説明

高膨潤性/収縮性多層構造の紙コーティング用ラテックス、これの製造方法、及びこれを含む紙コーティング液

【課題】紙コーティング用ラテックス、その製造方法、及びこれを含む紙コーティング液を提供する。
【解決手段】本発明は、コア及びシェル構造を有する紙コーティング用ラテックスにおいて、前記コアは、エチレン不飽和酸がコア100重量部中5〜35重量部含まれた単量体混合物の重合により形成されて、前記シェルは、ガラス転移温度が常温以下であり、前記コアのガラス転移温度より低いことを特徴とする紙コーティング用ラテックス、これの製造方法、及びこれを含む紙コーティング液に関するものである。本発明によると、高膨潤性/収縮性多層構造の紙コーティング用ラテックスが含有された紙コーティング液を紙にコーティングして、インク乾燥速度、接着力などの印刷適性に優れていながらも、白紙光沢を低め、且つ印刷光沢を向上させて、高品質の無光沢コーティング紙を提供する効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙コーティング用ラテックス、これの製造方法、及びこれを含む紙コーティング液に関するものであって、より詳細には、インク乾燥速度、接着力などの印刷適性に優れていながらも、白紙光沢を低め、且つ印刷光沢を向上させて、高品質の無光沢コーティング紙を提供する効果がある、高膨潤性/収縮性多層構造の紙コーティング用ラテックス、これの製造方法、及びこれを含む紙コーティング液に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティング紙は、コーティング面の光沢が過度によい場合は、強い光の下で眩しさを生じて、目の疲労を引き起こす問題点がある。これにより、最近は、眩しさが少なく、仄かで、落ち着いた感じを与える高品質の無光沢紙(Matte paper)に対する関心が高まっている。特に、北米及びヨーロッパを中心に、その需要が増加している趨勢である。
【0003】
一般に、コーティング紙は、クレー(clay)、重質炭酸カルシウム(Ground Calcium Carbonate, GCC)、アルミニウムヒドロキシド、酸化チタニウムなどの無機顔料を紙上にコーティングして製造するが、コーティングされた紙面の光沢に係わる性質は、このような無機顔料の特性により大いに左右される。その例として、クレーを使用した場合は、印刷光沢と接着力はよいが、白色度が低下する特性を有するようになる。その反面、重質炭酸カルシウムのような無機顔料を使用した場合は、クレーに比べ相対的に光沢度が低く、インク受理性がよいと共に、白色度に優れている特性があり、またクレーに比べ安価で、原価節減の長所も有する。
【0004】
つい最近まで、無光沢コーティング用としては、重質炭酸カルシウムなどの無機顔料が一般に使用された。しかしながら、このような場合は、インクが塗工層にあまりにも速く浸透して、印刷光沢が低くなり、接着力が低下する問題点が発生した。これにより、クレーと重質炭酸カルシウムとを適宜混合して、相違なる物性を折衷、最適化した事例が報告された(TAPPI Journal(1998), vol.81, no.11, p.175)。
【0005】
最近は、タルク(talc)を使用して無光沢コーティング紙を生産している。しかしながら、タルクは、分散性が悪く、時間が経つにつれて粘度が過度に増加する問題点があり、これを改善しようとした事例が報告された(TAPPI Journal(2004), vol.3, no.8, p.25)。
【0006】
また、特開平7−166492号及び国際特許WO97−032082号などは、中空構造を有する有機顔料を使用した技術であって、無機顔料である炭酸カルシウムとクッション性を有する中空構造の有機顔料とを含有するコーティング層を製造する内容を含んでおり、好ましくは、コーティングされた紙にカレンダー処理を施さないのが、無光沢特性をさらに向上すると報告している。
【0007】
一方、紙コーティング用ラテックスの物理的、化学的性質によって、コーティング層全体の構造及び表面性質が変わるようになり、これは、白紙光沢、印刷光沢、インク乾燥速度などのインク適性に大きい影響を及ぼすようになる。ラテックスの粒径を大きくするか、コーティング層組成物中のラテックスの含量を低める場合、またはガラス転移温度を高くする場合は、無機顔料の配列が容易となり、白紙光沢が増加するが、接着力が低下する短所がある。その反面、ラテックスの粒径を小さくするか、コーティング層組成物中のラテックスの含量を増加させる場合、またはガラス転移温度を低くする場合は、コーティング層の透気度を低下させ、印刷後、インク成分が安定した配列を備えるまでインク溶媒を表面に保たせて、印刷光沢を向上させることができる。しかしながら、これは、白紙光沢を向上させることとは相反される方法であって、このような場合は、インク乾燥速度が低下する短所があり、印刷ムラ(print mottle)、にじみ現象などの問題点を誘発する可能性がある。
【0008】
また、紙コーティング用ラテックスの表面エネルギーも、白紙光沢、印刷光沢、インク乾燥速度などのインク適性に影響を及ぼすようになるが、例えば、ラテックス表面が親水性が大きいか、インクの溶剤に対する耐化学性の大きい官能基を含む場合は、疎水性のインク成分の浸透速度が遅くなり、結果的に印刷光沢が向上する効果をもたらすようになる。
【0009】
上述したように、紙コーティング用ラテックスの粒径の大きさ、ガラス転移温度及び表面エネルギーを調節する方法のような通常のラテックスの特性を変化させる方法を通じては、白紙光沢を低めて、印刷光沢を向上させることは可能であるが、インク乾燥性が著しく低下するような限界にぶつかるしかなく、また、無機/有機顔料を調節する方法を並行しなくては、無光沢コーティング紙の性質を発現させると同時に、接着力、耐水性、着肉性、インク乾燥性などの印刷適性を向上させることが難しいという問題点がある。
【特許文献1】特開平7−166492号公報
【特許文献2】国際公開WO97−032082号パンフレット
