説明

高親和性の分子イメージングプローブをスクリーニングするためのインサイチュクリックケミストリー法

本発明は、候補イメージングプローブを同定するための方法であって:a)第1の候補化合物ライブラリを標的生体高分子と接触させること、b)第1の候補化合物ライブラリから、第1の結合部位に親和性を示す第1のメンバーを同定すること、c)第1の候補化合物ライブラリから同定された、第1の結合部位に親和性を示す第1のメンバーを、標的生体高分子と接触させること、d)第2の候補化合物ライブラリを第1のメンバー及び標的生体高分子と接触させること、e)生体高分子により誘起されるクリックケミストリー反応により、相補的な第1の官能基を第2の官能基と反応させて、候補イメージングプローブを形成すること;f)候補イメージングプローブを単離及び同定すること、g)化学合成により候補イメージングプローブを調製すること;及び、h)イメージング適用のため、候補イメージングプローブをイメージングプローブへ転換すること、を含んでなる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PETプローブのような、高親和性の分子イメージングプローブをスクリーニングするための、インサイチュのクリックケミストリー法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
陽電子放射断層撮影(PET)は、疾病の検出にますます使用頻度が増えてきている分子イメージング技術である。PETイメージングシステムは、患者の組織内における陽電子放射同位元素の分布に基づき、イメージを作成する。同位元素は、典型的には、体内で容易に代謝されるか又は局在化される(例えば、グルコース)か、又は体内の受容体部位へ化学的に結合する分子に対して共有結合により結合された、F−18、C−11、N−13又はO−15といった陽電子放射同位元素を含んでなるプローブ分子の注入により、患者へ投与される。いくつかの場合には、同位元素はイオン溶液として、又は吸入により、患者へ投与される。最も広く使用される陽電子放射体標識されたPET分子イメージングプローブの1つは、2−デオキシ−2−[18F]フルオロ−D−グルコース([18F]FDG)である。
【0003】
主としてグルコーストランスポータを標的とするグルコース類似体[18F]FDGを用いたPETスキャニングは、癌の早期検出、ステージング及びリステージングのための正確な臨床ツールである。PET−FDGイメージングは、グルコース利用における初期の変化が結果予測と関係づけられることが示されているため、癌の、化学−及び化学放射線療法をモニターするべく、ますます使用頻度が増えている。腫瘍細胞の特徴的な性質は、迅速に増殖する腫瘍組織の高い代謝要求からの結果として生じる、その加速された解糖速度である。グルコース同様、FDGはグルコーストランスポータを介して癌細胞により取込まれ、ヘキソキナーゼによりFDG−6リン酸へリン酸化される。後者は、解糖の連鎖においてはそれ以上進むことができず、或いはその電荷の故に細胞を離れることができないため、細胞が高い解糖速度で検出できるようにする。
【0004】
多くの状況において有用であるとはいえ、FDG−PETイメージングには癌のモニタリングに関して限界も又存在する。炎症組織における蓄積は、FDG−PETの特異性を制限する。逆に、非特異的なFDGの取込みは、また、腫瘍応答の予測のためのPETの感度を制限するかもしれない。放射線療法及び化学療法薬によって処置された腫瘍細胞系では、治療誘発性の細胞ストレス反応が、FDG取込みに一過性の増加を引き起こすことが示されている。更に、身体のいくつかの領域においては生理的な高い正常バックグラウンド活性(即ち、脳内の)は、癌関連性のFDG取込みの定量化を不能にする可能性がある。
【0005】
このような制限のため、癌組織における他の酵素介在性の形質変換を標的とするべく、他のPETイメージングトレーサーが開発中であり、例えば、ドーパミン合成には6−[F−18]フルオロ−L−DOPA、DNA複製には3'−[F−18]フルオロ−3'−デオキシチミジン(FLT)、又コリンキナーゼには[C−11](メチル)コリン、並びに、超高特異活性受容体−リガンド結合(例えば、16α[F−18]フルオロエストラジアル(fluoroestradial))及び、潜在的な遺伝子発現(例えば、[F−18]フルオロ−ガンシクロビル)がある。分子を標的とした薬剤は、癌における非侵襲性のPETイメージングに向けて、大いなる潜在的価値を証明した。
【0006】
こうした研究は、癌の特異的代謝標的に向けた非侵襲性PETイメージングの、大いなる価値を証明してきた。PETイメージングを患者の管理に取入れることの明確な臨床的価値にもかかわらず、限界も存在する。いくつかの例では、現行のイメージングプローブは特異性を欠くか、又はバックグラウンド特性に対し不適切なシグナルをもつ。加えて、治療介入に向けて試験されている新規な生体標的は、治療の可能性を評価するための新規なイメージングプローブを必要とするであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
癌の薬物開発を支援するため、又健康管理プロバイダーに、疾病を正確に診断しかつ治療をモニターするための手段を提供するため、腫瘍標的に対し非常に高い親和性及び特異性を示すさらなるバイオマーカーが必要である。かかるイメージングプローブは、PETスキャナの見かけの空間分解能を劇的に改良することも可能であって、より小さい腫瘍が検出されるようになり、ナノモル量が患者に注射可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、癌及び他の疾病に関連する生体高分子を標的とする、高親和性のPETプローブを同定するための、インサイチュクリックケミストリー法(モウカーラ(Mocharla,V.P.);コラッソン(Colasson,B.);リー(Lee,L.V.);ルーパー(Roeper,S.);シャープレス(Sharpless,K.B.)、ウォング(Wong,C.−H.);コルブ(Kolb,H.C.)著、「アンゲヴァンテ・ヘミー(Angew.Chem.Int.Ed.)」、2005年、第44巻、p.116−120)に基づくテクノロジープラットフォームを提供する。生体標的用の高親和性リガンドは、インサイチュクリックケミストリーにより作成され、これによれば、生体標的はその結合ポケットの範囲内で、2つの反応性フラグメントの集合の鋳型となる。標的により生成されたリガンドの放射性標識は、腫瘍局在についての診断及び同定を可能にし、候補PETイメージングプローブを提供する。また、腫瘍タイプについて治療のための機械的情報を提供するであろう。スクリーニングプロセスにおいて使用される対になったフラグメントの少なくとも1つは、放射性核種(例えば、F−18)の後程の導入を促進する目的で、そのデザインの一部として、分子イメージングプローブにおける使用に適した、その核種内に放射性同位元素を含む元素(又は化学元素)の非放射性同位元素(例えば、F−19)をもつ。
【0009】
1つの態様においては、本発明は、炭酸脱水酵素−II(CA−II)のための新規なクラスの分子イメージングプローブを同定する。生理的には、CA−IIは炭酸脱水酵素ファミリーの14の既知のイソ酵素の1つであり、身体のほとんどあらゆる臓器及び組織において発現される。このことは明らかに、二酸化炭素の重炭酸イオンへの可逆的水和を触媒する能力の重要性の反映である。この非常に重要な生物学的機能が、CA−IIを、組織間のHCO3-/CO2の輸送、pH制御、骨吸収及び種々の上皮における電解質分泌に関与するプロセスにおけるキープレイヤーたらしめている。CAファミリーには他のメンバーがあり、特にイソ酵素CA−IX及びCA−XIIは、癌細胞において過剰発現されることが報告されている。新規なCA−IX及びCA−XIIイメージング剤の同定に向けてこのスクリーニング技術を更に適用することにより、CA−IX及びCA−XIIを発現している腫瘍を首尾よくイメージでき、かつ、最終的には、新規な治療法及び治療養生法の確認に至ることができるであろう。
【0010】
もう1つの態様においては、スクリーニングプラットフォームは、また、新規なトリアゾール含有シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)放射性リガンドの同定に向けて適用されたが、それは、生体内でCOX−2発現をイメージングするために使用されてもよい。アラキドン酸からのプロストグランジン(prostoglandin)産生を触媒するCOXファミリーの、誘導性のメンバーであるCOX−2は、炎症組織において高度に発現される。COX−2の発見によって、新規なクラスのCOX−2特異な、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDS)が、COX−2介在性の炎症関連疾患、最も一般的にはリウマチ性関節炎、の治療法を提供した。こうしたCOX−2特異阻害剤は、COX−1ではなくCOX−2を選択的に標的とすることから、胃出血のような、従来のNSAIDS関連療法に付随する共通した副作用は存在しない。新規のCOX−2療法はCOX−1阻害性の副作用に関連しないとはいえ、COX−2ベースの療法は、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))の治療的使用に伴うといわれる心血管問題の結果として、多いに注目されてきた。生体内イメージングの観点から、COX−2阻害剤のような、まだ説明されていない副作用をもつ化合物の薬力学をモニターすることは、より安全な治療法の開発に向けた洞察及び指針を提供するであろう。
【0011】
もう1つの態様においては、スクリーニング法は、酵素、受容体、DNA、RNA及び抗体といった、多様な生体高分子に由来する分子イメージングプローブを同定するために用いられる。これらの生体高分子が生体内において過剰に発現されるか、又は過剰に活性化される場合、それらは分子イメージングプローブへの結合を介して検出される。例えば、高レベルの炭酸脱水酵素−II(CA−II)を発現する組織(例えば、赤血球)の生体内イメージングは、このスクリーニングプロセスによって同定された高親和性のCA−II放射性リガンドを投与することにより達成されてよい。もう1つの態様においては、スクリーニング技術は、また、徴候を示す生体高分子を高度に発現する腫瘍を同定するためにも適用可能である。例えば、腫瘍学イメージングの領域では、キナーゼファミリーの発癌性タンパク質を特異的に標的とする放射性リガンドは、特異な腫瘍表現型の検出をもたらすことが可能である。特に好ましい標的キナーゼは、PI−3−キナーゼ/AKTシグナリング経路(PI−3−キナーゼ:ホスホイノシトール3−キナーゼ;Akt;プロテインキナーゼB)に属しており、これは癌における細胞の生存に関係する。例えば、キナーゼAktは細胞の発癌性トランスフォーメーションにおける重要な中心点であって、細胞に浸透して高い特異性及び親和性をもつ活性化されたAktを見つけ出すイメージングプローブを開発するための重要な標的となっている。
【0012】
1つの態様においては、スクリーニング法は、酵素の結合部位に対し親和性を示してもよい多数の分子を同定することと及び、その核種内に少なくとも1つの放射性同位元素(例えば、F−18)を包含する元素の非放射性同位元素(例えば、F−19)を、該分子へ共有結合により結合させることとを包含する。アジド又はアルキル基といった、クリックケミストリー反応に関係し得る官能基は、場合により、1つのリンカー又は複数のリンカーを介して、該分子へ結合される。結果として生じる多数の分子の個々のメンバーは、次に、標的分子及び、酵素の基質結合部位に対し親和性を示してよい多数の化合物又は化合物のライブラリの個々のメンバーと混合される。基質結合性ライブラリのメンバーは、相補的なクリックフラグメント分子のライブラリの官能基と適合するクリックケミストリー官能基を含むように、化学的に修飾されている。1つの特別な態様においては、各ライブラリに由来する化合物からなる、標的キナーゼの二つの標的化された結合部位に対し親和性を示す化合物の任意のペアは、クリックケミストリー官能基により、インサイチュにおいて共有結合により結合する。これらのリガンドは、選択イオンモニタリング質量分析法(SIM/MS)のような、既知の方法により同定される。これらの化合物は、その化学的合成に続き、通常のバイオアッセイ技術を用いて検定され、それらの結合定数が測定される。充分に高い結合親和性を有するリガンド(典型的には100nM未満かつ1fMを超えるIC50値をもつ)は、ヒット化合物とみなされ、分子イメージングプローブとなる候補である。しかしながら、最初のスクリーニングで充分な結合親和性をもつ化合物が示されない場合には、新たなスクリーニングが開始され、最適な候補イメージングプローブが同定されるまで反復過程が繰返される。ヒット化合物は次に、標準的な放射化学技術により、分子イメージングプローブへ転換される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明をこのように一般的な用語で記述してきたため、ここで添付の図面が参照されるが、これらは必ずしも一律の縮尺に従って描かれていない。
本発明は、次に以下において更に十分に記述される。本発明は、しかしながら、多くの異なる形態において具現化されてよく、本明細書に示された態様に制限されるものとして解釈されるべきではない;むしろこれらの態様は、この開示が徹底的かつ完全であって、本発明の範囲を当業者に充分に伝えるように提供されている。
【0014】
I.定義
本明細書において使用されるように、単数形「a」、「an」、「the」は、文脈が明らかに別段の規定をしない限り、複数の指示物を包含する。
【0015】
「アルキル」は、典型的には、約1から20原子までの範囲の長さの炭化水素鎖を指す。かかる炭化水素鎖は、分枝鎖又は直鎖でよいが、典型的には直鎖が好ましい。代表的なアルキル基は、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル及び3−メチルペンチル等を含む。本明細書において使用されるように、「アルキル」は、3個又はそれ以上の炭素原子が言及される場合には、シクロアルキルを含む。
【0016】
本明細書において使用される「アンカー部位」は、第1の結合部位と同義である。
【0017】
「アリール」は、各5又は6個のコア炭素原子からなる1又はそれ以上の芳香環を意味する。アリールは、ナフチルにおけるように融合た、又はビフェニルにおけるように非融合の多数のアリール環を包含する。アリール環は、また、1又はそれ以上の環状炭化水素、ヘテロアリール、又はヘテロ環と融合されるか、又は未融合でもよい。本明細書に用いられるように、「アリール」はヘテロアリールを含む。
【0018】
「生体標的」は、癌(例えば、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、乳癌、肺癌、前立腺癌、胃癌、並びに皮膚癌、膀胱癌、骨癌、子宮頚癌、結腸癌、食道癌、眼癌、胆嚢癌、肝臓癌、腎臓癌、咽頭癌、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、腺腫、直腸癌、小腸癌、肉腫、精巣癌、尿道癌、子宮癌及び膣癌)、糖尿病、神経変性性疾患、心血管疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、感染症、炎症性疾患及び自己免疫疾患等を始めとする、任意の種々の疾患及び症状のいずれかに関連した生物学的経路に関与している任意の生体分子であることが可能である。代表的な生物学的経路は、例えば、細胞周期調節(例えば、細胞増殖及びアポトーシス)、血管形成、シグナリング経路、腫瘍抑制経路、炎症(COX−2)、癌遺伝子及び成長因子受容体を含む。生体標的は、また、「標的生体高分子」又は「生体高分子」と呼ばれてもよい。生体標的は、酵素受容体、リガンド依存性イオンチャンネル、G−タンパク質共役受容体及び転写因子のような受容体であることが可能である。生体標的は、好ましくは、酵素、膜輸送タンパク質、ホルモン及び抗体のような、タンパク質又はタンパク質複合体である。1つの特に好ましい態様においては、タンパク質生体標的は、炭酸脱水酵素−IIのような酵素及び、炭酸脱水酵素IX及びXIIといったその関連イソ酵素である。
【0019】
本明細書において使用される「相補的官能基」は、高い特異性をもって互いに反応して新規な共有結合を形成する化学的反応基を意味する(即ち、これらの基は互いに選択的であり、その反応により充分に定義された生成物が予測可能な様式で得られる)。
【0020】
「シクロアルキル」は、架橋、融合、又はスピロ環状化合物を含む、好ましくは3〜約12個、更に好ましくは3〜約8個の炭素原子からなる、飽和又は不飽和の環状炭化水素鎖を指す。
「ヘテロアリール」は、1から4個までのヘテロ原子、好ましくはN、O若しくはSか又はこれらの組合せを含有するアリール基である。ヘテロアリール環は、また、1又はそれ以上の環状炭化水素、ヘテロ環、アリール又はヘテロアリール環と融合されていてもよい。
【0021】
「ヘテロ環」又は「ヘテロ環系」は、不飽和結合ないし芳香族性を有し又は有しない、少なくとも1つの炭素ではない環原子を有している、5〜12個の原子、好ましくは5〜7個の原子からなる1又はそれ以上の環を意味する。好ましいヘテロ原子は、硫黄、酸素及び窒素を含む。
【0022】
本明細書に用いられ、又当該技術分野において周知として定義される「キナーゼ」は、アデノシン三リン酸(ATP)からのリン酸塩を基質分子上へ転移する酵素である。キナーゼは、リン酸化における共因子であるATPへの結合部位と、典型的には別のタンパク質である基質分子に対する少なくとも1つの結合部位とを含む。
【0023】
本明細書に用いられる「脱離基」は、例えば、アミン、チオール又はアルコール求核試薬といった求核試薬か又はその塩により、容易に置換される基を指す。かかる脱離基は周知であり、例えば、カルボキシレート、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール、ハロゲン化物、トリフレート、トシレート、−OR、−SR等を包含する。
【0024】
「リガンド」は、タンパク質等の生体標的分子上の第1の結合部位に対し親和性を示す第1の基と、同じ生体標的分子上の第2の結合部位に対し親和性を示す第2の基とを含んでなる分子であり、好ましくは約800Da未満、更に好ましくは約600Da未満の分子量を有する。これらの2つの結合部位は、標的分子上の同じ結合ポケット内の別々の領域であることが可能である。リガンドは、好ましくは、生体標的分子に対しナノモルの結合親和性を示す。本明細書に開示された、いくつかの観点においては、リガンドは「基質」と同義的に用いられている。リガンドは、本明細書に定義された「分子構造」を含んでなるものであってもよい。
【0025】
本明細書に用いられる「リンカー」は、1〜10個の原子を含んでなる鎖を指し、C、−NR−、O、S、−S(O)−、−S(O)2−、CO、−C(NR)−等といった原子又は基を含んでいてもよく、Rは、H又は、各々置換又は非置換の、(C1-10)アルキル、(C3-8)シクロアルキル、アリール(C1-5)アルキル、ヘテロアリール(C1-5)アルキル、アミノ、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシ、(C1-10)アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシからなる群より選ばれる。リンカー鎖は、また、多環及びヘテロ芳香環を含め、飽和、不飽和又は芳香族性の環の一部を含んでなるものであってもよい。
