説明

高血圧および血管新生におけるエンドセリン−1/アンジオテンシンII二重レセプター(DEAR)の役割

【課題】高血圧に対する感受性を示すかまたは高血圧による現在の苦痛を示すエンドセリン−1/アンジオテンシンII二重レセプター(Dear)における突然変異および/または多型の同定。Dearの調節による血管新生のモデュレーションのための方法の提供。
【解決手段】患者から得た生物学的サンプル中のエンドセリン−1/アンジオテンシンII二重レセプター(Dear)における少なくとも1つの突然変異または多型の存在または不存在の検出。患者に有効量のエンドセリン−1/アンジオテンシンII二重レセプター(Dear)阻害剤を投与することを含む、個体における血管新生を阻害するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
この出願は、2004年11月16日に出願されたU.S.Provisional Patent Application Serial No.60/628,447および2005年6月27日に出願されたU.S.Provisional Patent Application Serial No.60/694,268の35U.S.C.119(e)の下の利益を請求する。その内容はそのまま参照により本願に組み込まれる。
【0002】
政府の支援
本発明は、National Institute of Health により授与されたContract No.HL69937の下で政府の支援を伴ってなされた。政府は、本発明における一定の権利を有する。
【0003】
本願は、高血圧に対する感受性を示すかまたは高血圧による現在の罹患を示すエンドセリン−1/アンジオテンシンII二重レセプター(Dual Endothelin-1/Angiotensin II Receptor)(Dear)における突然変異および/または多型の同定を指向する。更に、本発明は、Dearの調節を介して血管新生(angiogenesis)のモデュレーションのための方法を開示する。
【0004】
本発明の背景
エンドセリン−1/アンジオテンシンII二重レセプター(Dear)は、AngIIアンチセンスオリゴヌクレオチドプローブを使用してそしてまた独立にET−1オリゴヌクレオチドを使用して、成獣ラット脳cDNAライブラリーから始めて単離された。Molecular Medicine4:96-108-1998参照。このレセプターの構造解析は、推定された1つの予想される膜貫通ドメインならびに別のET−1およびAngII推定結合ドメインを示した。機能的解析は、ET−1およびAngIIの両方共Dearに結合しそしてCa2+動員伝達システム(Ca2+ mobilizing transduction system)へのカップリングを誘導することを示した。
【0005】
ET−1は多様な生理学的機能、例えば血圧調節、有糸分裂誘発(mitogenesis)およびアポトーシス(Lariviere, R. et al. Can J Physiol Pharmacol. 81, 607-621(2003)、および血管新生(Salani, D. et al. Am.J.Pathol. 157, 1537-1547(2000); Sullivan, D.C.& Bicknell, R. British Journal of Cancer 89, 228-231(2003) に関与する強力な血管収縮剤ペプチドであり、そしていくつかの病理生理学的状態、例えば高血圧、心不全 (Lariviere, R. et al. Can J Physiol Pharmacol. 81, 607-621(2003);Ikeda, T. et al. Hypertension 34, 514-519(1999);Touyz, R. M. & Schiffrin, E.L. Can J Physiol Pharmacol. 81, 533-541(2003)、ならびにより最近では腫瘍血管新生、浸潤および転移(Bagnato, A.& Spinella, F.Trends in Endocrinology and Metabolism 14, 44-50(2002);Grant, K., Loizidou, M.& Taylor,I.British Journal of Cancer 88,163-166(2003)に関係している。
【0006】
AngIIは、ET−1に類似した生理学的応答、例えば血圧調節、増殖、アポトーシスおよび血管新生(Watanabe, T. et al.Hypertension 45, 163-169(2005)を示し、そして腫瘍血管新生(Escobar, E. et al. Curr Vasc Pharmacol 2, 385-399(2004)にも関係している。観察された生理学的応答の責任を担うと考えられるET−1またはAngIIによる結合について、別個のレセプターが同定された。
【0007】
従って、ET−1およびAngIIの役割が知られているにもかかわらず、Dearの役割はこれまでのところ知られていない。Dearは、それぞれ、ET、ETまたはAT1およびAT2レセプターへのET−1またはAngIIの結合によりトリガーされる経路とは異なる経路を調節すると考えられる。しかしながら、ET−1およびAngIIに結合するその能力ならびに、これらの分子が血管新生、高血圧および腫瘍進行において果たす重要な役割により、Dearの役割のより良好な理解が必要である。本発明は、Dearの新規に発見された役割を開示し、そして種々の疾患および障害、例えば高血圧、病理的血管新生および腫瘍増殖/転移をスクリーニングし、診断し、予知しそして処置するための方法を提供する。
【0008】
すべての生物のゲノムは、先祖の遺伝子配列の変異形態を発生させる、連続した進化の過程で自然に起こる突然変異を受ける(Gusella, Ann. Rev. Biochem. 55, 831-854(1996))。変異体形態は、先祖の形態に対して進化の利点または欠点を与えることがありまたは何の変化ももたらさないことがある。ある例では、変異形態は、種に進化の利点を与え、最終的に種の多くのまたは大部分のメンバーのDNAに組み込まれ、そして有効に先祖形態となる。しかしながら、しばしば変異形態は、個体をある疾患または障害に感受性にすることがある欠点を与える。これらの変異体の理解は、存在する疾患もしくは障害のより良好な診断、ある疾患または障害にかかる危険の予知および改良された、よりターゲティングされた処置を提供する。
【0009】
疾患または障害関連の特異的突然変異および/または多型の知見は、特定の薬剤による治療に最も適した患者を鑑定するのを助ける(これはしばしば「薬理遺伝学」と呼ばれる)。薬理遺伝学は薬学的研究に使用されて薬物選択プロセスを支援することもできる。多型は、ヒトゲノムをマッピングする際に使用されそして疾患の遺伝的成分を解明するのに使用される。下記の参考文献は、薬理遺伝学に関するバックグラウンドの詳細および多型検出の他の使用を示す:Linder et al.(1997), Clinical Chemistry, 43, 254; Marshall(1997), Nature Biotechnology, 15, 1249; International Patent Application WO97/40462, Spectra Biomedical; and Schafer et al.(1998), Nature Biotechnology, 16,33。
【0010】
I.高血圧
高血圧は、アメリカにおける最もありふれた慢性の病気である。American Heart Associationは、6千2百万人より多くの6歳以上のアメリカ人が高血圧に罹っておりそしてこれらの人々の少数の人しかその血圧をコントロールしていないと評価している。処置しないでいると、高血圧は、発作、心臓発作、腎臓損傷、充血性心不全および死亡をもたらすことがある。コントロールされていない軽度〜中程度の高血圧は、典型的な35歳の人の寿命の期待可能な長さを16歳減少させるであろう。最も軽い形態の高血圧、即ち「境界高血圧」ですら、人の寿命を数年短くすることができそしてクオリティーオブライフに負の影響を与えることができる。
【0011】
高血圧に関する遺伝的成分の存在は、二卵生双生児におけるよりは一卵性双生児において血圧のより高い一致を示した双生児の研究から知られている。同様に、生物学的同胞は、同じ家庭で育てられた養子同胞よりも血圧のより高い一致を示す。このような研究は、集団における血圧の変動(variations)の40%以下が遺伝的に決定されることを示唆した。しかしながら、今日まで、高血圧についての信頼できる遺伝的マーカーは同定されていない。処置に関して有意な利益が得られたけれども、高血圧は、心臓及び腎臓疾患、および処置を開始すべきBPレベルの低下を促す発作についての主要な危険因子として普及している。
【0012】
従って、高血圧への人の感受性を予測するための遺伝的マーカーが必要であり、そして高血圧を診断するための信頼できる方法が必要である。更に、遺伝的高血圧(高血圧遺伝子)に寄与する突然変異体遺伝子の標準化(normalization)をターゲティングする処置ストラテジーが必要である。
【0013】
II 血管新生
血管新生は、新たに発生する血管の組織中への増殖(新生血管形成(neo-vascularization))および現存する血管のターゲット部位への合併吸収(co-opting)の両方を含む組織血管形成(tissue vascularization)のプロセスである。血管は、酸素および栄養を生きている組織に供給しそして廃産物を生きている組織から除去する手段である。血管新生は、重要な生物学的プロセスであることができる。例えば、血管新生は再生、成長および傷の修復に必須である。反対に、不適切な血管新生は、重い負の結果を与えることがある。例えば、腫瘍が急速に成長しそして転移することを可能とする酸素および栄養を腫瘍が十分に供給されるのは、血管新生の結果として充実性腫瘍に血管が形成された後のみである。
【0014】
血管新生依存性疾患および障害は、血管増殖により影響を受けるこれらの疾患および障害である。このような疾患は、医学的処置が求められる疾患の有意な部分を表し、そして炎症性傷害、例えば免疫及び非免疫炎症、慢性関節リウマチおよび乾癬、不適切なもしくは時期を失した血管の浸潤と関連した傷害、例えば、糖尿病性網膜症、黄班変性、血管新生緑内症、再発狭窄症、アテロー性動脈硬化プラークにおける毛細管増殖および骨粗鬆症、ならびに癌関連障害、例えば、充実性腫瘍、充実性腫瘍転移、血管線維腫、水晶体後方線維増殖症、血管腫、カポジ肉腫、腫瘍成長を支持するのに新生血管形成を必要とする癌等である。
【0015】
望まれない血管新生を阻害するための方法は知られているが、小数の方法が臨床的に有用であることが証明された。例えば、異常な血管新生を阻害するためにVEGFの産生または効果を減少させようと試みる多数の治療ストラテジーがある。例えば、抗VEGFまたはVEGFレセプター抗体(Kim ES et al. (2002), PNAS USA 99.11399-11404)およびVEGF結合のための内皮細胞レセプターと競合する可溶性VEGF「トラップ」(Holash J et al.(2002), PNAS USA 99: 11393-11398)が開発された。VEGF遺伝子発現に対して向けられた古典的VEGF「アンチセンス」またはアプタマー治療も提唱された(U.S. published application 2001/0021772 of Uhlmann et al)。これらおよび同様な非VEGFターゲテッド治療(non-VEGF targeted therapies)に使用される抗血管新生剤は、典型的には成功しなかった。従って利用可能な抗血管新生治療で達成された結果は一般に不満足であった。
【0016】
従って望まない血管新生を減少または排除するための方法が必要である。
【0017】
反対に、血管新生が望まれる状況、例えば、再生、発達、傷の修復および虚血もしくは梗塞の区域においては、血管新生の刺激が有用である。血管新生を開始またはアップレギュレーションするための最近の方法も概して臨床的に成功しておらず、従って必要である。
【0018】
更に、ET−1は乳癌成長および前悪性潜在力(pro-malignancy potential)とも関連しているので、Dearの阻害は、血管新生に対するその効果とは独立に、腫瘍成長および転移の可能性を減少させるのにも有効である。
【0019】
発明の要約
本発明の発明者は、Dearの発現および/またはDearへのET−1結合のアフィニティーを高めるDearにおける突然変異および/または多型は、高血圧に対する感受性を正確に予測することができることを発見した。Dearおよびそのヒト相同体における突然変異および/または多型は本発明に包含される。従って、本発明の1つの態様では、Dear遺伝子および/またはタンパク質を分析することにより高血圧に対する感受性を予測すること、目下の高血圧を診断することおよび/または高血圧の予後を提供することが可能である。野生型対照と比較して(1)Dear発現を高めるおよび/または(2)DearへのET−1結合のアフィニティーを高める突然変異および/または多型の存在は、高血圧へのヒトの感受性および/または高血圧による目下の苦痛を示している。
【0020】
更に、Dearは、血管新生、腫瘍成長および前悪性潜在力において役割を演じる。特に、本発明は、Dearの阻害剤、例えば抗Dear抗体は、癌のラットおよびマウスモデルの両者において腫瘍進行および前悪性潜在力を減少させることを示した。従って、本発明の他の態様では,血管新生、および/または腫瘍成長および/または前悪性潜在力を阻害するための方法が開示される。この態様では、個体はDear活性化を阻害する化合物、例えば小分子阻害剤、競合的阻害剤、抗体、抗体フラグメント、siRNA、アプタマー等を投与される。好ましくは、これらは、他の血管新生関連作用物質、例えばVEGF、胎盤成長因子等に対する阻害剤と共に使用される。
【0021】
本発明の方法により処置される病理学的血管新生または障害の非限定的例は、炎症性障害、例えば免疫および非免疫炎症、慢性関節リューマチおよび乾癬、脈管(vessels)の不適切なもしくは時期の悪い浸潤と関連した障害、例えば、糖尿病性網膜症、黄班変性、血管新生緑内症、再発狭窄症、アテローム性動脈硬化プラークにおける毛細管増殖および骨粗鬆症、ならびに癌関連障害、例えば、充実性腫瘍、充実性腫瘍転移、血管線維腫、水晶体後方線維増殖症、血管腫、カポジ肉腫および、腫瘍成長を支持するのに新生血管形成を必要とする同様な癌等を含む。本発明の好ましい態様では、本方法は、癌、例えば乳癌を有する哺乳動物における腫瘍血管新成および/または前悪性潜在力を阻害することに向けられる。
【0022】
関連した態様では、本発明は、血管新成を必要としている組織において血管新成を刺激するための方法を開示する。この態様では、Dearのアクチベーター、例えば、小分子、抗体、抗体フラグメントまたは当業者に知られている他のアクチベーターを個体に投与する。
【0023】
例として、血管新成の刺激は、糖尿病で誘導された虚血、劣悪な循環、心筋梗塞、大動脈瘤、下肢の動脈疾患、脳血管疾患等において有利でありうる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】Dahl SおよびDahl R Dear変異体の分子特徴付け。(図1A)T2814(Dahl S)/C2814(Dahl R)およびT2901(Dahl S)/C2901(Dahl R)ヌクレオチドトランジッションに及ぶDahl SおよびDahl R cDNAsの比較ヌクレオチド配列。対応するヌクレオチドトランジッションから生じアミノ酸置換は、Dahl R DearにおけるP44によるS44の置換およびDahl R DearにおけるT74によるM74の置換(Ruiz-Opazo et al. 1998に従うアミノ酸番号付け)を検出した。(図1B)Dahl R Dearの略構造。下記の機能的ドメインは強調されている:推定AngII結合部位、AngII(aa41〜48);ET−1結合部位、ET−1(aa60〜67);それぞれP44およびT74によりDahl S Dearにおける置換されたアミノ酸S44およびM74;潜在的cAMP依存性プロテインキナーゼリン酸化部位(緑色のS91、T108);潜在的インターナリゼーション認識配列(IRS)。(図1C)ウエスタンブロット分析は、雄および雌ラットから単離されたDahl SおよびDahl Rラット腎臓膜における同等なレベルのDahl S(S)およびDahl R(R)Dear変異体を検出する。MW、14.4kDa分子量マーカー。
【図2】Dahl SおよびDahl R Dear変異体の機能的特徴付け。放射能標識された125I−AngII(図2A)および125I−ET−1(図2B)によるCos1細胞で発現されたDahl S(○)およびDahl R(●)Dearのリガンド結合研究の飽和結合曲線。値は、5つの独立した実験からの平均±標準偏差として表される。(図2C)Dahl R(Kid−R)およびDahl S(Kid−S)腎臓(Kid)膜のウエスタンブロット分析(ab)による14kDa Dearタンパク質の検出
【表1】