【非特許文献1】TAPPI Journal(1998), vol.81, no.11, p.175
【非特許文献2】TAPPI Journal(2004), vol.3, no.8, p.25
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、インク乾燥速度、接着力などの印刷適性に優れていながらも、白紙光沢を低め、且つ印刷光沢を向上させて、高品質の無光沢コーティング紙を提供する効果がある、高膨潤性/収縮性多層構造の紙コーティング用ラテックス、及びこれの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、前記紙コーティング用ラテックスが含まれた紙コーティング液及び前記紙コーティング液によりコーティングされたコーティング紙を提供することを目的とする。
【0012】
本発明の前記目的及びその他の目的は、下記説明する本発明により全て達成できる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、コア及びシェル構造を有する紙コーティング用ラテックスにおいて、前記コアは、エチレン不飽和酸がコア100重量部中5〜35重量部含まれた単量体混合物の重合により形成されて、前記シェルは、ガラス転移温度が常温以下であり、前記コアのガラス転移温度より低いことを特徴とする紙コーティング用ラテックス及びこれの製造方法を提供する。
【0014】
前記シェルは、エチレン不飽和酸が、シェル100重量部を基準に、10重量部以下で含まれた単量体混合物の重合により形成されて、前記コア製造時のエチレン不飽和酸の含量比より低いエチレン不飽和酸の含量比から製造される。
【0015】
また、本発明は、前記紙コーティング用ラテックスが含まれた紙コーティング液及び前記紙コーティング液によりコーティングされたコーティング紙を提供する。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明者らは、アルカリ条件及び乾燥工程下で膨潤/収縮する構造的特性が付与された紙コーティング用ラテックスを製造するにおいて、エチレン不飽和酸がコア100重量部中5〜35重量部含まれた単量体混合物の重合により形成されたコアと、ガラス転移温度が常温以下であって、コアのガラス転移温度より低く、その製造時、エチレン不飽和酸の含量比がコア製造時のエチレン不飽和酸の含量比より低いシェルとを含み、高膨潤性/収縮性の特性を有する多層構造の紙コーティング用ラテックスを製造し、前記製造された紙コーティング用ラテックスと重質炭酸カルシウムを含む紙コーティング液を製造して紙にコーティングすると、インク乾燥速度が低下することなく、接着力、インク着肉性、耐水性などの印刷適性を満足すると共に、白紙光沢が低下し且つ印刷光沢が向上したコーティング層が形成されることを確認し、これに基づいて本発明を完成した。
【0018】
本発明の紙コーティング用ラテックスは、コア及びシェルを含み、コアは、コア100重量部中エチレン不飽和酸が5〜35重量部含まれて製造されることにより、アルカリ条件下で膨潤性が極大化されて、シェルは、その製造時、エチレン不飽和酸の含量比がコア製造時より低く、ガラス転移温度が常温以下であって、前記コアのガラス転移温度より低いため、常温で膨潤が可能であり、乾燥時に収縮が容易な、多層構造の紙コーティング用ラテックスである。
【0019】
前記紙コーティング用ラテックスは、スチレン−ブタジエン系またはスチレン−アクリレート系を基本構造とするラテックスであり、公知の乳化重合により製造できる。
【0020】
前記紙コーティング用ラテックスがスチレン−ブタジエン系ラテックスである場合は、具体的な一例として、紙コーティング用ラテックス100重量部を基準に、ブタジエン1〜60重量部、スチレン15〜80重量部、エチレン不飽和酸2〜10重量部、及び前記成分と共重合可能なビニル系単量体0〜20重量部からなる単量体混合物から製造できる。
【0021】
前記紙コーティング用ラテックスがスチレン−アクリレート系ラテックスである場合は、具体的な一例として、紙コーティング用ラテックス100重量部を基準に、ブチルアクリレート5〜70重量部、スチレン10〜70重量部、エチレン不飽和酸2〜10重量部、及び前記成分と共重合可能なビニル系単量体0〜20重量部からなる単量体混合物から製造できる。
【0022】
前記共重合可能なビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸アルキルエステル;β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、イタコンアミド、マレイン酸モノアミドなどの不飽和カルボン酸アミド、及びその誘導体;または、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体などを、単独または2種以上混合して使用できる。
【0023】
以下、紙コーティング用ラテックスをシード、コア及びシェルなどの順に分けて、より詳細に説明する。
【0024】
(最終ラテックス粒子の大きさを安定的に制御するシード)
本発明において、シード(seed)は、最終紙コーティング用ラテックスの粒子大きさを安定的に制御するために使用するものであって、必ず使用しなければならないものではない。
【0025】
前記シードとしては、粒径が20〜160nm範囲の球形粒子であれば、その組成または成分などにおいて制限なく使用できるが、好ましくは、スチレン−ブタジエン系またはスチレン−アクリレート系重合体を使用する。
【0026】
前記スチレン−ブタジエン系またはスチレン−アクリレート系重合体シードは、具体的な一例として、ブタジエン25〜35重量部またはブチルアクリレート35〜50重量部、スチレン35〜60重量部、メチルメタクリレート5〜15重量部、アクリロニトリル2〜10重量部、イタコン酸1〜8重量からなる単量体混合物100重量部、前記単量体混合物100重量部に対して乳化剤5〜10重量部、分子量調節剤0.1〜0.2重量部、電解質0.2〜0.5重量部、重合開始剤0.5〜1重量部、及びイオン交換水400〜500重量部を添加して、乳化重合することにより製造できる。
