説明

高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材と鋼管およびその製造方法

【課題】鋼材表面に溶融亜鉛めっきを施した後、溶融Zn−Al−Mg合金めっきを行う2段めっき方法において、めっき層の構造と下層の厚みを最適化することにより、高耐食性を有し、加工時のめっき密着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】鋼材の表面に、下層として、0.01〜1.5μmの厚みのFe−Al合金層を有し、その上に、中間層として、質量%で、Al:4〜20%、Fe:0.1〜15%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有し、さらに、その上に、上層として、質量%で、Al:4〜20%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐食性を有するめっき鋼材に関するものであり、さらに詳しくは、加工後、主に、屋外で種々の用途、例えば、配管用、建材用、土木用、農業用、漁業用として適用できる溶融めっき鋼材と鋼管およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋外で使用される鋼材は、耐食性の付与を目的として、溶融亜鉛めっきが施されて使用される。耐食性は、亜鉛めっきの付着量が大きいほど良好であるため、高耐食性を必要とする鋼材では、浸漬時間を長くして、付着量を大きくすることが一般的である。
【0003】
しかし、浸漬時間を長くしすぎると、Fe−Zn合金層が発達することにより、「ヤケ」と呼ばれる外観不良が発生するとともに、加工性が低下し、めっき剥離が起こり易くなるため、亜鉛めっきの付着量を大きくすることによる耐食性の向上には限界がある。
【0004】
そこで、亜鉛めっきした鋼材の上に、さらに、耐食性のよいめっきを行う2段めっき方法が提案されている。例えば、特許文献1には、鋼材表面に溶融亜鉛めっきを施した後、溶融Zn−Al合金めっきを行うめっき方法が開示されている。また、特許文献2には、鋼材表面に溶融亜鉛めっきを施した後、溶融Zn−Al−Mg合金めっきを行うめっき方法が開示されている。
【0005】
こうした鋼材の上にめっきを行う方法以外に、特許文献3には、予め、高耐食性めっきを行った鋼板を加工・溶接して、目的とする鋼材を得る方法が開示されている。
【0006】
こうしためっき鋼材の一つとして、近年、配管用めっき鋼管の使用が増加している。配管用めっき鋼管は、継ぎ手部の要求品質の厳格化・多様化の観点から、メカニカルな継ぎ手が普及しつつあり、フレア加工等を施して使用される。フレア加工は、管端をつば状に約90°の角度に広げる厳しい加工であるため、加工の際にめっき剥離が起こり易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭52−30233号公報
【特許文献2】特開2002−47549号公報
【特許文献3】特開2002−115793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
耐食性向上に対する要請は、さらに高まる傾向にあり、従来の溶融亜鉛めっきや、その上に溶融Zn−Al合金めっきを行う2段めっきでは、耐食性が不十分であり、需要者の要求を十分に満たすことができなくなってきた。
【0009】
また、特許文献2に開示された溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼材は、加工時のめっき密着性が十分でなく、フレア加工時に、めっき剥離が生じる。さらに、特許文献3に開示された溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼管は、溶接の際、溶接部のめっきがなくなるため、溶射等による溶接部の補修が必要となり、生産コストが上昇する問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記の現状に鑑みて、高耐食性を有し、加工性に優れた溶融亜鉛めっき鋼材およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、高耐食性溶融亜鉛めっき鋼材について鋭意研究を重ねた結果、鋼材表面に溶融亜鉛めっきを施した後、溶融Zn−Al−Mg合金めっきを行う2段めっき方法において、めっき層の構造と下層の厚みを最適化することにより、高耐食性を有し、加工時のめっき密着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼材を製造できることを見いだして、本発明をなすに至った。
【0012】
すなわち、本発明の要旨とするところは、以下のとおりである。
【0013】
(1)鋼材の表面に、下層として、0.01〜1.5μmの厚みのFe−Al合金層を有し、前記下層の上に、中間層として、質量%で、Al:4〜20%、Fe:0.1〜15%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有し、さらに、前記中間層の上に、上層として、質量%で、Al:4〜20%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有することを特徴とする高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材。
【0014】
(2)鋼材の表面に、下層として、0.01〜1.5μmの厚みのFe−Al−Zn合金層を有し、前記下層の上に、中間層として、質量%で、Al:4〜20%、Fe:0.1〜15%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有し、さらに、前記中間層の上に、上層として、質量%で、Al:4〜20%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有することを特徴とする高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材。
【0015】
