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高耐熱半導体装置
説明

高耐熱半導体装置

150℃以上の高温で使用するSiCなどのワイドギャップ半導体装置において、ワイドギャップ半導体素子の絶縁性を改善し、高耐電圧のワイドギャップ半導体装置を得るために、ワイドギャップ半導体素子の外面を合成高分子化合物で被覆する前記合成高分子化合物は、シロキサン(Si−O−Si結合体)による橋かけ構造を有する1種以上の有機珪素ポリマーAと、シロキサンによる線状連結構造を有する1種以上の有機珪素ポリマーBとをシロキサン結合により連結させた有機珪素ポリマーC同士を、付加反応により生成される共有結合で連結させて三次元の立体構造に形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐熱性を有する高耐電圧ワイドギャップ半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(以下、SiCと記す)等のワイドギャップ半導体材料はシリコン(以下、Siと記す)に比べて、エネルギーギャップが大きく絶縁破壊電界強度も約1桁大きい等の優れた物理特性を有している。そのためSiCは、高耐熱かつ高耐電圧のパワー半導体装置に用いるのに好適な半導体材料として注目されている。
SiCを用いた従来例の高耐熱・高耐電圧のパワー半導体装置の例としては、以下に示すSiCダイオード素子を用いたものが、2001年の国際学会論文集「Proceedings of 2001 International Symposium on Power Semiconductor Devices & IC’s」の27頁から30頁(以下、先行技術1)に開示されている。
【0003】
このSiCダイオード素子では、SiC基板上に電荷を注入するpn接合をエピタキシャル成長技術によるエピタキシャル膜で形成している。基板の端部領域のエピタキシャル膜をメサエッチングで除去した後、電界を緩和するターミネーション部をイオン打ち込みで形成している。具体的には、深さ約1μmのメサエッチング処理で厚さ0.7μmのp型エピタキシャル層を除去し、厚さ0.4μmの二酸化シリコンなどの無機物膜でパッシベーション膜を形成している。この従来例のSiCダイオード素子は12kV〜19kVの高耐電圧を有する。
【0004】
図6は前記従来例のSiCダイオード素子を用いてSiCダイオード装置を構成した場合のパッケージの断面図である。図において、下面にカソード端子92を有する金属製の支持体93の上面にSiCのダイオード素子90がそのカソード電極97を接して取付けられている。支持体93にはさらに、絶縁物12を介して絶縁を保ちつつ支持体93を貫通するアノード端子91が設けられている。アノード端子91はリード線8で、SiCダイオード素子90のアノード電極96に接続されている。支持体93の上面には、ダイオード素子90を覆うように金属製のキャップ94が設けられ、ダイオード素子90を含む空間95を密封している。この空間95には六弗化硫黄ガスが充填されている。六弗化硫黄ガスを充填する理由は次の通りである。アノード電極96と、パッシベーション膜98で被覆されていない露出側面90aとの間は、沿面距離が短いので耐電圧を高くすることができない。
【0005】
この耐電圧を高くするために、絶縁用ガスとして窒素ガスなどの不活性ガスやアルゴンなどの希ガスを用いることも考えられる。しかしこれらのガスは最大絶縁破壊電界が低いために、高電圧の印加時にガス中で放電を起こし、SiCダイオード素子90そのものや、二酸化シリコンなどのパッシベーション膜98が破壊されてしまう。そこで耐電圧を高くするために、150℃程度の高温でも極めて安定な六弗化硫黄ガスをパッケージ内に充填して放電による絶縁破壊を防ぐようにしている。
【特許文献1】特許第3395456号公報
【特許文献2】特許第3409507号公報
【非特許文献1】「Proceedings of 2001 International Symposium on Power Semiconductor Devices & IC’s」の27頁から30頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
六弗化硫黄ガスは絶縁用ガスとしては現在のところ最も優れた絶縁性を持つが、弗素を含んでいるため、地球温暖化防止の観点から使用を避ける必要がある。特に高い絶縁性を得るためには半導体装置内に充填する六弗化硫黄ガスの圧力を常温で2気圧程度にする必要がある。半導体装置の使用中に温度が上昇すると、この圧力は2気圧以上に高くなるので、半導体装置のパッケージを相当堅牢にしないと爆発やガス漏れの危険性がある。ワイドギャップ半導体装置は500℃近い高温で動作させる場合もあるが、その場合にはガスが熱膨張しガス圧は相当高くなり、爆発やガス漏れリークの危険性が更に増す。また高温では六弗化硫黄ガスが熱分解し耐電圧が低下するなどの問題もある。
【0007】
六弗化硫黄ガス以外の物質で優れた絶縁性を有する従来の材料としては、シロキサン(Si−O−Si結合体)の線状構造をもつポリメチルフェニルシロキサンを含む合成高分子化合物や、シロキサンの橋かけ構造をもつポリフェニルシルセスキオキサンを含む合成高分子化合物がある。前者は一般にシリコンゴム(Siゴム)と呼ばれている。温度が150℃以下では、これらの合成高分子化合物の被覆体で半導体素子(半導体チップ)全体を覆うことで高い絶縁性を保つことができる。
【0008】
ポリメチルフェニルシロキサンは耐熱性がそれほど高くないが、Siパワー半導体素子のように接合温度が150℃以下の範囲で使用するものの場合は問題がない。しかしワイドギャップ半導体材料のSiCを用いる半導体素子のように、200℃以上の高温で使用する場合は耐熱性が十分とはいえない。SiC半導体素子の温度が200℃以上になると、ポリメチルフェニルシロキサンの被覆体は柔軟性を失う。また空気中で250℃以上になるとガラス化して完全に堅くなってしまう。そのためSiC半導体素子の温度が室温に戻ると、ポリメチルフェニルシロキサンの被覆体の内部に多数のクラックが発生する。
【0009】
また、ポリメチルフェニルシロキサンで被覆した素子を高温で長時間六弗化硫黄ガスなどの不活性ガス中で動作させると、重量の減少が生じて素子表面近傍でボイドやクラックが発生する。これはポリメチルフェニルシロキサンの側鎖のメチル基やフェニル基が分解して蒸発するためと推察される。ボイドやクラックが発生すると素子の表面保護が不完全になりリーク電流が増大する。さらにクラック発生時に素子のパッシベーション膜を損傷することがあり、その結果としてリーク電流が大幅に増加して半導体素子の破壊に至る場合もある。以上のようにポリメチルフェニルシロキサンは低温では耐熱性が良いが高温ではその機能が失われるという欠点がある。
