説明

高耐熱変形性および改良された表面特性を有するポリカーボネートブレンド

【課題】高い耐熱変形性を有し、かつ、金属への改良された付着性を本質的に有し、そのため前処理をまったく必要としないポリカーボネート組成物を開発する。
【解決手段】ビスフェノールAおよびビスフェノールTMCを含有するコポリカーボネートと、特定のポリオレフィンまたは官能化ポリオレフィンを含有する組成物。また、該組成物から得られる成形品および押出成形品の製造方法、該ポリカーボネートを含有し、少なくとも片面に別の層(好ましくは金属層)を有する支持体を具備する多層製品また、該多層製品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2009年12月12日に出願された独国特許出願第102009058099.9号の利益を主張する。全ての有用な目的のために、該ドイツ国特許出願全体は本願明細書の一部を成す。
【0002】
本発明は、構成単位としてビスフェノールAおよびビスフェノールTMCを含有するコポリカーボネートと、特定のポリオレフィンまたは官能化ポリオレフィンとを含有する組成物に関する。また、本発明は、該組成物から得られる成形品、射出成形部品、並びに押出成形品に関し、並びに、該成形品および該押出成形品の製造方法にも関する。さらに、本発明は、本発明によるポリカーボネートを含有する支持体(該支持体は、少なくとも片面に別の層(好ましくは金属層)を具有する)を具備する多層製品に関し、また、該多層製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリカーボネートの高い耐熱変形性により、ポリカーボネートは、とりわけ、高い熱負荷が要求される領域において使用されている。特別なコポリカーボネート(例えば、ビスフェノールAおよびビスフェノールTMC(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン)等に基づくコポリカーボネート等)を用いる場合、耐熱変形性をさらに改良させることができる。したがって、このようなポリカーボネートは、比較的高い熱負荷にさらされるレンズ、レフレクター、ランプカバーおよびランプハウジング等の製造に適している。
【0004】
これらの物質は、良好な加工性と良好な機械的性質に関する要求に加えて、例えば、得られる射出成形品/押出成形品の良好な表面品質と、金属への良好な接着性等の更なる要求をも満たさなければならない。
【0005】
使用するビスフェノールと、ホモ-およびコポリカーボネートの分子量を適当に調整することにより、耐熱変形性および機械的性質を幅広い範囲で変化させることができる。しかしながら、ある種の用途においては、金属に対する付着性を更に改良させることが要求されている。特にレフレクター用途においては、このように金属に対する良好な付着性が不可欠である。
【0006】
ある状況では、プラズマ前処理はポリマーの表面特性を変化させることができる。これらの方法は、例えば、フリードリッヒ他著「金属被覆プラスチック 第5巻および第6巻:原理と応用態様」、およびH.グリューワルド他著「表面技術およびコーティング技術(In Surface and Coating Technology)」第111巻(1999年)第287頁〜第296頁に記載されている。しかしながら、プラスチックの表面処理は、より大きな技術的努力を必要とすると共に、プラスチック表面に損傷を及ぼすこともある。
【0007】
ポリマーへ金属を塗布することは、種々の方法、例えば蒸着法またはスパッター法などでおこなわれている。該方法の詳細は、例えば、「真空めっき(Vakuumbeschichtung)」第1巻〜第5巻、H.フレイ著、VDI-バーラグ(Verlag)社(ドュッセルドルフ)、1995年、または「表面技術および薄膜技術(Oberflachen- und Dunnschicht-Technologie)」第1部、R.A.へファー、シュプリンガー・バーグ社、1987年に開示されている。
【0008】
ビスフェノールAおよびビスフェノールTMCから得られるポリカーボネートは、バイエルマテリアルサイエンス社製の商品名「エイペック(Apec)」(登録商標)として市販されている。
【0009】
先行技術において、高い耐熱変形性を有するポリオレフィンを含有する組成物が、独国特許出願公開第4009759号A1明細書に開示されている。しかしながら、該発明は、金属に対する接着性を改良した組成物に関する。金属に対して改良された接着性は、特定のポリオレフィンと特定のポリカーボネートを組合せることによってのみ、達成することが出来る。
【0010】
欧州特許出願公開第362646号A2明細書において、耐熱変形性を有するポリカーボネートとエラストマーの組成物が開示されている。しかしながら、当業者にとっては、該明細書から、どの組成物(特にどの特定のポリオレフィン)が金属に対する接着性の改良を導いているのか明らかでない。
【0011】
欧州特許出願公開第385086号A2明細書において、高い耐熱変形性を有するポリカーボネートとポリエチレンテレフタレートの混合物が開示されている。一方で、本出願は、別の組成に関するものである。
【0012】
欧州特許出願公開第415066号A2明細書において、高い耐熱変形性を有するポリカーボネートとポリウレタンおよびビニルポリマーの混合物が開示されている。しかしながら、該出願は、異なる性質を示す組成物に関連する。
【0013】
欧州特許出願公開第722984号A2明細書において、高い耐熱変形性を有するポリカーボネートと、アクリレートおよびエポキシ官能化成分の混合物が開示されている。しかしながら、これらは表面特性、特に、金属への付着性に関する改良がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許出願公開第4009759号A1明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第362646号A2明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第385086号A2明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第415066号A2明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第722984号A2明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】フリードリッヒ他著「金属被覆プラスチック 第5巻および第6巻:原理と応用態様」
【非特許文献2】H.グリューワルド他著「表面技術およびコーティング技術(In Surface and Coating Technology)」第111巻(1999年)第287頁〜第296頁
【非特許文献3】「真空めっき(Vakuumbeschichtung)」第1巻〜第5巻、H.フレイ著、VDI-バーラグ(Verlag)社(ドュッセルドルフ)、1995年
【非特許文献4】「表面技術および薄膜技術(Oberflachen- und Dunnschicht-Technologie)」第1部、R.A.へファー、シュプリンガー・バーグ社、1987年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、先行技術から抜け出し、高い耐熱変形性を有し、かつ、金属への改良された付着性を本質的に有し、そのため前処理をまったく必要としないポリカーボネート組成物を開発することが目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による1つの実施態様は、以下の成分A)および成分B)を含有する組成物である:
A)成分Aと成分B(ただし、成分Bは、成分B1、成分B2および成分B3からなる群から選択される1種または複数種の成分である)の重量部合計に基づき、高い耐熱変形性を有し、以下の化学式(1)で表される1種または複数種の脂環式ビスフェノールに基づくポリカーボネート82〜99.5重量部、
【0018】
【化1】

[式中、
R1およびR2は、相互に独立して、水素、ハロゲン、C1〜C8-アルキル、C5〜C6-シクロアルキル、フェニル、またはC7〜C12アラルキルであり、
nは、4〜7の整数であり、
R3およびR4は、X毎に独立して選択可能であり、相互に独立して、水素またはC1〜C6-アルキルであり、および
Xは、少なくとも1つのX原子においてR3およびR4が共にアルキルを示すという条件で炭素である;および、
B)成分Aと成分B(ただし、成分Bは、成分B1、成分B2および成分B3からなる群から選択される1種または複数種の成分である)の重量部合計に基づき、以下のB1)〜B3)からなる群から選択されるポリオレフィンおよび/またはポリオレフィン誘導体0.5重量部〜18重量部:
B1)130℃〜180℃の範囲のビカット軟化温度、0.5〜30のMVR(230℃/2.16kg)、少なくとも4.5の多分散度、および140℃〜170℃のビカット温度(A50法、50℃/h、10N)を有する、直鎖状の半結晶性ポリプロピレン、
B2)ビニル芳香族(A−ブロック)および主に1,3ジエンの重合により大部分が形成されたブロック(B−ブロック)に基づく、ブロックコポリマー;該ブロックコポリマーは、必要に応じて、少なくとも部分的に酸無水物基で官能化される。
B3)アルキレンコポリマー;
但し、重量部で表される全ての値は、上記組成物中の成分Aおよび成分Bの重量部単位の合計が100となるように標準化されている。
【0019】
本発明における別の実施態様によると、成分Aに記載の耐熱変形性を有するポリカーボネートを含有する本発明における組成物であって、R1およびR2が、相互に独立して、メチル、フェニルまたはHである該組成物が提供される。
【0020】
本発明の別の実施態様によると、成分Aに記載の高い耐熱変形性を示すポリカーボネートがビスフェノールAとビスフェノールTMCのコポリカーボネートである、上記組成物が提供される。
【0021】
本発明の別の実施態様によると、成分B1が1〜15(230℃/2.16kg)のMVRを有する、上記組成物が提供される。
【0022】
本発明の別の実施態様によると、成分Aと成分Bの重量部合計(100重量部)に基づいて、0〜5重量部の添加剤を成分Cとして更に含有する、上記組成物が提供される。
【0023】
本発明の別の実施態様によると、成分Bが、ビニル芳香族(A−ブロック)および主に1,3ジエンの重合により形成されたブロック(B−ブロック)に基づく成分B2に記載のブロックコポリマーである、上記組成物が提供される。
【0024】
本発明による別の実施態様によると、成分B2のブロックコポリマーの少なくとも数個のブロックが酸無水物基で官能化されており、酸無水物の割合が、全ブロックコポリマーに基づいて0.2重量%〜4重量%である、上記組成物。
【0025】
本発明による別の実施態様によると、成分B3のアルキレンコポリマーが必要に応じて官能化されたエチレン/プロピレンゴムまたはエチレン-オクテンコポリマーを含有する、上記組成物が提供される。
【0026】
本発明による更に別の実施態様によると、上記組成物を含有する成形品が提供される。
【0027】
本発明による別の実施態様によると、金属層を有する表面コーティングを具備する上記成形品が提供される。
【0028】
本発明による別の実施態様によると、金属層が20〜500nmの厚さを示す、上記成形品が提供される。
【0029】
本発明による更に別の実施態様によると、上記成形品を具備する動力車、鉄道車両、航空機、水上車両、フィルム、異形材またはハウジングが提供される。
【0030】
本発明による更に別の実施態様は、支持体層の少なくとも1つの面上に、更なる層を有する支持体層からなる多層製品であって、該支持体層が上記組成物を含有する多層製品である。
【0031】
本発明による別の実施態様によると、支持体層上の更なる層が金属層である上記多層製品が提供される。
【0032】
本発明による別の実施態様によると、金属層上に施した保護層を更に具備する上記多層製品が提供される。
【0033】
本発明による更に別の実施態様によると、PECVD法またはプラズマ重合法で保護層を施す工程を含む、上記多層製品の製造方法が提供される。
【0034】
本発明による別の実施態様によると、PECVD法またはプラズマ重合法で、以下のものから成る群から選択される1種または複数種の易揮発性成分から保護層を施す工程を含む、本発明による方法が提供される:ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、およびトリメトキシメチルシラン。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明によると、ビスフェノールAおよびTMCビスフェノールから得られるコポリカーボネートと、特定のポリオレフィン若しくはポリオレフィン誘導体、特に官能化ポリオレフィン若しくはポリオレフィン性のブロックコポリマーとを含有する組成物が金属に対して改良された接着性を示すことを見出した。顕著な疎水性に起因して、ポリオレフィンは金属に対して乏しい接着性を有することが知られているので、このことは特に驚くべきことである。ポリオレフィンまたはポリオレフィン誘導体が、金属に対する付着性と関連して、上記ポリカーボネートの表面特性を改良するであろうことは、予期されなかったことである。さらに、官能化度が非常に小さくても(使用されるポリオレフィンまたはポリオレフィン誘導体に基づき、1〜2重量%)、使用される官能化ポリオレフィンまたはポリオレフィンブロックコポリマーは、金属に対する接着性を驚く程改良する。
【0036】
さらに、驚くべきことに、全てのポリオレフィンではなく、特定のポリオレフィンが表面特性を改良することを見出した。従って、他の官能化ポリオレフィンは金属に対する付着性を改良しない。金属に対する付着性を改良しないか、あるいは高い耐熱変形性を有するポリカーボネートに対して充分な相溶性を示さない、ポレオレフィン様化合物、および/または無水マレイン酸官能化化合物、および/または極性化合物の例としては、例えば、無水マレイン酸官能化アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、一般的なABS系ポリマー、無水マレイン酸官能化ポリスチレン、ポリスチレン−無水マレイン酸コポリマー、無水マレイン酸官能化ポリエチレン、(ポリイソブチレン−alt−マレイミド)−コ−(イソブチレン−alt−無水マレイン酸)、ポリ(イソブチレン−alt−無水マレイン酸)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリイソブチレン−alt−無水マレイン酸、ポリ無水マレイン酸−alt−オクタデセン等である。また、特に驚くべきことに、オレフィン性の性質を示す同様の物質も、金属に対する接着性を著しく改良することが判った。
【0037】
本発明の目的は、改良された表面特性と、特に、金属に対する改良された接着性を有するコポリカーボネートブレンドを開発すること、および成型材料または射出成形体を製造するために、これら特定のコポリマーブレンドを調製するための方法を提供することである。
【0038】
本発明は、以下の成分A)、成分B)および成分C)を含有する組成物であり:
A)いずれの場合も、成分A+成分B(ただし、成分Bは、成分B1、成分B2および/または成分B3の1種または複数種から選択される)の重量部合計に基づき、高い耐熱変形性を有し、以下の化学式(1)で表される1種または複数種の脂環式ビスフェノールに基づくポリカーボネート、82〜99.5重量部、好ましくは85〜99重量部、特に好ましくは90〜99重量部
【0039】
