説明

高装填亜鉛含有膜

ポリマーマトリクス膜、ポリマーマトリクス膜を含む組成物、並びにこれを製造及び使用する方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0002]かかる組成物の美的外観は重要であり、消費者受容性及び用法に対して大きな影響を与える可能性がある。美的効果は、多くの製品の消費者受容性において重要な役割を果たしていることが認められている。かかる製品は消費者の賛同を得ているが、当該技術においては、これらの製品の美的効果並びに美容的及び治療的利益を更に向上させることが求められている。実際、当該技術において公知の多くのかかる組成物は1以上の特性が不十分である。
【0002】
[0003]口腔ケア組成物、スキンケア組成物、及びヘアケア組成物のような健康状態、衛生状態、又は外観を向上させるための組成物が大勢の人々によって使用されている。これらの組成物は、個人の健康状態、衛生状態、及び外観を向上させるため、並びに人及び動物における種々の疾病及び他の疾患を予防又は治療するためなどの広範囲の目的のために用いられている。
【0003】
[0004]かかる組成物の配合には数多くの課題が呈示されている。これらは、それらの所期の使用のために薬学的及び/又は美容的に許容できるものでなければならない。治療活性物質を含む組成物は、好ましくは、過度の化学分解を回避して有効なレベルの活性成分を供給する。同様に、美容的に機能性の物質を含む組成物は、物質を、それらが消費者によって通常的に用いられる条件下において有効なレベルで、例えば口腔、皮膚、又は毛髪に供給しなければならない。
【0004】
[0005]治療薬剤の経口投与のための水溶性の膜は当該技術において周知である。また、息清涼剤、例えばメントールを投与するためにかかる膜を用いることも当該技術において公知である。息清涼剤及び/又は活性医薬品を投与するための公知の膜は、一般に人が摂取するのに好適な少なくとも1種類の水溶性ポリマー、及び通常はポリアルコール、界面活性剤、及び可塑剤から選択される水溶性ポリマーの湿潤性を増加させる少なくとも1種類の化合物を含む。例えば、米国特許5,948,430(その開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する)においては、口腔に付着させて薬学的又は美容的に活性の成分を放出することができ、少なくとも1種類の水溶性ポリマー;ポリアルコール、界面活性剤、及び可塑剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分;少なくとも1種類の美容的又は薬学的に活性の成分;及び香味料を含む単層膜が記載されている。
【0005】
[0006]米国特許5,700,478(その開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する)においては、水溶性ポリマー及び水溶性可塑剤を含む水溶性付着層、及び水溶性ポリマー層を含む、粘膜で覆われている体腔内に物質を制御して放出するための積層用具が記載されている。この特許においては、物質を制御又は持続して放出するために比較的ゆっくりと溶解する多層積層体が教示されている。
【0006】
[0007]米国特許4,900,552(その開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する)においては、活性成分を口腔内に長時間持続して供給するために好適な三層膜が記載されている。この三層体は、水和性の粘膜付着性ベース層;非付着性リザーバー層;及びベース層とリザーバー層との間に挟まれていてこれらに結合している水不浸透性バリヤ;を含む。この特許においては、物質を長時間持続して放出するためにゆっくりと分解する膜が開示されている。
【0007】
[0008]米国特許5,047,244(その開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する)においては、アモルファスヒュームドシリカ及び治療薬を含む無水であるが水和性のモノリシックポリマーマトリクス、及びポリマーマトリクスに固定され、非付着面を画定する水不溶性のバリヤ層を含む治療投与形態が開示されている。この特許においては迅速に分解する膜は開示されていないが、その代わりに制御放出粘膜付着性キャリア系からの治療薬の向上した利用可能性を与えることができる組成物が検討されている。
【0008】
[0009]米国特許6,669,929及び米国特許出願公開2003/0053962(そのそれぞれの開示事項はそれらの全部を参照として本明細書中に包含する)においては、口腔ケア組成物において有用な膜形成剤が開示されている。この膜は口内で溶解して、機能性成分、通常は香味料を放出する。
【0009】
[0010]香味料、着色剤、及び幾つかの活性成分を口腔内で溶解する膜中に含ませることは公知である。これらの膜は、それ単独で息清涼片、歯科漂白片としてか、或いは口腔ケア組成物全体に分散しているポリマー小片のいずれかとして用いられる。また、歯磨剤配合物中に亜鉛塩を含ませることも公知である。種々の亜鉛塩の使用は、亜鉛の溶解度、より高いレベルの亜鉛を用いる場合の望ましくない消費者の渋味、及び亜鉛イオンが反応のために利用可能になった時点での亜鉛の反応性(即ち、亜鉛イオンは時には配合物内で有害反応を引き起こす)によってしばしば制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許5,948,430
【特許文献2】米国特許5,700,478
【特許文献3】米国特許4,900,552
【特許文献4】米国特許5,047,244
【特許文献5】米国特許6,669,929
【特許文献6】米国特許出願公開2003/0053962
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[0011]而して、新規な口腔ケア及びパーソナルケア組成物、並びにそれらの使用方法に対する必要性が継続して存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0012]種々の態様においては、本発明は、キャリア中に混入させた膜を含み、膜が比較的高い濃度の亜鉛含有化合物を含む口腔ケア及びパーソナルケア組成物を提供する。一態様においては、膜は複数の膜片として与えられる。種々の態様においては、本発明は、キャリア中に複数の薄片を含む組成物を提供する。
【0013】
[0013]一態様においては、口腔ケア組成物はキャリア中に混入させた膜を含み、膜中に約35重量%〜約60重量%の量の亜鉛含有化合物が含まれている。膜配合物中の固体装填量を増加させることによって、優れた効能を供給するために重要である面積あたりの活性成分の供給量が増加する。
【0014】
[0014]幾つかの態様はまた、膜の製造方法、並びに、キャリア中に混入させた膜、膜中に含まれる亜鉛含有化合物、多糖、及び無水マレイン酸コポリマーを含む口腔ケア組成物を患者に局所適用することを含む、亜鉛含有化合物をそれが必要な人又は動物の患者に投与する方法も提供する。種々の方法においては、かかる方法は局所適用の後に膜を分解することを更に含む。
【0015】
[0015]本発明の組成物及び方法は、当該技術において公知の組成物及び方法をしのぐ利益を与える。かかる利益としては、増加した消費者受容性、向上した利用可能な亜鉛の量、亜鉛イオンの存在によって引き起こされる有害反応の減少、向上した美観、活性物質又は他の機能性物質に関する向上した安定性、及び亜鉛のような活性物質の制御された供給の1以上が挙げられる。本発明の更なる利益及び幾つかの態様はここに示す記載から明らかである。
【0016】
[0016]本発明の好ましい幾つかの態様を以下の例において説明し、本明細書に添付した幾つかの図面において示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】[0017]図1は、実施例2にしたがって製造した膜スラリーの弾性率(G’)の効果を酸化亜鉛濃度の関数として示す。
【図2】[0018]図2は、実施例2にしたがって製造した剪断速度の関数としての粘度に対する亜鉛イオン濃度の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[0019]本発明は、人又は他の動物の患者に投与するか又はこれらについて用いる組成物及び方法を提供する。したがって、本発明において用いる具体的な物質及び組成物は好ましくは薬学的又は美容的に許容できるものである。ここで用いるかかる「薬学的に許容できる」又は「美容的に許容できる」成分は、人及び/又は動物について用いて、妥当なリスク便益比に見合って、過度の悪い副作用(例えば、毒性、渋味、刺激性、及びアレルギー応答)を与えることなく、所望の治療的、知覚的、装飾的、又は美容的利益を与えるのに好適なものである。ここに示す本発明の記載を読み取り解釈する上では、以下の定義及び非限定的な指針を考慮しなければならない。
【0019】
[0020]ここで用いる(「序説」及び「概要」のような)見出しは、発明の開示内の主題の一般的な構成だけのためであると意図され、本発明又はその任意の形態の開示事項を限定することを意図するものではない。特に、「序説」において開示されている主題は、発明の範囲内の幾つかの形態の技術を包含し、従来技術の列挙は構成しない可能性がある。「概要」において開示されている主題は、発明の全範囲又はその任意の態様の排他的か又は完全な開示ではない。
【0020】
[0021]本明細書中における参照文献の引用は、これらの参照文献が従来技術であるか、或いはここに開示する発明の特許性に対する関連性を有することを承認することを構成するものではない。本明細書の発明の説明のセクションにおいて引用されている全ての参照文献は、その全部を参照として本明細書中に包含する。
【0021】
[0022]本記載及び特定の実施例は、発明の幾つかの態様を示すが、例示のみの目的のためであると意図され、発明の範囲を限定することを意図するものではない。示された特徴を有する複数の態様を示すことは、更なる特徴を有する他の態様、或いは示された特徴の異なる組合せを含ませた他の態様を除外することを意図するものではない。特定の実施例は、本発明の組成物及び方法の製造、使用、及び実施方法を例示する目的のために与えるものであり、実施された作業を明確に(即ち過去形を用いて)示さない限りにおいては、本発明の与えられた態様が実施されたか又はされていないことを示すことを意図するものではない。
【0022】
[0023]ここで用いる「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、特定の状況下で特定の利益を与える発明の幾つかの態様を指す。しかしながら、同じか又は他の状況下において他の幾つかの態様も好ましい可能性がある。更に、1以上の好ましい態様を示すことは、他の態様が有用でないことを暗示するものではなく、他の態様を発明の範囲から除外することを意図するものではない。ここで用いる「挙げられる」という語及びその変形は非限定的なものであると意図され、リスト中に複数の事項を示すことは、本発明の材料、組成物、装置、及び方法において同様に有用である可能性がある他の同様の事項を除外するものではない。同じように、公知の材料及び方法の幾つかの有利性又は欠点の記載は、幾つかの態様の範囲にこれらの除外の限定を加えることを意図するものではない。実際、幾つかの複数の態様には、ここで議論する欠点をもたらすことなく1以上の公知の材料又は方法を含ませることができる。