【0010】
ポリフェニルシルセスキオキサンは耐熱性は優れているが脆く、クラックが入りやすいので厚膜にするのが困難である。ポリフェニルシルセスキオキサンを用いるときは素子表面に数ミクロンの厚さで塗布する。しかし数ミクロンの厚さでは耐電圧が限られており、3kV以上の高耐電圧の半導体装置には用いることができなかった。
【0011】
本発明は、半導体装置を構成する半導体素子を高耐電圧かつ高耐熱の物質で覆った高耐電圧のワイドギャップ半導体装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の半導体装置は、半導体素子、及び前記半導体素子を外部の機器に電気的に接続するための電気接続手段の少なくとも一部分を合成高分子化合物で覆うことを特徴とする。前記合成高分子化合物は、シロキサン(Si−O−Si結合体)による橋かけ構造を有する、ポリフェニルシルセスキオキサン、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリエチルシルセスキオキサン及びポリプロピルシルセスキオキサンの群から選択した少なくとも1つを有する第1の有機珪素ポリマー(以下、有機珪素ポリマーAという)、及び
シロキサンによる線状連結構造を有する、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン及びポリメチルフェニルシロキサンの群から選択した少なくとも1つを有する第2の有機珪素ポリマー(以下、有機珪素ポリマーBという)を含有している。前記有機珪素ポリマーAと前記有機珪素ポリマーBはシロキサン結合により交互に線状に連結されて大型の第3の有機珪素ポリマーを形成している。前記合成高分子化合物は、前記大型の第3の有機珪素ポリマーの複数のものが付加反応により生成される共有結合で立体的に連結されて三次元の立体構造を形成している。
【0013】
有機珪素ポリマーAと有機珪素ポリマーBとは交互にシロキサン結合により線状に連結されて、分子量が2万から80万の大型の第3の有機珪素ポリマーを構成している。この第3の有機珪素ポリマーの複数のものがアルキレン基で連結されているのがより好ましい。
【0014】
シロキサンの橋かけ構造を有する有機珪素ポリマーAは電気絶縁性と耐熱性に優れ、高耐電圧と高耐熱性を有しているが流動性は非常に悪い。
本発明によると、有機珪素ポリマーAを、シロキサンの線状連結構造を有する有機珪素ポリマーBを介して交互に線状に連結する。これにより、有機珪素ポリマーBが備えている柔軟性を失うことなく、有機珪素ポリマーAの優れた耐熱性を保持しつつ、高耐熱且つ高耐電圧という2つの特性が両立する合成高分子化合物を得ることができる。耐熱性をより高くするには有機珪素ポリマーAの分子量を大きくすると良いが、その場合柔軟性が低くなる。また、柔軟性を高くするには有機ポリマーBの分子量を大きくすると良いが、その場合耐熱性が低くなる。有機珪素ポリマーAの好ましい分子量は千から10万であり、有機珪素ポリマーBの好ましい分子量は5千から20万である。有機珪素ポリマーAの分子量は有機珪素ポリマーBの分子量よりも小さくするのが好ましい。
【0015】
本発明における合成高分子化合物は、結合のほとんどがシロキサン結合を有していることから、前記のように高い絶縁性すなわち高耐電圧性能を有する。本発明の合成高分子化合物は、ワイドギャップ半導体素子のパッシベーション膜として使用される二酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機物膜との親和性が極めてよく、パッシベーション膜の表面に強固に付着する。さらにSiCやGaNなどのワイドギャップ半導体そのものとも親和性が極めてよく半導体素子の表面に強固に付着して密封するすぐれた接着性を有する。
このすぐれた接着性を有する合成高分子化合物で被覆して密封したワイドギャップ半導体素子を有する半導体装置は高い耐湿性を有するので、信頼性の高い半導体装置を実現できる。この合成高分子化合物はSiCやGaNなどのワイドギャップ半導体との親和性が極めてよい。例えばパッシベーション膜にピンホール等の欠陥部が存在してワイドギャップ半導体が露出している場合でも、合成高分子化合物がワイドギャップ半導体素子の表面を直接保護するパッシベーション膜として働くので高い信頼性を実現できる。
【0016】
有機珪素ポリマーBはSiゴムとほとんど同じ分子構造を有する。従ってSiゴムで従来から実証されているように、パッシベーション膜用の無機物、銅、アルミニューム及びステンレス等の各種金属、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びフェノール樹脂などの各種樹脂及び各種ガラス等との接着性が極めて良好でありこれらに強固に付着する。このため、この合成高分子化合物の表面保護膜は半導体素子の金属電極や電気接続手段、支持体等にも強固にかつすきまなく密着して付着する。そのため高い耐湿性が得られ、高い信頼性と高い耐電圧性能を有する半導体装置を実現できる。
【0017】
本発明における合成高分子化合物は、大部分がシロキサン構造を有するため、紫外線および可視光線に対する透光性が高い。このため合成高分子化合物を半導体素子や電気接続手段へ塗布したときの状況を目視で観察することができる。例えば目視により気泡やボイド等が存在しないことを確かめながら効率的に塗布作業を進めることができる。
本発明における合成高分子化合物を用いたワイドギャップ発光パワー半導体装置やワイドギャップ光結合パワー半導体装置においては、高温においても半導体素子を保護できる高温高耐圧機能と、高温においても光をよく透過する高効率光結合機能の両方を同時に満たすことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の高耐熱ワイドギャップ半導体装置は、半導体素子の上面と側面を、合成高分子化合物で覆う構成を有する。前記合成高分子化合物は、少なくともシロキサン(Si−O−Si結合体)による橋かけ構造を有するポリシルセスキオキサンを主成分とする有機珪素ポリマーAと、シロキサンによる線状連結構造を有する有機珪素ポリマーBとを含有している。有機珪素ポリマーAと有機珪素ポリマーBがシロキサン結合により交互に線状に連結して分子量が2万から80万の大型有機珪素ポリマーを構成している。
【0019】
