説明

高血圧降下剤および高血圧降下作用を有する食品

【課題】 副作用が少なく、少ない投与量でも優れた高血圧降下作用を有する薬剤及び高血圧降下作用を有する食品を提供する。
【解決手段】 (a)アスタキサンチンと(b)アンジオテンシン変換酵素阻害活性を有するペプチドを含有する高血圧降下剤およびこれら二成分を含有する高血圧降下作用を有する食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)アスタキサンチンおよび(b)アンジオテンシン変換酵素阻害活性を有するペプチドを含有する高血圧降下剤およびこれら二成分を含有してなる高血圧降下作用を有する食品に関する。
【背景技術】
【0002】
現代では、生活習慣や食生活の変化に伴ない生活習慣病が増加し、またその若年化傾向が高まっている。特に、高血圧症は、我が国総人口の約2割が相当すると推定されており、疲労感、不眠、めまい、肩凝り、のぼせ、心悸亢進、呼吸困難、冠動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、心臓の左心室肥大などの障害の原因となるため、その治療及び予防法が重要視されている。これまで高血圧症の治療薬は数多く開発されているが、医薬品の場合、中には副作用を有するものもあり、長期間摂取したり、また、予防のために摂取したりするためには好ましくないものが多く、副作用や毒性が少なく長期間に亙って摂取できる高血圧降下剤及び血圧上昇抑制剤が望まれている。
【0003】
アスタキサンチンは、カロテノイドの一種でエビ、カニ等の甲殻類、サケ、タイ等の魚類、緑藻ヘマトコッカス等の藻類、赤色酵母ファフィア等の酵母類等、天然、特に海洋に広く分布する食経験豊かな赤色色素である。近年アスタキサンチンがビタミンE(α−トコフェロール)の100〜1,000倍、β−カロテンの約40倍もの強力な抗酸化作用を有し、抗動脈硬化作用などが報告されている(例えば、特許文献1、非特許文献1〜2参照)。
【0004】
一方、牛乳由来のカゼインのトリペシンやペプシンの酵素分解物から得られる、ペプチド、例えば(1)Phe-Phe-Val-Ala-Pro-Phe-Pro-Glu-Val-Phe-Gly-Lys、(2)Ala-Val-Pro-Thy-Pro-Glu-Arg、および(3)Thr-Thr-Met-Pro-Leu-Trpによって代表されるペプチド、その塩またはこれらの混合物がアンジオテンシン変換酵素(以下、「ACE」と略記する)阻害活性を有し降血圧作用があることが知られている(例えば、特許文献2〜4参照)。
【0005】
また、アスタキサンチンは前述のとおり高い抗酸化活性を有するが、過剰の投与を行うとプロオキシダント作用を起こし逆に酸化剤として作用すること、天然物由来のアスタキサンチンはアスタキサンチンの他に脂肪酸グリセリドを含有しているため、摂取脂肪分は少ない方が好ましいこと、コストが高いことなどにより投与量の減少が求められている。また、ACE阻害活性を有するペプチドにおいては、ACE阻害活性を有する固有の欠点として空咳、吐き気、めまい、頭痛、動悸などの副作用や、腎機能の障害者や妊婦への影響や、コストが高いことなどにより投与量の減少が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開平第10−155459号公報
【特許文献2】特公昭第60−23085号公報
【特許文献3】特公昭第61−51562号公報
【特許文献4】特公昭第61−51564号公報
【非特許文献1】矢澤一良著、「驚きのアスタキサンチン効果」、178〜182頁、主婦の友社2001年10月10日発行
【非特許文献2】板倉弘重著、「活性酸素に攻め勝つアスタキサンチン」、24〜25頁、ハート出版社2000年9月9日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、副作用が少なく、少ない投与量でも優れた高血圧降下作用を有する薬剤及び高血圧降下作用を有する食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、アスタキサンチンとACE阻害活性を有するペプチドを組み合わせて投与することにより、アスタキサンチンとACE阻害活性を有するペプチド双方の投与量を大幅に減少させ、それらの副作用をなくした高血圧降下剤を見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は以下の内容を包含するものである。
本発明の第1は、(a)アスタキサンチンと(b)アンジオテンシン変換酵素阻害活性を有するペプチドを有効成分として含有することを特徴とする高血圧降下剤である。