【化2】

[式中、
R1およびR2は、相互に独立して、水素、ハロゲン(好ましくは塩素または臭素)、C1-C8-アルキル、C5-C6-シクロアルキル、フェニル、C7-C12アラルキル、特にメチル、フェニルまたはH、とりわけHであり、
nは、4〜7の整数、好ましくは4または5であり、
R3およびR4は、X毎に独立して選択可能であり、相互に独立して、水素またはC1〜C6-アルキルであり、および
Xは、少なくとも1つのX原子において、R3およびR4が共にアルキルを示すという条件で炭素であり、
ビスフェノールAとビスフェノールTMCから得られるコポリカーボネートが特に好ましい;および、
B)いずれの場合も、成分A+成分B(ただし、成分Bは、成分B1、成分B2および/または成分B3の1種または複数種から選択される)の重量部合計に基づき、以下のB1)〜B3)からなる群から選択される一種または複数種のポリオレフィンおよび/またはポリオレフィン誘導体0.5重量部〜18重量部、好ましくは1〜15重量部、特に好ましくは1〜10重量部、
B1)130℃〜180℃の範囲のビカット軟化温度、0.5〜30のMVR(230℃/2.16kg)および少なくとも4.5の多分散度を有し、好ましくは1〜15のMVR(230℃/2.16kg)、および140℃〜170℃のビカット温度(A50法、50℃/h、10N)および少なくとも4.5の多分散度を有する、直鎖状の半結晶性ポリプロピレン、好ましくは半結晶性のアイソタクチックポリプロピレン、
B2)ビニル芳香族(A−ブロック)および主に1,3ジエンの重合により大部分が形成されたブロック(B−ブロック)に基づく、ブロックコポリマー;なお、該ブロックコポリマーを、少なくとも部分的に、酸無水物基で官能化させてもよい。
B3)アルキレンコポリマー、
C)いずれの場合も、成分Aおよび成分Bの重量部合計に基づき、必要に応じて0〜5重量部、好ましくは0〜2重量部、特に好ましくは0〜1重量部の添加剤、
但し、本明細書において重量部で表される全ての値は、組成物中の成分Aおよび成分Bの重量部単位の合計が100となるように標準化されている。
【0040】
このような組成物は、種々の用途において有利に使用できる。これらの用途としては、例えば、電気/電子分野における用途、例えば、ランプハウジング、ベゼルまたはレフレクターなどが含まれる。さらに、本発明による組成物は、フィルム状またはシート状で使用できる。一般に、これらの組成物は、高い熱安定性と、金属に対する良好な接着性が要求される用途において有利である。
【0041】
成分A
本発明において適当な、成分Aにおけるポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは、文献において既知であるか、あるいは文献において既知の方法により調製することができる。
【0042】
一般に、本発明による組成物において使用される(コ)ポリカーボネートは、2000〜200000、好ましくは3000〜150000、特に5000〜100000、就中特に好ましくは8000〜80000、とりわけ、12000〜70000の平均分子量(重量平均)を有する(ポリカーボネートで較正したGPCにより決定した)。
【0043】
さらに好ましくは、この範囲内において、それらは、16000〜40000g/molの重量平均分子量(M)を有する。
【0044】
高い耐熱変形性を有する成分A)のポリカーボネートは、式(1)で表されるビスフェノールと、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)および/または以下の既知のビスフェノールとの混合物から調製してもよい:例えば、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン。0〜80モル%のビスフェノールAを含有する混合物、特に0〜70モル%のビスフェノールAを含有する混合物が好ましく使用される。混合物が100モル%となるように、残余に式(1)で表されるビスフェノールを添加する。ジフェノールを単独で使用してもよく、これらの相互混合物として使用してもよい。またこれらには、ホモポリカーボネートとコポリカーボネートが含まれる。ホモポリカーボネートの場合、ジフェノール1つだけが使用され、コポリカーボネートの場合、複数種のジフェノールが使用される。もちろん、可能な限り純粋な原料を使用することが望ましいが、他の化学薬品および合成に添加される助剤と同様に、ジフェノール自身の合成、処理および貯蔵に起因する不純物を含有するジフェノールを使用してもよい。
【0045】
本発明による組成物に関するポリカーボネートを調製するために、例えば以下の文献を参照できる:シュネル著「ポリカーボネートの化学と物理」、ポリマーレビュー、第9巻、インターサイエンスパブリッシャーズ(ニューヨーク、ロンドン、シドニー)1964年;D.C.プレボリセク、B.T.デボナおよびY.ケステン(ニュージャージー州07960、モーリスタウンのアライド化学、研究センター所属)著「ポリ(エステル)カーボネートコポリマーの合成」ポリマーサイエンス、高分子化学版、第19巻、第75頁〜第90頁(1980年);D.フライタック、U.グリゴ、P.R.ミューラー、N.ノイバートン(バイエルAG社)著「ポリカーボネート」、「高分子化学・工学百科事典」、第11巻、第2版、1988年、第648頁〜第718頁、およびDr.U.グリゴ、Dr.K.キルヒャーおよびDr.P.R.ミューラー著「ポリカーボネート(Polycarbonates)」、ベッカー/ブラウン、プラスチックハンドブック(Kunststoff-Handbuch)、第3/1巻、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエステル、セルロースエステル、カールハンサーバーグ社(ミュンヘン、ウイーン)、1992年、第117頁〜第299頁。好ましくは、ポリカーボネートの調製は、界面法または溶融エステル交換法によりおこなわれ、まず、界面法の例などで記述されている。
【0046】
さらに、本発明によるポリカーボネートは、既知の溶融状態を利用するポリカーボネート法、いわゆる溶融エステル交換法により、ジアリールカーボネートとジフェノールから調製できる(このことは、例えば、国際特許出願公開第01/05866号明細書および同01/05867号明細書に記載されている)。さらに、エステル交換法(アセテート法およびフェニルエステル法)は、例えば、以下の明細書に記載されている:米国特許第3494885号明細書、同4386186号明細書、同4661580号明細書、同U 4680371号明細書および同4680372号明細書、並びに欧州特許出願公開第26120号A明細書、同26121号A明細書、同26684号A明細書、同28030号A明細書、同39845号A明細書、同39845号A明細書、同91602号A明細書、同97970号A明細書、同79075号A明細書、同146887号A明細書、同156103号A明細書、同234913号A明細書および同240301号A明細書、並びに独国特許出願公開第1495626号A明細書および同2232977号A明細書。
【0047】
ジアリールカーボネートは、以下の式(2)および式(VII)で表される炭酸ジエステル:
【0048】
【化3】

【0049】
【化4】

