説明

高耐熱性、高強度Rh基合金及びその製造方法

【課題】高温特性に優れると共に、重量等の要素のバランスも良好な耐熱材料を提供する。
【解決手段】本発明は、Rhに必須の添加元素であるAl及びWを添加したRh基合金からなる高耐熱性、高強度Rh基合金であって、前記Rh合金は、Alを0.2〜15.0質量%、Wを15.0〜45.0質量%、残部Rhからなり、必須の強化相として、L1構造を有するγ’相(Rh(Al,W))がマトリックス中に分散するRh基合金からなる耐熱材料である。本発明に係るRh基合金は、添加元素として、B、C、Mg、Ca、Y、La又はミッシュメタル、Ni、Co、Cr、Fe、Mo、Ti、Nb、Ta、V、Zr、Hf、Ir、Re、Pd、Pt、Ruを任意に添加することで、加工性、高温酸化特性を更に改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェットエンジン、ガスタービン等の部材として好適なRh基耐熱合金及びその製造方法に関し、詳しくは、従来のNi基合金よりも耐熱性、耐酸化性に優れ、過酷な高温雰囲気に曝されても必要強度を維持し得る合金に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン、飛行機用エンジン、化学プラント、自動車用エンジン、ターボチャージャーロータ等の機能部品や高温炉等の構成部材では、高温環境下で強度が必要とされ、優れた耐酸化性が要求される。この種の高温耐熱材料としては、従来からNi基合金やCo基合金が従来から使用されてきた。
【0003】
耐熱材料としてのNi基合金の強化機構は基本的に析出強化であり、マトリックス合金中に強化相としてL1構造を有するγ’相(Ni(Al,Ti))を分散させてなる。γ’相は、温度上昇に伴い強度も高くなる逆温度依存性を呈することから、優れた高温強度、高温クリープ特性を付与し、ガスタービンの動翼、タービンディスク等の耐熱用途に適したNi基合金となる。一方、耐熱材料としてのCo基合金の強化機構は固溶強化及び炭化物の析出強化を利用しており、多量のCrを含有する系では耐食性、耐酸化性に優れ、耐磨耗性も良好なため、静翼、燃焼器等の部材に使用されている。
【0004】
最近では、各種熱機関において燃費の向上、環境負荷の低減を目的に熱効率の改善が強く求められており、熱機関構成材料に要求される耐熱性が一段と過酷になっている。そのため、従来のNi基やCo基合金に代わる新規耐熱材料の開発が検討されている。
【0005】
これまで、新規の耐熱合金に関し多くの研究報告が発表されている。本発明者等もNi基合金に替る新たな耐熱合金として、Co基でNi基耐熱合金と同様のL1構造を有するγ’相の金属間化合物(Co(Al,W))を分散させる合金や、Ir基でL1構造を有するγ’相の金属間化合物(Ir(Al,W))に基づく析出強化作用を備えるIr基合金からなる耐熱材料を開示している(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2007/032293公報
【特許文献2】国際公開2007/091576公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、ガスタービン等の機能部品や高温炉等の構成部材への耐熱材料の適用にあたっては、その高温強度、耐酸化性等の高温特性が優れていることが必要であるが、実用化に際しては重量(比重)や素材コスト等の要素も重視される。この点、これまでの新規の耐熱材料は高温特性の向上に関する検討が優先され、それ以外の要素への検討は不十分であった。そこで、本発明は、高温特性に優れると共に、重量等の要素のバランスも良好な耐熱材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本願発明は、Rhに必須の添加元素であるAl及びWを添加したRh基合金からなる高耐熱性、高強度Rh基合金であって、前記Rh合金は、Alを0.2〜15.0質量%、Wを15.0〜45.0質量%、残部Rhからなり、必須の強化相として、L1構造を有するγ’相(Rh(Al,W))がマトリックス中に分散するRh基合金からなる耐熱材料である。
【0009】
本発明に係る耐熱材料は、Rh(ロジウム)基合金からなるものである。Rhを適用したのは、Rhは貴金属の一つであり、融点が高く(1966℃)、耐食性(耐酸化性)が良好である。従って、従来のNi基合金よりも高温での化学的安定性がはるかに優れていると考えられる。また、Rhは、比重が約12であり、Ir(比重約22)よりも低くNi(比重約9)に比較的近い。そのため、上記従来のIr基耐熱合金よりも部材の軽量化に寄与することができる。