この大型有機珪素ポリマー同士が付加反応により共有結合で連結されて三次元の立体構造を有する合成高分子化合物が生成される。本構成の合成高分子化合物はほとんどがシロキサン結合を有するので高温でも高耐電圧性を有するとともに、ワイドギャップ半導体およびそのパッシベーション膜として使用される二酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機物膜との親和性が極めてよい。そのため合成高分子化合物が半導体装置の素子の表面に強固に付着するので半導体装置の高い耐湿性を達成できるとともに高い温度で動作させる場合に特に信頼性の高い高耐電圧性を実現できる。
【0020】
本発明の他の観点の半導体装置は、熱伝導性の良い基板上に取付けられた少なくとも1つの半導体素子、前記半導体素子を外部の機器に電気的に接続するための電気接続部を有する。前記半導体素子と前記電気接続部の少なくとも1部は、シロキサン(Si−O−Si結合体)による橋かけ構造を有する少なくとも1種の第1の有機珪素ポリマーと、シロキサンによる線状連結構造を有する少なくとも1種の第2の有機珪素ポリマーとを、シロキサン結合により連結させた第3の有機珪素ポリマーの複数のものを、付加反応により生成される共有結合で連結し、三次元の立体構造に形成した化合物を含有する第1の合成高分子化合物で被覆されている。
【0021】
前記半導体装置は、前記合成高分子化合物で被覆した半導体素子及び電気接続部を収納するように前記基板に設けられた硬質樹脂製の容器を有する。前記容器内の隙間にはポリフェニルシルセスキオキサンとポリジメチルシロキサンを主成分とする第2の合成高分子化合物を充填している。前記容器には、前記電気接続部につながり前記容器の外側へ導出された外部接続端子が設けられている。
【0022】
本発明によれば、少なくとも1つの半導体素子を容器中に収納することにより、前記半導体素子は外部環境からの影響をうけにくい。半導体素子を合成高分子化合物で被覆することにより高い耐電圧が得られる。また容器内の隙間に比較的やわらかい合成高分子化合物を充填することにより、容器に外部からショックが加わった場合でも、内部の半導体素子や電気接続導体などが影響をうけにくい。複数の半導体素子を容器に収納してモジュール化することにより、使用上便利でかつ低コストの半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
[図1]発明の第1実施例のSiCpnダイオード装置の断面図である。
[図2]本発明の第2実施例のSiC−GTOサイリスタ装置の断面図である。
[図3]本発明の第2実施例のSiC−GTOサイリスタ素子の図2の紙面に垂直な面の断面図である。
[図4]本発明の第4実施例の光結合ワイドギャップパワー半導体装置の断面図である。
[図5]本発明の第5実施例のSiC−GTOモジュールの断面図である。
[図6]従来のSiCダイオード装置の断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 カソード領域
2 ドリフト領域
3 アノード領域
4 電界緩和ターミネーション領域
5 パッシベーション膜
6 アノード電極
7 カソード電極
8 リード線
9 アノード端子
10 支持体
11 カソード端子
12 絶縁ガラス
13 SiCダイオード素子
14 金属キャップ
15 窒素などの不活性ガス
16、42、81 被覆体
20 GTOサイリスタ素子
21 カソード領域
22 pベース領域
23 pドリフト層
24 nベース領域
25 アノード領域
27 パッシベーション膜
29 アノード電極
31 ゲート電極
32 カソード電極
34、36 金のリード線
51 GaNnpnバイポーラトランジスタ
52 SiCホトダイオード
53 コレクタ領域
54 ベース領域
55 エミッタ領域
57 パッシベーション膜
60 発光窓
80 受光部
101 銅基板
102 フレーム
105 カバー
116、118 絶縁基板
130、131 被覆体
165 充填材
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の半導体装置の好適な実施例を図1から図5を参照して説明する。各図において、各要素の構成の理解を容易にするために、図示された各要素の寸法は実際の寸法とは対応していない。各実施例において、「半導体装置」とは、半導体素子をパッケージ内に収納し、半導体素子の各電極を、リード線でそれぞれの電極端子に接続したものをいう。
第1実施例
【0026】
本発明の第1実施例の高耐熱半導体装置を図1を参照して説明する。
本発明の第1実施例の半導体装置は、高耐熱かつ高耐電圧のSiC(炭化珪素)pnダイオードである。
図1は、本発明の第1実施例の耐電圧8kVのSiCpnダイオードの断面図である。図1において、SiCダイオード素子13は以下の構成を有する。厚さ約300μmの高不純物濃度のn型のSiCのカソード領域1の上面に厚さ約90μmの低不純物濃度のn型のSiCのドリフト層2が形成されている。カソード領域1の下面にはカソード電極7が形成されている。ドリフト層2の中央領域に、主接合を形成するp型のSiCのアノード領域3が形成されている。
【0027】
アノード領域3には金属のアノード電極6が形成されている。アノード領域3の周囲にはp型の電界緩和領域4が形成されている。アノード領域3及び電界緩和領域4を含むSiCダイオード素子13の上面には、二酸化シリコン層、窒化シリコン層、二酸化シリコン層の順で積層した3層構造の表面保護膜5が形成されている。アノード電極6は、電気接続手段である金のリード線8でアノード端子9の上端9aに接続されている。図1ではリード線8は1本のみ図示されているが、リード線8は、リード線8を流れる電流値が大きい場合はその値に応じて複数のものを並列に接続すればよい。
【0028】
カソード電極7は金属の支持体10に電気的接続を保って取り付けられている。アノード端子9と支持体10は高融点の絶縁ガラス12を介して絶縁を保ちつつ固着されている。支持体10にはカソード端子11が接続されている。アノード端子9とカソード端子11は外部の装置等の配線に接続される。支持体10の上面にはSiCダイオード素子13及びアノード端子9の上端9aを覆うように金属製のキャップ14が設けられ、SiCダイオード素子13を含む空間15を密閉している。空間15内のSiCダイオード素子13及びリード線8の一部を覆うように合成高分子化合物の被覆体16が設けられている。被覆体16は、第1の有機珪素ポリマー(以下、有機珪素ポリマーAという)としてポリフェニルシルセスキオキサンを含有し、第2の有機珪素ポリマー(以下、有機珪素ポリマーBという)としてポリジメチルシロキサンを含有する透明な合成高分子化合物で形成される。空間15内には窒素ガスが封入されている。
