説明

高親水性で正電荷に帯電した薬剤を取り込んだ生分解性ナノ粒子

ステレプトマイシンのような親水性の陽イオン性薬剤を含む生物分解性高分子のナノ粒子、およびこれを含む調製品が開示される。このナノ粒子を含む医薬調整品が疾病や状態を患っている個々に投与され、好ましくは経口投与され、生体内でナノ粒子から薬剤が放出され、これらの疾病や状態を治療する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノ粒子薬剤組成物、及び投与が必要な個々へのナノ粒子薬剤組成物の投与に関する。より詳細には、親水性で正電荷に帯電した薬剤を含む生分解性高分子ナノ粒子からなる薬剤輸送システムに関する。本発明にかかるナノ粒子薬剤組成物は、従来は経口投与になじまなかった薬剤の経口薬剤輸送システムを提供する。
【背景技術】
【0002】
急性あるいは慢性の疾病の治癒について現代の薬剤が極めて有効であることはよく知られている。しかしながら、多くの薬剤は投与の経路が制限されている。例えば、幾つかの薬剤は吸収される前に胃において分解されるため経口投与が不可能である。このような薬剤は非経口投与のような異なる経路で投与しなければならない。非経口経路やその他の投与経路は自己投与する患者には不便、かつ面倒であり、患者はしばしば投与を怠る。
【0003】
高親水性で、正電荷に帯電したすなわち陽イオン性である薬剤は、容易には消化(GI)管によって吸収されないため問題が多い。細胞膜の類脂質の性質は、可溶性のリン脂質(すなわち疎水性)が消化管を透過できるようする一方、親水性のものに対してはそのような性質を有さないため、例えば、高親水性の陽イオン性薬剤であるアミノグリコシドは容易には消化管から吸収されない。アミノグリコシドのような高親水性の薬剤がこうした障害を乗り越えることは不可能である。
【0004】
さらに、アミノグリコシドは消化管における多剤流出P糖タンパク質(Pgp)の基質である。P糖タンパク質は基質の動的な流出を媒介することにより基質が小腸の尖端ブラシ状膜境界を超えて吸収されるのを防いでいる(S. Banerjee et al., Life Sci., 67, 2011 (2000))。
【0005】
それゆえ、アミノグリコシドは非経口経路によって投与される。このような投与経路は、患者が投与を怠る事態を招き、また発展途上国においては疫学的そして経済的な問題を生じさせている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、結核(TB)は世界で最も蔓延している疾病の1つである。結核は空気を経由して容易に感染するので、既に19億人が感染しており、毎年に200万人の命を奪っている。結核は既存の薬剤に対してますます耐性を持つようになってきている。現在、活動性および潜在性の双方の結核について治療投与計画を短くでき、多剤耐性株により引き起こされる結核を効果的に治療できる新しい抗結核薬剤が早急に必要となっている。
【0007】
結核の治療では薬剤耐性を避けるために4剤処方、つまりはイソニアジド、リファムピン、およびピラジナミドが経口で、ストレプトマイシンが注射で結核患者に投与される。ストレプトマイシンのようなアミノグリコシドは重要な抗結核薬剤であるが、非経口経路による投与の必要性は不便であり患者による投与が守られないためその有用性が制限されている。発展途上国においては、使い捨ての注射針を使用できないことがよくあるため、注射投与はHIV/結核の伝播という新たな危険を招く。また患者が投与を怠ることは、薬剤耐性が発達することにも繋がり、抗結核薬のなかでもストレプトマイシン耐性が生じる頻度はイオニアジドの次に多い。アミノグリコシドの経口製剤があれば、結核やその他の疾病の治療に関するこうした問題を克服できるであろう。
【0008】
現在、アミノグリコシドや、その他の親水性で陽イオン性のその他の薬剤を効果的に経口投与により輸送可能な技術は存在しない。経口投与の経路は薬剤投与の経路としては最も好ましく、特に長期間継続的な治療が必要な慢性の疾病において特に好ましい。従って、疾病治療を行っている個々に対して、陽イオン性の薬剤を、より効率的でかつ少ない負担で投与する方法を開発することは利点があるだろう。
【0009】
以下詳細に記載するが、本発明はナノ粒子薬剤組成物、ナノ粒子薬剤組成物を含む医薬調整品、および疾病治療のためのナノ粒子薬剤組成物使用、を提供する。さらに、本発明は、アミノグリコシドや、その他の高親水性で正電荷に帯電した薬剤のような投与が困難な薬剤を投与するための改良薬剤輸送システムを提供する。
【0010】
これまでに、高分子ナノ粒子は経口薬剤輸送システムのための担体として研究されていた。これまでの研究ではナノ粒子の経口経路での吸収は主に腸内のリンパ組織レベル(つまりはパイヤー斑)で起こることが示されていた(A. Hillery, J. Drug Targeting, 2,151 (1994))。現在は、生分解性のナノ粒子に、親水性で、陽イオン性の薬剤を取り込むことにより、肺へのリンパの循環内に薬剤を取り込むことが容易となり、消化管で薬剤がPgpの基質として晒されることが回避される。
【0011】
キトサン(CS)のような天然の高分子は、優れた生接着性、生適合性、生分解性、低価格、および細胞間密着帯の開放能のため、経口性薬剤輸送システムの賦形剤として用いられてきた(I. M. Lubben et al., Biomaterials, 22,687 (2000) )。正電荷に帯電したCSと負電荷に帯電したトリポリリン酸のイオン性相互作用を利用したキトサンナノ粒子調製法が開示されている(P. Calvo et al. , J. Appl. Polym. Sci., 63, 125 (1997) )。こうしてできたナノ粒子は優れた薬剤保持能を示していた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
関連出願の相互参照
本出願は、出願日が2003年5月2日の米国仮出願第60/467,400の利益を請求する。