【0027】
(エチレン不飽和酸が5〜35重量部含まれたコア)
コアは、前記シード、親水性単量体及び酸(acid)基を有する単量体を含み、重合することにより製造できるが、前記酸基を有する単量体としては、エチレン不飽和酸が好ましい。
【0028】
前記コアは、親水性基及び酸基を多数含むことにより、アルカリ条件で膨潤する性質を有する。
【0029】
前記親水性単量体としては、アクリルアミド、アクリロニトリル、またはメタクリロニトリルなどを単独または2種以上混合して使用でき、前記エチレン不飽和酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、またはマレイン酸などを単独または2種以上混合して使用できる。
【0030】
前記エチレン不飽和酸は、前記コアの膨潤度により、その含量を調節できるが、コアに含まれる総単量体100重量部中5〜35重量部含まれることが好ましい。前記含量で含まれる場合は、コア層の過度な膨潤によりシェル層が破壊されるか、ガラス転移温度が過度に高くなって、最終乾燥後に接着力が低下する問題点を起こすことなく、初期ラテックス平均粒径の1.3倍以上の大きさに膨潤される効果がある。
【0031】
前記コアは、具体的な一例として、前記シード2〜15重量部の存在下で、スチレン0〜50重量部、ブタジエン4〜50重量部またはブチルアクリレート5〜60重量部、メチルメタクリレート5〜35重量部、エチレン不飽和酸5〜35重量部からなる単量体混合物100重量部、前記単量体混合物100重量部に対して、乳化剤0.05〜0.5重量部、分子量調節剤0〜10重量部または架橋性単量体0〜10重量部、炭酸水素ナトリウム0.1〜1.0重量部、重合開始剤0.1〜10重量部、及びイオン交換水35〜55重量部を添加し、重合することにより製造できる。
【0032】
前記コアは、ガラス転移温度が5〜100℃であることが好ましい。前記ガラス転移温度範囲では、膨潤性に優れた効果がある。
【0033】
前記コアは、ゲル含量が50〜90%であることが好ましい。前記ゲル含量範囲では、膨潤性に優れた効果がある。
【0034】
(ガラス転移温度が常温以下であり、コアのガラス転移温度より低いシェル)
シェルは、主に疎水性単量体を含んで製造されることにより、紙コーティング用ラテックス粒子の機械的、化学的安定性を付与して、疎水性の強いインク溶液の浸透を容易にして、インク受理性及びインク乾燥速度を向上させる。前記シェルは、場合によって、二層以上の多層構造であってもよい。
【0035】
前記疎水性単量体としては、スチレン、メチルスチレン、ブタジエン、アルキルアクリレート、またはアルキルメタクリレートなどを単独または2種以上混合して使用できる。
【0036】
前記シェルは、具体的な一例として、前記コアの存在下で、スチレン0〜50重量部、ブタジエン15〜55重量部またはブチルアクリレート30〜70重量部、メチルメタクリレート0〜20重量部、エチレン不飽和酸0〜10重量部からなる単量体混合物100重量部、前記単量体混合物100重量部に対して、分子量調節剤0〜10重量部または架橋性単量体0〜10重量部、炭酸水素ナトリウム0.1〜1.0重量部、重合開始剤0.1〜10重量部、及びイオン交換水35〜55重量部を添加して、重合することにより製造できる。
【0037】
前記エチレン不飽和酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、またはマレイン酸などを単独または2種以上混合して使用できる。
【0038】
前記シェルの製造に使用されるエチレン不飽和酸は、ラテックス粒子の安定性付与のために使用できて、前記コアにおけるエチレン不飽和酸の含量比より小さい範囲内で、紙コーティング用ラテックス100重量部を基準に1〜5重量部含まれることが好ましい。前記含量より低い場合は、粒子安定性の低下により、重合時あるいはコーティング液製造及びコーティング工程時、凝塊(coagulum)が発生する可能性があり、前記含量より多い場合は、親水性が過度に増加することにより、最終コーティング及び乾燥後、疎水性の強いインク溶液の浸透速度が著しく低下し、インク受理性及びインク乾燥速度が低下する問題点が発生する可能性がある。
【0039】
前記シェルは、ガラス転移温度が−20〜10℃であることが好ましい。前記ガラス転移温度範囲では、安定性及び接着力に優れており、また膨潤後の乾燥工程時、収縮が容易であるという効果がある。
【0040】
前記シェルは、ゲル含量が70〜95%であることが好ましい。前記含量範囲でラテックスの機械的安定性に優れた効果がある。
【0041】
前記シェルの厚さは、紙コーティング用ラテックスの膨潤/収縮時に安定性が維持される範囲内であれば、前記コアと対比し、いかなる厚さ比率でも使用できる。
【0042】
前記シェルとコアの重量比は、3:7乃至7:3であることが好ましい。前記重量比である場合は、シェル層の膨潤が容易であり、膨潤/収縮時、粒子形態を維持する効果がある。
【0043】
前記コア及びシェルの製造時に使用される分子量調節剤及び架橋性単量体は、最終ラテックスの分子量及びゲルの構造と含量を調節するためのもので、分子量調節剤としては、紙コーティング用ラテックスがスチレン−ブタジエン系ラテックスである場合、n−ドデシルメルカプタンまたはt−ドデシルメルカプタンを使用することができ、コアまたはシェルの製造時に使用される単量体混合物100重量部に対して0〜10重量部、好ましくは、0.2〜5重量部使用することができる。前記含量で使用する場合は、反応速度及び反応安定性に優れており、最終ラテックスのゲル含量を調節し、膨潤/収縮が容易であって、ラテックスの安定性に優れた効果がある。また、架橋性単量体としては、紙コーティング用ラテックスがスチレン−アクリレート系ラテックスである場合、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジアリルフタレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどを使用することができて、コアまたはシェルの製造時に使用される単量体混合物100重量部に対して0〜10重量部、好ましくは、0.05〜2重量部使用することができる。前記含量で使用する場合は、反応速度及び反応安定性に優れており、ゲル含量を調節して、最終ラテックスの構造的安定性に優れており、膨潤/収縮が容易な効果がある。
