説明

高耐熱性アクリル系共重合体およびその製造方法

【課題】高耐熱性を有するアクリル系共重合体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】高耐熱性アクリル系共重合体は、下記式(1):


[式中、xは1〜3であり、yは0〜3である]で示されるモノマーからなる繰り返し単位とメタクリル系モノマー誘導体からなる繰り返し単位とを有する。この高耐熱性アクリル系共重合体は、下記式(2):


[式中、xは1〜3であり、yは0〜3である]で示される化合物とメタクリル系モノマーとを、過酸化物重合反応開始剤の存在下で、共重合することにより製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐熱性を有するアクリル系共重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学用アクリル系ポリマー材料は、透明性が高く、複屈折性が低く、耐候性が高く、しかも、他の材料より低コストであるので、例えば、導光板(LGP)、プラズマディスプレイ(PDP)フロントパネル、光学拡散板、光学ディスクなどの様々な用途に幅広く用いることができる。しかし、光学用アクリル系ポリマー材料は、例えば、耐熱性が低く、吸水性が高いなどのいくつかの欠点を有する。したがって、改良された光学用アクリル系ポリマー材料の開発が望ましい。
【0003】
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の耐熱性を向上させるいくつかの方法が開発されている。例えば、メタクリル酸メチル(MMA)とα−メチルスチレンとを共重合させる方法(特許文献1を参照)、MMAと無水マレイン酸とを共重合させる方法(特許文献2を参照)、MMAとマレイミドとを共重合させる方法(特許文献3を参照)、MMAと多官能性モノマーとを架橋共重合させる方法(特許文献4を参照)、第1級アミンとメタクリル樹脂とを共重合させて、メタクリルイミド含有ポリマーを調製する方法(特許文献5を参照)などである。しかし、PMMAの耐熱性は向上しても、例えば、共重合速度が低下したり、着色ポリマーが形成したり、透明度が低下したりするなど、いくつかの欠点がまだ存在する。
【0004】
また、PMMAの吸水性を低下させるいくつかの方法が開発されている。例えば、MMAとメタクリル酸シクロヘキシルとを共重合させる方法(特許文献6を参照)、MMAとメタクリル酸ベンジルとを共重合させる方法(特許文献7を参照)などである。しかし、PMMAの吸水性は低下しても、その耐熱性が低下する。したがって、高耐熱性と低吸水性とを有する光学用高分子樹脂材料の開発が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,135,723号明細書
【特許文献2】特公昭49−10156号公報
【特許文献3】特開昭61−95011号公報
【特許文献4】特開昭63−30510号公報
【特許文献5】特開昭61−64703号公報
【特許文献6】特開昭58−5318号公報
【特許文献7】特開昭58−13652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、高耐熱性を有するアクリル系共重合体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々検討の結果、所定の構造を有するα−アクリル系モノマー誘導体とメタクリル系モノマー誘導体とを共重合すれば、α−アクリル系モノマー誘導体が、環化重合により、環化してテトラヒドロピラン構造を形成することから、テトラヒドロピラン構造を有するモノマーからなる繰り返し単位とメタクリル系モノマー誘導体からなる繰り返し単位とを有するアクリル系共重合体であって、高耐熱性を有するアクリル系共重合体が得られることを見出して、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記式(1):
【0009】
【化1】

【0010】
[式中、xは1〜3であり、yは0〜3である]
で示されるモノマーからなる繰り返し単位とメタクリル系モノマー誘導体からなる繰り返し単位とを有することを特徴とする高耐熱性アクリル系共重合体を提供する。
【0011】
本発明の高耐熱性アクリル系共重合体は、その数平均分子量(Mn)が好ましくは5,000〜1,000,000である。本発明の高耐熱性アクリル系共重合体において、前記メタクリル系モノマー誘導体は、好ましくは、下記式(3):
【0012】
【化2】

【0013】
[式中、Rは水素またはメチル基であり、Rは炭素数1〜22のアルキル基または炭素数5〜22のシクロアルキル基である]
で示される。前記式(1)で示されるモノマーからなる繰り返し単位と前記メタクリル系モノマー誘導体からなる繰り返し単位とのモル比は、好ましくは5〜95:95〜5である。
【0014】
また、本発明は、下記式(2):
【0015】
【化3】

