説明

高耐候性反射防止フィルム

【課題】優れた耐候性を有し、かつ優れた帯電防止機能を有する反射防止フィルムを提供すること。
【解決手段】基材の少なくとも片面にハードコート層を有し、これをアルカリ処理した後に、帯電防止層、さらに低屈折率層をこの順に積層してなり、前記帯電防止層に用いられるバインダマトリックスが、下記式(1)で示される有機ケイ素化合物の加水分解物と、下記式(2)で示される、反応性官能基を有する有機ケイ素化合物の加水分解物とからなることを特徴とする高耐候性反射防止フィルム。式(1) RSi(OR’)4−x(ただし、R、R’はそれぞれ独立してアルキル基であり、xは0≦x≦3を満たす整数である);式(2) R’’Si(OR’)4−y(ただし、R’はアルキル基、R’’は反応性官能基を示し、yは1≦y≦3を満たす自然数である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性(耐光性)に優れ、例えば、ディスプレイ(LCD、PDP、CRT、プロジェクションディスプレイ、ELディスプレイ等)の表示画面に適用される、反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にディスプレイは、室内外での使用を問わず、外光などが入射する環境下で使用される。この外光等の入射光は、ディスプレイ表面等において正反射され、それによる反射像が表示画像と混合することにより、画面表示品質を低下させてしまう。そのため、ディスプレイ表面等に反射防止機能を付与することは必須であり、反射防止機能の高性能化、反射防止機能以外の機能の複合化が求められている。
【0003】
一般に反射防止機能は、透明基材上に金属酸化物等の透明薄膜を設けた多層膜(反射防止膜)を形成することで得られる。これらの多層膜は、化学蒸着(CVD)法や、物理蒸着(PVD)法により形成することが可能だが、蒸着による形成方法は生産性が低く、大量生産に適していないという問題を抱えている。一方、多層膜の形成方法として、大面積化、連続生産、低コスト化が可能であるウェットコーティング法による反射防止膜の生産が注目されている。
【0004】
また、これらの多層の反射防止膜は、その表面が比較的柔軟であることから、表面硬度を付与するために、一般にアクリル多官能化合物の重合体からなるハードコート層を設け、その上に多層の反射防止膜を形成するという手法が用いられている。このハードコート層はアクリル樹脂の特性により、高い表面硬度、光沢性、透明性、耐擦傷性を有するが、絶縁性が高いため帯電しやすく、ハードコート層を設けた製品表面への埃等の付着による汚れや、ディスプレイ製造工程において、帯電することにより障害が発生するといった問題を抱えていた。
【0005】
そこで、帯電防止機能を付与するため、ハードコート層に導電剤を練りこむ方式(特許文献1)や、基材とハードコート層の間、もしくはハードコート層と反射防止膜の間に帯電防止層を設ける手法がなされている。
【0006】
一般的に導電剤はイオン伝導機構、あるいは電子伝導機構を有する導電性微粒子が用いられているが、一般的に電子伝導機構を有する導電性微粒子は有色であり、良好な導電性を出現できるものの、反射防止フィルムの着色、光線透過率の減少という問題を抱えていた。
【特許文献1】特開平11−92750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、イオン伝導機構を有する導電性微粒子である五酸化アンチモン微粒子は、無色(白色)であり、なおかつ結晶水を有するため、電子伝導機構を有する導電性微粒子と比較して少ない添加量で導電性を発現するとともに、反射防止フィルムの着色、光線透過率の減少という上記問題を解決することができる。
【0008】
しかし、五酸化アンチモン微粒子は光学活性を有するため、五酸化アンチモン微粒子を含む反射防止フィルムの耐候性、特にUV光(太陽光)照射に対する耐光性が低く、UV照射によるクラックの発生、密着性の悪化による剥離が発生してしまうという問題が生じる。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、優れた耐候性を有し、かつ優れた帯電防止機能を有する反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、基材の少なくとも片面にハードコート層を有し、これをアルカリ処理した後に、帯電防止層、さらに低屈折率層をこの順に積層した高耐候性反射防止フィルムであって、前記帯電防止層に用いられるバインダマトリックスが、下記式(1)で示される有機ケイ素化合物の加水分解物と、下記式(2)で示される、反応性官能基を有する有機ケイ素化合物の加水分解物とからなることを特徴とする高耐候性反射防止フィルムである。
式(1) RSi(OR’)4−x
(ただし、R、R’はそれぞれ独立してアルキル基であり、xは0≦x≦3を満たす整数である)
式(2) R’’Si(OR’)4−y
