説明

高血圧症の防止及び治療のための組成物並びに組成物の調製方法

本明細書に開示されるのは、植物であるダイコンソウの化合物、抽出物、及び活性画分と、高血圧症を防止又は処置するための方法である。本明細書に提供される化合物は、開示される方法において有用である、医薬組成物及び医薬品に調合可能である。また、医薬製剤及び医薬品を調製する際における化合物及び抽出物の使用も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2009年6月12日出願の米国仮特許出願第61/186,709号、及び2009年6月17日出願の米国仮特許出願第61/187,905号の優先権を主張するものであって、その全内容は、参照することによって、その全体として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
以下の説明は、読者の理解を補助するために提供される。提供される情報又は引用される参考文献のいずれも、本発明の先行技術となるものと認められるものではない。
【0003】
米国心臓病協会(American Heart Association)は、高血圧が、米国における成人の約3人に1人(7,300万人)に影響を及ぼしていると推定している。米国心臓病協会誌の報告によると、高血圧はまた、約200万人の米国の10代及び子供にも影響を及ぼしていると推定される。高血圧症は、明らかに、主要な公衆衛生問題である。合併症のない高血圧は、通常、何ら症状を伴わずに生じるため、高血圧症は、「第1位のサイレントキラー(沈黙の殺人者)」であると認識されている。高血圧症は、静かに進行し、いくつかの潜在的に致命的な合併症、例えば、心臓発作又は卒中のうちのいずれか1つ以上を最終的に発症する可能性があり、西洋の国々だけではなく、現在は、多くのアジアの国々においても、死亡の主因である。高血圧症は、寿命の延びや、寄与因子、例えば、肥満の有病率のため、すでに世界中で非常に普及している心血管危険因子である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今日の治療技術の急速な進歩にもかかわらず、高血圧症のための現在利用可能な薬剤及び処置モダリティ、例えば、血管拡張剤、β−遮断薬、利尿薬等は、継続的投薬下、軽度の血圧制御及び症状改善のみを提供可能であって、薬物及び治療法のいずれも、高血圧症に治癒的効果を提供可能な疾患修正効果を有するとみなされない。症状を緩和又は悪化のペースを減速させるに過ぎない。高血圧症は、処置不能であって、いずれの場所においても、不十分に管理されている状態に留まっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本発明は、哺乳類対象において高血圧症を治療又は防止するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量のダイコンソウ(Geum japonicum)の有機抽出物(OEGJ)を投与するステップを含む、方法を提供する。一実施形態では、細動脈の末梢抵抗が、OEGJが投与されていない対象と比較して、OEGJが投与された対象において、全身的に低下される。一実施形態では、細動脈の末梢抵抗は、器官又は組織内の側副血管形成によって低下される。一実施形態では、OEGJは、末梢抵抗が低下されるように、細動脈の抵抗上昇に伴って、器官又は組織内の側副血管形成を刺激する。一実施形態では、対象の血圧は、OEGJが投与されていない対象と比較して、低下される。一実施形態では、哺乳類対象は、ヒトである。
【0006】
一実施形態では、OEGJは、1日に体重1キログラム当たり約0.01mgから約10gの抽出物の範囲の量として投与される。一実施形態では、OEGJは、用量単位形態として投与される。一実施形態では、OEGJは、薬学的に容認可能な担体を含む、用量単位形態として投与される。一実施形態では、OEGJは、経口投与される。一実施形態では、OEGJは、皮下注射、筋肉注射、又は静脈内注入によって投与される。
【0007】
一実施形態では、OEGJは、ダイコンソウの低級アルキルアルコール溶媒抽出物である。一実施形態では、低級アルキルアルコールは、1−6個の炭素原子を有する。一実施形態では、低級アルキルアルコールは、エタノールである。一実施形態では、低級アルキルアルコールは、メタノールである。
【0008】
別の態様では、本発明は、哺乳類対象における高血圧症を治療又は防止するための医薬組成物であって、有効量のダイコンソウの有機抽出物(OEGJ)と、薬学的に容認可能な賦形剤と、を含む、組成物を提供する。
【0009】
別の態様では、本発明は、有効量のダイコンソウの有機抽出物(OEGJ)及び薬学的に容認可能な担体と、容器と、医薬組成物が、高血圧症又は高血圧に罹患するヒトに有益であることを示す、説明書と、を含む、キットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は血管内皮細胞(HUVEC)のOEGJ誘導分化を示す顕微鏡写真である。パネル(a):ベヒクル処理された細胞は増殖を示すが、分化の兆しを見せない。パネル(b):OEGJ(30μg/ml)処理によって、細胞の増殖が向上した(MTTアッセイによると、30−50%以上の細胞)。パネル(c):OEGJ(60μg/ml)処理された細胞は、血管内皮細胞の分化の特性である、細長い、屈折性細胞を示す。パネル(d):OEGJ(180μg/ml)処置された細胞は、細長い表現型を示し、管状構造を形成する。
【0011】
【図2】図2はOEGJ処理によって、2VOラットモデルにおいて、血圧が低下したことを示すデータを表す。パネル(a):ベヒクル処理されたラットにおいて、2VO結紮から6週間後に測定された、2VO結紮後の血圧は、上昇した(154.25±3.95mmHg)。パネル(b):対照的に、OEGJ処理されたラットにおいて、結紮から6週間後に測定された、2VOによって上昇した血圧は、低下した(135±2.14mmHg)。
【0012】
【図3】図3はOEGJ処理終了から2週間後の2VO脳内の血管の末梢抵抗低下の超音波ドップラー評価を示す。血流量は、実験動物の脳基底動脈を測定することによって評価された。周波数は、垂直方向に、時間は、水平方向にプロットされる。各信号は、1心周期に対応する。A:ベヒクル処理された動物における、脳基底動脈縦断面(上側パネル)と、脳基底動脈から記録されたドップラー偏移信号(下側パネル)を示す、リアルタイム2次元画像。B:OEGJ処理された動物における、脳基底動脈縦断面(上側パネル)と、脳基底動脈から記録されたドップラー偏移信号(下側パネル)を示す、リアルタイム2次元画像。OEGJ処理された動物は、ベヒクル処理された有意に上昇した血圧(148mmHg)と比較して、低血圧(128mmHg)を有していたが、脳の血流量は、ベヒクル処理された群(14.6ml/分)よりOEGJ処理された群(21.1ml/分)において、有意に高かった。式(血圧(BP)/血流量(BF)=血管末梢抵抗)に基づいて、正常と対照群との間に、末梢抵抗の差異はほとんど観察されなかったが、しかしながら、OEGJ処理された群の抵抗は、ベヒクル処理された2VO動物と比較して、43%低く、これは、血管計数から得られた脳内の末梢動脈の断面積を37.4%増加させ、約30.8%以上の血液供給を脳にもたらした、新しい側副動脈の成長の指標である。
【0013】
【図4】図4はベヒクル処理された対照2VOラット(C)のもの(38.5±12.6/HPF)と比較して、有意により多くの血管(〜61.7±20.3/HPF)を示す、OEGJ処理された2VOラットにおける前頭葉皮質の代表的画像である。
【0014】
【図5】図5は2VO動物モデルにおける血圧及び脳の血流を示す、グラフである。BPは、血圧を表す。基礎CBFVは、脳基底動脈を通る脳の血流量を表す。Norは、正常対照ラットを表す。Modは、ベヒクル処理された2VOラットを表す。OEGJは、OEGJ処理された2VOラットを表す。
【0015】
【図6】図6はSDラットにおける右頸動脈の部分結紮(60%)内の血圧及び脳の血流を示す、グラフである。(BP)血圧;(CBFV)脳の総血流量;(Ctr)ベヒクル処理されたモデルラット;(Treated)OEGJ処理されたモデルラット。OEGJ処理は、脳基底動脈を通る脳の血流を有意に増加させた一方、正常血圧は、維持された。相対的に、ベヒクル処理されたラットにおける脳基底動脈を通る脳の血流は、OEGJ処理されたものより有意に低い一方、血圧は、上昇した。
【0016】
【図7】図7はAPPマウスにおける血圧を示す、グラフである。(OEGJ)OEGJ処理されたAPPマウス;(Ctr)ベヒクル処理されたAPPマウス。OEGJ処理は、ベヒクル処理されたAPP対照マウスのものと比較して、OEGJ処理されたAPPマウスにおける正常レベルに対して、血圧を約10%低下させた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
