット・ペレットに形成することができる任意の他の有機材料もターゲット材料として使用できる。代わりに、前述のように、ターゲットは、基板に堆積した有機化合物の膜、5mmより大きい少なくとも一つの寸法をもつ有機化合物のバルク材料、液中にノズルから放出したバルク有機化合物のストリーム、又は液体中に注入されたバルク有機化合物のペーストのように、有機化合物材料の別の原料でもよい。任意のこれらのものが、本発明でターゲット材料として機能できる。そのうえ、脱イオン水以外の液体は、希望されたコロイド懸濁液に基づいて使用できる。
【0028】
前述した発明の説明は、関連する法的な基準に準じて述べてきたので、その記載事項は、限定的に理解すべきではなく、例示的なものである。開示した実施例に対する当業者には自明な変形や修正は、当然に、本発明の技術的範囲に属する。従って、本発明が主張する法的保護の範囲は、次に示す特許請求の範囲の記載を精査理解することで決定できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 有機化合物材料のターゲットの少なくとも一部がパルスレーザビームの波長に対して実質的に透明な液体と接触した状態で、前記ターゲットを500ピコ秒以下のパルス幅の超高速パルスレーザで照射し、溶発によって前記液体中の有機化合物材料のナノ粒子の懸濁液を生成するステップと、
(b) 前記ターゲットの表面に対する前記液体の相対的動き、及び、前記パルスレーザビームと前記ターゲットとの間の相対運動の、一方又は両方を行うステップ、
と含むことを特徴とする、貧溶媒に有機材料のナノ粒子のコロイド懸濁液を生成する方法。
【請求項2】
ステップ(a)が、約1Hz〜100MHzの範囲の繰返周波数の前記パルスレーザビームで照射することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)が、約10kHz〜100MHzの範囲の繰返周波数の前記パルスレーザビームで照射することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)が、10フェムト秒〜500ピコ秒の範囲のパルス幅の前記パルスレーザビームで照射することを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)が、100フェムト秒〜200ピコ秒の範囲のパルス幅の前記パルスレーザビームで照射することを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)が、1nJ〜10mJの範囲のパルスエネルギの前記パルスレーザビームで照射することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(a)が、100nJ〜10μJの範囲のパルスエネルギの前記パルスレーザビームで照射することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a)が、10mJ/cm〜5J/cmのレーザ・フルエンスの前記パルスレーザビームで、ターゲット表面を照射することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(a)が、400nm〜4000nmの範囲の波長の前記パルスレーザビームで照射することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(a)は、有機化合物材料を特定の形状にすることにより、有機化合物材料のターゲットをつくるステップを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(a)が、前記液体として脱イオン水を用いることを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
0.05MΩ.cm以上の抵抗率を有する前記脱イオン水を用いることを更に含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(b)が、1mL/秒以上の流速で前記ターゲットの表面に前記液体を流すことを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(b)が、フロー・セルに閉じ込まれた前記液体の流れを形成することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
レーザビームに対して透過性の光学的な窓を、前記フロー・セルと共に更に含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(b)が、液体ポンプを用いて前記ターゲットの表面に液体の流れを形成することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(b)が少なくとも一つの光学部品を提供することを含んでいて、光学部品はレーザビームを前記ターゲットに相応して移動することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記レーザビームを移動するために、少なくとも一つの光学部品として、少なくとも一つの振動ミラーを用いることを更に含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
10Hz以上の周波数と、0.1mrad以上の角度振幅とを有する振動ミラーを用いることを更に含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記レーザビームの焦点が、前記ターゲット上を0.1m/秒以上の速度で移動するように、前記ターゲット上の前記レーザビームの移動をガイドすることを含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(b)が、前記ターゲット周辺の領域を冷却し、前記ナノ粒子をその領域から離して収集位置に向けて送る、前記液体の流れを形成することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法により作成したナノ粒子のコロイド懸濁液。
【請求項23】
前記コロイド懸濁液が、安定化学薬剤のない条件において、生成後の少なくとも一週間、25℃で貯蔵される時に凝集しないことを特徴とする請求項22に記載のナノ粒子のコロイド懸濁液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−519671(P2013−519671A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552906(P2012−552906)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2011/023530
【国際公開番号】WO2011/100154
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(593185670)イムラ アメリカ インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】