説明

高複屈折フォトニック結晶ファイバーを用いた光ファイバージャイロスコープ(FOG)のためのデポラライザ

【課題】光ファイバージャイロスコープ(FOG)のための環境変動に強いファイバーデポラライザを提供する。
【解決手段】デポラライザは、実質的に、時計回りの伝播レッグ32と反時計回りの伝播レッグ34とを含み、ジャイロスコープの検出コイル36の端部のところで離れて連結される。ファイバーデポラライザは、セグメント結合された高複屈折フォトニック結晶ファイバーから形成される。ファイバーデポラライザは、FOG20におけるシュッペ効果を低減し、および/または、FOGの光学回路におけるいずれの位置でも光を脱偏光させる。シュッペ効果を低減するデポラライザは、FOG検出コイルから離れてパッケージでき、またはFOG検出コイルの外径上に対称なパターンで巻くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高複屈折フォトニック結晶ファイバーを用いた光ファイバージャイロスコープ(FOG)のためのデポラライザに関する。
【背景技術】
【0002】
衛星応用および防衛応用は、典型的には高精度で且つ温度環境の変化にわたって長期間の安定性を備えるジャイロを必要とする。環境から引き起こされる誤作動を減少させることは、長期間にわたり性能を維持する能力を改善し、広範囲にわたる用途に使用できるようにする。
【0003】
光ファイバージャイロスコープは、光ファイバーケーブルで形成されるコイルの周りに時計回りおよび反時計回りに伝播する光波の間に形成される位相差を比較することにより角速度を測定する。光波はファイバーに連結された光源から発振され、分割されて時計回りの伝播通路と反時計周りの伝播通路とに導かれる。その後、反対方向に進む光波は、再び結合され光検出器に衝突するようにされ、光検出器は、結合された反対方向に進む光波の強度および反対方向に進む波の位相差に比例した出力信号を生成する。位相差、つまり角速度は、検出器の出力信号を分析することで導かれる。
【0004】
それゆえ、ジャイロスコープでは位相差は2つの状況下で形成され、すなわち、反対方向に伝播する光波がファイバーケーブルの等しくない距離を進むとき、および、巻かれたコイルにより形成される開口に垂直な軸を中心にケーブルが回転するとき、に位相差が形成される。対称に設計された伝播通路を備える理想的なジャイロスコープにおいて、反対方向に伝播する光波の間の測定可能な位相のずれは、直接的に、反対方向に伝播する光波の間の位相ずれにより誘導された回転に対応するであろう。
【0005】
実際のジャイロスコープは理想的ではない。ジャイロスコープは、ジャイロスコープの角速度測定性能に誤差を与える理想的ではない部品により構成される。さらに、ファイバージャイロスコープに最もコスト効率よく影響を与えるため、ジャイロスコープの測定性能に回転によらずに誘導される位相差の誤差を導入する備品の選択と妥協することが一般的である。
【0006】
2つのタイプの望ましくない位相シフト誤差は、理想的ではない特定のジャイロスコープファイバーでトレースできる。振幅タイプの位相誤差および強度タイプの位相誤差は、光波が同一のファイバーケーブルを横切るときの、異なる偏光面からの光波成分の混合によりトレースできる。これらの位相誤差は、ジャイロスコープのファイバーコイルを形成するのに単一モードタイプのファイバーが用いられる場合に混入する。
【0007】
単一モード(Single mode; SM)タイプのファイバーが一般に用いられる。偏波保持(polarization maintaining, PM)タイプファイバーより安価であるからである。しかし、SMファイバーは、最適なファイバーの選択ではない。SMファイバーは、ファイバーケーブル内で、異なる偏光面において同一位相定数を備える2つ以上の光波の同時伝播を許容するからである。ファイバー光波成分の分離を維持する能力の欠如は、両者のタイプの位相シフト誤差を導き得る。また、反対方向に進む波の偏光面が再結合されたときに整合していない場合、干渉パターンの大きさは、反対方向に進む波の偏光面の間の鋭角の余弦に従って変化するであろう。さらに、温度変化や振動応力のような環境変化に対するファイバーケーブルの高い敏感さは、複数の偏光面の問題および望ましくない位相シフト誤差の問題を増加させる。
【0008】
望ましくない、回転によらずに誘導される位相シフト誤差は、ジャイロスコープシステム内にデポラライザを使用することにより減少させまたは取り除くことができる。ファイバーケーブル内の光を脱偏光させることにより、反対方向に進む両方の光波がより同一の光学通路を通るようになる。デポラライザは、反対方向に進む光波のそれぞれの強度を、全ての方向に等しく分配された偏光面を備える部分光の集合になるように分配する。従って、理想的に反対方向の通路を横切る脱偏光した光から形成される干渉パターンは、偏光面の差またはミスアライメントにより変化しない。反対方向に進む波の干渉パターンは、反対方向に進むそれぞれの波の偏光面に依存しないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
