説明

高耐久性エマルション

【課題】長期の使用においても耐候性、耐クラック性、密着性に優れた塗膜を形成し得る高耐久性エマルションを提供すること。
【解決手段】シリコーン変性剤〔A〕の存在下で重合したアクリル系重合体(a)と、ガラス転移温度Tgbが50℃以上のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕と、水酸基を持つエチレン性不飽和単量体〔C〕と、他のエチレン性不飽和単量体〔D〕とを重合して得られるアクリル系重合体(b)3〜40質量%からなり、アクリル系重合体全体の平均TgtがTgbよりも20℃以上低い、ことを特徴とするシリコーン含有高分子エマルション。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐汚染性、柔軟性、耐水性、耐候性、耐久性、顔料分散性、光沢性、密着性、防錆性に優れた塗膜を形成し得る、貯蔵安定性に優れたシリコーン含有高分子エマルションに関する。具体的には、塗料、建材の下地処理材または仕上げ材、接着剤、紙加工剤、または織布、不織布の仕上げ材として有用であり、特に、コンクリート、セメントモルタル、スレート板、ケイカル板、石膏ボード、押し出し成形板、発泡性コンクリートなどの無機建材、織布あるいは不織布を基材とした建材、金属建材などの各種下地に対する塗料または建築仕上げ材として、複層仕上げ塗材用の主材およびトップコート、薄付け仕上塗材、厚付け仕上塗材、石材調仕上げ材、グロスペイントなどの合成樹脂エマルションペイントとして、金属用塗料、木部塗料、瓦用塗料として有用なシリコーン含有高分子エマルションに関する。
【背景技術】
【0002】
VOC(揮発性有機化合物)規制など環境問題に対する意識の高まりから、水性エマルションを原料とする水性塗料が多く用いられている。水性塗料はVOC含有量が少ないか、あるいは全く含まないだけでなく、常温あるいは加熱下で乾燥形成した皮膜が比較的良好な耐久性を示すことから建材、各種仕上げ材や瓦用塗料として有用である。中でも水性エマルションにシリコーン含有高分子エマルションを用いることでさらなる耐久性を付与できることから、10〜15年にわたる家屋外観の維持や建材の保護が可能な水性塗料が上市されてきた。
【0003】
近年、20〜30年という長期にわたる家屋外観の維持や建材の保護のために、シリコーン含有高分子エマルションを原料とした水性塗料のさらなる高耐久化を図る試みがなされつつある。しかしながら、塗料が屋外で上記のような長期の曝露を受けると、ほこり、煤煙、砂などの付着による塗膜の汚染と、耐候性すなわち光、熱、雨などによる艶の低下、変色、膨れ、ヒビわれなどの変質の問題が発生する。そのため塗料が塗装された直後の美しい外観は、経時的な汚染による汚れや、雨や結露によって白化あるいは脆弱化など、耐水性の低下により塗装直後の美観を維持できないという大きな課題を有していた。
【0004】
特許文献1では、シリコーンを複合化したエマルションが開示され、耐候性を改善する効果があるものの、その皮膜は柔軟性に劣り、フェニルトリメトキシシランを使用した例示においても長期の耐候性では汚れ、ヒビわれなど変質の問題があった。
特許文献2では、シリコーンを複合化したエマルションにおいて、シリコーン部分に本発明の式(2)で表されるシラン、および本発明の環状シランまたは式(3)で表されるシランとを併用することが開示され、事実、耐候性は改善されかつその皮膜の柔軟性が改善された。しかし長期の耐候性では汚れやヒビわれなど変質の問題があった。
【0005】
特許文献3では、シリコーンを複合化したエマルションにおいて、シリコーン部分に環状シラン、本発明の式(2)で表されるシラン、および本発明のシラン(1)であるジフェニルジメトキシシランを併用する方法が開示されている。本文献では、シリコーンの分散液の製造後にエチレン性不飽和単量体を乳化重合しているため、シリコーンとエチレン性不飽和単量体からなるポリマーの相溶状態が充分でなく、その皮膜の長期の耐候性、特に汚れは充分なものではなかった。また基材に対する密着性も十分ではなかった。
【0006】
特許文献4では、シリコーンを複合化したエマルションにおいて、シリコーン部分に本発明の式(2)で表されるシラン、および本発明シラン(1)であるジフェニルジメトキシシランを併用する方法が開示されているが、皮膜の強靱さに劣り、長期の耐候性では汚
れ、ヒビわれなど変質の問題があった。
特許文献5では、ガラス転移点が高いポリマーを用いつつ、ポリマー全体のガラス転移点を60℃以下低くすることで皮膜全体の物性バランスを保ちつつ汚れを改善する方法が開示されている。確かに長期の耐候性においても汚れは改善するものの皮膜の強靱さに劣り、長期の耐候性ではヒビわれなど変質の問題があった。また基材に対する密着性も十分ではなかった。
【0007】
【特許文献1】特許第3108152号公報
【特許文献2】特許第3159234号公報
【特許文献3】特開2000−319579号公報
【特許文献4】特開2004−149668号公報
【特許文献5】特開2005−350580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、長期の使用においても耐候性、耐クラック性、密着性、耐水性、耐汚染性に優れた塗膜を形成し得る高耐久性エマルションの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記のような 問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即ち、
1)シリコーン変性剤〔A〕の存在下で重合したアクリル系重合体(a)、及びガラス転移温度Tgbが50℃以上のアクリル系重合体(b)を含むことを特徴とするシリコーン含有高分子エマルション。
2)アクリル系重合体(a)、(b)が乳化重合により得られた重合体であることを特徴とする上記1)に記載のシリコーン含有高分子エマルション。
【0010】
3)アクリル系重合体(b)が、カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕0.1〜20質量%、水酸基を持つエチレン性不飽和単量体〔C〕0.1〜20質量%、他のエチレン性不飽和単量体〔D〕60〜99.8質量%、およびそれらの合計に対し連鎖移動剤0.05〜5質量%を含む不飽和単量体混合物を重合する事により得られる重合体であることを特徴とする上記1)又は2)に記載のシリコーン含有高分子エマルション。
4)全アクリル系重合体中のアクリル系重合体(b)の含有割合が3〜40質量%であることを特徴とする上記1)〜3)のいずれか1項に記載のシリコーン含有高分子エマルション。
5)全アクリル系重合体の平均TgtがTgbよりも20℃以上低いことを特徴とする上記1)〜4)のいずれか1項に記載のシリコーン含有高分子エマルション。
【0011】
6)シリコーン変性剤〔A〕が、
下記式(1):
【化1】

【0012】
((n.m)は(1.0)又は(1.1)の組であり、式中n=1およびm=0のとき、
はフェニル基またはシクロヘキシル基であり、各Rはそれぞれ、独立して、炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基であるか、または式中n=1およびm=1のときRはフェニル基またはシクロヘキシル基であり、Rは水素原子、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基、または炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基であり、各Rはそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(1)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
【0013】
下記式(2):
CH−Si−(R (2)
(式中Rはそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(2)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
下記式(3):
(CH−Si−(R (3)
(式中Rはそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(3)からなる群より選ばれる少なくとも一種及び/又は環状シランを含むことを特徴とする上記1)〜5)のいずれか1項に記載のシリコーン含有高分子エマルション。
【0014】
7)シリコーン変性剤〔A〕が、下記の式
1/5≦{単量体〔B〕+単量体〔C〕+単量体〔D〕}/変性剤〔A〕≦99.5/0.5
で表される関係を満足する量を用いて得られることを特徴とする上記1)〜6)のいずれか1項に記載のシリコーン含有高分子エマルション。
【0015】
8)上記シリコーン変性剤〔A〕が、上記式(2)で表されるシリコーン構造を有するシラン(2)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、上記環状シラン及び上記式(3)で表されるシリコーン構造を有するシラン(3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の合計に対して、上記式(2)で表されるシリコーン構造を有するシラン(2)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、上記環状シラン及び上記式(3)で表されるシリコーン構造を有するシラン(3)からなる群から選ばれる少なくとも1種のモル比がそれぞれ1/100以上であり、又、上記式(1)で表されるシリコーン構造を有するシラン(1)からなる群より選ばれる少なくとも一種を下記の式
1/100≦シラン(1)/{シラン(2)+シラン(3)}≦10/1
で表される関係を満足するモル比で用いられることを特徴とする上記1)〜7)のいずれか1項に記載のシリコーン含有高分子エマルション。
【0016】
9)その他の不飽和単量体〔D〕中に5質量%以上のアクリル酸、メタクリル酸の炭素数が5〜12のシクロアルキルエステルを含有することを特徴とする上記1)〜8)のいずれか1項に記載のシリコーン含有高分子エマルション。
10)その他の不飽和単量体〔D〕中に0.5〜10質量%アルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体を含有することを特徴とする上記1)〜9)のいずれか1項に記載のシリコーン含有高分子エマルション。