;トランスフェクションされていない対照Cos1細胞膜(Cos1−c)、Dahl R S44P/M74T変異体を発現するCos1細胞膜(Cos1−R)およびDahl S S44/M74変異体を発現するCos1細胞膜(Cos1−S)。125I−AngIIウエストウエスタンブロット分析(*AngII)は、Dahl S腎臓膜(Kid−S)およびDahl S S44/M74変異体を発現するCos1細胞膜(Cos1−S)にのみの結合を検出するが、125I−ET−1ウエストウエスタンブロット分析(*ET−1)は、Dahl R(Kid−R)およびDahl S(Kid−S)腎臓膜の両方ならびにDahl R S44P/M74T(Cos1−R)およびDahl S S44/M74(Cos1−S)分子変異体を発現するCos1細胞膜への結合を示す。
【図3A】Dahl SおよびDahl R Dear変異体についての飽和データのスキャッチャードプロット。Cos1細胞に発現されたDahl S(○)およびDahl R(●)Dearの125I−AngII(図3A)および 125I−ET−1(図3B、図3C)飽和結合データのスキャッチャードプロット。図3D:Cos1細胞に発現されたマウスDearのリガンド結合研究の飽和結合曲線。○、平均±sem125I−ET−1結合;●、平均±sem125I−AngII結合。
【図3B】Dahl SおよびDahl R Dear変異体についての飽和データのスキャッチャードプロット。Cos1細胞に発現されたDahl S(○)およびDahl R(●)Dearの125I−AngII(図3A)および 125I−ET−1(図3B、図3C)飽和結合データのスキャッチャードプロット。図3D:Cos1細胞に発現されたマウスDearのリガンド結合研究の飽和結合曲線。○、平均±sem125I−ET−1結合;●、平均±sem125I−AngII結合。
【図3C】Dahl SおよびDahl R Dear変異体についての飽和データのスキャッチャードプロット。Cos1細胞に発現されたDahl S(○)およびDahl R(●)Dearの125I−AngII(図3A)および 125I−ET−1(図3B、図3C)飽和結合データのスキャッチャードプロット。図3D:Cos1細胞に発現されたマウスDearのリガンド結合研究の飽和結合曲線。○、平均±sem125I−ET−1結合;●、平均±sem125I−AngII結合。
【図3D】Dahl SおよびDahl R Dear変異体についての飽和データのスキャッチャードプロット。Cos1細胞に発現されたDahl S(○)およびDahl R(●)Dearの125I−AngII(図3A)および 125I−ET−1(図3B、図3C)飽和結合データのスキャッチャードプロット。図3D:Cos1細胞に発現されたマウスDearのリガンド結合研究の飽和結合曲線。○、平均±sem125I−ET−1結合;●、平均±sem125I−AngII結合。
【図4】Dear変異体の検出および遺伝的解析。 (図4A)異なるラツト系統における一本鎖コンフォメーション多型(SSCP)解析によるDear遺伝子変異体の検出。S44P置換に及ぶ137bpPCR産物は、Dahl R(R)およびLEW系統におけるS44P/M74T変異体を示すが、S44/M74変異体はDahl S(S)、BN、WKYおよびSHRゲノムDNAsにおいて検出される。F1はF1[RxS]被験体を示す。Map Manager QTXb17プログラムを使用する雄(図4B)および雌(図4Cを)コホートにおける染色体2のブーツストラツプ解析によるインターバルマッピング。水平線(――)は連鎖の有意性についてのLRS値を示す。(図4B)について上から下へ:高度に有意であるでは、LRS=18.4(LOD=4.00)、有意であるではLRS=10.6(LOD=2.30)、示唆的であるではLRS=4.1(LOD=0.89);(図4C)について上から下へ:高度に有意であるでは、LRS=16.6(LOD=3.61)、有意であるではLRS=9.9(LOD=2.15)、示唆的であるではLRS=3.9(LOD=0.85)。――尤度比統計量(likelifood ratio statistic);――相加的効果についての回帰係数;――優性効果についての回帰係数。ヒストグラムは、検出されたQTLsについてのブーツストラップに基づく信頼区間を表す。
【図5A】ターゲティングベクターのDear発現および略図。図5Aは、野生型129SVJマウスDear(WTアレル)、相同性組換えのためのDearターゲティングベクター(KO構築物)および突然変異体アレルの制限マップを示す。(1)はサザンブロット分析用のプローブであり、これはターゲティングされたアレルにおける5.2kbSphI制限消化フラグメント(2)および野生型アレルにおける8.0kbフラグメント(3)を検出する1.5kbS−B制限フラグメントであり;P1(4)は組み込み部位にフランキングするフォアードプライマーであり;P2(5)はリバースpGKNeo特異的プライマーであり;成功したターゲティング事象(successful targeting event)は予測された5.5kbP1−P2PCR産物を生成する。SはSacI制限酵素であり;BはBamHI制限酵素であり;NはNsil制限酵素である。
【図5B】図5Bは、試験されたすべての組織におけるマウスDear mRNAを腎臓および大動脈においてより高いレベルで検出するノーザンブロット分析を示す。3つの異なるサイズのDear mRNAは多分異なるポリアデニル化シグナルを表している。28Sおよび18Sリボソームマーカーは左側に示される。H、心臓、B、脳、K、腎臓、Li、肝臓、Sp、脾臓、Lu、肺、Ao、大動脈、Te、睾丸、Ut、子宮。
【図5C】図5Cは、相同性組換えによるマウスにおけるDear不活性化の検出のためのサザンブロット分析を示す。不活性化の証拠は、野生型(+/+)サンプルに存在しないことと比較して、ヘテロ接合体(+/-)DNAサンプルでより低いハイブリダイゼーションバンドとして検出されたゲノムDNAの予測された5.2kbSphI制限消化フラグメントにより特徴付けられる。
【図5D】図5Dは、E11.5マウス胚のPCRジェノタイピングを示す。結果(下部パネル)は、野生型、Dear+/+(+/+)およびヘテロ接合体Dear+/-(+/-)において153bpアレルを示すが、Dear-/-(-/-)胚では示さない。上部パネルは、Dear+/-およびDear-/-において不活性化された(5.35kb)アレルを示すが、Dear+/+胚では示さない。
【図5E】図5Eは、ラットDear配列と比較したマウスDear cDNAについての推定されたアミノ酸配列(下部配列)、Ab、抗Dear抗体のために使用されるペプチド配列;AngII、アンジオテンシンII結合部位1、ET−1、エンドセリン−1結合部位1、TM−1、予測された膜貫通ドメイン;IRS、インターナリゼーション認識配列;(−)、同一配列;(*)、より良いアラインメントのための調節されたギャップ;肉太文字は非保存性アミノ酸相違を示す。
【図5F】図5Fは、抗マウスDear特異的抗ペプチド抗体を使用するDear+/+(+/+)およびDear+/-(+/-)欠失マウス腎臓膜のウエスタンブロット分析(上部パネル);非特異的交差反応性高分子量タンパク質の存在は、等量の分析されたタンパク質を証明する(下部パネル)。
【図5G】図5G〜5I:ヘテロ接合体Dear+/-成獣マウスにおける血圧(図5G)、心拍数(図5H)および体重(図5I)の分析。Dear+/+(□)およびDear+/-(■)欠失雄(M)および雌(F)マウスにおける収縮期血圧(SBP、mmHg)および平均心拍数(bpm、拍動/分)。4〜6ヶ月(m)齢の雄Dear+/+(◇)およびDear+/-(◆)ならびに雌Dear+/+(○)およびDear+/-(●)マウスを比較するグラム(g)で表した体重。*、P<0.05;**、P<0.01。
【図5H】図5G〜5I:ヘテロ接合体Dear+/-成獣マウスにおける血圧(図5G)、心拍数(図5H)および体重(図5I)の分析。Dear+/+(□)およびDear+/-(■)欠失雄(M)および雌(F)マウスにおける収縮期血圧(SBP、mmHg)および平均心拍数(bpm、拍動/分)。4〜6ヶ月(m)齢の雄Dear+/+(◇)およびDear+/-(◆)ならびに雌Dear+/+(○)およびDear+/-(●)マウスを比較するグラム(g)で表した体重。*、P<0.05;**、P<0.01。
【図5I】図5G〜5I:ヘテロ接合体Dear+/-成獣マウスにおける血圧(図5G)、心拍数(図5H)および体重(図5I)の分析。Dear+/+(□)およびDear+/-(■)欠失雄(M)および雌(F)マウスにおける収縮期血圧(SBP、mmHg)および平均心拍数(bpm、拍動/分)。4〜6ヶ月(m)齢の雄Dear+/+(◇)およびDear+/-(◆)ならびに雌Dear+/+(○)およびDear+/-(●)マウスを比較するグラム(g)で表した体重。*、P<0.05;**、P<0.01。
【図6】Dear+/+(左側)およびDear-/-(右側)マウス胚の比較解剖学的解析。図6Aは、Dear+/+(左側)において顕著な卵黄嚢集合脈管を示すが、より小さいDear-/-(右側)に存在しない、隣接したE12.5杯を示し:両胚はまだそれぞれ胎盤に付着している。図6Bは、Dear+/+において、良く発達した卵黄嚢集合脈管を示すが、Dear-/-胚には存在しない、隣接したE11.5マウス胚を示す。図6Cは、E10.5 Dear+/+に比較して、E10.5Dear-/-マウス胚は、卵黄嚢集合脈管の欠如を示し;胚半透明性は、不完全な血管網、血液充満した心臓およびいくらかの頭部領域血管形成(vascularization)の検出を可能とする。図6Dは、暗色化した再吸収されたDear-/-胚から正常なDear+/+を区別する隣接したE12.5マウス胚を示す。図6Eは、図6Bにおける年齢が一致したより大きい異形性ヌル表現型と比較した発育不全表現型を示すE11.5 Dear-/-マウス胚を示す。図6Fは、図6Cにおける僅かにより大きいE10.5異形性ヌル表現型と比較した発育不全表現型を示すE10.5 Dear-/-マウス胚を示す。図6Gは、頭部領域における未発達の且つ異常な血管叢、隔離された血液充満した心臓(→)を有しそして血液充満した背側大動脈が検出されないE10.5 Dear-/-胚(右パネル)と対照的に、顕著な血液充満した背側大動脈(▽)および心臓(→)を有する頭部領域から尾部領域までの血管網発達を示す高倍率のE9.5 Dear+/+(左パネル)マウス胚を示す。図6Hは、拡張した単一室の血液充満した心臓、最小の末梢血管網を有し、眼の色素沈着が存在せずそして異常な脳領域発達を有するDear-/-胚とは対照的に、Dear+/+胚における明白な血液充満した心室およびより大きな身体全体にわたり血管網を示すマウス胚の解析を示す。図6Iは、特に脳領域の発達および心室形成においてDear-/-胚における顕著な発達遅延を示す、図6Bに示された清浄化され、固定されたE11.5マウス胚を示す。
【図7−1】マッソントリクローム染色されたマウス胚の組織学的解析を示す。図7A:拡張した脈管(→)を有するが集合脈管が存在しない一次血管叢(primary vascular plexus)中にまばらな血島を示すE10.5 Dear-/-卵黄嚢。図7B:大きな血島が充満した集合脈管(→)および一次血管叢を示すE10.5 Dear+/+胚卵黄嚢。図7C:E12.5 Dear-/-胚の解析は、主要脳領域の無秩序な分画(disorderly demarcation)を伴う異常な過度に入り組んだ神経上皮(abnormal hyper-convoluted neuroepithelium)を示す。中心の腹側区域(central ventral section)は、器官発生がなく、認識可能な肝臓および腸分化を伴わない。図7D:同腹子E12.5 Dear+/+胚の解析は、Dear-/-突然変異体における異形性表現型と対照的である。顕著な器官形成:腸、肝臓、心臓、脳および背側大動脈に留意されたい。図7E:薄い壁の神経周囲脈管(→)および過度に細胞状の(hyper-cellular)神経上皮を示す高倍率のDear-/-神経上皮セグメント(図7Cにおいて近位*)。図7F:対照的に、血島で満たされそして相対的に厚い壁を示す神経周囲脈管(→)を示す高倍率のDear+/+神経上皮セグメント(図7Cにおいて近位*)。図7G:少数の有核赤血球が神経上皮内に検出されるけれども、不十分なディファレンシャルな層化(differential layering)を有する顕著な細胞性を示す高倍率のDear-/-神経上皮セグメントは、透過性毛細管が存在しない(図7Cにおいて遠位*)。図7H:ディファレンシャル層化及び多数の透過性毛細管(→)および有核赤血球を示す高倍率のDear+/+神経上皮(図7Dにおいて遠位*)。図7I〜J胎仔−胎盤連結部(fetal-placental connections)(f-pl con/xn)の解析(バー=160μm)および図7K−L:E11.5胚における胎仔−胎盤接合部(fetal-placental junctions)(f-pl jxn)は、Dear-/-における異常な血管発達および減少した胚血球(embryonic blood cells)を示す(バー=20μm)。
【図7−2】マッソントリクローム染色されたマウス胚の組織学的解析を示す。図7A:拡張した脈管(→)を有するが集合脈管が存在しない一次血管叢(primary vascular plexus)中にまばらな血島を示すE10.5 Dear-/-卵黄嚢。図7B:大きな血島が充満した集合脈管(→)および一次血管叢を示すE10.5 Dear+/+胚卵黄嚢。図7C:E12.5 Dear-/-胚の解析は、主要脳領域の無秩序な分画(disorderly demarcation)を伴う異常な過度に入り組んだ神経上皮(abnormal hyper-convoluted neuroepithelium)を示す。中心の腹側区域(central ventral section)は、器官発生がなく、認識可能な肝臓および腸分化を伴わない。図7D:同腹子E12.5 Dear+/+胚の解析は、Dear-/-突然変異体における異形性表現型と対照的である。顕著な器官形成:腸、肝臓、心臓、脳および背側大動脈に留意されたい。図7E:薄い壁の神経周囲脈管(→)および過度に細胞状の(hyper-cellular)神経上皮を示す高倍率のDear-/-神経上皮セグメント(図7Cにおいて近位*)。図7F:対照的に、血島で満たされそして相対的に厚い壁を示す神経周囲脈管(→)を示す高倍率のDear+/+神経上皮セグメント(図7Cにおいて近位*)。図7G:少数の有核赤血球が神経上皮内に検出されるけれども、不十分なディファレンシャルな層化(differential layering)を有する顕著な細胞性を示す高倍率のDear-/-神経上皮セグメントは、透過性毛細管が存在しない(図7Cにおいて遠位*)。図7H:ディファレンシャル層化及び多数の透過性毛細管(→)および有核赤血球を示す高倍率のDear+/+神経上皮(図7Dにおいて遠位*)。図7I〜J胎仔−胎盤連結部(fetal-placental connections)(f-pl con/xn)の解析(バー=160μm)および図7K−L:E11.5胚における胎仔−胎盤接合部(fetal-placental junctions)(f-pl jxn)は、Dear-/-における異常な血管発達および減少した胚血球(embryonic blood cells)を示す(バー=20μm)。
【図8】Dear+/+(+/+)(図8A、8Cおよび8E)およびDear-/-(-/-)マウス胚(図8B、8Dおよび8F)の組織学的解析。Dear-/-における背側大動脈(da)、脈管構造(vasc)および卵黄嚢ならびに心臓および脳の欠陥のある発達を示すマッソントリクローム染色されたE11.5胚(バー=160μm)。
【図9】神経周囲領域における血管新生(angio;図9C〜D)および尾部領域における血管網(vasc net;図9E〜F)の形成の境界線を定めるE12.5マウス胚(embryo(図9A−B);バー=160μm)の平滑筋細胞α−アクチン免疫染色は、Dear-/-胚における欠陥のある血管発達を検出する;バー=20μm。
【図10】野生型(+/+)E9.5およびE12.5胚におけるマウスDear発現パターンの解析は、心臓、胚外および胚脈管構造および神経管におけるDear発現を検出する。sc、脊椎、ao、大動脈、bi、血島;neuroepith、神経上皮;バー=20μm。
【図11A】腫瘍増殖に対するDear阻害の解析。Dear+/-マウス(■)において、年齢が一致したDear+/+対照マウス(□)と比較して、メラノーマ細胞で誘導された皮下腫瘍の減少した腫瘍質量(mg)(図11A)および腫瘍容積(mm3)(図11B)が雌で観察されたが、オスでは観察されなかった。図11C:抗ラットDear抗ペプチド特異的抗体処置(○)は、放射線で誘導されたラット乳癌の腫瘍容積を減少させる。図11D:抗ラットDearDNAワクチン処置(◇)も放射線で誘導されたラット乳癌の腫瘍容積を減少させる。図11E:モック処置された(mock-treated)(mock−Rx)ベクター対照、抗Dear抗ペプチド特異的抗体処置(ab−Rx)および抗ラットDearDNAワクチン(DNA−vac)を比較する、マッソントリクローム染色された腫瘍切片の代表的組織化学的解析は、抗Dear処置された腫瘍における腫瘍パターン、マイクロ血管浸潤(Microvascular invasion)および核グレードの変化を示す;バー=20μm。値は、平均±semとして表される。*P<0.05;**,P<0.01;***,P<0.001。