(3)鋼材の表面に、下層として、0.01〜1.5μmの厚みのFe−Al−Si合金層を有し、その上に、中間層として、質量%で、Al:4〜20%、Fe:0.1〜15%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有し、さらに、その上に、上層として、質量%で、Al:4〜20%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有することを特徴とする高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材。
【0016】
(4)鋼材の表面に、下層として、0.01〜1.5μmの厚みのFe−Al−Zn−Si合金層を有し、前記下層の上に、中間層として、質量%で、Al:4〜20%、Fe:0.1〜15%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有し、さらに、前記中間層の上に、上層として、質量%で、Al:4〜20%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有することを特徴とする高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材。
(5)前記下層の合金層はMgを含有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材。
【0017】
(6)前記中間層、または、前記中間層および前記上層中に、Siを0.0005〜0.8%含有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材。
【0018】
(7)前記中間層の厚みが、前記上層の厚みの2倍以上であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材。
【0019】
(8)前記中間層の厚みの最大値と最小値の差が、30μm以内であることを特徴とする前記(7)に記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材。
【0020】
(9)質量%で、
C:0.005〜0.15%、
Si:0.15〜0.25%、
Mn:0.40〜1.6%、
P:0.04%以下、
S:0.04%以下、
Al:0.001〜0.06%、
N:0.0080%以下を含有し、
残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼材であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材。
【0021】
(10)鋼管の形状を有することを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材。
【0022】
(11)鋼材の表面に、溶融亜鉛めっきを行った後、溶融亜鉛合金めっきを行う二段めっき方法において、第一段として、亜鉛を主体とするめっき浴に浸漬して、溶融亜鉛めっきを行い、第二段として、溶融Zn−Al−Mgめっき浴、または、溶融Zn−Al−Mg−Siめっき浴のいずれかに浸漬して、溶融亜鉛合金めっきを行うことを特徴とする高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材の製造方法。
【0023】
(12)前記第一段としての溶融亜鉛めっき浴が、質量%でZn:99%以上であり、残部が不可避的不純物であることを特徴とする前記(11)に記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材の製造方法。
【0024】
(13)前記第一段としての溶融亜鉛めっき浴が、質量%で、Al:0.001〜0.5%、および、Ni:0.001〜0.2%の1種または2種を含み、残部がZn及び不可避的不純物であることを特徴とする前記(11)に記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材の製造方法。
【0025】
(14)前記第二段としての溶融Zn−Al−Mgめっき浴が、質量%で、Al:4〜10%、Mg:0.1〜5%を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物であることを特徴とする前記(11)〜(13)のいずれかに記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材の製造方法。
【0026】
(15)前記第二段としての溶融Zn−Al−Mg−Siめっき浴が、質量%で、Al:4〜10、Mg:0.1〜5%、Si:0.0005〜0.8%を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物であることを特徴とする前記(11)〜(13)のいずれかに記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材の製造方法。
【0027】
(16)前記第一段のめっき工程で、被めっき物を、温度430〜500℃の溶融亜鉛めっき浴で、60秒以上浸漬して溶融めっきを行った後、前記第二段のめっき工程で、被めっき物を、温度400〜480℃の溶融Zn−Al−Mgめっき浴、または、溶融Zn−Al−Mg−Siめっき浴で5秒以上浸漬して溶融亜鉛合金めっきを行うことを特徴とする前記(11)〜(15)のいずれかに記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材の製造方法。
(17)前記第一段のめっき工程で溶融めっきした被めっき物を、温度300℃以上に保ったまま、前記第二段のめっき工程で、溶融めっきを行うことを特徴とする前記(11)〜(16)のいずれか1項に記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材の製造方法。
【0028】
(18)前処理として、塩化第二鉄溶液で被めっき物を処理することを特徴とする前記(11)〜(17)のいずれかに記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材の製造方法。
【0029】
(19)(10)に記載のメッキ鋼材を塑性加工しためっき鋼管であって、加工部にめっき剥離のないめっき鋼管。
【0030】