【0013】
本発明は、高親水性で正電荷に帯電した薬剤を取り込んだ生分解性高分子のナノ粒子からなるナノ粒子薬剤組成物を含む薬剤輸送システムを提供する。ナノ粒子薬剤組成物は本発明の薬剤輸送システムを提供するために医薬調製品に取り込まれている。親水性で正電荷の薬剤は、任意に、生分解性高分子ナノ粒子への導入前あるいはその形成前に天然の高分子と混合させても良い。
【0014】
より詳細には本発明は今回のナノ粒子薬剤組成物を取り込んだ医薬調整品から構成される薬剤輸送システムを提供するものである。本発明の重要な側面に対応させ、薬剤は高親水性で正電荷に帯電している。好ましくは、薬剤としてアミノグリコシドが用いられる。
【0015】
本発明の別の側面は、生分解性高分子が天然の高分子あるいは合成高分子であるようなナノ粒子薬剤組成物を提供することである。
【0016】
さらに本発明の他の側面としては、ナノ粒子薬剤組成物を医薬調整品に取り込むことであり、ここでナノ粒子薬剤組成物は液体あるいは固体の形態で、そして経口あるいは非経口経路のいずれかにより個々に投与されうるものである。
【0017】
本発明のその他の側面としては、急性あるいは慢性の疾病あるいは状態を治療するために、治療効果がある量を個々に投与する、陽イオン性薬剤を含む生分解性ナノ粒子からなる医薬調整品を提供することである。
【0018】
本発明の他の側面としては、陽イオン性薬剤を含む生分解性ナノ粒子から構成される医薬調整品を提供することである。この生分解性ナノ粒子は、投与直後にはそのままで、疾病あるいは状態の治療のため親水性の陽イオン性薬剤を生体内に放出可能である。
【0019】
さらに、本発明の他の側面としては、高親水性で正電荷に帯電した薬剤がストレプトマイシン(SM)、アミカシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ネチルミシン、スペクチノマイシン、またはトブラマイシンのようなアミノグリコシドであるナノ粒子薬剤組成物からなる医薬調整品を提供することである。
【0020】
本発明の他の側面は、親水性で正電荷に帯電した薬剤とデキストラン硫酸のような天然の高分子の複合体からなる生分解性ナノ粒子薬剤組成物を提供することである。
【0021】
そして、本発明の他の側面は、結核や、パスツレラ、ブルセラ、ヘモフィリス、サルモネラ、クレプシエラ、およびシゲラ細菌に由来する疾病および状態の治療方法において有用なナノ粒子薬剤組成物から構成される医薬調整品を提供することである。
【0022】
本発明の他の側面は、親水性の要因性薬剤を、安全、簡便、そして効果的に投与する代わりの経路を提供するものであり、特にアミノグリコシドおよびその他の高親水性の陽イオン性薬剤に経口あるいは全身性の投与経路を提供する。
【0023】
そして、本発明のその他の面は親水性の陽イオン性薬剤の徐放が可能な非経口経路による投与のためのナノ粒子薬剤組成物を提供する。本発明のこうした側面により、疾病あるいは状態の治療において、患者は長期間にわたり静脈点滴につながれることから開放される。
【0024】
本発明の他の側面は、高親水性の陽イオン性薬剤により治療可能な疾病の治療方法であって、治療が必要なほ乳類へ、(a) 本発明のナノ粒子薬剤組成物からなる医薬調整品、および、任意で(b)疾病の治療に有用な一以上の添加剤、を投与するステップを含む。
【0025】
さらに本発明の他の側面としては、 (a)本発明のナノ粒子薬剤組成物を含む包装された医薬調製品、(b)疾病の治療のためのナノ粒子薬剤組成物の投与について説明する説明書、および(c) (a)と(b)を収容する容器、からなる製造品を提供する。
【0026】
本発明の上述の内容、またその他の特徴および利点は、以下の好ましい態様の記述より明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、天然または合成高分子から調製した生分解性ナノ粒子に取り込まれた親水性の陽イオン性薬剤を含むナノ粒子薬剤組成物を用いた新規な薬剤輸送システムを提供する。ナノ粒子薬剤組成物は治療が必要な個々に投与する医薬調整品に取り込まれている。
【0028】
ナノ粒子薬剤組成物は、親水性で陽イオン性薬剤からなり、陽イオン性薬剤は任意で高分子性の天然ポリマーと複合化させても良い。薬剤や薬剤複合物は生分解性高分子と混合され、つづいて縮合リン酸のような無機ポリ陰イオンが添加され、ナノ粒子薬剤組成物を形成する。
【0029】
ナノ粒子薬剤組成物を含む医薬調製品は、親水性で陽イオン性薬剤の経口、非経口経路、頬側、舌下、直腸、膣、あるいは尿道経由での輸送に有用である。薬剤は、例えば、ペプチド性、タンパク質性、抗菌性、抗真菌性、抗悪性腫瘍性、抗原虫性、抗関節炎性、または抗炎症性であるが、これらに限定されない。より好ましい実施形態では、薬剤としてアミノグリコシドを用いる。
【0030】
好ましい実施形態では、薬剤としてストレプトマイシンを用いる。
以下の記述は、特にストレプトマイシン(薬剤として)とキトサン(生分解性高分子として)を含むナノ粒子薬剤組成物の調製、性質決定、および評価に関する。しかしながら、本発明はストレプトマイシンとキトサンを用いること限定はされない。当業者であればストレプトマイシンの構造的な特徴を持つ他の陽イオン性薬剤、特に他のアミノグリコシドが、ナノ粒子薬剤組成物中の薬剤として利用可能なことを知っている。
好ましい実施形態では、ナノ粒子薬剤組成物は薬剤と天然の高分子から形成される複合体から調製される。
【0031】
複合体であっても複合体でなくても、薬剤は生分解性高分子と混合し、その後縮合リン酸のような無機ポリ陰イオンが加えられる。その後、ナノ粒子薬剤組成物を含む医薬調製品は経口や非経口を含む様々な経路で治療が必要な個々に投与できる。
本発明の重要な特徴を有するように、ストレプトマイシンやその他の薬剤のような親水性の陽イオン性薬剤は経口投与できる。従来、陽イオン性薬剤は、意図した機能を発揮するほど消化管からは十分には吸収されかったために経口からは投与できなかった。