第2は、該ペプチドが獣乳にタンパク質分解酵素を作用させて得られるペプチドであって、その分子量が3000以下である第1記載の高血圧降下剤である。
第3は、該ペプチドが(1)Phe-Phe-Val-Ala-Pro-Phe-Pro-Glu-Val-Phe-Gly-Lys、(2)Ala-Val-Pro-Thy-Pro-Glu-Argおよび(3)Thr-Thr-Met-Pro-Leu-Trpのうちの少なくとも1種である第1記載の高血圧降下剤。
第4は、(a)アスタキサンチンと(b)アンジオテンシン変換酵素阻害活性を有するペプチドを配合してなる高血圧降下作用を有する食品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアスタキサンチンとACE阻害活性を有するペプチドが含有する高血圧降下剤および血圧上昇抑制剤、およびそれらを含有する食品により、高血圧降下と血圧上昇抑制および高血圧が原因となっている脳卒中、虚血、動脈硬化などの疾病の治療・改善・予防することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において「アスタキサンチン」とは、天然物由来のものまたは合成により得られるものを意味する。天然物由来のものとしては、例えば、エビ、オキアミ、カニなどの甲殻類の甲殻、卵および臓器、種々の魚介類の皮および卵、緑藻ヘマトコッカスなどの藻類、赤色酵母ファフィアなどの酵母類、海洋性細菌、福寿草および金鳳花などの種子植物から得られるものを挙げることができる。天然からの抽出物および化学合成品は市販されており、入手は容易である。
【0012】
アスタキサンチンは、例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌などを、公知の方法に準拠して、適宜な培地で培養することにより得られる。
【0013】
前記培養物または前記甲殻類から抽出および精製する方法については種々の方法が知られている。例えば、ジエステル型アスタキサンチンは油溶性物質であることから、アスタキサンチンを含有する天然物からアセトン、アルコール、酢酸エチル、ベンゼン、クロロホルムなどの油溶性有機溶媒で抽出することによりアスタキサンチン含有成分を分離取得することができる。抽出後、常法に従って溶媒を除去してモノエステル型のアスタキサンチンとジエステル型のアスタキサンチンの混合濃縮物を得ることができる。得られた濃縮物は、所望によりさらに精製しても良い。
【0014】
アスタキサンチンの使用形態としては、前記方法で得たアスタキサンチンの抽出物およびそれらを含有した粉末や水溶液、または赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌などの乾燥品およびそれらの破砕品を用いることができる。
【0015】
アスタキサンチンは、3,3'−ジヒドロキシ−β,β−カロテン−4,4'−ジオンであり、立体異性体を有する。具体的には、(3R,3'R)−アスタキサンチン、(3R,3'S)−アスタキサンチンおよび(3S,3'S)−アスタキサンチンの3種の立体異性体が知られているが、本発明にはそのいずれも用いることができる。
【0016】
本発明においては、特記しない限り、アスタキサンチンは遊離アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含む。さらに、アスタキサンチンのエステルにはモノエステル体および/またはジエステル体を含む。
【0017】
アスタキサンチンは突然変異原性が観察されず、安全性が高い化合物であることから、食品添加物として広く用いられている。
【0018】
本発明の高血圧降下剤には、アスタキサンチンの遊離体、モノエステル体、ジエステル体の少なくとも一種を用いることができる。ジエステル体は2つの水酸基がエステル結合により保護されているため物理的に遊離体やモノエステル体よりも安定性が高く酸化分解されにくい。しかし、生体中に取り込まれると生体内酵素により速やかに遊離アスタキサンチンに加水分解され、効果を示すものと考えられている。
【0019】