【0029】
本実施例のSiCpnダイオードの製作方法の一例を以下に説明する。図1において、あらかじめ製作したSiCダイオード素子13を、金シリコンを含む高温半田を用いて支持体10の上面の所定位置に半田付けする。リードボンデング装置を用いて直径80ミクロンメートルの金線(複数)のリード線8の両端をそれぞれアノード電極6と、アノード端子9の上端9aとに接続する。
次にSiCダイオード素子13の全面、及びリード線8のアノード電極6との接続部近傍を覆うように、前記の合成高分子化合物を塗布し被覆体16を形成する。塗布方法としては、所定の直径の孔を有するノズルから所定量の合成高分子化合物を押し出す方法が適している。
【0030】
合成高分子化合物は、塗布後200℃程度の温度で所定時間保つと、ある程度の柔軟性を有する状態で硬化する。合成高分子化合物の粘度を適切に調節して、これを塗布したとき図1の被覆体16に示すように山状に盛り上がり、SiCダイオード素子13の全体を200μm以上の厚さですきまなく覆うことができるようにする。粘度が高すぎると、塗布したときSiCダイオード素子13と被覆体16との間にすきまができることがある。逆に粘度が低すぎると、山状に盛り上がらず被覆体16の厚さを200μm以上の所望の厚さにすることができない。
最後に窒素雰囲気中で金属キャップ14を支持体10に取り付けて溶接し、内部空間15を窒素ガスで充たしてSiCpnダイオードが完成する。
【0031】
本実施例のSiCpnダイオードのアノード端子9とカソード端子11間に、カソード端子11の電位が高くなるように電圧(逆方向電圧)を印加して測定した逆耐電圧は約8.5kVであった。Siの半導体装置では動作不能である、例えば300℃の高温においても上記の逆耐電圧を維持できた。逆方向の電圧が8kVでのリーク電流密度は5×10−5A/cm以下であった。本実施例のSiCpnダイオードに、250℃の高温雰囲気中で200A/cmの電流密度で電流を流し500時間連続通電試験をしたが、試験終了後の合成高分子化合物の被覆体16にクラックや変形は生じなかった。また白濁などが生じて透明度が悪化することもなかった。
【0032】
通電時の順方向電圧は4.3Vであり、500時間の通電試験の前後でほとんど変化しなかった。500時間の連続通電試験の終了後、300℃の高温雰囲気中で8kVの逆方向電圧を印加してリーク電流を測定したところ、電流密度は3×10−5A/cmであり、通電試験前との差は少なかった。前記の各試験後、半導体装置を分解して目視で観察した。その結果、有機珪素ポリマーAとしてポリフェニルシルセスキオキサンを含有し有機珪素ポリマーBとしてポリジメチルシロキサンを含有する合成高分子化合物の被覆体16がSiCダイオード素子13の電界緩和領域4の表面保護膜5の上だけでなく、SiCダイオード素子13の側面に露出したSiCの層にも強固に付着していることが確認された。なおSiCpnダイオードの動作速度の目安となる逆回復時間は約50ナノ秒であり、前記試験の前後で変化はみられなかった。
【0033】
本発明の第1実施例によれば、SiCダイオード素子13の周囲を、前記有機ポリマーAと前記有機ポリマーBを所定の割合で含有する合成高分子化合物で被覆する。これにより、SiCダイオード素子13を六弗化硫黄ガスの雰囲気中に置いた場合と同等の絶縁性を得ることができる。すなわち地球温暖化に悪影響を与える有害な物質の六弗化硫黄ガスを使用することなく高い耐熱性と高い絶縁性を有するSiCpnダイオードが実現できる。
第2実施例
【0034】
本発明の第2実施例の半導体装置は、耐電圧5kVのSiC−GTOサイリスタ(Gate Turn Off Thyristor)装置であり、図2にその断面図を示す。図3は図2におけるGTOサイリスタ素子20を紙面に垂直な面で切断したセルの一つの断面図である。実際の素子では、図3に示すセルが、図の左右方向に複数個連結されている。図2及び図3において、厚さ約320μmの高不純物濃度のn型SiCのカソード領域21の上面に、厚さ約3μmのp型SiCのバッファー層22を設けている。カソード領域21の下面にカソード電極32が設けられている。バッファー層22の上に厚さ約60μmの低不純物濃度のp型SiCのドリフト層23を設けている。ドリフト層23の中央部に厚さ約2μmのn型のベース領域24とp型のアノード領域25が順次形成されている。
【0035】
n型のベース領域24の周辺にはn型の電界緩和領域26が形成されている。GTOサイリスタ素子20の表面には二酸化シリコン層、窒化シリコン層、二酸化シリコン層の3層構造の表面保護膜27が形成されている。p型のアノード領域25にはアノード電極28が形成されている。このアノード電極28上の左側の領域には2層目のアノード電極29が形成され、右側の領域には絶縁膜30を介してゲート電極31が形成されている。図3に示すように、n型のベース領域24には1層目のゲート電極33が形成され、ゲート電極33は、図示していない接続部でゲート電極31に接続されている。
【0036】
アノード電極29は金のリード線34によりアノード端子35の上端35aに接続されている。ゲート電極31は金のリード線36によりゲート端子37の上端37aに接続されている。リード線34、36及びアノード端子35及びゲート端子37は電気接続手段である。カソード電極32はカソード端子39を有する金属の支持体38に取り付けられている。通常GTOサイリスタ素子20のカソード電極32は金シリコンの高温半田を用いて支持体38に半田付けされる。アノード端子35及びゲート端子37は、それぞれの高融点絶縁ガラス40及び41で支持体38との間の絶縁を保ちつつ支持体38を貫通して固定されている。
GTOサイリスタ素子20の全面、及びリード線34及び36のGTOサイリスタ素子20との接続部近傍を覆うように、合成高分子化合物の被覆体42を塗布する。被覆体42は有機珪素ポリマーAとしてポリメチルシルセスキオキサンを含有し、有機珪素ポリマーBとしてポリメチルフェニルシロキサンを含有する合成高分子化合物である。最後に窒素雰囲気中で金属キャップ43を支持体38に取り付けて溶接することにより内部空間44に窒素ガスが封入されたSiC−GTOサイリスタ装置が完成する。
【0037】
リード線34、36は直径80ミクロンメートルの金線であり、リードボンデング装置を用いてそれぞれアノード電極29とアノード端子35間及びゲート電極31とゲート端子37間に取り付けられる。図2では、リード線34、36はそれぞれ1本づつ図示されているが、リード線34、36は、リード線34、36を流れるそれぞれの電流値に応じて複数のものを並列に接続してもよい。