【0016】
[式中、xは1〜3であり、yは0〜3である]
で示されるα−アクリル系モノマー誘導体とメタクリル系モノマー誘導体とを、1個またはそれ以上のO−O結合を有する過酸化物である重合反応開始剤の存在下で、共重合する工程を包含することを特徴とする高耐熱性アクリル系共重合体の製造方法を提供する。高耐熱性アクリル系共重合体を製造する際に、上記式(2)で示されるα−アクリル系モノマー誘導体は、環化重合により、環化してテトラヒドロピラン構造を形成する。
【0017】
本発明の高耐熱性アクリル系共重合体の製造方法において、前記重合反応開始剤は、好ましくは、過酸化ベンゾイル(BPO)、2−エチルペルオキシヘキサン酸tert−ブチル(PBO)、過酸化ジ−tert−ブチル(PBD)、過炭酸tert−ブチルイソプロピル(PBI)または4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)吉草酸n−ブチル(PHV)である。前記メタクリル系モノマー誘導体は、好ましくは、下記式(3):
【0018】
【化4】

【0019】
[式中、Rは水素またはメチル基であり、Rは炭素数1〜22のアルキル基または炭素数5〜22のシクロアルキル基である]
で示される。前記α−アクリル系モノマー誘導体と前記メタクリル系モノマー誘導体とのモル比は、好ましくは5〜95:95〜5である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来のPMMAやアクリル系共重合体に比べて、共重合速度を低下させることなく、また、着色したり、透明性を低下させたりすることなく、高い熱安定性を有する高耐熱性アクリル系共重合体が高収率で得られる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明についての目的、特徴、長所が一層明確に理解されるように、以下に実施形態を例示し、詳細に説明する。
【0022】
≪高耐熱性アクリル系共重合体≫
本発明の高耐熱性アクリル系共重合体は、下記式(1):
【0023】
【化5】

【0024】
[式中、xは1〜3であり、yは0〜3である]
で示されるモノマーからなる繰り返し単位とメタクリル系モノマー誘導体からなる繰り返し単位とを有することを特徴とする。
【0025】
本発明の高耐熱性アクリル系共重合体は、その数平均分子量(Mn)が、好ましくは5,000〜1,000,000、より好ましくは50,000〜1,000,000、さらに好ましくは50,000〜500,000の範囲内である。
【0026】
メタクリル系モノマー誘導体は、好ましくは、下記式(3):
【0027】
【化6】

【0028】
[式中、Rは水素またはメチル基であり、Rは炭素数1〜22のアルキル基または炭素数5〜22のシクロアルキル基である]
で示される。メタクリル系モノマー誘導体の具体例としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチルなどが挙げられる。
【0029】
本発明の高耐熱性アクリル系共重合体において、上記式(1)で示されるモノマーからなる繰り返し単位とメタクリル系モノマー誘導体からなる繰り返し単位とのモル比は、好ましくは5〜95:95〜5、より好ましくは30〜85:70〜15、さらに好ましくは40〜85:60〜15である。
【0030】
≪高耐熱性アクリル系共重合体の製造方法≫
本発明による高耐熱性アクリル系共重合体の製造方法は、下記の工程を包含することを特徴とする。すなわち、下記式(2):
【0031】
【化7】

【0032】
[式中、xは1〜3であり、yは0〜3である]
で示されるα−アクリル系モノマー誘導体とメタクリル系モノマー誘導体とを、重合反応開始剤の存在下で、共重合する工程である。重合反応開始剤は、1個またはそれ以上のO−O結合を有する過酸化物である。
【0033】
重合反応開始剤としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、過酸化ベンゾイル(BPO)、2−エチルペルオキシヘキサン酸tert−ブチル(PBO)、過酸化ジ−tert−ブチル(PBD)、過炭酸tert−ブチルイソプロピル(PBI)または4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)吉草酸n−ブチル(PHV)である。
【0034】
メタクリル系モノマー誘導体は、好ましくは、下記式(3):
【0035】
【化8】