(ただし、R’はアルキル基、R’’は反応性官能基を示し、yは1≦y≦3を満たす自然数である)
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記反応性官能基が、エポキシ基またはグリシドキシ基であり、前記式(1)で示される有機ケイ素化合物に対する、前記式(2)に示される有機ケイ素化合物の割合が0.5〜30mol%であることを特徴とする請求項1に記載の高耐候性反射防止フィルムである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記帯電防止層は、さらに導電性微粒子を含み、前記導電性微粒子が五酸化アンチモン微粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐候性反射防止フィルムである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記低屈折率層に用いられるバインダマトリックスが、下記式(3)で示される有機ケイ素化合物の加水分解物と、下記式(4)で示される有機ケイ素化合物の加水分解物とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高耐候性反射防止フィルムである。
式(3) Si(OR)
式(4) R’Si(OR)4−z
(ただし、Rはアルキル基、R’はフッ素原子を含む非反応性官能基であり、zは1≦y≦3を満たす自然数である)
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記式(1)で示される有機ケイ素化合物が、テトラエトキシシランであり、下記式(2)で示される、反応性官能基を有する有機ケイ素化合物が、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであり、前記式(3)で示される有機ケイ素化合物が、テトラエトキシシランであり、かつ前記式(4)で示される、反応性官能基を有する有機ケイ素化合物が、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項4に記載の高耐候性反射防止フィルムである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、帯電防止層に用いられるバインダマトリックスが上述の有機ケイ素化合物からなることにより、耐候性に優れた高耐候性反射防止フィルムを得ることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、前記反応性官能基がエポキシ基またはグリシドキシ基であること、反応性官能基を有する有機ケイ素化合物の添加率が0.5〜30mol%であることにより、ハードコート層と帯電防止層の層間密着力が向上し、耐候性に優れた高耐候性反射防止フィルムを得ることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、五酸化アンチモン微粒子はイオン伝導性を有し、例えばアンチモンドープ酸化錫(ATO)、インジウムドープ酸化錫(ITO)等の電子伝導性微粒子と比較し、少量の添加で充分な導電性を発揮することができる。また、五酸化アンチモン微粒子は無色であるため、反射防止フィルムの着色を抑え、光線透過率を損なわず、良好な導電性を有する反射防止フィルムを得ることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、低屈折率層のバインダマトリックスが上述の有機ケイ素化合物であることにより、低屈折率層の屈折率を低く抑えることができ、さらにフッ素原子を含むことにより、防汚性に優れた反射防止フィルムを得ることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、帯電防止層および低屈折率層の組成を特定したので、耐候性がさらに優れた高耐候性反射防止フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の反射防止フィルムは、基材の少なくとも片面にハードコート層を有し、これをアルカリ処理した後に、帯電防止層、さらに低屈折率層をこの順に積層してなる構造を有する。
【0021】
本発明の反射防止フィルムにおける基材は、種々の有機高分子からなるフィルムまたはシートを用いることができる。例えば、ディスプレイ等の光学部材に通常使用される基材が挙げられ、透明性や光の屈折率等の光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性を考慮して、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等の有機高分子からなるものが用いられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートが好ましい。さらに、これらの有機高分子に公知の添加剤、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等を添加することにより機能を付加させたものも使用できる。