【0026】
本明細書において使用される「金属キレート基」は、当該技術分野において定義されるとおりであり、例えば、選択的に金属イオンに付着又は結合して錯体を形成する、分子、フラグメント又は官能基を包含してよい。いくつかの有機化合物は、該有機化合物の2個又はそれ以上の原子を介し、金属と配位結合を形成してもよい。かかる分子の実例は、DOTA、EDTA及びポルフィンを含む。
【0027】
「分子構造」は、クリック官能基へ結合されているか、脱離基及び/又は放射性同位元素に対し結合されていてもよい、分子、分子の一部又はフラグメントを指し、或いはいくつかの変形においては、分子は、クリック官能基へ結合されているリンカーに対し結合されていてもよい。かかる分子構造の実例は、これらに限るものではないが、例えば、置換又は非置換のメチレン、各々がO、N及びSからなる群より選ばれるヘテロ原子を含んでいてもよい直鎖又は分枝鎖のアルキル基(C1−C10)、それぞれ置換又は非置換のアリール又はヘテロアリール基、生体高分子、ヌクレオシド及びその類似体又は誘導体、ペプチド又はペプチド模擬体、炭水化物及びこれらの組合せを包含する。
【0028】
「ポリデンテート金属キレート基」は、金属に同時に配位する(即ち、キレートする)ことが可能な2個又はそれ以上の供与体原子をもつ化学基を意味する。従ってポリデンテート基は、2個又はそれ以上の供与体原子を有し、かつ配位圏内に2つ又はそれ以上の部位を占める。
【0029】
用語「患者」及び「被験者」は、特に全ての哺乳類を含めて、任意のヒト又は動物被験者を指す。
【0030】
用語「ペリ環状反応」は、結合が協奏的な環状遷移状態において形成又は破壊される反応を指す。協奏反応は、反応の過程を通じて何ら中間体が関与しないものである。典型的には、反応物自体が偶然帯電されていること、即ちカルボニウム又はカルバニオンであることがない限り、反応速度に対する溶媒効果は比較的小さい。
【0031】
本明細書において使用されるように、「放射化学」は、共有結合により結合された放射性同位元素を含んでなる任意の有機、無機又は有機金属化合物、任意の無機放射性イオン溶液(例えば、Na[18F]Fイオン溶液)又は任意の放射性ガス(例えば、[11C]CO2)を包含することが意図され、特に、組織イメージングを目的とする、患者への投与(例えば、吸入、摂取又は静脈内注射による)を意図した放射性分子イメージングプローブを包含し、これらは、また、当該技術分野では、放射性医薬品、放射性トレーサー、放射性リガンドとも呼ばれる。本発明は主に、PETイメージングシステムにおいて使用される陽電子放射分子イメージングプローブの合成に向けられているが、本発明は、単一光子放射断層撮影(SPECT)のような他のイメージングシステムにおいて有用な放射性化学薬品を始めとする、放射性核種を含んでなる任意の放射性化合物の合成に向けて容易に適応され得る。
【0032】
本明細書において使用されるように、用語「放射性同位元素」は、放射性崩壊(即ち、陽電子放射)を示す同位元素、及び、放射性同位元素(例えば、[11C]メタン、[11C]一酸化炭素、[11C]二酸化炭素、[11C]ホスゲン、[11C]尿素、[11C]臭化シアン、並びに、炭素−11を含有する種々の酸塩化物、カルボン酸、アルコール、アルデヒド及びケトン)を含んでなる放射性標識薬剤を指す。かかる同位元素は、また、当該技術分野においては、放射性同位元素又は放射性核種とも呼ばれる。放射性同位元素は、本明細書においては、元素の名前又は記号及びその質量数の、一般に使用される種々の組合せを用いて命名される(例えば、18F、F−18又はフッ素−18)。代表的な放射性同位元素は、I−124、F−18フッ化物、C−11、N−13及びO−15を含み、これらは、それぞれ、4.2日、110分、20分、10分及び2分間の半減期を有する。放射性同位元素は、好ましくは極性非プロトン性溶媒等の有機溶媒中に溶解される。好ましくは、本発明において使用される放射性同位元素は、F−18、C−11、I−123、I−124、I−127、I−131、Br−76、Cu−64、Tc−99m、Y−90、Ga−67、Cr−51、Ir−192、Mo−99、Sm−153及びTI−201を含む。使用されてよい他の放射性同位元素は:As−72、As−74、Br−75、Co−55、Cu−61、Cu−67、Ga−68、Ge−68、I−125、I−132、In−111、Mn−52、Pb−203及びRu−97を包含する。
【0033】
光学イメージング薬剤は、400nmより大きく1200nmより小さい波長の放射を有する分子を指す。光学イメージング薬剤の実例は、アレックス・フルオール(Alex Fluor)、BODIPY、ナイル・ブルー(Nile Blue)、COB、ローダミン、オレゴングリーン(Oregon green)、フルオレセイン及びアクリジンである。
【0034】
用語「反応性前駆体」は、低分子、天然産物又は生体分子(例えば、ペプチド又はタンパク質)といった、アジド又はアルキニル基の付加により化学的に修飾可能である任意の多様な分子に向けられている。2つの前駆体分子からのリガンド形成のためには、前駆体分子のうちの1つは、その核種内に放射性同位元素を有する元素の非放射性同位元素を含んでなる。本明細書において使用されるいくつかの観点においては、用語「リガンド」は、生体高分子へ結合する前駆体、化合物及びイメージングプローブを指してよい。リガンドの2つの前駆体は、好ましくは、酵素のような生体標的分子上の別々の結合部位(又は、同一の結合部位又はポケットの別々の部分)に対し親和性を示す。生体高分子上の活性部位に対して結合親和性を有する反応性前駆体は、本明細書において「アンカー分子」と呼ばれることがある。キナーゼの基質結合部位に対し結合親和性を有する反応性前駆体は、本明細書において「基質模擬体」と呼ばれることがある。用語「反応性前駆体」は、また、候補化合物のライブラリを含んでなる候補化合物を調製するべく使用される、前駆体又は化合物を指してもよい。
【0035】
リガンド放射化学の態様による方法の特別の観点においては、1つの前駆体分子は、放射性同位元素を共有結合により該前駆体へ結合させる目的で、求核置換により容易に置き換えられることが可能な脱離基を含んでいてもよい。代表的な反応性前駆体は、既存のPETプローブ分子、EGF、癌マーカー(例えば、乳癌用のp185HER2、卵巣、肺、乳、膵臓、及び消化管癌用のCEA及び前立腺癌用のPSCA)、成長因子受容体(例えば、EGFR及びVEGFR)、自己免疫疾患に関係する糖タンパク質(例えば、HC gp−39)、腫瘍又は炎症特異性の糖タンパク質受容体(例えば、セレクチン)、インテグリン特異性抗体、ウイルス関連抗原(例えば、HSV糖タンパク質D、EVgp)及び臓器特異性遺伝子産物に対し、構造上の類似性をもつ低分子を包含する。
【0036】
本明細書において使用される「置換された」又は「置換基」は、その1又はそれ以上の水素原子が、−C1-5アルキル、C2-5アルケニル、ハロゲン(塩素、フッ素、臭素、ヨウ素原子)、−CF3、ニトロ、アミノ、オキソ、−OH、カルボキシル、−COOC1-5アルキル、−OC1-5アルキル、−CONHC1-5アルキル、−NHCOC1-5アルキル、−OSOC1-5アルキル、−SOOC1-5アルキル、−SOONHC1-5アルキル、−NHSO21-5アルキル、アリール及びヘテロアリール等といった基(置換基)によって置換されている(これらの基が更に置換されてもよい)化合物又は官能基を意味する。
【0037】
本明細書において使用される「基質模擬体」は、その三次元構造、電荷分布及び水素結合供与体又は受容体の向きにおいて酵素基質に類似しており、それにより酵素の活性部位により認識可能である化合物を意味する。
【0038】
II.インサイチュクリックケミストリー法
分子イメージングプローブの調製のための従来法は、堅く結合している分子の同定から始まる。この分子は、大規模スクリーニング又はSAR開発から、あらかじめ同定されていてもよい。化合物は次に、放射性標識のし易さ、並びに、分子自体の上の優先的な標識化部位について評価される。ひとたび放射性標識用の位置が決まれば、化合物は、PETイメージングに使用される場合には、18F−フッ化物を用いた標識化によりイメージング薬剤へ転換され、マウス等の適当な生きた生物体へ注入され、PETスキャナを用いて画像化されて、トレーサーの生体分布、薬物動態及び薬力学的プロフィール、代謝及び排出経路を決定する。分子内へ導入された放射性元素が元の分子中にその非放射性同位元素として存在しなかった例では、標識された化合物が親化合物とは非常に異なる挙動をすることが可能性として存在する。例えば、水素原子の代わりに18F−フッ化物を導入すると、イメージングプローブの標的に対する結合親和性の脆弱化を引き起こす可能性がある。この脆弱化は、トレーサーの生体内の局在化を妨げることがあり、従って適切なPETイメージの形成を妨げ得る。
【0039】
分子イメージングプローブの同定に向けた代替えのアプローチは、リガンドを含有する非放射性同位元素のライブラリを調製し、各々の個別のリガンドを、生体外での潜在的活性についてスクリーニングすることであろう。ひとたびヒットが見出されれば、この分子はその放射性類似体へ転換され、生体内で画像化される。この親化合物の放射性類似体は、放射性同位体の立体化学及び電子工学における類似性の故に、親化合物と同様の物理化学的特性を保有することが期待される。この方法の欠点は、潜在的に多数の化合物が調製され、同定され、精製され、活性に関し個別にスクリーニングされねばならないことである。このプロセスは、多くの時間、投資及び努力を必要とする。クリックケミストリーの使用により、生体標的をその好ましい潜在的分子イメージングプローブを組立てるための反応器として使用する第3の方法は、先の2つの方法よりも明確な利点を示すであろう。
【0040】
クリックケミストリーは、生体標的に対し極端に高い親和性を示す低分子PETイメージングトレーサーをデザインする機会を与え、優れたシグナル対バックグラウンド比をもつ「高性能」分子イメージングのためのステージを設定する。クリックケミストリーは、最も実用的かつ信頼できる化学的転換のみを利用する、化学合成への組立て式のアプローチである。この技術は、標的の結合ポケット内に、ビルディングブロック試薬を不可逆的に組立てることにより、高親和性の阻害剤を産生する。インサイチュクリックケミストリーの一般的なアプローチは、図1に呈示されている。クリックケミストリー技術は、例えば、以下の参考文献に記述されている。これあの参考文献の全てが参考として本明細書に組み込まれる:
・コルブ(Kolb,H.C.);フィン(Finn,M.G.);シャープレス(Sharpless,K.B.)著、「アンゲヴァンテ・ヘミー、国際版(Angewandete Chemie,International Edition)」、2001年、第40巻、p.2004−2021。
・コルブ(Kolb,H.C.);シャープレス(Sharpless,K.B.)著、「ドラッグ・ディスカバリ・トゥデイ(Drug Discovery Today)」、2003年、第8巻、p.1128−1137。
・ロストーフツェフ(Rostovtsev,V.V.);グリーン(Green,L.G.);フォキン(Fokin,V.V.);シャープレス(Sharpless,K.B.)著、「アンゲヴァンテ・ヘミー、国際版(Angewandete Chemie,International Edition)」、2002年、第41巻、p.2596−2599。
・トルネー(Tornφe,C.W.);クリステンセン(Christensen,C.);メルダル(Meldal,M.)著、「ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)」、2002年、第67巻、p.3057−3064。
・ワン(Wang,Q.);チャン(Chan,T.R.);ヒルグラフ(Hilgraf,R.);フォキン(Fokin,V.V.);シャープレス(Sharpless,K.B.);フィン(Finn,M.G.)著、「ジャーナル・オブ・ディ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(Journal of the American Chemical Society)」、2003年、第125巻、p.3192−3193。
・リー(Lee,L.V.);ミッチェル(Mitchell,M.L.);フワング(Huang,S.−J.);フォキン(Fokin,V.V.);シャープレス(Sharpless,K.B.);ウォング(Wong,C.−H.)著、「ジャーナル・オブ・ディ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ」、2003年、第125巻、p.9588−9589。
・ルイス(Lewis,W.G.);グリーン(Green,L.G.);グリンスパン(Grynszpan,F.);ラディック(Radic,Z.);カーリア(Carlier,P.R.);テイラー(Taylor,P.);フィン(Finn,M.G.);バリー(Barry,K.)著、「アンゲヴァンテ・ヘミー、国際版」、2002年、第41巻、p.1053−1057。
・マネッシュ(Manetsch,R.);クラシンスキ(Krasinski,A.);ラディック(Radic,Z.);ラウシェル(Raushel,J.);テイラー(Taylor,P.);シャープレス(Sharpless,K.B.);コルブ(Kolb,H.C.)著、「ジャーナル・オブ・ディ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ」、2004年、第126巻、p.12809−12818。
・モカルラ(Mocharla,V.P.);コラソン(Colasson,B.);リー(Lee,L.V.);ルーパー(Roeper,S.);シャープレス(Sharpless,K.B.);ウォング(Wong,C.−H.);コルブ(Kolb,H.C.)著、「アンゲヴァンテ・ヘミー、国際版」、2005年、第44巻、p.116−120。
・ホワイティング(M.Whiting);マルドーン(J.Muldoon);リン(Y.−C.Lin);シルバーマン(S.M.Silverman);リンドストロム(W.Lindstrom);オルソン(A.J.Olson);コルブ(H.C.Kolb);フィン(M.G.Finn);シャープレス(K.B.Sharpless);エルダー(J.H.Elder);フォキン(V.V.Fokin)著、「アンゲヴァンテ・ヘミー(Angew. Chem.)」、2006年、第118巻、p.1463−1467;「アンゲヴァンテ・ヘミー、英語国際版(Angew.Chem.Int.Ed.Engl.)」、2006年、第45巻、p.1435−1439。
【0041】
上記の参考文献に記述されたもののような、他のクリックケミストリー官能基が使用可能であるが、付加環化反応、特にアジドのアルキニル基との反応の使用が好ましい。末端アルキンのようなアルキン及びアジドは、1,3−双極子付加環化を受け、1,4−二置換1,2,3−トリアゾールを形成する。別法として、1,5−二置換1,2,3−トリアゾールが、アジド及びアルキニル試薬を用いて形成され得る(クラシンスキ(Krasinski,A.)、フォキン(Fokin,V.V.)及びバリー(Barry,K.)著、「オーガニック・レターズ(Organic Letters)」、2004年、p.1237−1240)。ヘテロ・ディールス・アルダー反応又は1,3−双極子付加環化反応も、また、使用可能である(ホイスゲン(Huisgen)著、「1,3−ダイポーラー・シクロアディション・ケミストリー(1,3−Dipolar Cycloaddition Chemistry)第1巻」,パドワ(Padwa,A.)編、ウイリー(Wiley)、p.1−176;ジョーゲンセン(Jorgensen)著、「アンゲヴァンテ・ヘミー、英語国際版」、2000年、第39巻、p.3558−3588;ティーツ(Tietze,L.F.)及びケッチャウ(Kettschau,G.)著、「トピックス・イン・カレント・ケミストリー(Top.Curr.Chem.)」、1997年、第189巻、p.1−120)。これらの反応は、生体標的分子により、インサイチュにその結合ポケット内で触媒される。生体標的触媒反応とは異なり、どちらかの部位に対する結合基をもつ、アジドと、アセチレン又はアルキニル反応前駆体との間の、熱的1,3−双極子付加環化反応は、室温では極めて遅く、反応物はバイオ−オルトゴナルであり(即ち、それらは生体分子と反応せず、生理的条件下ではほとんど不活性である)、従って阻害化合物がインサイチュで生成されるという主張を支持する。この、非触媒反応の極小化は、スクリーニング法において偽陽性をもたらすこととなる、望ましくない非鋳型標的リガンドの形成及び同定を防止する。
【0042】
1つの特別の態様においては、本明細書に議論されたインサイチュクリックケミストリー法は、デザインの一部としてPET標識をもつ、ナノモル以下の力価をもつ新規なリガンドを生成する。リガンド発見段階の間は、非放射性又は「コールド」の同位元素(例えば、F−19)が、PET放射性核種のためのプレースホルダーとして使用される。ひとたび高親和性のリガンドが見出されれば、F−19はF−18で置き換えられる。この標的ガイド戦略は、選択的に酵素に結合し次いでその結合ポケットの領域内で互いに不可逆的に結合する「一価の」ビルディングブロック試薬から、強力なリガンド阻害剤を生成するための鋳型として酵素自体を利用する。このアプローチは、何千というライブラリ化合物の合成、精製及びスクリーニングを必要とするのではなく、生体標的を用いて、比較的少ない試薬(何千もの異なる方法で組合されてよい)からそれ自体の阻害剤を組立てることから、従来のコンビナトリアルケミストリーよりも更に効率的であることを約束する。酵素に発生されたヒットの追跡試験は、次に、標的に対するそれらの結合親和性及び特異性を立証する。1つの特別の態様において、タンパク質のような生体高分子との多重の相互作用をもつ二価の分子では、結果として生じるヒットは非常に強力である。結果として得られる二価の分子は、共因子結合部位へ結合し、基質ポケット内へ到達する。主としてエントロピー的な理由(3度の、回転及び並進自由度の損失の回避)のため、リガンド阻害剤は、それらの生体標的に対し、個々の成分よりもはるかに高い親和性を示す。従って、個々の結合ポケットに対し、あまり大きくないマイクロモルの親和性しかもたないフラグメントであっても、生体標的との最適の結合相互作用を可能にするべく一緒に結合された場合、ナノモルの阻害剤を生成することが可能である。従って、ビルディングブロック試薬又は前駆体の、酵素に対する結合親和性は、ナノモルの範囲である必要がない。マイクロモルの親和性は、クリックケミストリー反応が起こるのに充分である。
【0043】
インサイチュクリックケミストリーは、従来の手段によって苦心して調製された最終化合物のスクリーニングに依存せず、むしろ酵素に、その結合部位内へフィットするビルディングブロックを選択及び組合させて、その固有の阻害剤分子を組立てることができることから、しばしば、分子プローブ発見に向けて魅力的な新規なアプローチを提供する。例えば、わずか200個のビルディングブロック(100個のモノアジド及び100個のモノアセチレン)を用いて、20,000個の可能な組合せ(100×100×2;係数「2」は、シン−及びアンチ−トリアゾール形成が可能であることを説明する)を、実際にこれらの化合物を作成する必要なしに、迅速にスキャンすることが可能である。この数は、もし1つがジ−若しくはトリ−アジド又はジ−若しくはトリ−アセチレンを含むなら、同じ数のビルディングブロックを用いて、更に大きくなり、これによって、適当なビルディングブロック及び官能基を同時に選択するための、より大きい柔軟性をもつ酵素を提供する。スクリーニング法は、所与の試験混合物中に生成物が形成されているか否かを、LC/MSにより測定するという単純なものである。酵素により形成される化合物は、相互作用の多価性のため、良好かつ選択的な結合剤になりそうである。