(式中、R、R'およびR''は、相互に独立して、H、必要に応じて枝分かれした、C1-C34-アルキル、C1-C34-環状アルキル、C7-C34-アルカリールまたはC6-C34-アリールまたはC6-C34アリールオキシであり)であり、例えば、ジフェニルカーボネート、ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ-ブチルフェニルカーボネート、イソブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ-イソブチルフェニルカーボネート、tert-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ-tert-ブチルフェニルカーボネート、n-ペンチルフェニルフェニルカーボネート、ジ-(n-ペンチルフェニル)カーボネート、n-ヘキシルフェニルフェニルカーボネート、ジ-(n-ヘキシルフェニル)カーボネート、シクロヘキシルフェニルフェニルカーボネート、ジ-シクロヘキシルフェニルカーボネート、フェニルフェノールフェニルカーボネート、ジ-フェニルフェノールカーボネート、イソオクチルフェニルフェニルカーボネート、ジ-イソオクチルフェニルカーボネート、n-ノニルフェニルフェニルカーボネート、ジ(n-ノニルフェニル)カーボネート、クミルフェニルフェニルカーボネート、ジ-クミルフェニルカーボネート、ナフチルフェニルフェニルカーボネート、ジ-ナフチルフェニルカーボネート、ジ-tert-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(ジ-tert-ブチルフェニル)カーボネート、ジクミルフェニルフェニルカーボネート、ジ(ジクミルフェニル)カーボネート、4-フェノキシフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-フェノキシフェニル)カーボネート、3-ペンタデシルフェニルフェニルカーボネート、ジ(3-ペンタデシルフェニル)カーボネート、トリチルフェニルフェニルカーボネート、ジ-トリチルフェニルカーボネート、好ましくは、ジフェニルカーボネート、tert-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ-tert-ブチルフェニルカーボネート、フェニルフェノールフェニルカーボネート、ジ-フェニルフェノールカーボネート、クミルフェニルフェニルカーボネート、ジクミルフェニルカーボネート、特に好ましくは、ジフェニルカーボネート。
【0050】
3以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する、使用される化合物の例としては以下のものが含まれる:例えば、フロログルシノール、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプト-2-エン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリ(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン。
【0051】
別の三官能性化合物の例としては、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌルおよび3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロインドールである。
【0052】
好ましい枝分れ剤は、3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロインドールおよび1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタンである。
【0053】
相界面重縮合法の場合、単官能性の連鎖停止剤、例えば、フェノールまたはアルキルフェノール、特にフェノール、p-tert-ブチルフェノール、イソオクチルフェノールおよびクミルフェノール、これらのクロロ炭酸エステルまたはモノカルボン酸の酸塩化物、あるいはこれら連鎖停止剤の混合物が、分子量を制限するために必要である。これらは、ビスフェノラート(または複数種のビスフェノラート)と共に反応へ添加されるか、または合成における任意の時(ただし、ホスゲンまたはクロロ炭酸末端基が反応混合物中に存在する場合)に添加されるか、あるいは、酸塩化物およびクロロ炭酸エステルが連鎖停止剤として使用される場合、生成するポリマー中に十分量のフェノール性末端基が存在する場合に添加される。しかしながら、好ましくは、連鎖停止剤(または複数種の連鎖停止剤)はホスゲン化の後であって、ホスゲンがもはや存在せず、触媒が計量添加されていない時点で添加されるか、または触媒が添加される前に計量添加されるか、触媒と共にまたは触媒添加と同時に添加される。
【0054】
本発明によるポリカーボネートまたはコポリカーボネートを調製するためのジフェノールは、フェノール性末端基を有するポリマーまたは凝縮物であってもよいので、本発明において、ブロック構造を有するポリカーボネートまたはコポリカーボネートも含まれる。
【0055】
高い耐熱変形性を有する成分Aのコポリカーボネート例としては、バイエルマテリアルサイエンス社製の商品名「エイペック(Apec)」(登録商標)で知られている。
【0056】
成分B
成分Bは、以下の1種または複数種を含有する:
B1)直鎖状の半結晶性ポリプロピレン、好ましくは半結晶性のアイソタクチックポリプロピレン:130℃〜180℃の範囲のビカット軟化温度、0.5〜30のMVR(230℃/2.16kg)および少なくとも4.5の多分散度を有し、好ましくは1〜15のMVR(230℃/2.16kg)、140℃〜170℃のビカット温度(A50法、50℃/h、10N)および少なくとも4.5の多分散度を有する。
B2)ブロックコポリマー:該ブロックコポリマーは、ビニル芳香族(A−ブロック)(好ましくはスチレン)と、主に1,3ジエンの重合により大部分が形成されたブロック(B−ブロック)、好ましくはブチレン、イソブチレン、エチレン−ブチレンコポリマーブロック、エチレン−プロピレンコブロックまたはイソプレン単位に基づく。本発明においては、ホモポリマーおよびコポリマーブロックを使用できる。得られるブロックコポリマーは、大部分または完全に水素化されなければならない同一または異なるBブロックを含有してもよい。ブロックコポリマーは直鎖状のA-B-A構造を有してもよい。放射状形態および星形形態のブロックコポリマー、および直鎖状のマルチブロックコポリマーであってもよい。A-B型のジブロックコポリマーも含まれる。上述の全てのポリマーを単独で使用してもよく、混合物として使用してもよい。スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン等のトリブロックコポリマー、スチレン−エチレン/プロピレン等のジブロックコポリマー、スチレン−エチレン/ブチレンなどのジブロックコポリマーが好ましい;および/または成分B2)のブロックコポリマーにおいて、少なくとも数個のブロック(好ましくはゴムブロック)は、酸無水物基で官能化される(好ましくは無水マレイン酸基で官能化される)。酸無水物基の割合は、ブロックコポリマーの全量に基づいて、好ましくは0.2重量%〜4重量%の範囲である。特に好ましくは、酸無水物基の割合は、ブロックコポリマーの全量に基づいて、0.5重量%〜3重量%の範囲である。
B3)アルキレンコポリマー:例えば、例えば、エチレン/プロピレンゴムまたはエチレン−オクテンコポリマーなど、特に好ましい実施態様においては、無水マレイン酸で官能化されている。官能化度は、好ましくは1〜4%である。
【0057】
成分B1、B2およびB3において市販されている材料の例としては、以下のものが含まれる:
− 無水マレイン酸官能化エチレンコポリマー:例えば、エクソンモービル化学社製の、エクセラー(Exxelor)(登録商標)VA1801、エクセラー(登録商標)VA1803およびエクセラー(登録商標)VA1840など。
− スチレンおよびエチレン/ブチレンに基づく、直鎖状で官能化されたトリブロックコポリマー:例えば、クレイトン・ポリマーズ社製の、クレイトン(Kraton)(登録商標)FG1901Xおよびクレイトン(登録商標)FG1924Xなど。
− 直鎖状のトリブロックコポリマー:例えば、クレイトン・ポリマーズ社製の、クレイトン(登録商標)G1651およびクレイトン(登録商標)G1652など。