本第2実施例のSiC−GTOサイリスタ装置において、アノード端子35の電位がカソード端子39よりも高電位になるように順方向に5kV電圧を印加し、ゲート端子37の電位をアノード端子35と同電位にすると、電流が流れないオフ状態が維持され、5kVの耐電圧が得られた。
【0038】
次にこのオフ状態でゲート端子37の電位をアノード端子35よりも低電位にし、アノード端子35からゲート端子37に向けてゲート電流を流すと、SiC−GTOサイリスタ装置はオン状態になり、アノード端子35とカソード端子39間に電流が流れる。さらにオン状態でゲート端子37の電位をアノード端子35よりも高電位にすると、アノード端子35とカソード端子39間に流れている電流がゲート端子37からカソード端子39間に転流し、オフ状態になる。このときのアノード端子35とカソード端子39間の電圧が逆耐電圧である。
【0039】
具体的には、カソード端子39に負の電圧を印加し、ゲート端子37にアノード端子35を基準にしてビルトイン電圧以上の電圧を印加すると、SiC−GTOサイリスタ装置はオンとなる。このときドリフト層23内にカソード領域22から電子が注入されるため、伝導度変調が生じ、オン抵抗が大幅に低下する。SiC−GTOサイリスタがオンした状態において、ゲート端子37の電位をアノード端子35の電位より高くすると、アノード端子35とカソード端子39間を流れる電流の一部がゲート端子37から引き抜かれることになり、GTOサイリスタをオフ状態にすることができる。
【0040】
本第2実施例のSiC−GTOサイリスタ装置の逆耐電圧は約5.8kVであり、250℃の高温雰囲気中でもこの逆耐電圧を維持できた。逆方向電圧が5kVでのリーク電流密度は3×10−4A/cm以下と良好であった。本実施例のSiC−GTOサイリスタ装置について、以下の第1及び第2の動作試験を行った。
第1の動作試験では、本実施例のSiC−GTOサイリスタに200A/cmの電流密度で電流を流しつつ、250℃の高温雰囲気中で200時間の連続動作をさせた。なお従来からあるシリコンのGTOサイリスタでは、素子温度が250℃では動作不可能である。また5kV級のシリコンのGTOサイリスタでは電流密度が200A/cmのものを作ることは困難である。
【0041】
また第2の動作試験では、前記の電流密度で電流を流しつつ、気温80℃、湿度85%の高温高湿度の雰囲気中で200時間の連続動作をさせた。前記第1及び第2の動作試験の終了後このSiC−GTOサイリスタ装置を分解して調べたが合成高分子化合物の被覆体42が変形したりクラックや白濁が生じていなかった。
前記第1の動作試験開始直後のSiC−GTOサイリスタの順方向電圧は4.3Vであった。第1及び第2の動作試験終了後、前記第1の動作試験と同じ条件で順方向電圧を測定したが、その測定値は第1の動作試験開始時の値とほとんど変わらず、その差は測定誤差の範囲内であった。
【0042】
第1及び第2の動作試験終了後に逆方向の電圧5kVを印加したときのリーク電流密度は温度250℃で5×10−4A/cm以下であり、わずかな変化であった。ターンオン時間は0.5マイクロ秒、ターンオフ時間は0.8マイクロ秒である。このスイッチング時間も前記第1及び第2の動作試験の前後で変化はみられなかった。なお本実施例のSiC−GTOサイリスタのターンオン時間及びターンオフ時間は、耐圧6kVの従来のシリコンのGTOサイリスタの約20分の1である。
GTOサイリスタ素子20に塗布した本実施例の合成高分子化合物のGTOサイリスタ素子20等への付着状態について調べたところ、合成高分子化合物は、GTOサイリスタ素子20の電界緩和領域26上の保護膜27及び側面のSiCの露出面にも強固に付着していた。
第3実施例
【0043】
本発明の第3実施例の半導体装置は、光結合ワイドギャップパワー半導体装置であり、図4にその断面図を示す。図において、発光機能を有する主パワー半導体素子としては、耐電圧3kV・電流容量200AのGaN(ガリウムナイトライド)−npnバイポーラトランジスタ51を用いている。受光素子としてはSiC−ホトダイオード52を用いている。SiCホトダイオード52はGaN−npnバイポーラトランジスタ51に対向するように同一パッケージ内に設けられている。
【0044】
図4に示すGaN−npnバイポーラトランジスタ51において、厚さ約300μmの高不純物濃度のn型のGaNコレクタ領域53の上面に厚さ約1.7μmのp型のGaNベース領域54が形成され、その上に厚さ約3μmの高不純物濃度のn型のエミッタ領域55が順次形成されている。GaNコレクタ領域53の下面にはコレクタ電極66が設けられている。GaNベース領域54の周辺のコレクタ領域53内にはn型の電界緩和領域56が形成されている。GaNベース領域54の右端部に金属のベース電極58が設けられている。n型エミッタ領域55の上に、発光窓60を有する金属のエミッタ電極59が設けられている。GaNコレクタ領域53及び電界緩和領域56の上には窒化シリコン層と二酸化シリコン層の2層構造の表面保護膜57が形成されている。
【0045】
ベース電極58は、金のリード線61によりベース端子62に接続されている。エミッタ電極59は、金のリード線63、64によりエミッタ端子65に接続されている。コレクタ電極66はコレクタ端子68を有する金属の支持体67に取り付けられている。リード線61、63、64、73、76及びエミッタ端子65、ベース端子62、コレクタ端子68、アノード端子74及びカソード端子77は電気接続手段である。リード線61、63、64、73、76は、それぞれを流れる電流値に応じて、それぞれ複数の線を並列に接続したものを用いればよい。
【0046】
SiCホトダイオード52は、その受光部80がGaN−npnバイポーラトランジスタ51の発光窓60に対向するようにキャップ70の内側面に窒化アルミニウムなどの絶縁板71を介して接着されている。SiCホトダイオード52のアノード電極72は、金のリード線73により金属のアノード端子74に接続されている。カソード電極75は金のリード線76によりカソード端子77に接続されている。
【0047】
アノード端子74とカソード端子77はそれぞれの外部配線に接続される。アノード端子74及びカソード端子77はキャップ70の貫通孔に高融点絶縁ガラス78、79を介して固着されている。GaN−npnバイポーラトランジスタ51、SiCホトダイオード52、リード線61、63、64、73、76及びベース端子62の端部及びエミッタ端子65の端部を被覆体81で覆っている。被覆体81は有機珪素ポリマーAとしてポリエチルシルセスキオキサンを含有し、有機珪素ポリマーBとしてポリジメチルシロキサンを含有する合成高分子化合物である。
