説明

高表面積及び高活性の安定なシリカゾルの調製方法

【課題】製紙へ適用するのに有用であり、700m/g以上の表面積及び、20乃至50のS‐値を有する安定な水性コロイド状シリカの調製方法を提供する。
【解決手段】水と、SiO2とアルカリ金属酸化物のモル比が15:1乃至1:1の範囲にあり且つpHが10以上の珪酸アルカリ金属塩と、酸を含有し、珪酸アルカリ金属塩と前記酸との重量比が63以上となる割合で存在する開始組成物を調製すると共に、当該開始組成物の温度を32℃(90°F)未満に維持し、それにSiO2量が4.0乃至8.5重量%で且つ温度の調整された水性の珪酸組成物を、量を調整しながら添加する。必要に応じて前記安定なコロイド状シリカのSiO2を基準とする固形分が7重量%乃至20重量%になるまで前記組成物から水を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、高い表面積及び改善された安定性を有するコロイド状シリカゾルに関する。また本発明は、そのようなコロイド状シリカゾルを製造する方法、及び、そのようなコロイド状シリカゾルの紙製造での利用にも関する。本発明のコロイド状シリカゾルは、この高い表面積での安定性を、例えばアルミニウム等で表面改質されていなくても発揮し、独特である。また、本発明のコロイド状シリカゾルは、そのような改善された安定性を比較的高い固形分量で発揮する。さらに、本発明のコロイド状シリカゾルは、抄紙工程において優れた活性をアルカリ性の紙料中のみならず酸性の紙料中でも発揮し、有利である。本発明のコロイド状シリカゾルは、製紙工業における他の領域でも、例えば保持や脱水の促進剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、高い表面積を有するコロイド状シリカ微粒子、例えば700m/gより大きい表面積及び20乃至40のS−値を有するものが記述されており、抄紙に有用である。これらの特許は、表面積ひいては製造物を安定化するために、コロイド状シリカ粒子をアルミニウムで表面処理する必要性を教示している。また特許文献3も、700m/g未満の表面積及び20乃至40のS−値を有するものが記述されており、紙の製造に用いることができる。この特許は、製紙へ適用するのに有用な安定性コロイド状シリカ製品をアルミニウム表面処理を行わないで得るためには、700m/g未満の表面積とする必要があることを明らかに教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,643,414号
【特許文献2】米国特許第5,368,833号
【特許文献3】米国特許第6,603,805号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対して本発明は、製紙へ適用するのに有用であり、20乃至50のS−値を有し、700m/gより大きい表面積を有する安定なコロイド状シリカの調製方法を提供する。上記特許による教示に反し、本発明は、表面にアルミニウムを添加しないで安定なままでいられるコロイド状シリカの調製方法を提供するものであり、有利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要約
本発明は、700m/gより大きい、好ましくは750m/gより大きい、最も好ましくは800m/gより大きい表面積を有し、20乃至50、好ましくは20乃至40のS−値を有する、安定なコロイド状シリカに関する。本発明のコロイド状シリカは、安定性を得るためにアルミニウムのような表面処理剤による表面処理を必要としない。
【0006】
本文において安定なコロイド状シリカとは、濃縮品を室温で30日以上、好ましくは60日以上の期間熟成させた時でも、その表面積が700m/gより大きく、且つ、そのS−値が20乃至50の範囲にあり続けるものと定義される。本発明のコロイド状シリカ水性ゾルは、SiO固形分が7重量%を超える濃度に製造し、保存することが可能であり、SiO固形分が15重量%またはさらに高濃度とすることも可能であり、従来のシリカ水性ゾルと比較すると室温で30日間以上、代表的には60日間以上安定であり続ける。さらに、本発明のコロイド状シリカゾルは抄紙工程等で用いる際に、従来のコロイド状シリカゾルよりも有利な改善された性能を示す。例えば、シリカのみで作製される本発明のコロイド状シリカゾルは、高い活性をアルカリ性の紙料中で示すだけでなく、意外にも抄紙工程において酸性の紙料中でも示した。
【0007】
本発明は、20乃至50のS−値を有し、700m/gより大きい表面積を有する本発明のコロイド状シリカの調製方法を提供する。一つの方法は、(a)水と、SiOとアルカリ金属酸化物のモル比が15:1乃至1:1の範囲にあり且つpHが10以上の珪酸アルカリ金属塩と、酸(及び/又は、当該酸に対応する塩)を含有し、当初は珪酸アルカリ金属塩と酸とが重量比で63:1以上の割合で存在する開始組成物(又はヒール)を調製すると共に、当該開始組成物の温度を38℃(100°F)未満、好ましくは29℃(85°F)未満、代表的には16乃至29℃(60乃至85°F)の範囲に維持し;(b)開始組成物に、代表的にはSiO量が5.0乃至7.2重量%、好ましくは6.0乃至6.8重量%で且つ温度を38℃(100°F)未満、代表的には約16乃至29℃(60乃至85°F)の範囲に維持した水性の珪酸組成物を、ゆっくりと連続的に、当該珪酸組成物の2分の1から4分の3まで添加し;(c)その後、前記組成物をゆっくりと昇温、例えば、約10乃至35分間かけて46乃至52℃(115乃至125°F)に昇温し、その温度を珪酸組成物の添加が完了するまで維持し;(d)必要に応じて、その組成物の温度を52℃(125°F)未満、代表的には46乃至52℃(115乃至125°F)で1時間維持し;(e)その後、加熱を停止し、得られた組成物から必要に応じて水を、前記安定なコロイド状シリカのSiOを基準とする固形分が7重量%乃至20重量%、代表的には11重量%以上になるまで除去する。