デポラライザの1つのタイプである、Lyotファイバーデポラライザは、連結されたPMファイバのセグメントを含み、PMファイバのセグメントは、PMファイバーの隣のセグメントの偏光軸に対して45°の角度で配置された各PMセグメントの偏光軸を備える。さらに、デポラライザセグメントの長さは、1つの軸に沿って偏光した光の伝播時間が、直交する軸に沿って偏光する光の伝播時間と比べて、光の伝播のコヒーレンス時間よりも大きくなるようにすべきである。しかし、デポラライザは回転によらずに誘導される位相シフト誤差を最小化するのに寄与するが、デポラライザはまた回転によらない位相シフト誤差の発生要因にもなりうる。さらに、ジャイロスコープが受ける環境変化は、しばしば、デポラライザに関連する問題を増幅させる。
【0010】
特に、Lyotデポラライザ内の両方の通路の設計が正確に対称ではない場合、環境変化はデポラライザ、そして最終的にはジャイロスコープの測定能力に予測できない影響を与える。従って、ジャイロスコープのデポラライザの非対称性を最小化することが望ましい。
【0011】
現在のところ、本発明の関連技術は、環境的変化に強いデポラライザの設計に必要な考慮に注意を向けていない。より具体的には、環境変化に対するファイバーデポラライザの感度を最小化する本発明により提案されるような設計研究は、関連技術においては議論または提案されていない。
【0012】
現在のところ、Ohnoらによる米国特許第5136667号明細書、Nishiuraらによる米国特許第5371595号明細書、Mullerらによる米国特許第5347354号明細書、Negishiらによる米国特許第5285257号明細書、Nishiuraらによる米国特許第5526115号明細書、およびKerseyらによる米国特許第5319440号明細書は、いずれも光ファイバージャイロスコープにおけるファイバーデポラライザの使用を議論している。しかし、これらの特許文献は、単に、本技術分野における通常のデポラライザの使用を教示していだけである。さらに、これらの特許文献は、環境の変化による影響を軽減するための特定のファイバーデポラライザの設計に言及していない。
【0013】
最後に、Nishiuraらによる米国特許第5335064号明細書(以下「Nishiura」)は、新しいタイプのデポラライザの形成方法を教示している。Nishiuraは、ポラライザファイバーセグメントの主軸に対して45°の角度で、ポラライザの端部リードに偏光保持型のファイバーセグメントを接着することでデポラライザを形成する方法を教示している。それゆえNishiuraは、デポラライザを作成するときに、PMファイバーの1つのセグメントを取り除く方法を教示しているが、デポラライザの対称性を改善する必要性またはその方法、あるいは、ファイバーデポラライザの環境に対する鈍感さを高めることを教示または提案していない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
光ファイバージャイロスコープ(FOG)のための、光複屈折フォトニック結晶ファイバーを用いた環境変化に強いファイバーデポラライザの設計が提供される。この設計は、FOGにおけるシュッペ効果を減少させるために用いることができ、または、FOGの光学回路のあらゆる場所で光を脱偏光させるために用いることができる。シュッペ効果を低減させるデポラライザは、FOGの検出コイルから離れてパッケージすることができ、またはFOG検出コイルの外側直径の対称パターンになるように巻くことができる。
【0015】
フォトニック結晶PMファイバーは、従来のPMファイバーよりも、温度および応力に対する感度が低く、短いビート長を備える。このファイバーをデポラライザに用いることで、ファイバーを温度および応力にさらさないようにし、温度や応力による性能への影響を低下させる。
【0016】
本発明の1つの目的は、回転検出に際して、熱的な変動および振動力の影響を緩和する光ファイバージャイロスコープの設計を提供することである。本発明の他の目的は、回転検出に際して、熱的な変動および振動力の影響を緩和する、光ファイバージャイロスコープのデポラライザの設計を提供することである。本発明のさらに他の目的は、回転検出に際して、熱的な変動および振動力の影響を緩和する、光ファイバージャイロスコープの単一モードのファイバーデポラライザの設計を提供することである。
【0017】
本発明の好ましい実施形態および代替実施形態が添付図面とともに以下に詳細に説明される。添付図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態によるファイバージャイロスコープのブロック図である。
【図2】ファイバーLyotデポラライザを備えるコイル共振器を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態により形成されるファイバーLyotデポラライザを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、光ファイバージャイロスコープ(FOG)20を示している。FOG20は、環境変化に強いファイバーデポラライザを含む。ファイバーデポラライザは、実質的に等しい時計回りのファイバーレッグ区域32および反時計回りファイバーレッグ区域34を含み、これらはコイル36の回りに対称な巻パターンで巻きつけられ、端部のところでジャイロスコープ感知コイル36に連結されている。ファイバーデポラライザ区域32、34の設計に対する特別の注意は、環境変動の応力に対する強化された耐性を提供する。