11)pH4.0以下で乳化重合されることを特徴とする上記1)〜10)のいずれか1項に記載のシリコーン含有高分子エマルション。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエマルションは、シリコーン変性剤〔A〕の存在下で、特定の組成を有し、特
定のTg以上を有するアクリル系重合体を特定量含み、組成物中の全共重合体の平均Tgは特定温度以下であるアクリル系重合体を重合することにより、長期の使用においても耐候性、耐クラック性、密着性、耐水性、耐汚染性に優れた塗膜を形成し得る高耐久性エマルションを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について以下に具体的に説明する。
本発明のシリコンーン含有高分子エマルションは、シリコーン変性剤〔A〕の存在下で重合したアクリル系重合体(a)とガラス転移温度Tgbが50℃以上のアクリル系重合体(b)を含む。
【0019】
本発明のアクリル系重合体(a)において、シリコーン変性剤〔A〕は高耐候性能及び高耐久性能を付与するために使用する。シリコーン変性剤〔A〕は、下記式(1):
【化2】

【0020】
((n.m)は(1.0)又は(1.1)の組であり、式中n=1およびm=0のとき、Rはフェニル基またはシクロヘキシル基であり、各Rはそれぞれ、独立して、炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基であるか、または式中n=1およびm=1のときRはフェニル基またはシクロヘキシル基であり、Rは水素原子、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基、または炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基であり、各Rはそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(1)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む。
【0021】
上記シラン(1)の好ましい具体例としては、フェニルトリメトシキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトシキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシランなどがあり、またこれらの二種以上を含んでいてもよい。
【0022】
またシリコーン変性剤〔A〕は、上記式(1)のシリコーン構造を有するシラン(1)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、下記式(2):
CH−Si−(R (2)
(式中Rはそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(2)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが、シリコーン構造の架橋密度を付与するために好ましい。
【0023】
上記シラン(2)の好ましい具体例としては、メチルトリメトシキシシラン、メチルトリエトキシシランなどがあり、またこれらの二種以上を含んでいてもよい。
またシリコーン変性剤〔A〕は、上記式(1)のシリコーン構造を有するシラン(1)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
下記式(3):
(CH−Si−(R (3)
(式中Rはそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(3)からなる群より選ばれる少なくとも一種〕及び/又は環状シランを含むことが好ましい。
【0024】
これは、上記シラン(3)及び/又は環状シランを用いることにより、該シリコーン変性剤〔A〕が形成するシリコーン重合体の架橋密度を低くし、重合体の構造が複雑になるのを防ぐことができ、これによって、高耐久性エマルションから提供される塗膜に可撓性を付与することができるためである。
上記シラン(3)の好ましい具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等が挙げられる。また環状シランとしては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンなども用いることができ、これらの二種以上を含んでいてもよい。
【0025】
シリコーン変性剤〔A〕は、上記したシラン(1)から選ばれる少なくとも1種の化合物に加え、上記シラン(2)及び/又は上記シラン(3)から選ばれる化合物に加え、更にイソブチルトリメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、などを含むことができる。
本発明は、シリコーン変性剤〔A〕を用いることによって、高耐久性エマルションより得られるフィルムの屋外などの長期曝露における光沢保持性を改善し、始めて高度な耐候性を示すフィルムを得ることができる。
【0026】
上記したシラン縮合物の存在は、29SiNMR(29Si核磁気共鳴スペクトル)またはHNMR(プロトン核磁気共鳴スペクトル)によって知ることができる。例えば、シラン(2)の縮合物は、29SiNMRのケミカルシフトが−40〜−80PPMにピークを示すことで同定することができる。また、シラン(3)あるいは環状シランの縮合物は29SiNMRのケミカルシフトが−16〜−26PPMにピークを示すことで同定することができる。
本発明のシリコーン変性剤〔A〕の存在下で重合したアクリル系重合体(a)はカルボキシを持つエチレン性不飽和単量体〔B〕、他のエチレン性不飽和単量体〔D〕を含む不飽和単量体混合物を重合して得られる。
【0027】
カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそのモノエステル、フマル酸およびそのモノエステル、並びにマレイン酸およびそのモノエステル等が挙げられる。これらのカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体の群から選ばれる少なくとも1種を含むことが特に好ましい。これらカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体は、シリコーン変性剤〔A〕の加水分解反応および縮合反応を促進させる触媒としても作用する。好ましくは、塗膜の耐水性の向上からアクリル酸、メタクリル酸である。
【0028】
他のエチレン性不飽和単量体〔D〕は特に限定はされない。例えば、(メタ)アクリル酸エステル、スチレンなどが挙げられる。(本願において、アクリル酸およびメタアクリル酸を合わせて(メタ)アクリル酸と標記する)。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルなどが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸グリシジル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなども挙げられる。
【0029】
本発明においてシクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート系単量体を含むことが、特に耐久性に優れるため好ましい。シクロアルキル基の水素原子の一部が炭素数1〜6のアルキル基、水酸基又はエポキシ基に置換されていても良い。他の不飽和単量体〔D〕中の5質量%以上、より好ましくは5質量%以上99質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上80質量%以下が、シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート系単量体、或いはそれらの混合物であることが好ましい。シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート系単量体が5質量%以上で耐久性に優れ、80質量%以下で成膜性が良い。シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート系単量体としては、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、炭素数5〜12のシクロアルキル基のエステルが好ましく、該シクロアルキルエステルは、シクロアルキル基の水素原子の一部が炭素数1〜6のアルキル基、水酸基又はエポキシ基に置換されていても良い。シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート系単量体の例として下記式(4)で表される化合物が
挙げられる。
【0030】
【化3】

(式中、R は水素原子またはメチル基であり、Rはシクロペンチル基、シクロヘキシル基又はシクロドデシル基であり、これらシクロアルキル基は、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基またはエポキシ基を置換基として有してもよい。)
その具体例としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3シクロヘキセンオキサイドなどを挙げることができる。好ましくは耐候性から(メタ)アクリル酸シクロヘキシルである。
【0031】
本発明において必要に応じて上記以外の他のエチレン性不飽和単量体〔D〕を用いても良い。例えばアクリルアミド単量体、メタクリルアミド単量体、ビニル系単量体、シアン化ビニル単量体などが挙げられる。アクリルアミド単量体またはメタクリルアミド単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどがあり、ビニル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ビニルピロリドン、メチルビニルケトンなどがあり、 又、シアン化ビニル単量体の例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどがあり、さらにビニルトルエン、α−メチルスチレンなどの芳香族単量体、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル、ブタジエン、エチレンなども挙げられる。
【0032】