種々の態様では、本発明は、高血圧症を防止又は治療するための化合物、抽出物、及び方法を提供する。本明細書に提供される化合物は、開示される方法において有用である、医薬組成物及び医薬に調合可能である。また、医薬製剤及び医薬を調製する際における化合物及び抽出物の使用も提供される。
【0018】
本発明のある態様、モード、実施形態、変形例、及び特徴は、本発明の実質的理解を提供するために、種々のレベルの詳細において後述されることを理解されたい。以下の用語は、別途明示的に文脈によって示されない限り、後述のように、全体を通して使用される。
【0019】
本明細書で使用されるように、対象又は複数の対象への薬物あるいは薬剤の「投与」は、その意図された機能を果たすために、対象に化合物を導入又は送達するいずれかの経路を含む。投与は、経口、鼻腔内、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下)、直腸内、あるいは局所を含む、いずれかの好適な経路によって行なうことが可能である。投与は、自己投与及び他者による投与を含む。
【0020】
本明細書で使用されるように、用語「有効量」、又は組成物の「薬学的有効量」、あるいは「治療的有効量」は、所望の治療及び/又は予防的効果を達成するために十分な量であって、例えば、処置される疾患と関連付けられる症状の防止又は軽減をもたらす量である。対象に投与される組成物の量は、疾患の種類及び重症度、並びに個人の特性、例えば、全体的な健康、年齢、性別、体重、及び薬物への耐性に依存するであろう。また、疾患の程度、重症度、及び種類にも依存するであろう。当業者は、これら及び他の因子に応じて、適切な用量を判定可能となるであろう。本発明の組成物はまた、1つ以上の付加的治療化合物との組み合わせとして投与可能である。
【0021】
本発明で使用される略語「OEGJ」は、具体的明示を伴うことなく、後述の有機溶媒による、植物であるGeum japonicum Thunb.var.の抽出物を意味する。
【0022】
本明細書で使用されるように、用語「疾患」又は「病状」は、互換可能に使用され、処置及び/又は防止が望ましい、1つ以上の物理的及び/又は心理的症状として露顕される、いずれかの病状又は疾患を含むが、それらに限定されず、以前及び新しく識別された疾患及び他の障害を含む。例えば、病状は、高血圧症であってもよい。
【0023】
本明細書で使用されるように、用語「対象」は、いずれかの哺乳類対象、例えば、ヒトを含むが、また、動物、例えば、ペット(例えば、イヌ、ネコ等)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ等)、及び実験動物(例えば、サル、ラット、マウス、ウサギ、モルモット等)である可能性もある。
【0024】
本明細書で使用されるように、用語「処理する」、又は「処理」、あるいは「緩和」とは、治療処理及び予防又は防止手段の療法を指し、その目的は、標的病理学的病状又は障害を防止又は減速(低下)させることである。対象は、本発明の方法に従って、治療薬剤を受容後、対象が、特定の疾患又は病状の1つ以上の徴候及び症状において、観察可能及び/又は測定可能な低減あるいはその不在を示す場合、障害に対して「処理」が成功したことになる。
【0025】
本明細書で使用されるように、障害又は病状の「防止」又は「防止する」とは、統計的試料において、処置されていない対照試料と比較して、処置された試料における障害又は病状の発生が低下する、あるいは処理されていない対照試料と比較して、障害又は病状の1つ以上の症状の発症が遅延する、若しくは重症度を低下させる、化合物を指す。
【0026】
本発明の組成物
本開示は、ダイコンソウを含む、種々の植物に由来する薬物及び/又は抽出物、並びに化合物及びそのような化合物の誘導体によって、高血圧症を治療又は防止する方法を提供する。いくつかの実施形態では、薬物は、抽出物、例えば、ダイコンソウの有機抽出物である。特定の実施形態では、薬物は、ダイコンソウのメタノール又はエタノール抽出物あるいはその活性画分である。本発明の薬物は、1つ以上の賦形剤、担体、又は充填剤を含有する、医薬組成物の一部であってもよい。一実施形態では、医薬組成物は、単位用量形態としてパッケージ化される。単位用量形態は、それを必要とする対象に投与される時、種々の疾患又は病状を改善する際に有効である。
【0027】
ダイコンソウから有機抽出物を調製するための方法が提供される。本方法は、(a)C1−C4アルコールから成る基から選択されるアルコールによって、ダイコンソウの植物を抽出するステップを含む。本ステップは、3−6回、典型的には、5回、室温において、反復されてもよい。ステップ(a)を行なう前に、植物物質は、粉末化される、又は小片に切断されてもよい。C1−C4アルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、及びter−ブタノールを含む。典型的には、アルコールは、抽出されるダイコンソウの量の質量当たり1−10倍添加される。
【0028】
方法はさらに、(b)ステップ(a)から得られた抽出物を乾燥粉末に乾燥させるステップと、(c)C6アルカン、EtOAc、及びC1−C4アルコールから成る基から選択されるアルコールによって、ステップ(b)から得られた粉末を連続的に抽出するステップと、を含んでもよい。C6アルカンは、例えば、シクロヘキサン、n−ヘキサン、及びneo−ヘキサン等を含む、6個の炭素原子を有する、環状及び非環状アルカンを含む。C1−C4アルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、及びter−ブタノールを含む。使用される有機溶媒の量は、典型的には、さらに抽出される粉末の量の質量当たり1−10倍である。
【0029】
上述の方法はまた、抽出物を濾過し、その中のいかなる不溶性粉末も除去するステップを含んでもよい。乾燥ステップは、室温より高い温度、例えば、50°Cにおいて、減圧下、完了されてもよい。
【0030】
OEGJを精製するために、方法はさらに、粉末をクロマトグラフィカラムに適用するステップと、C1−C4アルコールから成る基から選択されるアルコールの濃度の上昇を伴う水溶液によってカラムを溶出させるステップと、を含んでもよい。例えば、Sephadex又は逆相カラムが使用されてもよい。使用されるアルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、及びter−ブタノールから成る基から選択される、いずれか1つであってもよい。
【0031】
NMR分析によって、OEGJが、典型的には、主に、ゲミンA、B、C、D、E、及びFを含む、タンニンと、2−ヒドロキシオレアノール酸、2−ヒドロキシウルソル酸、2,19−ジヒドロキシ−ウルソル酸、2−α、19−α−ジヒドロキシ−3−オキソ−12−ウルセン−28−オイク酸、ウルソル酸、エピモリック酸、マスリニック酸、エウスカフィク酸、トルメンティク酸、トルメンティク酸の28−β−D−グルコシドを含む、トリテルペンと、を含有することが分かっている。
【0032】
一実施形態では、本発明の抽出物、画分、及び化合物は、以下の段階を含む、粗植物物質から、水及び/又は有機溶媒を使用する抽出によって得られる。
1.全体を処置、例えば、浸漬/浸出、超音波又はマイクロ波に曝すことによって、水及び/又は有機溶媒を植物物質に添加して抽出する
2.石油エーテル、ヘキサン、又はクロロホルム型の溶媒を使用して、抽出段階前又は後に脱脂する
3.任意に、酢酸エチル又はエチルエーテル型の有機溶媒によって、回収された抽出物をさらに抽出する
4.任意に、得られた粗抽出物を濃縮し、所望に応じて、凍結乾燥を行なう
【0033】
一態様によると、達成可能な富化を考慮して、粗抽出物は、クロマトグラフィによる精製段階に曝されてもよい。一実施形態では、遠心分配クロマトグラフィ(CPC)が使用される。本技法は、特に、A.P.FOUCAULT,Ed., Centrifugal Partition Chromatography,Chromatography Science Series,Marcel Dekker Inc.,1995,68、又はW.D.CONWAY,Ed.,Countercurrent Chromatography apparatus theory and applications,VCH Publishers Inc.,1990に説明されている。CPCは、2つ以上の溶媒又は溶液の混合物によって調製される、2つの非混和性液相間の溶質の分配に基づく。2相のうちの一方は、遠心力によって、固定されたままとなる。選択される溶媒、その比率、及び流速は、CPCカラム内の固定相の安定性及び実際の圧力の両方に密接に依存する。
【0034】
したがって、当業者は、所望の精製される抽出物の性質に応じて、最も適切な溶媒又は溶媒を選択するであろう。これらの異なる抽出物、すなわち、粗又は富化されたものもまた、発明の範囲内である。付加的分離段階の実装は、1つ以上の化合物が富化されたこれらの抽出物の単離を可能にする。これらの分離は、試みる分離に好適な比率に従って、適切な溶媒の混合物を使用することによって、粗抽出物から富化された画分で、又は粗抽出物自体で行なうことが可能である。
【0035】
高血圧症の防止及び治療のための方法