ナノ粒子薬剤組成物中の薬剤は親水性で正電荷に帯電した薬剤であればよい。薬剤は少なとも正電荷に帯電した部位を一つ有している。正電荷に帯電した部位は、通常はアンモニウムあるいは4級アンモニウム窒素原子である。薬剤は天然でも合成の薬剤でも良い。薬剤は単量体、多量体、またはポリペプチドやタンパク質のような高分子性のものである。アミノグリコシドが薬剤として好ましい。
【0032】
薬剤が合成薬剤の場合、薬剤は通常はプロトン化あるいは4級化しうる窒素原子を含む。薬剤が天然薬剤の場合、薬剤は通常、正電荷に帯電した部位をもつアミノ酸を含む。
【0033】
例えば、薬剤がインシュリンの場合、インシュリン分子はアミノ酸であるリジン、アルギニン、またはヒスチジンを含む。これらのアミノ酸はそれぞれ正電荷に帯電した部位をもつ。同様に、ヒト成長ホルモンは2つのポリペプチド鎖に191アミノ酸を含んでいる。ヒト成長ホルモンはまたアミノ酸であるリジン、アルギニン、またはヒスチジンを含み、インシュリンのように正電荷に帯電した部位を含んでいる。
【0034】
ナノ粒子薬剤組成物に使用されるその他の薬剤としては、これに限定はされないが、テレオフェナメート、プログルメタシン、チアラミド、アパゾーン、ベンズピペリロン、ピペブゾン、ラミフェナゾン、およびメソトレートなどの抗炎症性薬剤、としてイソニアジド、ポリミキシン、バシトラシン、ツベラクチオノマイシン、およびエリスロマイシンなどの抗感染性薬剤、ペニシラミン、クロロキンリン酸、グルコサミン、および水酸化クロロキンなどの抗関節炎薬剤、インシュリンおよびクルカゴンなどの糖尿病薬、そして、シクロフォスファミド、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンビンクリスチン、およびビンブラスチンなどの抗ガン薬剤を含む。
【0035】
薬剤と複合化するために任意で使われる天然高分子は、高分子量が大きく、例えば、重量平均分子量(Mw)が25,000以上である。一般的には、天然の高分子のMwは約50,000から約1,000,000で、好ましくは約75,000から約750,000である。この天然の高分子のMwが約100,000から約700,000であれば、本発明の利益を最大限とすることができる。
【0036】
それゆえに、天然高分子としては、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラチン硫酸、ヘパリン硫酸、デキストラン硫酸、またはこれらの混合物が適しているが、これらに限定されない。
【0037】
デキストラン硫酸が天然の高分子として好ましい。
【0038】
ナノ粒子形成において、生分解性高分子として通常キトサンが用いられる。しかしながら、陽イオンの性質を持つ他の天然および合成の生分解性高分子もまたナノ粒子形成に使用できる。このような高分子は、通常プロトン化した窒素原子を含み、天然である。他の生分解性高分子として、例えば、コラーゲン、アルブミン、セルロース、ゼラチン、エラスチン、およびヒアルロン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本発明の実施例として、ストレプトマイシンを薬剤としてキトサンを生分解性高分子として含むナノ粒子薬剤組成物を調製した。ナノ粒子薬剤組成物はストレプトマイシンの経口投与あるいは非経口経路投与の後のストレプトマイシンの徐放に有用である。
【0040】
ナノ粒子薬剤組成物は一般的には以下のように調製される。(a)ストレプトマイシンの正電荷は部分的に天然の高分子(例えばデキストラン硫酸)の添加により中和され、薬剤複合体を形成する。(b)薬剤複合体は生分解性高分子(例えばキトサン)の水溶液に添加される。そして、(c)ポリリン酸が(b)の生成物に添加され、ストレプトマイシン薬剤複合体を取り込んだキトサンナノ粒子が形成される。ナノ粒子薬剤組成物の粒子サイズは約50nmから約500nmの分布を持つ。
【0041】
特に、生分解性キトサンナノ粒子中にストレプトマイシン(SM)を含む新規の経口薬剤輸送システムを調製し、その生体での有効性について結核菌慢性感染マウスモデルを用いて試験した。テスト結果では、経口投与したSM含有キトサンナノ粒子はSM水溶液を皮下注射した場合と同程度有効であることが示された。ここで参考文献として組み込まれるJanes et al. , J. Cotr. Rel., 73, 255 (2001)の方法を用いてSMのような陽イオンで親水性の薬剤をキトサンナノ粒子中に保持した。すなわち、SMとデキストラン硫酸(ポリ陰イオン)を複合体化し、その後従来のトリポリリン酸法を用いたキトサンナノ粒子調製を行った。
【0042】
ナノ粒子薬剤組成物の試験管内での物理化学的性質、および、結核菌慢性感染マウスモデルにおける経口投与3週間後のSM含有キトサンナノ粒子の生体内での有効性が決定された。
【実施例】
【0043】
実験方法
SM含有キトサンナノ粒子の調製
キトサン(0. 2% w/v)を酢酸水溶液(0.1N)に溶解させた。次に、20mlのSM溶液(0. 2% w/v)を20mlのデキストラン硫酸(MW 500,000)と共に30秒間インキュベートした。結果として得られた複合体を80mlのキトサン溶液に添加した。20mlのトリポリリン酸溶液(0.08% w/v)を攪拌しながら添加すると、SMキトサンナノ粒子が直ちに形成された。
【0044】
SM含有キトサンナノ粒子の性質決定
ナノ粒子の粒子径とゼータ電位を準弾性的光散乱NICOMP (Model 380)とレーザージーメーター(Model 501)により測定した。サイズ測定の際には、試料を水で希釈し30分間測定した。データ電位測定の際には、0.1mMの塩化カリウム溶液で希釈した。
【0045】
