説明

高耐衝撃性塗膜を形成させるための塗料

本発明は、水性塗料に対して1〜90質量%の割合の少なくとも1つの液晶水性調剤(WZ)、少なくとも1つの被膜形成ポリマー(FP)および1つの架橋剤(V)を含有する水性塗料に関し、この場合、液晶水性調剤(WZ)は、有利に少なくとも1個の架橋可能な反応性の官能基(a)を有しかつその製造の際に官能基(Gr)の間に12〜70個の炭素原子の脂肪族スペーサー基(SP)を有する二官能性モノマー単位(DME)をポリエステル構成単位の全体量に対して7〜50モル%の割合で含有し、ならびにそのさらには介在不可能な個々の塗膜が平均塗膜直径(D)と平均塗膜厚さ(d)との比D/d50超であり、およびその電荷が少なくとも部分的に、1回帯電された有機アニオン(OA)で補償されているプラスに帯電された層状無機粒子(AT)を水性調剤(WZ)の非揮発性成分に対して0.1〜30質量%含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
金属基材上に耐ストーンチップ性の塗装を提供することは、自動車製造分野において特に重要である。サーフェイサー、又はストーンチップ防護性プライマーは、一連の要件の管理下にある。即ち、サーフェイサー塗膜は、硬化後に、高いレベルの耐ストーンチップ性(殊に多重衝撃に対して)と同時にプライマーへの良好な接着(殊にKTLおよびベースコートに対して)、約20〜35μmの層厚での良好なサーフェイサー特性(基材構造のマスキング)、ならびに最終的なクリアコート層で良好な外観をもたらすように作用すべきである。さらに適切な塗料材料は、殊に環境的な理由から、特に有機溶剤が少ないか、または可能な限り有機溶剤を含まないことが望ましい。サーフェイサー用の塗料は、公知であり、例えば欧州特許出願公開第0788523号明細書および欧州特許出願公開第1192200号明細書中に記載されている。ここでは、水で希釈可能なポリウレタンがサーフェイサー用の結合剤として記載されており、このポリウレタンは、殊に比較的僅かな層厚で耐ストーンチップ性を保証する。耐ストーンチップ性試験での負荷の際、公知技術水準のサーフェイサーは、自動車の量産塗装の際に使用されるOEM塗装系(KTL−サーフェイサー−ベースコート−クリアコート)において、良好な耐ストーンチップ性、すなわち比較的僅かな数の損傷にも拘わらず、しばしば塗膜上に斑点を生じ、ここで保護されなかった金属基材は、OEM塗装系での制御不能な亀裂成長、および引続く金属と電着塗膜との境界面での層間剥離により露出されてしまう。
【0002】
WO−A−01/04050の記載から、良好な遮断特性を有する、水性塗料用のアニオン性またはカチオン性積層充填剤が公知であり、これは、層間距離を拡大するために、充填剤中で有機化合物によって変性されており、この有機化合物は、少なくとも4つの原子によって分離された、少なくとも2つのイオン性基を有する。
カチオン性充填剤としては、混合水酸化物、例えば殊にハイドロタルサイト型のものを使用することができる。WO−A−01/04050に記載されている塗料は、ガスおよび液体に対して極めて良好な遮断特性を有する塗装のために使用され、この場合この充填剤は、硬化プロセスに影響を及ぼさないのが望ましい。WO−A−01/04050に記載された塗料は、OEM塗装系での使用にのみ制限されるのが適当である。それというのも、適用された塗膜層中の有機変性剤は、多重電荷のために局所的に高い電荷密度を発生させ、これは巨視的に硬化された塗膜の増大された吸湿性を生じ、このことは、殊に塗膜の耐結露性に対して不利な結果をまねくからである。OEM塗装系における衝撃負荷後の斑点を改善させるための塗料の使用、殊に露出された基材表面を減少させるための塗料の使用は、記載されていない。WO−A−2007/065861には、少なくとも8個の炭素原子を有する少なくとも2個の有機アニオンを対イオンとして有する混合水酸化物、殊にヒドロタルサイト型が記載されており、この場合これらのアニオンは、さらなる官能基、例えばヒドロキシル基、アミノ基またはエポキシ基を有することができる。このように変性された疎水性ヒドロタルサイトの使用は、ポリマー、殊にゴム状ポリマーのための介在可能な充填剤として記載されている。塗料中でのヒドロタルサイトの使用は、WO−A−2007/065861中に一般的に記載されている。疎水性ヒドロタルサイトは、OEM塗装系の水性塗料中への使用のために制限されてのみ適しており、それというのも、このヒドロタルサイトと特に水分散性結合剤との分子レベルでの相容性は、劣悪であるからである。OEM塗装系における衝撃負荷後の斑点を改善させるための塗料の使用、殊に露出された基材表面を減少させるための塗料の使用は、WO−A−2007/065861中には記載されていない。公知技術水準に照らしてみて得られる本発明の課題は、環境的に好ましい水性塗料材料ベースであり、斑点のシナリオが明らかに改善され、殊に金属と電着塗膜の間の境界面でのOEM塗膜複合体の層間剥離が明らかに減少され、ひいては衝撃負荷後に露出される基板表面積が明らかに減少されている、耐ストーンチップ性の塗装を提供することである。更に、耐ストーンチップ性塗装は、僅かな水吸収傾向および塗膜の硬化の際の僅かな変色傾向を示すはずである。
【0003】
意外なことに、前記課題を解決し、かつ水性塗料に対して1〜99質量%の割合の液晶水性調剤(WZ)ならびに架橋剤を含有する水性塗料であって、その際、この液晶水性調剤(WZ)は、(WZ)の非揮発性含量に対して特に10〜99.9質量%、水分散性ポリエステル(PES)の製造の際にポリエステル成分の全体量に対して7〜50モル%の割合で、官能基の間に12〜70個の炭素原子の脂肪族スペーサー基(SP)を有する二官能性モノマー単位(DME)が使用され、および少なくとも1個の架橋可能な反応性の官能基(a)を有する少なくとも1つの水分散性ポリエステル(PES)ならびにそのさらには介在不可能な個々の塗膜の平均塗膜直径(D)と平均塗膜厚さ(d)との比D/dが50を上廻り、およびその電荷が少なくとも部分的に、一価に帯電した有機アニオン(OA)で補償されているプラスに帯電された層状無機粒子(AT)を含有する前記水性塗料が見い出された。本発明による水性塗料は、さらなる成分として少なくとも1つの被膜形成性の、特に水分散性のポリマー(FP)、有利に水分散性ポリウレタン(PUR)を含有し、この水分散性ポリウレタンは、特に有利に二官能性モノマー単位(DME)を有する、少なくとも1つの水分散性ポリエステル成分(PESB)を含有する。
【0004】
発明の詳細な説明
液晶水性調剤(WZ)
本発明による水性塗料は、水性ベースコート材料に対して1〜99質量%、有利に5〜95質量%の割合の液晶水性調剤(WZ)を含有する。液晶水性調剤(WZ)は、官能基の間に12〜70個の炭素原子の脂肪族スペーサー基(SP)を有する二官能性モノマー単位(DME)をポリエステル成分の全体量に対して7〜50モル%の割合で含有し、および少なくとも1つの架橋可能な反応性の官能基(a)を有する、少なくとも1つの水分散性ポリエステル(PES)を水性調剤(WZ)の非揮発性含量に対して特に10〜99.9質量%、殊に15〜95質量%含有し、ならびにそのさらには介在不可能な個々の塗膜の平均塗膜直径(D)と平均塗膜厚さ(d)との比D/dが50を上廻り、およびその電荷が少なくとも部分的に、一価に帯電した有機アニオン(OA)で補償されているプラスに帯電された層状無機粒子(AT)を(WZ)の非揮発性含量に対して0.1〜30質量%、特に1〜20質量%含有する。
【0005】
水分散性ポリエステル(PES)
好ましい液晶水性調剤(WZ)は、水分散性ポリエステル(PES)の製造の際にポリエステル成分の全体量に対して7〜50モル%の割合で、官能基(Gr)の間に12〜70個の炭素原子の脂肪族スペーサー基(SP)を有する二官能性モノマー単位(DME)が使用され、および少なくとも1個の架橋可能な反応性の官能基(a)を有する少なくとも1つの水分散性ポリエステル(PES)を、(WZ)の非揮発性含量に対して10〜99.9質量%、有利に15〜95質量%含有する。