【0036】
[式中、Rは水素またはメチル基であり、Rは炭素数1〜22のアルキル基または炭素数5〜22のシクロアルキル基である]
で示される。メタクリル系モノマー誘導体の具体例としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチルなどが挙げられる。
【0037】
上記式(2)で示されるα−アクリル系モノマー誘導体とメタクリル系モノマー誘導体とのモル比は、好ましくは5〜95:95〜5、より好ましくは30〜85:70〜15、さらに好ましくは40〜85:60〜15である。
【0038】
本発明の高耐熱性アクリル系共重合体は、従来の重合法(例えば、カチオン重合法、反応基転移重合(GTP;group transfer polymerization)法または遊離ラジカル重合法)により製造される。共重合における重合温度や重合時間などの重合条件は、適用する重合法などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0039】
遊離ラジカル重合を行う際、1個またはそれ以上のO−O結合を有する重合反応開始剤を用いることが好ましい。収率が効果的に向上するからである。重合反応開始剤の使用量は、全モノマー100質量部に対して、好ましくは0.1〜1質量部の範囲内である。
【0040】
上記の重合法において、溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサンなどの炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン;ジメチルスルホキシド(DMSO);ジエチルエーテル;などが挙げられる。
【0041】
本発明の高耐熱性アクリル系共重合体は、上記式(1)で示されるモノマーからなる繰り返し単位とメタクリル系モノマー誘導体からなる繰り返し単位とを有する。この高耐熱性アクリル系共重合体は、上記式(2)で示されるα−アクリル系モノマー誘導体とメタクリル系モノマー誘導体とを、1個またはそれ以上のO−O結合を有する過酸化物である重合反応開始剤の存在下で、共重合することにより製造される。この高耐熱性アクリル系共重合体を製造する際に、上記式(2)で示されるα−アクリル系モノマー誘導体は、環化重合により、環化してテトラヒドロピラン構造を形成する。
【0042】
なお、アクリル系共重合体およびアクリル系重合体の数平均分子量(Mn)および分子量分布は、ポリスチレン(PS)の較正曲線を用いたGPC法(溶媒:THF)により得られる。アクリル系共重合体およびアクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)は、DSC法により測定される。
【実施例】
【0043】
≪製造例1≫
アクリル系モノマー(TCDHM)の製造
【0044】
【化9】

【0045】
式中、Rのメチレン基は、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンの8位に結合しているが、この位置に限定されるものではない。
【0046】
まず、11.02g(50ミリモル)の8−ヒドロキシメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルアクリレート(HMTCDA、Industrial Technology Research Institute(ITRI)Southより入手)、1.75×10−2g(1.59×10−4モル)のハイドロキノン、1.50g(50ミリモル)のパラホルムアルデヒド、0.75g(6.63×10−3モル)の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO、アルドリッチより入手;白色固体)および3.83mL(40ミリモル)のtert−ブタノール(無色液体)を容量100mLの反応容器中で混合し、80℃で5日間反応させた。次いで、溶剤を除去した後、得られた溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:n−ヘキサン/ジエチルエーテル=10:1)により精製した。かくして、トリシクロデカニル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレート(TCDHM)を、無色液体として、収量6.52g、収率54%で得た。
【0047】
なお、HMTCDAの合成方法は、下記の式に示されるとおりである。
【0048】
【化10】