SMの封入は、ベックマン超遠心機(Optima(登録商標) LE- 80K)を用いて40, 000g (15°C)で30分間超遠心沈降させることで決定した。封入されていないSMの上清中での濃度はS. E. Katz, J. Agric. Food Chem., 8, 501 (1960) に記述されている分光学的手法を用いて決定した。SMの取り込み効率はK. A. Janes et alに記述されているように計算した。測定は全て3回行った。
【0046】
マウス感染モデルと治療
SM含有キトサンナノ粒子は超遠心により10,000gで30分間濃縮し、その後ナノ粒子を蒸留水中に再懸濁した。SMの最終濃度は20mg/mlであった。
【0047】
BALB/cマウス(約20g)にエアロゾルを用いて結核菌Erdmanを空気感染させた。S. L. Baldwin et al. , Infect. Immun., 66 (6), 2951 (1998). を参照のこと。
【0048】
感染から45日目より、感染マウスに対して、SMを添加したキトサンナノ粒子の経口胃管栄養法あるいはSM溶液(水に溶かした)の皮下注射のどちらかにより、100mg/kg の量で3週間に渡り毎日処置を行った。
【0049】
治療を行わないマウスをコントロールとした。治療の終了の際に肺におけるコロニー形成単位(CFU)をそれぞれの群についてカウントした。全ての結果の統計的有意性は両側スチューデントt−検定を用いて決定した。
【0050】
SM含有キトサンナノ粒子の平均サイズとゼータ電位はそれぞれ557. 93±100. 38nmと+52. 07±3. 4mVであった。キトサンナノ粒子中におけるSMの薬剤取り込み効率は52. 11±0. 71%であった。これは予想外に高い取り込み効率である。なぜなら、SMが正電荷に帯電しており、酢酸溶液中ではキトサンもまた正電荷に帯電した多糖類であり、これらはSM含有キトサンナノ粒子形成中に問題を生じると予想されたからである。従って、デキストラン硫酸(Mwが 500,000)がSMの陽イオン性を減じるために用いられた。Mwが小さいデキストラン硫酸(例えばMwが10,000)を使用するとSMのキトサンナノ粒子への取り込み効率は21.66%にまで減少した。
【0051】
驚くべきことに、コントロールと比べると結核桿菌の生育の1論理圧縮(p<0.01)がどちらの群(つまりSM含有キトサンナノ粒子経口投与とSMの注射投与)においても達成された。特に、コントロール(試験)のマウスの肺におけるlogCFUは6.88であった。SM含有キトサンナノ粒子により処理した群はlogCFUが減少し5.91であった。注射CM群のlogCFUは6.13であった。この試験を、SMの経口投与量を200 mg/kgおよび400 mg/kgとして繰り返し行った。これらの試験における、SM含有キトサンナノ粒子により処理したマウスのlogCFUはそれぞれ6.35と6.15であった(コントロールのlogCFUは6.88であった)。これらの結果は細胞内結核菌を死滅させるのに、SM含有キトサンナノ粒子の経口投与はSMを皮下に注射するのと同程度(p>0.05)に効果があることを示している。
【0052】
結核治療法の発展において、結核桿菌が通性の細胞内寄生生物であり、特に結核の慢性期においてそうである(E. L. W. Barrow et al. , Antimicroagentsand Chemotherapy, 42,2682 (1998) )ことが重要である。SMは急速に分裂している結核菌に対しては高い殺菌性があるが、今回の研究において使用した慢性感染モデルのように増殖しておらず細胞内にいる桿菌に対してSMは効果が低いことが知られている(J. Dhillon et al. , J. Antimicrob. Chemother., 48, 869 (2001))。
【0053】
この比較的低い活性に対する仮説は、SMの低い透過性と宿主細胞内における保持の低さ、そして酸性細胞環境下(pH5.0)におけるSMの活性の低下によるものであろう(P. Couvreur et al. , Pharm. Res., 8,1079 (1991) )。それゆえ、今回のSM含有キトサンナノ粒子の予想外の高い有効性は幾つかの信頼性の低い機構によって説明されるであろう。例えば、キトサンナノ粒子は密着帯を通じた高い薬剤浸透性を保持しているかも知れないし、または/およびSM含有キトサンナノ粒子は結核菌細胞によって取り込まれ、リンパ液の循環を通じて肺に輸送されるかも知れない。マクロファージによって食作用を受けた後、ナノ粒子はSMを結核桿菌が住んでいる場所へと正確に輸送するかも知れない。いずれの仮説にしてもPgp(P糖タンパク質)を介した流出を避けられる。
【0054】
さらに、SM含有キトサンナノ粒子は細胞内の酸性環境から薬剤を守る。それゆえ、信頼性は低いが、これらの因子の組み合わせがSM含有キトサンナノ粒子の経口投与の高い有効性に寄与すると仮定できる。
【0055】
ストレプトマイシンは口では生物的利用ができず、経口からの輸送が可能であれば結核やその他の疾病の治療における使用を大きく促進させるであろう。本ナノ粒子薬剤組成物はストレプトマイシンの経口輸送を可能とする。しかしながら、ナノ粒子薬剤組成物はその他の経路により投与することも可能である。
【0056】
例えば、ナノ粒子薬剤組成物は経口投与あるいは非経口投与に適切な賦形剤により製剤化することもできる。そうのような賦形剤は当該技術分野においてよく知られている。
本発明にかかるナノ粒子薬剤組成物は、通常、医薬調製品中重量で約0.1%から約75%の含まれる。
【0057】
本発明のナノ粒子薬剤組成物を含む医薬調製品は、ヒトあるいはその他のほ乳動物への投与に適している。通常は、医薬調製品は無菌であり、毒性を持たず、投与した際に副作用が生じるような発ガン性や変異原性がない化合物である。
ナノ粒子薬剤組成物は、いかなる適切な経路によっても投与でき、例えば経口、頬側、吸入、舌下、直腸、膣、または腰椎穿刺による大槽内、経尿道、経鼻あるいは非経口経路(静脈内、筋肉内、皮下、冠内を含む)により投与できる。非経口投与は針と注射器を用いて達成できる。移植埋め込み錠もまたナノ粒子薬剤組成物を非経口的に投与するのに用いることができる。ナノ粒子薬剤組成物はまた眼薬剤輸送システムの構成要素として投与できる。