アスタキサンチンのモノエステルとしては、低級または高級飽和脂肪酸、あるいは低級または高級不飽和脂肪酸によりエステル化されたエステル類をあげることができる。前記低級または高級飽和脂肪酸、あるいは低級または高級不飽和脂肪酸の具体例としては、酢酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、へブタデカン酸、エライジン酸、リシノール酸、ベトロセリン酸、バクセン酸、エレオステアリン酸、プニシン酸、リカン酸、パリナリン酸、ガドール酸、5−エイコセン酸、5−ドコセン酸、セトール酸、エルシン酸、5,13−ドコサジエン酸、セラコール酸、デセン酸、ステリング酸、ドデセン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エイコサオペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などをあげることができる。また、アスタキサンチンのジエステルとしては前記脂肪酸からなる群から選択される同一または異種の脂肪酸によりエステル化されたジエステル類をあげることができる。
【0020】
さらに、アスタキサンチンのモノエステルとしては、グリシン、アラニンなどのアミノ酸;酢酸、クエン酸などの一価または多価カルボン酸;リン酸、硫酸などの無機酸;グルコシドなどの糖;グリセロ糖脂肪酸、スフィンゴ糖脂肪酸などの糖脂肪酸;グリセロ脂肪酸などの脂肪酸;グリセロリン酸などによりエステル化されたモノエステル類およびこれらの塩を挙げることができる。
【0021】
アスタキサンチンのジエステルとしては、前記低級飽和脂肪酸、高級飽和脂肪酸、低級不飽和脂肪酸、高級不飽和脂肪酸、アミノ酸、一価または多価カルボン酸、無機酸、糖、糖脂肪酸、脂肪酸およびグリセロリン酸からなる群から選択される同一または異種の酸によりエステル化されたジエステル類およびこれらの塩を挙げることができる。
【0022】
グリセロリン酸のジエステルとしては、グリセロリン酸の飽和脂肪酸エステル類、または高級不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸または飽和脂肪酸から選択される脂肪酸類を含有するグリセロリン酸エステル類などを挙げることができる。
【0023】
ACE阻害活性を有するペプチドとは、アンジオテンシンIを血管収縮作用を有するアンジオテンシンIIへと変換させる酵素の活性を阻害するペプチドのことであり、例えば、市販品であるプラレン錠やイワシ、カツオ、マグロ等の魚類由来のペプチド;ゼラチン由来ペプチド、肉由来のペプチド、獣乳由来のペプチド;米(コメ蛋白質)、大豆(大豆蛋白質)、トウモロコシ(α−ゼイン、γ−ゼイン)、小麦(コムギグリアジン)等の穀類由来のペプチド等が挙げられる。中でも獣乳由来のペプチドや魚類由来のペプチドが好ましく、獣乳由来のペプチドがより好ましい。
【0024】
本発明に用いられるペプチドとして限定されるものではないが、獣乳由来のペプチドを例に挙げて説明する。獣乳由来のペプチドとは、カゼインを蛋白質分解酵素のトリプシンで分解して得られる分解物を部分精製して得られる低分子量画分である。かかる低分子量ペプチドは後述の方法で製造される。食品添加物として広く用いられているカゼイン(例えば、牛乳由来のカゼイン、酸カゼイン、カゼイン塩類、レンネット−カゼイン等)を市販のトリプシン、好ましくは純度の高いトリプシンで処理して加水分解する。まず、カゼインを中性またはアルカリ性に調整し、その水溶液を約pH7.5で2〜5時間トリプシンによってカゼインの加水分解を行なう。この加水分解反応は、反応液を、好ましくは約120℃で10分間ほど加熱して酵素を失活させて停止する。反応終了後、不溶画分を遠心または濾過により除去し、その上澄液または濾液を限界濾過膜またはゲル透過クロマトグラフィーリガンドなどで分画して、所望の分子量のペプチドを得る。
【0025】
この分子量ペプチド画分は、分子量が200〜7000のペプチドからなり、好ましくは200〜3000のものであり、より好ましくはオリゴペプチド、特にアミノ酸残基で2〜12のオリゴペプチドである。具体的には、Phe-Phe-Val-Ala-Pro-Phe-Pro-Glu-Val-Phe-Gly-Lys、Ala-Val-Pro-Thy-Pro-Glu-Arg、Thr-Thr-Met-Pro-Leu-Trpなどのペプチドもしくはこれらの酸付加塩からなる群より選択される1種もしくは2種以上の混合物が挙げられる。
【0026】
上記べプチドは、特公昭60−23085号公報、特公昭61−51562号公報、特公昭61−51564号公報、特公平5−21092号公報、特公昭60−23087号公報等に記載の公知方法により得ることができる。
【0027】
本発明の高血圧降下剤は、高血圧症状を改善・抑制・予防することに有用である。また、高血圧症状を改善・抑制・予防することにより、これらが原因であると言われている疾患、例えば、動脈硬化、虚血性心疾患、脳卒中、脳血管性痴呆症、肺水腫を伴った心不全、腎不全、糖尿病の合併症である神経障害、網膜障害、腎症の治療・改善・予防効果も有している。