【0023】
[0024]ここで用いる「含む」という用語は、最終結果に影響を与えない他の工程及び他の成分を用いることができることを意味する。「含む」という用語は、「構成される」及び「実質的に構成される」という表現を包含する。ここで用いる「有効量」という表現は、当業者の健全な決断の範囲内で、有益な利益、好ましくは口腔衛生の利益を有意に引き起こすのに十分であるが重大な副作用を回避するのに十分に低い、即ち妥当なリスク便益比を与える化合物又は組成物の量を示す。「the」、「a」、又は「an」のような単数形の識別詞の使用は、単に単一の成分の使用に限定することを意図するものではなく、複数の成分を包含することができる。
【0024】
[0025]種々の態様の口腔ケア組成物は、好ましくは歯磨剤の形態である。本明細書全体にわたって用いる「歯磨剤」という用語は、ペースト、ゲル、又は液体配合物を示す。歯磨剤は、ペーストの周囲にゲルを有する深縞構造、表面縞構造、多層構造、又はこれらの任意の組合せのような任意の所望の形態であってよい。口腔ケア組成物中に含まれる膜は、複数の小片又は1つの連続片などの任意の所望の形状又は構造のものであってよい。
【0025】
[0026]本明細書全体にわたって用いる「キャリア」又は「水性キャリア」という表現は、本発明において用いるための任意の安全で有効な材料を示す。かかる材料は、例えば増粘剤、保湿剤、イオン活性成分、緩衝剤、抗歯石剤、研磨剤、ペルオキシド源、アルカリ金属重炭酸塩、界面活性剤、二酸化チタン、着色剤、香味料系、甘味料、抗菌剤、ハーブ剤、知覚過敏抑制薬、染み減少剤、及びこれらの混合物を含む。
【0026】
[0027]ここで用いる全てのパーセント及び比は、他に示さない限りにおいて口腔ケア組成物の重量基準である。全ての測定は、他に示さない限りにおいて25℃において行う。
[0028]本発明は、キャリア中に混入させた膜を含み、膜が比較的高い濃度の亜鉛含有化合物を含む口腔ケア又はパーソナルケア組成物を提供する。ここに言う「口腔ケア又はパーソナルケア組成物」とは、任意の生理的疾患又は疾病の予防又は治療などの患者の健康、衛生、又は外観を向上させ、及び知覚的、装飾的、又は美容的利益、及びこれらの組合せを与えるために人又は動物の患者に投与又は適用するのに好適な任意の組成物である。これらの中で本発明において与える組成物としては、口腔ケア組成物、スキンケア組成物、ヘアケア組成物、局所医薬組成物、及び眼科組成物が挙げられる。ここで用いる「口腔ケア組成物」とは、それに関する所期の用途として、口腔ケア、口腔衛生、及び口腔の外観を挙げることができ、或いはそれに関する所期の使用法に口腔への投与を含ませることができる組成物を意味する。
【0027】
[0029]本発明の幾つかの態様は膜を含む。ここで言う「膜」とは実質的に薄膜状の構造を有する材料である。「薄膜状」構造は、第3の方向(例えばz−方向)における構造体の厚さよりも非常に大きい1つ又は2つの方向(例えばx−又はy−方向)における寸法を有するか、又は有することができる。これらの中で本発明において有用な薄膜状構造としては、実質的に平面状、層状、又は薄膜状のものが挙げられる。一態様においては、薄膜状構造は、z−方向よりも非常に大きいx−及びy−方向の両方における寸法を有する実質的に平面状である。他の態様においては、薄膜状構造は非平面状である。一態様においては、この意図の膜は実質的に平らな表面として見ることができる実質的に連続的な表面を含むが、幾つかの態様においては膜を変形させる。かかる態様においては、膜は、滑らかに湾曲している表面を有するなどの任意の複数の形状を有することができる。
【0028】
[0030]これらの中で本発明において有用な膜は、膜形成性材料、クレー、ワックス、及びこれらの混合物からなる群から選択される材料などの任意の種々の材料を含む硬質又は可塑性のものであってよい。一態様においては、膜は膜形成性ポリマーを含む。これらの中で本発明において有用な膜形成性ポリマーとしては、水溶性ポリマー、水分散性ポリマー、水不溶性ポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される材料が挙げられる。
【0029】
[0031]幾つかの態様においては、膜は少なくとも1種類の膜形成性材料を含む。幾つかの態様においては、膜形成性材料はポリマーである。本発明において有用なポリマーとしては、親水性ポリマー及び疎水性ポリマーが挙げられる。幾つかの態様においては、ポリマーは水溶性ポリマーである。幾つかの態様においては、ポリマーは、例えば歯のブラッシング中のような使用中に溶解する水溶性で分解性のポリマーである。溶解は、例えば剪断及び/又は唾液のような高濃度の水を含む溶媒への曝露の結果として引き起こすことができる。幾つかの態様においては、ポリマーは、不溶性であるが分散性であることによって水中で分解可能である。即ち、ポリマーは例えば剪断の結果として小さい小片に分解する。幾つかの態様においては、ポリマーは不溶性であるが膨潤性である。ポリマーが使用中に分解しない構成においては、ポリマーは、幾つかのタイプのセルロース、例えば紙のような撥水性ポリマー又は水溶液安定性の親水性ポリマーであってよい。幾つかの態様においては、膜片には複数の膜形成性材料の混合物を含ませることができる。
【0030】
[0032]これらの中で本発明において有用な水溶性ポリマーとしては、セルロースエーテル、メタクリレート、ポリビニルピロリドン、及びこれらの混合物が挙げられる。一態様においては、ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースのようなヒドロキシアルキルセルロースポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものなどのセルロースエーテルである。これらの中で本発明において有用な他のポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリレートポリマー、架橋ポリアクリレートポリマー、架橋ポリアクリル酸(例えばCarbopol)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルキルエーテル−マレイン酸コポリマー(例えばGantrez)、及びカルボキシビニルポリマー;アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、アカシアガム、アラビアガム、グアーガム、プルラン、寒天、キチン、キトサン、ペクチン、カラヤガム、ゼイン、ホルデイン、グリアジン、ローカストビーンガム、トラガカント、及び他の多糖のような天然ガム;マルトデキストリン、アミロース、高アミロース澱粉、コーンスターチ、ジャガイモ澱粉、コメ澱粉、タピオカ澱粉、エンドウマメ澱粉、サツマイモ澱粉、大麦澱粉、小麦澱粉、ワックス状コーンスターチ、加工澱粉(例えばヒドロキシプロピル化高アミロース澱粉)、デキストリン、レバン、エルシナン、及びグルテンのような澱粉;並びに、コラーゲン、乳清タンパク単離物、カゼイン、乳タンパク、大豆タンパク、及びゼラチンのようなタンパク質;が挙げられる。
【0031】
[0033]水分散性及び膨潤性ポリマーの非限定的な例としては、加工澱粉、アルギン酸エステル、アルギン酸の二価又は多価イオン塩が挙げられる。水不溶性ポリマーの非限定的な例としては、酢酸セルロース、硝酸セルロース、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニルホモポリマー、エチルセルロース、ブチルセルロース、イソプロピルセルロース、セラック、シリコーンポリマー(例えばジメチルシリコーン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、セルロースアセテートフタレート、及び天然又は合成ラバーのような少なくとも1種類の有機溶媒中に可溶のポリマー;セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、及びナイロンのような有機溶媒中に不溶のポリマー;が挙げられる。
【0032】
[0034]種々の態様において有用な膜は、米国特許6,669,929及び米国特許出願公開2003/0053962(これらの開示事項はそれらの全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されている方法にしたがって製造することができる。膜内に含まれる亜鉛含有化合物は、膜の製造中に当該技術において公知の技術を用いて膜中に導入することができる。当業者であれば、ここに与える指針を用いて亜鉛含有化合物を含む膜を製造することができるであろう。
【0033】
[0035]幾つかの態様において好ましい多くの溶解性膜において用いるポリマーマトリクスは、それが保持することができる固体の量の容量が限定される。しかしながら、幾つかの配合物の変性を行い、膜マトリクスの完全性を増加させて高装填量の固体を保持することができる。特に好ましい態様において用いる好ましいポリマーマトリクスは、2種類の異なる分子量のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、具体的にはDow Chemical, Midland, Michiganから商業的に入手できるMethocel E5及びE50を含む。ポリマー系を変性することによって、膜マトリクスの強度を増加させて高装填量の固体、特に酸化亜鉛を担持させることができる。本発明者らは、ポリマー系のバランスを再び取ることによって、従来可能であったものよりも多くの活性成分を膜中に装填することができる方法を見出した。これによって、供給することができる亜鉛含有化合物のより高い濃度を有する膜が形成され、また、これらのより多い量を供給するのに必要な膜の量が減少する。改良されたより高い装填量の亜鉛含有膜の配合によって、優れた効能のために表面上により多い量が付着する。また、膜配合物を改良してより高い装填量の亜鉛含有化合物を保持することによって、同時により低い装填量の膜によって得られるものと同等の効能を供給しながら、製品中において必要な膜の全量を減少させることができる。
【0034】
[0036]種々の態様においては、口腔ケア組成物はキャリア中に混入させた複数の薄膜片を含む。一態様においては、本組成物は膜を含み、かかる膜は膜材料の薄片を含む。一態様においては、本組成物はその中に複数の薄片が分配されているキャリアを含み、薄片はマトリクス及び機能性亜鉛含有化合物材料を含む。かかる一態様においては、マトリクスは膜を含む。かかる小片は、半固体又は固体の不連続の部分、小片、粒子、薄片、又はこれらの組合せなどの任意の種々の形状又は形態であってよい。種々の態様においては、膜は第1の複数の小片及び第2の複数の小片を含み、第1の複数の小片は組成又は外観が第2の複数の小片と異なる。組成又は外観におけるかかる相違は、小片の組成(例えば、異なる膜成分、異なる機能性物質、異なる配合着色剤)、異なる外観(例えば、形状、色、テクスチャー、屈折率、反射率)、又はこれらの組合せの任意の特徴におけるものであってよい。