収縮期血圧は、心臓が収縮し、血液を体内へ送出する時の動脈内の最大圧である。拡張期血圧は、心臓が弛緩し、血液で充填される時の心拍間の動脈内の最小圧である。高血圧症は、平均収縮期血圧140−150mm Hg超、拡張期血圧90−95mm Hg超、又は両方として定義される。収縮期及び/又は拡張期血圧の上昇は、心臓病、腎臓疾患、動脈硬化(アテローム性動脈硬化症又は動脈硬化症)、眼損傷、及び脳卒中(脳損傷)を発症する危険を増加させる。これらの高血圧症の合併症は、多くの場合、これらの器官への損傷が、慢性的高血圧の最終結果であるため、末端器官障害と称される。本理由から、高血圧の診断及び早期治療が、血圧を正常化し、合併症を防止するために重要である。
【0036】
現在の高度な治療法は、疾患の進行を減速可能であるが、同時に、重度の合併症を発症させる可能性があり、例えば、ACE阻害剤は、血管を狭窄させるアンギオテンシンIIと呼ばれるホルモンの産生を停止させ、アンギオテンシン−II受容体拮抗薬は、ACE阻害剤として同様に作用する。ベータ−遮断薬は、ホルモンアドレナリン及び体内の交感神経系の影響を遮断し、心臓を弛緩させ、アルファ−遮断薬は、血管を弛緩及び拡開させ、カルシウム−チャネル遮断薬は、動脈内の筋緊張を低下させる。
【0037】
血圧の本質は、動脈を通して圧送されるのに伴う、血液の力である。より多くの血液を心臓が圧送し、動脈がより狭窄すると、血圧が高くなる。身体の正常な活動の必要な要件を支持するために、全器官及び組織への十分な量の血液供給を維持するために、心臓は、動脈を通して、身体の周囲に、ある体積の血液を圧送することが要求される。したがって、身体の正常な活動に負の影響を及ぼすことなく、血圧を低下させる最善の解決策は、全身の総動脈断面積を永続的に増加させることである。
【0038】
本発明者らは、抽出物で約2週間処置された後の対象の上昇した血圧を有意に低下させることが可能である、ダイコンソウの有機抽出物を発見した。いくつかの実施形態では、抽出物で4から8週間の間の処置によって、対象内の動脈の断面積を永続的に増加させ、末梢動脈の抵抗を実質的に減少させることが可能である。その結果、血圧は、全身の機能的性能を悪化させることなく、低下する。
【0039】
本発明は、ダイコンソウの有機抽出物(OEGJ)の使用と、ヒト又は動物における高血圧症及び高血圧症に関連する疾患を治療する方法に関する。特に、全身的血圧を低下させるための医薬組成物及び方法に関する。理論に拘束されることを所望するわけではないが、OEGJは、末梢抵抗が増加した対象において、実質的に、重要な器官及び組織への血液かん流を改善し、異なるレベルにおいて、小血管の断面積を増加させる、新しい側副毛細血管、細動脈、及び微小血管の成長を全身的に刺激することによって、作用し得る。その結果、高血圧症における小細動脈の末梢抵抗の増加は、狭窄した動脈への新しく成長した側副血管の補償によって是正され、それによって、血圧の低下につながる。したがって、本発明の方法は、高血圧症の根底にある病的原因を解決する、実質的処置モダリティを提供する。
【0040】
一態様によると、本発明は、本明細書に説明される、有効量の化合物、組成物、画分、又は抽出物を対象に投与するステップを含む、それを必要とする対象において、高血圧症を治療又は防止する方法を提供する。一態様では、高血圧症の防止又は治療のための方法は、ダイコンソウを含む、種々の植物由来の画分及び/又は抽出物をそれを必要とする哺乳類に投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、抽出物は、植物であるダイコンソウから得られる有機抽出物である。
【0041】
別の態様では、高血圧症の治療又は防止のための薬物は、1つ以上の賦形剤、担体、又は充填剤を含有する、医薬組成物の一部である。一実施形態では、医薬組成物は、単位用量形態としてパッケージ化される。単位用量形態は、対象における血圧を改善(すなわち、降下させる)際に有効である。
【0042】
本発明の種々の実施形態では、本発明の薬物(抽出物、画分、及び化合物)の効果、及び対象における高血圧症の処置又は防止のためにその投与が必要とされるかかどうかを判定するために、好適なインビトロ又はインビボのアッセイが行なわれる。いくつかの実施形態では、高血圧症のインビボのモデルは、対象に及ぼす薬物の影響を査定するために使用される。動物対象における高血圧症を治療する際の薬物の効果が、調査され、好適な対照と比較される。
【0043】
別の実施形態では、本発明の植物、抽出物、活性画分、及び/又は化合物は、別の心血管薬剤との組み合わせ治療の一部として投与されてもよい。心臓血管の薬剤の例として、血管拡張、例えば、ヒドララジン;アンギオテンシン変換酵素阻害剤、例えば、カプトプリル;抗狭心症薬剤、例えば、硝酸イソソルビド、グリセリルトリニトレート及びペンタエリスリトールテトラニトレート;抗不整脈薬剤、例えば、キニジン、プロカイナルチド及びリグノカイン;心臓グリコシド、例えば、ジゴキシン及びジギトキシン;カルシウム拮抗剤、例えば、ベラパミル及びニフェジピン;利尿剤、例えば、サイアザイド系及び関連化合物、例えば、ベンドロフルアジド、クロロチアジド、クロルタリドン、ヒドロクロロチアジド及び他の利尿剤、例えば、フロセミド及びトリアムテレン、並びに鎮静剤、例えば、ニトラゼパム、フルラゼパム及びジアゼパムが挙げられる。
【0044】
他の例示的心臓血管の薬剤として、例えば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、例えば、アスピリン又はインドメタシン、血小板凝集阻害剤、例えば、クロピドグレル、チクロピジン又はアスピリン、フィブリノーゲン拮抗剤又は利尿剤、例えば、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、フルメサイアザイド、ヒドロフルメサイアザイド、ベンドロフルメサイアザイド、メチルクロロチアジド、トリクロロメチアジド、ポリチアジド又はベンズチアジド及びエタクリン酸トリクリナフェン、クロルタリドン、フロセミド、ムソリミン、ブメタニド、トリアムテレン、アミロリド及びスピロノラクトン、及びそのような化合物の塩、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、例えば、カプトプリル、ゾフェノプリル、ホシノプリル、エナラプリル、セラノプリル、シラザプリル、デラプリル、ペントプリル、キナプリル、ラミプリル、リシノプリル、及びそのような化合物の塩、アンジオテンシンII拮抗剤、例えば、ロサルタン、イルベサルタン又はバルサルタン、血栓溶解剤、例えば、組織プラスミノーゲン活性化剤(tPA)、組換えtPA、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ及びアニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ活性化剤錯体(APSAC、エミナーゼ、ビーチャム研究所)、又は動物だ液腺プラスミノーゲン活性化剤、カルシウムチャネル阻害剤、例えば、ベラパミル、ニフェジピン又はジルチアゼム、トロンボキサン受容体拮抗剤、例えば、イフェトロバン、プロスタサイクリン模擬体又はホスホジエステラーゼ阻害剤が挙げられる。そのような組み合わせ製品は、一定容量として調合される場合、本発明の化合物を上述の用量範囲内で、及び他の医薬的活性薬剤をその承認された用量範囲内で採用する。
【0045】
さらに他の例示的心臓血管剤として、例えば、血管拡張剤、例えば、ベンシクラン、シンナリジン、シチコリン、シクランデレート、シクロニカート、エブルナモミン、フェノキセジル、フルナリジン、イブジラスト、イフェンプロジル、ロメリジン、ナフロニル、ニカメイト、ノセルゴリン、ニモジピン、パパベリン、ペンチフィリン、ノフェドリン、ビンカミン、ビンポセチン、ビシジル、ペントキシフィリン、プロスタサイクリン誘導体(例えば、プロスタグランジンE1及びプロスタグランジンI2)、エンドセリン受容体遮断剤(例えば、ボセンタン)、ジルチアゼム、ニコランジル及びニトログリセリンが挙げられる。脳保護剤の実施例として、ラジカルスカベンジャー(例えば、エダラボン、ビタミンE及びビタミンC)、グルタミン酸拮抗剤、AMPA拮抗剤、カイニン酸拮抗剤、NMDA拮抗剤、GABAアゴニスト、成長因子、オピオイド拮抗剤、ホスファチジルコリン前駆体、セロトニンアゴニスト、Na+/Ca2+チャネル抑制薬剤、及びK+チャネルオープナー薬が挙げられる。脳代謝性作用剤の実施例として、アマンタジン、チアプリド及びガンマーアミノ酪酸が挙げられる。抗凝血剤の実施例として、ヘパリン(例えば、ヘパリンナトリウム、ヘパリンカリウム、ダルテパリンナトリウム、ダルテパリンカルシウム、ヘパリンカルシウム、パルナパリンナトリウム、レビパリンナトリウム及びダナパロイドナトリウム)、ワーファリン、エノキサパリン、アルガトロバン、バトロキソビン及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。