本発明にいてその他のエチレン性不飽和単量体〔D〕には、分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基と1個の重合可能な不飽和二重結合とを含有するカルボニル基含有単量体(a)を適宜組み合わせることで、耐候性を向上させることができる。具体的な例としては、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなど)、アクリル(またはメタクリル)オキシアルキルプロペナール、ジアセトンアクリレート、アセトニルアクリレート、ジアセトンメタクリレート
、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアクリレートなどが挙げられる。特に好ましい単量体はジアセトンアクリルアミド、アクロレインおよびビニルメチルケトンであり、これらの単量体は2種類以上を併用しても良い。
【0033】
また水酸基を持つエチレン性不飽和単量体〔C〕も必要に応じて使用することができる。また水酸基を持つエチレン性不飽和単量体〔C〕としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例として、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどが挙げられ、(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレートの具体例として、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコールなどが挙げられ、(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレートの具体例として、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコールなどが挙げられる。好ましくは塗膜の耐水性から(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルである。
【0034】
前記カルボニル基含有単量体(a)を組み合わせた場合、塗膜性能、耐候性をさらに向上させるために、分子中に少なくとも2個のヒドラジノ基を有するヒドラジン誘導体を添加することができる。該ヒドラジン誘導体としては、例えば蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等の2〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸ジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸ジヒドラジド;フタル酸、テレフタル酸またはイソフタル酸ジヒドラジド、ならびにピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジドまたはテトラヒドラジド;ニトリロトリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジンまたはヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラード)と反応させてなるポリヒドラジド(特公昭52− 22878号公報参照);炭酸ジヒドラジド、ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート及びそれより誘導されるポリイソシアネート化合物にヒドラジン化合物や上記例示のジヒドラジドを過剰に反応させて得られる多官能セミカルバジド、該ポリイソシアネ−
ト化合物とポリエ− テルポリオ− ル類やポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の親水性基を含む活性水素化合物との反応物中のイソシアネート基に上記例示のジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド、あるいは該多官能セミカルバジドと水系多官能セミカルバジドとの混合物(特開平8−151358号公報、特開平8−245878号公報、日本国特許第3212857号公報参照)等が挙げられる。前記カルボニル基含有単量体(a)は他の不飽和単量体〔D〕中0.5〜10質量%含有することが好ましく、1〜7質量%がさらに好ましい。0.5質量%以上で耐候性が高度に発現し、10質量%以下で耐水性が良好である。
【0035】
本発明においてアクリル系重合体(b)は、その重合体のガラス転移温度Tgbが50℃以上(120℃以下)であり、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがさらに好ましい。アクリル系重合体(b)のTgbが50℃以上で高度な耐汚染性が発現する。
ここでアクリル系重合体のTgはポリマーを構成する単量体混合物から、下記Foxの式で計算したものである。
Foxの式:1/Tg=a1/Tg1+a2/Tg2+・・・+an/Tgn(a1、
a2、・・・anは各々の単量体の質量分率であり、Tg1、Tg2、・・・Tgnは各単量体ホモポリマーのTgである。計算に使用する各単量体のホモポリマーのTgは、例えばポリマーハンドブック(JhonWilley&Sons)、塗料用合成樹脂入門などに記載されている。
【0036】
本発明のアクリル系重合体(b)は、カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕0.1〜20質量%、水酸基を持つエチレン性不飽和単量体〔C〕0.1〜20質量%、他のエチレン性不飽和単量体〔D〕60〜99.8質量%、およびそれらの合計に対し連鎖移動剤0.05〜5質量%を含む不飽和単量体混合物を重合する事により得られる。カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕は0.1〜20質量%が好ましく、1〜15質量%の含有量がさらに好ましい。0.1質量%以上で耐汚染性が発現し、20質量%以下で耐水性が良好である。水酸基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕は0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%の含有量がさらに好ましい。0.1質量%以上で耐汚染性が発現し、20質量%以下で耐水性が良好である。連鎖移動剤は0.05〜5質量%が好ましく0.05質量%以上で耐汚染性が発現し、5質量%以下で貯蔵安定性、得られる皮膜の耐水性が良好である。
【0037】
連鎖移動剤としては、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、テトラメチルチウラジウムスルフィドなどのジスルフィド類、四塩化炭素などのハロゲン化誘導体、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられ、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくはn−ドデシルメルカプタンである。
【0038】
本発明におけるアクリル系重合体(a)はシリコーン変性剤〔A〕存在下で重合する。重合に使用される不飽和単量体は上記の不飽和単量体〔B〕、〔D〕、必要に応じて〔C〕を用いることができる。シリコーン変性剤〔A〕存在下で重合したアクリル系重合体(a)とアクリル系重合体(b)とを合わせた全アクリル系重合体のガラス転移温度TgtはTgbよりも20℃以上低いことが必要である。Tgtは30℃以上低いことが好ましく、40℃以上低いことがさらに好ましい。全アクリル系重合体のTgtがTgbよりも20℃以上低い時に可撓性と耐汚染性の好ましいバランスが発現する。ここでいう全アクリル系重合体のTgtとは、エマルションに含まれるアクリル系重合体の全不飽和単量体から計算することができる。
【0039】
本発明のシリコーン含有高分子エマルションを構成するシリコーン変性剤〔A〕存在下で重合したアクリル系重合体(a)とアクリル系重合体(b)の質量比率(a)/(b)は97/3〜60/40が好ましく、95/5〜60/40がより好ましく、95/5〜65/35がさらに好ましい。アクリル系重合体(b)が3質量比以上で耐汚染性が発現し、40質量比以下で組成物の貯蔵安定性が良好である。
【0040】
本発明のエマルションはシリコーン変性剤〔A〕の存在下で重合したアクリル系重合体(a)とガラス転移温度Tgbが50℃以上のアクリル系重合体(b)を別に重合し混合してもよく、また同一の反応系で逐次重合してもよい。好ましくは、同一の反応系で逐次重合するものである。同一の反応系で逐次重合する場合、シリコーン変性剤〔A〕の存在下で重合したアクリル系重合体(a)、アクリル系重合体(b)の順番に特に限定はない。シリコーン変性剤〔A〕の存在下で重合したアクリル系重合体(a)を重合した後、ガラス転移温度Tgbが50℃以上のアクリル系重合体(b)を重合してもよく、またその逆でも良い。さらに、シリコーン変性剤〔A〕の存在下で重合したアクリル系重合体(a)を分割してもよく、シリコーン変性剤〔A〕の存在下で重合したアクリル系重合体(a)を重合した後、ガラス転移温度Tgbが50℃以上のアクリル系重合体(b)ガラス転移温度Tgbが50℃以上のアクリル系重合体(b)を重合し、さらにシリコーン変性剤
〔A〕の存在下で重合したアクリル系重合体(a)を重合してもよい。
【0041】
本発明のエマルションを重合するときの重合方法としては、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、ミニエマルション重合が挙げられる。平均粒子径が10nm〜1μm程度の分散安定性の良好なエマルションを安定的に製造する方法としては、乳化重合が好ましい。
本発明の乳化重合法は特に限定されないが、例えばアクリル系重合体(b)は、カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕、水酸基を持つ性不飽和単量体〔C〕、他の不飽和単量体〔D〕及び乳化剤〔E〕を含むプレ乳化液とを、水性媒体中において重合することにより得ることができる。またアクリル系重合体(a)はカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕、他の不飽和単量体〔D〕、必要に応じて水酸基を持つ不飽和単量体〔C〕及び乳化剤〔E〕を含むプレ乳化液と、シリコーン変性剤〔A〕とを混合した後、水性媒体中において不飽和単量体の重合とシリコーン変性剤〔A〕化合物の加水分解・縮合反応を同時にすることにより得ることができる。
【0042】