【0058】
医薬調製品は意図した目的を達成するのに治療に効果的な量で投与されるものを含む。より具体的には、「治療に効果的な量」とは疾病を治療するのに効果的な量を意味する。治療に効果的な量の決定は、特に本明細書の詳細な開示に基づけば、当業者の能力の範囲内である。
【0059】
厳密な処方、投与経路、および投与量は患者の状態の見地からそれぞれの医師によって決定される。投与量と間隔は、治療あるいは予防の効果を維持するのに十分なレベルのナノ粒子薬剤組成物を提供するようにそれぞれ調整することが可能である。
投与する医薬調製品の量は治療対象に依存し、対象者の体重、苦痛の重症度、投与の方法、および処方する医師の判断による。
【0060】
特に、疾病の治療的あるいは予防的な処置でのヒトへの投与は、平均的な大人(70kg)の患者の場合、ナノ粒子薬剤組成物の経口投与量を毎日約10mgから約500mgとする。従って、通常の大人の患者の場合、1度または複数度の投与を1日1回あるいは複数回で行い、各投与において、ナノ粒子薬剤組成物は、医薬品として許容できる媒体あるいは担体中に含まれた状態で、約0.1mgから約500mg含まれる。静脈内、頬側、あるいは舌下への投与の場合の投与量は通常1回あたり約0.1 mg/kgから約10mg/kgが必要である。現場においては、医師が個々の患者や疾病に最適の投与計画を実際に決定し、投与量は年齢、体重、および個々の患者の反応によって異なっている。上記の投与量は平均的な場合の例示であり、投与される個々により多いあるいはより少ない投与量の方が有利である場合があるが、そうした場合も本発明の範囲である。
【0061】
本発明のナノ粒子薬剤組成物は単独で投与することもできるし、意図する投与経路や標準的な医薬品における慣行から選択した医薬品担体と混合としても投与できる。本発明に従った医薬調製品は点眼薬も含んでおり、従って、それらは、ナノ粒子薬剤組成物を医薬品として使用可能とする工程を容易にするような賦形剤や補助剤からなり、生理学的に許容可能な一以上の担体を用いて、従来の方法により製剤化することもできる。
【0062】
これらの医薬調製品は従来の手法、例えば、従来の混合、溶解、粒状化、糖衣化、エマルジョン化、または凍結乾燥などの工程により製造される。
【0063】
適切な製剤化は選択した投与経路に依存する。治療面から効果的な量のナノ粒子薬剤組成物は経口から投与され、通常の製剤の形態は錠剤、カプセル、粉、溶液、あるいはエリキシル薬である。錠剤で投与する場合、組成物はゼラチンや補助剤などの固体の担体を更に含んでも良い。
【0064】
錠剤、カプセル、そして粉は約5%から約95%、好ましくは約25%から90%の本発明のナノ粒子薬剤組成物を含む。液体の形態での投与の場合には、水、石油あるいは動物あるいは植物由来の油のような液体担体が添加されうる。医薬調製品の液体での形態はさらに生理食塩水、デキストロース、あるいはその他の糖溶液、あるいはグリコールを含む。液体の形態で投与する場合、医薬調製品は、重量で約0.5%から約90%のナノ粒子薬剤組成物を含み、そして好ましくは重量で約1%から約50%のナノ粒子薬剤組成物を含む。
【0065】
治療面から効果的な量のナノ粒子薬剤組成物が静脈、皮膚、あるいは皮下への注射によって投与される場合、組成物は発熱しないような非経口経路の面から許容可能な水溶液調製品とする。こうした非経口経路の面から可能である溶液調製品はpH、等張性、安定性の検討を要するが、それらは本技術分野の範囲内である。
【0066】
静脈、皮膚、あるいは皮下への注射のための好ましい調製品は、通常は本発明のナノ粒子薬剤組成物に加えて等浸透圧の媒体を含む。
【0067】
ナノ粒子薬剤組成物は、当該技術分野において周知である医薬品として許容できる担体と容易に結合可能である。こうした担体は、治療される患者が経口摂取できるように、ナノ粒子薬剤組成物を錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液、あるいは類似のものとして製剤化できるようにする。
【0068】
経口用の医薬調製品は固体の賦形剤をナノ粒子薬剤組成物に添加することにより得られるが、これらの混合物に、必要であれば適切な添加物を加えた後に、粉砕しても良いし、粒子の混合物を加工して錠剤や糖衣核を取得しても良い。適切な賦形剤としては、例えば充填剤やセルロース調製品を含んでいる。もし必要であれば、分解剤を添加しても良い。
【0069】
ナノ粒子薬剤組成物は注射による非経口投与、例えば、大量瞬時投与注射、あるいは連続点滴用に製剤化できる。注射のための調製品は単位投与の形態で提供される。例えば、保存剤添加のもとアンプルあるいは多投与容器に入れられている。調製品は懸濁液、溶液、あるいは油または水溶液媒体中の乳濁液のような形態をとることが可能で、懸濁剤、安定剤、および/または分散剤のような製剤化剤を含む事ができる。
【0070】
非経口投与のための医薬調製品はナノ粒子薬剤組成物の水溶液分散系を含む。加えて、ナノ粒子薬剤組成物の懸濁液は適切な油注射懸濁液として調製できる。
【0071】
適した親油性溶媒または媒体は、脂肪性油または合成脂肪酸エステルを含む。水溶液の注射懸濁液は、懸濁液の粘性を上昇させる物質を含むことができる。任意には、懸濁液は、化合物の分散性を上昇させ、高度に濃縮された調製品の調製を可能とするのに適した安定剤や薬剤を含むことができる。代わりに、本医薬調製品は、使用前に例えば無菌非発熱性の水などの適した媒体と混合するために粉末の形態とすることができる。
【0072】
ナノ粒子薬剤組成物は坐薬や保持浣腸といった、例えば従来の坐薬基盤を含むような、直腸組成物として製剤化することもできる。以前に記述した調製品に加え、ナノ粒子薬剤組成物は徐放性製剤調製品としても製剤化できる。こうした長期間効き目がある調製品は埋め込み(例えば、皮下あるいは筋肉内)あるいは筋肉内注射により投与できる。このようにして、例えば、ナノ粒子薬剤組成物を適した高分子性あるいは疎水性材料とともに製剤化できる。