【0035】
[0037]種々の態様においては、小片は認知できるキャリアとの相違を示す。認知できる相違は、光学的相違、触覚的相違、味覚的相違、又は嗅覚的相違のような知覚的相違であってよい。幾つかの構成においては、光学的相違は、色の相違、又は屈折率若しくは反射率における差であってよい。幾つかの構成においては、色の相違は、組成物の異なる成分を構成する1種類以上の着色剤によって与えることができる。種々の態様においては、本発明は、キャリア中の複数の膜片を含み、かかる小片が視覚的に識別できるものである組成物を提供する。ここで言う「視覚的に識別できる」とは、小片をその中に混入させるキャリアと比較して好ましくは裸眼に対して異なる物理的外観を小片が有するようにする小片の1以上の特徴を指す。かかる特徴としては、色、不透明度、屈折率、反射率、寸法、形状、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0036】
[0038]種々の態様においては、小片は非ランダム形状を有する。一態様においては、「非ランダム」形状は、それによって小片に特定の形状を与える成形、切断、又は他の形成プロセスの製造プロセスから得られる形状である。かかる態様においては、非ランダム形状は材料の単純な沈殿又は研削から得られるような形状と区別される。一態様においては、「非ランダム」形状は、組成物が実質的に同じ形状を有する複数の小片を含む「繰り返し」である。かかる繰り返し形状は任意の種々の形態を有していてよく、種々の美観的又は機能的基準に基づいて選択することができる。幾つかの態様においては、膜片の形状は認識できる形状であってよい。幾つかの態様においては、膜片は非ランダム形状を含んでいてよい。かかる形状としては、多角形及び楕円形、例えば三角形、四角形(例えば正方形、長方形、菱形)、五角形、六角形、長円形、及び円形のような単純な幾何形状が挙げられる。一態様においては、繰り返し形状は正方形である。他の態様においては、繰り返し形状として、星形、ハート形、宝石形、花形、樹木形、三つ葉形のような図又は生物或いは無生物対象体、アルファベット文字、数字、動物、人、及び顔によって代表される形状が挙げられる。種々の態様においては、本組成物は単純な繰り返し形状を含む。他の態様においては、本組成物は、複数の繰り返し形状を有する複数の小片を含む。一態様においては、本発明の組成物は、第1の繰り返し形状を有する複数の第1の膜片、及び第2の繰り返し形状を有する複数の第2の膜片を含み、第1の繰り返し形状は第2の繰り返し形状と異なる。
【0037】
[0039]種々の態様においては、小片の寸法は重要ではなく、製造上の都合、視覚的外観に対する影響、表面積、組成物におけるテクスチャーに対する影響、及びこれらの組合せなどの任意の種々の基準にしたがって決定することができる。幾つかの態様においては、膜片は最長寸法における長さが約1インチ(25.4mm)以下であってよい。ここで言う「長さ」とは、小片の「厚さ」又は最短寸法(即ちz−方向)に対して実質的に直角の方向における(即ち、小片は平面形状であるか、又は平面形状に変形されるので、x−及びy−方向における)長さ又は幅における小片の寸法である。複数の小片を含む種々の態様においては、小片は、寸法のランダムな変動、製造公差、及び篩別又は同様の手段による小片の意図的な寸法調整又は混合などの種々のファクターによって、一定範囲の寸法で存在させることができる。ここで言う寸法とは、与えられた複数の小片における小片の平均寸法を指す。
【0038】
[0040]種々の態様においては、小片は長さが約0.2mm〜約15mmである。種々の態様においては、小片の長さは、0.2mm〜約10mm、約0.5mm〜約10mm、約0.8mm〜約8mm、約0.9mm〜約5mm、約1.0mm〜約5mm、又は約1.5mm〜約2.5mmである。幾つかの態様においては、小片の長さは少なくとも3mmであり、約6mm〜約13mmであってよい。幾つかの態様においては、複数の膜片は、最長寸法が約600μmよりも大きい。幾つかの態様においては、複数の膜片は、最長寸法が約1mmより大きい。
【0039】
[0041]種々の態様においては、本発明の小片は、約1ミル(1/1000インチ、25.4μm)〜約3ミル(76.2μm)の厚さを有する。種々の態様においては、小片は、約4ミル未満又は約100μm未満で、約0.1ミル(2.54μm)乃至約10ミル(254μm)以下、約0.5ミル(12.7μm)乃至約5ミル(127μm)以下、約1.4ミル(35.6μm)乃至約2.0ミル(50.8μm)の厚さを有する。
【0040】
[0042]幾つかの態様においては、本発明の組成物は少なくとも約5:1のアスペクト比を有する小片を含む。ここで言う小片の「アスペクト比」とは、対象物の完全に内側に配置して対象物の表面に接するようにすることができる最も大きい想像上の球体の直径に対する、対象物を被包することができる最も小さい想像上の球体の直径の比である。例えば、球体のアスペクト比は1:1であり;他の例においては、長さ2インチ(50.8mm)及び直径1/4インチ(6.35mm)の円筒形のアスペクト比は8:1を僅かに超え;更に他の例においては、厚さ1ミル(25.4μm)、長さ1インチ(25.4mm)、及び幅1インチ(25.4mm)である本発明の膜片は約1414:1のアスペクト比を有する。
【0041】
[0043]幾つかの態様においては、本発明の組成物は少なくとも約10:1のアスペクト比を有する小片を含む。種々の態様においては、小片は、約5:1〜約10,000:1、約5:1〜約500:1、約10:1〜約1,000:1、約10:1〜約100:1、約20:1〜約100:1、又は約25:1〜約35:1のアスペクト比を有する。
【0042】
[0044]種々の態様においては、膜は、膜、組成物、又は両方に色を与える配合着色剤を含む。種々の態様においては、膜片はキャリアと対照して目立ち、白色、黒色、又はキャリアの背景色に対して視認できるか又は対照して目立つ任意の色である。これらの中で本発明において有用な配合着色剤としては、例えば金属酸化物「レーキ」のような非毒性の水溶性染料又は顔料が挙げられる。幾つかの態様においては、着色剤は、米国における使用に関してFDAによって承認されているFD&C又はD&C顔料及び染料のような、規制当局によって食品又は医薬中に含ませることが承認されているものである。これらの中で本発明において有用な着色剤としては、FD&C Red No.3(テトラヨードフルオレセインのナトリウム塩)、Food Red 17:6−ヒドロキシ−5−{(2−メトキシ−5−メチル−4−スルホフェニル)アゾ}−2−ナフタレンスルホン酸のジナトリウム塩、Food Yellow 13:キノフタロン又は2−(2−キノリル)インダンジオンのモノ及びジスルホン酸の混合物のナトリウム塩、FD&C Yellow No.5(4−p−スルホフェニルアゾ−1−p−スルホフェニル−5−ヒドロキシピラゾール−3カルボン酸のナトリウム塩)、FD&C Yellow No.6(p−スルホフェニルアゾ−B−ナフトール−6−モノスルホネートのナトリウム塩)、FD&C Green No.3(4−{[4−(N−エチル−p−スルホベンジルアミノ)フェニル]−(4−ヒドロキシ−2−スルホニウムフェニル)メチレン}−[1−(N−エチル−N−p−スルホベンジル)−Δ−3,5−シクロヘキサジエンイミン]のジナトリウム塩)、FD&C Blue No.1(ジベンジルジエチル−ジアミノトリフェニルカルビノールトリスルホン酸無水物のジナトリウム塩)、FD&C Blue No.2(インジゴチンのジスルホン酸のナトリウム塩)、及び種々の割合のこれらの混合物が挙げられる。一態様においては、着色剤は、二酸化チタン、酸化クロムグリーン、フタロシアニングリーン、ウルトラマリンブルー、酸化第2鉄、又は水不溶性染料レーキのような水不溶性無機顔料を含む。幾つかの態様においては、染料レーキとしては、FD&C Green #1レーキ、FD&C Blue #2レーキ、D&C Red #30レーキ、又はFD&C Yellow 15レーキのようなFD&C染料のカルシウム又はアルミニウム塩が挙げられる。幾つかの態様においては、例えばFD&C Blue #1のような水溶性染料を、例えばポリエチレンビーズ(例えばMicropowders, Inc.によって販売されているMicroblue Spectrabeads)中に見られるようなポリエチレンのような水不溶性ポリマー内に含ませる。幾つかの態様においては、膜はD&C Red #30のような染料を含む。幾つかの態様においては、白色着色剤、例えば二酸化チタン(TiO)、二酸化チタン被覆マイカ(例えばTimiron)、無機物、又はクレーを用いる。幾つかの態様においては、着色剤は非ブリード性染料である。種々の態様においては、膜は、膜の約0.5重量%〜約20重量%、又は膜の約1重量%〜約15重量%、又は膜の約3重量%〜約12重量%のレベルの着色剤を含む。一態様においては、本発明の組成物は、第1の色を有する第1の複数の膜片、及び第2の色を有する第2の複数の膜片を含む。好ましくは、第2の色は第1の色と異なる。
【0043】
[0045]種々の態様においては、本発明の膜は組成物の使用中に分解する。他の態様においては、膜は組成物の使用中に分解しない。幾つかの態様においては、膜はキャリア中に亜鉛含有化合物のような物質を放出する。ここで言う「分解」とは、膜又は小片の物質が物理的に崩壊して、元の膜と比べて減少した寸法の膜又は膜片を生成することを指す。かかる崩壊は、機械的、化学的、又は物理−化学的手段によるものであってよい。分解は、例えば使用中の剪断、粉砕、又は昇温温度への曝露によって引き起こすことができる。本発明の種々の歯磨剤の態様においては、かかる分解は、組成物を用いて患者の歯について組成物でブラッシングすることによって引き起こされる。一態様においては、膜は亜鉛含有化合物を放出し、その結果として亜鉛イオンを放出するように分解する。幾つかの態様においては、膜片は視覚的に認識できない小片に分解することができる。幾つかの態様においては、薄片を分解して全体でコロイド又はゲルを形成する。
【0044】
[0046]種々の態様においては、膜には、亜鉛含有化合物に加えて他の治療活性成分を含ませることができる。ここで言う治療活性成分とは、生理的疾病又は疾患の予防又は治療のために有用な物質である。かかる疾病又は疾患としては、口腔(歯及び歯肉を含む)、皮膚、毛髪、及び目のものが挙げられる。組成物の所望の効用にしたがって具体的な治療活性成分が好ましく決定される。かかる活性成分としては次のものが挙げられる。
【0045】
A.トリクロサン、塩化セチルピリジウム、臭化ドミフェン、第4級アンモニウム塩、サンギナリン、フッ化物、アレキシジン、オクトニジン、EDTAのような抗菌剤、チモール、サリチル酸メチル、ユーカリプトール、及びメントールなどのようなエッセンシャルオイル;