【0028】
これらの治療剤及び予防剤は、ヒト以外の動物、例えば、牛、馬、豚、羊等の家畜用哺乳類或いは小型哺乳類等のペット類にも用いることができる。
【0029】
本発明のアスタキサンチンとペプチド含有組成物における、アスタキサンチンとペプチドの割合は用いられるアスタキサンチンやペプチドの種類によっても異なるが、通常、アスタキサンチン100重量部に対してペプチドは1〜2000重量部、好ましくは10〜1000重量部、さらに好ましくは20〜500重量部である。
【0030】
本発明のアスタキサンチンとACE阻害活性を有するペプチドを有効成分とする高血圧降下剤は、常法により、例えば、錠剤、舌下錠、丸剤、坐剤、散剤、粉剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、注射剤、乳剤、貼付剤などの形態に製剤化することができる。例えば、錠剤は薬理的に受容しうる担体と均一に混合して打錠することにより、また、散剤、粉剤、顆粒剤は薬剤と担体とを乾式造粒または湿式造粒して製造することができ、湿式造粒としては、常法により、例えば、噴霧乾燥法、流動層造粒法、混練造粒法又は凍結乾燥法などにより乾燥することにより製造できる。
【0031】
散剤、粉剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤はラクトース、グルコース、スクロース、マンニトール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ハイドロタルサイト、無水リン水素酸カルシウムなどの賦形剤、でんぷん、アルギン酸ソーダなどの崩壊剤、マグネシウムステアレート、タルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの表面活性剤、グリセリンなどの可塑剤などを用いて製造できる。
【0032】
本発明の製剤組成物には必要ならばさらに他の抗酸化剤を添加してもよい。抗酸化剤は特に限定されるものでなく、抗酸化作用を有するものであれば適用可能である。例えば、レチノール、3,4−ジデヒドロレチノールなどのビタミンA類、ビタミンB、D−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸などのビタミンC類、トコフェロール、トコトリエノール、酢酸ビタミンE、コハク酸ビタミンEなどのビタミンE類、リン酸ビタミンE類、コエンザイムQ、フラボノイド、タンニン、エラグ酸、ポリフェノール類、ラジカル阻止剤、ヒドロペルオキシド分解剤、金属キレート剤、活性酸素除去剤、α−カロチン、β−カロチン、γ−カロチン、及びδ−カロチンを含むカロチン類、トコキノン、及びこれらの薬学的に許容できる塩、並びにそれらの混合物からなる群から1種または2種以上選択することができる。
【0033】
注射剤は、有効成分を必要に応じてpH調製剤、緩衝剤、溶解剤、懸濁剤等、張化剤、安定化剤、防腐剤などの存在下、常法により製剤化することができる。
【0034】
懸濁剤としては、例えば、ポリソルベート80、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、アラビアガム、粉末トラガントなどを挙げることができる。溶解剤としては、例えば、ポリソルベート80、水添ポリオキシエチレンヒマシ油、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マクロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステルなどを挙げることができる。安定化剤としては、例えば亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウムなどを挙げることができる。防腐剤としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、クレゾールなどを挙げることができる。
【0035】
また、必要に応じて、常法により口腔内速崩壊剤とすることができる。ペプチド由来の苦みを抑制するため、アスタキサンチンおよび/またはペプチドをヒドロキシルメチルセルロース等で被覆することや、消化管内での放出を制御するためにシュラックを用いて放出制御処理を行うことができる。
【0036】
本発明の組成物におけるアスタキサンチンとACE阻害活性を有するペプチドの合計量は0.01〜99.9重量%、好ましくは1〜90重量%の量で含有させることができる。
【0037】