【0073】
特に、ナノ粒子薬剤組成物は、デンプンやラクトースのような賦活剤を含む錠剤の形態、あるいはカプセルか卵中に、単独でまたは賦活剤との混合物として、あるいは香料か着色剤を含むエリキシルか懸濁液の形態で、経口、頬側、あるいは舌下より投与できる。こうした液体調製品は懸濁剤のような医薬品として許容できる添加物とともに調製されうる。また、製剤の非経口注射も可能で、例えば、静脈内、筋肉内、皮下あるいは冠状動脈内注射による。非経口投与のために、製剤としては、溶液を血液と等張とするための他の物質、例えば塩、マンニトールかグルコースのような単糖類を含みうる滅菌水溶液の形態で使用されるのが最適である。
【0074】
獣医学での使用のためには、通常の獣医学での治療に従い、ナノ粒子薬剤組成物は適した許容可能な製剤として投与される。獣医師は容易に特定の動物に最適な投与計画と投与経路を決定できる。
【0075】
本発明は、それゆえ、薬剤輸送の経口、非経口、舌下、直腸、膣、尿道経由のための新規の薬剤輸送システムを開示する。薬剤輸送システムは、任意には複合体の形態の、親水性で、正電荷に荷電した薬剤、および生分解性の高分子を含むナノ粒子からなる医薬調製品である。薬剤あるいは薬剤複合体は生分解性ナノ粒子中に捕捉される。その後、医薬調製品は様々な経口や非経口経路により投与可能である。
【0076】
加えて、本開示は特にストレプトマイシンを取り込んだキトサンナノ粒子の調製品を提供するが、当業者であればこの技術を様々な薬剤やナノ粒子を形成する生分解性高分子へ適用可能である。
【0077】
ここで例示したように、ストレプトマイシンをキトサンナノ粒子内に、50%以上の高い取り込み効率で、そして30%以上の荷重効率で取り込み、取り込みに成功した。ナノ粒子はまた他のアミノグリコシド(例えばアミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、カナマイシン、およびネオマイシン)をも含みうる。なぜなら、これらはストレプトマイシンと類似の物理化学的性質を持つからである。ストレプトマイシン含有キトサンナノ粒子は経口にて生物利用可能であり、細胞内の結核菌を死滅させるのに皮下からストレプトマイシン溶液を注射するのと同程度効果的である。
【0078】
上述のように、ここでの精神や範囲から逸脱することなくこの発明の改変や変更が可能である、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。








【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノグリコシド(a)、および天然の高分子(b)を含む組成物で、平均粒子サイズが約1nmから1000nmのナノ粒子からなる組成物。
【請求項2】
前記アミノグリコシドは、ストレプトマイシン、アミカシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、スペクチノマイシン、またはトブラマイシンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記平均粒子サイズが約50nmから約500nmである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
さらにポリ陰イオン塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリ陰イオン塩が縮合ポリリン酸である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記縮合ポリリン酸が、2リン酸、3リン酸、またはこれらの誘導体である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記高分子が前記縮合ポリリン酸にイオン的に結合している、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記高分子がポリ陰イオン塩にイオン的に結合可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記高分子がタンパク質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記高分子が多糖類を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記高分子が窒素原子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記高分子がプロトン化している、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記高分子の分子量が25,000g/mol以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記高分子の分子量が約100,000g/molから約700,000g/molである、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記高分子が、キトサン、デキストラン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラチン硫酸、ヘパリン硫酸、コラーゲン、アルブミン、セルロース、ゼラチン、エラスチン、ヒアルロン酸、またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記高分子がキトサンを含み、前記アミノグリコシドがストレプトマイシンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
経口投与の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
治療を必要とするほ乳類に、アミノグリコシド(a)、および天然の高分子(b)を含む組成物を治療に効果的な量投与するステップを有し、