【図11B】腫瘍増殖に対するDear阻害の解析。Dear+/-マウス(■)において、年齢が一致したDear+/+対照マウス(□)と比較して、メラノーマ細胞で誘導された皮下腫瘍の減少した腫瘍質量(mg)(図11A)および腫瘍容積(mm3)(図11B)が雌で観察されたが、オスでは観察されなかった。図11C:抗ラットDear抗ペプチド特異的抗体処置(○)は、放射線で誘導されたラット乳癌の腫瘍容積を減少させる。図11D:抗ラットDearDNAワクチン処置(◇)も放射線で誘導されたラット乳癌の腫瘍容積を減少させる。図11E:モック処置された(mock-treated)(mock−Rx)ベクター対照、抗Dear抗ペプチド特異的抗体処置(ab−Rx)および抗ラットDearDNAワクチン(DNA−vac)を比較する、マッソントリクローム染色された腫瘍切片の代表的組織化学的解析は、抗Dear処置された腫瘍における腫瘍パターン、マイクロ血管浸潤(Microvascular invasion)および核グレードの変化を示す;バー=20μm。値は、平均±semとして表される。*P<0.05;**,P<0.01;***,P<0.001。
【図11C】腫瘍増殖に対するDear阻害の解析。Dear+/-マウス(■)において、年齢が一致したDear+/+対照マウス(□)と比較して、メラノーマ細胞で誘導された皮下腫瘍の減少した腫瘍質量(mg)(図11A)および腫瘍容積(mm3)(図11B)が雌で観察されたが、オスでは観察されなかった。図11C:抗ラットDear抗ペプチド特異的抗体処置(○)は、放射線で誘導されたラット乳癌の腫瘍容積を減少させる。図11D:抗ラットDearDNAワクチン処置(◇)も放射線で誘導されたラット乳癌の腫瘍容積を減少させる。図11E:モック処置された(mock-treated)(mock−Rx)ベクター対照、抗Dear抗ペプチド特異的抗体処置(ab−Rx)および抗ラットDearDNAワクチン(DNA−vac)を比較する、マッソントリクローム染色された腫瘍切片の代表的組織化学的解析は、抗Dear処置された腫瘍における腫瘍パターン、マイクロ血管浸潤(Microvascular invasion)および核グレードの変化を示す;バー=20μm。値は、平均±semとして表される。*P<0.05;**,P<0.01;***,P<0.001。
【図11D】腫瘍増殖に対するDear阻害の解析。Dear+/-マウス(■)において、年齢が一致したDear+/+対照マウス(□)と比較して、メラノーマ細胞で誘導された皮下腫瘍の減少した腫瘍質量(mg)(図11A)および腫瘍容積(mm3)(図11B)が雌で観察されたが、オスでは観察されなかった。図11C:抗ラットDear抗ペプチド特異的抗体処置(○)は、放射線で誘導されたラット乳癌の腫瘍容積を減少させる。図11D:抗ラットDearDNAワクチン処置(◇)も放射線で誘導されたラット乳癌の腫瘍容積を減少させる。図11E:モック処置された(mock-treated)(mock−Rx)ベクター対照、抗Dear抗ペプチド特異的抗体処置(ab−Rx)および抗ラットDearDNAワクチン(DNA−vac)を比較する、マッソントリクローム染色された腫瘍切片の代表的組織化学的解析は、抗Dear処置された腫瘍における腫瘍パターン、マイクロ血管浸潤(Microvascular invasion)および核グレードの変化を示す;バー=20μm。値は、平均±semとして表される。*P<0.05;**,P<0.01;***,P<0.001。
【図11E】腫瘍増殖に対するDear阻害の解析。 Dear+/-マウス(■)において、年齢が一致したDear+/+対照マウス(□)と比較して、メラノーマ細胞で誘導された皮下腫瘍の減少した腫瘍質量(mg)(図11A)および腫瘍容積(mm3)(図11B)が雌で観察されたが、オスでは観察されなかった。図11C:抗ラットDear抗ペプチド特異的抗体処置(○)は、放射線で誘導されたラット乳癌の腫瘍容積を減少させる。図11D:抗ラットDearDNAワクチン処置(◇)も放射線で誘導されたラット乳癌の腫瘍容積を減少させる。図11E:モック処置された(mock-treated)(mock−Rx)ベクター対照、抗Dear抗ペプチド特異的抗体処置(ab−Rx)および抗ラットDearDNAワクチン(DNA−vac)を比較する、マッソントリクローム染色された腫瘍切片の代表的組織化学的解析は、抗Dear処置された腫瘍における腫瘍パターン、マイクロ血管浸潤(Microvascular invasion)および核グレードの変化を示す;バー=20μm。値は、平均±semとして表される。*P<0.05;**,P<0.01;***,P<0.001。
【0025】
発明の詳細な説明
I.高血圧
本発明の1つの態様では、個体の高血圧への感受性を決定するための方法が開示され、そして高血圧の状態を決定するための診断および/または予後方法が開示される。対照と比較して、AngII、ET−1、VEGFシグナルペプチド(VEGFsp)または他のDearリガンドによるDearの発現増加および/またはDear活性化もしくはDearシグナリングの増強に相関するDearにおける突然変異および/または多型について、個体をスクリーニングする。健常な対照と比較して試験サンプルにおけるこのような突然変異および/または多型の存在は、個体の高血圧への感受性を示す。健常な対照と比較して試験サンプルにおけるこのような突然変異および/または多型の存在は、高血圧の目下の状態を示すこともできる。
【0026】
本明細書で使用された、用語Dearは、Dearおよびそのヒト相同体を包含する。1つの態様では、用語「Dearに対するヒト相同体」は、すべての合間の区間を含む(即ち、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%等)配列番号1に対する少なくとも約50%相同性、更に好ましくは少なくとも約60%相同性または同一性を有するDNA配列を指す。1つの態様では、用語「Dearタンパク質に対するヒト相同体」は、配列番号2に対する50%相同性、更に好ましくは少なくとも約60%相同性、なお更に好ましくは少なくとも約70%相同性、なお一層好ましくは少なくとも約75%相同性、その上更に好ましくは少なくとも約80%相同性、なお更に好ましくは少なくとも約90%相同性、更に好ましくは少なくとも約95%相同性を有するアミノ酸配列を指し、その区間も包含される(即ち、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%等)。
【0027】
「相同性]または「同一性」または「類似性」は、2つのペプチド間または2つの核酸分子間の配列類似性を指す。相同性および同一性は、各々、比較の目的でアラインメントさせることができる各配列における位置を比較することにより決定されうる。比較された配列における同等な位置が同じ塩基またはアミノ酸により占拠されるとき、分子はその位置で同一であり;同等な部位が同じまたは類似したアミノ酸残基(例えば立体的性質および/または電子的性質において類似した)により占められているとき、分子はその位置で相同性(類似性)と言うことができる。相同性/類似性または同一性の百分率としての表現は、比較された配列により共有された位置における同一または類似したアミノ酸の数の関数を指す。「無関係」または「非相同性」である配列は、本願の配列との40%未満の同一性を共有し、好ましくは本願の配列との25%未満の同一性を共有する。
【0028】
2つの配列を比較する際に、残基(アミノ酸または核酸)の不存在または余分の残基の存在も、同一性および相同性/類似性を減少させる。用語「相同性」は、類似した機能またはモチーフを有する遺伝子またはタンパク質を同定するのに使用される配列類似性の数学的に基づいた比較を表す。本願の核酸およびタンパク質配列を、「クエリー配列(query sequence)」として使用して公表データベースに対するサーチを行って、例えば、他のファミリーメンバー、関連した配列または相同体を同定することができる。このようなサーチは、Altschul, et al.(1990) J Mol. Biol. 215:403-10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して行うことができる。NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長さ=12を使用してBLASTヌクレオチドサーチを行って、この出願の核酸分子に対して相同性のヌクレオチド配列を得ることができる。XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長さ=3でBLASTタンパク質サーチを行って、この出願のタンパク質分子に対して相同性のアミノ酸配列を得ることができる。比較の目的でギャップ付きアラインメント(gapped alignments)を得るために、Altschul, et al.(1997) Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402に記載のとおりに、Gapped BLASTを利用することができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用するとき、それぞれのプログラム(例えばXBLASTおよびBLAST)のデフォールトパラメーターを使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov参照。
【0029】
本明細書で使用された「同一性」は、配列をアラインメントさせて配列マッチングを最大にする(即ち、ギャップおよび挿入を考慮に入れて)とき、2つ以上の配列の対応する位置における同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の百分率を意味する。同一性は、(Computational Molecular Biology, Lesk, A.M., ea., Oxford University Prerss, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and -14 Genome Projectss, Smith, D.W., ea., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, PartI, Griffrin,A.M., and Griffin, H.G., eds., Humana Prrss, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; and Sequence Analysis Primer, Gribskow, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991; and Carillo, H., and Lipmann, D., SLAM J. Applied Math., 48:1073(1988))に記載されたそれらを含むがそれらに限定されない既知の方法により容易に計算されうる。同一性を決定するための方法は、試験された配列間の最大のマッチを与えるようにデザインされる。更に、同一性を決定するための方法は、公的に入手可能なコンピュータープログラムにより集大成される。2つの配列間の同一性を決定するためのコンピュータープログラム方法は、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research I 12(1): 387(1984)), BLASTP, BLASTNおよびFASTA(Altschul,S.F. et al., J. I Molec. Biol. 215: 405-410(1990)および Altschul,S.F. et al.,et al.(1997) Nucl.Acids Res.25:3389-3402(1997))を含むがそれに限定されない。BLAST X プログラムは、NCBIおよび他のソースから公的に入手可能である。(BLAST Mannual, Altschul, S., et al., NCBI NLM NIH Betheseda, Md. 20894; Altshul, et al. J. Mol. Biol. 215:403-410(1990))。周知のSmith Waterman algorithmを使用して同一性を決定することもできる。
【0030】
一旦個体が高血圧に対して感受性であることが知られると、血圧の上昇を減少または阻止するための現在利用可能な方法を使用することができる。高血圧を減少および/または予防するための現在利用可能な方法は、例えば、食事、訓練、抗高血圧剤、例えばβ遮断薬、ジウレティック、カルシウムアンタゴニスト、アンジオテンシンII活性剤、心拍数減少性非ジヒドロピリジンカルシウムアンタゴニストおよびアンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害剤の組合せを含む多重薬物治療計画を含む。または、Dear機能をモデュレーションする化合物を投与することができる。個体が既に高血圧を有する場合には、その高血圧について基礎を知ることは、処置計画を決定するのに使用することができる。
【0031】
Dearなどの遺伝子における突然変異および/または多型の存在または不存在を検出するための方法は、当業者に知られておりそしてある態様は下記のとおりである:
【0032】
サンプルの調製
突然変異および/または多型は、分析されるべき個体からのターゲット核酸において検出される。例えば、ゲノムDNAのアッセイのために、実質的にいかなる生物学的サンプル(純粋な赤血球以外の)も適当である。例えば、好都合な組織サンプルは、全血、精液、唾液、涙、尿、胎児物質、汗、頬、皮膚および髪を含む。cDNAおよびmRNAのアッセイのために、組織サンプルは、ターゲット核酸が発現される器官から得ることができ、例えば心臓、脳、腎臓、肝臓、脾臓、肺、大動脈、睾丸および子宮におけるDear発現を示す図5B参照。
【0033】
下記した方法の多くは、ターゲットサンプルからのDNAの増幅を必要とする。これは、例えばPCRにより達成されうる。一般に、PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification(ed. H. A. Erlich, Freeman Press, NY, N. Y.., 1992); PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications(eds. Innis, et al., Academic Press, San Diego, Calif., 1990); Mattila et al., Nucleic Acids Res. 19,4967(1991); Eckert et al., PCR Methods and Applications 1, 17(1991); PCR(eds. McPherson et al., IRL Press, Oxford); およびU.S.Pat.No.4,683,202(その各々は、すべての目的で参照により組み込まれる)を参照されたい。
【0034】
他の適当な増幅方法は、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Wu and Wallace, Genomics 4,560(1989), Landegren et al., Science 241, 1077(1988),転写増幅(Kwoh et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86, 1173(1989)および自己持続性配列複製(Guatelli et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 87,1874(1990))および核酸をベースとする配列増幅(NASBA)を含む。後者の2つの増幅方法は、それぞれ、約30または100対1の割合で増幅産物として一本鎖RNA(ssRNA)および二本鎖DNA(dsDNA)の両方を産生する等温転写に基づく等温反応を含む。
【0035】
ターゲットDNAにおける突然変異および/または多型の検出
突然変異した部位または多型部位を占める塩基の同一性は、以下に記載されるいくつかの方法により個体(例えば、分析されるべき患者)において決定されうる。
【0036】
アレル特異的プローブ
突然変異および/または多型を解析するためのアレル特異的プローブのデザインおよび使用は、例えば、Saiki et al., Nature 324, 163-166(1986); Dattagupta, EP235,726, Saiki, WO89/11548により記載されている。アレル特異的プローブは、2つの個体からのそれぞれのセグメントにおいて異なる突然変異形態または多型形態の存在により、1つの個体からのターゲットDNAのセグメントにはハイブリダイゼーションするが、他の個体からの対応するセグメントにはハイブリダイゼーションしないようにデザインされうる。ハイブリダイゼーション条件は、アレル間のハイブリダイゼーション強度の有意な差、好ましくはプローブがアレルの1つのみにハイブリダイゼーションする本質的に二者択一な応答(binary response)があるように、十分にストリンジェントであるべきである。あるプローブは、多型部位がプローブの中心位置(例えば、15マーにおいては7位置、16マーでは8または9位置において)とアラインメントするようにターゲットDNAのセグメントにハイブリダイゼーションするようにデザインされる。プローブのこのデザインは、異なるアレル形態間のハイブリダイゼーションにおける良好な識別を達成する。