本発明の組成物におけるアスタキサンチンとペプチドの合計の投与量は、病気の種類、患者の年齢、性別、体重、症状の程度、又は投与方法などにより異なり、特に制限はないが、通常成人1人当り0.1〜500mg程度、好ましくは1〜300mg程度を、1日1〜4回程度にわけて、経口的に又は非経口的に投与する。
【0038】
本発明は、アスタキサンチンおよびペプチドを配合してなる、高血圧降下作用を有する飲食物を包含する。
【0039】
配合される飲食物の例としては、マーガリン、バター、バターソース、チーズ、生クリーム、ショートニング、ラード、アイスクリーム、ヨーグルト、乳製品、ソース肉製品、魚製品、フライドポテト、ポテトチップス、ポップコーン、ふりかけ、チューインガム、チョコレート、プリン、ゼリー、グミキャンディー、キャンディー、ドロップ、キャラメル、カステラ、ケーキ、ドーナッツ、ビスケット、クッキー、クラッカーなど、マカロニ、パスタ、サラダ油、インスタントスープ、ドレッシング、卵、マヨネーズ、みそなど、または果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料などの炭酸系飲料または非炭酸系飲料など、茶、コーヒー、ココアなどの非アルコールまたはリキュール、薬用酒などのアルコール飲料などの一般食品への添加例を挙げることができる。
【0040】
本発明の飲食物は、アスタキサンチンとACE阻害活性を有するペプチドを一般食品の原料と共に配合し、常法に従って加工製造することにより製造される。アスタキサンチンとACE阻害活性を有するペプチドの配合量は食品の形態などにより異なり特に限定されるものではないが、一般には1日あたり、通常成人1人当り1〜500mg程度、好ましくは10〜300mg程度を摂取できるように配合する。
【0041】
本発明の飲食物を栄養補助食品あるいは機能性食品として用いる場合、その形態は、上記医薬用製剤と同様の形態であってもよい。乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミン蛋白質など、または、これらの分解物である卵白オリゴペプチド、大豆加水分解物、アミノ酸単体の混合物を併用することもできる。また、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料などを配合した自然流動食、半消化態栄養食および栄養食、ドリンク剤、カプセル剤、経腸栄養剤などの加工物を挙げることができる。ドリンク形態で提供する場合は、栄養バランス、摂取時の風味を良くするためにアミノ酸、ビタミン類、ミネラル類などの栄養的添加物、甘味料、香辛料、香料および色素などを配合してもよい。本発明の食品の形態は、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
本発明をさらに詳細に説明にするために以下に実施例をあげるが、本発明はこの実施例のみに限定されないことはいうまでもない。実施例中のアスタキサンチンは「アスタリールオイル50F」〔商品名、富士化学工業(株)製〕であり、アスタキサンチン遊離体換算で5重量%のアスタキサンチン脂肪酸エステルとトリグリセリドからなるオイルであり、ペプチドは「CE90ACE」〔カネボウ(株)製〕であり、ドデカペプチド(Phe-Phe-Val-Ala-Pro-Phe-Pro-Glu-Val-Phe-Gly-Lys)を5.0重量%含有するものである。
<実験動物> 生後7週齢の雄性の脳卒中易発症性高血圧ラット(SHR−SP)(日本エスエルシー(株))を購入し、恒温(25±1℃)、恒湿(55±5%)、12時間の明暗周期の実験動物飼育室で約1週間飼育した後、実験に使用した。水および飼料は自由摂取させた。実験では、各群とも1群3〜5匹を使用した。
<血圧の測定> ラットは実験開始2週間前から装置に慣らし、血圧測定を行った。血圧(最高、最低、及び平均血圧)は、ラットを無麻酔下に軽度に拘束し、尾動脈に赤外線センサーを内蔵するカフ(THC−1;ソフトロン社製)をあて、容積脈波振動法により測定した。血圧測定は投与後6時間及び24時間に行った。
<薬物処置> アスタキサンチンとして「アスタリールオイル50F」をオリーブ油に10mg:1mlの割合で希釈したものと、ペプチドとして「CE90ACE」を蒸留水に50mg:1mlの割合で懸濁したものを1日1回経口投与した。
【0043】
以下に掲げる表1〜6中、コントロールは水1ml/kgとオリーブオイル1ml/kgをそれぞれ投与(つまり、水1ml/kgを飲ませた直後にオリーブオイル1ml/kgを飲ませたことを言う)。ペプチドはペプチド50mg/kg(ドデカペプチドで2.5mg/kgに相当)単独投与、アスタキサンチンはアスタキサンチン10mg/kg(アスタキサンチン遊離体換算で0.5mg/kgに相当)単独投与、ペプチド+アスタキサンチンは組み合わせて投与(つまり、ペプチドを飲ませた直後にアスタキサンチンを飲ませたことを言う)していることを示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