抗血小板薬の実施例として、塩酸チクロピジン、ジピリダモール、シロスタゾール、イコサペント酸エチル、塩酸サルポグレラート、塩酸ジラゼプ、トラピジル、非ステロイド性抗炎症剤(例えば、アスピリン)、ベラプロストナトリウム、イロプロスト及びインドブフェンが挙げられる。血栓溶解薬の実施例として、ウロキナーゼ、組織タイププラスミノーゲン活性化剤(例えば、アルテプラーゼ、チソキナーゼ、ナテプラーゼ、パミテプラーゼ、モンテプラーゼ、及びレイトプラセ)、及びナサルプラーゼが挙げられる。抗高血圧症薬の実施例として、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(例えば、カプトプリル、アラセプリル、リシノプリル、イミダプリル、キナプリル、テモカプリル、デラプリル、ベナゼプリル、シラザプリル、トランドラプリル、エナラプリル、セロナプリル、ホシノプリル、イマダプリル、モベルトプリル、ペリンドプリル、ラミプリル、スピラプリル及びランドラプリル)、アンジオテンシンII拮抗剤(例えば、ロサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、エプロサルタン及びイルベサルタン)、カルシウムチャネル遮断剤(例えば、アラニジピン、エホニジピン、ニカルジピン、バミジピン、ベニジピン、マニジピン、シルニジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、フェロジピン、アムロジピン、ジルチアゼム、ベプリジル、クレンチアゼム、フェンジリン、ガロパミル、ミベフラジル、プレニルアミン、セモチアジル、テロジリン、ベラパミル、シルニジピン、エルゴジピン、イスラジピン、ラシジピン、レルカニジピン、ニモジピン、シンナリジン、フルナリジン、リドフラジン、ロメリジン、ベンシクラン、エタフェノン及びペルヘキシリン)、β‐アドレナリン受容体遮断剤(プロプラノロール、ピンドロール、インデノロール、カルテオロール、ブニトロロール、アテノロール、アセブトロール、メトプロロール、チモロール、ニプラジロール、ペンブトロール、ナドロール、チリソロール、カルベジロール、ビソプロロール、ベタキソロール、セリプロロール、ボピンドロール、ベバントロール、ラベタロール、アルプレノロール、アモスラロール、アロチノロール、ベフノロール、ブクモロール、ブフェトロール、ブフェラロール、ブプランドロール、ブチリジン、ブトフィロロール、カラゾロール、セタモロール、クロラノロール、ジレバロール、エパノロール、レボブノロール、メピンドロール、メチプラノロール、モプロロール、ナドクソロール、ネビボロール、オクスプレノロール、プラクトール、プロネタロール、ソタロール、スルフィナロール、タリンドロール、タータロール、トリプロロール、キシベノロール及びエスモロール)、α‐受容体遮断剤(例えば、アモスラロール、プラゾシン、テラゾシン、ドキサゾシン、ブナゾシン、ウラピジル、フェントラミン、アロチノロール、ダピプラゾール、フェンスピリド、インドラミン、ラベタロール、ナフトピジル、ニセルゴリン、タムスロシン、トラゾリン、トリマゾシン及びヨヒンビン)、交感神経阻害剤(例えば、クロニジン、グアンファシン、グアナベンズ、メチルドーパ及びレセルピン)、ヒドララジン、トドララジン、ブドララジン、及びカドララジンが挙げられる。抗狭心症薬の実施例として、ナイトレート薬(例えば、亜硝酸アミル、ニトログリセリン及びイソソルビド)、β‐アドレナリン受容体遮断剤(例えば、プロプラノロール、ピンドロール、インデノロール、カルテオロール、ブニトロロール、アテノロール、アセブトロール、メトプロロール、チモロール、ニプラジロール、ペンブトロール、ナドロール、チリソロール、カルベジロール、ビソプロロール、ベタキソロール、セリプロロール、ボピンドロール、ベバントロール、ラベタロール、アルプレノロール、アモスラロール、アロチノロール、ベフノロール、ブクモロール、ブフェトロール、ブフェラロール、ブプランドロール、ブチリジン、ブトフィロロール、カラゾロール、セタモロール、クロラノロール、ジレバロール、エパノロール、レボブノロール、メピンドロール、メチプラノロール、モプロロール、ナドクソロール、ネビボロール、オクスプレノロール、プラクトール、プロネタロール、ソタロール、スルフィナロール、タリンドロール、タータロール、トリプロロール及びキシベノロール)、カルシウムチャネル遮断剤(例えば、アラニジピン、エホニジピン、ニカルジピン、バミジピン、ベニジピン、マニジピン、シルニジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、フェロジピン、アムロジピン、ジルチアゼム、ベプリジル、クレンチアゼム、フェンジリン、ガロパミル、ミベフラジル、プレニルアミン、セモチアジル、テロジリン、ベラパミル、シルニジピン、エルゴジピン、イスラジピン、ラシジピン、レルカニジピン、ニモジピン、シンナリジン、フルナリジン、リドフラジン、ロメリジン、ベンシクラン、エタフェノン及びペルヘキシリン)、トリメタジジン、ジピリダモール、エタフェノン、ジラゼブ、トラピジル、ニコランジル、エノキサパリン及びアスピリンが挙げられる。利尿剤の実施例として、チアジン利尿剤(例えば、ヒドロクロロチアジド、メチクロチアジド、トリクロルメチアジド、ベンジルヒドロクロロチアジド及びペンフルチジド)、ループ利尿剤(例えば、フロセミド、エタクリン酸、ブメタニド、ピレタニド、アゾセミド及びトラセミド)、K+保持性利尿剤(スピロノラクトン、トリアムテレン及びカンレノ酸カリウム)、浸透性利尿剤(例えば、イソソルビド、D‐マンニトール及びグリセリン)、非チアジド系利尿剤(例えば、メチクラン、トリパミド、クロルタリドン及びメフルジド)、及びアセタゾールアミドが挙げられる。強心剤の実施例として、ジギタリス製剤(例えば、ジギトキシン、ジゴキシン、メチルジゴキシン、デスラノシド、ベスナリノン、ラナトシドC、及びプロスシラリジン)、キサンチン製剤(例えば、アミノフィリン、コリンテオフィリン、ジプロフィリン及びプロキシフィリン)、カテコラミン製剤(例えば、ドーパミン、ドブタミン及びドカルバミン)、PDEIII阻害剤(例えば、アムリノン、オルプリノン及びミルリノン)、ドノパミン、ユブデカレノン、ピモベンダン、レボシメンダン、アミノエチルスルホン酸、ベスナリノン、カルペリチド及びコルホルシンダロパートが挙げられる。抗不整脈薬の実施例として、アジュマリン、ヒルメノール、プロカインアミド、シベンゾリン、ジソピラミド、キニジン、アプリンジン、メキシレチン、リドカイン、フェニルオイン、ピルシカイニド、プロパフェノン、フレカイニド、アテノロール、アセブトロール、ソタロール、プロプラノロール、メトプロロール、ピンドロール、アミオダロン、ニフェカラント、ジルチアゼム、ベプリジル及びベラパミルが挙げられる。高脂質血症処置薬の実施例として、アトルバスタチン、シンバスタチン、パラバスタチンナトリウム、フラバスタチンナトリウム、クロノフィブラート、クロフィブレート、シンフィブレート、フェノフィブレート、ベザフィブレート、コレスチミド及びコレスチラミンが挙げられる。
【0046】
医薬組成物の調合及び用量
典型的には、治療又は予防的効果を達成するために十分な本発明の組成物の有効量は、1日に体重1キロ当たり約0.000001mgから約10,000mgの範囲である。好適には、用量範囲は、1日に体重1キロ当たり約0.0001mgから約10000mgである。薬物の投与のために、用量範囲は、毎週、2週間毎に、又は3週間毎に、宿主体重の約0.0001から10000mg/kg、より一般的には、0.1から10000mg/kgであってもよい。例示的処置計画は、2週間に1回、又は月1回、あるいは3から6ヶ月に1回の投与を伴う。薬物は、通常、複数の機会に投与される。単一用量間の間隔は、毎日、毎週、毎月、又は毎年である可能性がある。代替として、薬物は、徐放性製剤として投与可能であって、その場合、低頻度投与が要求される。用量及び頻度は、対象における薬物の半減期に応じて変動する。投与の用量及び頻度は、処置が予防又は治療であるかどうかに応じて、変動可能である。予防用途では、比較的低用量が、長期間にわたって、比較的低頻度間隔で投与される。一部の対象は、その生涯の残りの間、処置を受け続ける。治療用途では、比較的高用量が、比較的短間隔において、疾患の進行が減速又は終了するまで、好ましくは、対象が、疾患の症状の部分的又は完全な改善を示すまで、時として、要求される。その後、患者は、予防計画が投与されることが可能である。
【0047】
毒性。好適には、本明細書に説明される、薬物の有効量(例えば、用量)は、対象に実質的毒性をもたらすことなく、治療の恩恵を提供するであろう。本明細書に説明される薬剤の毒性は、例えば、LD50(母集団の50%致死量)又はLD100(母集団の100%致死量)を判定することによって、細胞培養又は実験動物において、標準的薬学的手順によって判定可能である。毒性と治療効果との間の用量比は、治療指数である。これらの細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用に対して、毒性ではない用量範囲を調合する際に使用可能である。本明細書に説明される薬剤の用量は、好ましくは、毒性を殆ど又は全く伴わない有効用量を含む、血中濃度の範囲内にある。用量は、採用される用量形態及び利用される投与の経路によって、本範囲内で変動可能である。正確な調合、投与の経路、及び用量は、対象の病状に照らして、個々の医師によって選択可能である。例えば、Fingl et al.,In:The Pharmacological Basis of Therapeutics,Ch.1(1975)参照。