− エチレン−オクテンコポリマーに基づくポリオレフィンエラストマー:例えばダウケミカル社製の、エンゲージ(Engage)(登録商標)8411、エンゲージ(登録商標)8440、エンゲージ(登録商標)8842など。
【0058】
ポリプロピレンホモポリマーとしては、例えば、ライオンデルバセル社製の、モップレン(Moplen)(登録商標)HP501Lを挙げることができる。
【0059】
本発明によるポリカーボネート組成物を既知の方法で作り上げ、その後、例えば押出成形または射出成形により、所望の成形品を加工することができる。
【0060】
別の芳香族ポリカーボネート及び/または別の芳香族ポリエステルカーボネートおよび/または別の芳香族ポリエステル、例えばポリブチレンテレフタレートなどを、既知の方法で、本発明による組成物と混合させてもよい。
【0061】
ポリカーボネートと、成分B1、成分B2および/または成分B3とを含有する、本発明による組成物の調製は、常套の混合法を利用しておこなわれ、例えば、コポリカーボネート溶液と、成分B1、成分B2および/または成分B3の適当な溶媒(例えばジクロロメタン、ハロアルカン、ハロ芳香族類、トルエン、クロロベンゼンおよびキシレン)溶液とを混合させることで行なえる。好ましくは、その後、物質の混合物は、押出機により周知の方法で均質化される。好ましくは、溶液の混合物は、溶媒の蒸発処理による既知の方法において、例えば混ぜ合わせるなどして、仕上げられ、続いて押出処理に付される。
【0062】
さらに、組成物を常套の混合装置、例えばスクリュー押出機(例えば、二軸押出機、ZSK押出機)、ニーダー、ブラベンダーミル若しくはバンバリーミルなどで混合させた後、押出処理に付してもよい。押出処理の後、押出物を冷却し微粉砕してもよい。また、各成分を予め混合させ、次いで、残りの出発原料を個別に添加してもよく及び/または予め混合した混合物として添加してもよい。
【0063】
本発明による組成物を既知の方法で仕上げられ、その後、例えば押出成形、共押出成形、射出成形または押出ブロー成形により、所望の成形品を加工してもよい。
【0064】
成分C
これらの熱可塑性ブラスチックに関する常套の添加剤、例えば充填剤、紫外線安定剤、赤外線安定剤、熱安定剤、帯電防止剤および顔料、着色剤などを、本発明による組成物に常套量で添加してもよい。必要に応じて、表面離型剤、流動性向上剤及び/または難燃剤(例えば、アルキルおよびアリールホスフィットおよびホスフェート、アルキルホスファンおよびアリールホスファン、低分子量カルボン酸エステル、ハロゲン化合物、塩、白墨、石英粉末、ガラス繊維および炭素繊維、顔料およびこれらの混合物。これらの化合物は、例えば国際特許出願第99/55772号明細書、第15頁〜第25頁、および「プラスチック添加剤」R.グッチャーおよびH.ミューラー著、ハンサー出版社、1983年に開示されている)を添加することにより、成形品の離型性、流動特性および/または難燃性を更に改良することができる。
【0065】
適当な添加剤は、例えば、「プラスチック用の添加剤ハンドブック」ジョン・マーフィー著、エルゼビア、オックスフォード、1999年、および「プラスチック添加剤ハンドブック」ハンス・ツバイフェル著、ハンサー社、ミュンヘン、2001年に開示されている。
【0066】
適当な酸化防止剤または熱安定剤の例としては、以下のものが含まれる:アルキル化モノフェノール、アルキルチオメチルフェノール、ヒドロキノンおよびアルキル化ヒドロキノン、トコフェロール、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、アルキリデンビスフェノール、O−、N−およびS−ベンジル化合物、ヒドロキシベンジル化マロネート、芳香族ヒドロキシベンジル化合物、トリアジン化合物、アシルアミノフェノール、β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル、β−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸のエステル、β−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル酢酸のエステル、β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド、適当なチオ相乗剤、二次酸化防止剤、ホスファイト、ホスホナイト、ベンゾフラノンおよびインドリノンである。
【0067】
一般的に、全体または部分的に、必要に応じて置換した芳香族基からなる有機基を含有する、有機ホスファイト、ホスホネートおよびホスファンが好ましい。
【0068】
重金属およびアルカリの中和痕跡用の錯化剤は、o/m−リン酸、完全にもしくは部分的にエステル化されたホスフェートまたはホスファイトである。
【0069】
適当な光安定剤(紫外線吸収剤)は、2-(2'-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン、置換および非置換安息香酸のエステル、アクリレート、立体障害アミン、オキサミド、2-(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジンまたは置換ヒドロキシアルコキシフェニル、1,3,5−トリアゾール、置換ベンゾトリアゾール、例えば2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-tert-ブチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-アミル-フェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-3'-(3",4",5",6"-テトラヒドロフタルイミドエチル)-5'-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、および2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]が好ましい。
【0070】
単独のポリプロピレングリコール、あるいは例えば、安定剤としてのスルホンまたはスルホンアミドと組合せたポリプロピレングリコールを、ガンマ線による損傷を防ぐために使用してもよい。
【0071】
これらの安定剤および他の安定剤は、単独または組合せて使用され、記載された条件でポリマーに添加される。
【0072】
さらに、加工助剤、例えば離形剤(一般に、長鎖脂肪酸の誘導体)を添加してもよい。例えば、ペンタエリスリチルテトラステアレートおよびグリセリルモノステアレートが好ましい。好ましくは、これらは、組成物量に基づいて0.01〜1重量%の量で、単独または組合せて使用できる。
【0073】
適当な難燃性添加剤は、リン酸エステル(すなわち、トリフェニルホスフェート、レゾルシノール二リン酸エステル)、臭素含有化合物(例えば臭素化リン酸エステル、臭素化オリゴカーボネートおよび臭素化ポリカーボネート)、および好ましくは、フッ素化有機スルホン酸の塩である。
【0074】
適当な強靭化剤は、スチレン-アクリロニトリル若しくはメチルメタクリレートでグラフト化させたブタジエンゴム、無水マレイン酸でグラフト化させたエチレン-プロピレンゴム、メチルメタクリレート若しくはスチレン-アクリロニトリルでグラフト化させたエチルおよびブチルアクリレートゴム、浸透シロキサン、およびメチルメタクリレート若しくはスチレンアクリロニトリルでグラフト化させたアクリレート網目構造体である。
【0075】
さらに、着色剤、例えば有機染料若しくは有機顔料または無機顔料、赤外線吸収剤を単独または混合物として添加してもよく、あるいはこれらを、安定剤、ガラス繊維、(中空)ガラス球、無機充填剤と組合せて添加してもよい。
【0076】
成形材料の調製および成形品の製造
