説明

高耐久性断面修復材

【課題】 コンクリート構造体等との材質的に同化性の高いポルトランドセメント系のモルタル質組成物を当該構造体の断面修復材に適用する上で、施工性を低下させずに、高い硫酸抵抗性と高い中長期強度発現性を共に安定して有することができるセメント系の断面修復材を提供する。
【解決手段】 (A)ポルトランドセメント、(B)BET比表面積0.75〜3.0m2/gのスラグ、(C)フライアッシュ又は/及びメタカオリン粉末、(D)シリカフゥーム及び(E)生石灰系膨張材を含有してなる高耐久性断面修復材。これに加えて更に、(F)ポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂、(G)保水剤、(H)分散剤の何れか1種又は2種以上を含有してなる高耐久性断面修復材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタルやコンクリート系の構造物の修復に用いる耐久性に優れたセメント系の断面修復材に関する。
【背景技術】
【0002】
モルタルやコンクリート系の構造物の修復に使用される断面修復材には修復基体への同化性、修復時の施工性及び修復後の耐久性等が要求される。修復が必要な構造物が、例えば下水道構造物の如く硫酸酸性液に晒されるものでは、構造物への同化性が良いポルトランドセメントを主硬化成分とするモルタル質組成物を修復材に使用すると、ポルトランドセメントの水和時に生成する水酸化カルシウム等が硫酸と反応し、この反応生成物である石膏が再反応して膨張性のエトリンガイト相が徐々に形成され、凝結後のモルタルに膨張亀裂が発生して劣化する。このため硫酸への抵抗性が強い組成物が必要となる。硫酸への抵抗性が強いセメント系組成物として、これまで(I)硫酸抵抗性の高いアルミナセメントを有効成分とする組成物(例えば特許文献1参照。)や(II)ポルトランドセメントの一部を、潜在水硬性物質であるスラグ微粉末又はポゾラン反応性物質であるフライアッシュやシリカフューム等と置換し、水和時に生じる水酸化カルシウムと反応させてCaO−SiO2−H2O系ゲルを優先的に生成させ、硫酸と反応する水酸化カルシウム量を減少させた組成物(例えば特許文献2参照。)が知られている。しかるに、前記(I)の組成物では、乾燥収縮が大きくなるため収縮亀裂が起こり易く、これを改善するためスラグ微粉末を混和させたものも知られている。(例えば特許文献3参照。)しかし、アルミナセメント−スラグ系組成物は、中性化が早く進行するため中長期強度が低下し易く、また施工性も芳しくない。また、前記(II)のポルトランドセメント−スラグ系組成物でも、スラグ等との置換で単位セメント量が低下するため中性化が進行し易くなって長期強度が低下し、機械的耐久性が低くなる。また、ポルトランドセメント−スラグ系組成物で、単位セメント量を低下させずに高性能減水剤を併用し、施工性に支障のない範囲まで単位水量を下げて強度向上を図ることも知られている。(例えば特許文献4参照。)この場合、ポルトランドセメント水和時に生じる水酸化カルシウムをCaO−SiO2−H2O系ゲルへ反応消費させるのに必要なスラグの配合量も増加させねばならず、スラグ配合量の増加は中性化進行因子となり強度低下に繋がるため限界があって、所望の強度発現性の確保はできても、硫酸抵抗性は向上し難くなる。
【特許文献1】特開2003−89565号公報
【特許文献3】特開2002−68793号公報
【特許文献2】特開2000−128618号公報
【特許文献4】特開平11−60316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、材質的にコンクリート系構造物との同化性が得られ易いポルトランドセメント−スラグ系組成物に於ける高い硫酸抵抗性と高い中長期強度発現性を共に有する上での従前の問題点を解決し、良好な施工性を有する耐久性に優れた断面修復材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、課題解決のため鋭意検討を重ねた結果、ポルトランドセメントに特定のBET比表面積のスラグ、フライアッシュ又はメタカオリン粉末、及びシリカフゥームを配合することで高い硫酸抵抗性と高い中長期強度発現性を共に備えたモルタルが得られ、更に生石灰系の膨張材を加えることで断面修復用途に適したセメント系組成物が得られたことから、本発明を完成させた。