【0048】
一実施形態によると、薬物は、投与に好適な医薬組成物に組み込み可能である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ダイコンソウの精製又は実質的に精製された抽出物と、対象への投与に好適な形態における薬学的に許容可能な担体と、を含んでもよい。他の実施形態では、医薬組成物は、投与される特定の組成物によって、並びに組成物を投与すために使用される特定の方法によって、部分的に判定される、薬学的に許容可能な担体を含んでもよい。故に、組成物を投与するための医薬組成物の種々の好適な調合が存在する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton、PA 18th ed.,1990参照)。医薬組成物は、概して、無菌、かつ実質的に等張性として、U.S.Food and Drug Administrationの全Good Manufacturing Practice(GMP)規定に完全に準拠して、調合される。
【0049】
用語「薬学的に許容可能な」、「生理的に耐性のある」、及びその文法的変形例は、組成物、担体、希釈剤、及び試薬を指す場合、互換可能に使用され、物質が、組成物の投与を妨害するであろう程度の望ましくない生理的影響をもたらすことなく、対象への投与が可能であることを表す。例えば、「薬学的に許容可能な賦形剤」とは、概して、安全、非毒性、かつ望ましい、医薬組成物を調製する際に有用な賦形剤を意味し、動物用用途並びにヒトの医薬用途のために容認可能な賦形剤を含む。そのような賦形剤は、固体、液体、半固体、又はエアロゾル組成物の場合、気体であることが可能である。「薬学的に許容可能な塩及びエステル」とは、薬学的に許容可能であって、所望の薬理学的特性を有する、塩及びエステルを意味する。そのような塩として、薬剤内に存在する酸性プロトンが、無機又は有機塩基と反応可能なように塩が形成され得る、塩を含む。好適な無機塩は、アルカリ金属、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、及びアルミニウムとともに形成されるものを含む。好適な有機塩は、有機塩基、例えば、アミン塩基、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N‐メチルグルカミン等とともに形成されるものを含む。そのような塩はまた、無機酸(例えば、塩酸及び臭化水素酸)及び有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、並びにアルカン−及びアレーン‐スルホン酸、例えば、メタンスルホン酸及びベンゼンスルホン酸)とともに形成される、酸付加塩を含む。薬学的に許容可能なエステルは、薬剤内に存在するカルボキシ、スルホニルオキシ、及びホスホノキシ基から形成されるエステル、例えば、C1-6アルキルエステルを含む。2つの酸性基が存在する時、薬学的に許容可能な塩又はエステルは、モノ−酸−モノ−塩又はエステルあるいはジ−塩又はエステルである可能性があり、同様に、2より多くの酸性基が存在する場合、そのような基の一部又は全部が、塩化又はエステル化される可能性がある。本発明において列挙された薬物は、塩化又はエステル化されていない形態、あるいは塩化及び/又はされた形態で存在可能であって、そのような薬物の名称は、元の(塩化又はエステル化されていない)化合物及びその薬学的に許容可能な塩及びエステルの両方を含むことが意図される。また、本発明において列挙されたある薬物は、2つ以上の立体異性形態として存在可能であって、そのような薬物の名称は、全単一立体異性体及びそのような立体異性体の全混合物(ラセミ化合物又はその他かどうかを問わず)を含むことが意図される。当業者は、本発明の特定の薬剤及び組成物のための適切な投与のタイミング、順序、及び用量の判定に困難はないであろう。
【0050】
そのような担体又は希釈剤の実施例として、水、生理食塩水、Ringer溶液、デキストロース溶液、及び5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、それらに限定されない。リポソーム及び非水性媒剤、例えば、固定油もまた、使用されてもよい。薬学的に活性物質のためのそのような媒体及び化合物の使用は、当技術分野において周知である。いずれかの従来の媒体及び化合物が、薬物と混合できない場合を除き、組成物内におけるその使用が、想定される。補助的活性化合物もまた、組成物に組み込み可能である。
【0051】
本発明の医薬組成物は、その意図された投与の経路に適合可能なように調合される。本発明の組成物は、非経口、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、皮内、経皮、直腸、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内、筋肉内経路によって、又は吸入として、投与可能である。薬物は、任意に、種々の疾患を処置する際、少なくとも部分的に有効な多の薬剤との組み合わせとして投与可能である。
【0052】
非経口、皮内、又は皮下用途のために使用される溶液あるいは懸濁液として、以下の成分を含むことが可能である:滅菌希釈剤、例えば、注入のための水、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒;抗細菌剤、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝剤、例えば、酢酸、クエン酸、又はリン酸、及び浸透圧調整用薬剤、例えば、塩化ナトリウム又はデキストロース。pHは、酸又は塩基、例えば、塩酸又は水酸化ナトリウムで調節可能である。非経口調製剤は、ガラス又はプラスチックから成る、アンプル、使い捨て注射器、又は反復投与バイアル内に封入可能である。
【0053】
注入可能用途に好適な医薬組成物として、滅菌水溶液(ここでは、水溶性)又は分散液及び滅菌注入可能溶液又は分散液の即時調製用の滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与の場合、好適な担体として、生理的食塩水、静菌性水、Cremophor ELTM(BASF,Parsippany,N.J.)、又はリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は、滅菌されていなければならず、かつ容易に注射可能性が存在する程度の流動性であるべきである。製造及び保存の条件下で安定でなければならず、かつ微生物(例えば、細菌及び真菌)の混入作用に対して保護されなければならない。担体は、溶媒又は分散媒体(例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適切な混合物)であることが可能である。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用によって、分散の場合、必要とされる粒子サイズの保持によって、そして界面活性剤の使用によって保持可能である。微生物の作用の阻止は、種々の抗細菌剤及び抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど)によって達成可能である。多くの場合、等張剤(例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール)、ソルビトール、塩化ナトリウム)が、組成物中に含まれるであろう。注入可能組成物の長期の吸収は、組成物中に吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン)を含ませることによってもたらすことが可能である。
【0054】
滅菌注入可能溶液は、必要に応じて、上述の1つ又は成分の組み合わせとともに、必要量における薬剤を適切な溶媒中に組み込んだ後、濾過滅菌を行なうことによって調製可能である。概して、分散液は、基礎分散媒体及び上述のものからの必要とされる他の成分を含有する、滅菌媒剤に結合薬剤を組み込むことによって調製される。滅菌注入可能溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の方法は、活性成分の粉末に加え、その以前に滅菌濾過された溶液からのいずれかの付加的所望の成分をもたらす、真空乾燥及び凍結乾燥である。本発明の薬剤は、活性成分の徐放又はパルス放出をもたらすように調合可能な、蓄積注射又は移植調製剤の形態として投与可能である。
【0055】