また、本発明の水性コロイド状シリカゾルを調製するための、もう一つの方法は、珪酸アルカリ金属塩の反応を開始させるために陽イオン交換樹脂の使用を必須とする(後述する実施例を参照)。その反応は、コロイド状シリカを製造するための重合の最中に珪酸アルカリ金属塩を陽イオン交換樹脂に対して添加する速度(例えば、0乃至30分、代表的には15分未満)、及び、添加する割合によって調節される。珪酸アルカリ金属塩中のアルカリ金属イオンに対する陽イオン交換樹脂中の水素イオンのモル比は、40乃至100%、好ましくは50乃至100%の範囲とされる。本発明の、このもう一つの態様でコロイド状シリカを形成する際の温度は、一般的に10乃至38℃(50乃至100°F)、好ましくは21乃至32℃(70乃至90°F)の範囲とされる。本発明の方法のこの態様において、コロイド状シリカ製造物の熱処理(すなわち後処理)は任意である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の詳細な説明
本発明は、シアーズ法(Sears Method)(Anal. Chem., 28, 1981(1956)を参照)による表面積が700m/gより大きく、好ましくは750m/gより大きく、最も好ましくは800m/gより大きく、S−値(Iler and Dalton, J. Phys. Chem., 60, 955(1956)を参照)が50未満、好ましくは20乃至50、最も好ましくは20乃至40であり、固形分重量%が7乃至20%シリカ(すなわちSiO)であるコロイド状シリカの生産方法を提供する。
【0009】
一つの方法は、開始組成物(ヒール)の調製と、それに引き続き行われる所定時間をかけての活性シリカ源(通常は珪酸又はポリ珪酸の形である)の添加からなる。活性シリカを添加する最中、反応温度は、所定の反応温度プロファイルの範囲内で調節される。一度、所定量の活性シリカを添加すれば、その混合物は濃縮させることができる。濃縮工程は様々な方法により行うことができる。そのような方法は、蒸発及び/又は、限外濾過や精密濾過のような膜分離手法を含んでいても良いが、これらに限定される訳ではない。水は、最終製造物がSiOを7乃至20重量%含有するようになるまで除去される。
【0010】
上記方法において、開始ヒールは、所定の割合の水、多数の市販されている珪酸塩又はアルカリ水ガラスのうちのいずれか、及び、酸及び/又は当該酸に対応する塩からなる。添加の順序は重要ではないが、生産を容易にするためには珪酸塩を添加するに先立って、希釈水に対して酸を添加すべきであることを見出した。アルカリ水ガラス又は珪酸塩は、従来の如何なる材料であってもよい。これらは一般的にはカリウム塩又はナトリウム塩である。SiOとNaO又はKOのモル比は15:1乃至1:1の範囲とすることができ、好ましくは2.5:1乃至3.9:1の範囲内とする。このような水ガラス溶液は、代表的にはpH10より大きく、特に約pH11となる。
【0011】
上記方法で用いられる酸は、如何なる有機又は無機酸であってもよい。そのような酸の具体例としては、塩酸や、燐酸や、硫酸や、二酸化炭素のような材料などの鉱酸があるが、これらに限定される訳ではない。有機酸には、酢酸、蟻酸、プロピオン酸等が含まれるが、これらに限定される訳ではない。好適な塩の具体例としては、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、燐酸三ナトリウム、及び、燐酸一水素ナトリウム等がある。
【0012】
一度、上記方法によりヒールを調製したら、組成物の温度を85°F(約29℃)以下、代表的には80°F(約27℃)以下、そして通常であれば60乃至85°F(約16乃至約29℃)の範囲に下げる。この点につき珪酸又はポリ珪酸は、組成物に対してゆっくりと、例えば、全所要時間を約4時間かけて添加する。本発明に好適な珪酸は、上記したアルカリ水ガラスの希釈溶液を陽イオン交換するなどの従来公知の方法により調製することができる。代表的には、希釈溶液はSiOを基準とする固形分を3乃至9重量%含有し、特に5.0乃至7.2重量%、好ましくは6.0乃至6.8重量%含有する。代表的な市販の調製品は米国特許第3,582,502号及び第2,244,335号に概説されており、それらの開示事項は参照されて本文の一部をなす。珪酸アルカリ金属塩と酸の重量比は変更可能であり、代表的にはその比を63:1以上にする。珪酸又はポリ珪酸の約2分の1乃至4分の3までは、組成物をかき混ぜながら、ゆっくりと且つ連続的に組成物中に添加され、その間は組成物の温度を85°F(約29℃)未満、代表的には約60乃至85°F(約16乃至約29℃)に維持し続ける。その後、組成物の温度をゆっくりと昇温、例えば、10乃至35分間かけて115乃至125°F(約46乃至約52℃)まで昇温し、この温度範囲を珪酸又はポリ珪酸の残部を組成物に対して添加しきるまで保持する。その後必要に応じて、組成物の温度を125°F(約52℃)未満、代表的には115乃至125°F(約46乃至約52℃)に約1時間維持する。もし必要であれば、その後で公知の手順により、組成物の固形分量が7重量%以上、代表的には11重量%以上になるまで組成物から水を除去することができる。
【0013】
本発明の水性シリカゾルを調製するためのもう一つの方法を以下に述べる。この方法は、珪酸アルカリ金属塩の反応(後述する実施例を参照)を開始してコロイド状シリカを製造するために、陽イオン交換樹脂、好ましくは弱酸性陽イオン交換樹脂の使用を必須とする。この反応は、コロイド状シリカを製造するための重合の最中に珪酸アルカリ金属塩を陽イオン交換樹脂に対して添加する速度、及び、添加する割合によって調節される。コロイド状シリカ製造物の熱処理は、本発明の方法のこの態様においては任意である。
【0014】
本発明の安定なコロイド状シリカゾルを調製するためのこのもう一つの方法は、(a)反応槽に、水素型でのイオン交換容量が40%以上、好ましくは50%以上である陽イオン交換樹脂を充填し、当該反応槽はプロセス途中に形成されたコロイド状シリカを前記イオン交換樹脂から分離する手段、例えば、反応槽の底部付近に設けられたスクリーンからなる手段を有し;(b)前記反応槽に、SiO2とアルカリ金属酸化物のモル比が15:1乃至1:1の範囲にあり且つpHが10.0より大きく、好ましくは11以上の水性珪酸アルカリ金属塩を充填し(本質的には一度に全部を充填する);(c)前記反応槽の内容物を、当該内容物のpHが8.5乃至11.0、好ましくは9.2乃至10.0の範囲になるまで攪拌し;(d)前記珪酸アルカリ金属塩を追加して、前記反応槽の内容物のpHを10.0以上、好ましくは10.4乃至10.7の範囲に調整し;(e)生成したコロイド状シリカを、前記イオン交換樹脂から分離して、前記反応槽から取り出す。工程(d)におけるpHの調整は、反応槽内で行っても良いし、得られたコロイド状シリカを反応槽から除去した後で行っても良い。このpH調整は代表的には、工程(e)が終了した時から10分乃至3時間以内に行われる。