前記組成物は、平均粒子サイズが約1nmから約1000nmのナノ粒子を含む、ほ乳類の疾病または医学的状態の治療方法。
【請求項19】
前記アミノグリコシドが、ストレプトマイシン、アミカシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、スペクチノマイシン、またはトブラマイシンを含む、請求項18に記載の治療方法。
【請求項20】
前記平均粒子サイズが約50nmから約500nmである、請求項18に記載の治療方法。
【請求項21】
前記組成物は、さらにポリ陰イオン塩を含む、請求項18に記載の治療方法。
【請求項22】
前記ポリ陰イオン塩は、縮合ポリリン酸を含む、請求項21に記載の治療方法。
【請求項23】
前記縮合ポリリン酸が、2リン酸、3リン酸、またはそれらの誘導体を含む、請求項22に記載の治療方法。
【請求項24】
前記高分子が、前記縮合ポリリン酸とイオン的に結合している、請求項22に記載の治療方法。
【請求項25】
前記高分子がポリ陰イオン塩とイオン的に結合可能である、請求項18に記載の治療方法。
【請求項26】
前記高分子が多糖類を含む、請求項18に記載の治療方法。
【請求項27】
前記高分子が窒素原子を含む、請求項18に記載の治療方法。
【請求項28】
前記高分子がタンパク質を含む、請求項18に記載の治療方法。
【請求項29】
前記高分子がプロトン化している、請求項18に記載の治療方法。
【請求項30】
前記高分子の分子量が25,000g/mol以上である、請求項18に記載の治療方法。
【請求項31】
前記高分子の分子量が約100,000g/molから約700,000g/molである、請求項18に記載の治療方法。
【請求項32】
前記高分子が、キトサン、デキストラン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラチン硫酸、ヘパリン硫酸、コラーゲン、アルブミン、セルロース、ゼラチン、エラスチン、ヒアルロン酸、またはこれらの混合物を含む、請求項18に記載の治療方法。
【請求項33】
前記高分子がキトサンを含み、前記アミノグリコシドがストレプトマイシンを含む請求項18に記載の治療方法。
【請求項34】
前記組成物が経口的に投与される、請求項18に記載の治療方法。
【請求項35】
治療面から効果がある量の生物活性化合物(i)、および、縮合ポリリン酸塩とイオン的に結合可能な天然の高分子(1)、または多糖類(2)のいずれか(ii)を含む組成物(a)と、
医薬品として許容できる担体(b)と、から構成され、
前記組成物は平均粒子サイズが約1nmから約1000nmのナノ粒子を含む、
ほ乳類の疾病あるいは状態を治療するための医薬製剤。
【請求項36】
前記組成物がさらに縮合ポリリン酸を含む、請求項35に記載の医薬製剤。
【請求項37】
前記縮合ポリリン酸が、2リン酸、または3リン酸、またはそれらの誘導体を含む、請求項36に記載の医薬製剤。
【請求項38】
前記高分子または前記多糖類が、前記縮合ポリリン酸とイオン的に結合している、請求項36に記載の医薬製剤。
【請求項39】
前記平均粒子サイズが約50nmから約500nmである、請求項35に記載の医薬製剤。
【請求項40】
前記生物活性化合物が塩である、請求項35に記載の医薬製剤。
【請求項41】
前記生物活性化合物が窒素原子を含む、請求項35に記載の医薬製剤。
【請求項42】
前記生物活性化合物がP糖タンパク質の基質である、請求項35に記載の医薬製剤。
【請求項43】
前記生物活性化合物が、アミノグリコシド、ポリペプチド、タンパク質、インシュリン、ヒト成長ホルモン、テレオフェナメート、プログルメタシン、チアラミド、アパゾーン、ベンズピペリロン、ピペブゾン、ラミフェナゾン、メソトレキセート、イソニアジド、ポリミキシン、バシトラシン、ツベラクチオノマイシン、エスリョマイシン、ペニシラミン、クロロキンリン酸、グルコサミン、水酸化クロロキン、グルカゴン、シクロロフォスファミド、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、ビンクリスチン、またはビンバラスチンを含む、請求項35に記載の医薬製剤。
【請求項44】
前記アミノグリコシドが、ストレプトマイシン、アミカシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、スペクチノマイシン、またはトブラマイシンを含む、請求項43に記載の医薬製剤。
【請求項45】
前記高分子がタンパク質である、請求項35に記載の医薬製剤。
【請求項46】
前記高分子または前記多糖類が、窒素原子を含む、請求項35に記載の医薬製剤。
【請求項47】
前記高分子または前記多糖類が、プロトン化している、請求項35に記載の医薬製剤。
【請求項48】
前記高分子または前記多糖類の分子量が、25,000g/mol以上である、請求項35に記載の医薬製剤。
【請求項49】
前記高分子または前記多糖類の分子量が、約100,000g/molから約700,000g/molである、請求項35に記載の医薬製剤。
【請求項50】
前記高分子または前記多糖類が、キトサン、デキストラン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラチン硫酸、ヘパリン硫酸、コラーゲン、アルブミン、セルロース、ゼラチン、エラスチン、ヒアルロン酸、またはこれらの混合物を含む、請求項35に記載の医薬製剤。
【請求項51】
前記高分子または前記多糖類がキトサンを含み、前記生物活性化合物がストレプトマイシンを含む、請求項35に記載の医薬製剤。
【請求項52】
経口投与の形態である、請求項35に記載の医薬製剤。
【請求項53】
治療を必要とするほ乳類に、生物活性化合物(a)、およびポリリン酸塩とイオン的に結合可能な天然の高分子(i)、または多糖類(ii)のどちらか(b)を含む組成物を治療に効果的な量投与するステップを有し、