ここにいう水性媒体としては、反応系へ導入されるものであって、主に水が用いられるが、炭素数1〜3の低級アルコールまたはアセトンなどの水に可溶な溶媒を水に添加したものも含む。この際添加する水以外の溶媒の量はエマルション中に20質量%以下であることが好ましい。ここでは乳化液へ使用する水性媒体は、水に可溶な溶媒量は好ましくは水性媒体の5質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは水だけである。この量を超えると、プレ乳化液の乳化状態が破壊され、重合安定が不良となってしまう。
【0043】
本発明の乳化重合において、重合中のpHはpH4.0以下で重合することが好ましい。pH4.0以下でシリコーン変性剤〔A〕の縮合反応が速やかに起こり、乳化重合後に縮合反応が進むことを抑制できるため、製品としての貯蔵安定性が良く、反応系のpHが4.0以下であることが好ましく、より好ましくはpH1.5以上3.0以下で実施される。重合系のpHのコントロールは特に限定されない。プレ乳化液をpH4.0以下にする場合、またプレ乳化液は中性とし別途重合系に投入するもの(例えば開始剤の過硫酸塩等)でpHを4.0以下にするなどが挙げられる。
【0044】
本発明における乳化重合は、ラジカル重合触媒として、熱または還元性物質などによってラジカル分解してエチレン性不飽和単量体の付加重合を起こさせることができ、水溶性または油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物などを有利に使用することができる。その例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2 −アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)など挙げることができるが、シリコーン変性剤〔A〕の加水分解反応および縮合反応を促進させるための触媒としても効果のある過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモ ニウムを用いることが好ましい。ラジカル重合触媒の量としては、カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕、水酸基を持つエチレン性不飽和単量体〔C〕及びエチレン性不飽和単量体〔D〕との合計質量に対して通常0.05質量%〜1質量%を用いることができる。
【0045】
通常、重合反応は常圧下、65〜90℃の重合温度で行うことが好ましいが、モノマーの重合温度における蒸気圧などの特性に合わせ、高圧下でも実施することができる。重合時間としては、導入時間と、導入後の熟成(cooking)時間がある。導入時間は、各種原料を反応系へ同時に導入する場合は通常数分であり、各種原料を反応系へ逐次導入する場合は重合による発熱が除熱可能な範囲で反応系へ逐次導入するため、最終的に得られるエマルション中の重合体濃度によっても異なるが、通常10分以上である。導入後の熟成(cooking)時間としては、少なくとも10分以上であることが好ましい。こ
の重合時間以下では、各原料がそのまま残留したり、シリコーン変性剤〔A〕が縮合せずに加水分解物のまま残留してしまう恐れがある。なお、重合速度の促進、および70℃以下での低温での重合が望まれるときには、例えば重亜硫酸 ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリットなどの還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。
【0046】
本発明において、乳化重合に用いる乳化剤〔E〕には、スルホン酸基又はスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体、硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体のうち、少なくともいずれか一を含むことが、高度な耐水性を達成するために好ましい。ここにいうスルホン酸基又はスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体としては、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつフリーのスルホン酸基、又はそのアンモニウム塩かアルカリ金属塩である基(アンモニウムスルホネート基、又はアルカリ金属スルホネート基)を有する化合物であることが好ましい。たとえば、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素2〜4のポリアルキルエーテル基、炭素数6または10のアリール基およびコハク酸基からなる群より選ばれる置換基を 有する化合物であるか、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基に結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物が好ましい。
【0047】
本発明におけるスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基により一部が置換されたコハク酸化合物の具体例として、アリルスルホコハク酸塩、たとえば、下記式(5)、(6)、(7)、(8)で表される化合物が挙げられる。
【化4】

【0048】
【化5】

【0049】
【化6】

【0050】
【化7】

【0051】
(式中、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜19のアラルキル基等の炭化水素基、又はその一部が水酸基、カルボン酸基等で置換されたもの、もしくはポリオキシエチレンアルキルエーテル基(アルキル部分の炭素数が0〜20、およびアルキレン部分の炭素が2〜4)、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル基(アルキル部分の炭素数が0〜20、およびアルキレン部分の炭素数が2〜4)等のアルキレンオキサイド 化合物を含む有機基であり、Aは炭素数2〜4個のアルキレン基または一部が置換されたアルキレン基であり、 nは0〜200の整数であり、Mはアンモニウム、ナトリウムまたはカリウムである。)
上記式(5)及び(6)を含むものとして、例えば、エレミノールJS−2、JS−5(製品名、三洋化成(株)製)があり、上記式(7)及び(8)を含むものとして、例えば、ラテムルS−120、S−180A、S−180(製品名、花王(株)製)がある。
【0052】
また、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基を有する化合物の例として、下記式(9)〜(11)で表される化合物が挙げられる。
【化8】

(式中、R は炭素数6〜18のアルキル 基、アルケニル基またはアラルキル基であり、Rは炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基またはアラルキル基、Rは水素またはプロペニル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜200の整数、Mはアンモニウム、ナトリウム、カリウムもしくはアルカノールアミン残基である。)
【0053】
【化9】

(式中、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数8〜24のアルキル基またはアルキルフェニル基、アシル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは0〜50の整数、mは0〜20の整数、Mはアンモニウム、ナトリウム、カリウムもしくはアルカノールアミン残基である。)
【0054】
【化10】

(式中、Rは炭素数8〜30のアルキル基、Rは水素またはメチル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、もしくは置換アルキレン基、nは0または、1〜200の整数であり、Mはアンモニウム、ナトリウム、カリウムもしくはアルカノールアミン残基である。)
【0055】
上記式(9)で表されるアルキルフェノールエーテル系化合物として、例えばアクアロンHS−10(製品名、 第一工業製薬(株)製)等があり、上記式(10)で表される化合物として、例えばアデカリアソープSE−1025A、SR−10N、SR−20N(製品名、旭電化工業(株)製)、上記式(11)で表される化合物として、例えばアクアロンKH−10,KH−05がある。
【0056】
その他、スルホネート基により一部が置換 されたアリール基を有する化合物の具体例として、p− スチレンスルホン酸アンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。スルホネート基により一部 が置換されたアルキル基を有する化合物の具体例として、メチルプロパンスルホン酸アクリルアミドのアンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩、アクリル酸 スルホアルキルエステルのアンモニウム塩、ナトリウム 塩およびカリウム塩、メタアクリル酸スルホアルキルエステルのアンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。また上記以外のスルホネート基を有する化合物の具体例として、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物が挙げられる。硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体とは、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつ硫酸エステル基又はそのアンモニウム塩かアルカリ金属塩である基を有する化合物をいう。これらのうち、硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基および炭素数6または10のアリール基からなる群より選ばれる基を有する化合物が好ましい。硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩により一部が置換された、炭素数2〜4のアルキルエーテル基または炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基を有する化合物の例としては、例えば上記式(9)と(10)で表される、スルホネート基により一部が置換されたアルキルエーテル基を有する化合物がある。