【0015】
本発明のコロイド状シリカ組成物は、従来公知の組成物と比較して、抄紙工程における排水及び保持の促進効果が、20乃至40%も大きいことが認められた。さらに本発明の組成物は、従来公知の組成物では活性を示さない領域、それは主に抄紙工程に用いられる酸性の紙料(完成紙料)中で、意外にも活性を発揮した。本発明のコロイド状シリカ組成物にとって好適な用途は、製紙工程における排水及び保持の促進であるが、本発明の組成物は他の目的、例えばビール、ワイン、ジュース、砂糖精製への使用;原料水及び排水の生成を含む水精製への使用;触媒の支持体としての使用;コーティング組成物の構成成分としての使用;プラスチックのためのコーティング成分;耐摩耗性コーティング成分;インベストメント鋳造法への使用;セラミック炉素材の構成成分としての使用;及び、耐火材料への使用等にも利用可能である。
【0016】
従って本発明は、紙製造を改良する方法をさらに包含しており、かかる方法は、本発明のコロイド状シリカをペーパーミル紙料に対して、スラリー又は紙料中の繊維の乾燥重量を基準として約0.00005乃至約1.25重量%添加する工程を有するものである。もう一つの態様においては、コロイド状シリカの添加前又は添加後に、非イオン性、カチオン性又はアニオン性の高分子フロック剤を、紙料中の繊維の乾燥重量を基準として約0.001乃至約0.5重量%の量で、紙料中に添加しても良い。また或いは、合成高分子フロック剤の代わりに又はこれに付加して、カチオン性澱粉を、紙料中の繊維の乾燥重量を基準として約0.005乃至約5.0重量%の量で、紙料中に添加しても良い。さらに好ましくは澱粉を、紙料中の繊維の乾燥重量を基準として約0.05乃至約1.5重量%の量で添加する。さらに別の態様においては、高分子フロック剤及び/又は澱粉の代わりに又はこれに付加して、凝集剤を、紙料中の繊維の乾燥重量を基準として約0.005乃至約1.25重量%の量で、抄紙紙料中に添加しても良い。好ましくは凝集剤を、紙料中の繊維の乾燥重量を基準として約0.025乃至約0.5重量%の量で添加する。
【0017】
また本発明は、抄紙機上の抄紙紙料の保持及び排水を増加させるための方法にも関し、この方法は、抄紙紙料に対して本発明のコロイド状シリカを、紙料中の繊維の乾燥重量を基準として約0.00005乃至約1.25重量%添加する工程を有するものである。コロイド状シリカは、非イオン性、カチオン性又はアニオン性の高分子フロック剤と一緒に抄紙紙料中に添加しても良い。高分子フロック剤は、コロイド状シリカよりも前に又は後で、紙料中の繊維の乾燥重量を基準として約0.001乃至約0.5重量%添加しても良い。また或いは、紙料に対して澱粉を、高分子フロック剤の代わりに又はこれに付加して、紙料中の繊維の乾燥重量を基準として約0.005乃至約5.0重量%添加しても良い。澱粉を使用する場合には、カチオン性澱粉が好ましい。その使用時には、澱粉を紙料中の繊維の乾燥重量を基準として約0.05乃至約1.25重量%添加するのが好ましい。さらに他の態様においては、高分子フロック剤及び/又は澱粉の代わりに又はこれに付加して、凝集剤を、紙料中の繊維の乾燥重量を基準として約0.005乃至約1.25重量%の量で、抄紙紙料中に添加しても良い。好ましくは凝集剤を、紙料中の繊維の乾燥重量を基準として約0.025乃至約0.5重量%の量で添加する。
【0018】
上記いずれの態様においても、高分子フロック剤の使用量は紙料中の繊維の乾燥重量を基準として0.005乃至約0.2とするのが好ましい。コロイド状シリカの使用量は、紙料中の繊維の乾燥重量を基準として約0.005乃至約0.25重量%とするのが好ましく、紙料中の繊維の約0.005乃至約0.15重量%とするのが最も好ましい。
【0019】
本発明は広範囲の紙のグレード及び紙料に適用可能なので、上記したパーセンテージは変更される場合があることが指摘される。本発明からかけ離れずに上記パーセンテージから変更し得ることは、本発明の精神及び意図の範囲内であり、これらのパーセンテージの値は当業者に対して指標を示しただけのものである。
【0020】
上記いずれの態様においても、ベントナイト、タルク、合成クレイ、ヘクトライト、カオリン、又は、それら混合物を、シート形成に先立って抄紙システムのいずれかの段階で添加することができる。好ましい添加時点としては、白水(white water)で希釈する前の高濃度の紙料パルプの時点である。これを使用することによって抄紙作業の清浄度が向上し、用いない場合には生産性と紙の品質の両方に影響を与える疎水性の沈着物が認められた。
【0021】
また上記いずれの態様も、上質紙(本文中で用いられる場合には再生繊維系材料と同様にバージン繊維系材料も含まれる)、厚紙(本文中で用いられる場合にはバージン繊維系材料と同様に、再生繊維系テストライナ及びダンボール材も含まれる)、新聞用紙(本文中で用いられる場合にはバージン繊維系及び再生繊維系材料と同様に雑誌紙料も含まれる)、又は、その他のセルロース系材料よりなる群から選ばれる抄紙紙料に適用できる。これらの紙料には、木材含有、木材非含有、未使用、脱色再生、未脱色再生の、及び、それらの混合物からなる紙料が包含される。
【0022】
紙及び厚紙は、一般的に水性媒体中にセルロース系材料の紙料を懸濁させた懸濁体から作製されるが、この紙料は、1又はそれ以上のせん断工程(このような工程は一般的に洗浄工程である)にかけられ、混合工程及びポンピング工程にかけられ、その後、縣濁体を脱水してシートを形成する。それからこのシートは、所望の(そして一般的には低い)水濃度に乾燥される。本発明のコロイド状シリカは、せん断工程前の又は後の紙料に添加して良い。
【0023】
上記したような保持及び排水の促進への利用の他に、本発明のコロイド状シリカは、標準的なカチオン性湿潤強力樹脂と共に用いても良く、処理されたセルロースシートの湿潤強さを向上させる。コロイド状シリカは、このような方法で用いられる時には、抄紙機上に湿潤強力樹脂を含有する紙料を置く前に、当該紙料に対して予め添加される。コロイド状シリカは一般的に、上掲したレベルで使用される。
【0024】