【0044】
リガンド開発か又はイメージングプローブ同定のための方法は、二段階で起きてよい。いくつかの態様では、発見段階の間は、それぞれの化合物は「コールド」F−19原子をもち、化合物の酵素に対する結合親和性をかなりの程度で変化させることなく、後で「ホット」F−18を導入するために備えておく。前駆体は、低いマイクロモル又はそれを上回る親和性をもって標的の結合ポケットへ付着し、かつバイオ−オルトゴナルな官能基(アジド又はアセチレン)をもつ化合物である。本方法の1つの態様においては、各分子は1つのフッ素原子をもち、それは後に、F−18放射性核種によって置き換えられる。いくつかの態様においては、基質模擬体又はリンカーモジュールよりもむしろ、アンカー分子内にフッ素原子を導入することが好ましく、その理由は、このことが合成のための努力を最小限にするからであり−潜在的なアンカー分子の総数は、基質/リンカー成分の数よりもずっと小さいことから、より少ないフッ素含有化合物を作成すればよいからである。
【0045】
1つの態様においては、スクリーニング法は、標的酵素の結合部位に親和性を示す多数の分子を同定すること及び、その核種に少なくとも1つの放射性同位元素を含む元素の非放射性同位元素(例えば、F−19又はI−127)を、該分子へ結合することを伴う。アジド又はアルキニル基といった、クリックケミストリー反応に関与することが可能な官能基は、必要ならばリンカーを介して、該分子へ結合される。結果として生じる多数の分子の個々のメンバーは、次に標的分子及び、酵素の基質結合部位に親和性を示すであろう多数の化合物又は化合物のライブラリと混合される。基質結合性ライブラリのメンバーは、化学的に修飾されて共因子結合性分子のライブラリの官能基と適合するクリックケミストリー官能基を含んでいる。従って、酵素の結合部位に親和性を示す各々のライブラリから由来する、化合物の任意のペアは、クリックケミストリー官能基を介しインサイチュで共有結合する。スクリーニングプロセスにおいては、マルチウェルマイクロタイタープレートのような、当該技術分野において公知の通常のスクリーニング装置を利用することが可能である。
【0046】
質量分析計は、スクリーニングプロセスの一連の自動化されたデータ分析のために使用されてよい。使用可能な質量分析計装置の実例は、アジレント(Agilent)MSD1100SLシステム、リニアイオントラップシステム(サーモ・フィニガン(Thermo Finnigan)LTQ)、4極子イオントラップ(LCQ)又は4極子飛行時間(ウォーターズ(Waters)又はアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)からのQTOF)を包含する。これらの分析器のそれぞれは、LC−MS実験用の非常に有効なHPLCインターフェースを有する。
【0047】
1つの態様においては、出発前駆体フラグメントは、アンカー分子であってもよく、発見は既知の薬物及び/又は基質に基づき、小さい、標的化された化合物のライブラリ(例えば、100個未満の化合物)をデザインすることにより実行可能である。これらのライブラリは、通常の結合アッセイを用いてスクリーニングされてよい。アンカー分子は、酵素標的及び、相補的なクリックケミストリー試薬又は前駆体(例えば、アンカー分子がアジドである場合にはアセチレン)の小さいライブラリと一緒にインキュベートされてよい。各々の反応混合物は、LC/MSにより分析されて、酵素により形成された生成物を同定する。ヒット確認は、化合物が実際に酵素によって形成されることを証明するための競合実験によって実行され、結合アッセイが酵素によって発生されたヒットの結合親和性を立証し得る。
【0048】
1つの態様においては、アンカー分子は、後で酵素の内部でリガンド化合物へへ転換するため、バイオ−オルトゴナルな官能基(例えば、−N3、−C≡CR(式中、R=H、アルキル、アリール等))をもつ。好ましくは、Rは水素である。更に、各候補アンカー分子は1つのフッ素原子をもっており、それは求核置換化学により容易に導入され、対応する放射性核種で「コールド」の[F−19]を置換することにより、後で[F−18]標識することを可能にする。この変化は、結合親和性に対し最小限の影響しか及ぼさないことが期待され、それによりPETプローブの開発を更に予測可能なものとなる。
【0049】
2つの反応基又は前駆体の間のリンカーの性質及び長さは、化合物に最適の結合親和性を与えるべく選択されてよい。それ故、種々のタイプのリンカーが、上述の基質模擬体に結合可能である。このことは、直接的(トリアゾール形成)又は間接的(アジド還元及びそれに続く、結果として生じるアミンのアシル化又はスルホニル化)にアジド基を関与させる、炭素−ヘテロ原子結合形成反応により容易に達成されることが可能である。基質模擬体のライブラリは、好ましくは、ジ−アジド及びジ−アセチレンを包含し、これにより可能な組合せ反応の数が増える。
【0050】
発明の側面:
1つの態様においては、候補イメージングプローブを同定するための方法であって:
a)第1の候補化合物ライブラリを標的生体高分子と接触させること、ここで、前記第1の化合物ライブラリの各化合物は、クリックケミストリー反応に関与することが可能な第1の官能基を含んでなり、各化合物は、第1の結合部位及び第2の結合部位を含んでなる標的生体高分子の前記第1の結合部位に親和性を示してもよく;
b)前記第1の候補化合物ライブラリから、前記第1の結合部位に親和性を示す第1のメンバーを同定すること;
c)前記第1の候補化合物ライブラリから同定された、前記第1の結合部位に親和性を示す前記第1のメンバーを、前記標的生体高分子と接触させること;
d)第2の候補化合物ライブラリを前記第1のメンバー及び前記標的生体高分子と接触させること、ここで、前記第2の候補化合物ライブラリは、前記第2の結合部位に親和性を示してもよく、前記第2の候補化合物ライブラリの各化合物は、前記第1の官能基とのクリックケミストリー反応に関与することが可能な、相補的な第2の官能基を含んでなり、
前記第1のライブラリの各化合物か前記第2のライブラリの各化合物のいずれか、又は、前記第1及び前記第2の双方の化合物ライブラリの各化合物は、独立して、i)化学元素の非放射性同位元素、ここで、前記化学元素が少なくとも1つの放射性同位元素を含んでなり及び/又はii)脱離基及び/又はiii)金属キレート基及び/又はiv)蛍光性の基、を含んでなり、各々はリンカーを介して結合されていてもよく;
e)生体高分子により誘起されるクリックケミストリー反応により、前記相補的な第1の官能基を前記第2の官能基と反応させて、前記候補イメージングプローブを形成すること;
f)前記候補イメージングプローブを単離及び同定すること;
g)化学合成により候補イメージングプローブを調製すること;及び
h)イメージング適用のため、前記元素の非放射性同位元素を放射性同位元素に転換し、又は前記脱離基を放射性試薬で置換え、又は放射性金属と複合体を形成することにより、前記候補イメージングプローブをイメージングプローブへ転換すること、
を含んでなる方法が提供される。前記方法の1つの変形においては、前記生体高分子は、酵素、受容体、DNA、RNA、イオンチャンネル及び抗体からなる群より選ばれる。もう1つの変形においては、前記標的生体高分子は、アルツハイマー病患者の脳組織におけるベータ−アミロイドのような、疾病状態において過剰発現されるタンパク質である。
【0051】
上記の方法のもう1つの側面においては、前記第2の結合部位は、前記第1の結合部位の一部を構成する。この方法の1つの変形においては、前記第1のライブラリの各化合物又は前記第2のライブラリの各化合物か、又は前記第1及び前記第2の双方の化合物ライブラリの各化合物は、金属キレート基及び/又は蛍光体を含んでなる。1つの特別の変形においては、前記クリックケミストリー反応はペリ環状反応である。上記のもう1つの変形においては、前記ペリ環状反応は付加環化反応である。なお、もう1つの変形においては、前記付加環化反応は、ディールス・アルダー反応及び1,3−双極子付加環化反応からなる群より選ばれる。好ましくは、本発明において使用されるいくつかの方法においては、前記付加環化反応は1,3−双極子付加環化反応である。
【0052】
上記の方法の更にもう1つの側面においては、相補的なクリック官能基は、アジド及びアルキンを含んでなり、前記クリック反応は1,2,3トリアゾールを含んでなる生成物を形成する。1つの変形においては、前記第1の官能基はアジドであり、前記第2の官能基はアルキンであるか、又は、前記第1の官能基がアルキンであり、前記第2の官能基はアジドである。もう1つの変形においては、前記アルキンは末端アルキンである。上記の方法の1つの特別の変形においては、a)〜f)の段階は、新規な第1の化合物ライブラリ及び/又は第2の化合物ライブラリを調製すること、並びに、最適化された結合、生体内分布、代謝及び薬物動態特性をもつ候補イメージングプローブが同定されるまで再度スクリーニングすることからなる、反復過程で実行される。
【0053】
1つの特別の側面においては、同定された前記イメージングプローブは、標的化された生体高分子に対し、高い結合親和性及び特異性を示す。好ましくは、結合親和性はナノモル又はそれを上回るものであり、同定されたイメージングプローブは、最適の生体内分布、代謝、薬物動態及びクリアランス特性を示す。
【0054】
上記の方法の1つの変形においては、前記脱離基は、転換されて、交換反応、求核置換反応又は求電子置換反応により、標識された誘導体を形成してもよい。上記の方法のもう1つの変形においては、同定された候補イメージングプローブは、放射性同位元素で標識され、結果として得られた放射性イメージングプローブは、PET、SPECT及び光学イメージングからなる群より選ばれるイメージング法に使用される。
【0055】
もう1つの態様においては、候補イメージングプローブを同定するための方法であって;
a)第1の候補化合物ライブラリを標的酵素と接触させること、ここで、前記第1の化合物ライブラリの各化合物は、クリックケミストリー反応に関与することが可能な第1の官能基を含んでなり、各化合物は、第1の結合部位及び第2の結合部位を含んでなる標的酵素の、前記第1の結合部位に親和性を示してもよく;
b)前記第1の候補化合物ライブラリから、前記第1の結合部位に親和性を示す第1のメンバーを同定すること;
c)前記第1の候補化合物ライブラリから同定された、前記第1の結合部位に親和性を示す前記第1のメンバーを、前記標的酵素と接触させること;
d)第2の候補化合物ライブラリを前記第1のメンバー及び前記標的酵素と接触させること、ここで、前記第2の候補化合物ライブラリは、前記第2の結合部位に親和性を示してもよく、前記第2の候補化合物ライブラリの各化合物は、前記第1の官能基とのクリックケミストリー反応に関与することが可能な、相補的な第2の官能基を含んでなり、
前記第1のライブラリの各化合物か前記第2のライブラリの各化合物のいずれか、又は、前記第1及び前記第2の双方の化合物ライブラリの各化合物は、独立して、i)化学元素の非放射性同位元素、ここで、前記化学元素が少なくとも1つの放射性同位元素を含んでなり及び/又はii)脱離基及び/又はiii)金属キレート基及び/又はiv)蛍光性の基、を含んでなり、各々はリンカーを介して結合されていてもよく;
e)クリックケミストリー反応により、前記相補的な第1の官能基を前記第2の官能基と反応させて、前記候補イメージングプローブを形成すること;
f)前記候補イメージングプローブを単離及び同定すること;
g)化学合成により前記候補イメージングプローブを調製すること;及び
h)イメージング適用のため、前記化学元素の非放射性同位元素を放射性同位元素に転換し、又は前記脱離基を放射性試薬で置き換えることにより、前記候補イメージングプローブをイメージングプローブへ転換すること、
を含んでなる方法が提供される。
【0056】
本方法の1つの側面においては、いくつかの生体高分子については、前記第1の結合部位は共因子結合部位であり、前記第2の結合部位は基質結合部位である。
【0057】
上記の方法の1つの変形においては、前記標的酵素は、COX−2、AKT、P13K又はCA−9/CA−12といった、疾病状態において過剰発現されるか又は過剰に活性化されるものからなる群より選ばれる。もう1つの変形においては、前記標的生体高分子は、アルツハイマー病患者の脳組織におけるベータ−アミロイドを含め、疾病状態において過剰発現されるタンパク質である。なおもう一つの変形においては、前記第2の結合部位は、前記第1の結合部位の一部を構成する。上記の方法の1つの特別の側面においては、前記第2の結合部位は、前記第1の結合部位の一部又は一区域を構成しており、第2の候補化合物の結合は、前記第1の結合部位をキャッピングすることにより、前記結合部位へ結合する。上記の方法のなおもう1つの変形においては、前記第1のライブラリの各化合物又は前記第2のライブラリの各化合物か又は前記第1及び前記第2の双方の化合物ライブラリの各化合物は、金属キレート基及び/又は蛍光体を含んでなる。もう1つの変形においては、クリックケミストリー反応はペリ環状反応である。好ましくは、いくつかの変形においては、ペリ環状反応は付加環化反応である。更にもう1つの変形においては、前記付加環化反応は、ディールス・アルダー反応及び1,3−双極子付加環化反応からなる群より選ばれる。好ましくは、上記のいくつかの変形においては、前記付加環化反応は1,3−双極子付加環化反応である。更にもう1つの変形においては、前記相補的なクリック官能基は、アジド及びアルキンを含んでなり、前記クリック反応は、1,2,3トリアゾールを含んでなる生成物を形成する。
【0058】
上記の方法の1つの特別な変形においては、前記第1の官能基はアジドであり、前記第2の官能基は末端アルキンであるか、又は、前記第1の官能基は末端アルキンであり、前記第2の官能基はアジドである。本方法のもう1つの変形においては、a)〜f)の段階は、新規な第1の化合物ライブラリ及び/又は第2の化合物ライブラリを調製すること及び、最適化された結合親和性を有する候補イメージングプローブが同定されるまで、再度スクリーニングすることからなる、反復過程で実行される。なおもう1つの変形においては、前記脱離基は、交換反応、求核置換反応又は求電子置換反応により、標識された誘導体を形成するのに適している。上記の方法のもう1つの側面においては、同定された候補イメージングプローブは、放射性同位元素で標識され、結果として得られた放射性イメージングプローブは、PET、SPECT及び光学イメージングからなる群より選ばれるイメージング法に使用される。上記の1つの変形においては、前記相補的なクリック官能基は、アジド及びアルキンを含んでなり、前記クリック反応は1,2,3トリアゾールを含んでなる生成物を形成する。なおもう1つの変形においては、前記第1の官能基はアジドであり、前記第2の官能基はアルキンであるか、或いは、前記第1の官能基がアルキンである場合、前記第2の官能基はアジドである。上記の1つの特別な側面においては、前記クリック反応において用いられるアルキンは、末端アルキンである。
【0059】
上記の方法の1つの特別の変形においては、a)〜f)の段階は、新規な第1の化合物ライブラリ及び/又は第2の化合物ライブラリを調製すること及び、最適化された結合、生体内分布、代謝及び薬物動態特性をもつ候補イメージングプローブが同定されるまで再度スクリーニングすることからなる、反復過程で実行される。
【0060】
本方法の1つの特別な側面においては、本方法は少なくとも1回の反復を用いて実行される。1つの変形においては、本方法は、最適化された結合、生体内分布、薬物動態、代謝及びクリアランス特性を有する候補イメージングプローブが同定されるまで、少なくとも5回の反復、少なくとも10回の反復又は少なくとも20回の反復を用いて実行される。本明細書に開示された方法においては、最適化された結合親和性は、ナノモル又はそれを上回る範囲にあるものと定義される。最適化された生体内分布及び薬物動態は、化合物が、生体内において標的化された組織まで到達すること及び、例えば18−F PETの場合には数分間から2時間までといった充分な期間、血流中に留まり、化合物又はイメージングプローブが、標的化された生体高分子に対し生体内で結合されるようにすることを意味する。最適化された代謝は、化合物又はプローブが、不活性な生成物、又は、更に悪いことには他の望ましくない組織を標的とする放射性化合物又はイオンの形成によって、代謝されないことを意味する。例えば、もし化合物がその放射性18Fを失えば、強力な望ましくないPETシグナルを骨において与えるであろう。最適化されたクリアランス特性は、その標的組織に到達していなかった未結合の化合物又はプローブが、迅速に生体から消失され(18Fの場合、遅くとも2〜3時間以内)、大きいシグナル対バックグラウンド比を与えることを意味する(「シグナル」は、信号、例えば、結合化合物から発する放射能を意味する)。
【0061】
本方法のもう1つの側面においては、第1の結合部位が基質結合部位であり第2の結合部位が共因子結合部位であるか、又は、第1の結合部位が共因子結合部位であり第2の結合部位が基質結合部位である。
【0062】
上記の方法の1つの特別の変形においては、脱離基は、交換反応、求核置換反応若しくは求電子置換反応によるか、又は放射性金属と複合体を形成することにより転換されて、標識された誘導体を形成してもよい。本方法の1つの特別な変形においては、脱離基は、ハロ、ヒドロキシ、アシルオキシ、ニトロ及びスルホニルオキシ基からなる群より選ばれる。脱離基の特別の実例は、アルカノイルオキシ(例えば、アセトキシ、プロピオニルオキシその他)及びスルホニルオキシ(例えば、メシルオキシ、トシルオキシその他・・)等を含む。
【0063】
本方法の1つの特別な変形においては、同定されたリガンド化合物は、放射性同位元素により標識され、結果として生じたリガンド化合物は、PET、SPECT及び光学イメージングからなる群より選ばれるイメージング法のために使用される。上記の方法の特別の適用のためには、放射性同位元素は、F−18、C−11、I−123、I−124、I−127、I−131、Br−86、Cu−64、Tc−99m、Y−90、Ga−67、Cr−51、Ir−192、Mo−99、Sm−153及びTI−201からなる群より選ばれる。本方法の1つの変形においては、酵素結合部位内の候補化合物の結合は、何ら外的な触媒の添加なしに、クリックケミストリー反応を促進する。本方法のなおもう1つの変形においては、第2の候補化合物ライブラリは、1又はそれ以上の化合物を含んでなる。本方法の1つの特別の変形においては、第1の候補化合物ライブラリ及び第2の候補化合物ライブラリは、互いに独立して、少なくとも1つの化合物、少なくとも5つの化合物、少なくとも10若しくはそれ以上の化合物、又は少なくとも25若しくはそれ以上の化合物を含んでなる。
【0064】
上記の方法のもう1つの側面においては、第1の候補化合物ライブラリ及び/又は第2の候補化合物ライブラリは、更に、化合物と第1の官能基との間のリンカー及び/又は、化合物と第2の官能基との間のリンカーを含んでなる。1つの変形においては、リンカーは、化合物と官能基との間のリンカー鎖において、1〜10個の間の原子を含んでなる。
【0065】
もう1つの態様においては、上記による方法であって、
第1の候補化合物ライブラリが式Iの化合物を含んでなり、第2の候補化合物ライブラリが式II の化合物を含んでなる方法が提供される。
【0066】
【化1】