【0037】
アレル特異的プローブはしばしばペアーで使用され、ペアーの1つのメンバーはターゲット配列の標準形態への好ましいマッチを示しそして他のメンバーは変異体形態への完全なマッチを示す。プローブのいくつかのペアーは、次いで同じターゲット配列内の多重突然変異および/または多型の同時分析のための同じ支持体上に固定化されうる。
【0038】
タイルアッセイ(tiling assay)
突然変異および/または多型は、核酸アレーへのハイブリダイゼーションにより同定することができ、そのいくらかの例はWO95/11995により記載されている(これらはすべての目的でそのまま参照により組み込まれる)。特徴付けられた突然変異および/または多型の解析のために同じアレーまたは異なるアレーを使用することができる。WO95/11995は、前以て特徴付けられた突然変異および/または多型の変異体形態の検出のために最適化されるサブアレーも記載している。このようなサブアレーは、第1基準配列のアレル変異体である第2基準配列に対して相補性であるようにデザインされたプローブを含有する。プローブの第2グループは、プローブが第2基準配列に相補性を示すことを除いて上記したのと同じ原理によりデザインされる。第2グループ(または更なるグループ)を包含することは、多重突然変異がプローブの長さに対応する短い距離内で起こる(即ち、9〜21塩基内に2つ以上の突然変異)ことが期待される一次基準配列の短いサブ配列を解析するために特に有用でありうる。
【0039】
アレル特異的プライマー
アレル特異的プライマーは、突然変異および/または多型にオーバーラッピングするターゲットDNA上の部位にハイブリダイゼーションし、そして該プライマーが完全な相補性を示すアレル形態の増幅のみをプライミングする。Gibbs, Nucleic Acid Res. 17, 2427-2448(1989)参照。このプライマーは、遠位部位でハイブリダイゼーションする第2プライマーと共に使用される。増幅は、特定のアレル形態が存在することを意味する検出可能な産物をもたらす2つのプライマーから進行する。対照は、通常第2のプライマーの ペアーで行い、その1つは多型部位において一塩基ミスマッチを示しそしてその他方は遠位部位に対して完全に相補性を示す。一塩基ミスマッチは増幅を阻止しそして検出可能な産物が形成されない。この方法は、ミスマッチが突然変異および/または多型とアラインメントされたオリゴヌクレオチド3’の大部分の位置に含まれるとき、最善に働く。何故ならば、この位置はプライマーからの伸びに対して最も不安定化しているからである。例えば、WO93/22456を参照されたい。
【0040】
直接配列決定
本発明の突然変異および/または多型の配列の直接分析は、ジデオキシチェインターミネーター法またはマクサム−ギルバート法を使用して達成することができる(Sambrock et al., Molecular Cloning, A Laboratory manual(2ndEd., CSHP, New York 1989); Zyskind et al., Recombinant DNA Laboratory Manual,(Acad. Press, 1988))。
【0041】
変性剤濃度勾配ゲル電気泳動
ポリメラーゼ連鎖反応を使用して発生された増幅産物を、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動の使用により解析することができる。異なるアレルは異なる配列依存性溶融性および溶液中のDNAの電気泳動移動に基づいて同定されうる。Erlich, ed., PCR Technology, Principles and Applications for DNA Amplification,(W.H.Freeman and Co, New York, 1992), Chapter 7.。
【0042】
一本鎖コンフォメーション突然変異および/または多型解析
Orita et al., Proc. Nat. Acad. Sci. 86, 2766-2770(1989)に記載されたとおり、一本鎖PCR産物の電気泳動移動の変化により塩基の差を同定する一本鎖コンフォメーション突然変異および/または多型解析を使用して、ターゲット配列のアレルを区別することができる。増幅されたPCR産物を上記のように発生させることができ、そして加熱またはそうでなければ変性して一本鎖増幅産物を形成させることができる。一本鎖核酸を折りたたむかまたは塩基配列に部分的に依存している二次構造を形成することができる。一本鎖増幅産物の異なる電気泳動移動度は、ターゲット配列のアレル間の塩基配列の差に関係することができる。
【0043】
抗体検出方法
本発明の他の局面に従えば、ヒトDearポリペプチドのアレル変異体(突然変異および/または多型)に対して特異的な抗体を使用して、Dear突然変異および/または多型の存在または不存在を検出することができる。
【0044】
抗体は、任意の適当な方法を使用して調製することができる。例えば、精製したポリペプチドを利用して特異的抗体を調製することができる。用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体および種々のタイプの抗体構築物、例えば、F(ab’)2、Fabおよび一本鎖Fvを含むことを意味する。抗体は、それらが約107M−1以上のKaでDearのアレル変異体に結合するならば、特異的に結合していると定義される。結合のアフィニティーは、慣用の技術、例えばScatchard et al., Ann. N.Y.Acad.Sci., 51: 660(1949)により記載された技術を使用して決定することができる。
【0045】
ポリクローナル抗体は、当技術分野で周知の手順を使用して、種々のソース、例えばウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ニワトリ、ウサギ、マウスまたはラットから容易に生成させることができる。一般に、抗原を、典型的には非経口注入によりホスト動物に投与する。抗原の免疫原性は、アジュバント、例えば完全フロイントアジュバントまたは不完全フロイントアジュバントの使用により増強させることができる。追加免疫感作(booster immunization)の後、少量の血清のサンプルを採集しそして抗原に対する反応性について試験する。このような決定のために有用な種々のアッセイの例は、:Antibodies: A Laboratory Mannual, Harlow and Lane(eds), Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1998; に記載のアッセイならびに、向流免疫電気泳動(CIEP)、ラジオイムノアッセイ、放射免疫沈降法、酵素結合イムノソーベントアッセイ(ELISA)、ドットブロットアッセイおよびサンドイッチアッセイの如き手法を含む。U.S.Pat.Nos. 4,376,110および4,486,530を参照されたい。
【0046】
モノクローナル抗体は、周知の手順を使用して容易に調製することができ、例えばU.S.Pat.No.4,902,614, 4,543,439および4,411,993; Monoclonal Antibodies, Hybridomas: A New Dimension in Bioligical Analyse, Plenum Press, Kennet, McKearn, and Bechtol(eds),(1980)に記載の手順参照。
【0047】
Dearの変異体形態に対するモノクローナル抗体は、別の技術、例えば、Alting- Mees et al., " Monoclonal Antibody Expression Libraries: A Rapid Alternative to Hybridomas", Strategies in Molecular Biology 3: 1-9(1990)(これらは参照により本明細書に組み込まれる)により記載された技術を使用して産生することができる。同様に、リコンビナントDNA技術を使用して結合パートナーを構築して、特異的結合抗体をコードする遺伝子の可変領域に組み込むことができる。このような技術は、Larricker et al., Biotechnology, 7:394(1989)に記載されている。
【0048】
一旦単離および精製されると、抗体は、確立されたアッセイプロトコールを使用してサンプルにおける変異体Dearの存在を検出するのに使用することができる。例えば"A Practical Guide to ELISA" by D. M. Kemeny, Pergamon Press, Oxford, England参照。当業者に知られているとおり、適当な対照サンプル、即ち、野生型または非突然変異および/または多型Dearを有するサンプルを対照として使用する。
【0049】
発現レベルの決定のための方法も包含される。例えば、Dearの過発現は、個体が高血圧に対して感受性であるかまたは高血圧に現在苦しんでいるという指示である。発現レベルを解析するための方法は当業者に知られている。本発明の1つの局面では、生物学的試験サンプルに存在するDearレベルは、試験サンプルにおけるDear mRNAのレベルを分析しそしてこのレベルを対照サンプルにおけるDearのレベルと比較することにより測定される。他の態様では、生物学的試験サンプルに存在するDearレベルは、試験サンプルまたはその調製物を内在性対照18SrRNAと接触させることにより測定される。本発明の好ましい態様は、組織サンプルからのDear mRNAの分析のためのレーザーキャプチャーマイクロダイセクション(laser capture microdissection)およびRT−PCRの使用である。レーザーキャプチャーマイクロダイセクションは、当業者に知られておりそして例えばSimon et al. (1998) Trends in Genetics 14:272 およびEmmert- Buck et al. (1996) Science 274: 998-1001に記載されている。
【0050】
本発明の他の局面では、生物学的試験サンプルに存在するDearレベルは、試験サンプルまたはその調製物を、Dearタンパク質またはその一部に特異的に結合する抗体をベースとする結合部分と接触させることにより測定される。抗体をベースとする結合部分は、検出されうるDearとの複合体を形成し、それによりDearのレベルを測定することを可能とする。
【0051】
当業者に知られているいかなる手段もDearレベルを評価するのに使用することができる。例えば、ある態様では、Dear発現レベルは、質量分析法、ELISA、MR、CT、DearをターゲッティングするPETまたは免疫組織化学によりDearのレベルを測定することによりアッセイされる。
【0052】
更なる態様では、本発明は、生物学的サンプルにおけるDearを測定するための手段を含むキットを提供する。
【0053】
定義
本明細書でそして全体にわたって使用された「Dear」、「DEAR」または「Dear」は、エンドセリン−1/アンジオテンシンII二重レセプターである。
【0054】
多型は、集団における2つ以上の遺伝的に決定された別の配列またはアレルの存在を指す。多型マーカーまたは部位は、ダイバージェンスが生じるローカスである。好ましいマーカーは、少なくとも2つのアレルを有し、各々は選ばれた集団の1%より多く、更に好ましくは10%または20%より多くの頻度で起こる。多型ローカスは1塩基対と同じく小さくてもよい。多型マーカーは、制限断片長多型、可変数のタンデム反復(VNTR’s)、超可変領域、ミニサテライト、ジヌクレオチド反復、トリヌクレオチド反復、テトラヌクレオチド反復、単純配列反復および挿入エレメント、例えばAluを含む。第1の同定されたアレル形態は、基準形態として任意に命名されそして他のアレル形態は、別のアレルまたは変異体アレルと名づけられる。
【0055】
選ばれた集団で最も頻繁に生じるアレル形態は、ときには野生型形態と呼ばれる。二倍体生物は、アレル形態についてホモ接合体またはヘテロ接合体であることができる。ジアレル多型は2つの形態を有する。トリアレル多型は、3つの形態を有する。
【0056】
一塩基多型は、アレル配列間の変動の部位である1つのヌクレオチドにより占められた多型部位で起こる。この部位は、アレルの高度に保存された配列(例えば、集団の部分{1/100}または{部分(1/1000)}未満のメンバーにおいて変化する配列)により先行されそして後続される。
【0057】
一塩基多型は、通常多型部位における1つのヌクレオチドの他のヌクレオチドによる置換により生じる。トランジッションは、1つのプリンの他のプリンによる置換または1つのピリミジンの他のピリミジンによる置換である。トランスバージョンはプリンのピリミジンによる置換またはその逆である。一塩基多型は、基準アレルに対するヌクレオチドの欠失またはヌクレオチドの挿入からも生じうる。
【0058】
II.血管新生
A.血管新生を阻害すること
本発明の他の態様では、疾患または障害を血管新生の阻害により処置する個で、血管新生に依存するかまたは該血管新生によりモデュレーションされる疾患または障害を有する個体の組織において血管新生を阻害する方法が開示される。一般に、この方法は、血管新生阻害量のDear阻害剤を含む組成物を組織に投与することを含む。
【0059】
関連した態様では、本発明の方法は、血管新生性(angiogenic)疾患または障害を発生する危険がある個体の組織における血管新生を阻害する方法を提供する。
【0060】
新規な血管の成長が疾患と関連した病理の原因であるかまたは該病理に寄与する場合には、血管新生の阻害は、疾患の有害な効果を減少させるであろう。例は、腫瘍、慢性関節リウマチ、糖尿病性網膜症、炎症性疾患、再発狭窄症等を含む。有害な組織の成長を支持するのに、新規な血管の成長が必要である場合には、血管新生の阻害は、組織への血液供給を減少させ、それにより血液供給要求に基づく組織質量の減少に寄与するであろう。例は、腫瘍が厚さ数ミリメートルを超えて増殖するためにそして充実性腫瘍転移の確立のために新生血管形成が連続的に要求される腫瘍の成長を含む。他の例は、冠プラーク拡大(coronary plaque enlargement)である。
【0061】
本発明は、組織における血管新生を阻害し、それにより血管新生に依存する組織における事象を阻害するための方法を提供する。
【0062】
この処置は、Dear阻害剤の投与を含むであろう。処置は、他の血管新生阻害剤、化学療法、放射線、外科、または血管新生を阻害することが知られている当業者に知られている他の処置と併用するDear阻害剤を含むがそれらに限定されない、処置の併用を含むことができる。本発明のDear阻害剤と併用されうる血管新生阻害剤の例は、:直接血管新生阻害剤、アンジオスタチン、ベバシズマブ(アバスチン)、アレステン、カンスタチン、コンブレタスタチン、エンドスタチン、NM−3、トロンボスポンジン、タムスタチン、2−メトキシステラジオールおよびビタキシン;ならびに間接血管新生阻害剤:ZD1839(イレッサ)、ZD6474、OSI774(タルセバ)、CI1033、PKI1666、IMC225(エルビタックス)、PTK787、SU6668、SU11248、ハーセプチンおよびIFN−α、CEREBREX(登録商標)(セレコキシブ)、THALOMID(登録商標)(サリドマイド)およびIFN−αである。
【0063】
したがって、Dear阻害剤の投与と共に、血管新生を阻害する化合物は、臨床的に適切な方式での投与が、患者の少なくとも統計的に有意な一部について有利な効果、例えば、症候群の改善、治癒、疾患の重荷の減少、腫瘍質量もしくは細胞数の減少、寿命の延長、クオリティーオブライフの改善または特定のタイプの疾患または状態を処置することに慣れている医師によりポジティブと一般に認識された他の効果をもたらすことを示す。
【0064】
Dear阻害剤の例は、AngII、ET−1および/または他のET−1もしくAngII様リガンドのDearへの結合をブロッキングする分子、Dearの下流シグナリング事象を妨害する化合物、またはレセプターの活性化を阻害する他の化合物もしくは作用物質を含むがそれらに限定されない。このような化合物は、Dearに結合しそしてAngII、ET−1または他の模倣リガンドの結合を阻止する抗体を含む。好ましくは、抗体はヒト化抗体である。好ましくは、抗体は、一本鎖抗体またはF(ab)2フラグメントである。他の阻害剤は、ET−1に結合するDearドメインに結合する小分子、可溶性Dearレセプター、DearET−1および/またはAngII結合ドメインを含有するペプチド等を含む。
【0065】