(20)鋼管の形状を有する鋼材に(11)〜(18)のいずれかに記載のめっき処理を行った後、塑性加工を行うことを特徴とする(19)に記載の加工部にめっき剥離のないめっき鋼管の製造方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、鋼材表面に溶融亜鉛めっきを施した後、溶融Zn−Al−Mg合金めっきを行う2段めっき方法において、めっき層の構造と下層の厚みを最適化することにより、高耐食性を有し、加工時のめっき密着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼材を提供することを可能としたものであり、産業の発展に貢献するところが極めて大きいものである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0033】
本発明の溶融亜鉛めっき鋼材は、鋼材の表面に、下層として、0.01〜1.5μmの厚みのFe−Al合金層、Fe−Al−Zn合金層、Fe−Al−Si合金層、Fe−Al−Zn−Si合金層、および、これらの合金層中にMgを含有する合金層のうち、いずれか1種を有し、その上に、中間層として、質量%で、Al:4〜20%、Fe:0.1〜15%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有し、さらに、その上に、上層として、質量%で、Al:4〜20%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有する溶融亜鉛めっき鋼材である。
【0034】
本発明において、めっき鋼材とは、鋼材上に、亜鉛系めっき層を付与したものである。本発明の下地鋼材としては、熱延鋼材、冷延鋼材、ともに使用でき、鋼種も、Al−Siキルド鋼、Siキルド鋼、Ti、Nb等を添加した極低炭素鋼、および、これらにP、Si、Mn等の強化元素を添加した高強度鋼、ステンレス鋼等、種々のものを適用できる。
【0035】
めっき鋼材の形状は、鋼線等の線状や、鋼板等の板状、ネット状、鋼管等の筒状、棒状等の三次元形状等、種々の形状を使用できる。例えば、ボルト、ナット、送電金具等の小型の基材から高欄、親柱、橋梁用防護柵、道路標識、道路用カードフェンス、河川用フェンス、落石防止網、鋼管等の大型の基材まで使用できる。
【0036】
下層の合金層は、Fe−Al合金層、Fe−Al−Zn合金層、Fe−Al−Si合金層、Fe−Al−Zn−Si合金層、および、これらの合金層中にMgを含有する合金層のいずれか1種である。これら合金層は、連続溶融亜鉛めっき鋼板ラインで製造される溶融亜鉛めっき鋼板のめっき/鋼板の界面で観察されるFe−Al合金層、または、Fe−Al−Zn合金層と呼ばれる合金層と同じものである。
【0037】
この合金層は、Fe2Al5、または、FeAl3を主体とした合金であるが、Alの一部がZnと置換し、Fe2(Al1-x、Znx5、または、Fe(Al1-x、Znx3として存在するという報告もある。
【0038】
また、鋼中や、めっき浴中にSiが存在すると、さらに、Alの一部がSiと置換し、Fe−Al−Si合金層、または、Fe−Al−Zn−Si合金層として観察される。また、めっき浴中にMgが存在すると、さらに、合金層中にMgが観察される場合もある。
【0039】
いずれの合金層であっても、断面からEPMAで観察すると、Alの濃化した層として、容易に観察される。めっき/鋼板界面で観察されるAlの濃化した層を、Fe−Al合金層、または、Fe−Al−Zn合金層と呼び、さらに、Siの濃化が確認される層を、Fe−Al−Si合金層、または、Fe−Al−Zn−Si合金層と呼ぶ。
【0040】
このFe−Al合金層、Fe−Al−Zn合金層、Fe−Al−Si合金層、および、Fe−Al−Zn−Si合金層のいずれか1種が存在すると、これらの層が、鋼材からのFeの拡散を阻害するバリアー層として働き、脆いFe−Zn合金層の生成を防ぐことができるので、加工部のめっき密着性の向上のために、このFe−Al合金層、Fe−Al−Zn合金層、Fe−Al−Si合金層、および、Fe−Al−Zn−Si合金層のいずれか1種を形成させることが必要である。この効果を発揮させるためには、0.01μm以上の厚みのFe−Al合金層、Fe−Al−Zn合金層、Fe−Al−Si合金層、および、Fe−Al−Zn−Si合金層が必要である。しかしながら、これらの合金層の厚みが1.5μmを超えると、加工した時に鉄素地との界面や合金層自体から破壊が発生し、めっき剥離が発生する。そこで、これらの合金層の厚みは1.5μm以下に制限する必要がある。ここで、加工とは、曲げ加工、バルジ加工、フランジ加工、フレア加工、プレス加工、スピニング加工などの塑性加工を示す。なお、フレア加工などのような厳しい加工に対しては、これらの合金層の厚みは0.5μm未満にすることが望ましい。
【0041】
次に、本発明の溶融亜鉛めっき鋼材は、前記下層の上に、中間層として、質量%で、Al:4〜20%、Fe:0.1〜15%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有する。なお、以下、%は、質量%を意味する。
【0042】
Alの含有量を4〜20%に限定した理由は、4%未満では、耐食性を向上させる効果が不十分であるためであり、20%を超えると、耐食性を向上させる効果が飽和するためである。また、Alは、めっき浴中のMgの酸化を防止するためにも、4%以上添加する必要がある。
【0043】
Feの含有量を0.1〜15%に限定した理由は、0.1%未満では、めっき密着性を向上させる効果が不十分であるためであり、15%を超えると、めっき密着性を向上させる効果が飽和するためである。
【0044】
溶融Zn−Al−Mgめっきは、Zn/Al/MgZn2の三元共晶組織を有し、この共晶組織中のMgZn2相が硬くて脆いため、加工時のめっき剥離の原因となる。一方、これにFeを含有させると、各相が微細化し、ラメラ状の三元共晶組織が形成されなくなる。
【0045】
X線回折で同定される相は、Zn相、Al相、MgZn2相であることから、基本的な相構造は変化していないと考えられるが、断面から、光学顕微鏡およびSEMで観察する限り、明確な三元共晶組織は観察されず、微細な凝固組織の集合として観察される。
【0046】
したがって、Feの添加により、MgZn2相が、層状に形成されなくなるため、MgZn2相中を亀裂が伝播することによるめっき剥離を防止することが可能となる。
【0047】