【0067】
[式中、A及びA'は、互いに独立して、置換又は非置換の、アリール又はヘテロアリール基、非ペプチド基質模擬体、ペプチド模擬体及びアルギニン基模擬体からなる群より選ばれる基質模擬体であり;L及びL'は、互いに独立して、結合又は該連結基鎖内に1〜10個の原子を含んでなり0〜3個の置換基により置換されてもよい連結基であり;X及びX'は、互いに独立して、相補的なクリックケミストリー官能基であり;Z及びZ'は、互いに独立して−NH2、ヒドラジニル、置換ヒドラジニル若しくは置換されてもよい尿素か又は存在しなくてもよい;u及びu'は、互いに独立して、0、1、2又は3であり;V及びV'は、互いに独立して、1、2又は3であり;且つ、W及びW'は、互いに独立して、1、2又は3である]、
【0068】
本明細書において列挙された開示の上記の側面のそれぞれにおいて、全ての側面、態様及び変形及び代表的な実例は、適用可能な場合には相互に交換可能であり、種々の側面、態様及び変形は、互換性に、かつ様々な順序で組合されてよい。例えば、リンカー無しの第1の官能基を含んでなる特定の第1の分子構造は、リンカー無しの相補的な官能基をもつ第2の分子構造との、1,3−双極子付加環化反応を受けてよく、或いは別法として、リンカーのある官能基を含んでなる同様の第1の分子構造が、分子構造と相補的官能基との間にリンカーを含んでなる、相補的な官能基を含んでなる第2の分子構造により、1,3−双極子付加環化反応を受けてもよい。これらの及び他の順序及び変形は、本発明の側面に含まれることが意図されている。
【0069】
試薬濃度は、酵素に誘起される反応(即ち、所望のインサイチュ反応)、並びに酵素無しのバックグラウンド反応の、双方の速度に影響を及ぼすことから、1つの重要なパラメータである。実際的な理由からは、バックグラウンド反応の程度を最小化して、酵素に基づく生成物の形成をより容易に同定できるようにする目的で、試薬濃度を低く保つことが望ましい。同時に、アンカー分子の濃度は、利用可能な酵素の最適利用に向けて、結合部位の有意な飽和を達成するために、充分に高くあるべきである。95%以上の活性部位の飽和を達成するべく充分に高い、アンカー分子及び酵素の濃度を使用することが好ましい。最終反応成分である基質模擬体は、酵素/アンカー分子複合体と基質模擬体との間の2分子反応が、適度の速度で起こるように、充分に高い濃度で利用できるようにするべきである。典型的には、基質模擬体濃度は、少なくとも400μMであろう。濃度は、もしバックグラウンド反応が速すぎる方へ変化するか、又はインサイチュで検出されるヒットが非常に少なければ、下方又は上方に調整可能である。
【0070】
それぞれの試薬/酵素の組合せは、潜在的なインサイチュのヒットであるトリアゾール生成物を同定するべく、LC−質量分析法により分析されることが可能である。このような潜在的なインサイチュのヒットを評価するため、それらが酵素によって形成されたかどうかを測定することにより、いくつかの試験が実行されることが可能である:(a)酵素無しのBSAの対照実験は、偽陽性を同定することが可能であり;(b)既知の酵素阻害剤(例えば、CA−IIの場合にはエトキシゾラミド)の存在下での、インサイチュの生成物形成の競合阻害は、所与のヒットが、酵素の活性部位の中又は付近で形成されるかどうかを示すことが可能である。評価されたインサイチュのヒットは、化学的に合成され生物学的試験において特徴付けられることによって、それらの結合親和性を測定することが可能である。酵素は1,4−二置換又は1,5−二置換異性体のいずれをも形成し得ることから、トリアゾールの置換パターンもまた決定可能である。このことは、1,4−二置換トリアゾールを与える、CuIに触媒されるアジド/アセチレン反応か、1,5−二置換トリアゾールを与える、RuIIに触媒されるアジド/アセチレン反応、又は1,4−及び1,5−二置換トリアゾールの混合物を生成する熱的付加環化反応を用いて、参照化合物を作成することにより達成可能である。
【0071】
前述の記述に呈示された教示の恩恵を受けることにより、本発明が属する技術分野の熟練者は、本発明の多くの修飾及び他の態様を思いつくであろう。それゆえ、本発明が、開示された特定の態様に制限されないこと及び、修飾及び他の態様が本発明の範囲内に包まれることが意図されることが理解されるべきである。本明細書には特別の用語が用いられているが、それらは一般的かつ記述的な意味でのみ使用されており、制限を目的としたものではない。
【実施例】
【0072】
CA−IIのインサイチュスクリーニング
【0073】
【化2】