血管新生が、炎症性障害、例えば免疫および非免疫炎症、慢性関節リューマチおよび乾癬、血管の不適切なもしくは時期の悪い浸潤と関連した障害、例えば、糖尿病性網膜症、血管新生緑内症、再発狭窄症、アテロー性動脈硬化プラークにおける毛細管増殖および骨粗鬆症、ならびに癌関連障害、例えば、充実性腫瘍、充実性腫瘍転移、血管線維腫、水晶体後方線維増殖症、血管腫、カポジ肉腫、腫瘍成長を支持するのに新生血管形成を必要とする同様な癌を含むがそれらに限定されない病理的血管新生と呼ばれるネガティブな結果をもたらすと考えられる種々の疾患または傷害がある。本発明の好ましい態様では、本方法は、癌を有する哺乳動物における血管新生を阻害することに向けられる。
【0066】
本明細書に記載された、種々の組織または組織化された組織からなる器官のいずれもが、皮膚、筋肉、腸、連結組織、関節、骨および血管が血管新生刺激により浸潤することができる同様な組織を含む疾患状態における血管新生に対応することができる。
【0067】
本発明で処置された個体は、その多くの態様において、望ましくはヒト患者であるが、本発明の原理が、用語「患者」に含まれることを意図するすべての哺乳動物に関して有効であることを示すことは理解されるべきである。これに関連して、動物は、血管新生と関連した疾患の処置が望ましいいかなる哺乳動物種、特に農業用および家畜哺乳動物種も含むと理解されるべきである。
【0068】
好ましい態様では、本発明は、癌、特に乳癌における如き病理的血管新生を有する哺乳動物の組織における血管新生を阻害する方法、および癌の存在を排除または減少させるDear阻害剤の投与を指向する。
【0069】
B.血管新生の増強
本発明の別の態様では、新生血管形成または追加の血液供給を必要としている組織または器官における血管新生を刺激するのにDearアクチベーターを使用する。これらの場合に、Dearアクチベーター単独の送達または他の血管新生刺激剤との併用の送達は有利でありうる。
【0070】
例えば壊疽、糖尿病、劣悪な循環、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈疾患、心筋虚血、心筋梗塞、大動脈瘤、下肢の動脈疾患、脳血管疾患等のごとき、血流が増加すると有利になるいかなる状態も包含される。この方法では、本発明の方法は、Dearアクチベーターを投与して血管形成(vascularization)を促進することにより、末梢血管疾患を処置するのに使用することができる。同様に、Dear活性化は、特に心臓への血管が部分的または完全に閉塞された、疾患のある心臓または低酸素心臓を処置するのに有用である。動脈硬化症を有する他の器官は、Dear活性化から利益を得ることができる。同様に、その機能がより高い血管形成により増強されうる器官は、Dearの活性化により改善されうる。これは、機能の改善を必要としている腎臓または他の器官を含む。同じく、増加した血流から利益を得ることができる他の障害は、虚血性腸疾患、脳血管疾患、血管に基づく不能等を含む。更に、心臓における新規な血管の形成は、冠閉塞の結果から心筋を保護するのに決定的に重要である。虚血性心筋へのDearアクチベーターの投与は、側枝の発生を増強することができ、壊死組織の治癒を促進することができそして梗塞の拡大および心不全を防止することができる。
【0071】
更に、Dearアクチベーターは、新生血管形成を増加させることにより関心のある組織または器官について移植部位を調製するのに有用である。このような器官移植片は、膵臓、腎臓、心臓、肺、肝臓等を含むがそれらに限定されない。Dearアクチベーターは、外科手術癒着バリアーとして他の移植片と併用して使用することができる。
【0072】
体外受精の後、胚を妊娠のためにメスに移植する。本発明の方法は、胚移植のための子宮血管形成床(uterine vascularized bed)を形成するのに使用することができる。この態様では、Dearアクチベーターを移植前に導入して、胚の移植前に子宮壁における血管形成を促進し、かくして胎児−母体血管叢(fetal-maternal vascular plexus)を促進する。同様に、Dearアクチベーターは、胎児−母体血管叢形成を増強させることもでき、および/または自然および体外受精した胚の両方の妊娠(pregnancy/gestation)を成功させるための強い胎盤脈管構造を増強することもできる。
【0073】
当業者は、治療が有益であるときおよび治療が禁忌を示す場合を決定することができる。一般に、既知の腫瘍または病理的血管新生を有する患者は、本発明のDearアクチベーターを与えられるべきではない。
【0074】
III.腫瘍前悪性潜在力:腫瘍の前悪性潜在力を減少させること。本発明の他の態様では、腫瘍の前悪性潜在力を減少させる方法が開示される。一般に、この方法は、核多型性(nuclear pleomorphism)、核過染色症、血管浸潤(vascular invasion)、モザイク腫瘍脈管(mosaic tumor vessels)、無秩序腫瘍脈管(chaotic tumor vessela)、腫瘍転移等などの前悪性パラメーター(しかしすべてを含むわけではない)を減少させる用量でDear阻害剤を含む組成物を全身にまたは局所的に、腫瘍に投与することからなる。
【0075】
処方
本発明のDearアクチベーターおよび阻害剤は、静脈内(I.V)、筋肉内(I.M)、皮下(S.C)、皮内(I.D)、腹腔内(I.P)、鞘内(I.T)、胸膜内、子宮内、直腸、膣アクチベーターまたは阻害剤)は、注射によるか、長時間にわたる緩やかな注入(gradual infusion)により非経口的に投与することができ、そして蠕動手段により送達することができる。
【0076】
投与は、経粘膜または経皮手段によることができる。経粘膜または経皮投与のために、透過されるべきバリアーに適切な透過剤を処方において使用する。このような透過剤は当技術分野で公知でありそして、例えば経粘膜投与胆汁塩およびフシジン酸誘導体を含む。更に、洗剤を使用して透過を促進させることができる。経粘膜投与は、例えば鼻内噴霧または坐剤を使用することによることができる。経口投与のためには、本発明の化合物は、慣用の経口投与形態、例えばカプセル剤、錠剤および強壮剤に処方することができる。
【0077】
局所投与のために、医薬組成物(Dear活性の阻害剤またはアクチベーター)は、当技術分野で公知の、軟膏剤、膏剤(salves)、ゲル剤またはクリーム剤に処方される。
【0078】
Dearアクチベーターおよび阻害剤は、例えば単位量の注射によるなど、普通に静脈内に投与される。治療組成物に関して使用されるとき用語「単位量」は、被験体のための単位投与量(unitary dosage)として適当な物理的に分離した単位を指し、各単位は、必要な希釈剤、即ち、担体またはビヒクルと共同して所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の有効物質を含有する。
【0079】
組成物は、投与処方(dosage formulation)に適合する方式でそして治療的に有効な量で投与される。投与されるべき量及びタイミングは、処置されるべき被験体、被験体のシステムの有効成分を利用する能力および所望の治療効果の程度に依存する。投与されるのに必要な有効成分の正確な量は、医師の判定に依存しておりそして各個体に特徴的である。
【0080】
本発明の方法を実施するために有用なDearアクチベーターおよび阻害剤は、当業者に公知のとおり、意図する使用に適当な有効成分を含有する任意の処方または薬物送達システムである。経口、直腸、局所または非経口的(吸入、皮下、腹腔内、筋肉内および静脈内を含む)投与のための適当な薬学的に許容されうる担体は、当業者に知られている。担体は、処方の他の成分と適合性でありそしてそのレシピエントに有害ではないという意味で薬学的に許容されうるものでなければなない。
【0081】
本明細書で使用された、組成物、担体、希釈剤および試薬について言及される用語「薬学的に許容されうる」、「生理学的に許容されうる」およびその標準語法にかなう変異表現は、交換可能に使用されそして、その物質を、望ましくない生理学的効果を生じることなく哺乳動物に投与することができまたは哺乳動物に対して投与することができることを示す。
【0082】
非経口投与に適当な処方は、便利には、レシピエントの血液と好ましくは等張性である有効化合物の無菌の水性調製物を含む。したがって、このような処方は、好都合には蒸留水、蒸留水中の5%デキストロースまたは生理的食塩水を含有することができる。有用な処方は、適当な溶媒で希釈すると上記非経口投与に適当な溶液剤を生じる、上記化合物を含有する濃厚溶液剤または固体剤も含む。
【0083】
腸内投与のために、各々所定の量の有効化合物を含有する、カプセル剤、カシェ剤、錠剤またはトローチ剤の如き分離した単位において;散剤もしくは顆粒剤として;あるいは水性液体もしくは非水性液体中の懸濁剤もしくは溶液剤、例えば、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤または頓服水剤において、不活性担体中に配合されうる。適当な担体は、デンプンもしくは糖であることができそして滑剤、矯味・矯臭剤、結合剤および同じ性質の他の物質を含むことができる。
【0084】
錠剤は、場合により1種以上の補助成分と共に圧縮または成形により製造されうる。圧縮された錠剤は、有効化合物を、適当な機械で、場合により補助成分、例えば、結合剤、滑剤、不活性希釈剤、界面活性剤または分散剤と混合された易流動性形態、例えば散剤または顆粒剤の形態において圧縮成形することにより調製することができる。成形された錠剤は、任意の適当な担体との散剤状の有効化合物の混合物を適当な機械で成形することにより製造されうる。
【0085】
シロップ剤または懸濁剤は、任意の補助成分を加えられていてもよい糖、例えばスクロースの濃厚水性溶液に有効化合物を加えることにより製造することができる。このような補助成分は、矯味・矯臭剤、糖の結晶化を遅らせる作用物質または任意の他の成分の溶解度を増加させる作用物質、例えば多価アルコール、例えばグリセロールまたはソルビトールを含むことができる。
【0086】
直腸投与のための処方は、坐剤基剤用の慣用の担体、例えば、カカオバターまたはWitepsol S55(Dynamite Nobel Chemical, Germanyの商標)を有する坐剤として提供されうる。
【0087】
経口投与用の処方は、エンハンサーと共に提供されうる。経口的に許容されうる吸収エンハンサーは、界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、パルミトイルカルニチン、ラウレス−9、ホスファチジルコリン、シクロデキストリンおよびその誘導体;胆汁塩、例えばデオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウムおよびフシジン酸ナトリウム;EDTAを含むキレート剤、クエン酸およびサリチレート;ならびに脂肪酸(例えば、オレイン酸、ラウリン酸、アシルカルニチン、モノ−およびジグリセリド)を含む。他の経口吸収エンハンサーは、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、CHAPS(3−(3−コールアミドプロピル)−ジメチルアンモニオ−1−プロパンスルホネート)、Big−CHAPS(N,N−ビス(3−D−グルコンアミドプロピル)−コールアミド)、クロロブタノール、オクトキシノール−9、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾールおよびアルキルアルコールを含む。本発明のための特に好ましい経口吸収エンハンサーは、ラウリル硫酸ナトリウムである。
【0088】
あるいは、化合物は、リポソーまたはミクロスフェア(またはミクロパーティクル)において投与することができる。患者に投与するためのリポソームおよびミクロスフェアを製造する方法は当業者に周知である。U.S.Pat.No.4,789,734(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)は、リポソーム中に生物学的物質をカプセル化するための方法を記載する。本質的に、物質を水性溶液に溶解し、適切なリン脂質および脂質を必要ならば界面活性剤と共に加え、そして物質を必要に応じて透析および超音波処理する。既知の方法の概説は、G.Gregoriadis, Chapter 14, "Liposomes," Drug Carriers in Biology and Medicine, pp. 287-341(Academic Press, 1979)により提供される。
【0089】
ポリマーまたはタンパク質から形成されるミクロスフェアは、当業者に周知でありそして直接血流中へと胃腸管を通して送るように要求に合わせることができる。または、化合物は、日〜月の範囲の期間にわたり除放するために移植されたミクロスフェアまたはミクロスフェアの複合体に組み込むことができる。例えば、U.S.Pat.Nos. 4,906,474, 4,925,673 and 3,625,214 and Jein, TIPS 19: 155-157(1998)参照されたい。これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
1つの態様では、本発明のDearアクチベーターまたは阻害剤は、静脈内投与の後毛細細管床(capillary beds)に入れるのに適当なサイズのリポソーム、ミクロスフェア、ナノパーテイクル中に処方することができる。リポソーム、ミクロスフェアまたはナノパーテイクルが虚血組織を取り囲んでいる毛細管床に入れられるとき、作用物質は、それらが最も有効な部位に局所的に投与されうる。虚血組織をターゲティングするための適当なリポソームは、一般に約200ナノメートル未満であり、そして例えば、"Liposomal targeting of ischemic tissue"と題するBaldeschweilerへのU.S.Pat.No.5,593,688(その内容は参照により本明細書に組みこまれる)に開示されたとおり典型的には、単層小胞(unilamellar vesicles)でもある。
【0091】
好ましい粒子は、生物分解性ポリマー、例えば、ポリグリコリド、ポリラクチドおよびそのコポリマーから製造された粒子である。当業者は、所望の薬物放出速度及び所望の投薬量を含む種々のファクターに依存して適切な担体システムを容易に決定することができる。
【0092】
1つの態様では、処方は、直接血管の内側にカテーテルを介して投与される。投与は、例えば、カテーテルの穴を通して行うことができる。有効化合物が相対的に長い半減期(1日〜4週間以上のオーダーの)を有するこれらの態様では、処方は、Hubbell et al へのU.S.Pat.No.5,410,016に開示されたヒドロゲルの如き生物分解性ポリマーヒドロゲルに含ませることができる。これらのポリマーヒドロゲルは、組織内腔の内側に送達させることができそして有効化合物はポリマーが分解するにつれて経時的に放出されうる。所望ならば、ポリマーヒドロゲルは、有効化合物のコントロールされた放出のための他の機序を与える、ミクロパーティクルまたはリポソームであってその中に分散された有効化合物を含むミクロパーティクルまたはリポソームを有することができる。
【0093】
処方は、好都合には単位剤形で提供することができ、そして薬学の分野で周知の方法のいずれかにより調製されうる。すべての方法は、有効化合物を、1種以上の補助成分を構成する担体と混合する段階を含む。一般に、処方は、有効化合物を液体担体または微細に分割された固体担体と均一に且つ緊密に混合させ、次いで必要ならば、生成物を所望の単位剤形に成形することにより調製される。
【0094】
処方は、製剤処方の分野で利用される1種以上の任意の補助成分、例えば、希釈剤、バッファー、矯味・矯臭剤、結合剤、界面活性剤、粘稠化剤、滑剤、懸濁化剤、保存剤(酸化防止剤を含む)等を更に含むことができる。
【0095】
本方法の化合物は、噴霧器のための嗅剤、またはエアゾル剤もしくは溶液剤としてまたは通気のためのミクロファイン散剤として、単独でまたはラクトースの如き不活性担体と組み合わせて、気道に投与するために提供されうる。このような場合に、有効化合物の粒子は、適当には50ミクロン未満も好ましくは10ミクロン未満、更に好ましくは2〜5ミクロンの直径を有する。
【0096】
一般に、鼻内投与のために、軽い酸性pHが好ましいであろう。好ましくは、本発明の組成物は、約3〜5、更に好ましくは、約3.5〜約3.9、最も好ましくは3.7のpHを有する。pHの調節は、適当な酸、例えば塩酸の添加により達成される。
【0097】
その中に溶解もしくは分散した有効成分を含有する薬理学的組成物の調製は、当技術分野で十分に理解されそして処方に基づいて限定される必要はない。典型的には、このような組成物は、液体溶液剤または懸濁剤として注射可能物として調製されるが、使用の前に液体とする、溶液剤または懸濁剤用の適当な固体剤形態を調製することもできる。調製物は乳化させることもできる。
【0098】
下記はラットDearの配列である:
Rattus norvegicus エンドセリン1,アンジオテンシンIIレ二重セプター(Dear)、mRNA:
GeneID:446170 Locus tag: RGD:1303105
【表2】




【表3】

【0099】
実施例1