【0044】
前記紙コーティング用ラテックスは、ガラス転移温度が−10〜50℃であることが好ましい。
【0045】
前記紙コーティング用ラテックスは、平均粒径が80〜300nmであることが好ましい。
【0046】
前記平均粒径の範囲では、粒径が好適で、紙コーティング液に適用される場合、膨潤効果が極大化されて且つ接着力が向上する。
【0047】
前記紙コーティング用ラテックスは、pHが4〜5であることが好ましく、pHが8〜10のコーティング液に含まれる場合、初期ラテックス平均粒径の1.3倍以上の大きさに膨潤されることが好ましい。
【0048】
前記紙コーティング用ラテックスの膨潤効果が極大化される時、上昇されるコーティング液の粘度を調節するために、増粘剤の含量を調節して使用することができる。
【0049】
一般に、適合した紙コーティング液のpHは、8〜10である。したがって、前記紙コーティング用ラテックスを使用して紙コーティング液を製造する場合、pHを8〜10に調節するために、水酸化ナトリウム(NaOH)をさらに添加することができる。
【0050】
前記紙コーティング用ラテックスは、一般に使用されるコーティング液のpHが8〜10の範囲で高膨潤性を示し、紙にコーティングされた後、乾燥時に収縮が起こることにより、コーティング層表面は、無機顔料の配列が不均一となり、コーティング層の内部は、膨潤されたラテックスの不均一な収縮により、多い孔隙を有するようになる。このような特性により、コーティング面の白色度が増加して、白紙光沢が著しく低下する。
【0051】
また、前記紙コーティング用ラテックスは、表面の親水性が調節されて、コーティング層の孔隙を通じてのインクの浸透が過度に速く起こることを防止し、インク浸透速度を適宜調節することにより、印刷光沢とインク乾燥速度とを同時に満足する。
【0052】
本発明の紙コーティング液は、前記製造された高膨潤性/収縮性多層構造の紙コーティング用ラテックス、及び無機顔料を含む。
【0053】
前記紙コーティング用ラテックスは、無機顔料である重質炭酸カルシウム100重量部に対し、5〜20重量部含まれる。
【0054】
本発明のコーティング紙は、前記紙コーティング液を塗布して製造する。
【0055】
以下、 実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これら実施例は本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれら実施例に限定されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとって自明なことであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
実施例1
(紙コーティング用ラテックスの製造)
コアの製造
攪拌器、温度計、冷却器、窒素ガスの引込口と、単量体、乳化剤及び重合開始剤を連続的に投入できるように装置された10L加圧反応器を、窒素で置換した後、ブタジエン33重量部、スチレン40重量部、メチルメタクリレート12重量部、アクリロニトリル8重量部、イタコン酸5重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4重量部、メタリルスルホン酸ナトリウム2重量部、t−ドデシルメルカプタン0.15重量部、炭酸水素ナトリウム0.5重量部、及びイオン交換水420重量部を満たして、65℃まで昇温した後、重合開始剤である過硫酸カリウム1重量部を入れて、約300分間攪拌しながら重合し、シードを製造した。前記製造されたシードの平均粒径は、70nmであり、ゲル含量は、83%、転換率は、98重量%であった。
【0057】
反応器に、前記製造されたシードラテックス5重量部を満たして、70℃まで昇温した後、スチレン3.2重量部、ブチルアクリレート14.0重量部、メチルメタクリレート6.0重量部、メタクリル酸6.0重量部、イタコン酸0.8重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.06重量部、炭酸水素ナトリウム0.12重量部、イオン交換水14.3重量部、及び過硫酸カリウム0.33重量部を、120分間連続投入して重合することにより、コアを製造した。
【0058】
前記製造されたコアの平均粒径は124nm、ゲル含量は87%、ガラス転移温度は23℃、転換率は94重量%であった。
【0059】
シェルの製造
前記製造されたコアラテックスにシェルを被覆するために、前記製造されたコアラテックスに、スチレン26.4重量部、ブチルアクリレート35.0重量部、メチルメタクリレート7.0重量部、メタクリル酸1.5重量部、アリルメタクリレート0.1重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.14重量部、炭酸水素ナトリウム0.28重量部、イオン交換水33.3重量部、及び過硫酸カリウム1.1重量部を、180分間連続投入して重合した。
【0060】
前記製造された最終紙コーティング用ラテックスは、コアとシェルの重量比が3:7であり、平均粒径は181nm、ゲル含量は92%、ガラス転移温度は8℃(シェルのガラス転移温度:4℃)、転換率は97重量%、pHは4.1であった。
【0061】
(紙コーティング液の製造)
前記製造された紙コーティング用ラテックス10重量部、重質炭酸カルシウム100重量部及び酸化澱粉0.3重量部を添加し、pHが9となるように水酸化ナトリウムを添加してコーティング液を製造し、全体固形分含量が63%となるようにイオン交換水を添加した。