また、2段めっきにおいて、耐食性の向上を目的に付着量を大きくするためには、1段目のめっきにおいて、浸漬時間を長くし、Fe−Zn合金層を適度に発達させ、後述するように、このFe−Zn合金層を有効に利用する必要がある。そのため、耐食性の向上を目的に付着量を大きくするためには、めっき層中にFeを含有させる必要がある。
【0048】
Mgの含有量を0.1〜5%に限定した理由は、0.1%未満では、耐食性を向上させる効果が不十分であるためであり、5%を超えると、めっき層が脆くなって、密着性が低下するためである。
【0049】
Mgは、MgZn2相として、めっき層中に微細に分散することにより、耐食性向上に寄与する。Mgは、ZnCl2・4Zn(OH)2の生成を促進するため、めっき層中に、微細にMgZn2相を分散させることにより、腐食時の亜鉛の腐食生成物が保護性の皮膜となり耐食性を向上させることが可能となる。
【0050】
さらに、本発明の溶融亜鉛めっき鋼材は、中間層の上に、上層として、質量%で、Al:4〜20%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有する。
【0051】
Alの含有量を4〜20%に限定した理由は、4%未満では、耐食性を向上させる効果が不十分であるためであり、20%を超えると、耐食性を向上させる効果が飽和するためである。また、Alは、めっき浴中のMgの酸化を防止するためにも、4%以上添加する必要がある。
【0052】
Mgの含有量を0.1〜5%に限定した理由は、0.1%未満では、耐食性を向上させる効果が不十分であるためであり、5%を超えると、めっき層が脆くなり、密着性が低下するためである。
【0053】
Mgは、MgZn2相として、めっき層中に微細に分散することにより、耐食性の向上に寄与する。Mgは、ZnCl2・4Zn(OH)2の生成を促進するため、めっき層中に、微細に、MgZn2相を分散させることにより、腐食時の亜鉛の腐食生成物が保護性の皮膜となり、耐食性を向上させることが可能となる。
【0054】
上層のめっき層は、不可避的不純物として、Feの含有量が0.1%未満であるため、凝固組織は、Zn相、Al相、MgZn2相、Zn/Al/MgZn2の三元共晶組織のいずれか1種または2種以上を含む金属組織が形成される。そのため、断面から観察することにより、下のFeを含む層とは、容易に区別できる。
【0055】
さらに、耐食性の向上を目的として、前記中間層、または、前記中間層および前記上層に、Siを0.0005〜0.8%添加することができる。Siの含有量を0.0005〜0.8%に限定した理由は、0.0005%未満では、耐食性を向上させる効果が不十分であるためであり、0.8%を超えると、耐食性を向上させる効果が飽和するためである。
【0056】
Siも、ZnCl2・4Zn(OH)2の生成を促進するため、めっき層中にSiを分散させることにより、腐食時の亜鉛の腐食生成物が保護性の皮膜となり耐食性を向上させることが可能となる。Siは、微量の場合、めっき層中に固溶しており、単独の相として観察されないが、多量に添加した場合は、Si相、Mg2Si相として観察される場合もある。
【0057】
めっき層中には、これら以外に、Sb、Pb、Bi、Ca、Be、Ti、Cu、Co、Cr、Mn、P、B、Sn、Zr、Hf、Sr、V、Sc、REMを、単独または複合で、0.5%以内で含有しても、本発明の効果は損なわれず、その量によっては、さらに、外観が改善される等、好ましい場合もある。
【0058】
本発明は、高耐食性を有し、加工性に優れためっき層を得る目的で、めっき層にMgを添加し、かつ、めっき層中のラメラ状のMgZn2相を極力少なくすることが望ましい。
【0059】
そのためには、前記上層のめっき層中のZn/Al/MgZn2の三元共晶組織を少なくし、50%以下とすることが望ましい。さらに、望ましくは、10%以下であり、可能であれば、Zn/Al/MgZn2の三元共晶組織を生成させないことが望ましい。
【0060】
または、前記上層のめっき層厚みをできるだけ薄くし、前記中間層が主体のめっき層とすることで、硬くて脆いMgZn2相中を亀裂が伝播することによるめっき剥離を防止することが可能となる。
【0061】
特に、フレア加工のような厳しい加工部において、めっき剥離を防止するためには、前記中間層の厚みが、前記上層の厚みの2倍以上であることが望ましい。さらに、望ましくは、両めっき層の比が3倍以上である。中間層の厚みが上層の厚みの2倍未満の場合、上層のAlが素地界面まで拡散する距離が短くなり、下層のめっき厚みが増大して加工性が劣化する。したがって中間層の厚みは上層の厚みの2倍以上に制限する。これによって、例えば、鋼管の形状を有する鋼材を本発明のめっき処理を施した後、フレア加工等の塑性加工を行った後において、めっき剥離のないめっき鋼管を提供することができる。
また、中間層の厚みの最大値と最小値の差が30μm以内であることが望ましい。最大値と最小値の差が30μmを超えると、加工時に不均一なひずみが導入され、局所的に高いひずみが付与されて加工性が低下する。したがって、最大値と最小値の差を30μm以内に制限する。
【0062】
本発明品の製造方法については、特に、限定することなく公知の溶融亜鉛めっき法が適用できる。また、被めっき鋼材は、通常、溶融亜鉛めっきに先だって、慣用の前処理を行ってもよく、例えば、脱脂処理、ショットブラスト処理、および、酸洗浄処理等の表面処理を行った後、フラックス処理を行ってもよい。さらに、必要であれば、被めっき鋼材には、Niプレめっきを施してもよい。
【0063】
また、溶融亜鉛めっき前に、塩化第二鉄溶液によるエッチング処理を行うと、めっきの厚みが均一となるため、前処理として、塩化第二鉄溶液によるエッチング処理を行うことが望ましい。
【0064】
塩化第二鉄溶液によるエッチング処理は、酸洗後、または、ショットブラスト処理後に行うと効果が高い。塩化第二鉄溶液によるエッチング処理後は、フラックス処理、または、酸洗、フラックス処理を行い、溶融亜鉛めっきを行う。
【0065】
塩化第二鉄溶液による処理の条件は、特に、限定しないが、質量%で、10〜60%の塩化第二鉄水溶液を10〜70℃に保持した浴中に、被めっき物を、5〜600秒浸漬することが好ましい。
【0066】
本発明のめっき鋼材を2段めっき法で得る場合において、めっき合金の成長を適切なものとするためには、第1段として、亜鉛を主体とする溶融亜鉛めっきを行い、第2段として、溶融Zn−Al−Mgめっき、または、溶融Zn−Al−Mg−Siめっきを行う方法が望ましい。