【0049】
式中、Rのメチレン基は、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンの8位に結合しているが、この位置に限定されるものではない。
【0050】
≪実施例1≫
アクリル系共重合体(PMMA−co−PTCDHM;Mn=63,000)の製造
まず、0.48g(1ミリモル)のTCDHM(製造例1で製造した)、0.96mL(9ミリモル)のMMA、5.67mg(2.34×10−2ミリモル)のBPO、2mLのトルエンを容量50mLの反応容器中で混合した。窒素ガス下で、この溶液を80℃に加熱し、1.5時間反応させた。次いで、反応が完結した後、50mLのメタノールを添加したところ、大量の白色固体が沈殿した。濾過した後、沈殿物を10mLのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、メタノールにより再沈殿させた(テトラヒドロフラン/メタノール=1:6)。再沈殿の工程を3回繰り返した後、生成物を乾燥させた。かくして、アクリル系共重合体(PMMA−co−PTCDHM)を、白色固体として、収量1.19g、収率86%で得た。得られたアクリル系共重合体(PMMA−co−PTCDHM)の数平均分子量(Mn)は、63,000であった。また、アクリル系共重合体(PMMA−co−PTCDHM)の分子量分布(PDI)は、1.84であり、ガラス転移温度(Tg)は、114℃であった。これらの結果を表1に示す。
【0051】
≪実施例2≫
アクリル系共重合体(PMMA−co−PTCDHM;Mn=80,400)の製造
まず、0.96g(2ミリモル)のTCDHM(製造例1で製造した)、0.85mL(8ミリモル)のMMA、5.67mg(2.34×10−2ミリモル)のBPO、2mLのトルエンを容量50mLの反応容器中で混合した。窒素ガス下で、この溶液を80℃に加熱し、1.5時間反応させた。次いで、反応が完結した後、50mLのメタノールを添加したところ、大量の白色固体が沈殿した。濾過した後、沈殿物を10mLのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、メタノールにより再沈殿させた(テトラヒドロフラン/メタノール=1:6)。再沈殿の工程を3回繰り返した後、生成物を乾燥させた。かくして、アクリル系共重合体(PMMA−co−PTCDHM)を、白色固体として、収量1.58g、収率90%で得た。得られたアクリル系共重合体(PMMA−co−PTCDHM)の数平均分子量(Mn)は、80,400であった。また、アクリル系共重合体(PMMA−co−PTCDHM)の分子量分布(PDI)は、1.73であり、ガラス転移温度(Tg)は、125℃であった。これらの結果を表1に示す。
【0052】
≪比較例1≫
アクリル系重合体(PMMA;Mn=106,300)の製造
まず、1g(10ミリモル)のMMA、5.67mg(2.34×10−2ミリモル)のBPO、2mLのトルエンを容量50mLの反応容器中で混合した。窒素ガス下で、この溶液を80℃に加熱し、1.5時間反応させた。次いで、反応完結後、50mLのメタノールを添加したところ、大量の白色固体が沈殿した。濾過した後、沈殿物を10mLのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、メタノールにより再沈殿させた(テトラヒドロフラン:メタノール=1:6)。再沈殿の工程を3回繰り返した後、生成物を乾燥させた。かくして、アクリル系重合体(PMMA)を、白色固体として、収量0.85g、収率85%で得た。得られたアクリル系重合体(PMMA)の数平均分子量(Mn)は、106,300であった。また、アクリル系重合体(PMMA)の分子量分布(PDI)は、1.14であり、ガラス転移温度(Tg)は、105℃であった。これらの結果を表1に示す。
【0053】
≪比較例2≫
アクリル系共重合体(PMMA−co−PTCDMA;Mn=113,400)の製造
まず、0.3g(1.28ミリモル)のTCDMA、0.5mL(5.12ミリモル)のMMA、0.21g(8.5×10−2ミリモル)のBPO、2mLのトルエンを容量50mLの反応容器中で混合した。窒素ガス下で、この溶液を80℃に加熱し、1.5時間反応させた。次いで、反応完結後、50mLのメタノールを添加したところ、大量の白色固体が沈殿した。濾過した後、沈殿物を10mLのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、メタノールにより再沈殿させた(テトラヒドロフラン:メタノール=1:6)。再沈殿の工程を3回繰り返した後、生成物を乾燥させた。かくして、アクリル系共重合体を、白色固体として、収量1.11g、収率91%で得た。得られたアクリル系共重合体(PMMA−co−PTCDMA)の数平均分子量(Mn)は、113,400であった。また、アクリル系共重合体(PMMA−co−PTCDMA)の分子量分布(PDI)は、1.10であり、ガラス転移温度(Tg)は、108℃であった。これらの結果を表1に示す。
【0054】
なお、TCDMAの合成方法は、下記の式に示されるとおりである。
【0055】
【化11】

【0056】
式中、Rのメチレン基は、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンの8位に結合しているが、この位置に限定されるものではない。
【0057】
【表1】