B.アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ジフルニサル、フェノプロフェンカルシウム、ナプロキセン、トルメチンナトリウム、インドメタシンなどのような非ステロイド抗炎症薬;
C.ベンゾナテート、エジシル酸カラミフェン、メントール、臭化水素酸デキストロメトルファン、塩酸クロフェジアノールなどのような鎮咳薬;
D.塩酸シュードエフェドリン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、硫酸シュードエフェドリンなどのような充血除去薬;
E.マレイン酸ブロモフェニラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、マレイン酸カルビノキサミン、フマル酸クレマスチン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェニルピラリン、マレイン酸アザタジン、クエン酸ジフェンヒドラミン、コハク酸ドキシルアミン、塩酸プロメタジン、マレイン酸ピリラミン、クエン酸トリペレンナミン、塩酸トリプロリジン、アクリバスチン、ロラタジン、ブロムフェニラミン、d−ブロムフェニラミンなどのような抗ヒスタミン薬;
F.グアイフェネシン、トコン、ヨウ化カリウム、抱水テルピンなどのような去痰薬;
G.ロペラミドなどのような下痢止め薬;
H.ファモチジン、ラニチジンなどのようなH拮抗薬;
I.オメプラゾール、ランソプラゾールなどのようなプロトンポンプ阻害薬;
J.脂肪族アルコール、バルビツール酸塩などのような一般的な非選択性中枢神経抑制薬;
K.カフェイン、ニコチン、ストリキニン、ピクロトキシン、ペンチレンテトラゾールなどのような一般的な非選択性中枢神経興奮薬;
L.フェニヒダントイン、フェノバルビタール、プリミドン、カルバマゼピン、エトスクシミド、メトスクシミド、フェンスクシミド、トリメタジオン、ジアゼパム、ベンゾジアゼピン、フェナセミド、フェネツリッド、アセタゾラミド、スルチアム、臭化物などのような中枢神経機能を選択的に調節する薬剤;
M.レボドパ、アマンタジンなどのような抗パーキンソン病薬;
N.モルヒネ、ヘロイン、ヒドロモルフォン、メトポン、オキシモルホン、レボルファノール、コデイン、ヒドロコドン、オキシコドン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソンなどのような麻薬性鎮痛薬;
O.サリチル酸塩、フェニルブタゾン、インドメタシン、フェナセチンなどのような鎮痛解熱薬;
P.クロルプロマジン、メトトリメプラジン、ハロペリドール、クロザピン、レセルピン、イミプラミン、トラニルシプロミン、フェネルジン、リチウムなどのような精神薬理剤。
【0046】
膜中において用いることができる薬剤の量は、有効量の薬剤を与えるのに必要な投与量によって定めることができる。特に好ましい態様においては、トリクロサンは用いず、主要な抗菌剤は亜鉛含有化合物である。
【0047】
[0047]種々の態様においては、本発明において有用な治療薬としては、虫歯予防薬、歯石制御薬、抗歯垢薬、歯周病薬活性成分、息清涼剤、悪臭制御薬、漂白剤、抗バクテリア剤、ステロイド、抗炎症薬、ビタミン、タンパク質、調整剤、保湿剤、制汗薬活性成分、脱臭薬活性成分、麻酔薬、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0048】
[0048]幾つかの口腔ケアの態様においては、膜又は口腔ケア組成物には、口腔ケアの疾患又は疾病を予防又は治療するのに有用な口腔ケア活性成分を含ませることができる。これらの中で本発明において有用な口腔ケア活性成分としては、研磨剤、虫歯予防薬、歯石制御薬、抗歯垢薬、歯周病薬活性成分、息清涼剤、悪臭制御薬、歯科用知覚過敏抑制薬、唾液分泌促進薬、漂白剤、及びこれらの組合せが挙げられる。これらの中で本発明において有用な活性物質はLeungらの米国特許6,596,298に記載されている。
【0049】
[0049]これらの中で本発明において有用な歯石制御薬としては、Na、K、Na、Na、及びKのようなピロリン酸ジアルカリ又はテトラアルカリ金属塩;ヘキサメタリン酸ナトリウムのような長鎖ポリリン酸塩;並びにトリメタリン酸ナトリウムのような環式リン酸塩;が挙げられる。幾つかの構成においては、ポリリン酸塩はWhite, Jr.の米国特許6,241,974に開示されているようなβ相ピロリン酸カルシウムである。幾つかの態様においては、膜は、膜の約15〜20重量%のレベルの虫歯予防薬を含む。
【0050】
[0050]本発明において有用な臭気減少薬としてはイオウ沈殿剤が挙げられる。かかるイオウ沈殿剤としては、銅塩又は亜鉛塩のような金属塩が挙げられる。かかる塩としては、グルコン酸銅、クエン酸亜鉛、及びグルコン酸亜鉛が挙げられる。これらの亜鉛塩は、膜中に含まれる亜鉛含有化合物と組み合わせるか又はこれに加えて用いることができる。種々の態様においては、膜は、膜の約0.01〜約30重量%、膜の約2重量%〜約2.5重量%、又は膜の約10重量%〜約20重量%のレベルのイオウ沈殿剤を含む。
【0051】
[0051]幾つかの態様においては、膜及び/又は口腔組成物に唾液分泌促進薬(保水薬)を含ませることができる。かかる薬剤としては、Kleinbergらの米国特許4,820,506に開示されているものが挙げられる。幾つかの構成においては、唾液分泌促進薬としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、アスコルビン酸、アジピン酸、フマル酸、及び酒石酸のような食用酸を挙げることができる。種々の態様においては、膜は、膜の約0.01〜約12重量%、膜の約1重量%〜約10重量%、又は膜の約2.5重量%〜約6重量%のレベルの唾液分泌促進薬を含む。幾つかの態様においては、唾液分泌促進薬は口内乾燥症の改善において用いることができる。
【0052】
[0052]幾つかの口腔ケアの態様においては、膜は、マグノリアエキス、トリクロサン、ブドウ種子エキス、チモール、サリチル酸メチル、ユーカリプトール、メントール、ホップ酸、塩化セチルピリジニウム(CPC/Zn及びCPC+酵素を含む)、及びウスニン酸のような抗バクテリア剤;息清涼剤(例えば、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、亜塩素酸亜鉛、及びα−イオノン)のような抗炎症薬;硝酸カリウム、知覚過敏抑制ポリマー、及び知覚過敏抑制無機物質のような歯科用知覚過敏抑制薬;マグノリアエキス、ウルソール酸のような抗炎症薬;アロエ及びクランベリーエキス;パンテオン、レチニルパルミテート、葉酸、酢酸トコフェロール、及びビタミンAのようなビタミン;ローズマリー、オレガノ、カモミールエキス、ペパーミント、薬用サルビア、オルコミフォラ、及びミルラのようなハーブ又はハーブエキス;乳タンパクのようなタンパク質、及び過酸化物生成酵素、アミラーゼのような酵素、パパイン、グルコアミラーゼ、グルコース酸化酵素、及び「次世代」酵素のような歯垢分解薬;過酸化水素、過酸化尿素、及びリン酸塩のような漂白剤;アスピリン(アセチルサリチル酸)、カフェイン、及びベンゾカインのような薬効成分;プロバイオティクス;シリカ(高洗浄性シリカを含む)のような研磨剤;第1スズ塩(例えばフッ化第1スズ)又はアミノフッ化物のような虫歯予防薬;グアニジノエチルジスルフィドのような一酸化窒素合成酵素抑制剤;カルシウム;ポリウミルホスホン酸のような抗付着成分;Solbrol(Bayer Chemicals AG)のような保存料;シリコーン;クロロフィル化合物、βカロチンのような抗白斑症薬;ビタミンEのような抗酸化剤;及びこれらの組合せのような他の活性物質を含む。幾つかの態様においては、膜は、膜の約0.01〜約30重量%、膜の約2重量%〜約25重量%、又は膜の約10重量%〜約20重量%の濃度のかかる活性物質を含む。
【0053】
[0053]幾つかの態様においては、膜及び/又は口腔ケア組成物は保存料を含む。保存料は、膜の約0.001重量%〜約5重量%、好ましくは約0.01重量%〜約1重量%の量で加えることができる。保存料の非限定的な例としては、安息香酸ナトリウム及びソルビン酸カリウムが挙げられる。
【0054】
[0054]幾つかの態様においては、歯磨剤又は他の組成物中に懸濁している膜マトリクス中に亜鉛含有化合物を混入させることによって、これらの薬剤が組成物中に存在している反応性成分と相互作用することから隔離されるので、製造及び貯蔵中にはこれらの薬剤は反応性の組成物成分から実質的に分離して保持され、一方、その後に組成物を使用する際には膜マトリクスから放出される。隔離によって、キャリア材料中に存在している亜鉛含有化合物と他の成分との間に起こる可能性がある有害反応が回避されるだけでなく、亜鉛含有化合物の溶解及び亜鉛イオンの早期放出も回避され、並びに亜鉛含有化合物の使用に関連する渋味も減少する。
【0055】
[0055]本発明の組成物は、その中に膜又は小片を混入させたキャリアを含む。ここで言う「キャリア」とは、その中に膜を混入させることができ、組成物を投与又は適用する人又は動物の患者に投与又は適用するのに好適な任意の材料又は組成物である。ここで言う「混入」とは、キャリア中に膜を埋封又は懸濁させることを指す。複数の小片を含む種々の態様においては、かかる小片は、小片をキャリア中に埋封、懸濁、分散、又は他の方法で分配することによって混入させることができる。種々の態様においては、小片はキャリア全体にわたって実質的に均一に分配する。他の態様においては、小片はキャリア中に均一に分配しない。幾つかの態様においては、複数の膜片の分配はキャリア内で実質的に等方性である。キャリア中に分散又は懸濁している複数の膜片を含む歯磨剤組成物は、Colgate-Palmolive Company, New York, N.Y.からMax Fresh又はMax Whiteの商品名で商業的に入手できる。
【0056】
[0056]膜は、亜鉛イオンの源を与える亜鉛含有化合物を含む。亜鉛イオンは、歯肉炎、歯垢、知覚過敏の減少、及び口臭の改善を促進することが分かっている。しかしながら、多くの亜鉛含有化合物は難溶性であり、したがって有効量の亜鉛イオンを与えるためには比較的多量で用いなければならない。残念なことに、多くの亜鉛含有化合物はまた、特に比較的高濃度で用いた場合には消費者に不快な渋味を有する。本発明は、利用可能な亜鉛イオンの量を増加させて、それによって、より低い濃度の膜を用いて同等か又はそれ以上の有益な効果を達成することを可能にするメカニズムを与える。
【0057】
[0057]膜中に亜鉛含有化合物を存在させることによって、歯磨剤中に比較的不溶性の化合物を含ませることが可能になる。亜鉛の不溶性によってその有用性がおそらくは1〜2分の消費者のブラッシング中に制限されるので、歯磨剤配合物中の膜を作用させる方法は通常は膜の粘膜付着性及びその後の口内での膜の保持に基づく。
【0058】
[0058]幾つかの態様においては、本発明は、1種類以上のセルロースポリマー及びコロイド粒子を含むポリマーマトリクス膜を提供する。幾つかの態様においては、コロイド粒子はポリマーマトリクス膜の乾燥重量の40%〜50%の量で存在する。幾つかの態様においては、1種類以上のセルロースポリマーは、ポリマーマトリクス膜の乾燥重量の40%〜50%を構成する。幾つかの態様においては、コロイド粒子は酸化亜鉛粒子である。