経口組成物は、概して、不活性希釈剤又は可食担体を含む。これらは、ゼラチンカプセル内に封入されるか、又は錠剤に圧縮可能である。経口治療投与の目的のために、結合薬剤は、賦形剤とともに組み込まれ、錠剤、トローチ剤、又はカプセル剤の形態として使用可能である。経口組成物はまた、流体担体中の化合物が、経口的に適用され、含嗽され、喀出又は嚥下される、含嗽剤として使用するための流体担体を使用して調製可能である。薬学的に適合性のある結合剤及び/又はアジュバント物質は、組成物の一部として含まれることが可能である。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤等は、以下の成分又は類似性質の化合物のいずれかを含有可能である:結合剤、例えば、微晶質セルロース、トラガントガム又はゼラチンなど;賦形剤、例えば、デンプン又は乳糖;分散剤、例えば、アルギン酸、プリモゲル、又はトウモロコシデンプン;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム又はSterotes;流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、ショ糖又はサッカリン;あるいは香味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ香料。
【0056】
一実施形態では、薬剤は、例えば、移植及びマイクロカプセル封入された送達系を含む、放出制御製剤等、生体からの迅速な排泄に対し化合物を保護する、又は薬物が胃酸によって分解されるのを防止する、担体とともに調製される。例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステル、及びポリ乳酸等、生分解性の生体適合性ポリマーを使用可能である。そのような製剤の調製のための方法は、当業者には明白だろう。物質はまた、Alza Corporation and Nova Pharmaceuticals,Inc.からも商業的に得ることが可能である。リポソーム懸濁剤(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体により感染細胞へ標的化されたリポソームを含有)も、薬学的に許容される担体として使用することが可能である。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に説明されるように、当業者に周知の方法に従って調製可能である。
【0057】
実施例
本技術は、以下の実施例によって、さらに例証されるが、いかようにも限定として解釈されるべきではない。
【0058】
実施例1ダイコンソウの有機抽出物の調製
細動脈及び微小血管の成長を刺激することを通して、細動脈の末梢抵抗の低下に作用を示す、植物成分をスクリーニングし、化合物の組成物を同定するために、バイオアッセイに誘導される戦略を使用した。概説すると、Anhui Provinceから収集された10kgの乾燥ダイコンソウを小片に切断し、3日間、40℃において75%エタノール(10x体積)で浸出した。抽出物を電気スプレイにかけ、茶色粉末を得た。
【0059】
実施例2血管内皮細胞のOEGJ促進増殖及び分化
修正ATCCプロトコルに従って、MTTアッセイを使用して、血管内皮細胞増殖分析を行なった。成長培地(15%FBS、6U/mlヘパリン、及び30μg/ml内皮細胞成長添加物を伴う、F12K培地)とともに、96−ウェル培養プレート上にヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC、2×103/ウェル)を播種した。細胞接着後、培地は2%FBSでハムのF12K培地に変更し、12時間培養した。次いで、それぞれ、勾配濃度50、100、及び200μg/mlのOEGJ(実施例1に説明されるように調製された)で細胞を処理し、48時間さらに培養した。Tecan Sunriseプレートリーダ(GmbH、Australia)によって、光学密度(OD)を測定した。培養された内皮細胞の表現型及び分化のために、MTT測定の前に、異なる処理による全ウェルを倒立顕微鏡で検査した。
【0060】
OEGJは、低濃度のOEGJでHUVECの増殖を促進するだけでなく、また、HUVECの分化も向上させ、培地内に細長い、接続された管状構造を形成する、血管形成促進におけるその潜在性を示唆することが分かった(図1)。
【0061】
実施例3高血圧症のラットモデルにおけるOEGJの治療効果
我々の予備研究では、両側頚動脈の永続的結紮(2VO)が、脳内の細動脈の末梢抵抗の増加によって、軽度の高血圧症を引き起こすことが示唆された。2VO後、脳の血液供給は、両側椎動脈に最大限に依存し、通常、脳に対して、両側椎動脈は脳総血液体積の約40%を供給するはずである。両側頸動脈によって供給される、血液供給の60%の減少を補償するために、心臓は、実験中の血圧測定によって確認された圧力より多く蓄積し、椎骨動脈を通して、脳により多くの体積の血液を送達するために、脳内の細動脈の抵抗を克服する必要がある。
【0062】
この目的を達成するために、体重250−300gのオスのSprague−Dawley(SD)ラットを使用した。研究は、National Regulations of Experimental Animal Administratonに準拠して行なわれ、全動物実験は、Committee of Experimental Animal Administraton of Zhangjiang High−tech Parkによって承認された。2VO(n=12)に対して、麻酔下、正中頸部切開を通して、両総頸動脈を曝露し、次いで、6−0ナイロン縫合糸によって結紮し、マイクロ剪刀で切断した。その後、創傷を縫合糸で閉合した。正中頸部切開の手術を受けたが、総頸動脈結紮を伴わない、ラット(n=6)を偽手術された対照とした。麻酔から回復後、実験動物の食物及び水への自由なアクセスを可能とした。
【0063】
OEGJ処置群における2VOのラット(n=6)には、4週間、毎日、OEGJ懸濁液(水中480mg/kg/日)を胃内投与した。ベヒクル処置群(n=6)における2VOの動物には、毎日、同等体積の水を投与した。偽処置された群におけるラットのうち3匹には、4週間、毎日、OEGJ懸濁液(水中480mg/kg/日)を胃内投与し、残りの他の3匹の動物には、同等体積の水を投与した。処置後4週間、脳への血圧及び血流を分析した。
【0064】
血圧の測定。4週間後、無麻酔ラットにおいて、暖気時間後、尾カフ(BP−98A、Softron)を用いて、コンピュータ自動システムによって、実験動物の収縮期血圧(SBP)及び平均血圧(MBP)を測定した。室温は、27°Cに一定に維持した。処置4週間後のベヒクル処置された2VOラットでは、血圧が上昇(154.25±3.95mmHg)し、偽手術された動物におけるもの(約125mmHg)より有意に高いことが分かった(図2)。対照的に、OEGJ処置された2VOラットにおける血圧は、135.25±2.14mmHg(図2)であって、ベヒクル処置された対照ラットより有意に低いが、偽手術されたラットにおけるレベルより若干高く、脳動脈の末梢抵抗が低下した脳の側副血管形成又はOEGJ処置による血管拡張を示唆する。
【0065】
OEGJの血管拡張効果の可能性を排除するために、OEGJ処置から2週間後、2VO実験動物において、再度、脳血流量及び血圧を測定した。OEGJ処置終了から2週間後、血流量は、血圧約128mmHgを伴う、OEGJ処置されたラットにおける最後の測定値と同様のままであったことが分かった。一方、ベヒクル処置されたラットでは、血流量及び血圧は両方とも、2週間前の最後の測定値と略同一であった。結論として、2VOによる脳への血液供給の有意な低下は、OEGJ処置によって回復された。効果は、恐らく、同一脳試料の組織学的研究(血管計数)によって確認された、脳の細動脈の抵抗を減少させた虚血脳内での側副血管形成によるものである。
【0066】
脳血流のドップラー超音波評価。OEGJ治療が、脳内の細動脈の末梢抵抗低下させる、脳内の側副血管の成長を刺激する場合、脳の総血流量は、ある血圧下において増加するであろう。本仮定を実証するために、上述のように血圧を測定し、さらに、実験動物の頭蓋外脳基底動脈を測定することによって、PLT−1202S線形アレイ変換器を伴うToshiba Aplio XG超音波を使用して、実験動物の脳の血流量を評価した。永続的2VO後、ラット脳への血液供給は、両側総椎底動脈−脳基底動脈に主に依存し、通常、脳への総血液体積の約40%を供給する。我々の結果は、偽手術されたラットにおける脳基底動脈の血流量が、約12.4±3.5ml/分であるが、ベヒクル処置された対照において、2VOへの補償機構によって、脳への正常総血液体積の52%を占める、16.04±6.4ml/分に到達したことを示した(図3)。興味深いことに、OEGJ処置された動物における脳基底動脈の血流量は、脳の総血流量の正常レベルの約83.5%である、最大25.9±11.80ml/分まで増加した(図3)。
【0067】
末梢血管抵抗のOEGJ媒介低下効果が、血管膨張又は脳内の新しい側副血管の成長から生じたものかどうか判定するために、OEGJ治療から2週間後、これらの実験動物において、再度、血流量を測定した。OEGJ治療の終了から2週間後、血流量は、正常血圧と同様レベルの血圧約128mmHgを伴う、OEGJ治療されたラットにおける最後の測定値と同様(21.1±6.3ml/分)のままであったことが分かった。一方、ベヒクル治療されたラットでは、血流量(14.6ml/分)及び血圧(148mmHg)は両方とも、2週間前の最後の測定値と略同様であった。