【0006】
本発明の範囲において水分散性とは、ポリエステル(PES)が水相で平均粒径500nm未満、好ましくは200nm未満、特に好ましくは100nm未満の凝集体を形成するか、または分子状で溶解されているということである。ポリエステル(PES)から成る凝集体の大きさは、自体公知の方法で、ポリエステル(PES)への親水基の導入によって制御されることができる。水分散性ポリエステル(PES)は、有利にアニオンを形成する能力を有し、かつ中和後にポリエステル(PES)が安定して水中に分散されうることを保証する基を配合している。アニオン形成しうるのに適した基は、好ましくはカルボン酸基である。アニオン形成可能な基の中和のために、好ましくは同様にアンモニア、アミンおよび/またはアミノアルコール、例えばジエチルアミンおよびトリエチルアミン、ジメチルアミノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、モルホリンおよび/またはN−アルキルモルホリンが使用される。水分散性ポリエステル(PES)は、特に1,000〜100,000ダルトン、特に好ましくは1,500〜50,000ダルトンの質量平均分子量Mw(ポリスチレンを標準として有する、規格DIN 55672−1ないし−3によるゲル透過クロマトグラフィーにより測定した)を有する。
【0007】
本発明によるポリエステルの二官能性モノマー単位(DME)は、官能基(Gr)の間に12〜70個の炭素原子を有する脂肪族スペーサー基(SP)を有する。好ましい脂肪族スペーサー基(SP)は、15〜60個、特に有利に18〜50個の炭素原子を有する。更に、スペーサー基(SP)は、4〜12個の炭素原子を有する脂環式または芳香族構造単位、炭素原子の全体に対して30モル%まで、有利に25モル%まで、特に有利に20モル%までの割合のエチレン系不飽和構造単位、ならびにヘテロ原子、例えば有利に酸素、硫黄および/または窒素を含有することができる。
【0008】
モノマー単位(DME)の好ましい官能基(Gr)は、ヒドロキシル基および/またはカルボン酸基、またはカルボン酸無水物基である。それぞれ2個のヒドロキシル基または2個のカルボン酸基を有するモノマー単位は、特に好ましい。
【0009】
モノマー単位(DME)として、有利には、炭素原子数12〜70、好ましくは、15〜60、特に好ましくは18〜50のスペーサー基(SP)を有する、ジオールおよび/またはジカルボン酸、またはこれらの無水物が使用される。モノマー単位(DME)として殊に好ましいのは、前記の判断基準を満たす二量体の脂肪アルコールおよび/または二量体のオレフィン系不飽和脂肪酸および/またはこれらの水素化誘導体、例えばUnichema社のPhpol(登録商標)シリーズの二量体の脂肪酸である。モノマー単位(DME)は、水分散性ポリエステル(PES)の構成単位の全体に対して7〜50モル%、有利に8〜45モル%、特に有利に9〜40モル%の割合で使用される。
【0010】
さらなる構成単位として、水分散性ポリエステル(PES)は、有利に次のモノマー単位(MEn)を含有する:水分散性ポリエステルの構成単位の全体に対して1〜40モル%、有利に2〜35モル%、特に有利に5〜30モル%の割合で、2〜12個の炭素原子を有する非分枝鎖状の脂肪族および/または脂環式のジオール(ME1)、例えば殊にエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールおよび/または1,4−ジメチロールシクロヘキサン、特に有利に1,4−ブタンジオールおよび/または1,6−ヘキサンジオール。本発明の範囲内で非分枝鎖状とは、脂肪族および/または脂環式の炭素単位がさらなる脂肪族置換基を有しないことを意味する。水分散性ポリエステルの構成単位の全体に対して1〜50モル%、有利に2〜40モル%、特に有利に5〜35モル%の割合で、4〜12個の炭素原子を有する分枝鎖状の脂肪族および/または脂環式のジオール(ME2)、例えば殊にネオペンチルグリコール、2−メチル−2−プロピルプロパンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,5−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、特に有利にBネオペンチルグリコール。本発明の範囲内で分枝鎖状とは、脂肪族および/または脂環式の炭素単位がさらなる脂肪族置換基を有することを意味する。
【0011】
場合によっては水分散性ポリエステルの構成単位の全体に対して0〜30モル%、有利に2〜25モル%、特に有利に5〜20モル%の割合で、4〜12個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式および/または芳香族のジカルボン酸(ME3)、例えば殊に蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オルトフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサン二酸、1,4−シクロヘキサン二酸、またはこれらの無水物、特に有利に1,2−シクロヘキサン二酸、ならびに
場合によっては水分散性ポリエステルの構成単位の全体に対して0〜40モル%、有利に0〜35モル%、特に有利に0〜30モル%の割合で、少なくとも3個のカルボン酸基を有する脂肪族、脂環式および/または芳香族のポリカルボン酸(ME4)、例えば殊にベンゼントリカルボン酸、例えばベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸およびベンゼン−1,3,5−トリカルボ酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセリン酸、リンゴ酸またはこれらの無水物、特に有利にベンゼントリカルボン酸、例えばベンゼン−1,2,4−トリカルボ酸およびベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸。
【0012】
モノマー単位(DME)、(ME1)、(ME2)ならびに場合により(ME3)および(ME4)は、一般的によく知られた、ポリエステル化学の方法により反応される。反応温度は、有利に140〜240℃、有利に150〜200℃である。一定の場合には、好ましくは、エステル化反応を促進させることは、好ましく、この場合触媒として、例えばテトラアルキルチタネート、亜鉛アルコキシレートまたは錫アルコキシレート、ジアルキル錫オキシドまたはジアルキル錫オキシド有機塩が使用される。
【0013】
本発明の好ましい実施態様において、最初に第1の工程でモノマー単位(DME)、(ME1)、(ME2)および場合により(ME3)は、適当な溶剤中で互いに反応され、それ自体本発明によるポリエステル(PES)水溶液として使用されうるポリエステル−ポリオールに変わり、この場合全てのジオール(ME1)、(ME2)および場合により(DME)総和と、全てのジカルボン酸(ME3)および場合により(DME)の総和とのモル比は、3.5:1〜1.5:1の間、有利に3:1〜1.75:1、特に有利に2.5:1〜2:1の間にあり、その後に場合によっては第2の工程でポリエステルポリオールは、モノマー単位(ME4)と反応され、本発明による水分散性ポリエステル(PES)に変わる。DIN EN ISO 3682に記載の水分散性ポリエステル(PES)の酸価は、有利に10〜80mg KOH/g 非揮発性含量、特に有利に20〜60mg KOH/g 非揮発性含量である。
【0014】