【0010】
そして、本発明では、Rh基合金の強化因子として、L1構造を有するγ’相(Rh(Al,W)、以下、単にγ’相と称する場合がある。)を分散させてなる。γ’相による析出強化は、上記従来のIr基合金と同様である、γ’相は、強度について逆温度依存性を有するため高温安定性も良好であり、また、Rh自体の高温強度も高いことから、本発明に係るRh基耐熱合金は、Ni基耐熱合金に対して一段と高い高温雰囲気に曝されても優れた高温特性を維持する。
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明は、Al(アルミニウム)及びW(タングステン)を合金元素としたRh基合金であり、Alを0.2〜15.0質量%、Wを15.0〜45.0質量%含むものである。従来、RhにAlとWを添加した合金において、γ’相が析出することは知られていない。Al、Wの添加量を前記範囲としたのは、強化相として機能し得るγ’相を析出させるためであり、これは本発明者等の検討の結果明らかになった数値範囲である。
【0012】
即ち、Alは、γ’相の主要な構成元素であると共に、γ’相の析出・安定化に必要な成分であり、耐酸化性の向上にも寄与する。0.2質量%未満のAlではγ’相が析出しないか、析出しても高温強度向上に寄与し得る状態はならない。一方で、Al濃度の増加に伴い、γ’相の割合が低下し、B2型の金属間化合物(RhAl、以下、B2相と称する場合がある。)が生成する。そして、Alを過剰に添加すると、B2相が粗大化して脆くなり合金の強度を低下させることとなることから、Al量の上限を15質量%としている。
【0013】
そして、Wもγ’相の主要な構成元素であり、合金のマトリックスを固溶強化する作用も有する。Wについても、15質量%未満の添加では高温強度向上のためのγ’相が析出せず、45質量%を超える過剰添加は、比重の大きいWを主成分とする相の生成を助長し、偏析が生じやすくなる。
【0014】
上記の通り、本発明に係るRh基合金は、γ’相の適切な分散により高温強度の改善するものであるが、他の相の生成を完全に排除するものではない。これは、Al、Wを上記範囲で添加した場合、組成によってはγ’相のみではなく、B2相やD019型の金属間化合物(RhW、以下、D019相と称する場合がある。)が析出することがある。但し、Al、Wの含有量が上記範囲内であれば、これらのγ’相以外の析出物が存在しても高温強度は確保されている。これらの析出相も材料強化の作用を有する。これら析出物の分布については、Al0.2〜2.0質量%、W15.0〜30.0質量%の範囲では、γ’相のみが析出する(γ’相の効果的な析出のためには0.5質量%以上がより好ましい。)。一方、Al2.0質量%超15.0質量%以下、W30.0質量%超45.0質量%以下の範囲では、γ’相に加えて、B2相やD019相が析出する。いずれの範囲においても、強化相であるγ’相が存在しており、これが高温強度向上に寄与する。
【0015】
析出物である、γ’相、B2相、D019相は、粒径3nm〜1μmのものが好ましく、また、その析出量は合計で20〜85体積%(合金全体に対して)が好ましい。析出強化作用は、3nm以上の析出物で得られるが、1μmを超える粗大な析出物では却って低下する。また、十分な析出強化作用を得るためには、20体積%以上の析出量が必要であるが、85体積%を超える過剰析出量では延性低下が懸念される。好適な粒径、析出量を得るためには、後述する製造方法において、所定温度域において段階的な時効処理を行うことが好ましい。
【0016】
本発明に係るRh基耐熱合金は、その高温特性の更なる向上又は付加的な特性向上のために添加元素を添加しても良い。この添加元素として、以下の2つのグループがある。
【0017】
グループIは、B、C、Mg、Ca、Y、La、ミッシュメタルからなるグループである。ここで、Bは、結晶粒界に偏析して粒界を強化する合金成分であり、高温強度の向上に寄与する。Bの添加効果は0.001質量%以上で顕著になるが、過剰添加は加工性にとって好ましくないので上限を1.0質量%(好ましくは、0.5質量%)とする。Cは、Bと同様に粒界強化に有効であると共に、炭化物となって析出し高温強度を向上させる。このような効果は0.001質量%以上のC添加でみられるが、過剰添加は加工性や靭性にとって好ましくないので1.0質量%(好ましくは、0.8質量%)をC含有量の上限とする。Mgは粒界の脆化を抑制する効果があり、0.001質量%以上で添加効果が顕著になるが、過剰添加は有害相の生成を引き起こすので0.5質量%(好ましくは0.4質量%)を上限とした。Caは脱酸、脱硫に効果がある合金成分であり、延性、加工性の向上に寄与する。Caの添加効果は0.001質量%以上で顕著になるが、過剰添加は却って加工性を低下させるので上限を1.0質量%(好ましくは、0.5質量%)とした。Y、La、ミッシュメタルは共に耐酸化性の向上に有効な成分であり、何れも0.01質量%以上で添加効果を発揮するが、過剰添加は組織安定性に悪影響を及ぼすので1.0質量%(好ましくは、0.5質量%)を上限とした。