近親交配したDahl/JRラットモデルは、その先祖が同じの食塩抵抗性正常血圧の対照系統(Dahl R)(52)と共に食塩感受性高血圧系統(Dah1 S)からなるヒト本態性高血圧の確立されたモデルである。高血圧病因におけるDearの関与を調査するために、我々は、Dahl SおよびDahl Rレセプターの両方についての全体アミノ酸コード領域に及ぶcDNAsを得た。2つの非保存性アミノ酸置換をもたらす2つのヌクレオチドの相違が検出された:S44P置換をもたらすT2814(Dahl S)/C2814(Dahl R)ヌクレオチドトランジッションおよびM74T置換をもたらすT2901(Dahl S)/C2901(Dahl R)ヌクレオチドトランジッション(図1A、1B)。S44P置換は、細胞外ドメインにおける推定AngII結合部位に位置しており;一方M74T置換は推定膜貫通ドメインに位置している(図1B)。Dahl S cDNAヌクレオチド配列は、先に報告されたスプグレーグ−ドーリーラット脳DearcDNA(1)と同一である。我々は、Dahl SおよびDahl Rラット株の両方共スプレーグ−ドーリー株に由来している(52)ことを指摘する。
【0100】
S44P置換は、Dahl R Dear変異体(1)(図1B)内の予想されたAngII結合ドメインに及び、これは、AngII結合が、Dahl SレセプターとDahl Rレセプターとで異なる可能性が極めて高いという仮説を示唆する。この仮説を検査するために、我々は、Dahl SおよびDahl R腎臓膜を比較するウエスタンブロット分析により検出して、雄及び雌ラットの両方において12週齢のDahl SラットとDahl Rラット間のDear発現レベルに有意な差はないことを最初に決定した(図1C)。ホルモン結合を検査するために、DahlSおよびDahlR レセプターをそれぞれCos1細胞において一過性で発現させそしてAngIIおよびET−1結合について試験した。直接放射性リガンド結合(図2および表1)ならびに、DahlSおよびDahlRラット腎臓膜ならびにDahlSおよびDahlR Dear Cos1トランスフェクタント細胞膜のウエストウエスタンブロット分析(ウエスタンブロット上のレセプターポリペプチドへの標識されたリガンド(ウエスト)結合)(図2C)により示されたとおり、DahlR Dearは、AngII結合を示さないが、正常なET−1結合を示す。これらのデータは、Dahl S Dear変異体は、最初に特徴付けられた(1)脳由来のクローンと同様なET−1及びAngIIの両方に結合する二重レセプターであるが、Dahl R Dear変異体はET−1刺激にのみ応答することを証明する。ET−1についての2つのアフィニティー結合部位は、Dahl S及びDahl Rレセプターにおいて検出され(図3、表1)、そしてDahl SレセプターにおけるAngIIについての2つのアフィニティー結合部位(図3、表1)は先の特徴付け(1)と一致している。更に、Dahl R Dear S44P/M74S変異体と比較して、Dahl S Dear S44/M74変異体は、ET−1に対する3倍増加したアフィニティーを示し(Dahl R:S44P/M74T KHET−1 =12.0±1.12pM;; Dahl S: S44/M74 KHET−1 = 4.42±0.89pM,P<0.001、表1)、これはDahl Rレセプターに比較してET−1刺激に対するDahl Sレセプターの増強された応答を示唆する。
【0101】
予想されたAngII結合部位へのその局在化に基づくと、S44P置換は、Dahl R DearにおいてAngII結合が存在しないことが観察されたことの原因であるようである。興味深いことに、このS44P置換および得られるディファレンシャルAngII結合は、分子認識理論により予想されるペプチド−リガンド結合ドメイン内の自然に起こる突然変異を始めて明らかにする(1)。
【0102】
Dahl SおよびDahl R Dear遺伝子間の機能的に有意な変異体を発見したので、次いで我々は、それぞれ高い食塩(8%NaCl)チャレンジの8および12週間後にラジオテレメトリーにより血圧についてフェノタイピングされた雄(n=106)および雌(n=102)F2[R×S]相互交配ラットの両方に関する独立のQTL解析を行うことにより高血圧感受性への潜在的遺伝的寄与を調べた(表2)。高食塩食事チャレンジを、F2[R×S]相互交配雌ラットについて4週間延長した。何故ならば、雌BP表現型は、雄F2[R×S]相互交配ラットにおけるよもはるかに低かったからである(高食塩食事の8週間後の平均F2[R×S]相互交配雄SBP=157.2±14.2mmHg;高食塩食事の12週間後の平均F2[R×S]相互交配雌SBP=145.0±11.4mmHg、表2)。SSCPをベースとするDear遺伝子特異的マーカー(図4A)を使用して、我々は、ラットDearを染色体2(ラットゲノムの現在のアセンブリーにおける物理的位置:2q34,176.687Mb)、α1−Na−,K−ATPアーゼローカス、ATP1A1に対して4.5cMセントロメリックである、にマッピングした。次いで、Dahl R及びDahl S系統を区別する11の情報提供マーカーにより全染色体2スキャンを行った。マーカー回帰(marker regression)およびインターバルマッピング解析は、F2[R×S]雄コホートにおいてATP1A1+2cM(LOD=1.70)にピークを有する、平均、収縮期および拡張期BPに対して示唆的連鎖を有する一つの染色体領域を検出する(図4B、表2)。対照的に、F2[R×S]相互交配雌の染色体2スキャン解析は、染色体2上の2つのQTLsを示し、1つはD2Rat143)に中心を有し(LOD=2.43、有意な連鎖)そして他方は、Dear−5cMに中心を有する(LOD=3.61、高度に有意な連鎖)(図4C、表2)。病理生理学的関係を評価するため、Dearアレル特異的寄与の解析(表3)は、BPパラメーター−収縮期、拡張期または平均動脈圧(平均動脈圧における変化が最も大きい)にかかわりなく、高血圧への感受性を増加させることを示す(ANOVA P<10−3〜10−4)。異なる血圧パラメーターにおける結果の一致は、F2[R×S]相互交配雌ラットにおける高血圧感受性のための遺伝子としてDearローカスを正確に叙述する証拠を提供する。
【0103】
今日まで、Dear(ここに示された)およびATP1A1(38、43)遺伝子のみが高血圧に対する占めされた病因性関係を伴ってDahl SおよびDahl Rラット間の機能的に有意な変異体を示す。これらのデータは、高血圧遺伝子のための4パラメーター解析フレームワークに基づく雌F2[R×S]相互交配ラットにおけるBPに影響を与える染色体2上のDear−5cM QTL領域の候補遺伝子として前記2つのローカスを促進する(37、54)。高血圧におけるATP1A1の原因的役割は、雄及び雌Dahl Sラットの両方においてトランスジェネシスにより示された(38)。推定遺伝子相互作用は、Dearについて研究される必要があるが、ATP1A1−Na,K,2Clコトランスポーター(NKCC)遺伝子相互作用は、F2[R×S]相互交配ラットの共分離解析において高血圧への感受性を増加させることが検出された(39)。BPに対するATP1A1効果のこの優位性は、この染色体2スキャンならびに先のF2相互交配および類似遺伝子の研究(34、53)においてなされたように単一ローカスとして解析されるとき、ATP1A1で検出されたBPへの連鎖の減少した統計的有意の説明となることができよう。
【0104】
Dearローカスに及ぶBPのための染色体2QTLsを報告する先の遺伝的ラットモデルの研究に関してDearローカスを更に解析するために、我々は、SSCP解析により前記研究で使用されたWKY、SHR、BNおよびLEWラット系統に関してDear変異体を評価した。図4Aに示されたとおり、Dahl R Dear S44P/M74T変異体は、Dahl R及びDahl S系統で検出されるが、Dahl S Dear S44/M74変異体は、SHR、WKYおよびBN系統で検出される。異なる系統における変異体特異的アレルの検出は、全アミノ酸コード領域に及ぶ2つの独立したDear cDNAクローンの直接ヌクレオチド配列決定により確証された(データは示されていない)。SHR、WKYおよびBNラット系統はS44/M74 Dahl S Dearアレルを有するので、Dearローカスは、これらの系統に由来するF2相互交配研究においてBPについての染色体2QTLのための候補遺伝子として演繹的に排除される(31、41、51、59)。Dearローカスは、雄のみを調査したF2[Dahl S×LEW]相互交配研究において報告された染色体2BP QTLのための候補遺伝子としても排除される。何故ならばDear S変異体は雌における高血圧と共分離しているからである。
【0105】
したがって、遺伝的、分子および病理生理学的解析からの観察は、変異体DearによるAngIIおよびET−1レセプターシステムのバランスの改変は、雌F2[R×S]相互交配ラットにおける高血圧感受性に寄与することを示唆する。データは、高血圧感受性における性特異的因子の重要性およびAngII−ET−1応答バランスにおけるDearの役割をあらためて表明している。
【0106】
材料および方法
Dahl SおよびDahl R Dear cDNAsの特徴付け
Dahl SおよびDahl R Dear cDNAsは、それぞれDahl S/JRHsdおよびDahl R/JRHsdラット腎臓ポリARNAsからのRT−PCRであり(フォワードプライマー:5’−AAG−AAA−GCA−GCA−CCT−TGG−T−3’(配列番号3);リバースプライマー:5’−CGT−GGA−CAG−AGA−CCT−TGT−CT−3’(配列番号4))、次いでPT−ベクター系(Clontech, Palo Alto, CA)にサブクローニングした。プライマー配列は、先に報告されたスプレーグ−ドーリーDear cDNA(Genbank アクセッションナンバー AY664492)から得られた。次いで、全Dearアミノ酸コード領域を含むcDNAs(432bp)を両鎖に関して配列決定した。6匹のDahl Sラットおよび6匹のDahl Rラットを配列決定して、系統内配列不均一性を示さなかった。
【0107】
一本鎖コンフォメーション多型(SSCP)解析によるDear遺伝子S44P/M74T変異体の検出
Dahl S/jrHsd、Dahl R/jrHsd、LEW/SsNHsd、WKY/NHsd、SHR/NHsd、およびBN/HsdラットをHarlan Inc.(Indianapolis, IN)から購入した。SSCP解析を、本質的に記載された(60)異なるラット系統から単離されたゲノムDNAで行った。SSCPマーカーは、DearcDNAのアミノ酸コード領域以内のヌクレオチド2774〜2911(S44P置換に及ぶ)を含むPCR産物に基づいている(フォワードプライマー:5‘−GCT−ATG−TAT−CTG−GAC−AGC−AGC−3’(配列番号5);リバースプライマー:5’AGT−GAA−GCA−CAT−GAT−GCA−AGT−3’(配列番号6);産物:137bp)(1)。SSCPマーカーは、6%非変性ポリアクリルアミドにより検出された。
【0108】
レセプター発現および膜調製
Dahl SおよびDahl R Dear cDNAsをpcDNA(+)発現ベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)に指向的に(5’から3’へ)サブクローニングし、そしてCos1細胞(ATCC)において一過性で発現させた。Cos1細胞をリポフェクチン媒介遺伝子トランスファーにより発現ベクターでランスフェクションし、そして細胞膜をホルモン結合のためにトランスフェクションの72時間後に単離した。ラット腎臓膜を実質的に記載されたとおりに調製した(42)。COS1細胞膜を記載のとおりに単離した(36)。簡単に言えば、細胞をリン酸緩衝化生理食塩水中で2回洗浄しそして10倍の氷冷バッファー(0.25Mスクロース、1mMEDTA、50μg/mlアプロチニン、10μg/mlロイペプチン、100μMフェニルメチルスルホニルフルオリド、25mMイミダゾール/HCl、pH7.4)中でホモジナイズした。ホモジネートを5,000gで15分間遠心し、そしてペレットを捨てた。次いで上清を27,500gで30分間遠心し、そして得られるペレットを氷冷懸濁バッファー(5mMMgCl2、0.2mMEDTA、50mMHepes、pH734)中で2回洗浄した。採集のペレットを適切なアッセイバッファーに再懸濁させそして液体窒素中で迅速に凍結させた。膜調製物を使用まで−80℃で保存した。膜のタンパク質濃度は、BCAタンパク質アッセイキット(PIERCE)により決定された。
【0109】
放射性リガンド結合アッセイ
125I]Tyr4−アンジオテンシンIIおよび[125I]Tyr13−エンドセリン−1のCOS−1膜への結合を、急速濾過法により行った(32、50)。簡単に言えば、[125I]Tyr4−アンジオテンシンII(0.25〜6.5nM)または[125I]Tyr13−エンドセリン−1(0.045〜1.46nM)を100μlバッファーA(5mM MgCl2、0.2mMEDTA、10mg/mlBSA、10mMHepes、pH7.4)中で37℃で20分間膜(100μg)とインキュベーションした。結合反応を、1ml氷冷バッファーAの添加により終結させそして直ちに、ワットマンGF/Cフィルター(10mg/mlBSA中で4℃で一夜予備浸漬した)を通して直ちに濾過し、次いで15ml氷冷バッファーAで洗浄した。膜に結合した総放射能と1μMAngIIまたは1μMET−1を含有するブランクに結合した放射能との差として特異的結合を決定した。解離定数(Kd)および最大リガンド結合部位(Bmax)をHillプロット解析(55)を使用して決定した。Hill係数値(h)は、
関係式 In[B/(Bmax−B]]=hIn[遊離放射性リガンド]−InKd
から計算された。F検定(P<0.05)を使用して、飽和結合曲線が1つまたは2つの独立した結合部位に最善に適合しているかどうかを決定した。データは、スキャッチャードプロット解析により決定された2つのアフィニティー状態により最善に適合しており;KHおよびKLはそれぞれレセプターの高アフィニティー状態および低アフィニティー状態を意味する(44)。大部分の結果は、3〜5の独立した実験からの平均±SE(標準誤差)として表される。
【0110】
ウエスタンおよびウエストウエスタンブロッティング分析
合成ペプチドP51LLTSLGSKE60(配列番号7)に対して生じたポリクローナルウサギ抗ペプチド抗体を、ウエスタンブロット分析のために利用した(1)。形質膜(40μgタンパク質/レーン)を、12.5%SDS−PAGEに供し、そして分離したタンパク質をPVDF膜上にエレクトロトランスファーし、これをブロッキングバッファー(0.3%Tween−20、5%脱脂牛乳、137mMNaCl、2.7mMKCl、8.1mMNa2HPO4および1.5mMKH2PO4、pH7.4)と室温で2時間インキュベーションし、次いで一次抗体(1:500)と4℃で16時間インキュベーションした。次いで、PVDF膜を順次にビオチニル化ヤギ抗ウサギIgGとインキュベーションし、続いてセイヨウワサビペルオキシダーゼ連結ストレプトアビジンで免疫染色した。Dearとリガンドとの相互作用を確かめるために、我々はウエストウエスタンブロット分析を行った(62)。簡単にいえば、腎臓およびCOS−1細胞膜のタンパク質ブロットを、バッファーA中で放射性リガンド(10ml中の0.5μCi)と37℃で16時間インキュベーションした。次いでPVDF膜をバッファーAで37℃で15分間3回洗浄しそして−80℃で1〜3日間X線フイルムに露光させた。
【0111】
遺伝的交配
Dahl S/jrHsdおよびDahl R/jrHsdラット株(Harlan, Indianapolis, Indiana)を使用してF2コホートを発生させた。このF2コホートは、F1(R雌×S雄)雑種の兄弟−姉妹交配から誘導されて、F2雄(n=106、Dahl S遺伝的バッグラウンドからのY染色体のみを有する)およびF2雌(n=102)分離集団を産生させた。
【0112】
F2コホートの表現型特徴付け
すべての動物処置を協会のガイドラインに従って行った。動物を、離乳から12週齢で高食塩食が始まるまで0.4%NaClを含有するLabDiet5001げっ歯類食事(Harlan Teklad, Madison WI)に維持した。食物ペレットおよび水を随意に摂取可能とした。血圧(BP)は、大動脈内腹部ラジオテレメトリー移植片(DATASCIENCE)を使用して実質的に記載された(38)とおりに測定して、24時間5分毎に10秒にわたる平均値をとる非ストレス下の血圧測定値を得た。収縮期(SBP)、拡張期(DBP)および平均動脈圧(MAP)を、心拍数及び活性度と共に得られた。F2ラットについてのプロトコールは下記のとおりであった:10週齢での移植手術;手術後に合併症を有していないラットのみを使用し;12日後ベースラインBPレベルを得た。高食塩(8%NaCl)チャレンジを12週齢で始め、雄F2相互交配ラットでは8週間維持しそして雌F2相互交配ラットでは12週間維持し;雌のBPはより低いので雌が同様なF2平均BPに達するためにより長い高食塩チャレンジが必要であった。表現型について使用されたBP値は、非ストレスBPを確かめる立ち入り禁止日の期間中24時間の記録から食塩ローディングの最終週に得られた平均である。我々は、SBP、DBPおよびMAPのためのベースラインBP平均は、同等であり、異なるDear遺伝子型の間ですべての3つのBPパラメーターについて±1mmHg範囲であった(P>0.5)ことを指摘する。