【0022】
本発明のハードコート層としては、前記基材に積層されるものであって、このハードコート層は紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等を用いることができる。
紫外線または電子線型硬化樹脂化合物としては、低屈折率層が設置される基材の表面改質を目的として、スチールウールラビング試験による耐擦傷性、鉛筆引っかき試験による表面硬度、粘着テープ剥離試験による密着性、最小曲げ試験によるクラック性等の諸特性について、要求されるスペックを満足させるように樹脂を選択して使用することができる。この化合物は、光重合性プレポリマー、光重合性モノマー、光重合開始剤等を含有するものである。
【0023】
前記光重合性プレポリマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等のプレポリマーが挙げられる。これらの光重合性プレポリマーは1種用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
また、光重合性モノマーとしては、例えばポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。特に本発明においては、前記ハードコート層は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性モノマーを主成分とする重合体からなることが好ましい。
【0024】
光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。
【0025】
本発明のハードコート層は、帯電防止層を積層する前に、帯電防止層との密着性を高めるために、アルカリ処理を行うことが好ましい。アルカリ処理に使用するアルカリ水溶液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液、それらに更にアルコール等の各種有機溶媒を加えたアルカリ水溶液等が挙げられる。また、アルカリ処理の条件は特に制限されるものではないが、0.1〜10Nの濃度の水溶液を用いることが好ましく、1〜2Nの濃度が更に好ましい。アルカリ水溶液の温度は0〜100℃、好ましくは20〜80℃である。アルカリ処理の時間は0.01〜10時間、好ましくは0.1〜1時間である。
【0026】
ハードコート層の厚さは、例えば3〜30μmである。より好ましくは、5〜15μmである。
【0027】
本発明の帯電防止層のバインダマトリックスは、前記式(1)で示されるケイ素化合物の加水分解物と、前記式(2)で示される、反応性官能基を有するケイ素化合物の加水分解物とからなることが必要である。また、前記反応性官能基はエポキシ基またはグリシドキシ基を有することが好ましい。前記式(1)または(2)において、R、R’が示すアルキル基は、その炭素数が1〜4のものが挙げられる。
式(2)で示されるケイ素化合物の割合は、式(1)で示されるケイ素化合物に対して、0.5〜30mol%が好ましく、導電性と耐光性の関係から、4〜12mol%であることが、さらに好ましい。
【0028】
本発明の帯電防止層には導電性微粒子が含有されていることが好ましく、その導電性微粒子は、五酸化アンチモン微粒子であることが好ましい。
前記五酸化アンチモン微粒子の粒径は1〜100nmであることが好ましい。この範囲であることにより、帯電防止層の透明性と帯電防止性を両立することができる。粒径が100nmを超えると、レイリー散乱によって光が著しく反射され、帯電防止層が白くなって、透明性の低下が認められる。また、1nm未満では導電性が低下することや、微粒子の凝集による層の不均一性等の問題が生じる。また、五酸化アンチモン微粒子の添加率については特に制限はないが、バインダマトリックスに対して20〜80質量%の添加率が好ましく、30〜70質量%の添加率がさらに好ましい。
【0029】
本発明の低屈折率層のバインダマトリックスは、前記式(3)で示されるケイ素化合物の加水分解物と、前記式(4)で示されるケイ素化合物の加水分解物とからなることが好ましい。また、前記低屈折率層には低屈折率剤を添加することが好ましい。低屈折率剤の種類は特に限定されるものではないが、一般的にはフッ素含有樹脂、空気を含有することのできる多孔質膜、多孔質材料を核とする中空ポリマー等が挙げられる。これらの中でも、低屈折率層の光線透過率を低下させずに屈折率を下げることができる、無機多孔質微粒子などの粒径10〜100nmの中空微粒子を添加することが好ましい。中空微粒子の添加量は特に制限されるものではないが、層強度と低反射率を両立させるためには、バインダマトリックスに対して10〜80質量%の割合が好ましく、20〜70質量%の割合であることがより好ましい。