【0057】
これらの乳化剤〔E〕として用いられるエチレン性不飽和単量体は、エマルション中に、エマルション粒子にラジカル重合した共重合物として存在するか、未反応物としてエマルション粒子へ吸着、あるいは エマルション水相中に存在するか、または、水溶性単量体との共重合物あるいは乳化剤として用いられるエチレン性不飽和単量体どうしの共重合物としてエマルション粒子へ吸着、あるいはエマルション水相中に存在している。とくにエマルション粒子にラジカル重合した共重合物の状態で存在する比率を高めることによって、エマルションより得られるフィルムの耐水性を高度なものとすることができる。
乳化剤として用いられるエチレン性不飽和単量体は、エマルションより得られるフィルムの熱分解ガスクロマトグラム質量分析(Py−GC−MS)により、各物質を同定することができる。他の方法として、エマルションの水相成分を分離した後、高速原子衝撃質量分析(FABマススペクトル)によって同定することも可能である。
本発明において、乳化剤〔E〕は、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕及びエチレン性不飽和単量体〔D〕との合計質量に対して0.05質量%〜10質量%用いられ、好ましくは0.1質量%〜5質量%用いる。
【0058】
本発明では、スルホン酸基またはスルホネート基、あるいは硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体を含む乳化剤〔E〕以外に、通常の界面活性剤を併用することもできる。例えば、脂肪酸石鹸、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩などのアニオン型界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどの非反応性ノニオン型界面活性剤、アデカリアソープNE−20、NE−30、NE− 40(製品名、旭電化工業(株)製)などのα−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン、またはアクアロンR
N−10、RN−20、RN−30、RN−50(製品名、第一工業製薬(株)製)などのポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルなどの反応性ノニオン型界面活性剤といわれる、エチレン性不飽和単量体と共重合可能なノニオン型界面活性剤 などを併用することができる。
上記の界面活性剤の使用量は、全不飽和単量体の質量に対して、アニオン型界面活性剤については好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.25質量%以下であり、非反応性ノニオン型界面活性剤および反応性ノニオン型界面活性剤については、2.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下である。この範囲で使用すると、耐水性良好なフィルムが形成される。
【0059】
本発明において、紫外線吸収剤および/または光安定剤をエマルション中に含有させることは、高耐候性を付与する上で好ましく、エマルションに含有させる方法としては、紫外線吸収剤及び/または光安定剤を乳化重合時に存在させることが好ましい。紫外線吸収剤および/または光安定剤を成膜助剤などと混合して後添加した場合、分散性に劣り、得られた塗膜の粒子界面に集中して存在するため、降雨などにより溶出し、長期の耐久性の向上が認められない。紫外線吸収剤および/または光安定剤は、全不飽和単量体の質量に対して0.1質量%〜5質量%用いることが好ましい。又、紫外線吸収剤として、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性のもの、光安定剤として、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性のものを用いることもできる。また、紫外線吸収剤と光安定剤を併用すると、その高耐久性エマルションを用いて皮膜を形成した際に、皮膜が特に耐候性に優れるため好ましい。
【0060】
本発明における紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系から選ばれる少なくとも1種、光安定剤として、ヒンダードアミン系から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。耐久性の優れたシリコーン変性高耐久性エマルションと紫外線吸収能が高い、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤と組み合わせることで、相乗効果により卓越した耐久性を示す。ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤としては、具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベン ゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’ジメトキシベンゾフェノン、2,2’, 4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ステアリルオキシベンゾフェノンなどがある。ラジカル重合性ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤として具体的には、2−ヒドロキシ−4−アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−アクリロ キシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−メタクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシ−エトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4 −(メタクリロキシ−エトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシ−ジエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシ−ト リエトキシ)ベンゾフェノンなどがある。本発明において使用できるベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤として具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニル
〕ベンゾトリアゾール)、メチル−3−〔3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコール(分子量300)との縮合物(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN1130)、イソオクチル−3−〔3−(2H−ベンゾトリ アゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネート(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN384)、2−(3−ドデシル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベ ンゾトリアゾール(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN571)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’− テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4 −(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN 900)などがある。ラジカル重合性ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤として具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学(株)製、製品名:RUVA−93)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロ キシエチル−3−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリリルオキシプロピル−3−tert−ブチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、3−メタクリロイル−2−ヒドロキシプロピル−3−〔3’−(2’’−ベンゾトリアゾリル)−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチル〕フェニルプロピオネート(日本チバガイギー(株)製、製品名:CGL−104)などがある。
【0061】
本発明において使用できるトリアジン系紫外線吸収剤として具体的には、TINUVIN400(製品名、日本チバガイギー(株)製)などがある。本発明において使用できるヒンダードアミン系光安定剤としては、塩基性が低いものが好ましく、具体的には塩基定数(pKb)が8以上のものが好ましい。具体的には、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ −tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、1−〔2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−セバケートの混合物(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN292)、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、TINUVIN123(製品名、日本チバガイギー(株)製)などがある。ラジカル重合性ヒンダードアミン系光安定剤として具体的には、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルアクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−イミノピペリジルメタクリレート、2,2,6,6,−テトラメチル−4−イミノピペリジルメタクリレート、4−シアノ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−シアノ−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレートなどがある。