【0062】
(コーティング紙の製造)
前記製造された紙コーティング液を下記の条件で原紙に塗布し、コーティング紙を製造した。
* コーティング:MLC(Mayop Laboratory Coator)コーティング
* 速度:150m/分
* 乾燥:150℃、5秒間
* カレンダー:スーパーカレンダー、85℃、100kg/cm、4m/分、2回通過
* 原紙:市販原紙(70gsm)
【0063】
実施例2
前記実施例1の紙コーティング用ラテックスの製造において、コアの製造時、シードラテックス5重量部に、スチレン15.2重量部、ブチルアクリレート22.0重量部、メチルメタクリレート6.0重量部、メタクリル酸6.0重量部、イタコン酸0.8重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.06重量部、炭酸水素ナトリウム0.12重量部、イオン交換水22.3重量部、及び過硫酸カリウム0.6重量部を、連続投入して重合することにより、平均粒径は145nm、ゲル含量は89%、ガラス転移温度は21℃、転換率は94重量%であるコアを製造し、前記製造されたコアラテックスにシェルを被覆するために、前記製造されたコアラテックスに、スチレン16.4重量部、ブチルアクリレート25.0重量部、メチルメタクリレート7.0重量部、メタクリル酸1.5重量部、アリルメタクリレート0.1重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.14重量部、炭酸水素ナトリウム0.28重量部、イオン交換水25.3重量部、及び過硫酸カリウム0.6重量部を、150分間連続投入して重合したことを除いては、前記実施例1と同様な方法により行った。
【0064】
前記製造された最終紙コーティング用ラテックスは、コアとシェルの重量比が5:5であり、平均粒径は180nm、ゲル含量は93%、ガラス転移温度は11℃(シェルのガラス転移温度:4℃)、転換率は98重量%、pHは4.3であった。
【0065】
実施例3
前記実施例1の紙コーティング用ラテックスの製造において、コアの製造時、シードラテックス5重量部に、スチレン2.5重量部、ブチルアクリレート15.7重量部、メチルメタクリレート5.0重量部、メタクリル酸4.0重量部、アクリル酸2.0重量部、イタコン酸0.8重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.06重量部、炭酸水素ナトリウム0.12重量部、イオン交換水14.3重量部、及び過硫酸カリウム0.6重量部を、120分間連続投入して重合することにより、平均粒径は145nm、ゲル含量は86%、ガラス転移温度は11℃、転換率は93重量%であるコアを製造し、前記製造されたコアラテックスにシェルを被覆するために、前記製造されたコアラテックスに、スチレン28.0重量部、ブチルアクリレート37.0重量部、メチルメタクリレート3.0重量部、アクリル酸1.5重量部、アリルメタクリレート0.5重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.14重量部、炭酸水素ナトリウム0.28重量部、イオン交換水33.3重量部、及び過硫酸カリウム0.6重量部を、180分間連続投入して重合したことを除いては、前記実施例1と同様な方法により行った。
【0066】
前記製造された最終紙コーティング用ラテックスは、コアとシェルの重量比が3:7であり、平均粒径は180nm、ゲル含量は93%、ガラス転移温度は6℃(シェルのガラス転移温度:−1℃)、転換率は97重量%、pHは4.3であった。
【0067】
実施例4
前記実施例1の紙コーティング用ラテックスの製造において、前記加圧反応器に、ブタジエン27重量部、スチレン55重量部、メチルメタクリレート10重量部、アクリロニトリル5重量部、イタコン酸2重量部、ビス(2−エチレンウレイドエチル)マレート1重量部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム7重量部、t−ドデシルメルカプタン0.16重量部、炭酸水素ナトリウム0.35重量部、及びイオン交換水420重量部を投入し、60℃に昇温した後、重合開始剤の過硫酸カリウム0.5重量部を入れて、約300分間攪拌しながら重合して、シードを製造した。前記製造されたシードの平均粒径は50nm、ゲル含量は70%、転換率は95重量%であった。
【0068】
反応器に前記製造されたシードラテックス5重量部を満たして重合し、平均粒径は92nm、ゲル含量は76%、ガラス転移温度は23℃、転換率は94重量%であるコアを製造し、前記製造されたコアラテックスにシェルを被覆したことを除いては、前記実施例1と同様な方法により行った。
【0069】
前記製造された最終紙コーティング用ラテックスは、コアとシェルの重量比が3:7であり、平均粒径は132nm、ゲル含量は88%、ガラス転移温度は10℃(シェルのガラス転移温度:4℃)、転換率は98重量%、pHは4.9であった。
【0070】
実施例5
前記実施例1の紙コーティング用ラテックスの製造において、反応器に前記実施例4で製造されたシードラテックス5重量部を満たして、スチレン2.7重量部、ブチルアクリレート14.0重量部、メチルメタクリレート6.0重量部、メタクリル酸6.0重量部、イタコン酸0.8重量部、アリルメタクリレート0.5重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.06重量部、炭酸水素ナトリウム0.12重量部、イオン交換水14.3重量部、及び過硫酸カリウム0.33重量部を、120分間連続投入して重合し、平均粒径は91nm、ゲル含量は80%、ガラス転移温度は18℃、転換率は95重量%であるコアを製造し、前記製造されたコアラテックスにシェルを被覆したことを除いては、前記実施例1と同様な方法により行った。
【0071】