【0074】
概略。ウシ赤血球からの炭酸脱水酵素II(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、カタログ番号C2522;ロット番号083K9295、4,014ウィルバー・アンダーソン(Wilbur−Anderson)単位/mg,ビウレットによるタンパク質含有量90%)は、インサイチュのクリックケミストリー実験用に及び結合定数の測定用に使用された。本発明者らは、SDSゲル電気泳動によりタンパク質を検査し、それが29〜30,000分子量単位に相当する単一バンドを示すことを見出した。ヒト赤血球からの炭酸脱水酵素II(シグマ・アルドリッチ、カタログ番号C−6165、4,260ウィルバー・アンダーソン単位/mg)は、ヒト酵素に対する結合親和性の測定用に使用された。全ての蛍光測定は、スペクトラ・マックス・ジェミニ(SPECTRA MAX GEMINI)蛍光プレートリーダーにおいて、37℃で行われた。LC/MS分析は、アジレント(Agilent)1100シリーズLC/MSD(SL)において、フェノメネックス(Phenomenex)C18プレカラムを具備した30×2.1mmのゾルバックス(Zorbax)C8カラムを用いて行なわれた。化合物検出は、エレクトロスプレー質量分光により、ポジティブ選択イオンモード(LC/MS−SIM)において達成された。溶出溶媒は、アセトニトリル及び水であり、0.05%TFAを含有していた。
【0075】
インサイチュクリックケミストリー実験用の一般的な方法:
アジド19F−1(20mM)、エトキサゾラミド(ethoxazolamide)(20mM)及びエチニルベンゼンスルホンアミド(2mM)の原液は、DMSO中に調製した。アルキン(3μL)は、酵素(94μlの1mg/mL溶液、市販の純度90%のタンパク質から、pH7.4の250mMのリン酸カリウム緩衝液中への溶解により調製)を含有する96穴マイクロタイタープレートのウェルへ添加され、続いてアジド試薬(2μL)及びDMSO(1μL)が添加された。反応プレートは、37℃で40時間貯蔵された。
【0076】
最終的な試薬濃度は以下のとおりであった:
酵素(29μM)、アルキン(60μM)、アジド(400μM)及びDMSO(6体積%)。平行して、いくつかの対照反応が準備され、類似の実験条件を受けた:(1)エトキサゾラミド(1μL、終濃度200μM)による競合阻害の対照;(2)bCA−IIの代わりにウシ血清アルブミン(終濃度1mg/mL)を用いた非特異的タンパク質結合の対照。いくつかの場合、本発明者らはまた、bCA−IIの代わりにpH7.4の緩衝液を用いて「タンパク質なし」の対照実験も行なった。LC/MS−SIM分析:全ての試料は、逆相HPLCにより、エレクトロスプレー質量分光検出を用いて、ポジティブ選択イオンモードにおいて分析された。注入体積は30μLであり、流速は0.3mL/分であった。以下の溶出勾配が使用された:0−100%アセトニトリル/0.05%TFA及び水/0.05%TFAで16分間、100%アセトニトリル/0.05%TFAで2分間、続いて100−0%アセトニトリル/0.05%TFA及び水/0.05%TFAで3分間。ポストランタイムは2分であった。
【0077】
ウシ/ヒト炭酸脱水酵素IIの生体外結合分析:
概略。ホワイトサイド(Whitesides)ら、(「ジャーナル・オブ・ディ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(J.Am.Chem.Soc.)」,1994年、第116巻、p.5057)及び、カーノハン(J.C.Kernohan)(「ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)」,1967年、第242巻、p.5813)により、試験化合物によって置き換えられるレポーティングリガンドとしてDNSAを用いて開発された蛍光競合アッセイが、結合親和性の測定に使用された。アッセイは、290nmにおける励起に対し、DNSAの極小吸収である460nmにおいて検出される蛍光シグナルのみが、DNSA・CA複合体のものである、という観察に基づいている。試料濃度が増加するにつれ、試験化合物との競合の結果として、DNSA・CAによる蛍光強度は減少し、スキャッチャードプロットからの解離定数の測定を可能にする。後者は、0.39μMのDNSAの解離定数Kd(滴定実験により決定)及び全酵素濃度(0.18μM)に基づき、各試験化合物について、DNSAに結合したCAの濃度[CA・DNSA]、非蛍光試料に結合したCAの濃度[CA・Inh]及び溶液中の遊離CAの濃度[CA]を計算するための物質収支を用いて明らかにされた。アッセイ条件:量の増加していく試験化合物(10nMから10000nMまで、DMSO中に作成された原液)は、96穴マイクロタイタープレート中の、50mM、pH7.4のリン酸カリウム緩衝液中の、DNSA(20μM)及びウシ又はヒトのCA−II(180nM)の溶液へ添加された。溶液は混合され、蛍光プレートリーダー(290nmの励起波長及び460nmの発光波長)で蛍光強度の変化が測定されるのに先立ち、室温で1時間インキュベートされた。Kd値は、ホワイトサイドらにより記述された、以下の等式を用いたスキャッチャードプロットから測定された。
[CA・Inh]/[CA]tot・[Inh]=K11inh−K11inh{[CA・Inh]+[CA・DNSA]}/([CA]tot)
【0078】
用語[CA・DNSA]、[CA・Inh]及び遊離のCAは、CA・DNSAの解離定数及び各反応におけるCAの全濃度についての既知の値に基づく物質収支を用いて計算された。CA・DNSAの解離定数(Kd)は、各々の酵素(200nMのpH7.4のリン酸緩衝液)をDNSA(200から1000nM、DMSO中に作成された原液)を用いて滴定すること及び、蛍光の変化を記録することにより、ヒトの炭酸脱水酵素IIに対し0.425μM、ウシの炭酸脱水酵素IIに対し0.393μMと決定された。これらの結果は、報告された値と厳密に適合する。
【0079】
【化3】

【0080】
図A、B及びCは、典型的なスクリーニングから取られたアリコートのSIM/MSクロマトグラムである。この例では、生成物はインサイチュのヒットとして同定された。結合アッセイは、化合物のKdが0.5nMであることを示した。図Aは、炭酸脱水酵素II(1)、アンカー分子(2)及びアジドフラグメント(3)のインキュベーション混合物のアリコートである。点線は、新たに形成されたリガンドの保持時間を表す。図Bは、炭酸脱水酵素II(1)、アンカー分子(2)及びアジドフラグメント(3)及び炭酸脱水酵素II阻害剤(4)のインキュベーション混合物のアリコートである。図Cは、ウシ血清アルブミン(5)、アンカー分子(2)及びアジドフラグメント(3)のインキュベーション混合物のアリコートである。図Aは、リガンドが酵素を鋳型とすることによって形成されることを示す。図Bは、既知の阻害剤の存在下では、所望のリガンドが形成されず、従って、リガンド形成が酵素を鋳型とするという主張を支持している。更に、図Cは、CA−IIの不在下には、何らリガンドが形成されないことを示す。この分子イメージング候補は、ピリジン骨格における、18F−フッ化物によるパラ−ニトロ基の置換の容易性のため、放射性標識用に選ばれた。
【0081】
概略:
【0082】
【化4】