【0068】
式:血圧(BP)/血流量(BF)=末梢血管抵抗(PR)に基づいて、正常ラットの場合:第1の測定時、Rn0=125/12.4=10.08、2週間後、Rn2=121/12=10.1;ベヒクル治療された対照ラットの場合:Rc0=154.25/16.04=9.62、ベヒクル治療終了から2週間後、Rc2=148/14.6=10.14;OEGJ治療されたラットの場合:Ro0=135.25/25.9=5.22、OEGJ治療の終了から2週間後、Ro2=128/21.1=6.06であった(図3)。上述の計算から、正常とベヒクル治療された対照ラットとの間の末梢血管抵抗は、ほとんど差異がないことが導出された(〜10)。しかしながら、OEGJ治療された群の末梢血管抵抗は、約43%低く、組織学的分析における血管計数によってさらに確認された、脳内の末梢動脈の断面積を増加させる、新しい側副動脈の成長を示唆した。
【0069】
脳内の側副新血管形成の確認。OEGJ治療されたラットにおける脳の平均質量は、ベヒクル治療された対照ラットのものより9.1±2.3%(P<0.01)重いことが分かった。脳の血流測定後、屠殺された実験動物から脳を除去し、ホルマリン中に固定し、パラフィンに埋入させた。各スライドから薄断片(5μm)を切断し、H&E染色法によって染色した。高倍率視野(HPF)(40x)下、光顕微鏡を使用して、前頭葉皮質内及び海馬領域周囲の血管数を計数することによって、薄断片上の血管密度を判定した。各断片内の全血管を計数するために、前頭葉又は海馬内の6つの無作為かつ非重複HPFを検査した。各HPF内の血管数は、HPF当たりの血管数として、平均化し、表した。血管計数は、盲検式に、2人の調査者によって行なった。
【0070】
血管数は、OEGJ治療されたラットでは、前頭葉皮質の領域内で約61.7±20.3/HPF(図4)、及び海馬の領域周囲で56.4±12.3/HPFであることが分かった。対照的に、血管数は、ベヒクル治療されたラットでは、前頭葉皮質の領域内で約38.5±12.6/HPF(図4)、及び海馬の領域周囲で30.7±10.5/HPFであった。要約すると、OEGJ治療は、OEGJ治療された2VO誘発高血圧症動物において、虚血脳内に37.4%超の側副血管形成を誘発し、虚血脳に対して30.8%超の血液供給及び14.5%の血圧低下をもたらした(図5)。
【0071】
実施例4軽度高血圧症動物モデルにおけるOEGJの治療効果
いくつかの軽度高血圧症動物モデルにおいて、OEGJの治療効果を検証した。全研究は、National Regulations of Experimental Animal Administratonに準拠して行なわれ、全動物実験は、Committee of Experimental Animal Administraton of Zhangjiang High−tech Parkによって承認された。動物モデルとして、ラット、APPマウス、脳卒中ラット、及び後述の老化促進のマウス誘発軽度高血圧症動物モデルにおける、片側頸動脈の部分結紮を含めた。
【0072】
軽度高血圧ラットモデルの誘発。この目的を達成するために、SDラット(n=12)において、右頸動脈(PLRCA)の部分結紮(60%)を行なった。麻酔下、右正中頸部切開を通して、右総頸動脈を曝露させた。次いで、6−0ナイロン縫合糸によって、曝露された右頸動脈を部分的に(60%)結紮し、マイクロ剪刀で切断した。その後、創傷を縫合糸で閉合した。右正中頸部切開の手術を受けたが、総頸動脈結紮を伴わない、6匹のラットを偽手術された対照とした。麻酔から回復後、実験動物の食物及び水への自由なアクセスを可能とした。ラットは、OEGJ治療群(n=6)及びベヒクル治療群(n=6)に無作為に分割された。
【0073】
APPマウスは、線維状アミロイド斑を発症した。APPマウスは、老化に伴って、軽度上昇血圧によって、空間学習及び記憶に障害を呈する。Takedaらによって開発されたSAMP10マウス(Takeda et al.,1991)は、急速老化の特性を示す。マウスは、加齢に伴って、軽度高血圧によって、学習及び記憶における異常を早期に発症する。本研究では、APP(n=30)及びSAMP10マウス(n=30)の両方を使用した。APPマウス及びSAMP10マウスは両方とも、それぞれ、OEGJ治療群(n=15)及び媒剤治療群(n=15)に無作為に分割された。
【0074】
虚血性脳卒中誘発高血圧のラットモデル。以前に使用した方法に従って(Mayzel−Oreg et al.,2004)、外科手術によって、SDラットに虚血性脳卒中を誘発させた。概説すると、首の右側における正中切開を通して、頸動脈分岐部周囲の総頸動脈(CCA)、内頸動脈(ICA)、及び外頸動脈(ECA)を曝露させた。頸動脈分岐部の近位において、CCAを結紮した。ECA内に挿入された注射器によって、頸動脈分岐部に向かって、〜1000微小球(80150μM)を含有する生理食塩水(0.5ml)を注入した。注入部位から遠位において、ECAを結紮し、CCA結紮を除去後、ICAに流入した注入微小球が、脳内に多発虚血性脳卒中をもたらした。各群内のラットが全体的に類似等級を有するように、その神経学的等級に従って、ラット(n=28)をOEGJ治療群(n=12)及びベヒクル治療群(n=16)に分割した。
【0075】
全上述の動物モデルのOEGJ治療群におけるラット及びマウスは、それぞれ、4週間、OEGJ懸濁液(水中480mg/kg/日)によって、胃内投与された。ベヒクル治療された群におけるラット及びマウスは、同一期間の間、毎日、同等体積の水によって、胃内投与された。
【0076】
結果は、ベヒクル治療されたラット(PLRCA)の平均血圧が、約142mmHgまで上昇し、脳総血流量が、約37ml/分であった(図6)。対照的に、OEGJ治療されたラットでは、PLRCAによる上昇血圧は、正常レベル(121mmHg)まで低下した一方、脳の総血流量は、58ml/分まで有意に増加し、虚血脳への血液供給を維持した(図6)。APPマウス(6−7ヶ月齢)では、ベヒクル治療された群におけるマウスの平均血圧は、〜124mmHgであった(図7)。対照的に、OEGJ治療群におけるマウスの平均血圧は、〜114mmHgと、ベヒクル治療された対照マウスのものより約10%下回った(図7)。また、OEGJ治療群における脳の平均質量は、ベヒクル治療群のものより約15%重いことが分かった。また、組織学的研究は、有意に多くの新しく成長した血管が、OEGJ治療されたAPPマウスにおける脳の皮質及び海馬において見られたことを実証した。結論として、1ヶ月のOEGJ治療は、APPマウスにおいて、脳及び他の組織において、新しい側副血管の成長を誘発しただけでなく、また、全身的血圧を低下させた(〜114mmHg)。対照的に、ベヒクル治療されたAPPマウスにおける血圧は、OEGJ治療されたものより約10%高かった(124mmHg)(図7)。さらに、1ヶ月のOEGJ(480mg/kg)治療後、ラット脳卒中モデル及びSAMP10マウスモデルにおいて軽度に上昇した血圧(130−150mmHg)は、これらの動物における正常血圧レベルと同様の約10%低下したことも実証された。
【0077】
実施例5ヒト対象における高血圧症に及ぼすOEGJの治療効果
細胞培養システムにおける血管内皮細胞のOEGJ促進増殖及び分化と、より重要なこととして、動物モデルにおける、2VO、脳卒中、PLRCA、及びAPP誘発高血圧症へのOEGJ媒介による実質的処置からの上述の予想以上の有望な結果に基づいて、高血圧症の動物モデルで観察OEGJ 誘導実質的な治療の効果が同様に臨床の現場で翻訳することができるかどうかの可能性は慈悲の治療に基づいて高血圧の患者で試験された。我々の予臨床の治療は、一次又は二次性高血圧症患者10例に実施した。
【0078】
試験に登録した一次又は二次性高血圧症を伴う全患者(n=10)が、長年にわたって高血圧症を有していることを報告した。彼らの高血圧症は、近年、現在市販の投薬によって満足がゆく程度に処置され得ていない。彼らの高血圧は、従来の治療法又は組み合わせに対して、良好に応答しなかった。検査時、彼らの血圧は、約162±20/106±10mmHgであった。さらに、高血圧以外にも、頻繁に、頭痛、目眩、胸部圧迫、息切れ、視力障害に悩まされていることを訴えた。
【0079】
彼らは、要求及び承諾書に基づいて、4−8週間、OEGJ(2−3グラム/日、経口投与)で治療された。1−2週間のOEGJの経口投与後、これらの患者の全員が、血圧の順調な低下を経験した。4から8週間の治療後、これらの患者全員の血圧が、正常範囲(119±10/79±6mmHg)内に戻り、上述のような高血圧症の付随症状からの緩和を報告した(表1)。
【表1】

【0080】
実施例6MEGJを使用した高血圧症の治療