【0005】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(3)で表す高耐久性断面修復材である。(1)(A)ポルトランドセメント、(B)BET比表面積0.75〜3.0m2/gのスラグ、(C)フライアッシュ又は/及びメタカオリン粉末、(D)シリカフゥーム及び(E)生石灰系膨張材を含有してなる高耐久性断面修復材。(2)スラグが化学成分としてCaOとSiO2をそれぞれ20質量%以上含有するスラグである前記(1)の高耐久性断面修復材。(3)さらに、(F)ポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂、(G)保水剤、(H)分散剤の何れか1種又は2種以上を含有してなる前記(1)又は(2)の高耐久性断面修復材。
【発明の効果】
【0006】
本発明による高耐久性断面修復材は、ポルトランドセメント系修復材で発生し易い硫酸酸性下での劣化も起こらず、且つ中長期に渡って安定した高い強度発現性を維持でき、硬化時の寸法変化も十分抑制できるので、硫酸酸性下で長期間晒される可能性があるコンクリート系構造物の断面修復材として優れた適用性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の高耐久性断面修復材は、ポルトランドセメント、BET比表面積0.75〜3.0m2/gのスラグ、フライアッシュ又は/及びメタカオリン粉末、シリカフゥーム及び生石灰系膨張材を必須配合使用してなるモルタル質の組成物である。本発明の高耐久性断面修復材に使用するポルトランドセメントは、モルタルの結合相を形成する主要成分であり、例えば普通、早強、超早強又は中庸熱等の何れのポルトランドセメントでも使用することができる。コストや扱い性の点からは普通ポルトランドセメントが好ましいが、修復施工工事を短期間にする上では早強又は超早強ポルトランドセメントを使用するかこれと普通ポルトランドセメントを併用するのがより好ましい。
【0008】
また本発明の高耐久性断面修復材に使用するスラグは、BET比表面積が0.75〜3.0m2/gのスラグであり、好ましくはBET比表面積が1.0〜3.0m2/gのスラグとする。該スラグは、ポルトランドセメント水和時に生成する水酸化カルシウムを水の存在下で優先的に反応して消費させ、硫酸と反応するのを阻止する。BET比表面積が0.75m2/g未満のスラグは、反応活性が低く、水酸化カルシウムとの反応が低迷し、硫酸と反応する水酸化カルシウムが急増して劣化を起こすので好ましくない。また、BET比表面積が3.0m2/gを超えるスラグは、粘性が増して鏝作業を行う上での施工性が著しく悪化し、また単位水量の増大により強度低下や乾燥収縮が増大するので好ましくない。本発明で使用するスラグは、BET比表面積以外は特に限定されるものではなく、その種類として例えば高炉スラグ等の製鋼時や金属精錬時の鉱滓、下水汚泥溶融スラグ、都市ゴミ焼却灰溶融スラグ等を挙げることができるが、好ましくは、化学成分としてCaOとSiO2をそれぞれ20質量%以上含有するスラグが良く、より好ましくはCaOとSiO2をそれぞれ25〜40質量%含有するスラグが適当である。このようなスラグは、セメント水和時に生成される水酸化カルシウムを反応消費させる上での効率性に優れ、スラグ配合量を低減させても硫酸抵抗性が得やすくなるので推奨される。本モルタルに使用するスラグ量は、ポルトランドセメント100質量部に対し70〜120質量部が好ましく、75〜100質量部がより好ましい。70質量部未満では水酸化カルシウムを反応消費させるためのスラグ量が不足して良好な硫酸抵抗性が得られず、また120質量部を超えると中性化が進行し易くなることから、何れも適当でない。
【0009】
また、本発明の高耐久性断面修復材に使用するフライアッシュやメタカオリン粉末は、ポルトランドセメント水和時に生成する水酸化カルシウムと反応し、堅牢で高緻密な硬化体を形成して機械的耐久性の向上と浸食物質の内部浸透を抑止することができる。このうちフライアッシュは、JIS A6201で規定されたフライアッシュII種が使用推奨され、特にBET比表面積1.5〜3.5m2/gのフライアッシュは反応活性が高く、且つ修復用に適した施工性を耐久性を低下させずに確保し易いことから望ましい。またメタカオリン粉末はBET比表面積8.0〜12.0m2/gのメタカオリンが高い反応活性を有し、且つ修復用に適した施工性を耐久性を低下させずに確保し易いことから望ましい。一方で結晶化が進んだカオリナイトやムライト等は比表面積が大きいものでもメタカオリンほどの活性が得られないため好ましくない。本発明の高耐久性断面修復材へはフライアッシュ又はメタカオリンの何れか1種か両方を使用することができ、その使用量は、ポルトランドセメント100質量部に対し、7〜30質量部が好ましく、8〜20質量部がより好ましい。7質量部未満では前記の作用が殆ど得られないので適当でなく、また30質量部を超えると強度低下を起こすので適当でない。フライアッシュとメタカオリンを併用する場合の両者間の配合割合は何等制限されない。更にフライアッシュやメタカオリンの一部を、概ね同等の作用が得られ易いことから化学成分としてAl23とSiO2を何れも約25質量%以上含むような非晶質乃至ガラス化率の高い無機微粉と置換して使用することもできる。