【0062】
本発明におけるシリコーン含有高分子エマルションでは、乳化重合終了後、成膜時の硬
化触媒として、例えばジブチルすずジラウレート、ジオクチルすずジラウレート、ジブチルすずジアセテート、オクチル酸すず、ラウリン酸すず、オクチル酸鉄、オクチル酸鉛、テトラブチルチタネートなどの有機酸の金属塩、n−ヘキシルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンなどのアミン化合物を添加することができる。
なおこれらの硬化用触媒が水溶性でない場合には、その使用に際して、界面活性剤と水を用いてエマルション化しておくことが好ましい。
【0063】
本発明のシリコーン含有高分子エマルションは、エマルションの長期の分散安定性を保つため、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジメチルアミノエタノールなどのアミン類を用いてpH5〜10の範囲に調整することが好ましい。
本発明のシリコーン含有高分子エマルションは、乳化重合終了後、未反応単量体の揮発性物質、水、アルコール等を蒸発除去するためにpHを9〜12にし、濃縮工程終了後にpHが7以上に調整することが好ましい。
本発明のシリコーン含有高分子エマルションは、分散質の平均粒子径として、10〜1000nmであることが好ましく、60〜200nmであることがさらに好ましい。また得られたエマルション中の分散質(固形分)と分散媒としての水性媒体との質量比は70/30以下、好ましくは30/70以上65/35以下である。
【0064】
本発明のシリコーン含有高分子エマルションを提供するための好ましい重合は、カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕が(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含みかつ互いに同じか異なった〔B1〕、〔B2〕および〔B3〕よりなり、水酸基を持つエチレン性不飽和単量体〔C〕よりなり、また他のエチレン性不飽和単量体〔D〕が互いに同じか異なった〔D1〕、〔D2〕および〔D3〕よりなり、乳化剤〔E〕が、スルホン酸基またはスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体、硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体およびそれらの混合物よりなる群から選ばれかつ互いに同じか異なった乳化剤〔E1〕、〔E2〕および〔E3〕よりなり、上記乳化重合をステップ〔1〕、ステップ〔2〕、ステップ〔3〕の順で行い、ステップ〔1〕においてはカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B1〕、他のエチレン性不飽和単量体〔D1〕と乳化剤〔E1〕と、必要に応じて水性媒体とを含むプレ乳化液を、水性媒体中において乳化重合に付すことにより、ステップ〔1〕エマルションを得、ステップ〔2〕においては、カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B2〕と水酸基を持つエチレン性不飽和単量体〔C〕と他のエチレン性不飽和単量体〔D2〕と、乳化剤〔E2〕とおよび必要に応じて水性媒体とを含むプレ乳化液を水性媒体中においてステップ〔1〕エマルションに添加することによって、乳化重合を行いステップ〔2〕エマルションを得、ステップ〔3〕においては、カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B3〕と他のエチレン性不飽和単量体〔D3〕および乳化剤〔E3〕を、必要に応じて水性媒体とを含む乳化液を、ステップ〔2〕エマルションに添加することによって、乳化重合を行い最終的な所望エマルションを得ることができる。また紫外線吸収剤および/または光安定剤を乳化重合中に存在させてエマルションを得るもことができる。上記ステップ〔1〕、ステップ〔2〕およびステップ〔3〕における乳化液には、それぞれのステップの必要に応じてシリコーン変性剤〔A〕とを混合しながら、乳化重合中にシリコーン変性を行うことができる。シリコーン変性剤〔A〕は互いに同じか異なってもよく〔A1〕、〔A2〕〔A3〕を用いることができる。また、上記ステップ〔1〕において、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B1〕は、カルボキシル基を持つ不飽和単量体が5.0質量%未満であり、上記ステップ〔2〕において、カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B2〕は0.1質量%〜20質量%を含み、上記ステップ〔3〕において、カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B3〕は5.0質量%未満であることが好ましい。
さらに好ましくはシリコーン変性剤〔A〕はステップ〔1〕とステップ〔2〕に混合することである。
本発明におけるシリコーン変性剤〔A〕には、式(1)におけるR1がフェニル基又はシクロヘキシル基からなるシラン(1)を導入することにより、より均一化されたポリマーからなるエマルション粒子を得ることが可能となり、さらに均一化されたエマルション粒子から形成される塗膜組成も均一化される結果、強靭な塗膜を形成することができる。
【0065】
本発明の高耐久性エマルションは、塗料、建材の下地処理材または仕上げ材、接着剤、紙加工剤、または織布、不織布の仕上げ材として有用であり、とくに塗料用、建材の仕上げ材として具体的には、コンクリート、セメントモルタル、スレート板、ケイカル板、
石膏ボード、押し出し成形板、発砲性コンクリートなどの無機建材、織布あるいは不織布を基材とした建材、金属建材などの各種下地に対する塗料または建築仕上げ材として、複層仕上げ塗材用の主材およびトップコート、薄付け仕上塗材、厚付け仕上塗材、石材調仕上げ材、グロスペイントなどの合成樹脂エマルションペイント、金属用塗料、木部塗料、瓦用塗料として有用である。
本発明の高耐久性エマルションには、通常水系塗料などに添加配合される成分、例えば成膜助剤、 増粘剤、消泡剤、顔料、分散剤、染料、防腐剤などを任意に配合することができる。
【実施例】
【0066】
実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものでない。尚、実施例及び比較例中の部及び%はそれぞれ質量部、及び質量%を表す。重合安定性の評価及び得られたシリコーン含有高分子エマルションの物性試験については、該エマルションを用いて下記に示す評価及び試験方法に従って実施した。
<粒子径の測定>
得られたシリコーン含有高分子エマルションの平均粒子径を、リーズ&ノースラップ社製のマイクロトラック粒度分布計にて測定した。50%累積値を粒子径とした。
【0067】
<貯蔵安定性の評価>
乳化重合後に得られたシリコーン含有高分子エマルション組成物をガラス容器に密封し、50℃で4週間放置した後に外観を観察し、B型粘度計を用いてNo.4ローターで12rpmの測定条件で23℃における粘度を測定し、合わせて貯蔵安定性の指標とした。
(判定基準)○:分離や沈降物の発生が無く、20000mPa・s以下の
粘度を保持している
×:20000mPa・s以上の粘度となり流動性に乏しい。
【0068】
<引張り特性の評価>
乳化重合後に得られたシリコーン含有高分子エマルションを用いて下記に示す配合組成でクリア塗料を調整し、0.25ミルのアプリケーターで塗工後、幅1cmの塗膜サンプルを切り出し、50℃で1週間養生して作製した後、下記に示した条件にて引張り試験を行い、その破断点伸度及び応力を測定した。
クリア塗料配合物の調整
各実施例のエマルション(固形分換算) 460部
エチレングリコールモノブチルエーテル 45部
エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル 90部
引張り試験
試験機:テンシロン/UTM−III−500
(東洋ボールドウィン(株)製)
引張り速度:50mm/min
試験温度 :23℃
【0069】
<耐汚染性の評価>
引張り特性の評価に用いたシリコーン含有高分子エマルション組成物の配合物を、ワイヤーコーターNo.30を用いて、隠ぺい率試験紙(JIS K5400)の白色部分に塗布し、室温にて2時間乾燥させた。さらに50℃にて2日間乾燥させたものを試験体とした。煤煙汚染試験機(化学機器総覧94−95 1611ページ)中へ試験体を取り付け、この試験体を10rpmで回転させながら、雰囲気温度70℃とし、煤煙試験機中にて灯油(JIS K2203)を燃焼させ1時間塗膜を汚染させ、室温まで冷却後1時間放置し、スプレーシャワーにより水洗・乾燥後、試験体の色差系Y値(白色度)を測定し、これを汚染試験前のY値とを用いて汚染回復率を算出し、耐汚染性の指標とした。
汚染回復率(%)=試験後のY値/試験前のY値
(判断基準) ◎:汚染回復率 95%以上
○:汚染回復率 90%以上
△:汚染回復率 80%以上
×:汚染回復率 80%未満
【0070】
<密着性>
けい酸カルシウム板(ケイカル板)上に引張り特性の評価に用いたシリコーン含有高分子エマルション組成物の配合物を、ワイヤーコーターNo.30を用いて塗布し、室温にて2時間乾燥させた。さらに50℃にて2日間乾燥させたものを試験体とした。室温に2時間放置の後、JIS K5400 8.5.2.の方法(所謂、ごばん目はく離試験)にて基材との密着性を評価した。
【0071】
<耐水性の評価>
引張り特性の評価に用いたシリコーン含有高分子エマルション組成物の配合物を、10milに調整したアプリケーターを用いてガラス板へ塗布し、室温にて24時間乾燥して、さらに50℃で7 日乾燥して得た塗膜を、20℃の水に7日間浸漬してその白化を目視で判定した。
(判断基準) ○:外観に変化無し
△:わずかに白化がみられる。
×:全体的に白色となる。
【0072】
<耐候性の評価>
乳化重合後に得られたシリコーン含有高分子エマルションを用いて下記に示す配合組成でエナメル塗料を調整し、バーコーターにてアルミ板上に塗工し、50℃で1週間養生して塗膜を作製し、この塗膜についてアイスーパーUVテスター(岩崎電気(株)製)により下記に示す試験条件にて1500時間照射試験を実施し、塗膜の外観(クラック、はがれなど)を目視にて観察した。また同時に光沢保持率の評価も行った。