【0059】
[0059]幾つかの態様においては、コロイド粒子は多価金属の水不溶性金属化合物を含む。幾つかの態様においては、ここで記載する組成物中において用いるのに好適なコロイド粒子は、酸化ケイ素(SiO)、酸化モリブデン(Mo)、酸化アルミニウム(Al)、酸化チタン(TiO)、又は酸化ジルコニウム(ZrO)を含む。
【0060】
[0060]他の態様においては、1種類以上のセルロースポリマー及びコロイド粒子はポリマーマトリクス膜の乾燥重量の80%〜95%を構成する。
[0061]幾つかの態様においては、本発明の膜は8%未満のカノーラ油を含む。他の態様においては、膜はカノーラ油を実質的に含まない。
【0061】
[0062]幾つかの態様においては、1種類以上のセルロースポリマーの少なくとも1つはヒドロキシアルキルメチルセルロースである。更なる態様においては、1種類以上のセルロースポリマーの少なくとも1つはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。幾つかの態様においては、1種類以上のセルロースポリマーの少なくとも1つはHPMCであり、コロイド粒子は酸化亜鉛粒子である。
【0062】
[0063]HPMCは、本発明において用いるのに好ましい骨格ポリマーであり、幾つかの商業的に入手できるMaxFresh製品において現在用いられている骨格ポリマー系である。HPMCは長鎖の非イオン性ポリマーであり、その粘膜付着性は粘膜成分との水素結合の形成に起因する。
【0063】
[0064]HPMCは粘膜付着性を示すが、これは最良の粘膜付着性ポリマーの1つとは考えられていない(Majithiya, R.ら; Drug Delivery Technology; vol.8 (2008) 40-45)。HPMCの水和及び結合に対するその影響に関する1つの仮説は、3つの段階に分類することができる。
【0064】
1.低い水濃度においては、膜は水和し始めて結合が起こる。
2.理想的な水濃度においては、膜は完全に水和して最大の結合が起こる。
3.より高い水濃度においては、膜は過剰に水和し始めて溶解し始める。
【0065】
酸化亜鉛結合に関する1つの仮説は、水不溶性の金属酸化物(酸化亜鉛)によってポリマー(HPMC)の生体付着性が向上するということである。陰荷電ムチン鎖(糖物質)への金属粒子の表面上の部分的にイオン化した二価又は三価カチオンの間にイオン相互作用が起こる。Vasir, J.ら; International Journal of Pharmaceutics; vol.255 (2003) 13-32; Jacob J.らの米国特許6,123,965(これらの開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する)を参照。これらの相互作用は、ZnO膜を口腔内において粘膜付着性にするのを促進すると考えられる。ポリマー系を変化させ、より多い量の亜鉛含有化合物を口腔組成物中に導入することによって、亜鉛の量を、抗歯垢及び抗歯肉炎の効能を有することが臨床的に証明されている現在市販されているクエン酸亜鉛配合物と同等のレベルに増加させることが可能である。
【0066】
[0065]好ましい態様の口腔組成物は、膜中に亜鉛イオンの源を与える亜鉛含有化合物を含む。亜鉛含有化合物は、亜鉛と無機又は有機対イオンとの可溶性又は難溶性化合物であってよい。例としては、亜鉛のフッ化物、塩化物、クロロフッ化物、酢酸塩、ヘキサフルオロジルコン酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、グリシン酸塩、ピロリン酸塩、メタリン酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩、及び酸化物が挙げられる。好ましくは、亜鉛含有化合物は酸化亜鉛であり、トリクロサンのような従来の抗バクテリア剤の代替として用いる。
【0067】
[0066]膜中に含ませる亜鉛含有化合物の量は、約35重量%〜約60重量%、好ましくは約40重量%〜約55重量%、最も好ましくは約50重量%であってよい。また、口腔組成物中に含ませる膜の量は、大体、約0.1重量%〜約5.0重量%、より好ましくは約0.25重量%〜約3.0重量%、最も好ましくは約0.5重量%〜約2.0重量%の膜の範囲であってよい。したがって、全口腔組成物中において用いる亜鉛含有化合物の量は、組成物の全重量を基準として約0.5〜約2.5重量%、通常は口腔ケア組成物の全重量を基準として約1〜約2重量%の範囲であってよい。
【0068】
[0067]幾つかの態様においては、膜は、ジオール、界面活性剤、スターチ、着色剤、染料、香味料、甘味料、漂白剤、息清涼剤、研磨剤、カチオン性予防薬及び治療薬、フッ化物イオン源、二価スズイオン源、歯石制御薬、抗菌剤、抗酸化剤、唾液分泌促進薬、抗歯垢薬、抗炎症薬、H拮抗薬、知覚過敏抑制薬、栄養剤、及びタンパク質からなる群から選択される1種類以上の更なる成分を更に含む。
【0069】
[0068]幾つかの態様においては、膜はポリソルベート80及び/又はプロピレングリコールを更に含む。幾つかの態様においては、膜は、約40%〜約50%のHPMC;約40%〜約50%の酸化亜鉛粒子;約7.5%〜約9%のプロピレングリコール;及び約1.25%〜1.5%のポリソルベート80;を含む。
【0070】
[0069]幾つかの態様は、1種類以上のセルロースポリマー及びコロイド粒子を含むスラリーを形成し;スラリーを表面上に施して、スラリーによって表面上にスラリーの層を形成し;そして、スラリーの層を乾燥して溶媒を除去して、ポリマーマトリクス膜を形成する;工程を含む、ここに記載する膜の製造方法を提供する。幾つかの態様は、ポリマーマトリクス膜を切断又は打ち抜いて膜片又はストリップを形成する工程を更に含む。更に他の態様は、経口的に許容できる賦形剤、及びここに記載する任意の膜を含む歯磨剤組成物を提供する。幾つかの態様においては、膜は膜片又はストリップの形態である。
【0071】
[0070]幾つかの態様においては、亜鉛含有化合物は粒子の形態で存在する。幾つかの態様においては、粒子は約1〜約1000nmの平均粒径を有する。他の態様においては、粒子は約1μm〜約850nm、約50μm〜約150nm、約15nm〜約500nm、約30nm〜約250nm、及び/又は約5μm〜約100nmの平均粒径を有していてよい。
【0072】
[0071]幾つかの態様においては、粒子は凝集していない。凝集していないとは、粒子が約1μmより大きく、好ましくは約950nm又は850nmより大きい寸法を有する塊に集合していないことを意味する。しかしながら、更なる態様においては、粒子は、1μmよりも大きい平均粒径を有する凝集粒子及び他のコロイド粒子と混合することができる。幾つかの態様においては、粒子の80%超が凝集していない。幾つかの態様においては、粒子の90%超が凝集していない。
【0073】
[0072]亜鉛イオンは、歯磨剤組成物中の膜中に存在する亜鉛含有化合物から有効量で誘導される。亜鉛イオンの有効量は、少なくとも1000ppm、好ましくは2,000ppm〜15,000ppmの亜鉛イオンとして定義される。より好ましくは、亜鉛イオンは、3,000ppm〜13,000ppm、更により好ましくは4,000ppm〜10,000ppmの量で存在させる。これは、歯の表面に供給するための組成物中に存在させる亜鉛イオンの全量である。
【0074】
[0073]亜鉛イオン源として働く好適な亜鉛含有化合物の例は、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、クエン酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、リンゴ酸亜鉛、酒石酸亜鉛、炭酸亜鉛、リン酸亜鉛、及び米国特許4,022,880に示されている他の塩である。
【0075】
[0074]亜鉛含有化合物は、当該技術において公知の技術を用いて膜中に導入することができる。例えば、膜を形成するポリマー又はポリマー混合物を、プロピレングリコール、ポリソルベート80(Tween 80)、水、香味料、着色剤などのような添加剤と一緒に用いて亜鉛含有化合物をスラリーで形成し、スラリーを乾燥して膜を形成することができる。膜を製造する他の方法は公知であり、例えば米国特許6,669,929及び米国特許出願公開2003/0053962(その開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されている。亜鉛含有化合物が酸化亜鉛であり、膜の全重量を基準として約50重量%の量で乾燥膜中に存在させることが好ましい。
【0076】
[0075]比較的高濃度の亜鉛含有化合物を含む膜の物理特性は、膜形成プロセスの種々のパラメーターを変化させることによって変化させることができる。これらのパラメーターは、スラリー段階及び乾燥膜段階の両方における膜の特性を定量化することによって決定することができる。スラリー段階においては、ポリマーと他の膜成分との間の相互作用によって膜マトリクスの構造が形成される。粘度及び弾性率(G’)のようなスラリーの粘弾性特性によって、ポリマー構造及びスラリーの加工性を特徴付けることができる。スラリーの加工及び乾燥の後、バルク膜を形成してポリマーマトリクスを固化させることができる。ガラス転移温度、引張強さ、及び溶解時間のような機械特性を用いて、膜の安定性を求めることができる。ポリマーの相互作用のようなミクロ構造特性と、機械特性のような膜のマクロ構造特性とのバランスを取ることにより、膜を亜鉛含有化合物のための供給プラットフォームとしてより良好に利用することができる。
【0077】
[0076]例えば、膜は好ましくは患者の口腔内で溶解させることができる。溶解時間は、流動していない一定体積の水中に膜片を溶解するのに必要な時間量である。迅速な溶解時間を有する膜は、迅速に分解するので時には低い引張強さを有する。したがって、引張強さ及び溶解時間のような膜の特性は、最終製品の要求に基づいて配合プロセス中に調整することができる。当業者であれば、加工に耐えることができ、それでも口内で速やかに溶解させることができる堅固な膜を具体的に配合するための、これらの2つの特性の間のバランスが存在することを認識するであろう。
【0078】
[0077]例えば、本発明者らは、得られる膜に対する亜鉛装填量の効果を求めるために実験を行った。亜鉛含有化合物のより高い濃度においては、ポリマー構造が過度に剛性になり、膜の粘弾性特性(例えば弾性率G’)が劇的に増加した。G’の値(ダイン/cm)は、膜の最終重量を基準として50重量%より多い亜鉛の濃度において急激に増加したことが分かった。本発明者らは、亜鉛含有化合物の量を50%より多く増加させるとスラリーを取り扱うのが困難になり、より低い濃度のように流動しなくなることを更に見出した。50%より多い亜鉛装填量においては、流れ曲線(剪断速度vs粘度)の形状が劇的に変化し、ZnO粒子−粒子の相互作用が優勢になってポリマーネットワークが分裂することが示される。
【0079】