【0018】
以上のグループIの添加元素は、1種又は2種以を合計で0.001〜2.0質量%添加する。但し、これらの添加元素を添加するときには、Rhの含有量を50質量%以上にする。合金のRh含有量が低いと、Rhの優れた高温特性を活かすことができなくなるからである。
【0019】
グループIIは、Co、Ni、Cr、Ti、Fe、V、Nb、Ta、Mo、Zr、Hf、Ir、Re、Pd、Pt、Ruからなるグループである。これらの添加元素については、1種又は2種以上の添加元素を合計で0.1〜48.9質量%添加する。そして、グループIの添加元素と同様、Rhの含有量を50質量%以上にする。
【0020】
グループIIの添加元素を添加したRh基合金においては、強化相として、L1構造を有するγ’相((Rh,X)(Al,W,Z))も析出・分散する。ここで、XはCo、Fe、Cr、Ir、Re、Pd、Pt及び/又はRuであり、ZはMo、Ti、Nb、Zr、V、Ta及び/又はHfである。また、NiはX、Zの双方に入る。このγ’相((Rh,X)(Al,W,Z))は、Rh−Al−W3元合金におけるγ’相(Rh(Al,W))と同一の結晶構造であり、Rh(Al,W)にX、Zの元素が固溶したものである。
【0021】
また、このグループIIの添加元素を添加したRh基合金でもAl、Wの添加量によっては、γ’相以外の金属間化合物が析出することがある。この金属間化合物は、Rh−Al−W3元合金におけるB2相(RhAl)、D019相(RhW)と同じ結晶構造である、B2型の金属間化合物((Rh,X)(Al,W,Z))やD019型の金属間化合物((Rh,X)W)である(X、Zの意義は上記と同様)。これらB2相、D019相も、Al、Wが適正範囲(Al0.2〜15.0質量%、W15.0〜45.0質量%)であれば、強化相として作用する。尚、これら析出物の分布については、Al0.2〜2.0質量%、W15.0〜30.0質量%の範囲では、γ’相のみが析出する(γ’相の効果的な析出のためには0.5質量%以上がより好ましい。)。一方、Al2.0質量%超15.0質量%以下、W30.0質量%超45.0質量%以下の範囲では、γ’相に加えて、B2相やD019相が析出する。いずれの範囲においても、強化相であるγ’相が存在しており、これが最も高温強度向上に寄与する。
【0022】
Ni、Coは、マトリックス(γ相)を強化する作用を呈し、γ相に全率で固溶するため広い組成範囲で(γ+γ’)の二相組織が得られる。また、γ’相のRhと置換するため、貴金属であるIrの使用量を抑え、低コスト化が図られる。Ni0.1質量%以上、Co0.1質量%以上で添加効果がみられるが、過剰添加すると融点及びγ’相の固溶温度が下がり、Rh基合金の優れた高温特性が損なわれてしまう。そのため、Rh含有量が50質量%以下にならないようにNi、Coの含有量上限を48.9質量%(好ましくは、40質量%)とした。
【0023】
Crは、Rh基合金表面に緻密な酸化皮膜を作り、耐酸化性を向上させる合金成分であり、高温強度、耐食性の改善に寄与する。このような効果は0.1質量%以上のCrで顕著になるが、過剰添加は加工性劣化の原因になるので15質量%(好ましくは、10質量%)を上限とした。
【0024】
FeもRhと置換し、加工性を改善する作用があり、0.1質量%以上で添加効果が顕著になる。しかし、過剰添加は高温域における組織の不安定化をもたらす原因となるので、添加する場合には上限を20質量%(好ましくは、5.0質量%)とする。
【0025】
Moは、γ’相の安定化、マトリックスの固溶強化に有効な合金成分であり、0.1質量%以上でMoの添加効果がみられる。しかし、過剰添加は加工性劣化の原因になるので15質量%(好ましくは、10質量%)を上限とした。
【0026】