【0048】
本第3実施例の光結合ワイドギャップパワー半導体装置の製作方法の一例を以下に説明する。あらかじめ製作したGaN−npnバイポーラトランジスタ51を金シリコンの高融点半田を用いて支持体67の所定位置に半田付けする。リードボンデング装置を用いて直径80ミクロンメートルの2本の金のリード線63、64でエミッタ電極59とエミッタ端子65を接続する。ベース電極58とベース端子62とを金のリード線61で接続する。硬化後被覆体81となる硬化前の合成高分子化合物の素材をGaN−npnバイポーラトランジスタ素子51を包み込むように厚く塗布する。
【0049】
あらかじめ製作したSiCホトダイオード52を金シリコンの高融点半田を用いて、金属キャップ70の内側面に窒化アルミニウム絶縁板71を介して半田付けする。次にリードボンデング装置を用いて直径80ミクロンメートルの金のリード線73でアノード電極72とアノード端子74を接続する。またカソード電極75を金のリード線76でカソード端子77に接続する。次に硬化前の合成高分子化合物の素材を、SiCホトダイオード52、リード線73、76のSiCホトダイオード52との接続部近傍を包み込むように厚く塗布する。最後に金属キャップ70と支持体67を、SiCホトダイオード52の受光部80がGaN−npnバイポーラトランジスタ51の発光窓60に対向し、且つ両者を包み込んでいる各々の合成高分子化合物の素材が接するように組合わせて、窒素雰囲気中で溶接する。これにより、各々の合成高分子化合物の素材は連結されて一体化し、図4に示す被覆体81の形状になる。その後所定の温度に加熱して合成高分子化合物をある程度の柔軟性を有する状態に硬化させて完成する。
【0050】
第3実施例の光結合ワイドギャップパワー半導体装置の動作の一例を次に示す。まず、GaN−npnバイポーラトランジスタ51のコレクタ端子68の電位をエミッタ端子65よりも高電位にして順方向バイアス状態にする。そしてベース端子62の電位をエミッタ端子65と同電位にすると、電流が流れないオフ状態が維持される。耐電圧は3kVで高耐電圧を実現できた。SiCホトダイオード52はアノード端子74の電位をカソード端子77よりも低電位にして逆方向バイアス状態しておく。
【0051】
オンオフ駆動は次のようにする。ベース端子62の電位をエミッタ端子65の電位よりも高電位にし、ベース端子62からエミッタ端子65に向かうベース電流を流す。これにより、エミッタ電極59から電子が注入されてGaN−npnバイポーラトランジスタ51がオン状態になり、波長が約390〜570nmの間の光50が生じる。この光50はSiCホトダイオード52で受光され、光量に対応した量の光電流がアノード端子74とカソード端子77間を流れる。
【0052】
GaN−npnバイポーラトランジスタ51のオン状態のときに、ベース端子62の電位をエミッタ端子65と同電位か低電位にすると電子の注入が止まり、コレクタ電極66とエミッタ電極59間を流れる電流は遮断され、発光も停止する。SiCホトダイオード52は、光がなくなるので光電流がなくなりオフ状態になる。
【0053】
本実施例のGaN−npnバイポーラトランジスタ51の耐電圧は約3.5kVであり、250℃の高温においてもこの耐電圧を維持できた。3kVでのリーク電流密度は2×10−4A/cm以下と良好であった。また、GaN−npnバイポーラトランジスタ51とSiCホトダイオード52間の絶縁耐圧は5kV以上であり、5kVでのリーク電流は1×10−5A/cm以下であった。温度250℃で連続1000時間の電圧印加試験をした後でも、リーク電流の増加は測定誤差の範囲内の微少な値であった。3kV以上の高耐電圧を有するにもかかわらず150A/cmの高電流密度の電流を流すことができた。また200℃の高温雰囲気中で500時間連続して通電した後でも合成高分子化合物の被覆体81が変形したり、クラックや白濁が生じてはいなかった。
【0054】
また、温度80℃湿度85%の高温高湿度雰囲気中で200時間通電した後でも合成高分子化合物の被覆体81が変形したり、クラックや白濁が生じてはいなかった。温度200℃、電流密度150A/cmで通電時の順方向電圧は5.3Vであり試験前後の変化は測定誤差範囲の小さな値であった。前記の試験後に3kVの導電圧を印加したときのリーク電流密度は250℃で3×10−4A/cm以下であり試験前に比べてほとんど変化がなかった。破断試験をしたところ、有機珪素ポリマーAとしてポリエチルシルセスキオキサンを含有し、有機珪素ポリマーBとしてポリジメチルシロキサンを含有する合成高分子化合物の被覆体81は、GaN−npnバイポーラトランジスタ51の側面に露出したGaNにも強固に付着していることが確認できた。なおターンオン時間は0.09マイクロ秒、ターンオフ時間は0.15マイクロ秒と高速であり、このスイッチング時間にも試験前後の変化はみられなかった。
第4実施例
【0055】
本発明の第4実施例の高耐熱半導体装置は、モールド型のSiC−GTOモジュールであり、1つのパッケージ内にSiC−GTO素子とSiCダイオード素子が組込まれている。図5はその主要部の断面図である。SiC−GTO素子20は第2実施例に記載の耐電圧5kVの素子である。SiCダイオード素子13は耐圧が5kVに設計されている点を除けば第1実施例に記載の素子と同様の構造を有する。
図5において、ニッケルメッキを施した熱伝導性のよい銅基板101の面上に所定の距離を隔てて例えば窒化アルミニウム製の2つの絶縁基板116及び118がそれぞれ高温半田115、117により接着されている。
絶縁基板116には、銅箔のパターンで内部配線120、121及び122が形成されている。内部配線121の上にSiC−GTO素子20のカソード電極32が高温半田により接着されている。SiC−GTO素子20のアノード電極29は電気接続部であるリード線34により、内部配線120に接続されている。またSiC−GTO素子20のゲート電極31は電気接続部であるリード線36により内部配線122に接続されている。
絶縁基板118には、銅箔のパターンで内部配線125及び126が形成されている。内部配線126にSiCダイオード素子13のカソード電極7が高温半田で接着されている。SiCダイオード素子13のアノード電極6は電気接続部であるリード線8により内部配線125に接続されている。
【0056】