表1、表2、表3にはそれぞれ投与6時間後の心収縮時、心拡張時、それらの平均の血圧を測定した結果を示す。投与6時間後の各種血圧は、アスタキサンチン、ペプチドの単独投与群ではコントロール群と比べて最初の1週間は有意な高血圧降下作用があったが、2週以降は有意な変化は見られなかった。これに対して、アスタキサンチンとペプチドを組み合わせて投与した群では、2週以降でも有意な高血圧降下作用が見られた。
【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

【0050】
【表6】

【0051】
表4、表5、表6には投与24時間後の心収縮時、心拡張時、それらの平均の血圧を測定した結果を示す。投与24時間後の各種血圧は、コントロール群とアスタキサンチン単独投与群、ペプチドの単独投与群との間では差がなく高血圧降下作用は全く見られなかった。これに対して、アスタキサンチンとペプチドを組み合わせて投与した群では、高血圧降下作用に有意な効果が見られた。
【0052】
投与6時間後、投与24時間後の平均の血圧測定値をそれぞれプロットして図示した図1及び図2から、アスタキサンチンとペプチドの組み合わせによる効果が明瞭に認められる。
【0053】
[処方例1]錠剤組成物
下記成分を下記組成比(重量%)でエチルアルコールを添加して造粒した後圧縮成型し250mgの錠剤とした。尚、「アスタリールパウダー」〔商品名、富士化学工業(株)製〕は遊離のアスタキサンチンを1%含有する粉末である。
「アスタリールパウダー」 5
「CE90ACE」 45
マルチトール 49.2
クエン酸 0.3
ショ糖脂肪酸エステル 0.5
計 100%
【0054】
[処方例2]カプセル組成物
下記成分からなるソフトカプセル剤皮の中にヘマトコッカス抽出オイル(アスタキサンチンを5重量%含有)、カゼインペプチド20重量%を常法により充填し、1粒200mgのソフトカプセルを得た。
ゼラチン 60%
グリセリン 20%
パラオキシ安息香酸プロピル 0.5%
水 適量
計 100%
【0055】
[処方例3]ドリンク剤
下記成分を配合し、常法に従って、水を加えてドリンク剤を調製した。
アスタキサンチン 5g
カゼインペプチド 50g
液糖 4kg
DL−酒石酸ナトリウム 1g
クエン酸 50g
ビタミンC 50g
ビタミンE 150g
シクロデキストリン 25g
塩化カリウム 5g
硫酸マグネシウム 2g
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】投与6時間後の平均の血圧測定値を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アスタキサンチンと(b)アンジオテンシン変換酵素阻害活性を有するペプチドを有効成分として含有することを特徴とする高血圧降下剤。
【請求項2】
該ペプチドが、獣乳にタンパク質分解酵素を作用させて得られるペプチドであって、その分子量が3000以下である請求項1記載の高血圧降下剤。
【請求項3】
該ペプチドが(1)Phe-Phe-Val-Ala-Pro-Phe-Pro-Glu-Val-Phe-Gly-Lys、(2)Ala-Val-Pro-Thy-Pro-Glu-Argおよび(3)Thr-Thr-Met-Pro-Leu-Trpのうちの少なくとも1種である請求項1記載の高血圧降下剤。
【請求項4】
(a)アスタキサンチンと(b)アンジオテンシン変換酵素阻害活性を有するペプチドを含有することを特徴とする高血圧降下作用を有する食品。

【図2】投与24時間後の平均の血圧測定値を示す図である。
【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−63021(P2006−63021A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247858(P2004−247858)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(390011877)富士化学工業株式会社 (53)
【出願人】(399093582)中央薬品株式会社 (1)
【出願人】(000236920)富山県 (197)
【出願人】(304026984)国立大学法人富山医科薬科大学 (2)
【Fターム(参考)】