本発明のコロイド状シリカは、抄紙工程における合成高分子フロック剤、保持促進剤及び、澱粉の性能を著しく向上させることが見出された。さらにコロイド状シリカは、水の予備処理のような固体/液体分離工程や、排水処理への適用において、添加剤としての用途を有すると考えられる。本発明のコロイド状シリカは、新聞用紙や上質紙や厚紙やその他のグレードの紙において排水と保持を向上させることに加えて、抄紙におけるピッチや粘着性の制御、ドライラップパルプの製造におけるパルプ脱水、パルプ及びペーパーミルにおける節約及び清浄剤用途、水の清澄化、溶解した空気の脱気、汚泥の脱水などの用途も見出し得る。本発明の組成物は、固体/液体分離やエマルジョンの破壊にも用途を見出し得る。そのような適用の具体例には、都市排水の汚泥の脱水、水系無機スラリーの清澄化と脱水、精製装置のエマルジョンの破壊等がある。本発明のコロイド状シリカゾルを合成ポリマー及び/又は澱粉と組み合わせて用いることにより見られる性能向上には、保持の向上、排水の改善、及び、固体/液体分離の向上などがあり、また、しばしばポリマーや澱粉の使用量削減も認められ、所望の効果を達成できる。
【0025】
微粒子保持プログラムは、元々は形成されていたのに、せん断によって破壊されたフロックの回復に基づいている。このような応用において、フロック剤は少なくとも一つの高せん断ポイントの前に添加され、その後、ヘッドボックスの直前に微粒子が添加される。代表的には、フロック剤は加圧スクリーンの前で添加され、引き続き、そのスクリーンの後で微粒子が添加される。しかしながら、この方法の順序を逆にした方が良いと考えられた。微粒子の添加により形成された第二フロックは、シート形成に悪影響を与えること無く、保持と排水が増大した。このことによりシート中のフィラー量を増大させることができ、シートの2面性(two-sidedness)を阻止し、紙生産における排水と抄紙機のスピードを増大させる。
【0026】
僅かに過量の高分子フロック剤及び/又は凝集剤の使用は、その後に行うせん断でポリマーを充分に含有又は担持した微小フロックを形成して、その表面の少なくとも一部を正荷電させることを確実にするために必要だと考えられるが、全ての紙料を正荷電させる必要はない。そして、ポリマーの添加後、及び、せん断ステージ後における紙料のゼータ電位は、カチオン性でもアニオン性でも良い。
【0027】
せん断は、他の目的のために使用される機器内の装置、例えばミキシングポンプ、ファンポンプ、セントリスクリーン(centriscreen)により行われても良く、又は、せん断ミキサーやせん断を目的とする他のせん断ステージを装置内に挿入しても良く、好ましくは高度のせん断をポリマー添加の後に行う。
【0028】
本発明の応用において使用されるフロック剤は、高分子量の水溶性又は水分散性ポリマーであり、カチオン性又はアニオン性の電荷を有していても良い。非イオン性の高分子量ポリマーを用いても良い。これらのポリマーは、抄紙系に完全に溶解するものであっても良いし、また或いは、容易に分散するものであっても良い。それらは、もしも問題の多い所謂「銀点」(フィッシュアイ)すなわち、仕上がった紙の上に未溶解ポリマーの塊が形成されないのであれば、分岐の又は架橋性の構造を持っていても良い。これらのタイプに属するポリマーは、様々な市販されている原料から容易に入手できる。それらは、乾燥した固体、水溶液、水に添加した時に含有されているポリマーを素早く溶解させることができるwater-in-oil型エマルジョンとして、又は、水溶性の分散媒や食塩水に分散可能なポリマーとして入手できる。ここで用いられる高分子量フロックの形は、紙料に溶解又は分散できるポリマーでさえあれば特定のものに限られないと考えられる。
【0029】
上述したようにポリマーは、カチオン性であっても、アニオン性であっても、非イオン性であっても良い。ここにおいて有用なカチオン性ポリマーのフロック剤は、一般的に高分子のビニル系付加重合体であり、カチオン性官能基を組み込んだものである。これらのポリマーは、一般的に水溶性のカチオン性ビニルモノマーのホモポリマーであるか、又は、水溶性のカチオン性ビニルモノマーと、アクリルアミドやメタクリルアミドのような非イオン性モノマーとの共重合ポリマーであっても良い。ポリマーは、ただ一種のカチオン性ビニルモノマーを含有していても良いし、1種より多いカチオン性ビニルモノマーを含有していても良い。或いは、重合後にポリアクリルアミドのような一定のポリマーを、マンニッヒ反応により変性又は誘導体化することにより、本発明に有用なカチオン性ビニルポリマーを製造しても良い。ポリマーは、1モル%程度の少量のカチオン性モノマー乃至100モル%のカチオン性モノマーから調製されたものでも良いし、重合後に変性したポリマー上のカチオン性に変性された官能基から調製されたものでも良い。最も頻用されるカチオン性フロック剤は、5モル%以上のカチオン性ビニルモノマー又は官能基を有するものであろう。そして最も好ましくは、10重量%以上のカチオン性ビニルモノマー又は官能基を有するものであろう。
【0030】
本発明に好適なカチオン性に荷電されたビニル系付加共重合ポリマー及びホモポリマーを製造するのに用い得る好適なカチオン性ビニルモノマーは、この分野の当業者に良く知られているであろう。これらの材料には、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEM)、ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、ジエチルアミノエチルアクリレート(DEAEA)、ジエチルアミノエチルメタクリレート(DEAEM)、又は、ジメチル硫酸又は塩化メチルを用いて形成したそれらの四級アンモニウム体、マンニッヒ反応で変性させたポリアクリルアミド、ジアリルシクロヘキシルアミン塩酸(DACHA HCl)、ジアリルジメチルアンモニウム塩酸(DADMAC)、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩酸(MAPTAC)、及び、アリルアミン(ALA)が包含される。またカチオン化澱粉も、ここにおいてフロック剤として用いてよい。選択されるフロック剤は、上記したものの混合物であっても良いし、又は、上記したものとカチオン性澱粉の混合物であっても良い。カチオン性ポリマー系保持プログラムの当業者は、特定のポリマーの選択が紙料、フィラー、グレード、及び水質に依存することを容易に認識するであろう。
【0031】
本発明において有用な高分子量のアニオン性フロック剤は、好ましくは水溶性又は水分散性の、アニオン性電荷を有するモノマーを1モル%以上含有するビニル系ポリマーである。従って、これらのポリマーは、水溶性のアニオン性荷電ビニルモノマーのホモポリマーであっても良いし、又は、これらのモノマーと、例えばアクリルアミドやメタクリルアミドのような非イオン性モノマーとの共重合ポリマーであっても良い。好適なアニオン性