前記組成物は、平均粒子サイズが約1nmから約1000nmのナノ粒子を含む、ほ乳類の疾病または医学的状態の治療方法。
【請求項54】
前記組成物はさらに縮合ポリリン酸を含む、請求項53に記載の治療方法。
【請求項55】
前記縮合ポリリン酸が、2リン酸、3リン酸、またはそれらの誘導体を含む、請求項54に記載の治療方法。
【請求項56】
前記高分子または前記多糖類が、前記縮合ポリリン酸塩とイオン的に結合している、請求項54に記載の治療方法。
【請求項57】
前記ほ乳類がヒトである、請求項53に記載の治療方法。
【請求項58】
前記組成物を経口的に投与するステップを有する、請求項53に記載の治療方法。
【請求項59】
前記疾病または前記医学的状態が細菌感染を含む、請求項53に記載の治療方法。
【請求項60】
前記疾病または前記医学的状態が結核である、請求項53に記載の治療方法。
【請求項61】
前記組成物がさらに医薬品として許容可能な担体を含む、請求項53に記載の治療方法。
【請求項62】
前記ナノ粒子の平均粒子サイズが約50nmから約500nmである、請求項53に記載の治療方法。
【請求項63】
前記生物活性化合物が塩である、請求項53に記載の治療方法。
【請求項64】
前記生物活性化合物が、窒素原子を含む、請求項53に記載の治療方法。
【請求項65】
前記生物活性化合物がP糖タンパク質の基質である、請求項53に記載の治療方法。
【請求項66】
前記生物活性化合物が、アミノグリコシド、ポリペプチド、タンパク質、インシュリン、ヒト成長ホルモン、テレオフェナメート、プログルメタシン、チアラミド、アパゾーン、ベンズピペリロン、ピペブゾン、ラミフェナゾン、メソトレキセート、イソニアジド、ポリミキシン、バシトラシン、ツベラクチオノマイシン、エスリョマイシン、ペニシラミン、クロロキンリン酸、グルコサミン、水酸化クロロキン、グルカゴン、シクロロフォスファミド、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、ビンクリスチン、またはビンバラスチンを含む、請求項53に記載の治療方法。
【請求項67】
前記生物活性化合物がアミノグリコシドを含む、請求項53に記載の治療方法。
【請求項68】
前記アミノグリコシドが、ストレプトマイシン、アミカシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、スペクチノマイシン、またはトブラマイシンを含む、請求項67に記載の治療方法。
【請求項69】
前記高分子がタンパク質を含む、請求項53に記載の治療方法。
【請求項70】
前記高分子または前記多糖類が窒素原子を含む、請求項53に記載の治療方法。
【請求項71】
前記高分子または前記多糖類がプロトン化されている、請求項53に記載の治療方法。
【請求項72】
前記高分子または前記多糖類の分子量が、25,000g/mol以上である、請求項53に記載の治療方法。
【請求項73】
前記高分子または前記多糖類の分子量が、約100,000g/molから約700,000g/molである、請求項53に記載の治療方法。
【請求項74】
前記高分子または前記多糖類が、キトサン、デキストラン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラチン硫酸、ヘパリン硫酸、コラーゲン、アルブミン、セルロース、ゼラチン、エラスチン、ヒアルロン酸、またはこれらの混合物を含む、請求項53に記載の治療方法。
【請求項75】
前記高分子または前記多糖類がキトサンを含み、前記生物活性化合物がストレプトマイシンを含む、請求項53に記載の治療方法。
【請求項76】
前記組成物は経口投与の形態である、請求項53に記載の治療方法。
【請求項77】
治療を必要とするほ乳類に治療に効果的な量のアミノグリコシドを経口投与するステップを有する、結核の治療方法。
【請求項78】
前記アミノグリコシドが、ストレプトマイシン、アミカシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、スペクチノマイシン、またはトブラマイシンを含む、請求項77に記載の治療方法。
【請求項79】
ナノ粒子薬剤組成物を含み、前記ナノ粒子薬剤組成物は、親水性で陽イオンの薬剤(a)と、薬剤(a)がその中に取り込まれている生分解性高分子のナノ粒子(b)とを含む、薬剤輸送システム。
【請求項80】
前記アミノグリコシドは、ストレプトマイシン、アミカシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、スペクチノマイシン、およびトブラマイシンからなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項81】
治療を必要とする個々に、請求項79に記載の薬剤輸送システムを治療に効果的な量投与するステップを有し、前記薬剤はアミノグリコシドを含む、アミノグリコシドで治療可能な疾病または状態を治療する方法。
【請求項82】
前記薬剤輸送システムは経口投与される、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記薬剤輸送システムは非経口投与される、請求項82に記載の方法。


【公表番号】特表2006−525333(P2006−525333A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−513310(P2006−513310)
【出願日】平成16年4月26日(2004.4.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/012755
【国際公開番号】WO2004/098564
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(503063593)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ イリノイ (12)
【Fターム(参考)】