【0010】
また、本発明の高耐久性断面修復材に使用するシリカフュームは何れのものでも良い。シリカフュームを使用することで、より緻密な硬化体を得ることができ、硫酸溶液や他の腐食性流体が断面修復後の修復層内部へ浸透し難く、耐久性が向上する。シリカフュームの使用量は、ポルトランドセメント100質量部に対し、5〜15質量部が好ましく、8〜12質量部がより好ましい。シリカフュームの使用量が5質量部未満では配合効果が殆ど発現されないので適当でなく、また15質量部を超えると施工性が著しく低下することがあるので適当ではない。
【0011】
また、本発明の高耐久性断面修復材に使用する生石灰系膨張材は、生石灰を有効成分とし、水和膨張するものであって、硫酸塩若しくは硫酸塩形成成分を実質含有しないものとする。生石灰系膨張材を使用することで、主に乾燥収縮を抑制し、修復部の形状寸法安定性が図れると共に収縮亀裂の発生を防ぐことができる。生石灰系膨張材の使用量は、ポルトランドセメント100質量部に対し、1〜7質量部が好ましく、2〜6質量部がより好ましい。生石灰系膨張材の使用量が1質量部未満では収縮抑制が十分できないので適当でなく、また7質量部を超えると過膨張の虞があるので適当ではない。
【0012】
また、本発明の高耐久性断面修復材は、前記必須成分に加えて、ポリマーディスパージョン又は再乳化粉末樹脂、保水剤、分散剤の何れか1種又は2種以上が配合されたものであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の高耐久性断面修復材で使用するポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂は、セメント、モルタル又はコンクリートで使用できるものなら何れのものでも良く、例えばJIS A6203で規定されたポリマーディスパージョンや再乳化形粉末樹脂が使用できる。より具体的にはポリマーディスパージョンとして、ポリアクリル酸エステル、スチレンブタジエン、エチレン酢酸ビニル等の樹脂を例示でき、また、再乳化形粉末樹脂として、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニル/アクリル酸エステル等を例示できる。ポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂を配合することで、コンクリート系構造体への付着性が高まり、また遮水性が大幅に向上する。ポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂の使用量はポルトランドセメント100質量部に対し、固型分換算で2〜20質量部が好ましく、2質量部未満では配合使用効果が殆ど得られないため適当でなく、また20質量部を超えると施工性と厚付け性が低下し易いので適当ではない。
【0014】
また、本発明の高耐久性断面修復材で使用する保水剤は、モルタル又はコンクリートで使用できるものなら何れのものでも良く、その中でも水溶性セルロース系化合物が好ましい。具体的には、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース硫酸エステル等のセルロース誘導体を挙げることができる。保水剤を配合することで修復材中の水分の急速な散免を抑制でき、補修後の乾燥ひび割れの発生や剥離・剥落を防ぐことができる。保水剤の使用量は、ポルトランドセメント100質量部に対し、0.15〜0.5質量部が好ましく、0.15質量部未満では配合使用効果が殆ど得られないため適当でなく、また0.5質量部を超えると高粘性になり過ぎて配合時の混合抵抗が増し作業性に支障を及ぼすことがあることに加え、強度発現性も低下するので適当ではない。
【0015】
また、本発明の高耐久性断面修復材で使用する分散剤は、モルタル又はコンクリートで使用できるものなら何れのものでも良く、流動化剤、減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤と称されるものを用いることができる。具体的には、ナフタレンスルフォン酸系、メラミン系、リグニン系、ポリカルボン酸系等の減水剤を例示することができる。分散剤を配合することで施工性に支障を及ぼすことなく単位水量を下げて強度向上を図ることができることに加え、均質な配合物を得易くなる。