【0083】
4−ニトロ−2−シアノピリジンの合成は、公知の文献の方法(「ジャーナル・オブ・オーガノメタリック・ケミストリー(J.Organomet.Chem.)」、1997年、第544巻、p.163−174)に従って行なわれた。4−フルオロ−2−シアノピリジンの調製は、既知の文献の方法(「オーガニック・レターズ(Org.Lett.)」、2005年、第7巻、p.577−579)に従って行なわれた。
【0084】
4−フルオロ−2−アミノメチルピリジンの合成
THF(10mL)中の4−フルオロ−2−シアノピリジン(278mg、2.3mmol)を含有する丸底フラスコに、BH3−THF(1M、6mL、6mmol)が添加された。反応液は、15分間還流された。反応液は次に室温に冷却され、HCl(30mL)が通風下に添加された。水性層はEt2O(3x)で洗浄された。水性層は、NaOH(15%水溶液)で塩基性化され、最少量のCH2Cl2で抽出された。合一された有機物は食塩水で洗浄され、乾燥され(MgSO4)、濾過され、冷水浴中で濃縮乾燥されて、150mgの澄明な無色の油を与えた。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ:4.0(2H,s),6.85−6.95(1H,m),7.06(1H,dd,J=6.0,3.0Hz),8.46−8.58(1H,m) NH2検出されず
19F NMR(300MHz,C66)δ:64.178
【0085】
4−フルオロ−2−アミノメチルピリジンの、L−バリンアジド酸とのカップリング
THF(1mL)中に溶解された、ガラスバイアル中のL−バリンアジド酸(0.038g,0.268mM,1当量)に、室温で攪拌しながら、4−フルオロ−2−メチルアミノピリジン(0.04g、0.317mM、1.2当量)が添加され、続いてトリエチルアミン(0.243mL、1.748mM、5当量)、EDC(0.085g,0.559mM,1.6当量)及びHOBt(0.076g,0.559mM,1.6当量)が添加され、6時間にわたり反応液させた。反応液は、終了後に水でクエンチされ、酢酸エチルで抽出された。有機層は、水、炭酸水素ナトリウム、食塩水で洗浄され、次いでMgSO4上で乾燥された。有機層は濾過され、濃縮乾燥された後、反応混合物はカラムクロマトグラフィーにより、酢酸エチル/ヘキサンを溶出溶媒として用いて精製された(80/20のHex/EtOAc中で充填され、100mlで溶出され、次いで50/50のHex/EtOAcに増加された)。生成物は、無色の油として単離された(0.021g、32%)。
【0086】
【化5】

【0087】
4−ニトロ−2−アセトキシメチルピリジンの合成
90℃において、無水酢酸(80mL)を含有している丸底フラスコに、4−ニトロ−2−メチルピリジンN−オキシド(10g)が添加された。反応は120℃で一晩続けられた。反応液は、次に濃縮乾燥された。反応混合物はシリカゲル上で、ヘキサン(過剰の無水酢酸を除去するため)、続いて30%Et2O:Hex(4−アセトキシ−2−アセトキシメチルピリジンを除去するため),続いて50%Et2O:Hexを用いて精製され、3.5g(27.5%)の黄色の固体を与えた。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ:2.24(3H,s),5.37(2H,s),7.97−8.00(1H,m),8.09(1H,s),8.91(1H,d,J=6.0Hz)
MS(エレクトロスプレー):197(M+H),155(M−OAc)
【0088】
4−ニトロ−2−ヒドロキシメチルピリジンの合成
4−ニトロ−2−アセトキシメチルピリジン(856mg、4.4mmol)を含有する丸底フラスコに、HCl(1N,20mL,20mmol)が添加された。反応液は50℃で一晩加熱された。反応液は次に、Et2Oへ注がれた。水性層はEt2Oで洗浄された。水性層は次に、飽和Na2CO3で処理され、CH2Cl2(3×)で抽出された。合一された有機層は乾燥され(MgSO4)、濾過され、濃縮乾燥されて、561mg(83.4%)の澄明な黄色の油を与えた。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ:2.05−2.55(1H,br s),4.95(2H,s),7.97(1H,dd,J=6.0,3.0Hz),8.10(1H,s),8.89(1H,d,J=6.0Hz)
MS(エレクトロスプレー):155(M+H)
【0089】
4−ニトロ−2−クロロメチルピリジンの合成
アルコール(562mg、3.65mmol)及びCH2Cl2(5mL)を含有する丸底フラスコに、0℃において、SOCl2(3.65mL、7.3mmol)が添加された。反応液は0℃で2時間攪拌された。反応液は、次に飽和NaHCO3へ注がれCH2Cl2中へ抽出された。合一された有機物は乾燥され(MgSO4)、濾過され、濃縮乾燥された。反応混合物はシリカゲル上で、1:1のEt2O:Hexを溶出液として用いて精製され、350mg(55.8%)の黄色の固体を与えた。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ:4.83(1H,s),8.01(1H,dd,J=6.0,3.0Hz),8.27(1H,m),8.90(1H,d,J=6.0Hz)
【0090】
4−ニトロ−2−メチルアミノピリジンの合成
4−ニトロ−2−クロロメチルピリジン(350mg,2.03mmol)を含有する丸底フラスコに、ヘキサメチレンテトラアミン(285mg、2.03mmol)及びCHCl3(5mL)が添加された。反応混合物は一晩加熱還流された。結果として生じた沈殿物は濾別され、Et2Oで洗浄されて、400mgの白色の固体を与えた。この固体は次に、EtOH(7mL)中に溶解され、HCl(濃、0.5mL)で処理された。反応混合物は90℃で2時間加熱された。反応液は次に、濃縮乾燥され、水へ注がれ、Et2Oで洗浄された。水性層は次に、Na2CO3の添加により塩基性化された。生成物は、CH2Cl2中へ抽出された。合一された有機物は乾燥され(MgSO4)、濾過され、濃縮乾燥されて、175mgの澄明な無色の油を与えた。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ:1.6−1.8(2H,br s),4.2(2H,s),7.9(1H,dd,J=6.0,3.0Hz),8.15(1H,m),8.83(1H,d,J=6.0Hz)
MS(エレクトロスプレー):154(M+H)
【0091】
2−アジド−3−メチル−N−(4−ニトロ−ピリジン−2−イルメチル)−ブチルアミドの合成
4−ニトロ−2−メチルアミノピリジン(175mg、1.14mmol)を含有する丸底フラスコに、THF(5mL)、Et3N(1.6mL、11.4mmol)、2−アジド−3−メチル−ブチリルアジド(164mg、1.14mmol)、EDC(278mg,1.83mmol)及びHOBt(247mg、1.83mmol)が添加された。反応液は室温で一晩攪拌された。反応液は次に、HCl(1N、20mL)へ注がれ、EtOAc中へ抽出された。合一された有機物は飽和NaHCO3で洗浄され、乾燥され(MgSO4)、濾過され、濃縮乾燥されて、197mg(61.8%)の淡褐色の固体を与えた。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ:0.96(3H,d,J=6.0Hz),1.14(3H,d,J=6.0Hz),2.39−2.50(1H,m),3.4−3.7(1H,br s),4.76(2H,d,J=6.0Hz),7.97(1H,dd,J=6.0,3.0Hz),8.02(1H,s),8.90(1H,d,J=6.0Hz)
MS(エレクトロスプレー):279(M+H),301(M+Na)
【0092】
(2−アジド−3−メチル−ブチリル)−(4−ニトロ−ピリジン−2−イルメチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステルの合成
出発アジド(400mg、1.44mmol)を含有する丸底フラスコに、CH3CN(10mL),Boc2O(470mg,2.16mmol)及びDMAP(9mg,0.07mmol)が添加された。反応液は室温で一晩攪拌された。反応液は次に、水へ注がれ、EtOAc中へ抽出された。合一された有機物は乾燥され(MgSO4)、濾過され、濃縮乾燥された。残渣はシリカゲル上で、溶出液として2:1のHex:Et2Oを用いて精製され、309mg(57%)の白色の固体を与えた。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ:1.03(3H,d,J=9Hz),1.07(3H,d,J=6.0Hz),1.41(9H,s),2.23−2.39(1H,m),5.30(2H,s),7.89−7.96(2H,m),8.81(1H,d,J=6.0Hz)
MS(エレクトロスプレー):379(M+H),401(M+Na)
【0093】
{3−メチル−2−[4−(4−スルファモイル−フェニル)−[1,2,3]トリアゾール−1−イル]−ブチリル}−(4−ニトロ−ピリジン−2−イルメチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステルの合成
アジド(300mg、0.79mmol)、tBuOH(3mL)、4−エチン−ベンゼンスルホンアミド(144mg)を含有する丸底フラスコに、CuSO4(0.04M,1.5mL)及びアスコルビン酸ナトリウム(0.1M、1.2mL)が添加された。反応液は、アルゴン下に一晩攪拌された。反応液は次に、水へ注がれ、EtOAc中に抽出された。合一された有機物は、5%NH4OHで洗浄され、乾燥され(MgSO4)、濾過され、濃縮乾燥された。残渣は、シリカゲル上で、まず30%EtOAc:Hexを用いて出発試薬を溶出し、続いて1:1のEtOAc:Hexを用いて精製され、350mg、78.8%の白色の固体を与えた。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ:0.90(3H,d,J=6.0Hz),1.12(3H,d,J=6.0Hz),1.55(9H,s),2.59−2.71(1H,m),3.40−3.50(2H,br s),4.78(2H,s),6.87(1H,d,J=9.0Hz),7.88−7.91(2H,m),7.98−8.03(4H,m),8.28(1H,s),8.75(1H,d,J=6.0Hz)
MS(エレクトロスプレー):506(M+H)
【0094】
{2−[4−(4−{[ビス−(4−メトキシ−フェニル)−フェニル−メチル]−スルファモイル}−フェニル)−[1,2,3]トリアゾール−1−イル]−3−メチル−ブチリル}−(4−ニトロ−ピリジン−2−イルメチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステルの合成
トリアゾール(350mg、0.63mmol)、CH2Cl2(5mL)及びTEA(436μL)を含有する丸底フラスコに、DMT−Cl(318mg,0.94mmol)が添加された。反応液は室温で1時間攪拌された。TLC(1:1のEtOAc:Hex)は、出発物質の完全な消費を示した。反応液は次に水へ注がれ、EtOAc中に抽出された。合一された有機物は、乾燥され(MgSO4)、濾過され、濃縮乾燥された。残渣は、シリカゲル上で、より溶出速度の速い物質を溶出するために30%EtOAc:Hexを用いて、続いて40%EtOAc:Hexを用いて精製され、417mg(77%)の黄色の固体を与えた。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ:0.90(3H,d,J=6.0Hz),1.12(3H,d,J=6.0Hz),1.56(9H,s),2.57−2.71(1H,m),3.71(6H,s),5.75(2H,s),6.61−6.71(2H,m),6.85(1H,d,J=9.0Hz),7.18−7.26(5H,m),7.33−7.37(1H,m),7.65(2H,d,J=9.0Hz),7.98−8.03(2H,m),8.20(1H,s),8.75(1H,d,J=6.0Hz)
MS(エレクトロスプレー):862(M+H)
【0095】
化合物の放射性標識
炭酸脱水酵素F18実験
【0096】
【化6】

【0097】
酸素−18水は、11MeVプロトン(RDS−111エクリプス(Eclipse)、シーメンス(Siemens)・モレキュラー・イメージング)を用いて照射され、[18F]フッ化物を、通常の方法で生成した。ボンバードメントの最後に、[18F]フッ化物イオンを含有する[18O]水は、タンタル標的から自動化された求核フッ素化モジュールへ移された(エクスプロラ(explora)RN、シーメンス・バイオマーカー・ソリューションズ(Siemens Biomarker Solutions))。[18O]水/[18F]フッ化物イオン溶液は、あらかじめ水(5mL)、炭酸水素カリウム水溶液(0.5M、5mL)及び水(5mL)ですすがれた、小型の陰イオン交換樹脂カラム(クロマフィックス(Chromafix)45−PS−HCO3,マッハライ・ナーゲル(Machery−Nagel))へ、コンピュータ制御下に移された。[18O]水(1.8mL)は、次に続く精製及び再利用のため回収された。トラップされた[18F]フッ化物イオンは、水(0.4mL)中の炭酸カリウム(3.0mg)の溶液を用いて反応器内へ溶出された。アセトニトリル(1.0mL)中のクリプトフィックス(Kryptofix)222(20mg)の溶液が添加され、混合物は真空下及びアルゴン気流下に加熱され(70〜95℃)、アセトニトリル及び水を蒸発した。冷却後、「ドライ」の反応性[18F]フッ化物イオン、K222及び炭酸カリウムの残渣に対し、アセトニトリル(1.0mL)中の、4−ニトロピリジン−N−BOC−バリン−N−ジメチトキシトリチル−ベンゼンスルホンアミド(1,17mg,19.7μmol)の溶液が添加された。反応混合物は、密閉容器中で(Pmax=2.3bar)110℃で10分間、(磁石により)攪拌しながら加熱された。混合物は55℃に冷却され、ほとんどのアセトニトリルは、先と同様に、真空及びアルゴン気流下に蒸発された。
【0098】
【化7】

【0099】
保護された粗[18F]フッ素化中間体(2)に対し、塩酸水溶液(1.0M、1.0mL)が添加され、混合物は105℃で3分間加熱された。35℃に冷却された後、酢酸ナトリウム水溶液(2.0M、0.5mL)が、攪拌しながら添加された。反応混合物はサンプルループ(1.5mL)へ移され、セミプレップHPLCカラム(フェノメネックス・ジェミニ(Phenomenex Gemini)5μC18、250×10mm、25%アセトニトリル、75%水、0.05%トリフルオロ酢酸移動相、5.0mL/分)上へ注入された。生成物、4−[18F]フルオロピリジン−バリン−ベンゼンスルホンアミド(3,[18F]FPVBS)は、フロースルー放射線検出及びUV(254nm)によってモニターしたところ、15〜16分において溶出された。生成物を含有するHPLC溶出物(7〜8mL)は、磁気攪拌子を具備した30mLバイアル中に収集され、水(20mL)が添加された。水溶液は完全に混合され、次いで、水/移動相溶液を廃液ボトルへ入れながら、C18Sep−Pakを通された。C18Sep−Pakは、別途のアリコートの水(20mL)で洗浄された。生成物は次に、C18Sep−Pakからエタノール(1.0mL)で溶出され、0.22μmの無菌フィルタを通して、無菌のバイアル内へ通された。次に水(9.0mL)が、無菌のフィルタを通して無菌の生成物バイアルヘ添加され、エタノール濃度を10%とした。
【0100】
典型的なプロダクションランは、約900mCiの[18F]フッ化物イオンでスタートし、64分間の合成、HPLC精製及びC18固相抽出及び10%エタノール中の再構成の後、91mCi(EOBでは136mCi、収率15%)の単離された生成物を与えた。
【0101】
集められた生成物は、HPLC(フェノメネックス・ジェミニ、5μC18、150×4.6mm、25%アセトニトリル、75%水、0.05%トリフルオロ酢酸移動相、1.0mL/分)により分析された。放射能及びUV(254nm)検出によってモニターしたところ、この生成物は12分間の保持時間及び、99.4%の放射化学純度を有していた。
【0102】
【化8】