更に、水分散性ポリエステル(PES)は、架橋可能な反応性官能基(a)を有し、その際、それ自体と、および/またはポリエステル(PES)のさらなる官能基と、および/または本発明による水性塗料のさらなる成分、殊に架橋剤(V)と反応して、共有結合を形成することができる、基本的には全ての基が適している。このような基は、既に記載されたモノマー構成単位(DME)および/または(MEn)により、またはこのような基を有するさらなる構成単位により導入される。
【0015】
それ自体で反応する基については、例示的に次のものが挙げられる:メチロール基、メチロールエーテル基、N−アルコキシメチルアミノ基および殊にアルコキシシリル基。殊に、ヒドロキシ基、アミノ基および/またはエポキシ基が、基(a)として好ましい。特に好ましいのは、ヒドロキシル基であり、この場合DIN EN ISO 4629による水分散性ポリエステル(PES)のヒドロキシル価は、特に10〜500mg KOH/g非揮発性含量、有利に50〜200mg KOH/g非揮発性含量である。
【0016】
有利に液晶水性調剤(WZ)中の無機粒子(AT)は、そのさらには介在不可能な個々の塗膜の平均塗膜が平均塗膜直径(D)と平均塗膜厚さ(d)との比D/d50超を有し、およびその電荷が少なくとも部分的に、一価に帯電した有機アニオン(OA)で補償されている、固体の層状無機粒子(AT)または特に懸濁液中に存在するプラスに帯電された層状無機粒子(AT)を、(WZ)の非揮発性含量に対して0.1〜30質量%、有利に1〜20質量%含有する。平均塗膜直径(D)は、REM(走査電子顕微鏡)写真の評価により算出することができ、一方で、平均塗膜厚さ(d)は、分子構造およびそれからもたらされる結晶構造によって定義され、および計算により算出可能であり、ならびに個々の小板についての実験的にX線構造分析またはAFM(原子間力鏡検法Atomic Force Microscopy)による輪郭測定によりあとづけることができる。プラスに帯電した無機粒子(AT)の平均塗膜直径(D)は、特に100〜1000nm、特に有利に200〜500nmであり、塗膜厚さ(d)は、特に1.0nm未満、特に0.75nm未満である。
【0017】
プラスに帯電した無機粒子(AT)の製造は、自然に存在する、または合成条件由来の層状鉱物の対イオンと、一価に帯電した有機アニオン(OA)との交換により、自体公知の方法で、または一価に帯電した有機アニオン(OA)の存在下での合成によって行なうことができる。このために例えば、プラスに帯電された無機粒子(AT)は、個々の塗膜の間の中間空間を膨潤させることができ、かつその中に有機アニオン(OA)が溶解して存在する状態にある適切な液状媒体中に懸濁され、および引続き再度単離される(Langmuir 21(2005),8675)。イオン交換が起こる場合には、特に、15mol%より多く、特に有利に30mol%より多く、合成条件由来の対イオン(A)は、一価に帯電した有機アニオン(OA)によって置き換えられる。有機対イオンの大きさと三次元方向に依存して、塗膜構造は、一般的に拡張し、この際に荷電された塗膜の間の距離は、特に少なくとも0.2nm、好ましくは少なくとも0.5nm拡張される。
【0018】
本発明によれば、好ましいのは、層状にプラスに帯電された無機粒子(AT)、例えば殊に式:
(M(1-x)2+x3+(OH)2)(Ax/yy-n2
〔式中、M2+は、二価のカチオンであり、M3+は、三価のカチオンであり、原子価yを有するアニオン(A)は、対イオンとして表わされ、この場合xは、0.05〜0.5の値を取り、対イオン(A)の一部分は、一価に帯電した有機アニオン(OA)によって置き換えられている〕で示される混合水酸化物である。二価のカチオンM2+として特に好ましいのは、カルシウムイオン、亜鉛イオンおよび/またはマグネシウムイオンであり、三価のカチオンM3+としては、アルミニウムイオンであり、およびアニオン(A)としては、燐酸イオン、硫酸イオンおよび/または炭酸イオンである。なぜならばこれらのイオンは、本発明による塗膜を硬化させる際に色調の変化を起こさないことを十分に保証するからである。混合水酸化物の合成は、公知である(例えば、Eilji Kanezaki,Preparation of Layered Double Hydroxides in Interface Science and Technology,Vol.1,Chapter 12,第345頁以降−Elsevier,2004,ISBN 0−12−088439−9)。この合成は、多くの場合に、水相中、一定に保たれた既定の塩基性pH値のもとで、カチオンの塩の混合物から行なわれる。金属塩のアニオンを中間空間に挿入された無機対イオン(A)として含む、混合水酸化物が得られる。二酸化炭素の存在でこの合成を行なう場合、一般的には、挿入された炭酸イオン(A)を有する混合水酸化物が得られる。この合成を二酸化炭素または炭酸イオンを排除して、一価に帯電した有機アニオン(OA)またはその酸性前駆体の存在で実施する場合、一般的には、中間空間に挿入された有機アニオン(OA)を有する混合水酸化物が得られる(共沈法またはテンプレート法)。混合水酸化物を製造するための他に選択可能な合成ルートは、所望の挿入すべきアニオンの存在での、金属アルコラートの加水分解である(米国特許第6514473号明細書)。更に、挿入すべき一価に帯電した有機アニオン(OA)を、挿入された炭酸イオン(A)とのイオン交換によって混合水酸化物に導入することが可能である。これは、例えば非晶質のか焼された混合酸化物を望ましい挿入すべきアニオン(OA)の存在で再水和することによって行なうことができる。挿入された炭酸イオン(A)を含む混合水酸化物を800℃未満の温度でか焼することにより、塗膜構造が維持されたまま非晶質の混合酸化物が生じる(再水和法)。
【0019】
他の選択可能な方法によれば、イオン交換は、水性媒体またはアルコール性水性媒体中で、挿入すべき有機アニオンの酸性前駆体の存在で行なうことができる。この場合には、挿入すべき一価に帯電した有機アニオン(OA)の前駆体の酸強度に応じて、炭酸イオン(A)を除去するために、希釈された鉱酸での処理が必要となる。
【0020】
少なくとも部分的な電荷補償のため、および前記混合水酸化物の拡張のために使用される一価に帯電した有機アニオン(OA)は、電荷担体としてアニオン基(AG)を有し、例えば特に好ましいのは、カルボン酸、スルホン酸および/またはホスホン酸の一価に帯電したアニオンである。一価に帯電した有機アニオン(OA)は、有利に1,000ダルトン未満、特に有利に500ダルトン未満の分子量を有する。
【0021】
本発明の1つの好ましい実施態様において、一価に帯電した有機アニオン(OA)は、付加的に、場合により塗料の硬化の際に共有結合の形成下にポリマー(FP)の官能基(a)と反応する官能基(c)を有する。特に好ましくは官能基(c)は、ヒドロキシル基、エポキシ基および/またはアミノ基から選択されている。官能基(c)は、一価に帯電した有機アニオン(OA)のアニオン基(AG)と、特にスペーサーによって分離されており、この場合このスペーサーは、場合によりヘテロ原子、例えば窒素、酸素および/または硫黄で変性された、および場合により置換された、全部で2〜30個の炭素原子、有利に3〜20個の炭素原子を有する脂肪族化合物および/または脂環式化合物、場合によりヘテロ原子、例えば窒素、酸素および/または硫黄で変性された、および場合により置換された、全部で2〜20個の炭素原子、有利に3〜18個の炭素原子を有する芳香族化合物、および/または上記の脂環式化合物および芳香族化合物の部分構造体の群から選択されており、この場合、前記の部分構造体中には、殊に少なくとも3個の炭素原子および/またはヘテロ原子が官能基(c)とアニオン基(AG)との間に存在している。
【0022】
特に好ましくは、一価に帯電した有機アニオン(OA)のスペーサーは、官能基(c)をアニオン基(AG)に対してm位またはp位に有する、場合により置換されたフェニル基またはシクロヘキシル基である。この場合、殊に官能基(c)としては、ヒドロキシル基および/またはアミノ基が使用され、アニオン基(AG)としては、カルボキシレート基および/またはスルホネート基が使用される。本発明のもう1つの実施態様において、有機アニオン(OA)は、上記官能基(c)の中の少なくとも2個を有する。