【0020】
ファイバーデポラライザ31の環境変動に対する感度を最小化するために、反対に進むデポラライザファイバーレッグ区域32、34の長さは、好ましくは実質的に等しい長さである。さらに、対称性に関し、ファイバーデポラライザ31は、少なくとも1つのファイバーデポラライザ時計回り区域32と、少なくとも1つのデポラライザ反時計回り区域34を含む。しかし、好ましくは、それぞれの伝播レッグ区域32、34は、少なくとも2つのデポラライザセグメント32−1、32−2、34−1、34−2を備える。
【0021】
実質的に等しいファイバーデポラライザ区域32、34に貢献する他のファクターは、伝播レッグ32−1、32−2および34−1、34−2のファイバー設計に調和させる。一般に、ファイバーデポラライザは、偏光保持(polarization maintaining, PM)ファイバーセグメントから全体が形成される。図2は、時計回り伝播レッグ32内と反時計回り伝播レッグ34内との2つのPMセグメントを示している。ファイバーデポラライザ31は、全体がPMセグメントで形成されるので、反対方向に伝播するファイバーレッグ32、34の調和した熱膨張特性は、環境変化に対する感度を低減し得る。それゆえ、セグメント32−1およびセグメント32−2は、セグメント34−1およびセグメント34−2と同一のファイバー設計を備えるべきである。このファイバー設計は、実質的に同一のタイプのPMファイバー、同一のファイバーコーティング、および同一の長さを備える。
【0022】
図2に示されるように、レッグ32、34を備えるデポラライザ31は、FOG検出コイル36の外側直径上に巻かれる。米国特許第6211963号明細書は、検出コイル36を巻くための様々な技術およびデポラライザレッグ32、34の技術を開示している。米国特許第6211963号明細書は参照により本明細書に統合される。
【0023】
図3に示すように、2つの長さのPM型高複屈折フォトニック結晶ファイバー42、44が、それぞれの偏光軸が45°になるように互いに接合される(たとえばフィージョン)。結果として得られるデポラライザは、光ファイバジャイロスコープ内の信号減衰を低減するのに用いられる。
【0024】
一実施形態において、100mで30dBより大きな利得の偏光消光比(Polarization Extinction Ratio, PER)を備え、且つ、4mmの最大ビート長(2つの伝播軸の間の2π位相シフトのために必要な長さ)を備えるフォトニック結晶ファイバーが用いられる。これは、最小の複屈折が許容されることを説明している。理論上は最大許容限界はない。
【0025】
ファイバー42、44の物理的長さは、光学回路内の他のPMセグメントに干渉する遅延を生じさせずに光学回路内で光を脱偏光させるのに必要なビート長の最小数により決定される。一般に、フォトニック結晶ファイバー42、44の短い最大ビート長は、物理的長さが最小化されることを確保し、ファイバーが温度変動や振動にさらされるのを少なくする。ファイバー42、44の物理的長さは、等しい長さである必要はない。これらの具体的な長さは、上述の長さ決定により決められる。
【0026】
以上のように本発明の好ましい実施形態が図示および説明されたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく多くの変更が可能である。従って、本発明の範囲は上述の好ましい実施形態の開示に限定されない。本発明は、添付の特許請求の範囲を参照することにより完全に決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバージャイロスコープであって、
前記光ファイバージャイロスコープはデポラライザを有し、前記デポラライザは、時計回りの伝播レッグおよび反時計回りの伝播レッグを備え、前記レッグの各々は偏光保持(PM)フォトニック結晶ファイバーデポラライザセグメントを備え、
前記光ファイバージャイロスコープはジャイロスコープ検出コイルを有し、前記レッグの各々は巻パターンに巻かれ、前記レッグの各々は前記ジャイロスコープ検出コイルの端部に連結され、前記ファイバーデポラライザは、光が前記ジャイロスコープ検出コイル内を進むときに環境変動の効果を緩和するように構成される、光ファイバージャイロスコープ。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバージャイロスコープであって、前記時計回りの伝播レッグおよび前記反時計回りの伝播レッグは、実質的に等しいファイバーコーティング
および実質的に等しい長さを備える、光ファイバージャイロスコープ。
【請求項3】
請求項1に記載の光ファイバージャイロスコープであって、前記時計回りの伝播レッグおよび前記反時計回りの伝播レッグの少なくとも1つはさらに、少なくとも1つの、単一モードファイバーセグメントを有し、前記単一モードファイバーセグメントはファイバーコーティングを備え、前記ファイバーコーティングは、前記時計周りの伝播レッグおよび前記反時計回りの伝播レッグの偏光保持ファイバーセグメントに実質的に熱適に等しい、光ファイバージャイロスコープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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