Ti、Nb、Zr、V、Ta、Hfは、何れもγ’相の安定化、高温強度の向上に有効な合金成分であり、Ti:0.1質量%以上、Nb:0.1質量%以上、Zr:0.1質量%以上、V:0.1質量%以上、Ta:0.1質量%以上、Hf:0.1質量%以上で添加効果がみられる。しかし、過剰添加は有害相の生成や融点降下の原因となるので、Ti:10質量%、Nb:15質量%、Zr:15質量%、V:20質量%、Ta:25質量%、Hf:25質量%を上限とした。
【0027】
Irは、マトリックスの固溶強化に有効な合金成分であると共に、γ’相のRhと置換する。Irは、0.1質量%以上で添加効果を呈するが、過剰添加すると合金の比重を大きくすることになるので、添加する場合には上限を15質量%(好ましくは、5.0質量%)とする。
【0028】
Re、Pd、Pt、Ruは耐酸化性の向上に有効な合金成分であり、何れも0.1質量%以上で添加効果が顕著になるが、過剰添加は有害相の生成を誘発させるので添加量上限をRe、Ptでは25質量%(好ましくは、10質量%)、Pd、Ruでは15質量%(好ましくは、10質量%)とした。
【0029】
本発明に係るRh基合金の製造においては、通常の鋳造法、一方向凝固、溶湯鍛造、単結晶法の何れの方法でも製造可能である。そして、γ’相析出のための熱処理を行う。この熱処理は、各種の溶解法で製造されるRh合金を900〜1700℃(好ましくは、1100〜1600℃)の温度域に加熱する。このときの加熱時間は、30分〜100時間とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明のRh合金は、従来から使用されてきたNi基耐熱合金に対して、高温強度、耐酸化性等の高温特性が格段に優れる。そして、これに加え重量面、コスト面においてIr基合金よりも有利であり、新規の耐熱合金としてその実用化に
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1のRh基合金(Rh−1.2質量%Al−26質量%W)のXRD。
【図2】実施例1のRh基合金(Rh−1.2質量%Al−26質量%W)の高温酸化試験の結果を示す図。
【図3】実施例2のRh基合金(Rh−0.72質量%Al−24.5質量%W)の電子顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の好適な実施例を説明する。
第1実施形態:表1の組成のRh基合金を不活性ガス雰囲気中でアーク溶解により溶製し、インゴットに鋳造した。インゴットから切り出した試験片に析出物生成のための時効処理として、1300℃での熱処理を施した。そして、各試料について、組織観察、相構成の同定を行った。また、各合金について、ビッカース試験(荷重500kgf、加圧時間10秒、室温)により硬度を測定した。これらの結果を表1に併せて示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表1から、Al、Wの添加量が比較的少ない実施例1、2では、析出物としてγ’相のみが検出された。そして、Al、Wの割合が高くなると析出物の構成は、γ’相に加えてB2層、D019相が析出する(実施例3〜5)。一方、Al、Wの濃度が低すぎる場合(比較例1)、析出物(γ’相等)の析出は見られずマトリックス(γ相)のみで構成され、また、多少Al、Wの添加量を増やしてもγ’相は見られない(比較例2)。更に、Al、Wの濃度が高すぎる場合(比較例3)、B2層、D019相が析出し、γ’相は生じない。
【0035】
そして、γ’相析出の効果についてみると、γ’相が析出する実施例1〜5では、適切な硬度向上が確認される。これに対して、Al、Wの濃度が低い比較例1、2は、γ’相がないため硬度が低いままであった。また、Al、Wの濃度が高すぎる比較例3は、硬度は高いものの硬すぎるといえ、脆性の観点から好ましいとはいえない。
【0036】
次に、実施例1のRh基合金(Rh−1.2質量%Al−26質量%W)について、XRD分析、高温酸化試験を行った。まず、図1は、実施例1のRh基合金のXRD結果を示す。図 から、実施例1では、マトリックス(γ相)とγ’相のみで構成される。また、この結果に基づきγ相とγ’相とのミスマッチを確認したところ、0.05%の正のミスマッチであることが確認された。また、実施例2(Rh−0.72質量%Al−24.5質量%W)の電子顕微鏡による組織写真を図3に示す。
【0037】
高温酸化試験は、2mm×2mm×2mmの寸法に試験片を切り出し、これを大気中1200℃で1、4、24時間熱処理し、その後の重量変化を測定した。この高温酸化試験では、比較としてNi基耐熱合金として、Ni−6.7質量%Al−15質量%W、Waspaloy(Cr:19.5質量%