モノマーの具体例には、アクリル酸、メタクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホネート(AMPS)及び、それらの混合物が包含され、同様に、それらに対応する水溶性又は水分散性のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩が包含される。本発明に有用なアニオン性の高分子量ポリマーは、アクリルアミドポリマーの加水分解物であっても良いし、又は、アクリルアミド又はその同族体(メタクリルアミド等)と、アクリル酸又はその同族体(メタクリル酸等)との、又は、マレイン酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸又は他のスルホネート含有モノマーのようなビニルモノマーのポリマーとの共重合ポリマーの加水分解物であっても良い。アニオン性ポリマーは、スルホネート又はホスホネート官能基を有していても良く、ポリアクリルアミドやポリメタクリルアミドのポリマー又は共重合ポリマーを誘導体化することで調製しても良い。最も好適な高分子量のアニオン性フロック剤は、アクリル酸/アクリルアミド共重合体、及び、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホネート、アクリルアミドメタンスルホネート、アクリルアミドエタンスルホネート及び、2−ヒドロキシ−3−アクリルアミドプロパンスルホネート等のモノマーと、アクリルアミド又は他の非イオン性ビニルモノマーとの重合によって調製されるようなスルホネート含有ポリマーである。ここで用いられる時に、アニオン性ビニルモノマーのポリマー又は共重合ポリマーは、1モル%程度の少量のアニオン性荷電モノマーを含有していても良く、好ましくは10モル%以上のアニオン性モノマーを含有する。ここでも、特定のアニオン性ポリマーの使用を選択するには、紙料、フィラー、水質、紙のグレード等に依存するであろう。
【0032】
大体の微粒子プログラムは高分子量のカチオン性フロック剤を用いるだけで良好な性能を発揮するが、本発明のコロイド状シリカゾルを、高分子量のアニオン性の水溶性フロック剤と共に、又は、カチオン性凝集剤の添加と共に使用しても良い。
【0033】
本発明において有用な非イオン性フロック剤は、ポリエチレンオキサイド及びポリ(メタ)アクリルアミドよりなる群から選択しても良い。上記に加えて、一定の場合には所謂両性の水溶性ポリマーを使用することが有利である。これらのポリマーは、カチオン性及びアニオン性電荷の両方を同一のポリマー鎖中に担持する。
【0034】
ここにおいて有用な非イオン性、カチオン性、アニオン性のビニルポリマーフロック剤は、一般的に500,000ダルトン以上の分子量を有し、好ましくは1,000,000ダルトン以上の分子量を有するであろう。ここにおいて有用な水溶性又は水分散性フロック剤は、5,000,000以上の分子量を有していても良く、例えば、10,000,000乃至30,000,000の範囲、又は、それ以上である。本発明に好適なポリマーは、系に適用した時に完全に水溶性であっても良く、又は、わずかに分岐(2次元的)していても良く、ポリマーが水に分散可能な限り、わずかに架橋(3次元的)していても良い。完全に水溶性のポリマーを使用するのが好ましいが、WO97/16598に記述されているような分散性ポリマーを採用しても良い。有用なポリマーは、Langley et. Al., 米国特許第4,753,710において定義されているような意味で実質的に線状であっても良い。分子量の上限は、抄紙紙料中での生成物の溶解性又は分散性により支配される。
【0035】
本発明の応用において有用なカチオン性又は両性の澱粉は、一般的に米国特許第4,385,961に記述されており、その開示事項は、参照することにより本明細書中に取り込まれる。カチオン性澱粉材料は一般的に、グアールガム(guar gum)や澱粉のような炭水化物に基づいて天然に産出するポリマーよりなる群から選択される。本発明に実用上最も有用だと考えられるカチオン性澱粉材料には、小麦、ジャガイモ、米から取り出される澱粉材料が包含される。これらの材料は、順次反応して澱粉骨格上にアンモニウム基が置換しても良いし、Dondeyne et al がWO96/30591において示した方法に従ってカチオン化しても良い。一般的に本発明にとって有用な澱粉は、澱粉分子内のアンモニウム基の置換度(d.s.)が約0.01乃至0.05の間である。この置換度は、基本澱粉に、エーテル 3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル−トリメチルアンモニウム クロライド、又は、2,3−エポキシプロピル−トリメチルアンモニウム クロライドを反応させることで得られ、カチオン化澱粉が得られる。理解されるように、澱粉材料をカチオン化するための手段は本発明の範囲及び意図を超えるところであり、これらの変性澱粉材料は良く知られており、様々な市販原料の中から容易に入手できる。
【0036】
セルロース系紙料の様々な特徴、例えばpH、硬度、イオン強度、及び、カチオン要求性等が、提案された用途におけるフロック剤の性能に影響を与える。フロック剤の選択には、電荷のタイプ、電荷密度、分子量、及び、モノマーのタイプを考慮し、特に、水、及び、処理される紙料の化学性に依存する。
【0037】
その他の添加剤を、本発明の活性を実質的に妨害すること無くセルロース系紙料に充填しても良い。そのような他の添加剤には、例えば、ミョウバンやロジンのようなサイジング剤、ピッチ制御剤、増量剤、殺生物剤等が包含される。本発明の保持促進プログラムを付加されるセルロース系紙料は、二酸化チタンや沈降及び/又は粉砕炭酸カルシウムやその他の無機又は有機フィラーのような顔料及び/又はフィラーを含有していても良い。本発明は、ベントナイトやカオリンのような、その他の所謂微粒子プログラムと組み合わせることが可能であり、本発明の精神に包含される。紙の生産者がグレードや紙料を変更する時には、特定の状況下で本発明のコロイド状シリカゾルと他の微粒子の組み合わせは実用的に可能であり、好ましい。
【0038】
本発明のコロイド状シリカゾルは、Sofia et al.の米国特許第4,795,531号の教示による凝集剤と組み合わせて用いてもよく、その開示事項は参照されることにより以下において本明細書に組み込まれる。Sofiaは、カチオン性凝集剤及び高分子量の荷電されたフロック剤の存在下で微粒子を用いる微粒子プログラムを教示する。