【0103】
18F−標識されたCA−IIイメージング剤は、選択的に肺、腎臓及び血液に結合し、それらのCA−IIの高い発現レベルとよく相関する。
【0104】
COX−2のインサイチュスクリーニング
【0105】
【化9】

【0106】
概略。Sf21細胞におけるバキュロウィルス過剰発言系から単離された、COX−IIヒト組換え酵素(ケイマン・ケミカル(Cayman Chemical)社、カタログ番号60122、24,016単位/mg(反応中の終濃度7μMに希釈)が、インサイチュクリックケミストリーに使用された。
【0107】
生体外の活性アッセイ用には、ケイマン・ケミカル社からのCOX−2比色分析用(ヒツジ)阻害剤スクリーニングアッセイキットが使用された(カタログ番号760111)。全ての吸収測定は、スペクトラ・マックス(SPECTRA MAX)M2プレートリーダーで、28℃において行なわれた。LC/MS分析は、アジレント1100シリーズLC/MSD(SL)で、フェノメネックスC18プレカラムを具備した、30×2.1mmゾルバックス(Zorbax)C8カラムを用いて行なわれた。化合物検出は、エレクトロスプレー質量分光検出により、ポジティブ選択イオンモードにおいて行なわれた(LC/MS−SIM)。溶出溶媒、アセトニトリル及び水は、0.05%TFAを含有していた。
【0108】
1,4−二置換(「アンチ」)トリアゾールの合成のための一般的方法:
tert−ブタノール(0.400mL)中の、アルキン(l当量)及びアジド(l当量)混合物は、CuSO4(0.04M溶液、pH7.4リン酸緩衝液中、7.5mol%)、アスコルビン酸ナトリウム(0.1M溶液、pH7.4リン酸緩衝液中、15mol%)の存在下に、室温で一晩反応された。反応混合物は水(数ml)へ注がれ、酢酸エチルで抽出され、5%水酸化アンモニウム水溶液で洗浄され、MgSO4上で乾燥され、濃縮されて、純度98〜99%のチアゾールを白色の固体として生じた。最適化されていない収率は40%であった。クロマトグラフィーは、いくつかの純粋でない化合物(純度90%未満)について、酢酸エチル:ヘキサン混合物を精製のための溶出液として用いて行なわれた。
【0109】
インサイチュクリックケミストリー実験用の一般的な方法:
アジド(20mM)、バルデコキシブ(20mM)及びアルキン(3mM)の原液は、DMSO中に調製された。アルキン(1μL)は、酵素(ケイマン・ケミカル社からの、47.5μlの市販のCOX−2ヒト組換え酵素)を含有するエッペンドルフチューブ(容積0.5mL)へ添加され、続いてアジド試薬(1μL)及びDMSO(0.5μL)が添加された。反応プレートは、37℃で18〜20時間貯蔵された。最終試薬濃度は、以下のとおりであった:酵素(7μM)、アルキン(60μM)、アジド(400μM)及びDMSO(5体積%)。
【0110】
並行して、対照反応が設定され、類似の実験条件に供された:(1)バルデコキシブ(1μL、終濃度200μM)による競合阻害の対照;(2)300μMDDCを用いた100mMトリスHCl(pH8.0)緩衝液中の1mg/mL BSAを使用した、ウシ血清アルブミン対照実験。
【0111】
LC/MS−SIM分析:全ての試料は、逆相HPLCにより、エレクトロスプレー質量分光検出を用いてポジティブ選択イオンモードで分析された。注入体積は、0.3mL/分の流速で15μLであった。以下の溶出勾配が用いられた:10−100%アセトニトリル/0.05%TFA及び水/0.05%TFAで20分間、100%アセトニトリル/0.05%TFAで2分間、続いて100−10%アセトニトリル/0.05%TFA及び水/0.05%TFAで3分間。ポストラン時間は3分間であった。
【0112】
【化10】

【0113】
図A、B、C、D及びEは、典型的なスクリーニングから取られたアリコートのSIM/MSクロマトグラムである。この例では、生成物6がインサイチュのヒットとして同定された。結合アッセイは、化合物のKdがほぼ10nMであることを示した。図Aは、COX−2(1)、アンカー分子(2)及びアジドフラグメント(3)のインキュベーション混合物のアリコートである。点線は、新たに形成されたリガンドの保持時間を表す。図Bは、COX−2(1)、アンカー分子(2)及びアジドフラグメント(3)及びCOX−2阻害剤、バルデコキシブ(4)のインキュベーション混合物のアリコートである。図Cは、ウシ血清アルブミン(5)、アンカー分子(2)及びアジドフラグメント(3)のインキュベーション混合物のアリコートである。図Dは、Cu(I)の存在下に、(2)及び(3)のカップリングにより組立てられた純粋な生成物の注入である。図Eは、(6)の存在を確証するための、図Aにおける反応への(6)の同時注入である。図Aは、リガンドが酵素の鋳型によって形成されることを示す。図Bは、既知の阻害剤の存在下では、所望のリガンドが形成されず、従って、リガンドが酵素を鋳型として形成されるという主張を支持していることを示す。更に、図Cは、COX−2の不在下には、何らリガンドが形成されないことを示す。この分子イメージング候補は、ピリジン骨格における、18F−フッ化物によるパラ−ニトロ基の置換の容易性のため、放射性標識用に選ばれた。
【0114】
前駆体の合成スキーム(続き):
【0115】
【化11】

【0116】
実験法:
クロロメチルスルホンアミドは、文献の方法に従って調製された(テリー(Talley,J.J)ら著、「ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)」、2000年、第43巻、p.775−777)。
【0117】
スルホンアミドアルデヒド:トリメチル−N−オキシド(1.72g、22.98mM、4当量)が、丸底フラスコ内で、DMSO(10mL)中のクロロスルホンアミド(2.00g、5.74mM)に対し、アルゴン下に攪拌しながら添加された。反応液は、水で1時間後にクエンチされ、この時点でTLC上では何ら出発物質は見られなかった。反応混合物は次に、酢酸エチルで抽出され、有機相は水で2回洗浄され、MgSO4上で乾燥され、濾過され、濃縮乾燥された。単離された粗生成物は、オフホワイトの粉末であり(〜1.00g、収率50%)、そのまま次の段階に使用された。
【0118】
DMT保護されたアルデヒド:トリエチルアミン(0.56mL、3.99mM、4当量)が、塩化メチレン(15mL)中の、スルホンアミドアルデヒド(0.328g、0.998mM)に対し、アルゴン下に攪拌しながら添加され、続いてDMT−クロライド(0.44g、1.29mM、1.3当量)が添加され、18時間反応させられた。反応混合物は次に水でクエンチされ、塩化メチレンで抽出され、その後、有機層は食塩水で洗浄され、MgSO4上で乾燥された。有機層が濾過され、濃縮乾燥された後、生成物はシリカゲル上のクロマトグラフィーにより、溶出液として酢酸エチル/ヘキサン混合物を用いて精製された。単離された生成物は、淡黄色の粉末であった(0.44g、70%)。
【0119】
DMT保護されたアルキン:アルゴン下にアセトニトリル(20mL)中に攪拌されている、トシルアジド(0.304g、1.54mM)及び炭酸カリウム(0.32g、2.31mM)の混合物に対し、ホスホネート試薬(0.128g、0.77mM)が添加された。反応液は徐々に濁っていった。2時間後、メタノール:アセトニトリル(20mL:20mL)中に溶解された、アルデヒド(0.407g、0.65mM)がゆっくりと添加され、不均一の反応混合物は、時間の経過とともに黄色の均一な溶液となった。6時間後、反応混合物は水でクエンチされ、酢酸エチルで抽出され、水で洗浄され、MgSO4上で乾燥された。濾過及び濃縮乾燥の後、生成物はカラムクロマトグラフィーにより精製され、アルキンは白色の泡沫様の化合物として得られた(0.2g、50%)。
【0120】
トリアゾールは、アンチトリアゾールを作成するための一般的な方法に記述されている、1,4−二置換トリアゾールのための一般的な方法を用いて合成された。
【0121】
18F−標識COX−2イメージング剤の調製
【0122】
【化12】

【0123】
N−[ビス−(4−メトキシ−フェニル)−フェニル−メチル]−4−{5−[1−(3,5−ジメチル−4−ニトロ−ピリジン−2−イルメチル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−3−フェニル−イソオキサゾール−4−イル}−ベンゼンスルホンアミドの合成
アルキン(157mg、0.25mmol)を含有する丸底フラスコに、tBuOH(10mL)、CuSO4(0.04M、624μL)、アスコルビン酸ナトリウム(0.1M、500μL)及びアジド(52mg、0.25mmol)が添加された。不均一な溶液は、室温で一晩攪拌された。反応液はEtOAcへ注がれ、希NH4OH及び水で希釈された。有機物は乾燥され(MgSO4)、濾過され、濃縮乾燥された。残渣は、シリカゲル(1:1のEtOAc:Hexを用いて充填された)上で、まずCH2Cl2を用いて充填すること、次いで1:1のEtOAc:Hexで溶出することにより精製され、115mg(55%)の白色の固体を与えた。
1H NMR(300MHz、DMSO−d6)δ:2.21(3H,s),2.27(3H,s),3.64(6H,s),5.95(2H,s),6.67−6.70(4H,m),7.09−7.52(18H,m),8.42(1H,s),8.58(1H,s),8.65(1H,s).
LC/MS:C463977Sの計算値:833.26;検出値834.2(M+H)
【0124】
2−アジドメチル−3,5−ジメチル−4−ニトロ−ピリジン
CH2Cl2(10mL)中に溶解された、4−ニトロ−1−ヒドロキシメチル−3,5−ジメチルピリジン(0.91g、5mmol)を含有する丸底フラスコに、トリエチルアミン(558μL、8mmol)及びp−トルエンスルホン酸無水物(1.96g、6mmol)が添加された。反応液は室温で2時間攪拌された。反応液は水へ注がれ、CH2Cl2中へ抽出された。有機物は乾燥され(MgSO4)、濾過され、濃縮乾燥された。固体はMeOH(25ml)中に再溶解され、あらかじめ水(5mL)中の溶解された、NaN3(390mg,6mmol)で処理された。反応液は室温で4時間攪拌された。反応液は次に水へ注がれ、CH2Cl2中へ抽出された。有機物は乾燥され(MgSO4)、濾過され、濃縮乾燥された。固体は、シリカゲル上で、溶出液として40%Et2O:Hexを用いて精製され、600mg(58%)の澄明な無色の油を与えた。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ:2.31(3H,s),2.33(3H,s),4.51(2H,s),8.53(1H,s)
LC/MS:C8952の計算値:207.08;検出値180.2(M+H−N2),208.2(M+H)
【0125】
COX−2クリックF−18実験
【0126】
【化13】

【0127】
酸素−18水は、11MeVプロトン(RDS−111エクリプス、シーメンス・モレキュラー・イメージング)を用いて照射され、[18F]フッ化物イオンを、通常の方法で生成した。ボンバードメントの最後に、[18F]フッ化物イオンを含有する[18O]水は、タンタル標的から自動化された求核フッ素化モジュールへ移された(エクスプロラRN、シーメンス・バイオマーカー・ソリューションズ)。[18O]水/[18F]フッ化物イオン溶液は、あらかじめ水(5mL)、炭酸水素カリウム水溶液(0.5M、5mL)及び水(5mL)ですすがれた、小型の陰イオン交換樹脂カラム(クロマフィックス)45−PS−HCO3,マッハライ・ナーゲル)へ、コンピュータ制御下に移された。[18O]水(1.8mL)は、次に続く精製及び再利用のため回収された。トラップされた[18F]フッ化物イオンは、水(0.4mL)中の炭酸カリウム(3.0mg)の溶液を用いて反応器内へ溶出された。アセトニトリル(1.0mL)中のクリプトフィックス222(20mg)の溶液が添加され、混合物は真空下及びアルゴン気流下に加熱され(70〜95℃)、アセトニトリル及び水を蒸発した。冷却後、「ドライ」の反応性[18F]フッ化物イオン、K222及び炭酸水素カリウムの残渣に対し、アセトニトリル(800μL)中の、4−{5−[1−(4−ニトロ−3,5−ジメチル−ピリジン−2−イルメチル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−3−フェニル−イソオキサゾール−4−イル}−N−ジメチトキシトリチル−ベンゼンスルホンアミド(1, 8.0mg,9.6μmol)の溶液が添加された。反応混合物は、密閉容器中で(Pmax=2.3bar)110℃で10分間、(磁石により)攪拌しながら加熱された。混合物は55℃に冷却され、ほとんどのアセトニトリルは、先と同様に、真空及びアルゴン気流下に蒸発された。
【0128】
【化14】