【0030】
前記式(3)または式(4)において、Rが示すアルキル基は、その炭素数が1〜4のものが挙げられる。また、R’が示すフッ素原子を含む非反応性官能基としては、例えば炭素数が3〜13のパーフルオロアルキル基等が挙げられる。また、前記式(4)で示されるケイ素化合物は、バインダマトリックス中、0.1〜10質量%であるのが好ましい。
【0031】
低屈折率層の厚さは、例えば90〜150nmであり、屈折率は、例えば1.33〜1.44である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの例に限定されるものではない。
【0033】
実施例1
透明基材、ハードコート層、帯電防止層、低屈折率層を以下に示す方法により積層し、その性能を下記の方法に従って評価した。
(分光反射率)
自動分光光度計(日立製作所製、U−4000)を用い、入射角5度における分光反射率を測定した。なお、測定の際には、透明基材において積層の施されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処理を行った。
(平均視感反射率)
自動分光光度計(日立製作所製、U−4000)を用い、入射角5度における分光反射率により、C光源、2度視野の条件下における、平均視感反射率(Y%)を算出した。
(密着性)
JIS K5400に準拠した碁盤目法にて評価した。
(導電性)
JIS K6911に準拠して測定を行った。
(耐光性)
岩崎電気製アイスーパーUVテスターを使用し、評価環境温度63℃、湿度45%、照射光量65mW/cmの条件にて所定時間UV照射を行い、JIS K5400に準拠した碁盤目法を行い、反射防止フィルムの劣化を評価した。評価基準を以下に示す。
剥離なし(劣化無し):◎
一部剥離(低度の劣化):○
全面剥離(劣化あり):×
【0034】
<ハードコート層形成用の塗布液の調製>
ジペンタエリスリトールトリアクリレート25質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート25質量部、ウレタンアクリレート50質量部、イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ社製(光重合開始剤))5質量部を用い、これをメチルエチルケトンに溶解してハードコート層形成用の塗布液を調製した。
【0035】
<ハードコート層の形成>
透明基材として、厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルムを用いて、上述のハードコート層形成用塗布液を、乾燥膜厚が5μmになるように透明基材上に塗布し、120Wのメタルハライドランプを20cmの距離から10秒間照射することにより、ハードコート層を形成した。
【0036】
<ハードコート層のアルカリ処理>
ハードコート層を形成した透明基材を、50℃1.5N−NaOH水溶液に2分間浸漬してアルカリ処理を行い、水洗後、0.5質量%のHSO水溶液に室温で30秒間浸漬し中和させ、水洗、乾燥処理を行った。
【0037】
<帯電防止層の形成>
テトラエトキシシラン96mol%と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン4mol%の混合物を原料とし、これを加水分解して得られたオリゴマー5質量部と、変性アルコールに分散された五酸化アンチモン微粒子を五酸化アンチモンが5質量部となるように混合し、2−プロパノールで希釈し、塗布液を調製した。この塗布液を乾燥膜厚が0.2μmとなるようにハードコート層上に積層し、加熱乾燥させることで帯電防止層を形成した。
【0038】
<低屈折率層の形成>
テトラエトキシシラン99mol%とフルオロアルキル基を有する有機ケイ素化合物である1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメトキシシラン1mol%を原料とし、これを加水分解して得られた有機ケイ素化合物の重合体を5質量部、低屈折率シリカ微粒子5質量部を混合し、2−プロパノールで希釈し、低屈折率層用の塗布液を調製した。この塗布液を、乾膜厚が0.1μmとなるように、上記帯電防止層上に塗布し、加熱乾燥させることで低屈折率層を形成した。
【0039】
比較例1
実施例1の帯電防止層の形成において、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを使用せず、テトラエトキシシランのみの加水分解により得られたオリゴマーを原料として用い、それ以外は実施例1と同様にして、反射防止フィルムを形成した。
【0040】
実施例2
実施例1の帯電防止層の形成において、テトラエトキシシラン99.9mol%と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.1mol%の混合物を加水分解して得られたオリゴマーを原料として用い、それ以外は実施例1と同様にして、反射防止フィルムを形成した。