(判断基準) ○:外観に変化無し
×:クラック、はがれあり
エナメル塗料配合物の調整
各実施例のエマルション(固形分40%換算) 250部
エチレングリコールモノブチルエーテル 20部
エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル 40部
酸化チタン 130部
増粘剤 0.1部
アイスーパーUVテスター試験条件
照度:1000W/m
照射:63℃、50%RH、8時間
暗黒・湿潤:30℃、96%RH以上、4時間
【0073】
[実施例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽 および温度計を取りつけた反応容器に、水1076部、反応性乳化剤SR(製品名:アデカリアソープSR−1025、旭電化(株)製)28部を入れ、温度を80℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの10%水溶液を3部添加した5分後に、ステップ(1)として、メタクリル酸メチル187部、メタクリル酸シクロヘキシル105部及びアクリル酸ブチル202部、メタクリル酸6部と反応性乳化剤SR100部、過硫酸アンモニウムの10%水溶液5部、水421部の混合液を作製し、該混合液をホモミキサーにより乳化し、プレ乳化液を得た。得られたプレ乳化液をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5.8部、メチルトリメトキシシラン366部、ジメチルジメトキシシラン234部、フェニルトリメトキシシラン55部からなるシリコーン変性剤〔A〕の混合液とY字管〔Y字管の出口には100メッシュの金網を詰め2つ滴下槽の液が混じり合うところまで、モレキュラシーブス3A(製品名:和光純薬(株)製)を充填し、プレ乳化液とシリコーン変性剤〔A〕との緩やかな混合ができるように調整した。〕を介して反応容器中へ滴下槽より2時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入が終了してから反応容器中の温度を80℃にして1時間保った。
【0074】
次にステップ(2)として、水293部、メタクリル酸メチル131部、メタクリル酸15部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル4部、n−ドデシルメルカプタン1.5部、反応性乳化剤SR4部、アルキルスルホコハク酸塩系界面活性剤(製品名:エアロゾールOT−75、日本サイテックインダストリーズ(株)製)を3部、過硫酸アンモニウムの10%水溶液4部の混合液をホモミキサーにより乳化し、得られたプレ乳化液を反応容器中へ滴下槽より1時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入が終了してから反応容器中の温度を80℃にして1時間保った。
【0075】
次にステップ(3)として、メタクリル酸メチル152部、メタクリル酸シクロヘキシル45部及びアクリル酸ブチル146部、メタクリル酸7部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(製品名TINUVIN384、日本チバガイギー(株)製)5部、ヒンダードアミン系光安定剤(製品名TINUVIN123、日本チバガイギー(株)製)2.5部を均一になるまで攪拌した後、反応性乳化剤SR40部、過硫酸アンモニウムの10%水溶液3.5部、水317部の混合液混合液を作製し、該混合液をホモミキサーにより乳化し、得られたプレ乳化液をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.3部、メチルトリメトキシシラン244部、ジメチルジメトキシシラン156部、フェニルトリメトキシシラン37部からなるシリコーン変性剤〔A〕の混合液とY字管内の金属メッシュで混合しながら反応容器中へ滴下槽より1.5時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入が終了してから反応容器中の温度を80℃にして5時間保った。
【0076】
室温まで冷却した後、水素イオン濃度を測定したところpH2.7であった。上記の混合液に25%アンモニア水溶液を添加してpH10に調整してから100メッシュの金網でろ過した。得られたエマルションの固形分は32.0%であった。
続いて、内容量2リットルのSUS製セパラブルフラスコに、上述の乳化重合で得られたシリコーン含有高分子エマルション1kgをこのフラスコに仕込んだ。フラスコをウォーターバスに浸してラテックスを80℃まで加熱した。適量の消泡剤を添加した後、フラスコ内を40kPaまで減圧にして、固形分が45質量%に上がるまで濃縮を行った。
室温まで冷却後、適量の水と25%アンモニア水溶液を滴下して固型分42.0%、pH9.0に調整した。その後、100メッシュの金網で濾過した。
【0077】
[実施例2]
実施例1と同様の器具を用いサンプルを作製した。反応容器に、水1076部、反応性乳化剤SR28部を入れ、温度を80℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの10%水溶
液を3部添加した5分後に実施例1と全く同様の方法でプレ乳化液とシリコーン変性剤〔A〕を滴下し、ステップ(1)のポリマーを得た。
次にステップ(2)として、水156部、メタクリル酸メチル70部、メタクリル酸8部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル2部、n−ドデシルメルカプタン0.8部、反応性乳化剤SR2部、アルキルスルホコハク酸塩系界面活性剤1.5部、過硫酸アンモニウムの10%水溶液2部の混合液をホモミキサーにより乳化し、実施例1と同様の操作を行った。 次にステップ(3)として、メタクリル酸メチル182部、メタクリル酸シクロヘキシル54部及びアクリル酸ブチル176部、メタクリル酸8部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤5部、ヒンダードアミン系光安定剤2.5部を均一になるまで攪拌した後、反応性乳化剤SR34部、過硫酸アンモニウムの10%水溶液4部、水468部の内容にてプレ乳化液を作製し、実施例1のステップ(3)と同組成・同量のシリコーン変性剤〔A〕を用いて同様の操作を行いエマルションを得た。
【0078】
室温まで冷却した後、水素イオン濃度を測定したところpH2.9であった。上記の混合液に25%アンモニア水溶液を添加してpH10に調整してから100メッシュの金網でろ過した。得られたエマルションの固形分は31.8%であった。
続いて、同様の操作を実施して濃縮を行った。
室温まで冷却後、適量の水と25%アンモニア水溶液を滴下して固型分42.0%、pH9.0に調整した。その後、100メッシュの金網で濾過した。
【0079】
[実施例3]
ステップ2の単量体組成をメタクリル酸メチル131部、メタクリル酸4部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル15部とした以外は全て実施例1と同じにして操作を実施しエマルションを得た。
[実施例4]
ステップ2の単量体組成をメタクリル酸メチル144部、メタクリル酸5部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1部とした以外は全て実施例1と同じにして操作を実施しエマルションを得た。
[実施例5]
ステップ1の単量体組成をメタクリル酸メチル215部、メタクリル酸シクロヘキシル105部、アクリル酸2エチルヘキシル174部、メタクリル酸6部とした以外は全て実施例1と同じにして操作を実施しエマルションを得た。
【0080】
[実施例6]
ステップ1の単量体組成をメタクリル酸メチル212部、メタクリル酸シクロヘキシル75部、アクリル酸ブチル207部、メタクリル酸6部とし、ステップ2の単量体組成をメタクリル酸メチル109部、メタクリル酸シクロヘキシル23部、メタクリル酸15部、メタクリル酸2ヒドロキシエチル4部とし、ステップ3の単量体組成をメタクリル酸メチル145部、メタクリル酸シクロヘキシル53部、アクリル酸ブチル145部、メタクリル酸7部とした以外は全て実施例1と同じにして操作を実施しエマルションを得た。
【0081】
[実施例7]
ステップ1のシリコーン変性剤〔A〕をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5.8部、メチルトリメトキシシラン183部、ジメチルジメトキシシラン117部、フェニルトリメトキシシラン28部とし、ステップ3のシリコーン変性剤〔A〕をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.3部、メチルトリメトキシシラン122部、ジメチルジメトキシシラン78部、フェニルトリメトキシシラン18部とした以外は全て実施例1と同じにして操作を実施しエマルションを得た。
【0082】
[実施例8]
ステップ1として、メタクリル酸メチル338部、メタクリル酸シクロヘキシル150部及びアクリル酸ブチル349部、メタクリル酸13部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤5部、ヒンダードアミン系光安定剤2.5部を均一になるまで攪拌した後、反応性乳化剤SR140部、過硫酸アンモニウムの10%水溶液8.5部、水737部の混合液混合液を作製し、該混合液をホモミキサーにより乳化し、得られたプレ乳化液をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン7.2部、メチルトリメトキシシラン609部、ジメチルジメトキシシラン390部、フェニルトリメトキシシラン92部からなるシリコーン変性剤〔A〕の混合液とY字管内の金属メッシュで混合しながら反応容器中へ滴下槽より3.5時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入が終了してから反応容器中の温度を80℃にして1時間保った。
【0083】