【0129】
保護された粗[18F]フッ素化中間体(2)に、アセトニトリル(600μL)中のトリクロロ酢酸の40%溶液が添加され、混合物は90℃で5分間加熱された。35℃に冷却された後、酢酸ナトリウム水溶液(2.0M、550μL)が、攪拌しながら添加された。反応混合物はサンプルループ(1.5mL)へ移され、セミプレップHPLCカラム(フェノメネックス・ジェミニ、5μC18、250×10mm、55%アセトニトリル、45%水、0.01%トリフルオロ酢酸移動相、5.0mL/分)上へ注入された。
生成物、4−{5−[1−(4−[18F]フルオロ−3,5−ジメチルピリジン−2−イルメチル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−3−フェニル−イソオキサゾール−4−イル}−ベンゼンスルホンアミド(3, 5−[1−(4−[18F]フルオロ−3,5−ジメチル−ピリジン−2−イルメチル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−バルデコキシブ、[18F]FPVC)は、フロースルー放射線検出及びUV(254nm)によってモニターしたところ、8.5〜9.5分において溶出された。精製物を含有するHPLC溶出物(7〜8mL)は、磁気攪拌子を具備した30mLバイアル中に収集され、水(20mL)が添加された。水溶液は完全に混合され、次いで、水/移動相溶液と共に、C18Sep−Pakを通された。C18Sep−Pakは、別途のアリコートの水(20mL)で洗浄された。生成物は次に、C18Sep−Pakからエタノール(1.0mL)で溶出され、0.22μmの無菌フィルタを貫通して、無菌のバイアル内へ通され、廃液ボトルへ入れられた。次に、無菌のフィルタを通して水(9.0mL)が、無菌の生成物バイアルヘ添加され、エタノール濃度を10%とした。
【0130】
典型的なプロダクションランは、約660mCiの[18F]フッ化物イオンでスタートし、52分間の合成、HPLC精製及びC18固相抽出及び10%エタノール中の再構成の後、69.3mCi(EOBでは96.2mCi、収率14.6%)の単離された生成物を与えた。
【0131】
集められた生成物は、HPLC(フェノメネックス・ジェミニ、5μC18、150×4.6mm、55%アセトニトリル、45%水、0.01%トリフルオロ酢酸移動相、1.0mL/分)により分析された。放射能及びUV(254nm)検出によってモニターしたところ、この生成物は6.1分間の保持時間及び99.9%の放射化学純度を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】インサイチュクリックケミストリープロセスの概念図である。
【図2】キナーゼ鋳型を用いてリガンドをスクリーニングするための本発明のインサイチュクリックケミストリー法の1つの態様の概念図である。
【図3a】リガンドがAktの内側で形成される2つの経路を例示している。
【図3b】AktのX線結晶構造であり、リボース成分とアルギニン残基との間の近接した距離(経路A)及び、ATPのリン酸基とセリン残基との間の近接した距離(経路B)を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
候補イメージングプローブを同定するための方法であって:
a)第1の候補化合物ライブラリを標的生体高分子と接触させること、ここで、前記第1の化合物ライブラリの各化合物は、クリックケミストリー反応に関与することが可能な第1の官能基を含んでなり、各化合物は、第1の結合部位及び第2の結合部位を含んでなる標的生体高分子の前記第1の結合部位に親和性を示してもよく;
b)前記第1の候補化合物ライブラリから、前記第1の結合部位に親和性を示す第1のメンバーを同定すること;
c)前記第1の候補化合物ライブラリから同定された、前記第1の結合部位に親和性を示す前記第1のメンバーを、前記標的生体高分子と接触させること;
d)第2の候補化合物ライブラリを前記第1のメンバー及び前記標的生体高分子と接触させること、ここで、前記第2の候補化合物ライブラリは、前記第2の結合部位に親和性を示してもよく、前記第2の候補化合物ライブラリの各化合物は、前記第1の官能基とのクリックケミストリー反応に関与することが可能な、相補的な第2の官能基を含んでなり、
前記第1のライブラリの各化合物か前記第2のライブラリの各化合物のいずれか、又は、前記第1及び前記第2の双方の化合物ライブラリの各化合物は、独立して、i)化学元素の非放射性同位元素、ここで、前記化学元素が少なくとも1つの放射性同位元素を含んでなり及び/又はii)脱離基及び/又はiii)金属キレート基及び/又はiv)蛍光性の基、を含んでなり、各々はリンカーを介して結合されていてもよく;
e)生体高分子により誘起されるクリックケミストリー反応により、前記相補的な第1の官能基を前記第2の官能基と反応させて、前記候補イメージングプローブを形成すること;
f)前記候補イメージングプローブを単離及び同定すること;
g)化学合成により候補イメージングプローブを調製すること;及び
h)イメージング適用のため、前記元素の非放射性同位元素を放射性同位元素に転換し、又は前記脱離基を放射性試薬で置換え、又は放射性金属と複合体を形成することにより、前記候補イメージングプローブをイメージングプローブへ転換すること、
を含んでなる方法。
【請求項2】
生体高分子が、酵素、受容体、DNA、RNA、イオンチャンネル及び抗体からなる群より選ばれる、請求項1の方法。
【請求項3】
標的生体高分子が、アルツハイマー病患者の脳組織におけるベータ−アミロイドを含め、疾病状態において過剰発現されるタンパク質である、請求項1の方法。
【請求項4】
第2の結合部位が、前記第1の結合部位の一部を構成する、請求項1の方法。
【請求項5】
第1のライブラリの各化合物又は第2のライブラリの各化合物又は第1及び第2の双方の化合物ライブラリの各化合物が、金属キレート基及び/又は蛍光体を含んでなる、請求項1の方法。
【請求項6】
クリックケミストリー反応がペリ環状反応である、請求項1の方法。
【請求項7】
ペリ環状反応が付加環化反応である、請求項6の方法。
【請求項8】
付加環化反応が、ディールス・アルダー反応及び1,3−双極子付加環化反応からなる群より選ばれる、請求項7の方法。
【請求項9】
付加環化反応が1,3−双極子付加環化反応である、請求項8の方法。
【請求項10】
相補的なクリック官能基がアジド及びアルキンを含んでなり、クリック反応が1,2,3トリアゾールを含んでなる生成物を形成する、請求項1の方法。
【請求項11】
第1の官能基がアジドであり、第2の官能基がアルキンであるか、又は、第1の官能基がアルキンであり、第2の官能基がアジドである、請求項1の方法。
【請求項12】
アルキンが末端アルキンである、請求項11の方法。
【請求項13】
a)〜f)の段階が、新規な第1の化合物ライブラリ及び/又は第2の化合物ライブラリを調製すること、並びに、最適化された結合、生体内分布、代謝及び薬物動態特性をもつ候補イメージングプローブが同定されるまで再度スクリーニングすることからなる、反復過程で実行される、請求項1の方法。
【請求項14】
脱離基が、交換反応、求核置換反応又は求電子置換反応により転換されて、標識された誘導体を形成してもよい、請求項1の方法。
【請求項15】
同定された候補イメージングプローブが、放射性同位元素で標識され、結果として得られた放射性イメージングプローブが、PET、SPECT及び光学イメージングからなる群より選ばれるイメージング法に使用される、請求項13の方法。
【請求項16】
候補イメージングプローブを同定するための方法であって;
a)第1の候補化合物ライブラリを標的酵素と接触させること、ここで、前記第1の化合物ライブラリの各化合物は、クリックケミストリー反応に関与することが可能な第1の官能基を含んでなり、各化合物は、第1の結合部位及び第2の結合部位を含んでなる標的酵素の、前記第1の結合部位に親和性を示してもよく;
b)前記第1の候補化合物ライブラリから、前記第1の結合部位に親和性を示す第1のメンバーを同定すること;
c)前記第1の候補化合物ライブラリから同定された、前記第1の結合部位に親和性を示す前記第1のメンバーを、前記標的酵素と接触させること;
d)第2の候補化合物ライブラリを前記第1のメンバー及び前記標的酵素と接触させること、ここで、前記第2の候補化合物ライブラリは、前記第2の結合部位に親和性を示してもよく、前記第2の候補化合物ライブラリの各化合物は、前記第1の官能基とのクリックケミストリー反応に関与することが可能な、相補的な第2の官能基を含んでなり、
前記第1のライブラリの各化合物か前記第2のライブラリの各化合物のいずれか、又は、前記第1及び前記第2の双方の化合物ライブラリの各化合物は、独立して、i)化学元素の非放射性同位元素、ここで、前記化学元素が少なくとも1つの放射性同位元素を含んでなり及び/又はii)脱離基及び/又はiii)金属キレート基及び/又はiv)蛍光性の基、を含んでなり、各々はリンカーを介して結合されていてもよく;
e)クリックケミストリー反応により、前記相補的な第1の官能基を前記第2の官能基と反応させて、前記候補イメージングプローブを形成すること;
f)前記候補イメージングプローブを単離及び同定すること;
g)化学合成により前記候補イメージングプローブを調製すること;及び
h)イメージング適用のため、前記化学元素の非放射性同位元素を放射性同位元素に転換し、又は前記脱離基を放射性試薬で置き換えることにより、前記候補イメージングプローブをイメージングプローブへ転換すること、
を含んでなる方法。
【請求項17】
標的酵素が、COX−2、AKT、P13K、又はCA−9/CA−12といった、疾病状態において過剰発現されるか又は過剰に活性化されるものからなる群より選ばれる、請求項16の方法。
【請求項18】
標的生体高分子が、アルツハイマー病患者の脳組織におけるベータ−アミロイドを含め、疾病状態において過剰発現されるタンパク質である、請求項16の方法。
【請求項19】
第2の結合部位が、第1の結合部位の一部を構成する、請求項16の方法。
【請求項20】
第1のライブラリの各化合物又は第2のライブラリの各化合物又は第1及び第2の双方の化合物ライブラリの各化合物が、金属キレート基及び/又は蛍光体を含んでなる、請求項16の方法。
【請求項21】
クリックケミストリー反応がペリ環状反応である、請求項16の方法。
【請求項22】
ペリ環状反応が付加環化反応である、請求項21の方法。
【請求項23】
付加環化反応が、ディールス・アルダー反応及び1,3−双極子付加環化反応からなる群より選ばれる、請求項21の方法。
【請求項24】
付加環化反応が1,3−双極子付加環化反応である、請求項22の方法。
【請求項25】
相補的なクリック官能基がアジド及びアルキンを含んでなり、クリック反応が1,2,3トリアゾールを含んでなる生成物を形成する、請求項16の方法。
【請求項26】
第1の官能基がアジドであり、第2の官能基が末端アルキンであるか、或いは、第1の官能基が末端アルキンであり、第2の官能基がアジドである、請求項16の方法。
【請求項27】
a)〜f)の段階が、新規な第1の化合物ライブラリ及び/又は第2の化合物ライブラリを調製すること及び、最適化された結合親和性をもつ候補イメージングプローブが同定されるまで再度スクリーニングすることからなる、反復過程で実行される、請求項16の方法。
【請求項28】
脱離基が、交換反応、求核置換反応、又は求電子置換反応により、標識された誘導体を形成するのに適している、請求項16の方法。
【請求項29】
同定された候補イメージングプローブが、放射性同位元素で標識され、結果として得られた放射性イメージングプローブが、PET、SPECT及び光学イメージングからなる群より選ばれるイメージング法に使用される、請求項27の方法。
【請求項30】
相補的なクリック官能基がアジド及びアルキンを含んでなり、クリック反応が1,2,3トリアゾールを含んでなる生成物を形成する、請求項16の方法。
【請求項31】
第1の官能基がアジドであり第2の官能基がアルキンであるか、又は、第1の官能基がアルキンであり第2の官能基がアジドである、請求項16の方法。
【請求項32】
a)〜f)の段階が、新規な第1の化合物ライブラリ及び/又は第2の化合物ライブラリを調製すること、並びに、最適化された結合、生体内分布、代謝及び薬物動態特性をもつ候補イメージングプローブが同定されるまで再度スクリーニングすることからなる、反復過程で実行される、請求項16の方法。
【請求項33】
脱離基が、交換反応、求核置換反応若しくは求電子置換反応によるか、又は放射性金属と複合体を形成することにより、転換されて、標識された誘導体を形成してもよい、請求項16の方法。
【請求項34】
脱離基が、ハロ、ヒドロキシ、アシルオキシ、ニトロ、ジアゾニウム塩及びスルホニルオキシ基からなる群より選ばれる、請求項33の方法。
【請求項35】
同定されたリガンド化合物が、放射性同位元素により標識され、結果として生じたリガンド化合物が、PET、SPECT及び光学イメージングからなる群より選ばれるイメージング法のために使用される、請求項33の方法。
【請求項36】
放射性同位元素が、F−18、C−11、I−123、I−124、I−125、I−127、I−131、Br−75、Br−76、Cu−64、Tc−99m、Y−90、Ga−67、Ga−68、Cr−51、In−111、Ir−192、177−Lu、Mo−99、Sm−153及びTI−201からなる群より選ばれる、請求項35の方法。
【請求項37】
酵素結合部位内の前記候補化合物の結合が、何ら外的な触媒の添加なしに、クリックケミストリー反応を促進する、請求項16の方法。
【請求項38】
第2の候補化合物ライブラリが、1又はそれ以上の化合物を含んでなる、請求項16の方法。
【請求項39】
第1の候補化合物ライブラリ及び/又は第2の候補化合物ライブラリが、更に、化合物と第1の官能基との間のリンカー及び/又は、化合物と第2の官能基との間のリンカーを含んでなる、請求項16の方法。
【請求項40】
リンカーが、前記化合物と前記官能基との間のリンカー鎖中に、1〜10個の間の原子を含んでなる、請求項39の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2008−541014(P2008−541014A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509206(P2008−509206)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/016428
【国際公開番号】WO2006/116736
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(593063105)シーメンス メディカル ソリューションズ ユーエスエー インコーポレイテッド (156)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Medical Solutions USA,Inc.
【住所又は居所原語表記】51 Valley Stream Parkway,Malvern,PA 19355−1406,U.S.A.
【Fターム(参考)】