【0023】
官能基(c)を有する、一価に帯電した有機アニオン(OA)として殊に好ましいのは、次の通りである:m−またはp−アミノベンゼンスルホネート、m−またはp−ヒドロキシベンゼンスルホネート、m−またはp−アミノベンゾエートおよび/またはm−またはp−ヒドロキシベンゾエート、または2個の官能基(c)を有する一価に帯電した有機アニオン(OA)として殊に好ましいのは、次の通りである:
3−ヒドロキシ−4−アミノベンゼンスルホネート、3−アミノ−4−ヒドロキシベンゼンスルホネート、3−ヒドロキシ−4−アミノベンゼンベンゾエートおよび/または3−アミノ−4−ヒドロキシベンゾエート。
【0024】
合成条件由来の好ましい炭酸塩をアニオン(A)として含む、上記の特に好ましい混合水酸化物は、イオン交換の際に特にアニオン(A)の15mol%超、特に有利に30mol%超が一価に帯電した有機アニオン(OA)によって置き換えられている。好ましくはカチオンに帯電した無機イオン粒子(AT)の変性は、別個の方法で本発明による塗料への混入前に実施され、この場合この方法は、特に有利に水性媒体中で実施される。好ましくは一価に帯電した有機アニオン(OA)で変性され帯電された無機粒子(AT)は、合成工程で製造される。このようにして製造された粒子は、極めて僅かな固有色を示し、当該粒子は、好ましくは無色である。一価に帯電した有機アニオン(OA)で変性されプラスに帯電された粒子(AT)は、1つの合成工程において、殊にカチオンの金属塩および有機アニオンから製造されてよい。この場合、一価に帯電した有機アニオン(OA)の水性アルカリ溶液中には、二価のカチオンM2+の塩と三価のカチオンM3+の塩との水性混合物が、望ましい化学量論比に調節されるまで搬入される。この添加は、特にCO2不含雰囲気中で、好ましくは不活性ガス雰囲気下、例えば窒素下で、撹拌しながら10〜100℃の温度、有利に室温で行なわれ、この場合、水性反応混合物のpH値は、特にアルカリ金属水酸化物、有利にNaOHの添加によって、8〜12の範囲内、特に9〜11に維持される。金属塩の水性混合物の添加後、生じる懸濁液は、前記温度で0.1〜10日間、特に3〜24時間エージングされ、生じる沈殿物は、特に遠心分離によって単離され、および脱イオン水で数回洗浄される。その後、精製された沈殿物から水を用いて、5〜50質量%、特に10〜40質量%の固体含量を有する、一価に帯電した有機アニオン(OA)で変性されたプラスに帯電した粒子(AT)懸濁液が調整される。このように製造される、変性されたプラスに帯電した無機粒子(AT)懸濁液は、塗料を製造するための本発明による方法において原理的に全ての段階で、すなわち塗料の通常の成分の添加前、添加中、および/または添加後に混入されてよい。一般的に個別の塗膜としてではなく、塗膜スタックとして得られかつ使用される、変性されプラスに帯電された無機粒子(AT)として得られた層状の二重の混合水酸化物の結晶性は、選択された合成パラメーター、使用されるカチオンの種類、M2+/M3+カチオンの比ならびに使用されるアニオンの種類および量に依存し、およびできるだけ大きな値を取るべきである。
【0025】
混合水酸化物相の結晶性は、相応するX線回折の分析から計算される、干渉性散乱ドメインの大きさとして表現することができ、Mg−Alベースの混合された二重の水酸化物の場合には、例えば、[003]反射および[110]反射である。即ち、例えばEliseev他は、試験されたMg−Alベースの混合された二重の水酸化物のドメインの大きさの成長に対する、熱によるエージングの影響を示し、そしてこれを、なお存在する四面体上に配位されたアルミニウムが、混合水酸化物塗膜中に八面的に配位されたアルミニウムとして発展的に組み込まれることによって説明しており、このことは、27Al−NMR−スペクトル中の相応するシグナルの相対的な強度によって証明される(Doklady Chemistry 387(2002),777)。
【0026】
液晶水性調剤(WZ)のさらなる成分
更に、液晶水性調剤(WZ)は、通常の塗料添加剤を有効量で含有することができる。即ち、液晶水性調剤(WZ)中には、好ましい無機粒子(AT)と共に、好ましいポリエステル(PES)および被膜形成性ポリマー(FP)、殊に水分散性ポリウレタン(PUR)、殊に水混和性または水性の溶剤が(WZ)の非揮発性含量に対して40質量%まで、特に30質量%まで、特に有利に20質量%までの割合で含有されていてよい。適した塗料添加剤の他の例は、例えば、Johan Bieleman著,"Lackadditive",Verlag Wiley−VCH,Weinheim,New York,1998の教科書に記載されている。
【0027】
液晶水性調剤(WZ)の製造
特に、液晶水性調剤(WZ)は、最初に変性されプラスに帯電された層状無機粒子(AT)以外の調剤の全ての成分および場合により架橋剤(V)を混合することにより製造される。生じる混合物には、無機粒子(AT)、または好ましくは、特に上記の方法により製造された、無機粒子(AT)の懸濁液を、好ましくはこの懸濁液が均一に分散されるまで撹拌しながら導入し、このことは、光学的方法、とりわけ目視的鑑定によって追跡される。生じる混合物は、特に10〜50℃の温度で、有利に室温で2〜30分間、特に5〜20分間撹拌しながら、無機粒子ATの調製物の微粒子状の均質な分散を達成するために超音波で処理し、この場合には、特に好ましい実施態様で、超音波発生源の先端部が、混合物中に浸漬される。超音波処理の間に、混合物の温度は10〜60K上昇してよい。このようにして得られる分散液は、特に少なくとも12時間撹拌しながら、室温でエージングされる。その後、場合により架橋剤(V)は、撹拌しながら添加され、そしてこの分散液は、特に水を用いて10〜70質量%、特に15〜60質量%の固体含量に調整される。
【0028】
液晶水性調剤(WZ)の性質
調剤(WZ)は、液晶の性質を有する。殊に、この調剤は、交差した偏光子の下で本発明による成分(AT)の濃度に依存して等方性相と共に存在しうる複屈折相を示す。この複屈折相の組織は、ネマチック相に帰因する種類の相に近似的に一致している。
【0029】
本発明による水性調剤上への超小角X線散乱により、ならびに極低温破砕試料の走査電子顕微鏡写真(極低温REM)によって、典型的な層状積層構造を結像させることができるか、またはこの層状積層構造の平均積層間隔に関連して一次強度 最大(1st−order intensity maxima)から典型的な層状積層構造を特徴付けることができる。
【0030】
水分散性被膜形成ポリマー(FP)