次にステップ(2)として、水293部、メタクリル酸メチル131部、メタクリル酸15部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル4部、n−ドデシルメルカプタン1.5部、反応性乳化剤SR4部、アルキルスルホコハク酸塩系界面活性剤3部、過硫酸アンモニウムの10%水溶液4の混合液をホモミキサーにより乳化し、得られたプレ乳化液を反応容器中へ滴下槽より1時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入が終了してから反応容器中の温度を80℃にして5時間保った。
室温まで冷却した後、水素イオン濃度を測定したところpH2.3であった。上記の混合液に25%アンモニア水溶液を添加してpH10に調整してから100メッシュの金網でろ過した。得られたエマルションの固形分は32.3%であった。
続いて、実施例1と同様の操作を行い、濃縮を行った。
室温まで冷却後、適量の水と25%アンモニア水溶液を滴下して固型分42.0%、pH9.0に調整した。その後、100メッシュの金網で濾過しエマルションを得た。
【0084】
[実施例9]
[実施例8]におけるステップ1とステップ2の操作を順序を逆にして実施してエマルションを得た。
[実施例10]
ステップ2の単量体組成をメタクリル酸メチル131部、メタクリル酸15部、ジアセトンアクリルアミド15部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル2部とした以外は全て実施例1と同じにして操作を実施しエマルションを得た。このエマルション組成物100部(有姿)に対しハードナーSC(旭化成ケミカルズ(株)製水系多官能セミカルバジド50%水溶液)を1.6部添加し10分攪拌を行った後、50℃下で1晩静置した。こうして得られた配合品を評価に使用した。
【0085】
[実施例11]
ステップ2の単量体組成をメタクリル酸メチル116部、アクリル酸ブチル15部、メタクリル酸15部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル4部とした以外は全て実施例1と同じにして操作を実施しエマルションを得た。
[実施例12]
ステップ2の単量体組成をメタクリル酸メチル103部、アクリル酸ブチル28部、メタクリル酸15部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル4部とした以外は全て実施例1と同じにして操作を実施しエマルションを得た。
【0086】
[比較例1]
ステップ2の単量体組成をメタクリル酸メチル72部、メタクリル酸8部とした(即ち、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル2部に代えて、メタクリル酸メチル2部を使用)以外は全て実施例2と同じにして操作を実施しエマルションを得た。
[比較例2]
ステップ2の単量体組成をメタクリル酸メチル88部、アクリル酸ブチル43部、メタ
クリル酸15部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル4部とした(即ち、メタクリル酸メチル131部の内、その43部をアクリル酸ブチルに代えて使用)以外は全て実施例1と同じにして操作を実施しエマルションを得た。
【0087】
[比較例3]
ステップ1のシリコーン変性剤〔A〕をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5.8部、メチルトリメトキシシラン421部、ジメチルジメトキシシラン234部とし、ステップ3のシリコーン変性剤〔A〕をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.3部、メチルトリメトキシシラン281部、ジメチルジメトキシシラン156部とした(即ち、フェニルトリメトキシシラン55部又は33部に代えて、メチルトリメトキシシラン55部又は33部を使用)以外は全て実施例1と同じにして操作を実施しエマルションを得た。
【0088】
以上の操作により得られたエマルションの性状と評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように比較例1は、ステップ2でメタクリル酸2ヒドロキシエチルを使用しないので、耐光性・汚染性はよいものの密着性が劣る。比較例2では、メタクリル酸メチルの一部をアクリル酸ブチルに代えたのでTgbが50℃未満となり、耐候性はよいものの汚染性は低い。また比較例3は、ステップ1、3でフェニルトリメトキシシランを使用しないので、汚染性が低く、耐候性試験においてもクラックが入り光沢保持率も低下する。それらに対し実施例1〜12は耐候性、汚染性、密着性とも良好な結果となった。特に実施例10は他の実施例よりも耐候性において特に良好な性能を示した。
【0089】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン変性剤〔A〕の存在下で重合したアクリル系重合体(a)、及びガラス転移温度Tgbが50℃以上のアクリル系重合体(b)を含むことを特徴とするシリコーン含有高分子エマルション。
【請求項2】
アクリル系重合体(a)、(b)が乳化重合により得られた重合体であることを特徴とする請求項1に記載のシリコーン含有高分子エマルション。
【請求項3】
アクリル系重合体(b)が、カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕0.1〜20質量%、水酸基を持つエチレン性不飽和単量体〔C〕0.1〜20質量%、他のエチレン性不飽和単量体〔D〕60〜99.8質量%、およびそれらの合計に対し連鎖移動剤0.05〜5質量%を含む不飽和単量体混合物を重合する事により得られる重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコーン含有高分子エマルション。
【請求項4】
全アクリル系重合体中のアクリル系重合体(b)の含有割合が3〜40質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリコーン含有高分子エマルション。
【請求項5】
全アクリル系重合体の平均TgtがTgbよりも20℃以上低いことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリコーン含有高分子エマルション。
【請求項6】
シリコーン変性剤〔A〕が、
下記式(1):
【化1】

((n.m)は(1.0)又は(1.1)の組であり、式中n=1およびm=0のとき、Rはフェニル基またはシクロヘキシル基であり、各Rはそれぞれ、独立して、炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基であるか、または式中n=1およびm=1のときRはフェニル基またはシクロヘキシル基であり、Rは水素原子、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基、または炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基であり、各Rはそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(1)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
下記式(2):
CH−Si−(R (2)
(式中Rはそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(2)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
下記式(3):
(CH−Si−(R (3)
(式中Rはそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(3)からなる群より選ばれる少なくとも一種及び/又は環状シランを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項
に記載のシリコーン含有高分子エマルション。
【請求項7】
シリコーン変性剤〔A〕が、下記の式
1/5≦{単量体〔B〕+単量体〔C〕+単量体〔D〕}/変性剤〔A〕≦99.5/0.5
で表される関係を満足する量を用いて得られることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のシリコーン含有高分子エマルション。
【請求項8】
上記シリコーン変性剤〔A〕が、上記式(2)で表されるシリコーン構造を有するシラン(2)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、上記環状シラン及び上記式(3)で表されるシリコーン構造を有するシラン(3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の合計に対して、上記式(2)で表されるシリコーン構造を有するシラン(2)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、上記環状シラン及び上記式(3)で表されるシリコーン構造を有するシラン(3)からなる群から選ばれる少なくとも1種のモル比がそれぞれ1/100以上であり、又、上記式(1)で表されるシリコーン構造を有するシラン(1)からなる群より選ばれる少なくとも一種を下記の式
1/100≦シラン(1)/{シラン(2)+シラン(3)}≦10/1
で表される関係を満足するモル比で用いられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のシリコーン含有高分子エマルション。
【請求項9】
その他の不飽和単量体〔D〕中に5質量%以上のアクリル酸、メタクリル酸の炭素数が5〜12のシクロアルキルエステルを含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のシリコーン含有高分子エマルション。
【請求項10】
その他の不飽和単量体〔D〕中に0.5〜10質量%アルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のシリコーン含有高分子エマルション。
【請求項11】
pH4.0以下で乳化重合されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のシリコーン含有高分子エマルション。

【公開番号】特開2008−38116(P2008−38116A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218374(P2006−218374)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】