【0113】
相互交配連鎖解析
我々のDahl[R×S]相互交配について情報提供する10の染色体2マイクロサテライトマーカーおよび1つのSSCPをベースとするDearマーカー(上記した)を使用してジェノタイピングを行った。マーカー回帰およびQTL解析を、量的形質としてMAPを使用するMap Manager QTXb17(MNQTXb17)プログラム(46)により行った。MMQTXb17は、可能なQTLの有意の目安として尤度比統計量(likelihood ratio statistics)(LRS)をもたらす。遺伝的距離は、Kosambiマッピング関数を使用して計算した(遺伝的距離はcMで表される)。連鎖についての限界有意値(critical significance values)(LRS値)は、Kosambiマッピング関数および自由回帰モデル(free regression model)を使用して我々の雄および雌の子孫に関する並べ替え検定(10cM間隔で2000並べ替え)により決定された。従って、F2雄コホートについての最小LRS値は、示唆的連鎖では=4.1(LOD=0.89);有意な連鎖では=10.6(LOD=2.30);高度に有意な連鎖では=18.4(LOD=4.00)でありそしてF2雌コホートでは、示唆的連鎖では=3.9(LOD=0.85);有意な連鎖では=9.9(LOD=2.15);高度に有意な連鎖では=16.6(LOD=3.61)である。LRS4.6は、LOD1支持区間を正確に叙述する。QTL位置についての信頼区間は、ヒストグラム単一ピークがQTLを正確に叙述し、ピーク幅がQTLについての信頼区間を定める、ブーツストラップリサンプリング法により評価された。1つより多くのピ―クを示すヒストグラムは、QTLについての位置が十分明確にされていないことを警告するか、または多重連鎖したQTLs(QTL Map Manager)(46)がありうることを警告する(46)。
【0114】
実施例2
我々は、129SVJマウスゲノムライブラリーからのマウスDear遺伝子を単離した。分子の特徴付けは、1エキソン転写単位を検出する(図5A)。マウスレセプターポリペプチドは、ラットレセプターとの78%相同性を示す127アミノ酸を含有し、そして最近特徴付けられたDahl R Dear S44P/M74Tラット変異体(2)に類似するET−1のみに結合し(データは示されていない)、そしてDear-/-マウスにおける観察が多分AngII媒介されていないことを示唆している。マウスDear mRNAは試験されたすべての組織において検出され、腎臓および大動脈において発現は最高レベルである(図5B)。
【0115】
ES細胞におけるDear-/-のターゲティングされた不活性化は、Dearのアミノ酸81〜127に及ぶゲノム領域のPGK−ネオマイシンカセットによる置換によりなされ(図5a)、これは、推定Gタンパク質相互作用ドメイン(1)を含む、Dearポリペプチドの最後の47アミノ酸の欠失をもたらす。相同性組換えについてのスクリーニングは、サザーンブロット分析(図5.5C)により196のG418抵抗性コロニーに関してなされた。ターゲティング事象は、ネオマイシン特異的プライマーおよび組み込み部位にフランキングするプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅により確認された。予想されたサイズフラグメント(5.5Kb)の産生は、ターゲティング事象を示した(図5D)。ターゲティングされたDear突然変異を有する5つのES細胞クローンは、129SVJ杯盤胞に注入しそして偽妊娠養母に移植した。我々は、14のキメラマウスを得た(2つの独立したターゲティングされたES細胞クローンを代表する)。キメラは、C57BL/6Jマウスに交配されそして生殖細胞系伝達して(germ line transmit)、F1子孫を産生することが示された。
【0116】
ヘテロ接合Dear欠失(Dear+/-)雄および雌マウス(戻し交雑−10近交C57BL/6マウス系統)は、抗マウスDear抗ペプチド特異的抗体を使用して検出されたマウス腎臓タンパク質ブロット解析における50%未満のDearタンパク質(図5F;P<0.05、t検定)、5及び6ヶ月齢でのより少ない体重(雄:P=0.007;雌:P=0.0006)(図5I)および雌において減少した血圧(Dear+/+:134±4.0mmHg対Dear+/-:112.3±6.1;P<0.01)を示し、しかし雄マウスでは血圧は減少していないが心拍数は同等である(図5G−H)。性特異的血圧効果は、Dear変異体が雌において高血圧と共分離したが、雄F2相互交配ラットにおいてそうではない、ラット遺伝的高血圧の最近の研究と一致している(2)。
【0117】
遺伝子ターゲティング事象の潜在的胚致死性を評価するために、我々は、ターゲティングされたDearアレルの存在/不存在についてジェノタイピングされたF1Dear+/-雄および雌交配からの子孫を解析した。下記の遺伝子型分布:29野生型(+/+)、39ヘテロ接合体(+/-)、0ヌル(-/-)を示す68匹の子(pup)を17匹の同腹子から産生させた。F2子孫にヌル遺伝子型が存在しないのは、Dearヌル突然変異が胚致死性であることを示す。
【0118】
Dear+/- 胚における胚致死性を調べるために、我々は、発達の異なる段階でDear+/- マウスに由来する時間を定めた妊娠(timed pregnancy)からの胚を解析して致死性が起こる正確な発達段階を決定した。我々は、129の胚(E9.6からE12.5まで)を産生して、33(-/-)、67(+/-)および29野生型(+/+)遺伝子型を産生した(図5D)。これは、標準(+/-)×(+/-)相互交配について予測された分離比1(+/+):2(+/-):1(-/-)に一致する。胚の解析は、致死性がE12.5辺りで起こることを示した。
【0119】
E9.5−E12.5胚の解剖解析は、ホモ接合Dear-/-欠失と関連した卵黄嚢集合脈管(yolk-sac collecting vessels)の不存在を示し(図6A−F);ヘテロ接合体Dear+/-欠失胚は正常な卵黄嚢血管形成(yolk-sac vascularizatin)示す(データは示されていない)。卵黄嚢集合脈管が存在しないすべての胚は、遺伝子型によりDear-/-であり;ヘテロ接合体Dear+/-欠失胚は、Dear+/+胚から区別できない(データは示されていない)。出血性の、再吸収された胚は、E10.5という早期にしかし主としてE12.5において検出された(図6D)。Dear+/+およびDear+/-胚より小さくそして顕著に青白いけれども、Dear-/-胚は、2つのサイズの表現型:第2の発育不全の表現型(図6E−F)より相対的に大きいE10.5−E12.5で検出された(図6A−C)異形性(dysmorphic)表現型を示す。遺伝的変化がヌル表現型に影響を与えるがどうかを決定するために、C57BL/6j遺伝的バックグラウンドにスピードコンジェニック(speed congenics)を行い、そして戻し交配−10匹のヌルマウスを発生させそして解析して致死性の胚範囲、卵黄嚢集合脈管の存在しないことおよびDear-/-胚における両方の胚形態表現型を確めた(図6A−F)。
【0120】
E10.5およびE11.5において、血液充満したポンピンク心臓は、より大きな異形性Dear-/-マウスにおいて検出されたが(図6B、6C)、発育不全のDear-/-マウス(図6E、F)においては明らかではなかった。Dear-/-E10.5胚は、顕著な血液充満した背側大動脈(図6G)により特徴付けられた血管網およびE9.5Dear+/+胚(図6G左パネル)に特徴的な正常な特徴である頭部領域における血管を欠いている。更に、E10.5Dear-/-胚は、血管網形成の欠如にもかかわらずポンピングする(データは示されていない)ことが観察された血液充満した心臓(図6G)への明らかな連結なしに頭部領域において組織化されていない血液充満したプールを示す。E11.5Dear+/+胚と対照的に、E11.5異形性タイプDear-/-胚は、頭部及び尾部領域の両方における最小の且つ変化した血管網、血液充満しているが拡張した心臓及び変化した脳の発生を示す(図6H)。更に、Dear-/-およびDear+/+E11.5心臓の両方ともポンピングするが、心臓ポンピングの観察は、E11.5Dear+/+胚における心室の明確な充満およびポンピング(データは示されていない)とは対照的に、Dear-/-胚における単一室充満および収縮を示す。E10.5およびE11.5発育不全Dear-/-胚では、最小の心臓血管発生が検出される(図6E−F)。清浄化され、固定されたE11.5胚の解析において、変化した脳及び心臓発達が確認され、これは脳領域、特に終脳及び心室形成の劣った輪郭描写(delineation)を示す(図6I)。
【0121】
要約すると、E10.5およびE11.5における異形性Dear-/-胚の解析は、血液充満した心臓への明らから連結なしに頭部領域における組織化されていない血液充満したプール(図6G)により代表される異常な血管形成、または頭部及び尾部領域の両方における最小の血管網および拡張した血液充満した心臓(図6H)にもかかわらず、収縮した血液充満した心臓を検出する(図6G−H)。これは、E9.5Dear+/+胚の特徴である(図6G)頭部領域における血液充満した背側大動脈及び血管により特徴付けられた顕著な血管網と対照的である。更に、固定されたE11.5胚の解析は、Dear-/-胚における異常な脳および心臓発生を示す(図6I)。
【0122】
マッソントリクローム染色されたE10.5−E11.5胚切片の組織学的解析は、E10.5におけるDear+/+(図7B)と比較してDear-/-胚(図7A)の卵黄嚢において最小の集合脈管または集合脈管が存在しないことを確認する。卵黄嚢のより小さい脈管の叢が、より少数の有核赤血球(図7B)を伴って存在する。少数を拡大する(図7A)。血島が存在するが、有核赤血球の数は、Dear+/+胚(図7B)と比較してDear-/-胚(図7A)では減少している。E12.5では、比較組織学的解析は、Dear+/+(図7D)と比較して異形性タイプDear-/-胚(図7C)において明らかな器官発生の欠如した無定形細胞状の区域を示す。高い倍率は、血管または認識可能な肝臓組織に含まれない腹側中央部(ventral midportion)における有核赤血球の大きな区域を示す(図7C)。心臓は、Dear-/-胚では薄い壁状で、拡張しておりそして室の不十分な輪郭描写を伴っており、これは解剖学的観察(図6)を裏付ける。少数の有核赤血球を有する血管は、Dear+/+(図7D)胚と比較して、Dear-/-(図7C)において未発達であり、薄い壁でありそしてまばらであり、これは頭部領域において最も明白である。有核赤血球で満たされそして脈管周囲鞘を有する神経周囲血管を示す(図7D,F)Dear+/+胚と対照的に、未発達の薄い壁の血管が、Dear-/-のまばらな有核赤血球を有する神経周囲において検出され(図7E)、従って解剖学的解析(図6)において明白な観察された血管網欠失を裏付ける。まばらな神経周囲脈管と一致して、Dear+/+胚(図7H)と対照的に、少数の透過性毛細管のみがDear-/-胚神経上皮において明らかである(図7G)。散在した有核赤血球が神経上皮において検出され(図7G)、これは可能な血管漏洩(vascular leakiness)または脈管形成(vasculogenesis)の失敗を示唆する。E12.5Dear+/+およびDear-/-胚を比較する免疫組織学的解析は、VEGF、VEGFレセプター2flk−1またはアンジオポエチン−1および−2発現のアップレギュレーションを検出しない(データは示されていない)。
【0123】
血管欠落を更に解析するために、平滑筋細胞(smc)α−アクチンの免疫組織化学的染色は、E12.5Dear-/-胚における散在した発現および胚−胎盤血管連結部における強い染色(図9A−F)を示す。神経周囲血管は、Dear-/-胚におけるα−アクチン免疫染色を示すが、血管新生発芽(angiogenic sprouting)が明白な(図9A−F)Dear+/+胚と対照的に最小の血管新生分枝(angiogenic-branching)を有する。より細かい組織学的解析は、Dear-/-胚におけるα−アクチン染色された単一細胞血管壁により不完全に境界を定められた散在性血島を示す(図9A−F)。
【0124】
マウスDear一過性および空間的発現パターンを調査するために、我々は、Dearポリペプチドを検出することが実証された抗マウスDear特異的抗ペプチド抗体を使用してE9.5−E12.5野生型胚におけるDear発現を解析した(図10)。E9.5日に、我々は、主として心臓、卵黄嚢中胚葉層および内皮、胎盤における胎仔血管内皮、背側大動脈および神経管の上衣層におけるDear発現を検出する(図10A)。これらの発現パターンは、E12.5日に持続しており、その際我々は卵黄嚢血島におけるいくらかの血管芽細胞における増加した発現ならびに神経上皮の上衣層および神経周囲血管壁における更に顕著な発現(図10B)を検出する。観察された一過性および空間的発現パターンは、Dear-/-欠失マウスで観察された血管、心臓および神経上皮表現型と一致している。
【0125】
卵黄嚢における最小の血島と対照的に、我々は、Dear-/-胚において散在した血島を検出し、しかし顕著に発育不良の背側大動脈および末梢脈管構造(peripheral vasculature)を検出し、これは、血島の存在にもかかわらず一次血管形成(primary vascularization)の欠如を示唆している(図8A−F)。隣接同腹子における心臓発生の解析は、Dear-/-心臓が不十分な心室形成および心臓内隆起形成を伴うことを示し(図8A−F)、これは全胚の解析に関して観察された不完全な心ループ形成(図6)と一致している。
【0126】
C57BL/6J遺伝的バックグラウンド(BC10)におけるDear-/-突然変異体血管及び心臓表現型は、VEGF+/-欠失胚で観察された表現型に類似しているが(18、19)、先に報告されたET−1、ET−およびET−レセプターヌル胚(10−12,24)ならびにAngII、AT1a、AT1bおよびAT2レセプターヌル突然変異体(14−17)で観察された表現型とは極めて異なる。VEGF+/-欠失マウス血管表現型(18,19)への類似性は、VEGFおよびDear媒介シグナリングの両方が、血管新生および血管網発生のために必要であり、そして血島形成をモデュレーションすることを示唆する。VEGFおよびDearヌル突然変異の両方共、トランスフォーミング増殖因子−β1(25)などの他の同様な血管表現型ヌル突然変異体と共に、胚致死性であるという事実は、多重経路が血管網形成に関与している−すべて必要であるが十分ではない、ことを示唆する。僅かに後のまたは重なっている範囲の胚致死性は、Dear媒介経路がVEGF媒介経路より下流にあることを示す。VEGF+/-及びDear+/-欠失の両方における血管網欠落および心臓発達の阻止の関連は、血管由来のシグナリングが、心臓の多重室ポンプへの複雑な発達の進行において役割を演じることを示唆する。ET−1-/-不活性化は血管網形成を妨害しないが(10)、Dear-/-欠失が胚致死的血管網異常をもたらすという発見は、周知のPre−pro−ET−1経路(26)とは独立に産生される別のET−1ソースの存在または、Dearを活性化しそしてDear媒介血管新生の役割の基礎をなす[ET−1]様リガンドの存在を暗示する。
【0127】
方法
ノーザンブロット解析
全RNAは、解析された異なる組織からのTRIzol(Invitrogen, Life technologies, Inc.,)で抽出された。次いで、ポリARNAを全RNAから、製造者の規定のとおりにDynabeads mRNA精製キット(Dynal Biotech)を使用して単離した。ポリARNA(3μg)を1%ホルムアルデヒド変性アガロースゲル上に流し、Zeta−Probeブロッティング膜(Bio−Rad)にトランスファーしそしてUV架橋して後ハイブリダイゼーションさせた。5×SSC、20mM Na2HPO4、7%SDS、1×Denhardt’s、100ug/ml変性された仔ウシDNAを含有するバッファー中で50℃で24時間ハイブリダイゼーションを行った。γ−32P−端部標識されたアンチセンスマウスDearオリゴヌクレオチド(5’−AGT−GAT−AGA−GCC−CCA−GTT−CCA−GCG−AGA−CTT−CAT−CTC−CTT−GC−3’)(配列番号8)をプローブとして使用した。膜を3×SSC、5%SDSで50℃で2回各30分間および1XXSSC、1%SDSで50℃で30分間順次に洗浄した。強化スクリーンにより−80℃でオートラジオグラフィーを行った。
【0128】
129SVJマウスDear遺伝子の特徴付