【0039】
本発明のこの形態で使用できるカチオン性凝集剤の材料には、良く知られた市販されている低分子量乃至中分子量の水溶性ポリアルキレンポリアミンが包含され、アルキレンポリアミンを2官能性アルキルハライドと反応させて調製されるものが該当する。このタイプの材料は、エチレンジクロライドとアンモニアの反応、或いは、エチレンジクロライドとアンモニアと第二アミン(ジメチルアミン、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン−アンモニア、ポリエチレンイミン等)の反応等から調製される縮合重合体ポリマーを包含する。また、ジアリルジメチルアンモニウムハライド(特にジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ジアルキルアミノアルキルアクリレート、ジアルキルアミノアルキルアクリレートの四級アンモニウム塩等のようなビニルモノマーの、高分子量の溶液重合のポリマー及び共重合ポリマーも有用である。ここで、「アルキル」とは炭素原子数1乃至4、好ましくは炭素原子数1乃至2の基を表す。好ましくは「アルキル」はメチルである。これらのモノマーとしては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、及び、それらの水溶性四級アンモニウム塩のような材料を例示することができる。ある特定の場合には、カチオン性澱粉を凝集剤として用いても良い。無機凝集剤、例えばミョウバンやポリアルミニウムクロライドを、本発明において用いても良い。無機凝集剤の使用量割合は、代表的には、紙料中の繊維の乾燥重量を基準として0.05乃至2重量%である。凝集剤をコロイド状シリカゾルと組み合わせて用いることは任意である。
【0040】
本発明の方法は、ここにおいて記述したフィラーを含有する全てのグレード及びタイプの紙製品に適用でき、さらに、化学パルプ(堅木及び軟木の両方から得られる硫酸パルプ、亜硫酸パルプを含む)、熱−機械パルプ、機械パルプ、砕木パルプ等、全てのタイプのパルプを用いる場合に適用でき、パルプのタイプは限定されない。
【0041】
抄紙工程において無機フィラーは一般的に抄紙原料に添加されて用いられ、その量は、紙料中の乾燥繊維100重量部当たりフィラーを約10乃至約30重量部とする。ただし、かかるフィラーの量は時により、同じ基準で約5重量部程度の低用量又は0重量部であっても良く、約40重量部程度の高用量又は50重量部であっても良い。
【実施例】
【0042】
以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、限定的に解釈すべきものではない。
【0043】
(参考例1)
(本発明のコロイド状シリカゾルの調製)
285.8ポンド(約129.6kg)の軟水を、再循環ポンプを備える反応機に充填し、1分間当たり50ガロンの速度(gpm)(約189.3L/分)で再循環を開始する。5.63ポンド(約2.6kg)の95重量%硫酸溶液を、必要に応じて75°F(約23.9℃)未満に降温するように反応機の内容物を冷却しながら、ゆっくりと反応機に添加する。反応機の内容物を5分間循環させた後、NaOに対するSiOのモル比が3.26で、pHが11.2の珪酸ナトリウムを289.5ポンド(約131.3kg)添加する。反応機温度が81°F(約27.2℃)を超えないように冷却を行う。珪酸ナトリウムを添加後に水性珪酸の添加を開始し、3169.1ポンド(約1437.5kg)の水性珪酸(SiO固形分が6.40重量%である)を、13.20ポンド/分(約6.0kg/分)(又は1.52ガロン/分(約5.8L/分))の速度で、温度を80°F(約26.7℃)に維持しながら添加する。75%の珪酸(2376.8ポンド(約1078.1kg))を充填した時点(おおよそ3.0時間)で、ゆっくりと0.7°F/分の速度で温度が120°F(約48.9℃)に達するまで昇温する。組成物を加熱しながら珪酸の添加を続行する。組成物の温度が100°F(約37.8℃)に達するまでの所要時間は10分間であり、115°F(約46.1℃)に達するまでの経過時間は36分間である。全ての珪酸を添加した後、組成物の温度を120°F(約48.9℃)に1時間(すなわち、珪酸添加が完了した後に計時を開始する)維持する。その後、温度を118乃至122°F(約47.8乃至50.0℃)に維持して、組成物の固形分濃度を増大させるために、組成物を限外濾過する。シリカの濃度が14.8乃至16.6重量%、好ましくは15.0重量%に達した時に、限外濾過を停止する。
【0044】
得られた本発明のコロイド状シリカ組成物は、比重が1.1048、シリカの表面積が804.3m/g、及びS−値が48.1と決定された。さらに室温で45日後に、シリカの表面積が751m/gと決定された。
【0045】
(参考例2)
151.2gの脱イオン水及び4.0gの硫酸ナトリウムを丸底フラスコに充填し、硫酸ナトリウムが溶解するまでかき混ぜる。混合しながら、124.8gの珪酸ナトリウムをフラスコに添加する。フラスコの内容物を80°F(約26.7℃)に加熱する。合計で1720gの珪酸(比重が1.039である)を、7.2g/分の速度で4時間かけてフラスコに添加する。860gの又は2分の1の珪酸を添加した後でフラスコの内容物を加熱し、最終温度を120°F(約48.9℃)とする。組成物を加熱しながら珪酸を添加し続ける。その後、温度を118乃至122°F(約47.8乃至50.0℃)に維持する。4時間目の最終添加後に、反応フラスコを室温まで冷却し、組成物の固形分濃度を増大させるために、350gの組成物に限外濾過を行う。除去した水の測定量が166.82gに達した時点で限外濾過を停止する。最終組成物の固形分は、16.12重量%である。
【0046】
得られた本発明のコロイド状シリカ組成物は、比重が1.1067、シリカの表面積が904m/g、及びS−値が39と決定された。さらに33日後に、シリカの表面積が904m/gと測定された。
【0047】
(参考例3)
(本発明のコロイド状シリカゾルの調製)