【0016】
また、本発明の高耐久性断面修復材は、本発明の効果を喪失させない範囲で前記以外の成分が配合されたものであっても良い。このような成分として例えば、高分子、金属、カーボン又は耐アルカリ性ガラス等の成分からなる繊維、細骨材、空気連行剤、消泡剤、収縮低減材、顔料等を挙げることができる。
【0017】
本発明の高耐久性断面修復材の製造方法は、各配合成分を例えば市販のモルタルミキサーに投入し、水を加えて混合すれば良く、配合成分の投入・混合方法等は特に限定されない。水の配合量は、修復材中の全粉体成分量100質量部に対し、14〜18質量部が好ましい。14質量部未満では配合時の混練抵抗が増すので適当ではなく、また18質量部を超えると強度発現性が低下し、また施工時の厚付けも困難になり易いので適当ではない。また、本発明の高耐久性断面修復材による修復施工は、従来から使用されているセメント系断面修復材と概ね同様の方法で施工することができ、特段の配慮等は必要としない。
【実施例】
【0018】
以下、実施例により本発明を具体的に詳しく説明する。
[修復材の作製] 次に表すA1〜A2、B1〜B7、C1〜C4、D1〜D2、E1〜E2、F1〜F2、G、H及びJから選定される材料と水を、表1に記した配合量となるようモルタルミキサーに投入し、約20℃の温度下で3分間混合し、修復材(本発明品1〜10、参考品11〜17)を作製した。
A1;普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)
A2;早強ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)
A3;アルミナセメント(太平洋マテリアル株式会社製)
B1;BET比表面積0.5m2/gの高炉スラグ粉末(主要化学成分含有量CaO;45.4質量%、SiO2;29.4質量%、Al23;14.1質量%、MgO;5.2質量%、Fe23;0.8質量%)
B2;BET比表面積1.5m2/gの高炉スラグ粉末(含有化学成分はB1と同じ)
B3;BET比表面積2.5m2/gの高炉スラグ粉末(含有化学成分はB1と同じ)
B4;BET比表面積4.0m2/gの高炉スラグ粉末(含有化学成分はB1と同じ)
B5;BET比表面積0.5m2/gの下水汚泥溶融スラグ粉末(主要化学成分含有量CaO;35.0質量%、SiO2;28.2質量%、Al23;14.0質量%、MgO;3.1質量%、Fe23;7.3質量%)
B6;BET比表面積1.0m2/gの下水汚泥溶融スラグ粉末(含有化学成分はB5と同じ)
B7;BET比表面積2.5m2/gの下水汚泥溶融スラグ粉末(主要化学成分含有量CaO;38.4質量%、SiO2;17.2質量%、Al23;15.8質量%、MgO;3.5質量%、Fe23;8.0質量%)
C1;BET比表面積1.5m2/gのフライアッシュ
C2;BET比表面積3.5m2/gのフライアッシュ
C3;メタカオリン粉末(BET比表面積14.5m2/g)
C4;カオリナイト粉末(BET比表面積4.0m2/g)
D1;シリカフューム(BET比表面積20.0m2/g)
D2;硫酸リチウム(市販品)
E1;生石灰系膨張剤(商品名「太平洋エクスパン」、太平洋マテリアル株式会社製)
E2;カルシウムサルファアルミネート系膨張剤(商品名「デンカCSA」、電気化学工業株式会社製)
F1;スチレンブタジエン系ポリマーディスパージョン(商品名「太平洋CXB」、太平洋マテリアル株式会社製)
F2;アクリルスチレン系再乳化粉末樹脂(商品名「LL512」、旭化成ケミカルズ株式会社製)
G;ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名「90SH−4000」、信越化学工業株式会社製)
H;ポリカルボン酸系高性能減水剤(商品名「コアフローNF−100」、太平洋マテリアル株式会社製)
J;細骨材(粒径0.15〜2.5mmで粗粒率3.58の山砂)
【0019】
【表1】

【0020】
[施工性の評価] 作製した修復材について、鏝切れ、鏝伸び、塗り垂れ抵抗及び吹付け施工適合性の4項目を調べ、断面修復材としての施工性を評価した。各項目の試験方法と評価判定基準は次の通りである。評価結果は表2に表す。
【0021】
<鏝切れ> 市販の金鏝で修復材を垂直に設置した100×100×15cmのコンクリート平板の100×100cmの面に塗り付けた。塗り付け面の仕上がり状況を目視で調べ、実質平滑な表面が確認でき、且つ使用した金鏝に付着残存した修復材が殆ど見られなかったものを鏝切れ「良好」と判断し、それ以外を鏝切れ「不良」と判断した。
【0022】