高血圧症に及ぼすその治療効果に対する、Geum japonicum Thunb.変種(MEGJ)(MEGJの組成は、OEGJに類似する)のメタノール抽出物による予備臨床試験では、2週間のMEGJ治療(経口、3−4グラム/日)によって、従来の抗高血圧処置に良好に応答しなかった患者の血圧を10−20%順調に低下可能であったことが分かった。さらに、低下した血圧は、何らかのさらなる治療を伴わずに、数ヶ月間維持可能であって、高血圧症、特に、難治性高血圧症の治療に対して、その有意な潜在可能性が示唆される。高血圧症に及ぼすMEGJの顕著な治療効果の根底となる機構は、処置される対象における細動脈床の総断面積を増加させることを前提とする。
【0081】
境界高血圧症(140−150/90−95mm Hg)を伴う5名の患者では、1週間のMEGJ治療によって、3ヶ月超の間、血圧が115−125/70−75mm Hgに低下した。難治性高血圧症(140−180/95−140)を伴う別の6名の患者は、従来の抗高血圧症治療に応答しなかった後の1ヶ月の間、MEGJ処置を受けた。MEGJによる治療の第1週目、血圧は、有意に低下しなかった。しかしながら、MEGJによる処理から2週間後、これらの患者の血圧は、135−145/85−100mmHgまで有意かつ順調に低下し、頭痛、目眩、耳鳴、混乱、乳頭浮腫は、有意に改善又は消失した(表2)。MEGJによる治療から4週間後、全6名の患者の血圧が低下し、何らかのさらなる投薬を伴わずに、数ヶ月間、維持可能であった。
【0082】
結論として、MEGJの2から4週間の経口投与は、徐々にかつ有意に、境界又は難治性高血圧症を有する患者の上昇血圧を正常レベル効果させることが可能であって、高血圧から派生した症状もまた、有意に改善又は排除された。MEGJ誘発による血圧効果は、現在市販の抗高血圧薬物と異なると考えられた。処置された対象における細動脈床の総断面積を増加させることは、高血圧症の有効かつ可能性のある治療として、血圧を順調に降下させるための主要な機構の1つであるとみなされる。
【表2】

【0083】
ある実施形態が、例証かつ説明されたが、以下の請求項に定義されるその広範なる態様における技術から逸脱することなく、当技術分野における通常の技術に従って、変更及び修正が成され得ることを理解されたい。
【0084】
本開示は、本願に説明される特定の実施形態の観点から、限定されるものでではない。多くの修正及び変形例が、当業者には明白となるように、その精神及び範囲から逸脱することなく、成され得る。本明細書に列挙されるものに加え、本開示内の機能的同等方法及び装置が、上述の説明から、当業者には明白となるであろう。そのような修正及び変形例は、添付の請求項の範囲内であると意図される。本開示は、添付の請求項の記載、及びそのような請求項が権限付与される均等物の全範囲の観点からのみ、限定されるものとする。本開示は、特定の方法、試薬、化合物組成物、又は生物系に限定されず、当然ながら、変動し得ることを理解されたい。また、本明細書に使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためにすぎず、限定を意図するものではないことを理解されたい。
【0085】
加えて、本開示の特徴又は態様が、マーカッシュ群の観点から説明される場合、当業者は、本開示がまた、それによって、マーカッシュ群のいずれかの個々の構成要素又は構成要素の部分群の観点から説明されることを認識されたい。
【0086】
当業者によって理解されるように、目的の一部又は全部に対して、特に、記述説明を提供する観点から、本明細書に開示される全範囲はまた、一部及び全部の可能性のある部分範囲及びその部分範囲の組み合わせも包含する。いずれの列挙された範囲も、同一範囲を、少なくとも、2等分、3等分、4等分、5等分、10等分等に分解されることを十分に説明及び可能にするものとして容易に認識可能である。非限定的実施例として、本明細書で論じられる各範囲は、非限定的な例として、本明細書に記載される各範囲は、下の3分の1、真ん中の3分の1、及び上の3分の1等に容易に分解可能である。また、当業者によって理解されるように、「まで」、「少なくとも」、「超える」、「未満」等の全ての言葉は、列挙されている数字を含むとともに、上述のように、続いて、部分範囲に分解可能な範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は、各個々の構成要素を含む。したがって、例えば、1〜3の単位を有する群は、1つ、2つ、又は3つの単位を有する群を指す。同様に、1〜5の単位を有する群は、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの単位を有する群を指すというようになる。
【0087】
種々の態様及び実施形態が、本明細書に開示されたが、他の態様及び実施形態も、当業者には明白となろう。本明細書に開示される種々の態様及び実施形態は、例証の目的のためであって、限定として意図されるものではなく、真の範囲及び精神は、以下の請求項によって示唆される。

参考文献

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【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類対象において高血圧症を治療又は防止するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量のダイコンソウの有機抽出物(OEGJ)を投与することを含む、方法。
【請求項2】
細動脈の末梢抵抗が、前記OEGJが投与されていない対象と比較して、前記OEGJが投与された対象において、全身的に低下される、請求項2に記載の方法。
【請求項3】
前記細動脈の末梢抵抗が、器官又は組織内の側副血管形成によって低下される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
OEGJが、1日に体重1キログラム当たり約0.01mgから約10,000mgの前記抽出物の範囲の量として投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
OEGJが、用量単位形態として投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
OEGJが、薬学的に容認可能な担体を含む用量単位形態として投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
OEGJが、細動脈の抵抗上昇に伴って、器官又は組織内の側副血管形成を刺激する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記対象の血圧が、前記OEGJが投与されていない対象と比較して低下される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
OEGJが経口投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
OEGJが、皮下注射、筋肉注射、又は静脈内注入によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記OEGJが、ダイコンソウの低級アルキルアルコール溶媒抽出物である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
低級アルキルアルコールが1−6個の炭素原子を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒がエタノールである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記溶媒がメタノールである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記哺乳類対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
哺乳類対象における高血圧症を治療又は防止するための医薬組成物であって、有効量のダイコンソウの有機抽出物(OEGJ)と、薬学的に容認可能な賦形剤とを含む、組成物。
【請求項17】
請求項16の医薬組成物と、容器と、前記医薬組成物が、高血圧症又は高血圧に罹患するヒトに有益であることを示す説明書とを含む、キット。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−529484(P2012−529484A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514549(P2012−514549)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【国際出願番号】PCT/IB2010/001412
【国際公開番号】WO2010/143059
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511300536)ジェネレックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】