【0067】
1段目に行う溶融亜鉛めっきは、亜鉛を主体とする溶融亜鉛めっき浴を使用する。溶融亜鉛めっき浴には、高純度亜鉛めっき浴、または、これにPb、Sb、Bi、Snの1種または2種以上の金属が5質量%以下含まれている溶融亜鉛めっき浴が使用可能である。
【0068】
また、質量%で、Al:0.001〜0.5%、および、Ni:0.001〜0.2%の1種または2種を添加すると、めっき濡れ性が向上し、不めっき等の欠陥を防止することが可能となる。さらに、これら以外に、不可避的不純物として、Fe、Mg、Si、Ca、Be、Ti、Cu、Co、Cr、Mn、P、B、Zrを、単独または複合で、0.1質量%未満含有しても、めっき性に影響しないため、問題はない。望ましくは、質量%で、Zn:99%以上の高純度亜鉛めっき浴を使用する。
【0069】
1段目に行う溶融亜鉛めっきの目的は、Fe−Zn合金層を適度に発達させ、めっき付着量を十分確保することにある。したがって、1段目の溶融亜鉛めっきは、浴温430〜500℃、浸漬時間60秒以上で行うことが望ましい。1段目の溶融亜鉛めっきの付着量については、特に、制約は設けないが、2段めっき後の耐食性の観点から、めっき付着量は100〜2000g/m2であることが望ましい。特に、高耐食性を必要とする場合は、300〜2000g/m2であることが望ましい。浴温が430℃未満の場合、溶融亜鉛の粘度が高く、めっきの厚みが不均一となり、浴温が500℃を超えると、Γ相が生成し、素地との界面の密着性が低下するために、浴温の範囲を430〜500℃とした。また浸漬時間が60秒未満の場合、十分なめっき厚みが得られないので、浸漬時間を60秒以上とした。とくに浸漬時間の上限を設けないが、生産性の観点から浸漬時間は制限される。
【0070】
2段目に行う溶融亜鉛めっきは、溶融Zn−Al−Mgめっき浴、または、溶融Zn−Al−Mg−Siめっき浴を使用する。目的とするめっき層が得られるのであれば、Al、Mg、Siの含有量は、いくらでも構わないが、Al:4〜10%、Mg:0.1〜5%を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物のめっき浴、または、Al:4〜10%、Mg:0.1〜5%、Si:0.0005〜0.8%を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物のめっき浴を使用することが望ましい。
【0071】
また、めっき浴には、不可避的不純物として、Fe、Ca、Be、Ti、Cu、Ni、Co、Cr、Mn、P、B、Zrを、単独または複合で、0.1質量%未満含有しても、めっき性に影響しないため、問題はない。
【0072】
2段目に行う溶融亜鉛めっきの目的は、耐食性を確保しつつ、めっき密着性を確保することである。
【0073】
このためには、下層として、0.01〜1.5μmの厚みのFe−Al合金層、Fe−Al−Zn合金層、Fe−Al−Si合金層、Fe−Al−Zn−Si合金層、および、これらの合金層中にMgを含有する合金層のいずれか1種を有し、その上に、中間層として、質量%で、Al:4〜20%、Fe:0.1〜15%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層、または、質量%でAl:4〜20%、Fe:0.1〜15%、Mg:0.1〜5%、Si:0.0005〜0.8%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層のいずれかを有し、さらに、その上に、上層として、質量%で、Al:4〜20%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層、または、質量%で、Al:4〜20%、Mg:0.1〜5%、Si:0.0005〜0.8%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層のいずれかを有するめっき層とする。
【0074】
そのためには、2段目の溶融亜鉛めっきは、浴温400〜480℃、浸漬時間5〜900秒の範囲で行うことが望ましい。
【0075】
下層として、0.01〜1.5μmの厚みのFe−Al合金層、Fe−Al−Zn合金層、Fe−Al−Si合金層、Fe−Al−Zn−Si合金層、および、これらの合金層中にMgを含有する合金層のいずれか1種を有し、その上に、中間層として、質量%で、Al:4〜20%、Fe:0.1〜15%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層、または、質量%で、Al:4〜20%、Fe:0.1〜15%、Mg:0.1〜5%、Si:0.0005〜0.8%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を形成させるためには、1段目のめっきで形成したFe−Zn合金層を、2段めっき浴中で合金化させる必要がある。
【0076】
Fe−Zn合金層の合金化が不十分であると、めっき層中に、Fe−Zn合金層が残存するとともに、Fe−Al合金層、Fe−Al−Zn合金層、Fe−Al−Si合金層、Fe−Al−Zn−Si合金層、および、これらの合金層中にMgを含有する合金層のいずれか1種が十分に形成されず、めっき密着性が不十分となる。
【0077】
また、浸漬時間が長くなりすぎると、めっき層中のFeが浴中に拡散し、目的とするめっき層が得られなくなるため、浸漬時間は、1段目のめっきで形成したFe−Zn合金層が十分合金化する程度が望ましい。浴温が400℃未満では合金化が十分に進まず、480℃を超えると、Alの拡散が早くなり下層のめっき厚みが増大して加工性が劣化する。したがって浴温は400〜480℃に制限する。また浸漬時間が5秒未満の場合、合金化が十分に進まず、900秒以上になるとAlが素地との界面に濃化して下層のめっき厚みが増大して加工性が劣化する。したがって浸漬時間は5~900秒が望ましい。
【0078】
また、1段目の溶融亜鉛めっきを行った後、2段目の溶融亜鉛合金めっきを行う際、一旦冷却し、被めっき物を専用ハンガに移して、2段目の溶融亜鉛合金めっきを行うことも可能であるが、生産性を考慮すると、1段目の溶融亜鉛めっきを行った後、冷却を行わず、被めっき物の温度を300℃以上に保ったまま、2段目の溶融亜鉛合金めっきに浸漬することが望ましい。
【0079】