<鏝伸び> 前記同様のコンクリート平板面に採取した修復材を金鏝で塗り付け、100×100cmの面全体がおよそ2cmの厚さになるよう金鏝で押し広げた。面全体に5分以内に押し広げられたものを鏝伸び「良好」と判断し、それ以外を鏝伸び「不良」と判断した。
【0023】
<塗り垂れ抵抗> 垂直に設置した100×100×15cmのコンクリート平板の100×100cmの面全体を厚さおよそ2cmになるよう金鏝で修復材を塗り付け、塗り付け完了から24時間経過時点で塗り付けた修復材に垂れが生じているかを目視で確認した。垂れが見られなかったものを塗り垂れ抵抗「良好」と判断し、それ以外を塗り垂れ抵抗「不良」と判断した。
【0024】
<吹付け施工適合性> スクイズ式モルタルポンプに連結させた内径40mmで長さ40mの圧送ホース端に取り付けた吐出口径12mmのスプレーガンを用い、約0.4m離れたコンクリート擁壁の垂直面に修復材を連続5分間吹き付け、修復材圧送状況とスプレーガンの噴出状況を調べた。ホース内に詰まりもなく圧送でき、且つスプレーガンの噴出口の目詰まりも起こさずに擁壁面に吹き付けることができたものを吹付け施工適合性「良好」と判断し、それ以外を吹付け施工適合性「不良」と判断した。
【0025】
【表2】

【0026】
[耐久性の評価] 作製した修復材について、圧縮強度と2通りの試験方法で硫酸抵抗性を調べ、耐久性を評価した。試験方法と評価判定基準は次の通りである。結果は表2に表す。
【0027】
<圧縮強度試験> 修復材を内径4×4×16cmの型枠に充填し、温度20℃、湿度80%の恒温恒湿槽で24時間養生した後脱型した。得られた供試体を所定材齢まで20℃の水中で養生させた。材齢3日及び28日の供試体をJIS R5201の方法に準拠して圧縮強度を測定した。
【0028】
<硫酸抵抗性試験1> 前記圧縮強度試験で作製したものと同様の供試体の質量を測定した後、これを20℃に維持した5%硫酸溶液に28日間浸漬した。浸漬後の供試体を水洗して質量を測定し、浸漬前後の質量から質量変化率を次の式で算出した。尚、浸漬に使用した硫酸溶液は7日毎に全量入れ替えた。
質量変化率(%)=100×(浸漬前の質量−浸漬後の質量)/浸漬前の質量
質量変化率が±10%以内であったものを硫酸抵抗性「良好」と判断し、それ以外を硫酸抵抗性「不良」と判断した。
【0029】
<硫酸抵抗性試験2> 前記圧縮強度試験で作製したものと同様の供試体を、20℃に維持した5%硫酸溶液に28日間浸漬した。浸漬後の供試体を水洗し、該供試体底面(4×4cmの面)から8cmの箇所を底面と平行となるよう切断した。切断面にフェノールフタレイン溶液を添加し、赤く呈色した領域を供試体内部への硫酸浸透深さと見なし、供試体外表面(4×16cmの面)から最も深部まで呈色した地点までの長さを測定した。この長さが3.0mm未満であったものを硫酸抵抗性「良好」と判断し、それ以外を硫酸抵抗性「不良」と判断した。尚、浸漬に使用した硫酸溶液は7日毎に全量入れ替えた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の高耐久性断面修復材は、セメント系以外の無機材質からなる構造体の修復用にも、また断面以外の修復用にも使用することができる。更に、耐硫酸性のみならず総じて耐食性が強いため、例えば目地材や動物畜舎の床材等の耐食性構造部材や一般建築資材としても利用できる可能性がある。また、特に高性能減水剤と収縮低減剤を併用配合することで、型枠工法でも使用できるグラウト材として利用することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポルトランドセメント、(B)BET比表面積0.75〜3.0m2/gのスラグ、(C)フライアッシュ又は/及びメタカオリン粉末、(D)シリカフゥーム及び(E)生石灰系膨張材を含有してなる高耐久性断面修復材。
【請求項2】
スラグが化学成分としてCaOとSiO2をそれぞれ20質量%以上含有するスラグである請求項1記載の高耐久性断面修復材。
【請求項3】
さらに、(F)ポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂、(G)保水剤、(H)分散剤の何れか1種又は2種以上を含有してなる請求項1又は2記載の高耐久性断面修復材。

【公開番号】特開2007−161507(P2007−161507A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357187(P2005−357187)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】