本発明による水性効果下塗り塗料は、液晶の水性調剤(WZ)と共にさらなる成分として有利に水性効果下塗り塗料の非揮発性含量に対して5〜80質量%、特に有利に10〜60質量%の水分散性被膜形成ポリマー(FP)を含有する。このような水分散性被膜形成ポリマーは、例えばWO−A−02/053658、欧州特許出願公開第0788523号明細書および欧州特許出願公開第1192200号明細書中に記載されており、この場合本発明においては、有利に前記のポリエステル(PES)とは区別される水分散性ポリエステル、水分散性ポリアクリレート、水分散性ポリエステルおよび/または水分散性のアクリル化ポリウレタンの群からの被膜形成ポリマー(FP)が使用される。特に有利には、被膜形成ポリマー(FP)は、既に水分散性ポリエステル(PES)において記載されたような架橋性官能基(a)を有し、この場合には、ヒドロキシル基が特に好ましい。本発明の1つの好ましい実施態様において、水分散性被膜形成ポリマー(FP)は、少なくとも1つの水分散性ポリウレタン(PUR)を含有し、この水分散性ポリウレタンは、特に有利に少なくとも1つのポリエステル単位(PESB)をこのポリエステル単位(PESB)の単位全体に対して1〜40モル%、有利に2〜35モル%、特に有利に5〜30モル%の割合の前記の二官能性モノマー単位(DME)と一緒に含有する。本発明の範囲内で水分散性とは、ポリウレタン(PUR)が水相中で平均粒径500nm未満、好ましくは200nm未満、特に好ましくは100nm未満の凝集体を形成するか、または分子状で分散して溶解されていることを意味する。ポリウレタン(PUR)から成る凝集体の大きさは、自体公知の方法で、ポリウレタン(PUR)への親水基の導入によって制御されうる。水分散性ポリウレタン(PUR)中には、特に、アニオン形成可能な基が組み込まれ、この基は、それ自体の中和後にポリウレタン(PUR)が水中で安定的に分散されうることを保証する。アニオンを形成しうるのに適した基は、好ましくはカルボン酸基である。アニオン形成可能な基の中和のために、好ましくは同様にアンモニア、アミンおよび/またはアミノアルコールが使用され、その例はジエチルアミンおよびトリエチルアミン、ジメチルアミノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、モルホリンおよび/またはN−アルキルモルホリンである。ポリウレタン(PUR)のポリエステル単位(PESB)の二官能性モノマー単位(DME)は、官能基(Gr)の間に12〜70個の炭素原子を有する脂肪族スペーサー基(SP)を有する。ポリエステル単位(PESB)の好ましいスペーサー基(SP)およびモノマー単位(DME)は、水分散性ポリエステル(PES)の項目に記載されている。ポリエステル単位(PESB)のモノマー単位(DME)として殊に好ましいのは、二量体の脂肪アルコールおよび/または二量体のオレフィン系不飽和脂肪酸および/またはこれらの水素化誘導体であり、これらは、前記の判断基準を満たし、殊にこの例は、Unichema社のPripol(登録商標)シリーズの二量体の脂肪酸である。
【0031】
更に、構成単位として、ポリウレタン(PUR)の好ましいポリエステル構成単位(PESB)は、場合により他のモノマーと共に有利に次のモノマー単位(MEnn)を含有する:
ポリエステル構成単位(PESB)の全体に対して1〜80モル%、有利に2〜75モル%、特に有利に5〜70モル%の割合で、2〜12個の炭素原子を有する非分枝鎖状の脂肪族および/または脂環式のジオール(ME1)、例えば殊にエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールおよび/または1,4−ジメチロールシクロヘキサン、特に有利に1,4−ブタンジオールおよび/または1,6−ヘキサンジオール。本発明の範囲内で非分枝鎖状とは、脂肪族および/または脂環式の炭素単位が他の脂肪族置換基を有しないことを意味する。ポリエステル構成単位(PESB)の全体に対して1〜40モル%、有利に2〜35モル%、特に有利に5〜30モル%の割合で、4〜12個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式および/または芳香族のジカルボン酸(ME22)、例えば殊に蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オルトフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサン二酸、1,4−シクロヘキサン二酸、またはこれらの無水物、特に有利にイソフタル酸。
【0032】
モノマー単位(DME)、(ME11)、(ME22)および場合によりさらなるモノマー単位は、一般的によく知られた、ポリエステル化学の方法により反応される。反応温度は、有利に140〜240℃、有利に150〜200℃である。一定の場合には、エステル化反応を促進させることは、好ましく、この場合触媒として、例えばテトラアルキルチタネート、亜鉛アルコキシレートまたは錫アルコキシレート、ジアルキル錫オキシドまたはジアルキル錫オキシド有機塩が使用される。
【0033】
水分散性ポリウレタン(PUR)は、有利にポリエステル構成単位(PESB)ならびに場合によりポリオール単位1個当たり少なくとも2個のヒドロキシル基を有する他の低分子量および/または高分子量のポリオールから構成され、このポリオールは、有利にビスイソシアナト化合物および/またはその混合物および/またはその二量体、三量体または四量体の付加物、例えば殊にジウレートまたはイソシアヌレート、例えば特にヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、TMXDI、4,4′−メチレン−ビス−(シクロヘキシルイソシアネート)、4,4′−メチレン−ビス−(フェニリルイソシアネート)、1,3−ビス−(1−イソシアナト−1−メチルエチル)−ベンゾール、特に有利にヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはイソホロンジイソシアネートおよびアニオン形成能を有する化合物、例えば殊に2,2−ビス−(ヒドロキシメチル)−プロピオン酸と反応され、ポリウレタンに変わる。好ましくは、ポリウレタン(PUR)は、ポリオール、特にトリオール、特に有利に1,1,1−トリス−(ヒドロキシメチル)−プロパンを比例的に使用することによって分枝鎖状に構成される。ポリウレタンの水分散性は、陰イオン形性能を有する基を特にアミン、特に有利にジエタノールアミンで中和することによって達成され、この場合中和度は、中和可能な基の全体に対して80〜100%であるのが好ましい。本発明の好ましい実施態様において、水分散性ポリウレタン(PUR)は、架橋可能な官能基(a)を有し、例えばこれは、既に水分散性ポリエステル(PES)において記載された。特に好ましいのは、ヒドロキシル基であり、この場合DIN EN ISO 4629による被膜形成性ポリマー(FP)のヒドロキシル価は、非揮発性含量1g当たり特に0〜200KOH、有利に0〜100KOHであり、殊にDIN EN ISO 4629による水分散性ポリウレタン(PUR)のヒドロキシル価は、非揮発性含量1g当たり特に0〜50KOH、有利に0〜30KOHである。
【0034】
架橋剤(V)
本発明において有利に使用される架橋剤(V)は、特に少なくとも2個の官能基(b)を有し、この官能基は、相補的基として水分散性ポリエステル(PES)および/または被膜形成性ポリマー(FP)、殊にポリウレタン(PUR)の官能基(a)と塗料の硬化の際に共有結合の形成下に反応する。官能基(b)は光線および/または熱によって反応させることができる。好ましいのは、熱により架橋可能な基(b)である。架橋剤(V)は、本発明による方法のために使用される塗料中で、塗料の不揮性含量に対して特に2〜50質量%、特に好ましくは5〜40質量%で存在する。
【0035】
好ましいのは、ヒドロキシ基、アミノ基および/またはエポキシ基から選択される好ましい官能基(a)と反応する、架橋剤(V)中の相補的な官能基(b)である。特に好ましい相補的な基(b)は、カルボキシル基、場合によりブロックされたポリイソシアネート基、カルバマート基および/または場合により部分的に、または完全にアルコールでエーテル化されているメチロール基の群から選択されている。殊に好ましいのは、官能基(a)としての特に好ましいヒドロキシ基と反応する、架橋剤(V)中の相補的な官能基(b)であり、この場合、(b)は、特に場合によりブロックされたポリイソシアネート基および/または場合により部分的に、または完全にアルコールによりエーテル化されているメチロール基の群から選択されている。
【0036】