285ポンド(約129.3kg)の軟水を、再循環ポンプを備える反応機に充填し、50gpm(約189.3L/分)の速度で再循環を開始する。5.63ポンド(約2.6kg)の95重量%硫酸溶液を、必要に応じて75°F(約23.9℃)に降温するように反応機の内容物を冷却しながら、ゆっくりと反応機に添加する。反応機の内容物を5分間循環させた後、NaOに対するSiOのモル比が3.26で、pHが11.2の珪酸ナトリウムを290ポンド(約131.5kg)添加する。反応機温度が81°F(約27.2℃)を超えないように冷却を行う。珪酸ナトリウムを添加後に水性珪酸の添加を開始し、3225ポンド(約1462.8kg)の水性珪酸(SiO固形分が6.37重量%、粘度が2.9センチポイズ、比重が1.0388及び、pHが2.76である)を、13.4ポンド/分(約6.1kg/分)の速度で、温度を80°F(約26.7℃)に維持しながら添加する。75%の珪酸(2419ポンド(約1097.2kg))を充填した時点(おおよそ3.0時間)で、ゆっくりと0.7°F/分の速度で温度が120°F(約48.9℃)に達するまで昇温する。組成物を加熱しながら珪酸の添加を続行する。組成物の温度が100°F(約37.8℃)に達するまでの所要時間は40分間であり、115°F(約46.1℃)に達するまでの経過時間は57分間である。全ての珪酸を添加した後、組成物の温度を120°F(約48.9℃)に1時間(すなわち、珪酸添加が完了した後に計時を開始する)維持する。その後、温度を118乃至122°F(約47.8乃至50.0℃)に維持して、組成物の固形分濃度を増大させるために、組成物を限外濾過する。シリカの濃度が14.8乃至16.6重量%、好ましくは15.0重量%に達した時に、限外濾過を停止する。
【0048】
得られた本発明のコロイド状シリカ組成物は、比重が1.1033、シリカの表面積が786.4m/g、及びS−値が41と決定された。51日後の表面積は、711.2m/gと測定された。
【0049】
(実施例4)
(本発明のコロイド状シリカゾルの調製)
槽の底部付近にスクリーンを取り付けた反応槽に、ナトリウム型のアンバーライト(商標)IRC84SPイオン交換樹脂(ローム&ハースから入手可能)を226ガロン充填する。樹脂を再生して40%以上の再生が完了した水素型にするために、製造者が定める手順を行う。樹脂を水できれいにすすぎ、排水する。
【0050】
1469ポンド(約666.3kg)の水を反応槽に充填し、反応槽の内容物の混合を開始し、樹脂を縣濁させる。次に、反応機の内容物を75°F(約23.9℃)に加熱する。564ポンド(約255.8kg)の水で希釈した1231ポンド(約558.4kg)の珪酸(NaOに対するSiOのモル比が3.26で、pHが11.2である)を、反応槽に充填する(10分間かけて充填する)。反応槽の内容物のpH及び電気伝導度を、pHが9.8に達し、電気伝導度が5800μmho(μS)に達するまでは、約10分間ごとに監視する。反応機の内容物に、(上記したような)珪酸ナトリウムを150ポンド添加し、pHを約10.6に上げる。容器の内容物を約20分間攪拌し、その後、反応槽の内容物を底部からスクリーンを通して取り出した。少量の水を樹脂に通し水洗して残留生成物を取り出し、生成物に混合した。
【0051】
得られた本発明のコロイド状シリカ組成物は、比重が1.0877、シリカの表面積が927.4m/g、S−値が32、及び、SiO固形分の重量%が12.9%と決定された。
【0052】
(実施例5)
A.合成標準紙料の調製
・アルカリ性紙料−
アルカリ性紙料はpHが8.1で、70重量%のセルロース繊維と30重量%のフィラーから構成され、全体の濃度を合成処方水(synthetic formulation water)を用いて0.5重量%に希釈されている。セルロース繊維は、60重量%の漂白堅木クラフトと40重量%の漂白軟木クラフトとからなる。これらは乾燥したラップをそれぞれ打って、カナディアンスタンダードフリーネス(Canadian Standard Freeness)(CSF)の値が340乃至380の範囲となるように調製したものである。フィラーは市販の粉砕炭酸カルシウムであり、乾燥体であった。処方水は、200ppmのカルシウム硬度(CaClとして添加)、152ppmのマグネシウム硬度(MgSOとして添加)及び、110ppmの重炭酸アルカリ度(NaHCOとして添加)を含有していた。
【0053】
・酸性紙料−
酸性紙料は、堅木/軟木重量比が60/40のクラフトからなるものであった。上述したように、繊維は、フィラー及び水と混合される前に、あらかじめ340乃至380CSFにそれぞれ精製されている。紙料の総固形分は、92.5重量%のセルロース繊維、7.5重量%のフィラーからなる。フィラーには、2.5重量%の二酸化チタン(デュポン社のチタノックス)及び、5.0重量%のカオリンクレイを混合した。繊維及びフィラーを希釈するために用いる水は、上記アルカリ性紙料において概説したような付加的な塩を、ここでも含有している。その他の添加材には、乾燥固形分1トン当たり20lbs活性となる量のミョウバンが含まれていた。紙料のpHは、50%希釈硫酸を用い、ミョウバン添加後の紙料pHが5.0となるように調節した。
【0054】
(FBRMデータ(集束ビーム反射率の測定))
以下の実施例で行われた走査レーザー顕微鏡検査は、米国特許第4,871,251号(Preikschat, F.K. and E. (1989)に対して付与)に概説されており、一般的に、レーザー源、照射光を供給し紙料からの散乱光を回収する光学系、光ダイオード、及び、信号分析機器から構成される。市販の機器は、レセンテック(商標)、レッドモンド、ワシントン(Lasentec, Redmond, Washington)から入手可能である。
【0055】
実験は、300mLのセルロース繊維含有スラリーを取り、これを適切なミキシングビーカーに入れる。可変速度モーターとプロペラによって紙料にせん断を行う。ミキサーは、ここでの全ての実験で720rpmに設定する。プロペラは、プローブウインドウ(probe window)から固定の距離に設置し、ウインドウを横切るスラリーの動きを確実にした。アルカリ性及び酸性紙料の両方について、代表的なテスト手順を以下に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
微粒子添加後のフロックの平均弦長の変化を、動的排水ジャー(Jar)保持測定との相関関係を評価した。その結果、処理によって誘発された平均弦長の変化の変化が大きくなるほど、保持値が高くなる。
【0059】
(試験材料の物性)
以下の材料を本願本特許の実施例及び参考例において用いるが、それらの物性を以下に特定する。
【0060】
【表3】

【0061】