前記製造された最終紙コーティング用ラテックスは、コアとシェルの重量比が3:7であり、平均粒径は131nm、ゲル含量は92%、ガラス転移温度は12℃(シェルのガラス転移温度:4℃)、転換率は98重量%、pHは4.1であった。
【0072】
実施例6
前記実施例1の紙コーティング用ラテックスの製造において、反応器に前記実施例4で製造されたシードラテックス5重量部を満たして、スチレン6.7重量部、ブタジエン10.5重量部、メチルメタクリレート6.0重量部、メタクリル酸6.0重量部、イタコン酸0.8重量部、t−ドデシルメルカプタン0.6重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.06重量部、炭酸水素ナトリウム0.12重量部、イオン交換水14.3重量部、及び過硫酸カリウム0.33重量部を、120分間連続投入して重合し、平均粒径は93nm、ゲル含量は76%、ガラス転移温度は22℃、転換率は91重量%であるコアを製造し、 前記製造されたコアラテックスにシェルを被覆するために、前記製造されたコアラテックスに、スチレン35.0重量部、ブタジエン26.4重量部、メチルメタクリレート7.0重量部、メタクリル酸1.5重量部、t−ドデシルメルカプタン0.5重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.14重量部、炭酸水素ナトリウム0.28重量部、イオン交換水33.3重量部、及び過硫酸カリウム1.1重量部を、180分間連続投入して重合した。
【0073】
前記成分が投入された後、さらに90℃で100分間攪拌して重合を完了したことを除いては、前記実施例1と同様な方法により行った。
【0074】
前記製造された最終紙コーティング用ラテックスは、コアとシェルの重量比が3:7であり、平均粒径は135nm、ゲル含量は78%、ガラス転移温度は11℃(シェルのガラス転移温度:4℃)、転換率は98重量%、pHは4.8であった。
【0075】
実施例7
前記実施例1の紙コーティング用ラテックスの製造において、反応器に前記実施例4で製造されたシードラテックス5重量部を満たして、スチレン1.2重量部、ブチルアクリレート14.0重量部、メチルメタクリレート5.0重量部、メタクリル酸9重量部、イタコン酸0.8重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.06重量部、炭酸水素ナトリウム0.12重量部、イオン交換水14.3重量部、及び過硫酸カリウム0.33重量部を、120分間連続投入して重合し、平均粒径は92nm、ゲル含量は82%、ガラス転移温度は24℃、転換率は96重量%であるコアを製造し、前記製造されたコアラテックスにシェルを被覆したことを除いては、前記実施例1と同様な方法により行った。
【0076】
前記製造された最終紙コーティング用ラテックスは、コアとシェルの重量比が3:7であり、平均粒径は133nm、ゲル含量は93%、ガラス転移温度は14℃(シェルのガラス転移温度:4℃)、転換率は98重量%、pHは4.1であった。
【0077】
比較例1
前記実施例1の紙コーティング用ラテックスの製造において、反応器にシードラテックス5重量部を満たして75℃まで昇温した後、スチレン36.7重量部、ブチルアクリレート58.5重量部、アクリル酸2.0重量部、イタコン酸2.8重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3重量部、炭酸水素ナトリウム0.4重量部、イオン交換水55重量部、及び過硫酸カリウム1.1重量部を、300分間連続投入して重合することにより、コア及びシェルを含む多層構造ではなく、一つのシェルを含むラテックスを製造したことを除いては、前記実施例1と同様な方法により行った。
【0078】
前記製造された最終紙コーティング用ラテックスは、平均粒径は180nm、ゲル含量は85%、ガラス転移温度は0℃、転換率は98重量%、pHは4.6であった。
【0079】
比較例2
前記実施例1の紙コーティング用ラテックスの製造において、コアの製造時、反応器に前記実施例4で製造されたシードラテックス3.9重量部を満たして、78℃まで昇温した後、スチレン23.2重量部、ブタジエン21.7重量部、アクリル酸1.2重量部、イタコン酸1.0重量部、アクリルアミド0.2重量部、アクリロニトリル2.7重量部、炭酸水素ナトリウム0.2重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1重量部、イオン交換水16.3重量部、及び過硫酸カリウム0.6重量部を、120分間連続投入して重合することにより、平均粒径は115nm、ゲル含量は74%、ガラス転移温度は−8℃、転換率は93重量%であるコアを製造し、前記製造されたコアラテックスにシェルを被覆するために、前記製造されたコアラテックスに、スチレン27.0重量部、ブタジエン18.6重量部、アクリル酸1.2重量部、イタコン酸0.3重量部、アクリルアミド0.2重量部、アクリロニトリル2.7重量部、炭酸水素ナトリウム0.2重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1重量部、イオン交換水16.3重量部、及び過硫酸カリウム0.6重量部を、180分間連続投入して重合したことを除いては、前記実施例1と同様な方法により行った。
【0080】
前記製造された最終紙コーティング用ラテックスは、平均粒径は143nm、ゲル含量は78%、ガラス転移温度は2℃(シェルのガラス転移温度:4℃)、転換率は98重量%、pHは4.7であった。
【0081】
比較例3