適したポリイソシアネートおよび適したブロック化剤の例は、例えば欧州特許出願公開第1192200号明細書中に記載されており、この場合このブロック化剤は、とりわけ、本発明による方法のために使用されるポリマー(P)の反応性の基(a)との、ならびに本発明による方法のために使用される塗料のさらなる成分中のさらなる反応性の基との、イソシアネート基の望ましくない反応を適用前および適用中に阻止するという機能を有する。ブロック化剤は、ブロックトイソシアネート基が、熱により塗料の架橋が起こるべき温度範囲、とりわけ120℃〜180℃の温度範囲で初めて再び脱ブロック化し、および官能基(a)との架橋反応が開始するように選択される。メチロール基含有成分としては、殊に例えば欧州特許出願公開第1192200号明細書中に記載されているような水分散性アミノプラスト樹脂が使用されてよい。特に、アミノプラスト樹脂、殊にメラミン−ホルムアルデヒド樹脂が使用され、これは100〜180℃、有利に120〜160℃の温度範囲内で官能基(a)、殊にヒドロキシ基と反応される。
【0037】
本発明による水性塗料の他の成分
前記の結合剤および架橋剤(V)と共に、本発明による塗料は、なおさらなる場合により官能化された、特に水分散性の結合剤成分を、塗料の不揮発性成分に対して40質量%まで、特に30質量%までの含量で含有してよい。更に、本発明による塗料は、常用の塗料添加剤を有効量で含有することができる。即ち例えば、有色顔料及び効果顔料、ならびに通常の充填剤は、公知の量で塗料の成分であってよい。顔料および/または充填剤は、有機または無機の化合物から構成されていてよく、これらは、例示的に欧州特許出願公開第1192200号明細書中に記載されている。他の使用可能な添加剤は、例えば、UV吸収剤、ラジカル捕捉剤、スリップ添加剤、重合抑制剤、消泡剤、乳化剤、架橋剤、均展剤、被膜形成助剤、レオロジー調整剤、ならびに特に官能基(a)、(b)および/または後述の基(c)の反応のための触媒、および官能基(a)、(b)および/または(c)のための付加的な架橋剤である。適した塗料添加剤の他の例は、例えば、Johan Bieleman著,"Lackadditive",Verlag Wiley−VCH,Weinheim,New York,1998の教科書に記載されている。前記添加剤は、本発明による塗料中に、塗料の不揮発性成分に対して特に40質量%まで、有利に30質量%まで、特に有利に20質量%までの含量で含有されている。
【0038】
本発明による水性塗料の製造および塗布ならびに生じる塗膜の特性決定
本発明による塗料は、塗料分野で常用の全ての公知方法により適した混合装置中、例えば攪拌釜、ディスソルバーまたはウルトラターラックス(Ultraturrax)中で製造することができる。好ましくは、水性調剤(WZ)が装入され、被膜形成性の水分散性ポリマー(FP)、架橋剤(V)ならびに場合により善意の他の成分が撹拌下に添加される。本発明による水性効果下塗り塗料は、特に水で有利に5〜50質量%、特に有利に10〜45質量%、殊に20〜40質量%の固体含量に調節される。
【0039】
好ましくは、生じる本発明による水性効果下塗り塗料、殊に水性調剤(WZ)と被膜形成性ポリマー(FP)との混合物からなる前駆体は、架橋剤(V)の添加前に同様に液晶特性を有する。
【0040】
本発明による水性塗料、特に完成層における硬化後に、1〜100μm、好ましくは5〜75μm、特に好ましくは10〜60μm、殊に15〜50μmの乾燥膜厚が生じるような湿潤膜厚で塗布される。
【0041】
本発明による方法での塗料の適用は、通常の適用方法、例えば吹付け、ナイフ塗布、刷毛塗り、注型、浸漬またはロール塗布によって行なうことができる。吹付けによる適用方法が使用される場合には、圧縮空気吹付け、エアレス吹付け、高速回転吹付けおよび静電吹付塗布(ESTA)が好ましい。
【0042】
本発明による水性塗料の適用は、一般的に最大70〜80℃の温度で実施され、その結果、短時間で作用する熱負荷の際に塗料の変化または損傷ならびに塗料の場合による後処理すべきスプレー過剰が生じることなく、適した適用粘度を達成することができる。
【0043】
本発明による塗料から塗布された層の好ましい熱処理は、公知方法により、例えば空気循環炉内での加熱によって、または赤外灯での照射によって行なわれる。好ましくは、熱硬化は、80〜180℃の温度、有利に100〜160℃の温度で行なわれ、一方で時間は、1分から2時間、有利に2分から1時間、特に有利に10〜45分の間である。強い熱負荷をかけることができる基材、例えば金属を使用する場合には、180℃を上廻る温度でも熱処理を実施することができる。しかしながら一般的には、160〜180℃の温度を越えないことが推奨される。これに対して最大限界までしか熱負荷をかけることができない基材、例えばプラスチックを使用する場合には、温度および硬化過程に必要となる時間は、この最大限界に一致させるべきである。熱硬化は、30秒から2時間、特に1分から1時間、殊に2〜30分の或る程度の静止時間後に行なうことができる。静止時間は、殊に塗布された下塗り塗膜の流展および脱ガスのため、または揮発性成分、例えば溶剤または水の蒸発のために使用される。この場合、塗布された層の損傷または変化、例えば早期の完全な架橋が生じない限り、静止時間は、使用によって高められた、80℃までの温度で支持されかつ短縮させることができる。
【0044】
前記の塗料は、本発明によれば、OEM塗装系で金属基板および/またはプラスチック基板での耐ストーンチップ性を向上させるために使用され、当該塗膜構造は、基材から見て、電着された耐食層、特にカソード電着された層、その上に適用されたサーフェイサー層およびサーフェイサー層上に適用されたトップコート層からなり、このトップコート層は、特に着色性下塗り塗料および最終的なクリヤラッカーから構成されている。この場合、本発明により製造される塗料は、これらの層のうち少なくとも1つを構築するためにOEM塗装系内で使用される。本発明により製造される塗料は、有利にサーフェイサー層の構築のために使用する。本発明により製造される塗料をサーフェイサーとして使用する場合には、特に電着塗料、とりわけカソード電着塗料を、本発明による塗料の塗布前に硬化させる。さらなる好ましい方法において、本発明による塗料から形成される層上には、2つの更なる工程で最初に下塗り塗料および最終的にクリヤラッカーが塗布される。この場合には、好ましい1つの方法において、最初に本発明による塗料から成る層を硬化させ、その後、特に第1の工程で水性下塗り塗料を塗布し、そして1〜30分の間、特に2〜20分の間、40〜90℃の温度、特に50〜85℃の温度での中間フラッシュオフ後、および第2の工程でクリヤラッカー、特に二成分クリヤラッカーで被覆し、この場合下塗り塗料とクリヤラッカーは、一緒に硬化される。本発明のさらなる実施態様において、本発明による塗料で形成されるサーフェイサー層は、下塗り塗膜の塗布前に、1〜30分の間、特に2〜20分の間、40〜90℃、特に50〜85℃の温度でフラッシュオフされる。この後サーフェイサー塗膜、下塗り塗膜およびクリヤラッカー塗膜は、一緒に硬化される。
【0045】
このようにして製造されたOEM塗装系は、衝撃応力に対する顕著な耐性、とりわけストーンチッピングに対して顕著な耐性を示す。従来技術のサーフェイサーを有するOEM塗装系と比較して、とりわけ損傷表面割合の減少、および完全に剥離する表面の割合の減少、すなわち保護されていない基材の面積割合の極めて明らかな減少が観察される。これらの優れた性質と共に、本発明による塗料形成される塗膜は、顕著な耐結露性、耐食層およびトップコートに対する顕著な接着性、とりわけ下塗り塗膜に対する顕著な接着性、ならびに硬化後の固有色の顕著な安定性を有し、このことはまた、本発明により製造される塗料を、トップコート成分として使用することを可能にする。更に、本発明による塗料で、焼付け温度が比較的低く、かつ良好なトップコート状態を有する塗膜が実現可能になる。
【0046】
以下の実施例は、本発明を説明するものである。
【実施例】
【0047】
実施例1:本発明によるポリエステル(PES)の水性分散液の合成