λFIXII 129SVJマウスゲノムライブラリーからの100万の独立したリコンビナントを、プローブとして完全長3274bpラットDear cDNA1でスクリーニングした。第4ラウンドのスクリーニングの後に6つの独立したゲノムクローンを同定しそしてプラーク精製した。それらの1つ、λ191を更に制限消化及びその後のサザーンブロット分析により特徴付けた。1つの8kbBamHI/BamHI制限フラグメント(3274bpラットDear cDNAプローブにハイブリダイゼーションした)をpsp73プラスミドベクターにサブクローニングしそして配列決定した。
【0129】
マウスにおけるDearのターゲティングされた妨害およびキメラマウスの産生
すべての動物処置は、教示ガイドラインに従って行った。Dearのアミノ酸81〜127を有効に欠失させるPGKNeoカセット(図5)でDearの3’端部を含有する300bpピースを置換することにより、ターゲティングベクターを構築した。ターゲティングベクターを129SVJ ES細胞にエレクトロポレーションしそしてG418耐性細胞クローンを単離した。各ES細胞クローンからゲノムDNAを得、そしてSphIで制限しそしてサザンブロット分析に供した。Dearの1.5Kbフラグメントをプローブとして使用した(図5)。8Kb内在性バンドおよび5.2Kbバンドの存在は、相同性組換えを示した(図5)。相同性組換えは、ターゲティングベクターの5’−端部から171bp上流に位置した上流プライマー(P1:5’−TGTGAGGCTAGAAGGCTGC−3’(配列番号9))およびPGKNeoカセット内に位置したリバースプライマー(P2:5’−GAGCAAGGTGAGATGACAGC−3’(配列番号10)を使用してPCR分析により更に証明された。サザンブロット分析(図5)において使用した同じプローブにハイブリダイゼーションさせた5.5Kbフラグメントの増幅は相同性組換えを示した。次いで5つのポジティブES細胞クローンを129SVJ胚盤胞にマイクロインジェクションして14のキメラマウスを発生させ、これをDearノックアウトされた系統を樹立するために使用した。C57BL/6遺伝的バックグラウンド上に同系交配するためのスピードコンジェニック戻し交配繁殖を10世代より多くの世代、≧BC10、にわたって行い、分析のためのすべてのDear+/-およびDear-/-マウスを得た(C57BL/6バックグラウンドにおける>99.95%コンジェニック系統)。
【0130】
マウスDear cDNAの特徴付けおよび発現研究
C57BL/6マウス腎臓ポリARNAからのRT−PCR(フォワードプライマー、5’−CACACAAAGCCTTACTTTATCC−3’(配列番号13);リバースプライマー、5’−AAAGCCAGCCTTTAGATAACC−3’(配列番号14))によりマウスDear cDNAを得、PT−ベクターシステム(Clontech,Palo Alto,CA)にサブクローニングし、次いで配列決定した(GenBank accession no.DQ009865)。PolyARNA(3μg)、プローブとしてγ−32P−端部標識されたアンチセンスマウスDearオリゴヌクレオチド(5’−AGTGATAGAGCCCCAGTTCCAGCGAGACTTCATCTCCTTGC−3’)(配列番号15)を使用して、記載された(1)とおりにRNAブロット分析を行った。レセプター発現研究、膜への125I−ET−1−1および125I−AngII結合、を記載のとおりに(2)行った。
【0131】
マウス胚のジェノタイピング
胚外膜から単離されたゲノムDNAのPCR分析によりジェノタイピングを行った。Dearのアミノ酸コード領域内に位置したSacI部位にフランキングするプライマー(上流プライマー:5’−AACTTCTCTGGTCCGCTCC−3’(配列番号11);下流プライマー:5’−ACTGCTGAAACTAAAACCTGC−3’(配列番号12))を使用して野生型アレル(PCR産物=野生型アレルの存在を示す153bp)を検出し、そしてプライマーP1およびP2(上記した)を使用して突然変異したアレル(PCR産物=突然変異したアレルの存在を示す5.5Kb)を検出した。
【0132】
ヘテロ接合体Dear+/-表現型の解析
我々は、マウス腎臓膜からの等量のタンパク質(40μg)およびマウスDear特異的合成ペプチド:L16SKCNHNEQDTA27(配列番号16)に対して発生させたウサギIgG抗マウスDear抗ペプチド特異的抗体(1:500希釈)を使用するウエスタンブロット分析によりDearタンパク質レベルについて戻し交雑BC10[C57BL/6]Dear+/-を解析して、Dear特異的ポリペプチドを検出した。我々は、300〜500拍動/分の範囲の心拍数を有する期間にBP測定を限定することにより、同等な生理学的状態を保証する軽い麻酔の下でテイルスカッフ血圧計(Visitech BP2000, Visitech CA)により6ヶ月齢マウスにおいて血圧を測定した。我々はマウス当たり3組の10回の連続した読み取りを得、そして規定された正常な心拍数範囲内での少なくとも20回の読み取りの平均を取った。
【0133】
組織学
時間を決めた妊娠マウス(膣栓が検出される日の正午を0.5Eとみなす)から胚E9.5−E12.5日に胚を収集し;胚外膜組織DNAのPCR分析により遺伝子型を決定した。胚を解析し、そしてそれらの卵黄嚢の範囲内で写真を撮り、次いで4%の調製したばかりのPBS緩衝化パラホルムアルデヒド中に固定した。組織学的処理およびマッソントリクローム染色を確立された手順に従って行った。それぞれ、Nikon立体顕微鏡およびZeis Axioskop顕微鏡を使用してディジタル立体顕微鏡写真法および明視野顕微鏡写真法を行った。本質的に記載されたとおりに(27)、免疫組織化学を行った。
【0134】
実施例3
血圧測定
DearKOおよび野生型(N10戻し交雑世代)の雄及び雌コホートを使用してBPを測定した。12匹(+/-)および11匹(+/+)雌マウスおよび14匹(+/-)および14匹(+/+)雄マウスを調べた。試験は6ヶ月齢で行った。
【0135】
マウスを規則的なげっ歯類食事および12時間明/暗サイクルに維持した。測定を行う1時間前にマウスを処置室に輸送しそして落着かせた。心拍数と共に収縮期BPを、プログラム可能なテイルカッフ血圧計(Visitech BP2000, Visitech, NC)により測定した。マウスを腹腔内ケタミン(80mg/kg)およびキシラジン(18mg/kg)で軽く麻酔しそして2分の間隔の後に加熱したプラットホーム上に置いた。マウス当たり3組の各々10回の連続読み取りを行った。データは300〜500bpmの心拍数範囲に及んでマウス当たり少なくとも20回の読み取りの平均として表される。
【0136】
結果
図10Aに示されたとおり、SBPは、6ヶ月齢でWTおよびKO雄マウス間で異ならなかった(WT,137.2±5.1;KO,138.6±3.7,t=0.05,P>0.8)。対照的に、SBPは、WT雌マウスと比較するとKO雌マウスでは有意により低い(WT,134.9±4.0;KO,112.3±6.1;t=3.03,P<0.01)。平均心拍数は、WT雌マウスとKO雌マウス間で観察されるSBP差を断言する対比グループ(図10B)間で差はなかった。したがって、Dearローカスにおけるヘテロ接合性は、雌のみに影響を与えるBPに関する性特異的効果を示す。この結果は、Dahl ラットモデルにおける食塩感受性高血圧におけるDear変異体の雌特異的効果を示唆している最近のデータと一致している。
【0137】
実施例4
我々は、次に2つの確立されたげっ歯類腫瘍モデルにおけるDear阻害の役割を調べた。最初に、ヘテロ接合体Dear+/-欠失マウスおよび野生型Dear+/+同腹子を比較して、我々は、ヘテロ接合Dear+/-欠失雌(t検定、P<0.02)マウスでB16−F10メラノーマ細胞誘導腫瘍モデル(74)において腫瘍質量の有意な低下(図11A−B)および腫瘍容積の有意な低下(図11C−D)を検出したが、雄マウスでは検出しなかった。第2に、効果は雌Dear+/-マウスでのみ見られたので、我々は次に、Dear阻害が、3ヶ月未満の腫瘍潜伏期を有する雌ラットにおいて137Cs放射線誘導乳癌モデル(70)における腫瘍増殖を減少させるかどうかを試験した。2つの独立した阻害方法、照射の4週間後に開始された抗ラットDear抗ペプチド特異的抗体(図11C)および照射の2週間後に開始された抗ラットDearDNAワクチン(図11D)、を使用して、我々は6週間の観察期間中腫瘍の増殖の有意な減少を検出する。それぞれの対照グループとは対照的に、両抗Dear処置は、腫瘍増殖を阻止し、腫瘍出現の4〜6週間後から検出された腫瘍容積の%変化において有意な減少を伴った(ab−Rx:P<0.05〜0.01;DNA−v:P<0.02〜0.001)。更に、我々は、抗DearDNAワクチン接種したラットにおける腫瘍容積の68%減少を伴う有意な腫瘍退縮を検出する(図11D、P<0.01)。腫瘍増殖の阻害は、年齢が一致した無処置対照ラットと比較して、抗Dear抗体およびDNAワクチン処置したラットの両方における腫瘍パターン、核グレードおよび血管浸潤に基づく悪性潜在力の減少と関連している(図11E)。更に、無秩序脈管およびモザイク脈管の数の減少も抗Dear処置の結果として検出された。
【0138】
腫瘍研究およびDear特異的阻害
我々は、10週齢Dear+/-および同腹子Dear+/+雄および雌マウス(n=5/グループ)において本質的にも記載されたとおり(74)B16−F10(ATCC)メラノーマ細胞誘導皮下腫瘍モデルを発生させた。腫瘍誘導の13日後に、我々は腫瘍を切り出しそして腫瘍重量及び容積を測定した。我々は、40日齢の本質的に記載された(70)48匹のスプレーグ−ドーリーラット(n=12/グループ)におけるラット乳腺腫瘍を127Cs放射能により誘導した。3ヶ月未満の腫瘍潜伏期を有するラットのみを研究のために使用した(抗Dear抗ペプチド抗体ではn=4;対照抗体ではn=3;抗DearDNAワクチンではn=3;対照pCDNAではn=3)。我々は照射の6週間後に12週齢で抗体処置を開始した。我々は、合成ペプチドP51LLTSLGSKE60(1)(配列番号7)に対して生じたアフィニティー精製したウサギIgG抗Dear抗ペプチド抗体を使用した。対照として、我々は、ウサギIgG(sc-2027, Santa Cruz Biologicals, Santa Cruz CA)を使用した。試験および対照抗体を腫瘍出現の6週間後の研究の終わりまで毎週3回腹腔内に注射した(6μg/注射)。平行して、我々は、抗Dear(pCDNA-Dear)DNAワクチンおよび対照発現ベクター(pCDNA,Invitrogen, Carlsbad, CA)模造(mock)ワクチンを使用して、8週例で照射の2週間後に試験ワクチン及び模造DNAワクチンを注射し、次いで腫瘍出現から6週間まで隔週に注射した(500μg/用量、筋肉内)。式(4/3πr12×r2)(式中、r1は記載された(71)より小さい半径でありそしてr2はより大きい半径である)を使用して測定した。我々は、t検定、二元反復測定分散分析(two-way repeated measures ANOVA)および統計的解析用の多重対比較のためのテューキーのポスト検定(Tukey's post test for multiple pairwise comparisons)を適切に使用した。
【0139】
【表4】














本明細書に記載されたすべての参考文献は、そのまま参照により本明細書に組みこまれる。
【0140】
【表5】

【0141】
【表6】

【0142】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)患者から生物学的サンプルを得ること、及び
(b)対照サンプルと比較して、該組織サンプル中のエンドセリン−1/アンジオテンシンII二重レセプター(Dear)における少なくとも1つの突然変異または多型の存在または不存在を検出すること、
(c)該突然変異または多型が、エンドセリン−1/アンジオテンシンII二重レセプター(Dear)の発現を増加させるかどうか、エンドセリン−1/アンジオテンシンII二重レセプター(Dear)へのET−1の結合のアフィニティーを増強させるかどうか、エンドセリン−1/アンジオテンシンII二重レセプター(Dear)へのVEGFシグナルペプチド(VEGFsp)の結合のアフィニティーを増強するかどうか、またはDearがリガンドにより刺激されるときDear活性化を増加させるかどうかを決定することを含み、該突然変異または多型の少なくとも1つの存在は個体が高血圧に感受性であることを示す、高血圧に対する個体の感受性を決定するための方法。
【請求項2】
(a)患者から生物学的サンプルを得ること、及び
(b)対照サンプルと比較した、該組織サンプル中のエンドセリン−1/アンジオテンシンII二重レセプター(Dear)における少なくとも1つの突然変異または多型の存在または不存在を検出すること、
(c)該突然変異または多型が、エンドセリン−1/アンジオテンシンII二重レセプター(Dear)の発現を増加させるかどうか、エンドセリン−1/アンジオテンシンII二重レセプター(Dear)へのET−1の結合のアフィニティーを増強させるかどうか、エンドセリン−1/アンジオテンシンII二重レセプター(Dear)へのVEGFシグナルペプチド(VEGFsp)の結合のアフィニティーを増強するかどうか、またはDearがリガンドにより刺激されるときDear活性化を増加させるかどうかを決定することを含み、該突然変異または多型の少なくとも1つの存在は個体が高血圧を有することを示す、高血圧を診断するための方法。
【請求項3】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行ってDEARコード配列を増幅することを更に含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
DEARコード配列が、ヒトDEARコード配列であり、そして配列番号1に対する少なくとも75%の相同性または同一性を有する、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
(a)生物学的サンプルから核酸を単離すること、及び
(b)選択的ハイブリダイゼーション条件下に該核酸を少なくとも1つの核酸プローブと接触させることを更に含み、該プローブは、Dear突然変異または多型を含む核酸配列と優先的にハイブリダイゼーションし、単離された核酸への該プローブの結合は、個体が高血圧に対して感受性であるかまたは高血圧を現在有することを示す、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
患者に有効量のエンドセリン−1/アンジオテンシンII二重レセプター(Dear)阻害剤を投与することを含む、個体における血管新生を阻害するための方法。
【請求項7】
Dear阻害剤が、DEARへのET−1、AngIIまたはVEGFシグナルペプチドの結合をブロッキングする抗体または抗体フラグメント、小分子阻害剤、競合的阻害剤、siRNAまたはアプタマーからなる群より選ばれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
抗体または抗体フラグメントがヒト化抗体またはヒト化抗体フラグメントである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
血管新生は、免疫および非免疫炎症、慢性関節リューマチ、乾癬、糖尿病性網膜症、血管新生緑内症、再発狭窄症、黄班変性、アテローム性動脈硬化プラークにおける毛細管増殖、骨粗鬆症、癌、充実性腫瘍、充実性腫瘍転移、血管線維腫、水晶体後方線維増殖症、血管腫およびカポジ肉腫からなる群より選ばれる疾患または障害と関連している、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
癌が、胃腸癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、頭部癌および頚部癌、肺癌、非小細胞肺癌、神経系の癌、腎臓癌、網膜癌、皮膚癌、肝臓癌、膵臓癌、性器−泌尿器癌および膀胱癌からなる群より選ばれる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
患者に有効量のエンドセリン−1/アンジオテンシンII二重レセプター(Dear)アクチベーターを投与することを含む個体における臨床的に適切な部位での血管新生を増強させるための方法。
【請求項12】
該臨床的に適切な部位が、創傷、潰瘍、糖尿病性潰瘍および冠動脈疾患を有する心臓からなる群より選ばれる、請求項11に記載の方法。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図5I】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−233000(P2012−233000A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−168420(P2012−168420)
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【分割の表示】特願2007−543209(P2007−543209)の分割
【原出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(301069856)トラスティーズ オブ ボストン ユニバーシティ (15)
【Fターム(参考)】