[0078]また、得られる膜の機械特性を用いて物理的安定性を求めることができる。例えば、50重量%の酸化亜鉛を含む膜は30重量%の酸化亜鉛を含む膜よりも高いガラス転移温度を有していた。したがって、より多い量の亜鉛含有化合物を含む膜はより強靱であった。更に、膜の剛性の尺度である貯蔵弾性率(E’)は、ZnOの量が30%から50%に増加すると膜の強度も増加することを示す。下記の実施例において測定されたより高いE’はこの結論を支持する。一般に、ZnOは立体安定化として知られるプロセスにおいてポリマーに付着する充填剤である。ZnOが存在しないと、ポリマーの動きが制限されず、これによって湾曲のような美容的な不安定性が引き起こされる可能性がある。ZnOを加えると、ポリマーネットワークが制限されるようになり、これによって膜が剛性になる。しかしながら、50%より多いZnOを加えるとポリマー構造が分解され、これによって膜が脆性になってクラッキングを起こすようになる。ZnOを50%まで増加させることは、より剛性でより強固でより安定な膜が得られることに等しいので、これらの機械特性は他の物理特性と相関する。また、50%酸化亜鉛膜の引張強さも、30%酸化亜鉛膜と比較して向上した。
【0080】
[0079]幾つかの態様の組成物は、1つの相がキャリアを構成し、第2の相が上記の膜又は小片を構成する2相を含むものとして説明することができる。ここで用いる「相」という用語は、物理科学及び材料科学において理解されている物理相、即ちその特性及び組成が均一である材料の部分を示す。しかしながら、ここで用いる相は不連続であってよく、即ち相に複数の別々の成分を含ませることができる。例えば、同一の組成の複数のポリマー膜片は単一の相を構成するとみなされる。幾つかの態様においては、膜片は、第1の相を含む材料内に完全に埋封するか、或いは第1の相の表面上において完全か又は部分的に露出させることができる。例えば、組成物がゲル及び膜片の両方を含む歯磨剤である場合には、膜片は、ゲルによって完全に被包することができ、或いはゲルの表面上において部分的か又は完全に露出させることができる。幾つかの態様においては、組成物は2より多い相を含む。かかる多相組成物としては、ここに記載する膜片に加えて、それぞれが組成物に対して相を与える2種類のキャリアを有するものが挙げられる。他の多相組成物としては、単一のキャリア及び2種類以上の複数の小片を有し、複数の小片が異なる組成を有するものが挙げられる。
【0081】
[0080]種々の態様においては、キャリアは、液体、半固体、又は固体である。「液体」は低粘度又は高粘度の液体であってよい。液体は、雰囲気条件下でごくわずかしか流動しないような液体であってよい。例えば、通常の棒状ハンドソープのような石けんは本発明における液体とみなすことができる。液体はチキソトロピー性の液体であってよい。ここで用いる「半固体」とは、ゲル、コロイド、又はガムであってよい。ここで用いる半固体及び液体は粘度に基づいて識別される流体である。半固体は高粘度の流体であり、一方、液体はより低い粘度を有する。これらの2つのタイプの流体の間に明確な境界線はない。幾つかの態様においては、半固体は数千mPa・秒程度の高さの粘度を有する。これらの中で本発明において有用なキャリアとしては、液体、ペースト、軟膏、及びゲルが挙げられ、透明、半透明、又は不透明であってよい。
【0082】
[0081]幾つかの態様においては、本発明の組成物は口腔に投与するのに好適な口腔ケア組成物である。かかる組成物としては、歯磨剤、うがい液、歯科用ゲル、トローチ、ビーズ、ガム、口腔ストリップ、ミント、液体歯磨、スプレー、ペイントオンゲル、リップクリーム、漂白ストリップ、息ストリップ、経口チューズ、及びこれらの組合せが挙げられる。ここに開示する口腔ケア組成物は、例えば虫歯予防、漂白、歯垢の予防又は減少、歯肉炎の予防又は減少、歯石制御、知覚過敏症の予防又は減少、或いは口臭の予防又は減少、及び染みの予防のために用いることができる。
【0083】
[0082]キャリアの具体的な組成は、好ましくは組成物の所期の用途によって定まる。種々の態様においては、キャリアは約5%〜約95%の水又は約10%〜約70%の水を含む水性物質である。他の態様においては、キャリアは実質的に非水性である。歯磨剤キャリアにおいては、含水量は約5%〜約70%、約10%〜約50%、又は約20%〜約40%であってよい。水の存在によって膜の分解が引き起こされる場合には、乾燥膜は自由水を含まず、水の量が実質的に0%又は無視できる量であることが特に好ましい。
【0084】
[0083]キャリアには、乳化剤、増粘剤、充填剤、及び保存料などの任意の種々の材料を含ませることができる。幾つかの態様においては、キャリアには、上記に記載のもののような機能性又は活性物質を含ませることができる。幾つかの態様においては、キャリアは膜と同じ機能性物質を含む。
【0085】
[0084]一態様においては、キャリアは歯磨剤として用いるのに好適なものである。幾つかの態様においては、キャリアは、グリセリン、ソルビトールのような保湿剤、或いはポリエチレングリコール又はプロピレングリコールのようなアルキレングリコールを含む。幾つかの構成においては、キャリアは、組成物の約10重量%〜約80重量%、又は約20重量%〜約60重量%のレベルの保湿剤を含む。これらの中で本発明において有用なキャリア組成物は、Garlick, Jr.らの米国特許5,695,746及びMei-King Ngらの4,839,157に開示されている。
【0086】
[0085]種々の歯磨剤の態様においては、キャリアは、増粘剤、ゲル化剤、又はこれらの組合せを含む。本発明において有用な増粘剤又はゲル化剤としては、無機の天然又は合成増粘剤又はゲル化剤が挙げられる。幾つかの構成においては、キャリアは、組成物の約0.10重量%〜約15重量%、又は約0.4重量%〜約10重量%の合計レベルの増粘剤及びゲル化剤を含む。本発明において有用な増粘剤及びゲル化剤の例としては、アモルファスシリカ、例えばZeodent 165(Huber Corporation)のような無機増粘性シリカ;アイルランドゴケ;ι−カラギーナン;トラガカントガム;又はポリビニルピロリドン;が挙げられる。幾つかの態様においては、キャリアは、シリカ、か焼アルミナ、重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸ジカルシウム、又はピロリン酸カルシウムのような研磨剤を含む。種々の態様においては、キャリアは視覚的に透明な組成物であってよい。
【0087】
[0086]視覚的に透明なキャリアを含む種々の歯磨剤の態様においては、本組成物は少なくとも1種類の研磨剤を含む。これらの中で本発明において有用な研磨剤としては、例えばZeodent 115(Huber Corporation)のようなコロイダルシリカ、及びアルカリ金属アルミノケイ酸塩コンプレックス(即ち、アルミナを含むシリカ)が挙げられる。幾つかの構成においては、研磨剤は、水及び/又は保湿剤と混合したゲル化剤のものに近い屈折率を有していてよい。種々の態様においては、キャリアは、組成物の約5重量%〜約70重量%のレベルの研磨剤を含む。
【0088】
[0087]幾つかの歯磨剤においては、キャリアは1種類の界面活性剤又は複数の界面活性剤の混合物を含む。これらの中で本発明において有用な界面活性剤としては、水素化ココナツオイル脂肪酸のモノスルフェート化モノグリセリドのナトリウム塩のような少なくとも1種類の高級脂肪酸モノグリセリドモノスルフェートの水溶性塩;コカミドプロピルベタイン;ラウリル硫酸ナトリウムのような高級アルキルスルフェート;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネートのようなアルキルアリールスルホネート;高級アルキルスルホアセテート;ナトリウムラウリルスルホアセテート;1,2−ジヒドロキシプロパンスルホネートの高級脂肪酸エステル;及び、脂肪酸、アルキル、又はアシル基中に12〜16個の炭素を有するもののような低級脂肪族アミノカルボン酸の実質的に飽和の高級脂肪族アシルアミド;並びにこれらの混合物;が挙げられる。アミドは、例えばN−ラウロイルサルコシン、並びにN−ラウロイル、N−ミリストイル、又はN−パルミトイルサルコシンのナトリウム、カリウム、及びエタノールアミン塩であってよい。種々の態様においては、キャリアは、組成物の約0.3重量%〜約5重量%、又は組成物の約0.5重量%〜約3重量%のレベルの界面活性剤を含む。
【0089】
[0088]本発明はまた、歯磨剤キャリアを製造する方法も提供する。一態様においては、第1の均一なゲル相が形成されるまで、水及び少なくとも1種類の保湿剤を通常のミキサー内で分散させる。研磨剤を第1の均一なゲル相中に加える。第2の均一なゲル相が形成されるまで、第1の均一なゲル相及び研磨剤を混合する。増粘剤、香味料、及び界面活性剤を第2の均一なゲル相に加える。これらの成分を、約20〜100mmHgの真空下において高速で混合する。
【0090】
[0089]本発明の組成物は、好ましくは通常の貯蔵条件下で安定である。ここに言う「安定」とは、組成物の外観、香味、レオロジー、及び化学組成のような1つ、好ましくは全部の組成物特性に大きな悪影響がないことを指す。好ましくは、本組成物の安定性としては、組成物中の膜(存在する場合には小片を含む)の組成的及び物理的安定性が挙げられる。種々の態様においては、膜を含む組成物は少なくとも約2年間の間雰囲気温度において貯蔵安定性である。しかしながら、幾つかの態様においては、他の形態で安定な膜は、(上記で議論したように)使用中、例えば歯磨剤組成物を用いて歯をブラッシングしている間に分解させることができる。
【0091】
[0090]幾つかの態様においては、本組成物には、ここに記載する膜片に加えて、それぞれが組成物に相を与える2種類以上のキャリアを含ませることができる。かかる組成物は色のブリードに対して安定にすることができる。例えば、Wongらの米国特許6,315,986に開示されているような膜片及び縞状歯磨剤を組成物に含ませることができる。幾つかの態様においては、膜片は、向上した美的外観のために1つ又は複数の縞部と異なる1つ又は複数の色のものであってよい。
【0092】
[0091]幾つかの態様はまた、キャリア中に混入させた膜を含む組成物を製造する方法も提供する。種々の態様においては、複数の小片をキャリアと混合する。幾つかの構成においては、キャリア及び複数の膜片を混合することができる。幾つかの構成においては、混合にはゆっくりとした撹拌を含ませることができる。1つの好ましい態様においては、その中に複数の薄片が分配されているキャリアを含む組成物の製造方法は、
(a)キャリアを提供し;
(b)比較的高濃度の亜鉛含有化合物を含む膜の薄片をキャリアに加えて混合物を形成し;そして
(c)混合物をホモジナイズする;
ことを含む。
【0093】
[0092]ここで用いる「ホモジナイズ」という用語は、キャリア中の小片の実質的に均一な分布を与えるように小片及びキャリアを混合することを指す。しかしながら、得られる組成物は未だ2相の組成特性を保持していることを留意すべきである。ホモジナイズは、任意の種々の通常のホモジナイザーを用いて行うことができる。
【0094】