既知の方法で各成分を混合させ、常套の装置、例えば内部ニーダー、押出機および二軸装置内で、240℃〜300℃の温度で溶融体を配合させ、該溶融体を押し出すことにより、本発明による熱可塑性成形材料を調製する。
【0077】
各成分の混合は既知の方法でおこなうことができ、連続的および同時に混合してもよく、特に約20℃(室温)またはより高い温度でおこなわれる。
【0078】
また、本発明は、成形材料の調製方法、成形品を製造するための該成形材料の使用、およびこれらの成形品に関する。
【0079】
本発明による成形材料は、あらゆる種類の成形品を製造するために使用できる。これらは、射出成形法、押出成形法およびブロー成型法により製することができる。別の加工形態は、予め製造したシートまたはフィルムを熱成形して成形品を製造することである。
【0080】
本発明によるポリカーボネートおよびコポリカーボネートは、必要に応じて他の熱可塑性樹脂および/または常套の添加剤との混合物として、所望の成形品/押出品を得るために加工でき、既知のポリカーボネートおよびコポリカーボネートが使用されているあらゆる用途に使用できる。本発明による成形材料の特性プロファイルに起因して、該成形材料は、シート、多層構造シート、窓ガラス、拡散スクリーン、ランプカバーまたは光データ記録媒体(例えば音楽CD、CDーR(W)、DVD、DVDーR(W)等)の支持体材料として適当であるが、例えば、電気分野におけるフィルム、車両構造物における成形品、および安全領域におけるシートとしても使用できる。本発明によるポリカーボネートに関する別の可能な用途には、以下の用途が含まれる:
−建物、車両および航空機の様々な領域で必要である安全窓、ならびにヘルメットの視認部。
−フィルムの製造(特にスキー板用)。
−中空成形品(例えば米国特許第2964794号明細書参照)、例えば1〜5ガロンのウォーターボトル。
−例えば、建物(例えば鉄道の駅、温室)および照明装置を被覆するための透明シートの製造(特に、多層構造シート)
−光データ記録媒体の製造
−交通信号および交通標識の製造
−フォームの製造(例えば独国特許第1031507号B明細書参照)
−フィラメントおよびワイヤーの製造(例えば独国特許1137167号B明細書、および独国特許出願公開第1785137号A明細書参照)
−照明用途のための、ガラス繊維を含有する半透明プラスチック(例えば独国特許出願公開第1554020号A明細書参照)
−透明で光散乱する成形品を製造するための、硫酸バリウム、二酸化チタン、および/または酸化ジルコニウムまたは有機ポリマー性アクリレートゴムを含有する半透明プラスチック(欧州特許出願公開第634445号明細書、同269324号明細書)
−例えばレンズホルダーなどの精密射出成形品の製造。この目的のために、総重量に基づき、約1〜10重量%のMoS2を必要に応じて付加的に含有する、ガラス繊維含有ポリカーボネートを使用してもよい。
−光学機器部品、特にカメラ及び映画用カメラのためのレンズを製造するための使用(例えば、独国特許第2701173号A明細書参照)
−光透過媒体、特に光ファイバーケーブル用の光透過媒体(例えば、欧州特許出願公開第0089801号明細書参照)
−導電体、プラグハウジングおよびコネクタ用の電気絶縁材料
−香水、髭および汗に対する耐性を改良させた携帯電話筐体の製造。
−ネットワーク・インターフェース装置
−有機光伝導体用の支持体材料
−ライト(例えば、ヘッドランプ)、拡散スクリーン、または内部レンズの製造
−医療用途、例えば酸素供給器、透析装置
−食品用途、例えばボトル、陶器およびチョコレート型など
−自動車分野における用途、燃料および潤滑剤と接触する部品、および例えばバンパーなど(必要に応じて、ABSまたは適当なゴムとの混合形態を示してもよい)
−スポーツ用品、例えば、スラロームポールまたはスキーブーツのクリップなど
−家庭用品、例えばキッチンシンクおよび郵便受けの枠など
−筐体、例えば配電盤の筐体
−電気歯ブラシ用筺体およびドライヤー用筺体
−洗浄液に対して改良された耐性を示す、洗濯機の透明除き窓
−安全メガネ、光学補正メガネ
−台所における蒸気(特に油の蒸気)に対して改良された耐性を示す、台所用品用のランプカバー
−薬剤用の包装フィルム
−チップボックスおよびチップ支持体
−その他の用途、例えば家畜用のステーブルドアまたは動物用の檻
【0081】
この用途は、本発明によるポリマーから得ることができる成形品および押出成形品に関しても同様に関連する。
【0082】
さらに、本発明は、好ましくは20〜500nm、特に好ましくは40〜300nmの厚さを有する金属層、好ましくはアルミニウム層と、本発明による支持体材料から成る射出成形品に関する。
【0083】
金属層は、例えば、電気化学堆積法(ECD)、物理的気相成長法(PDV)または化学的気相成長法(CVD)またはこれらの方法を適当に組合せた方法を用いて、熱可塑性物質に施される。ポリマー材料を金属被覆する方法は、文献において既知である。
【0084】
特定の実施態様においては、保護層、例えば腐蝕防止用保護層が、金属層に施される。腐蝕を低減させる保護層は、PECVD法(プラズマ化学気相成長法)またはプラズマ重合法で施される。ここで、低沸点先駆物質が被膜を形成するように、低沸点先駆物質、主にシロキサンに基づく低沸点先駆物質を蒸発させ、プラズマ内へ装入し、それにより活性化させる。代表的な先駆物質は、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンおよびトリメトキシメチルシランである。HMDSOが特に好ましい。
【0085】
別の特定の実施態様においては、金属被覆する前に、支持体表面を活性化または洗浄することを目的として、支持体を、適当な前処理、例えばプラズマ前処理等に付してもよい。
【0086】
上述した全ての参照文献の開示内容は、全ての有用な目的のために、本明細書の一部を成すものである。
【0087】
以上の説明は、本発明を具体化する特定の特徴的構造について図示および説明するものであり、種々の態様の改変および構成要素の再配置が、本発明の技術的思想および範囲から逸脱せずになされること、および本発明が、本明細書中に図示され記載される特定の態様に限定されないことは、当業者にとって明らかである。
【実施例1】
【0088】
配合
配合用装置は以下のもので構成される:
−成分の計量装置
−スクリュー径が53mmである、共回転型二軸ニーダー(ワーナー&フライダー社製、ZSK53)
−溶融押出物を成形するためのダイプレート
−押出物を冷却および凝固させるための水槽
−ペレタイザー。
【0089】
以下に記載の混合物、組成物に関する場合であるが、上述した配合装置を用いて調製した。
【0090】
射出成形:
金属被覆特性を調査するために、中心スプルーを有し、155×75×2.3mmの大きさを示す長方形の射出成形シート、あるいは端部スプルーを有し、150×105×3.2mmの大きさを示す長方形の射出成形シートを製造した。溶融温度を300℃〜330℃とし、成型温度を100℃とした。加工する前に、120℃で5時間かけて、真空乾燥オーブン内で各ペレットを乾燥させた。
【0091】
MVR値の決定:溶融体積流量(MVR)を、ISO1133に従い、330℃の温度、および2.16kgの荷重で測定した。
【0092】
金属被覆工程:
試験片を減圧室に導入する前に、粉塵をなくすためにイオン化空気流にさらした。その後、試験片を導入した減圧室を、圧力pが1×10-5mbar以下になるまで排気した。その後、Arガスを、圧力が5×10-3mbarに到達するまで導入した。出力密度を2.9W/cmに設定したDCマグネトロンを使用することにより、200nmの厚みを有するアルミニウム層を試験片に施した。試験片を、コーティング中20rpmの速度で回転する試料台の上に設置した。スパッター時間は12.5分であった。
【0093】
金属付着性試験:
金属被覆工程の後、試験片を減圧室から取りだし、その後1時間以内に、粘着テープ(3M社製、853型、幅19mm)を試験片上に貼り合せた。24時間後、引張り試験機(インストロン5566)を用いて、180°の剥離角および剥離速度V=100mm/分の条件で粘着テープを剥離した。
【0094】
この試験が意図することは、支持体に対するアルミニウムの付着性に関する定量的な情報を得るために、支持体上にアルミニウム層を残存させることなく、アルミニウム層を剥離させる試験である。このようにして、粘着テープを剥離するために必要な力を測定した。剥離力は、粘着テープの幅当りの剥離力を得るために、剥離力を粘着テープの幅で割ったものである。
【0095】
実施例1
ポリカーボネートの調製(成分A)(60モル%のTMC、40モル%のBPA)
40リットルの水中に、1155g(5.1モル)のビスフェノールAと、2344g(7.6モル)の1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンと2220g(55.50モル)の水酸化ナトリウムとを導入し、窒素で不活性な状態にした該溶液へ、40リットルの塩化メチレンを添加する。pH値12.5〜13.5、20℃の条件下で、2495g(25.2モル)のホスゲンを通過させる。pH値が12.5を下回ることを防ぐために、ホスゲン化の間に、30%濃度の水酸化ナトリウム溶液を添加した。ホスゲン化が終了した後、窒素でフラッシングし、1リットルの塩化メチレン中に60g(0.6モル)のフェノールを溶解させた混合溶液を添加し、15分間攪拌する。さらに15分間攪拌をおこない、次いで、14.4g(0.13モル)のN−エチルピペリジンを含有する0.5リットルのジクロロメタンを添加し、1時間かけて攪拌する。水相を分離した後、有機相をリン酸で酸性化し、中性で塩を含まない蒸留水で洗浄した。溶媒をクロロベンゼンで置換した後、生成物を、310℃、回転数138/分、0.2mbarの条件で、ベント押出機から押し出し、ペレタイザーでペレット化した。透明無色のペッレトが得られる。ポリカーボネート樹脂の分子量は、Mw=21300g/モルである(質量平均分子量を、屈折率検出器を用いてBPA−ポリカーボネートに対して較正したゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、室温で測定した)。ISO1133に従い、330℃および2.16kgの荷重で測定した溶融体積流量(MVR)は、約7である。
【0096】
実施例2
連鎖停止剤としてフェノールを使用し、溶融流量(MVR)が8であり、実施例1と同様のやり方で調製した、40モル%のBPAと60モル%のTMCビスフェノール(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン)を含有するコポリカーボネートを、上述の配合押出器を用いて、4%のクレイトン(登録商標;クレイトン・ポリマーズ社製)G1652(スチレン/ゴム比が30/70であり、スチレンおよびエチレン/ブチレン(SEBS)に基づく、直鎖状のトリブロックコポリマー)と混合および配合させる。ISO1133に従った溶融体積流量(MVR)が7であり、ビカット温度が約202℃である不透明なペレットが得られる。射出成型法を用い、上述のようにして長方形のシートを製造した。金属付着性試験の結果、得られた剥離力は7mN/mmであった。
【0097】
実施例3
連鎖停止剤としてフェノールを使用し、溶融流量(MVR)が18であり、実施例1と同様のやり方で調製した(ただし、64モル%のBPAと36モル%のTMCビスフェノールに相当する割合を使用する)、64モル%のBPAと36モル%のTMCビスフェノール(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン)を含有するコポリカーボネートを、上述の配合押出器を用いて、4%のクレイトン(登録商標;クレイトン・ポリマーズ社製)G1652と混合および配合させる。ISO1133に従った溶融体積流量(MVR)が20であり、ビカット温度が約179℃である不透明なペレットが得られる。射出成型法を用い、上述のようにして長方形のシートを製造した。金属付着性試験の結果、得られた剥離力は8.9mN/mmであった。
【0098】
実施例4
連鎖停止剤としてフェノールを使用し、ISO1133に従った溶融流量(MVR)が7であり、実施例1と同様のやり方で調製した、40モル%のBPAと60モル%のTMCビスフェノール(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン)を含有するコポリカーボネートを、上述の配合押出器を用いて、4重量%のエクセラー(登録商標;エクソンモービル化学社製)VA1803(無水マレイン酸官能化非晶質エチレンコポリマー)と混合および配合させる。不透明なペレットが得られる。射出成型法を用い、上述のようにして長方形のシートを製造した。金属付着性試験の結果、得られた剥離力は6mN/mmであった。
【0099】
実施例5
連鎖停止剤としてフェノールを使用し、ISO1133に従った溶融流量(MVR)が18であり、実施例1と同様のやり方で調製した(ただし、64モル%のBPAと36モル%のTMCビスフェノールに相当する割合を使用する)、64モル%のBPAと36モル%のTMCビスフェノール(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン)を含有するコポリカーボネートを、上述の配合押出器を用いて、3重量%のクレイトン(登録商標、クレイトン・ポリマーズ社製)FG1901X(ポリスチレンの割合が30%であり、スチレンおよびエチレン/ブチレンに基づく、直鎖状のトリブロックコポリマー)と混合および配合させる。不透明なペレットが得られる。射出成型法を用い、上述のようにして長方形のシートを製造した。金属付着性試験の結果、得られた剥離力は8.1mN/mmであった。
【0100】
比較例6
連鎖停止剤としてフェノールを使用し、ISO1133に従った溶融流量(MVR)が7であり、実施例1と同様のやり方で調製した、40モル%のBPAと60モル%のTMCビスフェノール(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン)を含有するコポリカーボネートを、他の追加的な成分を用いることなく使用した。射出成型法を用い、上述のようにして長方形のシートを製造した。金属付着性試験の結果、得られた剥離力は4.9mN/mmであった。
【0101】
比較例7
連鎖停止剤としてフェノールを使用し、ISO1133に従った溶融流量(MVR)が18であり、実施例1と同様のやり方で調製した(ただし、64モル%のBPAと36モル%のTMCビスフェノールに相当する割合を使用する)、64モル%のBPAと36モル%のTMCビスフェノール(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン)を含有するコポリカーボネートを、他の追加的な成分を用いることなく使用した。射出成型法を用い、上述のようにして長方形のシートを製造した。金属付着性試験の結果、得られた剥離力は5mN/mmであった。
【0102】
比較例8
連鎖停止剤としてフェノールを使用し、ISO1133に従った溶融流量(MVR)が7であり、実施例1と同様のやり方で調製した、40モル%のBPAと60モル%のTMCビスフェノール(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン)を含有するコポリカーボネートを、上述の配合押出器を用いて、4重量%のポリスチレン/無水マレイン酸コポリマー(アルドリッチ社製;製品番号:426946)と混合および配合させる。不透明なペレットが得られる。射出成型法を用い、上述のようにして長方形のシートを製造した。金属付着性試験の結果、得られた剥離力は5.0mN/mmであった。
【0103】