溶融亜鉛合金めっきの付着量については、特に制約は設けないが、めっき後の耐食性の観点から、めっき付着量は、合計で100〜2000g/m2であることが望ましい。また、特に、高耐食性を必要とする場合は、300〜2000g/m2であることが望ましい。
【0080】
本発明の下地鋼材は、前述のように、熱延鋼材、冷延鋼材、ともに使用でき、鋼種も、Alキルド鋼、Siキルド鋼、Ti、Nb等を添加した極低炭素鋼、および、これらにP、Si、Mn等の強化元素を添加した高強度鋼、ステンレス鋼等、種々のものが適用できるが、溶融亜鉛めっき性と加工性に優れたSiキルド鋼は、特に適している。
【0081】
質量%で、C:0.005〜0.15%、Si:0.15〜0.25%、Mn:0.40〜1.6%、P:0.04%以下、S:0.04%以下、Al:0.001〜0.06%、N:0.0080%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼材は、安価で加工性が優れており、かつ、めっき浴に長時間浸漬しても、「ヤケ」と呼ばれる外観不良が発生し難いことから、配管用、建材用、土木用、農業用、漁業用として、主に、屋外で使用される溶融めっき鋼材の下地鋼材として最適である。
【0082】
上記成分の鋼材が下地鋼材として最適な理由は、以下の通りである。
【0083】
C:Cは、強度を確保するために有効な元素であり、含有量が少ないと、その効果が発揮されないので、0.005%以上が望ましい。さらに望ましくは、0.01%以上である。しかし、Cを過剰に添加すると、強度が高くなりすぎて、伸びが低下し、曲げ加工性が劣化するため、0.15%以下が望ましい。
【0084】
Si:Siは、本発明では重要な元素である。溶融亜鉛めっき性の観点からは、Fe−Zn合金層が発達する「ヤケ」防止として、0.02%以下、または、0.15〜0.25%の範囲が良好である。
【0085】
他方、加工時の耐めっき剥離性の観点からは、Siを添加すると、1段目のめっきにおいて、Fe−Zn合金層が均一に発達し、厚みの最大値と最小値の差が30μm以内に抑えられ、前述するように、このFe−Zn合金層を有効に利用する本発明においては、めっき層と地鉄との密着性が良くなるため、Siを、ある程度は添加する方が望ましい。
【0086】
そのため、Siは、0.15〜0.25%とすることが望ましい。0.18〜0.23%の範囲が、さらに良好である。また、Siは、脱酸剤、強度を得るのにも有効な元素である。
【0087】
Mn:Mnは、強度を得るのに有効な元素である。Siを0.15〜0.25%とするため、添加量が少ないとMn/Si質量比が低くなり、溶接時の溶接欠陥が発生し易くなるため、0.40%以上が望ましい。反対に過剰に添加すると、強度が高くなりすぎて、伸びが低下し、曲げ加工性が劣化するため、1.6%以下とすることが望ましい。
【0088】
P:Pは不純物として鋼中に存在するが、その量が0.04%を超えると、中心偏析が増加し、成形加工時に介在物を起点として、割れが進展し易くなるため、0.04%以下とすることが望ましい。さらに望ましくは、0.02%以下である。
【0089】
S:Sも不純物として鋼中に存在するが、その量が0.04%を超えると、割れの原因となるため、0.04%以下とすることが望ましい。さらに、望ましくは、0.01%以下である。
【0090】
Al:Alは脱酸剤として有効かつ重要な元素である。Alの添加量が少ないと、その効果が得られないため、0.001%以上とすることが望ましい。一方、Alを過剰に添加すると、鋼中のAl23の増加を助長し、清浄性が悪化するため、0.06%以下とすることが望ましい。
【0091】
N:Nは、過剰に含有すると、AlNが生成・析出し、鋳片の割れ、疵発生の原因となるため、0.0080%以下とすることが望ましい。さらに、望ましくは、0.0060%以下である。
【0092】
めっき鋼材の形状も、前述のように鋼線等の線状や、鋼板等の板状、ネット状、鋼管等の筒状、棒状等の三次元形状等、種々の形状を使用できるが、フレア加工のように厳しい加工を行った後、厳しい腐食環境中で使用される鋼管等への使用は、高耐食性を有し、加工性に優れた本発明品の効果が、特に発揮される。例えば、鋼管の形状を有する鋼材を本発明のめっき処理を施した後、フレア加工を行った後において、めっき剥離のないめっき鋼管を提供することができる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0094】
(実施例1)
まず、SGP100A(厚さ4mm、外径114.3mm)の鋼管を準備し、脱脂処理、塩酸による酸洗処理を行った後、塩化亜鉛50g/l、塩化アンモニウム150g/lを含む水溶液フラックスに浸漬して前処理を行った。
【0095】
次に、前処理を行った鋼管を、450℃の溶融亜鉛浴に60秒〜10分浸漬し、その後、400〜450℃で、Al量、Mg量、Si量を変化させたZn−Al−Mgめっき浴、または、Zn−Al−Mg−Siめっき浴に、5〜600秒浸漬し、引き上げた後、一定時間経過後水冷し、溶融亜鉛めっき鋼管を作製した。
【0096】
鋼管の成分は、0.08C−0.21Si−0.52Mn−0.012P−0.008S−0.002Al−0.003Nであった。
【0097】
得られた溶融亜鉛めっき鋼管のめっき組成と付着量を表1および表2(表1の続き)に示す。めっきの付着量は、めっきをインヒビター入りの塩酸で溶解し、重量法により測定した。また、めっき層の組成は、めっきをインヒビター入りの塩酸で溶解し、化学分析により測定した。
【0098】
めっき組織の観察は、鋼管のC断面を研磨後、SEM、EPMAを使用して行った。めっき層の各層の厚さは、SEMを使用し、幅方向100μmの範囲で計測を行い、その平均値を使用した。
【0099】
めっき層の各層の組成は、EPMAを使用し、1μmのビーム径で幅方向100μmの定量分析を行い、その平均値を使用した。
【0100】
下層のめっき層は、合金層の厚さが薄いため、EPMAから組成を決定することは困難であるが、Alの濃化が検出された層を、Fe−Al合金層、または、Fe−Al−Zn合金層、Al、Siの濃化が検出された層を、Fe−Al−Si合金層、または、Fe−Al−Zn−Si合金層、さらに、Mgの濃化が検出された層を、Fe−Al−Mg合金層、Fe−Al−Zn−Mg合金層、Fe−Al−Si−Mg合金層、または、Fe−Al−Zn−Si−Mg合金層と区分した。
【0101】