【0041】
実施例3
実施例1の帯電防止層の形成において、テトラエトキシシラン85mol%と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン15mol%の混合物を加水分解して得られたオリゴマーを原料として用い、それ以外は実施例1と同様にして、反射防止フィルムを形成した。
【0042】
実施例1、比較例1、実施例2および実施例3で得られた反射防止フィルムにおいて、分光反射率、平均視感度反射率、表面抵抗値、密着性、耐光性の評価を行った結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1から明らかなように、実施例1では帯電防止層に添加している式(2)に示される有機ケイ素化合物が有効に働き、充分な導電性、耐光性を有する反射防止フィルムを得ることができている。
【0045】
比較例1は、式(2)に示される有機ケイ素化合物を添加していないものである。耐光性を向上する成分が含まれていないため、光照射により、反射防止フィルムの劣化が認められる。
【0046】
実施例2は、式(2)に示される有機ケイ素化合物の添加量が、実施例1より低いものである。耐光性を向上させる成分が少ないため、比較例1と比較して耐光性が向上するものの、実施例1に比べると耐光性がやや劣る結果となった。
【0047】
実施例3は、式(2)に示される有機ケイ素化合物の添加量が、実施例1より高いものである。充分な耐光性を有するが、導電性がやや低下した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上の結果から明らかなように、本発明の反射防止フィルムは、高い反射防止性能を持ちつつ、良好な帯電防止性能を有し、耐候性に優れた反射防止フィルムを提供することができ、例えば、ディスプレイ(LCD、PDP、CRT、プロジェクションディスプレイ、ELディスプレイ等)の表示画面に好適に適用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも片面にハードコート層を有し、これをアルカリ処理した後に、帯電防止層、さらに低屈折率層をこの順に積層した高耐候性反射防止フィルムであって、前記帯電防止層に用いられるバインダマトリックスが、下記式(1)で示される有機ケイ素化合物の加水分解物と、下記式(2)で示される、反応性官能基を有する有機ケイ素化合物の加水分解物とからなることを特徴とする高耐候性反射防止フィルム。
式(1) RSi(OR’)4−x
(ただし、R、R’はそれぞれ独立してアルキル基であり、xは0≦x≦3を満たす整数である)
式(2) R’’Si(OR’)4−y
(ただし、R’はアルキル基、R’’は反応性官能基を示し、yは1≦y≦3を満たす自然数である)
【請求項2】
前記反応性官能基が、エポキシ基またはグリシドキシ基であり、前記式(1)で示される有機ケイ素化合物に対する、前記式(2)に示される有機ケイ素化合物の割合が0.5〜30mol%であることを特徴とする請求項1に記載の高耐候性反射防止フィルム。
【請求項3】
前記帯電防止層は、さらに導電性微粒子を含み、前記導電性微粒子が五酸化アンチモン微粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐候性反射防止フィルム。
【請求項4】
前記低屈折率層に用いられるバインダマトリックスが、下記式(3)で示される有機ケイ素化合物の加水分解物と、下記式(4)で示される有機ケイ素化合物の加水分解物とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高耐候性反射防止フィルム。
式(3) Si(OR)
式(4) R’Si(OR)4−z
(ただし、Rはアルキル基、R’はフッ素原子を含む非反応性官能基であり、zは1≦y≦3を満たす自然数である)
【請求項5】
前記式(1)で示される有機ケイ素化合物が、テトラエトキシシランであり、下記式(2)で示される、反応性官能基を有する有機ケイ素化合物が、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであり、前記式(3)で示される有機ケイ素化合物が、テトラエトキシシランであり、かつ前記式(4)で示される、反応性官能基を有する有機ケイ素化合物が、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項4に記載の高耐候性反射防止フィルム。

【公開番号】特開2008−105282(P2008−105282A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290592(P2006−290592)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】