Mo:4.3質量% Co:13.5質量% Al:1.4質量% Ti:3質量% C:0.07質量%(残部はNi))についての同様の試験を行った。この結果を図2に示すが、この結果、本実施形態におけるRh基合金は、Ni基耐熱合金に対して極めて良好な耐高温酸化特性を有することがわかる。
【0038】
第2実施形態:ここでは、基本組成であるRh−Al−W合金に対して各種の添加元素を添加して合金を製造した。添加元素は、上記したグループI、IIに属する元素であり、表2、3に示す合金を製造した。これらのRh基合金の製造は、第1実施形態と同様、不活性ガス雰囲気中でアーク溶解、鋳造したインゴットから試験片を切り出し、時効処理を行った。そして、組織観察により相構成を確認し、また硬度測定を行った。この結果を表2、3に併せて示す。
【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
グループIの添加元素については、微量添加が前提であり、Al、Wの添加量が適正であればγ’相の析出が見受けられる。また、微量添加ゆえに材料組織にも大きな変化はなかった。また、グループIIの添加元素についても、Al、Wの添加量を適正とすることでγ’相の析出が見られる。そして、これによる適度な硬度向上が確認される。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、Ni基耐熱合金よりも高温強度、耐酸化性等の高温特性に優れるRh合金である。本発明は、ガスタービン、飛行機用エンジン、化学プラント、ターボチャージャーロータ等の自動車用エンジン、高温炉等の部材に好適である。また、高強度、高弾性で耐食性、耐磨耗性も良好なことから、肉盛り材、ゼンマイ、バネ、ワイヤ、ベルト、ケーブルガイド等の素材としても使用される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Rhに必須の添加元素であるAl及びWを添加したRh基合金からなる高耐熱性、高強度Rh基合金であって、
前記Rh合金は、Alを0.2〜15.0質量%、Wを15.0〜45.0質量%、残部Rhからなり、
必須の強化相として、L1構造を有するγ’相(Rh(Al,W))がマトリックス中に分散するRh基合金からなる耐熱材料。
【請求項2】
Rh合金は、下記のグループIから選択される1種又は2種以上の添加元素を合計で0.001〜2.0質量%含み、残部となるRhの含有量が50質量%以上である請求項1記載の高耐熱性、高強度Rh基合金。
グループI:
B:0.001〜1.0%、
C:0.001〜1.0%、
Mg:0.001〜0.5%、
Ca:0.001〜1.0%、
Y:0.01〜1.0%、
La又はミッシュメタル:0.01〜1.0%
【請求項3】
Rh合金は、下記のグループIから選択される1種又は2種以上の添加元素を合計で0.1〜48.9質量%含み、残部となるRhの含有量が50質量%以上であり、
必須の強化相として、L1構造を有するγ’相(Rh,X)(Al,W,Z):XはCo、Fe、Cr、Rh、Re、Pd、Pt及び/又はRu、ZはMo、Ti、Nb、Zr、V、Ta及び/又はHfである。NiはX、Zの双方に入る)がマトリックス中に分散する請求項1又は請求項2記載の高耐熱性、高強度Rh基合金。
グループII:
Ni:0.1〜48.9%、Co:0.1〜48.9%、
Cr:0.1〜15%、
Fe:0.1〜20%、
Mo:0.1〜15%、
Ti:0.1〜10%、Nb:0.1〜15%、 Ta:0.1〜25%、V:0.1〜20%、Zr:0.1〜15%、Hf:0.1〜25%、
Ir:0.1〜15%、
Re:0.1〜25%、 Pd:0.1〜15%、 Pt:0.1〜25%、 Ru:0.1〜15%
【請求項4】
請求項1〜3記載の高耐熱性、高強度Rh基合金の製造方法であって、
請求項1〜3記載の組成のRh基合金を、900〜1700℃の温度で熱処理し、少なくともL1構造を有するγ’相を析出させる高強度Rh基合金の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−95990(P2013−95990A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241940(P2011−241940)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人 日本金属学会 発行 第149回 日本金属学会 講演概要 平成23年10月20日発行
【出願人】(509352945)田中貴金属工業株式会社 (99)