加工部のめっき密着性は、管端にフレア加工を行い、加工部の管内面および外面のめっき密着性を評価した。フレア加工は、管端に2段の拡管成形を適用し、鋼管とフランジ部が90度になるよう、加工を行った。フランジの幅は20mmとした。めっき密着性の評価は、加工部のテープ剥離試験を行い、試験後のテープの透過率を以下に示す評点づけで判定した。評点は、3以上を合格とした。
【0102】
4:透過率90%以上
3:透過率70%以上90%未満
2:透過率50%以上70%未満
1:透過率50%未満
【0103】
耐食性は、長さ方向150mm、円周方向70mmに切り出したサンプルの端面と裏面をシールし、5%の塩水を使用した塩水噴霧試験を200時間行って、腐食減量を求めた。腐食減量は、試験前後の重量差から計算し、腐食減量20g/m2以下を合格とした。
【0104】
評価結果を、表1および表2(表1の続き)に示す。番号9、22、35は、めっき層中のAlの含有量が、本発明の範囲外であるため、耐食性が不合格であった。番号10、23、36は、めっき層中の合金層のFe含有率が、本発明の範囲外であるため、めっき密着性が不合格であった。
【0105】
番号11、24、37は、めっき層中の中間層のMgの含有量が、本発明の範囲外であるため、耐食性が不合格であった。番号12、25、38は、層中の中間層のMgの含有量が5%を超えているため、密着性が低下している。番号13、26、39は、2段目のめっき浴の浸漬時間を3秒と短くしたことにより、めっき層中の下層の組成が、本発明の範囲外であるため、めっき密着性が不合格であった。
【0106】
これら以外の本発明品は、優れた耐食性と高いめっき密着性が両立する溶融亜鉛めっき鋼材であった。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
(実施例2)
まず、表3に示す成分で、SGP100A(厚さ4mm、外径114.3mm)の鋼管を準備し、脱脂処理、塩酸による酸洗処理を行った後、塩化亜鉛50g/l、塩化アンモニウム150g/lを含む水溶液フラックスに浸漬して、前処理を行った。
【0110】
次に、前処理を行った鋼管を、所定の温度の溶融亜鉛浴に、所定の時間浸漬し、その後、Al量、Mg量、Si量を変化させたZn−Al−Mgめっき浴、または、Zn−Al−Mg−Siめっき浴に、所定の温度で所定の時間浸漬し、引き上げた後、一定時間経過後水冷し、溶融亜鉛めっき鋼管を作製した。
【0111】
得られた溶融亜鉛めっき鋼管のめっき組成と付着量を表3および表4(表3のつづき)に示す。めっきの付着量は、めっきをインヒビター入りの塩酸で溶解し、重量法により測定した。また、めっき層の組成は、めっきをインヒビター入りの塩酸で溶解し、化学分析により測定した。
【0112】
めっき組織の観察は、鋼管のC断面を研磨後、SEM、EPMAを使用して行った。めっき層の各層の厚さは、SEMを使用し、幅方向100μmの範囲で計測を行い、その平均値を使用した。また、中間層のばらつきは、厚みの最大値と最小値の差を計測した。
【0113】
めっき層の各層の組成は、EPMAを使用し、1μmのビーム径で幅方向100μmの定量分析を行い、その平均値を使用した。下層のめっき層は合金層の厚さが薄いため、実施例1と同様に区分した。
【0114】
加工部のめっき密着性は、管端にフレア加工を行い、加工部の管内面及び外面のめっき密着性を評価した。フレア加工は、管端に2段の拡管成形を適用し、鋼管とフランジ部が90度になるよう加工を行った。フランジの幅は20mmとした。めっき密着性の評価は、加工部のテープ剥離試験を行い、試験後のテープの透過率を以下に示す評点づけで判定した。評点は、3以上を合格とした。
【0115】
4:透過率90%以上
3:透過率70%以上90%未満
2:透過率50%以上70%未満
1:透過率50%未満
【0116】
耐食性は、長さ方向150mm、円周方向70mmに切り出したサンプルの端面と裏面をシールし、5%の塩水を使用した塩水噴霧試験を200時間行って、腐食減量を求めた。腐食減量は、試験前後の重量差から計算し、腐食減量20g/m2以下を合格とした。
【0117】
評価結果を、表3および表4(表3のつづき)に示す。番号13、14、15は、鋼材化学成分が本発明の範囲外であるため、めっき密着性が不合格であった。番号16、17、18、19、20、21は、一浴、二浴の温度や浸漬時間が本発明の範囲外であるため、めっき密着性が不合格であった。これら以外の本発明品は、優れた耐食性と高いめっき密着性が両立する溶融亜鉛めっき鋼材であった。
【表3】

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材の表面に、下層として、0.01〜1.5μmの厚みのFe−Al合金層を有し、前記下層の上に、中間層として、質量%で、Al:4〜20%、Fe:0.1〜15%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有し、さらに、前記中間層の上に、上層として、質量%で、Al:4〜20%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有することを特徴とする高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材。
【請求項2】
鋼材の表面に、下層として、0.01〜1.5μmの厚みのFe−Al−Zn合金層を有し、前記下層の上に、中間層として、質量%で、Al:4〜20%、Fe:0.1〜15%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有し、さらに、前記中間層の上に、上層として、質量%でAl:4〜20%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有することを特徴とする高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材。
【請求項3】
鋼材の表面に、下層として、0.01〜1.5μmの厚みのFe−Al−Si合金層を有し、前記下層の上に、中間層として、質量%でAl:4〜20%、Fe:0.1〜15%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有し、さらに、前記中間層の上に、上層として、質量%で、Al:4〜20%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有することを特徴とする高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材。