前記実施例1の紙コーティング用ラテックスの製造において、反応器に前記実施例4で製造されたシードラテックス5重量部を満たして、スチレン6.2重量部、ブチルアクリレート15.5重量部、メチルメタクリレート6.0重量部、メタクリル酸1.5重量部、イタコン酸0.8重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.06重量部、炭酸水素ナトリウム0.12重量部、イオン交換水14.3重量部、及び過硫酸カリウム0.33重量部を、120分間連続投入して重合することにより、平均粒径は91nm、ゲル含量は80%、ガラス転移温度は9℃、転換率は94重量%であるコアを製造し、前記製造されたコアラテックスにシェルを被覆するために、前記製造されたコアラテックスに、スチレン12.4重量部、ブチルアクリレート37.5重量部、メチルメタクリレート7.0重量部、メタクリル酸13.0重量部、アリルメタクリレート0.1重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.14重量部、炭酸水素ナトリウム0.28重量部、イオン交換水33.3重量部、及び過硫酸カリウム1.1重量部を、180分間連続投入して重合した。
【0082】
前記製造された最終紙コーティング用ラテックスは、コアとシェルの重量比が3:7であり、平均粒径は132nm、ゲル含量は92%、ガラス転移温度は7℃(シェルのガラス転移温度:5℃)、転換率は98重量%、pHは4.1であった。
【0083】
試験例
前記実施例及び比較例で製造された紙コーティング用ラテックス及び紙コーティング液の物性を下記の方法により測定して、前記紙コーティング液を塗布して製造したコーティング紙の物性を下記の方法により測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0084】
イ.ラテックス粒径−前記製造された紙コーティング用ラテックスのpHは、4〜5であり、この時のラテックスの粒径と、pH9における膨潤後の粒径とを、Laser Scattering Analyzer(Nicomp)を使用して測定した。
【0085】
ロ.低せん断粘度−Brookfield型粘度計を使用して測定した。紙コーティング液の粘度は、3号回転子を使用して、60rpmで1分後に測定された値(単位:cP)で表示した。
【0086】
ハ.高せん断粘度−Hercules Viscometer(KRK type, model KC-801C)を使用して6600rpmで測定された値(単位:cP)で表示した。
【0087】
ニ.ゲル含量−重合が完了された紙コーティング用ラテックスを常温で24時間以上乾燥してフィルムを形成し、前記フィルムが十分形成された後、適当な大きさのサンプルに切断して、200メッシュ網に入れて、過量のテトラヒドロフランに十分溶かした。前記サンプルを14時間以上溶かすと、不溶分の含量にそれ以上の変化がなくなり、これを一日中十分溶かした後、不溶分が残っているメッシュ網を取り出して、130℃オーブンで30分以上乾燥した。前記乾燥された不溶分の重量を測定し、その含量を百分率で示した。
【0088】
ホ.接着力−RI印刷機で数回にかけて印刷した後、剥離の程度を肉眼で判定し、5点法により評価して測定した。点数が高いほど、接着力が良好であることを意味し、タック値(tack value)12、14、16のインクをそれぞれ使用して測定した後、平均値で示した。
【0089】
ヘ.耐水性−RI印刷機で、モルトンロールを使用し湿潤水を添加した後、印刷して、その剥離の程度を、前記接着力と同様な方法により測定した。タック値10〜14のインクを使用し、1回印刷した後測定して、平均値で示した。
【0090】
ト.インク乾燥速度−RI印刷機で印刷した後、時間が経つにつれてインクがにじみ出る程度を5点法により測定した。点数が高いほど、インク乾燥速度が速いことを意味する。
【0091】
チ.着肉性−RI印刷機で、湿潤水を添加した後印刷して、インク転移の程度を測定した。低いタック値のインクを使用し剥離が生じないようにして、点数が高いほど、着肉性が高いことを意味する。
【0092】
リ.白紙光沢−Optical Gloss Meter(HUNTER type, 75°〜 75°)を使用し、コーティング紙の数ヶ所を測定し、平均値で示した。
【0093】
ヌ.印刷光沢−RI印刷機で印刷してから24時間経過後、白紙光沢と同様な方法により測定した。
【0094】
【表1】

【0095】
前記表1から、本発明により、エチレン不飽和酸がコア100重量部中5〜35重量部含まれたコアと、ガラス転移温度が常温以下であり、前記コアのガラス転移温度より低いシェルとを含む実施例1〜7の紙コーティング用ラテックスは、比較例1〜2の既存に汎用される紙コーティング用ラテックスに比べ、白紙光沢を著しく低めながらも印刷光沢に優れていると共に、インク乾燥速度、着肉性に優れており、接着力などの他の印刷適性も満足できるような水準であることが確認できた。特に、実施例4〜7の紙コーティング用ラテックスは、平均粒径が小さくて、接着力と耐水性がより向上し、優れた物性を示すことが分かった。また、比較例3の場合のように、実施例とは逆にシェルの製造に酸単量体を多く使用する場合は、インク乾燥速度及び接着力が著しく低下することが確認できた。重合された粒子外郭及び表面に酸基が過度に多く含まれている場合、親水性の増加により、インク溶媒の浸透速度が低下し、インク乾燥速度が遅くなって、また、酸基は、主に重合された粒子の外郭に分布するようになるが、粒子表面の柔軟性(flexibility)、変形性(deformability)を相対的に低下させ、接着力が減少する。
【0096】
[発明の効果]
以上説明したように、本発明によると、高膨潤性/収縮性多層構造の紙コーティング用ラテックスが含有された紙コーティング液を使用して、インク乾燥速度、接着力などの印刷適性に優れていながらも、白紙光沢を低め、且つ印刷光沢を向上させた高品質の無光沢コーティング紙を提供する効果がある。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア及びシェル構造を有する紙コーティング用ラテックスにおいて、
前記コアは、エチレン不飽和酸がコア100重量部中5〜35重量部含まれた単量体混合物の重合により形成されて、前記シェルは、ガラス転移温度が常温以下であり、前記コアのガラス転移温度より低いことを特徴とする紙コーティング用ラテックス。