[0093]他の方法においては、膜をキャリアの一成分(例えば歯磨剤用の保湿剤)に加える。次に、キャリアの残りを形成し、次に膜の混合物をキャリアに加えることができる。
[0094]ここに記載する幾つかの態様はまた、人又は動物の患者に亜鉛含有化合物を投与する方法も提供する。ここで言う「投与」とは、それによって組成物を患者に適用又は投与する任意の方法を指す。種々の態様においては、投与は局所的であり、この場合には組成物を、口腔の表面(例えば、歯、歯肉、及び舌)のような患者の外表面に適用する。勿論、投与の具体的な経路及び方法は組成物の所期の用途によって定まる。
【0095】
[0095]種々の態様においては、本発明は、キャリア中に混入させた膜を含み、膜が比較的高濃度の亜鉛含有化合物を含む組成物を患者に局所適用することを含む、亜鉛含有化合物をそれが必要な人又は動物の患者に投与する方法を提供する。一態様においては、本方法は、膜を局所適用した後に膜を分解することを更に含む。かかる分解は、化学的及び/又は機械的手段などの任意の種々の方法によって行うことができる。化学的手段としては、水又は投与部位に存在する物質(例えば、口腔ケア用途においては唾液)との接触によって膜を分解することが挙げられる。物理的手段としては、使用(例えば歯磨剤用途においてはブラッシング)中に組成物に物理的エネルギーを加えることによって生成する撹拌、粉砕、及び剪断力が挙げられる。
【0096】
[0096]種々の態様においては、本発明は口腔ケア疾患の治療方法を提供する。ここに言う「口腔ケア疾患」とは、歯、口腔粘膜、歯肉、及び舌の疾病又は疾患などの、口腔に組成物を投与することによって予防又は治療することができる任意の疾病又は疾患である。かかる疾患としては、虫歯、歯肉炎、歯周病、並びに黄変及び口臭のような美容的疾患が挙げられる。
【実施例】
【0097】
[0097]ここに記載した幾つかの態様は、以下の非限定的実施例を参照することによって更に理解することができる。
実施例1:
[0098]本実施例は、変化する量の酸化亜鉛を含むポリマー膜を製造する種々の方法を示す。また、30重量%の酸化亜鉛を含む現在入手できる商業的膜製品(Colgate-Palmolive Company, New York, NYから入手できるMaxFresh Nite配合物で商業的に入手できる)も下表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
【表3】

【0101】
【表4】

【0102】
[0099]60%酸化亜鉛膜配合物は強固でなく、脆すぎるので使用可能な膜に成形することができないことが分かった。この好適でない膜は、膜の乾燥プロセス中に膜に亀裂が入ったことで視覚的に明らかであった。かかる膜を用いて好適な口腔ケア組成物を配合することができたが、その物理特性のために商業的規模で加工するのが困難であるので、この膜は商業的運転において用いないことが好ましい。以下の実施例によって、スラリー中の酸化亜鉛の量を変化させることが、膜形成特性及び得られる膜の特性にいかに影響を与えるかを更に示す。
【0103】
実施例2:
[0100]本実施例は、膜スラリーのレオロジー特性に対するZnO粒子の効果を示す。ZnO及び脱イオン水の濃度を変化させ、一方、HPMC、プロピレングリコール、及びポリソルベート80を一定に保持して膜スラリーを製造した。スラリー中のZnOの量は、0%、30%、40%、45.5%、50%、55%、及び60%のZnOの乾燥膜濃度を基準とした。スラリーの組成を表5に示す。
【0104】
【表5】

【0105】
[00101]脱イオン水を約80℃に加熱することによってスラリーを製造した。配合物の約半分の量の水をビーカーに加えた。次に、HPMC E5を加え、ポリマーが湿潤するまで塔頂ミキサーを用いて混合した。次に、HPMC E50を加え、ポリマーの導入を確保するためにビーカーの壁を断続的に掻き取りながらスラリーを20分間混合した。次に、ZnO粉末を水の残りの量と一緒に加えた。混合の15分後、プロピレングリコール及びポリソルベート80を加えた。更に20分間混合した後にスラリーが完成した。レオロジー実験を行う前に、SpeedMixer DAC150 FVZを用いて1800rpmで5分間混合することによってスラリー中の気泡を除去した。
【0106】
[00102]同心円筒形の円錐DIN形状を有するTA InstrumentsからのAR2000ex流動計を用いてレオロジー測定を行った。歪みスイープ実験から、弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)のような粘弾性特性を得た。歪みスイープ測定のために、角周波数を1Hzに保持し、一方、歪みは0.1〜500%で変化させた。剪断速度を100〜0.1s−1で変化させて行った定常状態流動実験から粘度測定値を得た。酸化亜鉛濃度の関数としての膜スラリーの弾性率(G’)の効果を図1に示す。剪断速度の関数としての粘度に対する亜鉛イオン濃度の効果を図2に示す。
【0107】
[00103]G’に加えて、剪断速度の関数としての粘度プロファイルを用いて、スラリーの流動性、及び最終的には加工性に対するZnO濃度の効果を定量化した。一般に、ZnO濃度が増加すると、粘度も増加する(図2)。40%以下のZnO濃度においては、粘度プロファイルの形状は同様であり、これらは準希薄溶液に特有のものである。これらのスラリーにおいては、ポリマー−ポリマーの相互作用が優勢であり、粒子はより少ない役割しか果たさない。したがって、スラリーは液体状であり、非常に流動性である。45.5〜50%のZnO装填量においては、流動曲線の形状は僅かに変化し、粘弾性の増加が観察される。この粘度の増加は、主としてZnO−ポリマーの相互作用によってもたらされ、より具体的にはコロイド粒子がポリマー鎖に対して有する制限効果によってもたらされる。50%より多いZnO装填量においては、粘度プロファイルは劇的に変化し、これはZnO粒子−粒子の相互作用が優勢であることを示し、これによってポリマーネットワークが分解する。
【0108】
[00104]増加した量のZnOを加えているので、G’の増加は膜の構造ネットワークの強化を示す。しかしながら、50%より多いZnO装填量においては、ポリマー構造は、G’の劇的な増加によって示されるように剛性になりすぎるので、膜の完全性を保持することができない。剪断速度の関数としての粘度プロファイルを用いて、スラリーの流動性、及び最終的には加工性に対するZnO濃度の効果を定量化した。一般に、ZnO濃度が増加すると、粘度も増加する。
【0109】
[00105]40%以下のZnO濃度においては、図2に示す流動曲線の形状は同様であり、これらは準希薄溶液に特有のものである。これらのスラリーにおいては、ポリマー−ポリマーの相互作用が優勢である。45.5〜50%のZnO装填量においては、流動曲線の形状が僅かに変化し、ZnO−ポリマーの相互作用の増加した効果を示す。しかしながら、50%より多いZnO装填量においては、曲線は劇的に変化し、ZnO粒子−粒子の相互作用が優勢であることを示し、これによってポリマーネットワークが分解する。更に、50%より多いZnO装填量のスラリーの粘度は非常に高く、製造加工性が限定される。したがって、粘弾性特性に基づくと、安定な膜に加工するために必要な流動性及び構造完全性を与えるためには50%のZnO装填量が好ましい濃度であるように思われる。
【0110】
実施例3:
レオロジーを用いて膜への前駆体であるスラリーを特性分析することができるので、動的機械分析器を用いて膜自体の機械特性を測定して、種々の膜の物理的安定性を求めることができる。この実験においては、試験した膜は、30重量%の酸化亜鉛を含む膜、及び50重量%の酸化亜鉛を含む膜であった。膜が軟化する温度であるガラス転移温度(Tg)から、50%ZnO膜は、そのより高いTgのために30%ZnO膜よりも強固であることが分かった(表6)。
【0111】
【表6】

【0112】
更に、膜の剛性の尺度である貯蔵弾性率(E’)は、ZnOの量を30%から50%に増加させると膜の強度も増加することを示す。より高いE’はこの結論を支持する。一般に、ZnOは立体安定化として知られているプロセスでポリマーに付着する充填剤である。ZnOが存在しないと、ポリマーの動きが制限されず、これによって湾曲のような美容的な不安定性が引き起こされる可能性がある。ZnOを加えると、ポリマーネットワークが制限されるようになり、これによって膜が剛性になる。しかしながら、50%より多いZnOを加えるとポリマー構造が分解され、これによって膜が脆性になってクラッキングを起こす。ZnOを50%まで増加させることは、より剛性でより強固でより安定な膜が得られることに等しいので、これらの機械特性は他の物理特性と相関する。
【0113】
実施例4:
[00106]引張強さ及び溶解時間は、膜の特性及び強靱性を示す物理特性である。表7に、30重量%の酸化亜鉛を含む膜(Zn30)及び50重量%の酸化亜鉛を含む膜(Zn50)に関して測定した物理特性を示す。
【0114】
【表7】

【0115】
これらの結果は、加工に耐えることができ、更に口内で速やかに溶解させることができる強靱な膜を配合するための、破壊強さと溶解時間との間に存在するバランスに基づいて許容できるものである。
【0116】
実施例5:
[00107]亜鉛吸収実験を行って、異なる装填量を有する歯磨剤中に同じレベルの酸化亜鉛膜を用いて人工軟質基材へ供給される亜鉛の量を比較した。膜(Zn30及びZn50)をMaxFresh Nite歯磨剤基剤中に含ませた。実験は、
1.0.2%の膜濃度におけるZn30及びZn50;
2.Zn50膜と同量のZnO粉末との比較;及び
3.異なる膜濃度におけるZn50;
を比較することを含んでいた。
【0117】
試験のための幾つかのパラメーターを、複数の実験に関して一定に保持した。これらは、
・1時間のVitro-Skinインキュベート;
・歯磨剤と脱イオン水との1:2希釈;
・5mLの脱イオン水で10秒間の洗浄を2回;
を含んでいた。
【0118】
1.0.2%の膜濃度におけるZn30及びZn50:
[00108]評価のための製品開発によって歯磨剤試料を与えた。Zn30及びZn50膜を、0.2%の膜濃度において、MaxFresh Niteの陽性対照試料及びMaxFresh膜の陰性対照試料と共に試験した。亜鉛吸収結果を表8に示す。
【0119】
【表8】

【0120】
結果は、同じ膜濃度において、Zn30と比べてZn50から2倍の多さの亜鉛が供給されることを明確に示す。Zn30をZn50と比較すると、結合量は同等であり、Zn50はより多い亜鉛を供給する。これは、Zn50膜の高装填性によるものである可能性がある。
【0121】
[00109]酸化亜鉛結合に関する1つの仮説は、水不溶性の金属酸化物(酸化亜鉛)によってポリマー(HPMC)の生体付着性が向上するということである。陰荷電ムチン鎖(糖物質)への金属粒子の表面上の部分的にイオン化した二価又は三価カチオンの間のイオン相互作用が起こる。これらの相互作用は、ZnO膜を口腔内において粘膜付着性にするのを促進する。
【0122】
2.Zn膜と同量のZnO粉末との比較:
[00110]歯磨剤中の同じ濃度のZnO粉末と比較した歯磨剤中のZnO膜から供給される亜鉛の量を分析するために実験を行った。試験した試料及び亜鉛吸収結果を表9に示す。
【0123】
【表9】

【0124】
表9に示すデータは、同量のZnO粉末からよりも多い亜鉛がZnO膜から供給されることを示す。高ZnO割合及び低ZnO割合の両方において、ZnO粉末と比較して15倍超の亜鉛が膜から供給される。いかなる動作理論にも縛られることは意図しないが、本発明者らは、軟質基材上へより多い亜鉛を堆積させる供給システムとして膜を作用させることができると考える。
【0125】
3.異なる膜濃度のZn50:
[00111]歯磨剤中のZn50膜に関する異なる膜濃度を分析して用量反応を調べるために実験を行った。試験した試料及び亜鉛吸収結果を表10に示す。
【0126】
【表10】

【0127】
表10において示されるように、歯磨剤中の膜濃度を増加させても軟質基材に供給されるZnの量は増加しない。また、膜濃度の増加に伴って結合の増加が起こった。亜鉛吸収法によって、軟質基材に供給される亜鉛の量が定量される。Vitro-Skinは、人の皮膚を模しているので、これをモデル基材として用いた。亜鉛吸収結果は、Zn50膜の膜濃度を増加させると亜鉛吸収が増加することを示す。また、膜は、同量の粉末形態のものよりも多い亜鉛を基材上に堆積させる供給媒体として機能する。
【0128】
実施例6:
Zn30及びZn50膜片とMaxFreshメントール膜対照試料とについて、一晩のVSCの減少を求めるために実験室試験を行った。この実験室試験の結果を表11(下記)に示す。一晩のVSCの結果は、0.2%及び0.5%の膜濃度のZn50膜は、Zn30膜の同等の膜レベルと比較してより高いVSCの減少を示すことを示す。これは、膜中に所定濃度の活性成分を装填する場合に、同じ濃度の膜を用いてVSCのより多い減少を得ることができることを示す。
【0129】
【表11】

【0130】
[00112]歯磨剤完全配合物からのVSCの減少を試験するために他の実験室試験を行った。試験した試料は、現在のMaxFresh歯磨剤、TP中の0.2%Zn50、TP中の0.2%Zn30膜、Crest+Scope、Close Up、Aqua Fresh、及び合計であった。この実験室試験の結果を表12(下記)に示す。結果から、いずれの酸化亜鉛膜配合物も標準的な息清涼配合物と比較して強い性能を示したが、より高い装填量の酸化亜鉛膜(Zn50)は同じ濃度のZn30よりも良好に機能した。
【0131】
【表12】

【0132】
実施例7:
[00113]メントール膜を有するMaxFreshと比較して0.2%のより高い装填量の酸化亜鉛膜(50%)を用いた全培養バクテリアの減少を評価するために臨床試験を行った。結果は、より高い装填量の酸化亜鉛膜(50%)は、比較的低い投与量においても、2時間、4時間、及び一晩においてバクテリアを減少させるのに有効であることを示す。
【0133】
[00114]全ての亜鉛吸収評価は、同量のZn30又はZnO粉末よりも多い亜鉛がZn50膜から供給されることを示した。これは、より高い装填量の膜からより多い亜鉛を供給して効能を向上させることができるだけでなく、必要な膜の量をより低くして最終製品のコストを低下させることもできることを意味する。
【0134】
【表13】

【0135】
実施例8:
50%より多いZnO装填量のスラリーの粘度は非常に高く、製造加工性を制限し、僅かな可撓性しか有しない非常に脆性の膜を生成させる。したがって、粘弾性特性に基づいて、安定な膜を加工するために必要な流動性及び構造完全性を与える最適の膜組成を求めることができる。実質的には、0〜40%の粒子装填量によって非常に可撓性の膜が得られ、40〜50%の装填量によってやや可撓性の膜が得られ、>50%の装填量によって非常に剛性で脆性の膜が得られる。種々のスラリーに関して予測されるG’及び粘度(0.3s−1において測定)の範囲を表14(下記)に示す。
【0136】
【表14】

【0137】
[00115]本明細書中において言及した特許、特許出願、及び刊行物(書籍を含む)のそれぞれは、その全部を参照として本明細書中に包含する。
[00116]当業者であれば認識するように、発明の精神から逸脱することなく数多くの変更及び修正をここに記載した態様に対して行うことができる。かかる変更は全て特許請求の範囲内であると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア中に混入させた膜を含み、かかる膜が膜の約35重量%〜約60重量%の量の亜鉛含有化合物を含む口腔ケア組成物。
【請求項2】
膜が約40%〜約55%の亜鉛含有化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
膜が約50%の亜鉛含有化合物を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
亜鉛含有化合物が、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、クエン酸亜鉛。乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、リンゴ酸亜鉛、酒石酸亜鉛、炭酸亜鉛、リン酸亜鉛、及びこれらの2以上の混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
亜鉛含有化合物が酸化亜鉛又はクエン酸亜鉛である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
亜鉛含有化合物が酸化亜鉛である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
膜が口腔ケア組成物の約0.1重量%〜約5重量%を構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
膜が口腔ケア組成物の約0.25重量%〜約3重量%を構成する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
膜が口腔ケア組成物の約0.5重量%〜約2重量%を構成する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
亜鉛含有化合物が口腔ケア組成物の約0.5重量%〜約2.5重量%を構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
亜鉛含有化合物が口腔ケア組成物の約1重量%〜約2重量%を構成する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
膜がそれぞれ異なる分子量を有する複数のヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
口腔ケア組成物が歯磨剤の形態である、請求項に記載の組成物。
【請求項14】
膜が8%未満のカノーラ油を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
膜がカノーラ油を実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
1種類以上のセルロースポリマー;及び
コロイド粒子;
を含み、
コロイド粒子がポリマーマトリクス膜の乾燥重量の40%〜50%の量で存在し、1種類以上のセルロースポリマーがポリマーマトリクス膜の乾燥重量の40%〜50%を構成するポリマーマトリクス膜。
【請求項17】
1種類以上のセルロースポリマー及びコロイド粒子がポリマーマトリクス膜の乾燥重量の80%〜95%を構成する、請求項16に記載の膜。
【請求項18】
8%未満のカノーラ油を更に含む、請求項16に記載の膜。
【請求項19】
カノーラ油を実質的に含まない、請求項16に記載の膜。
【請求項20】
1種類以上のセルロースポリマーの少なくとも1つがヒドロキシアルキルメチルセルロースである、請求項16に記載の膜。
【請求項21】
1種類以上のセルロースポリマーの少なくとも1つがヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項20に記載の膜。
【請求項22】
コロイド粒子が酸化亜鉛粒子である、請求項16に記載の膜。
【請求項23】
コロイド粒子が約5nm〜約200nmの平均粒径を有する酸化亜鉛粒子である、請求項16に記載の膜。
【請求項24】
ジオール、界面活性剤、スターチ、着色剤、染料、香味料、甘味料、漂白剤、息清涼剤、研磨剤、カチオン性予防薬及び治療薬、フッ化物イオン源、二価スズイオン源、歯石制御薬、抗菌剤、抗酸化剤、唾液分泌促進薬、抗歯垢薬、抗炎症薬、H拮抗薬、知覚過敏抑制薬、栄養剤、及びタンパク質からなる群から選択される1種類以上の更なる成分を更に含む、請求項16に記載の膜。
【請求項25】
1種類以上のセルロースポリマーの少なくとも1つがヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、コロイド粒子が酸化亜鉛粒子である、請求項16に記載の膜。
【請求項26】
ポリソルベート80及び/又はプロピレングリコールを更に含む、請求項25に記載の膜。
【請求項27】
約40%〜50%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、40%〜50%の酸化亜鉛粒子、7.5%〜9%のプロピレングリコール、及び1.25%〜1.5%のポリソルベート80を含む、請求項26に記載の膜。
【請求項28】
1種類以上のセルロースポリマー及びコロイド粒子を含むスラリーを形成し;
スラリーを表面上に施して、スラリーによって表面上にスラリーの層を形成し;そして
スラリーの層を乾燥して溶媒を除去して、ポリマーマトリクス膜を形成する;
工程を含む、請求項16に記載の膜の製造方法。
【請求項29】
ポリマーマトリクス膜を切断又は打ち抜いて膜片又はストリップを形成する工程を更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項16に記載の膜、及び経口的に許容しうるキャリアを含む口腔ケア組成物。
【請求項31】
膜が膜片又はストリップの形態である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
口腔表面を請求項1に記載の組成物と接触させることを含む、口腔の疾病又は疾患を治療する方法。
【請求項33】
口腔表面を請求項30に記載の組成物と接触させることを含む、口腔の疾病又は疾患を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−528173(P2012−528173A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513190(P2012−513190)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/036143
【国際公開番号】WO2010/138547
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【Fターム(参考)】