【請求項4】
鋼材の表面に、下層として、0.01〜1.5μmの厚みのFe−Al−Zn−Si合金層を有し、前記下層の上に、中間層として、質量%で、Al:4〜20%、Fe:0.1〜15%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有し、さらに、前記中間層の上に、上層として、質量%で、Al:4〜20%、Mg:0.1〜5%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金層を有することを特徴とする高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材。
【請求項5】
前記下層の合金層はMgを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材。
【請求項6】
前記中間層、または、前記中間層および前記上層中に、Siを0.0005〜0.8%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材。
【請求項7】
前記中間層の厚みが、前記上層の厚みの2倍以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材。
【請求項8】
前記中間層の厚みの最大値と最小値の差が、30μm以内であることを特徴とする請求項7に記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材。
【請求項9】
質量%で、
C:0.005〜0.15%、
Si:0.15〜0.25%、
Mn:0.40〜1.6%、
P:0.04%以下、
S:0.04%以下、
Al:0.001〜0.06%、
N:0.0080%以下を含有し、
残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼材であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材。
【請求項10】
鋼管の形状を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材。
【請求項11】
鋼材の表面に、溶融亜鉛めっきを行った後、溶融亜鉛合金めっきを行う二段めっき方法において、第一段として、亜鉛を主体とするめっき浴に浸漬して、溶融亜鉛めっきを行い、第二段として、溶融Zn−Al−Mgめっき浴、または、溶融Zn−Al−Mg−Siめっき浴のいずれかに浸漬して、溶融亜鉛合金めっきを行うことを特徴とする高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材の製造方法。
【請求項12】
前記第一段としての溶融亜鉛めっき浴が、質量%で、Zn:99%以上であり、残部が不可避的不純物であることを特徴とする請求項11に記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材の製造方法。
【請求項13】
前記第一段としての溶融亜鉛めっき浴が、質量%で、Al:0.001〜0.5%、および、Ni:0.001〜0.2%の1種または2種を含み、残部がZnおよび不可避的不純物であることを特徴とする請求項11に記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材の製造方法。
【請求項14】
前記第二段としての溶融Zn−Al−Mgめっき浴が、質量%で、Al:4〜10%、Mg:0.1〜5%を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物であることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材の製造方法。
【請求項15】
前記第二段としての溶融Zn−Al−Mg−Siめっき浴が、質量%で、Al:4〜10%、Mg:0.1〜5%、Si:0.0005〜0.8%を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物であることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材の製造方法。
【請求項16】
前記第一段のめっき工程で、被めっき物を、温度430〜500℃の溶融亜鉛めっき浴で、60秒以上浸漬して溶融めっきを行った後、前記第二段のめっき工程で、被めっき物を、温度400〜480℃の溶融Zn−Al−Mgめっき浴、または、溶融Zn−Al−Mg−Siめっき浴で、5秒以上浸漬して溶融亜鉛合金めっきを行うことを特徴とする請求項11〜15のいずれか1項に記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材の製造方法。
【請求項17】
前記第一段のめっき工程で溶融めっきした被めっき物を、温度300℃以上に保ったまま、前記第二段のめっき工程で、溶融めっきを行うことを特徴とする請求項11〜16のいずれか1項に記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材の製造方法。
【請求項18】
前処理として、塩化第二鉄溶液で被めっき物を処理することを特徴とする請求項11〜17のいずれか1項に記載の高耐食性を有し加工性に優れためっき鋼材の製造方法。
【請求項19】
請求項10に記載のメッキ鋼材を塑性加工しためっき鋼管であって、加工部にめっき剥離のないめっき鋼管。
【請求項20】
鋼管の形状を有する鋼材に請求項11〜18のいずれか1項に記載のめっき処理を行った後、塑性加工を行うことを特徴とする請求項19に記載の加工部にめっき剥離のないめっき鋼管の製造方法。

【公開番号】特開2011−214145(P2011−214145A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56629(P2011−56629)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(591006520)株式会社興和工業所 (34)
【Fターム(参考)】