【請求項2】
前記シェルは、その製造時、エチレン不飽和酸が、シェル100重量部を基準に、10重量部以下に含まれて、前記コアの製造におけるエチレン不飽和酸の含量比より低いエチレン不飽和酸の含量比を有することを特徴とする、請求項1に記載の紙コーティング用ラテックス。
【請求項3】
前記紙コーティング用ラテックスは、スチレン−ブタジエン系またはスチレン−アクリレート系ラテックスであることを特徴とする、請求項1に記載の紙コーティング用ラテックス。
【請求項4】
前記コアは、ガラス転移温度が5〜100℃であり、ゲル含量が50〜90%であることを特徴とする、請求項1に記載の紙コーティング用ラテックス。
【請求項5】
前記シェルは、ガラス転移温度が−20〜10℃であり、ゲル含量が70〜95%であることを特徴とする、請求項1に記載の紙コーティング用ラテックス。
【請求項6】
前記シェルは、一層以上であることを特徴とする、請求項1に記載の紙コーティング用ラテックス。
【請求項7】
前記紙コーティング用ラテックスは、平均粒径が80〜300nmであることを特徴とする、請求項1に記載の紙コーティング用ラテックス。
【請求項8】
前記紙コーティング用ラテックスは、pHが4〜5であることを特徴とする、請求項1に記載の紙コーティング用ラテックス。
【請求項9】
前記紙コーティング用ラテックスは、ガラス転移温度が−10〜50℃であることを特徴とする、請求項1に記載の紙コーティング用ラテックス。
【請求項10】
前記紙コーティング用ラテックスは、pH8〜10の紙コーティング液内において、初期ラテックス平均粒径の1.3倍以上の大きさに膨潤されることを特徴とする、請求項1に記載の紙コーティング用ラテックス。
【請求項11】
前記紙コーティング用ラテックスは、コアとシェルの重量比が3:7乃至7:3であることを特徴とする、請求項1に記載の紙コーティング用ラテックス。
【請求項12】
前記紙は、印刷用紙であることを特徴とする、請求項1に記載の紙コーティング用ラテックス。
【請求項13】
前記ラテックスは、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジアリルフタレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、及びトリメチロールプロパントリアクリレートからなる群から選択される1種以上の架橋性単量体をさらに含んで製造されることを特徴とする、請求項1に記載の紙コーティング用ラテックス。
【請求項14】
前記スチレン−ブタジエン系ラテックスは、紙コーティング用ラテックス100重量部を基準に、ブタジエン1〜60重量部、スチレン15〜80重量部、エチレン不飽和酸2〜10重量部、及び前記成分と共重合可能なビニル系単量体0〜20重量部が含まれた単量体混合物の重合により製造されることを特徴とする、請求項3に記載の紙コーティング用ラテックス。
【請求項15】
前記スチレン−アクリレート系ラテックスは、紙コーティング用ラテックス100重量部を基準に、ブチルアクリレート5〜70重量部、スチレン10〜70重量部、エチレン不飽和酸2〜10重量部、及び前記単量体と共重合可能なビニル系単量体0〜20重量部が含まれた単量体混合物の重合により製造されることを特徴とする、請求項3に記載の紙コーティング用ラテックス。
【請求項16】
前記エチレン不飽和酸は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、及びマレイン酸からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の紙コーティング用ラテックス。
【請求項17】
前記共重合可能なビニル系単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート;β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド、イタコンアミド、マレイン酸モノアミド、及びこれらの誘導体;α−メチルスチレン、ビニルトルエン、及びp−メチルスチレンからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項14または15に記載の紙コーティング用ラテックス。
【請求項18】
コア及びシェル構造を有する紙コーティング用ラテックスの製造方法であって、
a)エチレン不飽和酸がコア100重量部中5〜35重量部含まれた単量体混合物を重合してコアを製造する段階と、
b)製造されたコアの存在下で、エチレン不飽和酸がシェル100重量部中10重量部以下で含まれて、その含量比が前記コアにおける含量比より低い単量体混合物を重合してシェルを製造する段階とを含み、
前記シェルは、ガラス転移温度が常温以下であり、前記コアのガラス転移温度より低いことを特徴とする、紙コーティング用ラテックスの製造方法。
【請求項19】
前記a)段階及びb)段階は、n−ドデシルメルカプタン及びt−ドデシルメルカプタンからなる群から選択される1種以上の分子量調節剤をさらに使用することを特徴とする、請求項18に記載の紙コーティング用ラテックスの製造方法。
【請求項20】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の紙コーティング用ラテックスを含んでなることを特徴とする紙コーティング液。
【請求項21】
前記紙コーティング液は、重質炭酸カルシウム100重量部に対し、紙コーティング用ラテックス5〜20重量部を含んでなることを特徴とする、請求項20に記載の紙コーティング液。
【請求項22】
請求項20に記載の紙コーティング液を塗布して製造したコーティング紙。

【公開番号】特開2008−106276(P2008−106276A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276896(P2007−276896)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】