【0058】
表1から明らかなように、実施例1および2で製造したアクリル系共重合体は、比較例1で製造した従来のPMMAおよび比較例2で製造した従来のアクリル系共重合体(Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.42,5617-5626(2004)を参照)に比べて高いガラス転移温度(Tg)を有する。すなわち、実施例1および2で製造したアクリル系共重合体は、従来のPMMAおよび従来のアクリル系共重合体に比べて高い熱安定性を有する。
【0059】
また、実施例1および2で製造したアクリル系共重合体は、比較例1で製造した従来のPMMAおよび比較例2で製造した従来のアクリル系共重合体に比べて同程度の高収率で得られる。さらに、実施例1および2における共重合速度は、比較例1および2における重合速度と同程度であり、しかも、実施例1および2で製造したアクリル系共重合体は、比較例1で製造した従来のPMMAおよび比較例2で製造した従来のアクリル系共重合体と同様に白色固体であり、フィルムやシート状に成形すれば、高い透明性を有する。
【0060】
かくして、従来のPMMAおよび従来のアクリル系共重合体に比べて、共重合速度を低下させることなく、また、着色したり、透明性を低下させたりすることなく、高い熱安定性を有する高耐熱性アクリル系共重合体が高収率で得られることがわかる。
【0061】
以上、本発明の好適な実施例を例示したが、これらの実施例は、本発明を限定するものではなく、本発明の精神および範囲を逸脱しない限りにおいては、当業者であれば行い得る少々の変更や修飾を付加することが可能である。したがって、本発明が請求する保護範囲は、特許請求の範囲を基準とする。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の高耐熱性アクリル系共重合体は、従来のPMMAおよび従来のアクリル系共重合体に比べて、共重合速度を低下させることなく、また、着色したり、透明性を低下させたりすることなく、高い熱安定性を有するので、改良された光学用アクリル系ポリマー材料として、幅広い分野で利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】


[式中、xは1〜3であり、yは0〜3である]
で示されるモノマーからなる繰り返し単位とメタクリル系モノマー誘導体からなる繰り返し単位とを有することを特徴とする高耐熱性アクリル系共重合体。
【請求項2】
数平均分子量(Mn)が5,000〜1,000,000である請求項1に記載の高耐熱性アクリル系共重合体。
【請求項3】
前記メタクリル系モノマー誘導体が下記式(3):
【化2】


[式中、Rは水素またはメチル基であり、Rは炭素数1〜22のアルキル基または炭素数5〜22のシクロアルキル基である]
で示される請求項1または2に記載の高耐熱性アクリル系共重合体。
【請求項4】
前記式(1)で示されるモノマーからなる繰り返し単位とメタクリル系モノマー誘導体からなる繰り返し単位とのモル比が5〜95:95〜5である請求項1〜3のいずれか1項に記載の高耐熱性アクリル系共重合体。
【請求項5】
下記式(2):
【化3】


[式中、xは1〜3であり、yは0〜3である]
で示されるα−アクリル系モノマー誘導体とメタクリル系モノマー誘導体とを、1個またはそれ以上のO−O結合を有する過酸化物である重合反応開始剤の存在下で、共重合する工程を包含することを特徴とする高耐熱性アクリル系共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記重合反応開始剤が、過酸化ベンゾイル(BPO)、2−エチルペルオキシヘキサン酸tert−ブチル(PBO)、過酸化ジ−tert−ブチル(PBD)、過炭酸tert−ブチルイソプロピル(PBI)または4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)吉草酸n−ブチル(PHV)である請求項5に記載の高耐熱性アクリル系共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記メタクリル系モノマー誘導体が下記式(3):
【化4】


[式中、Rは水素またはメチル基であり、Rは炭素数1〜22のアルキル基または炭素数5〜22のシクロアルキル基である]
で示される請求項5または6に記載の高耐熱性アクリル系共重合体の製造方法。
【請求項8】
前記α−アクリル系モノマー誘導体と前記メタクリル系モノマー誘導体とのモル比が5〜95:95〜5である請求項5〜7のいずれか1項に記載の高耐熱性アクリル系共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2010−155971(P2010−155971A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244746(P2009−244746)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】