SiC−GTO素子20、リード線34、36及び内部配線120、122の大部分を覆うように、第1の合成高分子化合物の樹脂を塗布し被覆体130を形成する。同様にしてSiCダイオード素子13、リード線8及び内部配線125、126の大部分を覆うように、合成高分子化合物の樹脂を塗布し被覆体131を形成する。合成高分子化合物の被覆体130、131は第2実施例と同様のポリメチルシルセスキオキサンとポリメチルフェニルシロキサンを主成分として含有する合成高分子化合物である。被覆体130、131の硬化後、銅基板101を構成要素として含み、銅基板101に取付けてパッケージ(容器又は外囲器)を構成するためのエポキシ樹脂など硬質樹脂製の強固なフレーム102を取付ける。フレーム102の上部には、同じエポキシ樹脂製の強固なカバー105を取付けてパッケージを形成する。
【0057】
銅基板101へのフレーム102及びカバー105の取付け方法は、ねじ等を用いて取付けるか、又は接着剤により接着する。フレーム102及びカバー105は例えば硬化剤としてイミダゾールを用いたエポキシ樹脂であり、ガラス転移温度は約325℃である。カバー105には端子板107が設けられている。端子板107は、めねじを有するアノード端子110、カソード端子111及びゲート端子112と予備端子113を備えている。SiC−GTO素子20のアノード電極29につながる内部配線120は、アルミニウム等の接続線141、及びカバー105と端子板107との間を通る図では見えない導体を経てアノード端子110に接続されている。SiC−GTO素子20のカソード電極32につながる内部配線121は、図示を省略した導体によりカソード端子111に接続されている。SiC−GTO素子20のゲート電極31がつながる内部配線122はアルミニウム等の接続線142及び図では見えない導体を経てゲート端子112に接続されている。
【0058】
SiCダイオード素子13のアノード電極6につながる内部配線125は、アルミニウムの接続線143及び図では見えない導体を経てカソード端子111に接続されている。SiCダイオード素子13のカソード電極7につながる内部配線126は、アルミニウム等の接続線144及び図では見えない導体を経てアノード端子110に接続されている。
銅基板101、フレーム102及びカバー105で形成されるパッケージ内の隙間にはゲル状の第2の合成高分子化合物の充填材165が充填されている。充填材165はポリフェニルシルセスキオキサンとポジジメチルシロキサンを主成分として含有する合成高分子化合物である。充填材165はモジュール160に外部から加わる機械的な衝撃によって内部の素子が振動するのを防ぐ緩衝剤としての機能ももつ。このために、充填材165のポリジメチルシロキサンは合成高分子化合物の被覆体130、131のポリメチルフェニルシロキサンよりも長い分子構造を有する高分子にしてより柔らかくしている。
【0059】
上記の構成により、SiC−GTO素子20とSiCダイオード素子13がパッケージ内で逆並列に接続され、外部に導出されたアノード端子110、カソード端子111及びゲート端子112を備えるモジュール160が得られる。
本実施例のSiC−GTOモジュール160の耐電圧は約5.7kVであり、SiのGTOのモジュールでは動作不能の250℃の高温でも前記の耐電圧を維持できた。5kVでのリーク電流密度は2×10−4A/cm以下であり良好であった。また、3kV以上の高耐圧のSiダイオードでは通電困難な200A/cmの高電流密度の電流を、250℃の高温空気雰囲気中で本実施例のSiC−GTOモジュール160に通電し200時間稼動させたが、被覆体130、131、165にクラックの発生や変形等の異常は生じなかった。温度250℃で電流密度200A/cmでの通電時の順方向電圧は4.3Vであり、200時間稼働前後の変化は測定誤差範囲でありほとんど変化しなかった。
【0060】
また稼働後の5kVでのリーク電流密度も温度250℃で3×10−4A/cm以下であり、ほとんど変化がなかった。また200時間稼働後の5kVでのリーク電流密度も温度250℃で3×10−4A/cm以下であり、前後でほとんど変化がなかった。これは有機珪素ポリマーAとしてポリジメチルシセスキオキサンを含有し有機珪素ポリマーBとしてポリジフェニルメチルシロキサンを含有する合成高分子化合物の被覆体130、131が、SiC−GTO素子やダイオード素子各々のパッシベーション膜だけでなく露出した素子側面にも強固に接着していることによる。SiC−GTO素子20のターンオン時間は0.4マイクロ秒、ターンオフ時間は0.7マイクロ秒である。このターンオフ時間は耐電圧6kVのシリコンGTO素子の1/20以下であるので動作は高速である。このターンオン・ターンオフ時間にも経時変化はみられなかった。
【0061】
以上、第1から第4の4つの実施例を説明したが、本発明はさらに多くの適用範囲あるいは派生構造をカバーするものである。本発明は例えばワイドギャップ半導体素子の、MOSFETや接合FET、SITやIGBT、MOSサイリス等にも適用可能である。更に高周波高出力MESFETやラテラルMOSFETおよび接合FET、HEMTのショットキーダイオード、JBS(Junction Barrier controlled Schottky)ダイオードなどにも適用可能である。
前記各実施例では、SiCやGaNを用いた素子や受光素子の場合のみを述べたが、本発明は他のワイドギャップ半導体材料を用いた素子にも適用できる。特に、ダイヤモンド、ガリュームリンワイドギャップ半導体材料を用いた素子にも有効に適用できる。
また各々の半導体領域の極性のn型をp型に、p型をn型に逆転させた構成の半導体装置にも当然ながら適用できる。
【0062】
有機珪素ポリマーAは、前記のポリフェニルシルセスキオキサン、ポリメチルシルセスキオキサン及びポリエチルシルセスキオキサン以外に、ポリプロピルシルセスキオキサンでもよくこれらポリキオキサンの2種類以上が含有されたものでもよい。更に、有機珪素ポリマーBは前記のポリジメチルシロキサンやポリジフェニルシロキサンだけでなく、ポリジエチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサンでもよく、これらポリシロキサンの2種類以上が含有されたものでもよい。
第1及び第2実施例では金属キャップ43、70を用いたTO型の半導体装置について説明したが、本発明は金属キャップでない高耐熱樹脂キャップの半導体装置にも適用できる。また半導体装置の構成はTO型以外の、スタッド型や平型、高耐熱樹脂を用いたSIP型、Siのパワーモジュールで一般的なモールド型の構成でもよい。第3実施例では光結合半導体装置を例示したが、発光半導体素子のみを有する半導体装置、又は受光半導体素子のみを有する半導体装置にも同様に適用することができる。
【0063】