比較例9
連鎖停止剤としてフェノールを使用し、ISO1133に従った溶融流量(MVR)が7であり、実施例1と同様のやり方で調製した、40モル%のBPAと60モル%のTMCビスフェノール(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン)を含有するコポリカーボネートを、上述の配合押出器を用いて、4重量%のポリ(イソブチレン-alt-マレイミド)-co-(イソブチレン-alt-無水マレイン酸)ポリマー(アルドリッチ社製;製品番号531391)と混合および配合させる。不透明なペレットが得られる。射出成型法を用い、上述のようにして長方形のシートを製造した。金属付着性試験の結果、得られた剥離力は4.3mN/mmであった。
【0104】
比較例10
連鎖停止剤としてフェノールを使用し、ISO1133に従った溶融流量(MVR)が7であり、実施例1と同様のやり方で調製した、40モル%のBPAと60モル%のTMCビスフェノール(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン)を含有するコポリカーボネートを、上述の配合押出器を用いて、4重量%の無水マレイン酸でグラフト化したポリエチレン(アルドリッチ社製;製品番号531383)と混合および配合させる。不透明なペレットが得られる。射出成型法を用い、上述のようにして長方形のシートを製造した。長方形のシートが水泡状の表面を有したので、金属付着性試験は不可能であった。乏しい表面品質に起因して、一般に、この材料は金属被覆に不適当である。
【0105】
比較例11
連鎖停止剤としてフェノールを使用し、ISO1133に従った溶融流量(MVR)が7であり、実施例1と同様のやり方で調製した、40モル%のBPAと60モル%のTMCビスフェノール(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン)を含有するコポリカーボネートを、上述の配合押出器を用いて、4重量%の無水マレイン酸でグラフト化したポリエチレン(アルドリッチ社製;製品番号456624)と混合および配合させる。不透明なペレットが得られる。射出成型法を用い、上述のようにして長方形のシートを製造した。長方形のシートが水泡状の表面を有したので、金属付着性試験は不可能であった。乏しい表面品質に起因して、一般に、この材料は金属被覆に不適当である。
【0106】
本発明による組成物は、比較例の組成物と比べて金属付着性を大幅に改良させることが明らかである。従って、本発明による組成物は、本発明によらない組成物と比較して、大幅に高い付着性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分A)および成分B)を含有する組成物:
A)成分Aと成分B(ただし、成分Bは、成分B1、成分B2および成分B3からなる群から選択される1種または複数種の成分である)の重量部合計に基づき、高い耐熱変形性を有し、以下の化学式(1)で表される1種または複数種の脂環式ビスフェノールに基づくポリカーボネート82〜99.5重量部、
【化1】

[式中、
R1およびR2は、相互に独立して、水素、ハロゲン、C1〜C8-アルキル、C5〜C6-シクロアルキル、フェニル、またはC7〜C12アラルキルであり、
nは、4〜7の整数であり、
R3およびR4は、X毎に独立して選択可能であり、相互に独立して、水素またはC1〜C6-アルキルであり、および
Xは、少なくとも1つのX原子において、R3およびR4が共にアルキルを示すという条件で炭素である;および、
B)成分Aと成分B(ただし、成分Bは、成分B1、成分B2および成分B3からなる群から選択される1種または複数種の成分である)の重量部合計に基づき、以下のB1)〜B3)からなる群から選択される1種または複数種のポリオレフィンおよび/またはポリオレフィン誘導体0.5重量部〜18重量部:
B1)130℃〜180℃の範囲のビカット軟化温度、0.5〜30のMVR(230℃/2.16kg)、少なくとも4.5の多分散度、および140℃〜170℃のビカット温度(A50法、50℃/h、10N)を有する、直鎖状の半結晶性ポリプロピレン、
B2)ビニル芳香族(A−ブロック)および主に1,3ジエンの重合により大部分が形成されたブロック(B−ブロック)に基づく、ブロックコポリマー;該ブロックコポリマーは、必要に応じて、少なくとも部分的に酸無水物基で官能化される
B3)アルキレンコポリマー;
但し、重量部で表される全ての値は、該組成物中の成分Aおよび成分Bの重量部単位の合計が100となるように標準化されている。
【請求項2】
耐熱変形性を有する成分Aのポリカーボネートを含有する請求項1に記載の組成物であって、R1およびR2が、相互に独立して、メチル、フェニルまたはHである該組成物。
【請求項3】
高い耐熱変形性を有する成分Aのポリカーボネートが、ビスフェノールAとビスフェノールTMCのコポリカーボネートである請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
成分B1が、1〜15のMVR(230℃/2.16kg)を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
成分Aおよび成分Bの総重量部100に基づき、成分Cとして0〜5重量部の添加剤を更に含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
成分Bが、ビニル芳香族(A−ブロック)および主に1,3ジエンの重合により大部分が形成されたブロック(B−ブロック)に基づく成分B2に係るブロックコポリマーである請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
成分B2のブロックコポリマーの少なくとも数個のブロックが、酸無水物基で官能化されており、該酸無水物基の割合が、全ブロックコポリマーに基づいて0.2重量%〜4重量%である請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
成分B3のアルキレンコポリマーが必要に応じて官能化されたエチレン/プロピレンゴムまたはエチレン-オクテンコポリマーを含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物を含有する成形品。
【請求項10】
金属層を有する表面コーティングを具備する請求項9に記載の成形品。
【請求項11】
金属層が20〜500nmの厚さを有する請求項10に記載の成形品。
【請求項12】
請求項9に記載の成形品を具備する動力車、鉄道車両、航空機、水上車両、フィルム、異形材またはハウジング。
【請求項13】
支持体層の少なくとも1つの面上に、更なる層を有する支持体層を具備する多層製品であって、該支持体層が請求項1に記載の組成物を含有する該多層製品。
【請求項14】
支持体層上の更なる層が金属層である請求項13に記載の多層製品。
【請求項15】
金属層に施した保護層を更に具備する請求項14に記載の多層製品。
【請求項16】
PECVD法またはプラズマ重合法で保護層を施す工程を含む請求項16に記載の多層製品を製造するための方法。
【請求項17】
ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、およびトリメトキシメチルシランから成る群から選択される1種または複数種の易揮発性成分からPECVD法またはプラズマ重合法で保護層を施す工程を含む請求項16に記載の方法。

【公開番号】特開2011−127113(P2011−127113A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−274336(P2010−274336)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】