馬蹄形攪拌機、窒素入口管、還流冷却器および蒸留ブリッジを備えた反応器中に、1,6−ヘキサンジオール10.511g、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール9.977g、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物6.329g、二量体脂肪酸23.410g(Pripol(登録商標)1012、Unichema社、二量体含量少なくとも97質量%、三量体含量最大1質量%、モノマー含量最大で微少量)およびシクロヘキサン0.806gを導入する。反応器内容物を窒素雰囲気中で撹拌下に、反応混合物が8〜12mg KOH/g非揮発性含量のDIN EN ISO 3682による酸価および3.7〜4.2dPa.sの粘度(ICI社の円錐円板粘度計中で23℃で2−ブトキシエタノール中の反応混合物の80質量%の溶液として測定した)を有するまで220℃に加熱する。その後に、シクロヘキサンを留去し、反応混合物を160℃に冷却する。
【0048】
その後、反応混合物に1,2,4−ベンゾトリカルボン酸無水物10.511gを添加し、160℃に加熱し、この温度で、生じるポリエステルが38mg KOH/g非揮発性含量のDIN EN ISO 3682の酸価、81mg KOH/g非揮発性含量のDIN EN ISO 4629のヒドロキシル価、約19000ダルトンの質量平均分子量Mw(標準としてのポリスチレンを用いて規格DIN 55672−1から−3によるゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した)および5.0〜5.5dPa.sの粘度(ICI社の円錐円板粘度計中で23℃で2−ブトキシエタノール中の反応混合物の50質量%の溶液として測定した)を有するまで維持する。
【0049】
反応混合物を130℃に冷却し、N,N−ジメチルアミノ−2−エタノール2.369gを添加する。更に、95℃への冷却後、脱イオン水17.041gおよび2−ブトキシエタノール19.046gを添加する。生じる分散液をさらなるN,N−ジメチルアミノ−2−エタノールおよび脱イオン水の添加によって7.4〜7.8のpH値および60質量%の非揮発性含量に調節する。
【0050】
実施例2:本発明によるポリウレタン(PUR)の水性分散液の合成
馬蹄形攪拌機、窒素入口管、還流冷却器および蒸留ブリッジを備えた反応器中に、1,6−ヘキサンジオール30g、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸16g、オリゴマーの脂肪酸54g(Pripol(登録商標)1012、Uniqema社、二量体含量少なくとも97質量%、三量体含量最大1質量%、モノマー含量最大で微少量)およびキシレン0.9gを導入する。反応器内容物を窒素雰囲気中で撹拌下に、反応混合物が4mg KOH/g非揮発性含量のDIN EN ISO 3682による酸価および11〜17dPa.sの粘度(ICI社の円錐円板粘度計中で50℃で測定した)を有するまで230℃に加熱する。生じるポリエステル溶液は、73質量%の非揮発性含量を有する。
【0051】
馬蹄形攪拌機、窒素入口管、還流冷却器および蒸留ブリッジを備えたさらなる反応器中に、前記のポリエステル溶液21.007g、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール0.205g、2,2−ビス−(ヒドロキシメチル)−プロピオン酸1.252g、2−ブタノン5.745gおよび3−イソシアナトメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート5.745gを導入する。反応器内容物を窒素雰囲気中で撹拌下に、反応混合物が2:1の希釈の形でN−メチルピロリドン中で0.8〜1.1質量%のイソシアネート含量および5〜7dPa.sの粘度(ICI社の円錐円板粘度計中で23℃で測定した)を有するまで82℃に加熱する。その後、この反応混合物に1,1,1−トリス−(ヒドロキシメチル)プロパン0.554gを添加し、82℃に加熱し、この温度で反応混合物が1:1の希釈の形でN−メチルピロリドン中で0.3未満のイソシアネート含量および12〜13dPa.sの粘度(ICI社の円錐円板粘度計中で23℃で測定した)を有するまで維持する。この反応混合物を2−ブトキシエタノール5.365gで希釈し、N,N−ジメチルアミノ−2−エタノール0.639gを添加する。生じる混合物を脱イオン水60g中に導入し、その際温度は、80℃に維持する。その後、2−ブトキシエタノールを、反応混合物に対して0.25質量%未満の残留含量になるまで留去する。生じる分散液をさらなるN,N−ジメチルアミノ−2−エタノールおよび脱イオン水の添加によって7.2〜7.4のpH値および27質量%の非揮発性含量に調節する。
【0052】
実施例3ヒドロタルサイトの合成および変性
4−アミノベンゼンスルホン酸(4−absa)の0.21モルの水溶液にZnCl2−6H2O(0.52モル)とAlCl3 6H2O(0.26モル)との混合物を室温で窒素雰囲気下で絶えず攪拌しながら3時間に亘って添加する。この際にpH値は、3モルのNaOH溶液を添加することにより、pH=9で一定に維持する。金属塩の水性混合物の添加後、生成する懸濁液を室温で3時間、エージングする。生成する沈殿物を、遠心分離により単離し、そして脱イオン水で4回洗浄する。
【0053】
生成する白色反応生成物の懸濁液、Zn2Al(OH)6(4−absa)・2H2O(LDH懸濁液)は、27.1質量%の固体含量および9のpH値を有する。
【0054】
実施例4:本発明による塗料の前駆物質の調製
液晶の水性調剤(WZ)を製造するために、製造例3の記載により製造されたヒドロタルサイト懸濁液13.5gを攪拌しながら脱イオン水8.0gで希釈した、製造例1に記載の水性ポリエステル分散液15.0g(PES)からなる混合物中に室温で導入し、および12時間攪拌する。しばしば液晶の調剤中で観察されるような条痕を有する、粘稠な白色の分散液を生じる。交叉した偏光子の下で、ネマチック液晶性の複屈折相は、等方性の非複屈折相と共に確認できる。超小角X線散乱は、ラメラ構造に典型的であるような強度最大を示す。散乱ベクターq〜0.085[1/nm]における1次元強度最大(シンクロトロン放射実験室HASYLAB、DORIS、BW4、DESY、Hamburgで測定した、波長λ=1.38nmを有する電磁波に対して)は、75nmの層間間隔に相当する。
【0055】
その後に、液晶の水性調剤(WZ)に製造例2に記載の水性ポリウレタン分散液85.0g(PUR)を被膜形成ポリマー(FP)として添加する。貯蔵安定性の乳白色の低粘稠な分散液を生じ、これは、それぞれ分散液に対して、ポリエステル7.4質量%(PES)、ポリウレタン18.7質量%(PUR)、2−ブトキシエタノール6.4質量%およびヒドロタルサイト3.0質量%を含有する。小角X線散乱は、ラメラ構造に典型的であるような強度最大を示す。散乱ベクターq〜0.30[1/nm]における1次元強度最大(波長λ=0.154nmを有するCuKα線に対して)は、21nmの層間間隔に相当する。交叉した偏光子の下で、複屈折相は、全く確認することができない。被覆した液晶被膜の加熱(100℃で5分間)の後、なお常に均一な相は、交叉した偏光フィルターならびに照射パラメーターの同一の設定の下で高められた強度を有する。
【0056】
実施例5:本発明による塗料の製造、該塗料の塗布および該塗料の性質
本発明による塗料の製造のために、実施例4に記載の本発明による塗料のための前駆物質を一晩中エージングする。その後に、架橋剤(V)として攪拌しながらメラミンホルムアルデヒド樹脂4.05g(Ineos Melamines GmbH社のMAPRENAL MF 900)を実施例4に記載の前駆物質100g中に導入する。本発明による水性塗料の非揮発性含量に対する、架橋剤(V)の含量は、12質量%である。
【0057】