B(1).酸性紙料の保持向上
上述の「標準合成紙料」において概説したように、合成酸紙料を調製した。FBRM実験により以下の結果が得られた。
【0062】
【表4】

【0063】
上記データから分かるように、本発明の対象である材料は2lbs/トン(約0.9kg/トン)の活性量で、おおよそ60〜70%の向上を示し、この合成酸紙料中においてフロック化の程度を増大させた。
B(2).アルカリ性紙料の保持向上
同様の方法により、「標準アルカリ性合成紙料」について材料をテストした。FBRM実験も同様に行い、結果は以下のように集約される。
【0064】
【表5】

【0065】
上記の結果は、ここにおける方法で作製した材料はアルカリ性紙料中において、従来のコロイド状シリカと比べて高い保持性が得られることを示している。この場合、向上率は従来のコロイド状シリカの50%から、100%超である。
【0066】
上述のアルカリ性紙料を用いて行った、さらに別の実験では、以下の結果が認められた。
【0067】
【表6】

【0068】
上記の実験では、本発明の対象である材料は、合成アルカリ性紙料中におけるフロック化の程度を、従来のコロイド状シリカと比べて100%超まで向上させた。その結果、本件に係る材料によって、アルカリ性紙料の保持に関して顕著な向上効果が得られた。
C.排水性の向上
排水性を、真空排水試験機(ナルコケミカル社)を用いて測定した。500mL容量の原料を機器の原料貯蔵槽に入れ、攪拌しながら添加剤と共に供給し、排水した。原料の排水は真空下で行われ、この場合にはフィルパコ#716(Filpako #716)セルロースフィルター上で行われた。排水を開始してから空気がパッドを通過して引かれるようになるまでに必要とされる時間を、「排水時間」として記録した。バキュームゲージから読み取られる最終の真空値を、真空引きを終了して10秒後に記録した。付加した真空レベルはHgで14in.、混合速度は900rpmであり、デジタル コール−パルマー サーボダイン ミキサーシステム コントローラー(digital Cole-Palmer ServoDyne Mixer System Controller)によって制御した。
【0069】
このテストに用いた紙料は、軟木が13%、堅木が49.4%、粉砕木材が6.0%及び、損紙が31.6%から構成されるアルカリ性紙料である。澱粉(スタロックカチオン性澱粉)を、40lbs/トン(約18.1kg/トン)添加した。フロック剤は、10モル%のカチオン性ポリアクリルアミド(cPAM)からなるものであった。それを0.6lbs/トン(約0.3kg/トン)添加した。添加の手順は以下の通りである。
【0070】
【表7】

【0071】
また、排水時間と最終真空度、排水速度(300mLの濾過を排水するのに要する時間として定義される)についても記録した。その結果を下記表にまとめる。
【0072】
【表8】

【0073】
このテストに用いた紙料は、軟木が13%、堅木が49.4%、粉砕木材が6.0%及び、損紙が31.6%から構成されるアルカリ性紙料である。澱粉(スタロックカチオン性澱粉)を、40lbs/トン(約18.1kg/トン)添加した。フロック剤は、10モル%のカチオン性ポリアクリルアミド(cPAM)からなるものであった。それを0.6lbs/トン(約0.3kg/トン)添加した。添加の手順は以下の通りである。
【0074】
このデータから分かるように、本特許の対象である材料、すなわちサンプル4は、ブランクと比べて係数が7となるまでに、またフロック剤による単独処理と比べて係数が2となるまでに、排水速度を増大させた。同様の向上効果が、排水速度及び最終真空度について観察された。従って、本発明の対象である材料は排水性を向上させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20乃至50のS−値を有する安定なコロイド状シリカの調製方法であって、当該シリカが700m/gより大きい表面積を有し、:
(a) 水と、SiOとアルカリ金属酸化物のモル比が15:1乃至1:1の範囲にあり且つpHが10以上の珪酸アルカリ金属塩と、酸、当該酸に対応する塩及びそれらの混合物よりなる群から選ばれる酸とを含有し、当初は前記珪酸アルカリ金属塩と前記酸とが前記酸の重量を1としたときの前記珪酸アルカリ金属塩の重量が63以上となる割合で存在する開始組成物を調製すると共に、当該開始組成物の温度を32℃(90°F)未満に維持し;
(b) 前記開始組成物に、SiO量が4.0乃至8.5重量%で且つ温度を32℃(90°F)未満に維持した水性の珪酸組成物を、ゆっくりと連続的に、当該珪酸組成物の2分の1から4分の3まで添加し;
(c) 前記組成物を46乃至52℃(115乃至125°F)にゆっくりと昇温し、その温度を珪酸組成物の添加が完了するまで維持し;
(d) 必要に応じて、前記組成物を52℃(125°F)未満で1時間維持し;
(e) 加熱を停止し、必要に応じて前記安定なコロイド状シリカのSiOを基準とする固形分が7重量%乃至20重量%になるまで前記組成物から水を除去することを特徴とする、安定なコロイド状シリカの調製方法。
【請求項2】
工程(b)において、前記温度を16乃至32℃(60乃至90°F)の範囲に維持する請求項1の方法。
【請求項3】
工程(d)において、前記温度を46乃至52℃(115乃至125°F)の範囲に維持する請求項1の方法。
【請求項4】
工程(e)において、固形分が10重量%以上になるまで前記組成物から水を除去することを特徴とする請求項1の方法。

【公開番号】特開2012−197221(P2012−197221A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−113049(P2012−113049)
【出願日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【分割の表示】特願2001−501559(P2001−501559)の分割
【原出願日】平成11年6月2日(1999.6.2)
【出願人】(599109663)ナルコ ケミカル カンパニー (8)
【氏名又は名称原語表記】NALCO CHEMICAL COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Nalco Center,Naperville,Illinois 60563−1198,United States of America
【Fターム(参考)】