第4実施例のモールド型のモジュールの合成高分子化合物外囲器は、耐熱性の高い他のエポキシ樹脂、例えば硬化剤としてフェノールノボラックを用いたエポキシ樹脂やケブラー樹脂(商標)などでもよい。また合成高分子化合物充填材に含有される有機珪素ポリマーBのポリジメチルシロキサンはポリジフェニルシロキサンやポリジエチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサンでもよく、これらポリシロキサンの2種類以上が含有されたものでもよい。更に合成高分子化合物充填材は有機珪素ポリマーAを含有せず有機珪素ポリマーBのみを含有するものでもよい。
産業上の利用の可能性
【0064】
本発明は、高耐電圧かつ高耐熱のワイドギャップ半導体装置に利用可能である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子、及び半導体素子を外部の機器に電気的に接続するための電気接続手段の少なくとも一部分を被覆する合成高分子化合物を有する半導体装置において、
前記合成高分子化合物が、シロキサン(Si−O−Si結合体)による橋かけ構造を有する少なくとも1種の第1の有機珪素ポリマーと、シロキサンによる線状連結構造を有する少なくとも1種の第2の有機珪素ポリマーとを、シロキサン結合により連結させた第3の有機珪素ポリマーの複数のものを、付加反応により生成される共有結合で連結し、三次元の立体構造に形成した化合物を含有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記合成高分子化合物は、シロキサンによる橋かけ構造を有する第1の有機珪素ポリマーと、シロキサンによる線状連結構造を有する第2の有機珪素ポリマーとを交互にシロキサン結合により線状に連結させて第3の有機珪素ポリマーを構成し、前記第3の有機珪素ポリマーの複数のものを、付加反応により生成される共有結合で連結して三次元の立体構造に形成した化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体素子がワイドギャップ半導体を用いたSiC半導体素子およびGaN半導体素子のいづれか一方であり、
前記第1の有機珪素ポリマーが、ポリフェニルシルセスキオキサン、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリエチルシルセスキオキサン及びポリプロピルシルセスキオキサンの群から選択した少なくとも1つであり、
前記第2の有機珪素ポリマーが、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン及びポリメチルフェニルシロキサンの群から選択した少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体素子がワイドギャップ半導体受光素子とワイドギャップ半導体発光素子のいづれか一方または両方を組み合わせたものであり、
前記第1の有機珪素ポリマーが、ポリフェニルシルセスキオキサン、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリエチルシルセスキオキサン及びポリプロピルシルセスキオキサンの群から選択した少なくとも1つであり、
前記第2の有機珪素ポリマーが、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン及びポリメチルフェニルシロキサンの群から選択した少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
熱伝導性の良い基板上に取付けられた少なくとも1つの半導体素子、
前記半導体素子を外部の機器に電気的に接続するための電気接続部、
前記半導体素子と前記電気接続部の少なくとも一部を被覆する、シロキサン(Si−O−Si結合体)による橋かけ構造を有する少なくとも1種の第1の有機珪素ポリマーと、シロキサンによる線状連結構造を有する少なくとも1種の第2の有機珪素ポリマーとを、シロキサン結合により連結させた第3の有機珪素ポリマーの複数のものを、付加反応により生成される共有結合で連結し、三次元の立体構造に形成した化合物を含有する第1の合成高分子化合物、
前記合成高分子化合物で被覆した半導体素子及び電気接続部を収納するように前記基板に設けられた硬質樹脂製の容器、
前記容器内の隙間に充填された、ポリフェニルシルセスキオキサンとポリジメチルシロキサンを主成分として含有する第2の合成高分子化合物、及び
前記電気接続部につながり、前記容器の外へ導出された外部接続端子
を有する半導体装置。
【請求項6】
前記第1の合成高分子化合物は、シロキサンによる橋かけ構造を有する第1の有機珪素ポリマーと、シロキサンによる線状連結構造を有する第2の有機珪素ポリマーとを交互にシロキサン結合により線状に連結させて第3の有機珪素ポリマーを構成し、前記第3の有機珪素ポリマーの複数のものを、付加反応により生成される共有結合で連結して三次元の立体構造に形成した化合物を含有することを特徴とする請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体素子がワイドギャップ半導体を用いたSiC半導体素子およびGaN半導体素子のいづれか一方であり、
前記第1の有機珪素ポリマーが、ポリフェニルシルセスキオキサン、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリエチルシルセスキオキサン及びポリプロピルシルセスキオキサンの群から選択した少なくとも1つであり、
前記第2の有機珪素ポリマーが、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン及びポリメチルフェニルシロキサンの群から選択した少なくとも1つであることを特徴とする請求項5記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体素子が、SiC−GTO素子とSiCダイオード素子であり、前記容器内で前記電気接続部により逆並列に接続されていることを特徴とする請求項5記載の半導体装置。

【国際公開番号】WO2005/013361
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【発行日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512473(P2005−512473)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010315
【国際出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】