このように製造された本発明による塗料を、カソード電着塗料で予め被覆されて前処理された鋼板(Chemetall社の鋼板:焼き付けられたカソード電着塗料の厚さ:21 +/− 2μm、基材の厚さ:750μm)上にスプレーを用いて塗布する(Koehne社の自動コーター)。本発明による水性塗料から得られる被膜を20分間140℃で硬化させ、この際に30+/−3μmの乾燥膜厚が生じる。
【0058】
比較目的のために、カソード電着塗料で予め被覆されて前処理された鋼板上に、市販のサーフェイサー(BASF Coatings AG社のFU43−9000:対照サーフェイサー)を、同様に30+/−3μmの乾燥膜厚が生じるように塗布し、そして製造マニュアルに従って150℃で20分間硬化させる。このようにして予め被覆された鋼板上に、OEM塗装系の形成のために、さらに個別の工程でまず市販の水性下塗り塗料(BASFCoatings AG社のFV95−9108)を塗布し、80℃で10分間フラッシュオフし、最終的に溶剤含有2成分クリヤラッカー(BASF Coatings AG社のFF95−0118)を塗布する。水性下塗り塗膜およびクリヤラッカー塗膜を一緒に140℃で20分間硬化させ、その後に下塗り塗膜は、約15μmの乾燥膜厚を有し、およびクリヤラッカー塗膜は、約45μmの乾燥膜厚を有する。
【0059】
このようにして被覆された鋼板を、23℃で3日間50%の相対空気湿度でエージングする。
【0060】
上記のように製造されて被覆された鋼板を、DIN 55996−1に従って耐ストーンチッピング試験に掛け、その際、それぞれ冷却された鉄グラニュール500g(粒子直径4〜5mm、Wuerth社、Bad Friedrichshall在)を利用し、および衝撃装置(Erichsen社のモデル508 VDA)は、2バールの空気圧に調整する。このようにして損傷を与えた試験鋼板の清浄化後、この鋼板を酸性銅塩の溶液中に浸漬し、この際、被覆が衝撃により完全に剥離された鋼板基材の箇所に、元素状銅が析出される。それぞれ損傷を受けかつ後処理された試験鋼板の10cm2での損傷形成を、画像加工ソフトウェア(SIS−Analyse,BASF Coatings AG,Muenster在)を用いて把握する。それぞれ全表面に対して、衝撃によって損傷を受けた表面の割合ならびに完全に剥離された表面の割合を評価する。対照サーフェイサーで製造された塗膜構造と比較して、本発明による塗料をサーフェイサーとして用いて形成される塗膜構造は、損傷を受けた表面の割合の減少および完全に剥離された表面、すなわち保護されていない金属基材の表面の割合の極めて明らかな減少を有する。
カソード電着塗料から成る塗膜に対する、および下塗り塗膜に対する接着性は、傑出しており、このことにより、塗膜境界での層間剥離は、明らかに低減される。その上、本発明による塗料で形成される塗膜は、顕著な耐結露性および焼付後の実質的に不変の固有色を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性塗料に対して1〜95質量%の割合の少なくとも1つの液晶水性調剤(WZ)、少なくとも1つの被膜形成ポリマー(FP)および少なくとも1つの架橋剤(V)を含有する水性塗料。
【請求項2】
液晶の水性調剤(WZ)が、有利に少なくとも1個の架橋性の反応性官能基(a)を有しかつその製造において官能基(Gr)間に12〜70個の炭素原子の脂肪族スペーサー基(SP)を有する二官能性モノマー単位(DME)をポリエステル構成単位の全体に対して7〜50モル%の割合で使用する、少なくとも1つの水分散性ポリエステル(PES)を当該水性調剤(WZ)の非揮発性含量に対して10〜99.9質量%含有し、ならびに
そのさらには介在不可能な個々の塗膜が平均塗膜直径(D)と平均塗膜厚さ(d)との比D/d50超であり、およびその電荷が少なくとも部分的に、一価に帯電した有機アニオン(OA)で補償されているプラスに帯電された層状無機粒子(AT)を当該水性調剤(WZ)の非揮発性含量に対して0.1〜30質量%含有する、請求項1記載の水性塗料。
【請求項3】
水分散性ポリエステル(PES)がモノマー単位(DME)と共にさらなる構成単位として:
(ME1):2〜12個の炭素原子を有する非分枝鎖状の脂肪族および/または脂環式のジオールを、水分散性ポリエステル(PES)の構成単位の全体に対して1〜40モル%、
(ME2):4〜12個の炭素原子を有する分枝鎖状の脂肪族および/または脂環式のジオールを、水分散性ポリエステル(PES)の構成単位の全体に対して1〜50モル%、
(ME3):場合によっては4〜12個の炭素原子を有する分枝鎖状の脂肪族、脂環式および/または芳香族のジカルボン酸を、水分散性ポリエステル(PES)の構成単位の全体に対して0〜30モル%、および
(ME4):場合によっては少なくとも3個のカルボン酸基を有する脂肪族、脂環式および/または芳香族のポリカロンカルボン酸を、水分散性ポリエステル(PES)の構成単位の全体に対して0〜40モル%有する、請求項2記載の水性塗料。
【請求項4】
被膜形成性ポリマー(FP)が少なくとも1つの水分散性ポリウレタン(PUR)を含有し、この水分散性ポリウレタン(PUR)中には、構成単位として官能性モノマー単位(DME)を含有するポリエステル構成単位(PESB)が組み込まれている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の水性塗料。
【請求項5】
架橋剤(V)が塗料の硬化の際に供給結合を形成しながらポリエステル(PES)および/または被膜形成性ポリマー(PP)の官能基(a)と反応する、少なくとも2個の架橋性の官能基(b)を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の水性塗料。
【請求項6】
無機粒子(AT)が一般式
(M(1-x)2+x3+(OH)2)(Ax/yy-n2
〔式中、M2+は、二価のカチオンであり、M3+は、三価のカチオンであり、および(A)は、原子価yを有するアニオンであり、この場合アニオン(A)の一部分は、一価に帯電した有機アニオン(OA)によって置き換えられている〕で示される少なくとも1つの混合水酸化物を含有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の水性塗料。
【請求項7】
有機アニオン(OA)は、アニオン基(AG)としてカルボン酸基、スルホン酸基および/またはホスホン酸基を有する、請求項6記載の水性塗料。
【請求項8】
有機アニオン(OA)は、アニオン基(AG)と共にヒドロキシル基、エポキシ基および/またはアミノ基から選択された付加的な官能基を有する、請求項6または7記載の水性塗料。
【請求項9】
OEM塗装系における請求項1から8までのいずれか1項に記載の水性塗料の使用。
【請求項10】
プライマー塗膜、サーフェイサー塗膜、下塗り塗膜およびクリヤラッカー塗膜からなるOEM塗装系において、
前記塗膜の少なくとも1つが請求項1から7までのいずれか1項に記載の水性塗料を含有することを特徴とする、プライマー塗膜、サーフェイサー塗膜、下塗り塗膜およびクリヤラッカー塗膜からなるOEM塗装系。

【公表番号】特表2012−526865(P2012−526865A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510124(P2012−510124)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001420
【国際公開番号】WO2010/130312
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【出願人】(510133942)ユニヴェルシテ ブレーズ パスカル (6)
【氏名又は名称原語表記】Universite Blaise Pascal
【住所又は居所原語表記】34, avenue Carnot, F−63000 Clermont−Ferrand, France
【Fターム(参考)】